JP3788570B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、キャリッジに搭載されて印刷デ−タに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出させることができるキャッピング手段とを具備したインクジェット式記録装置に関し、特にキャッピング手段において扱われるインク廃液の処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置は、一般にインクカートリッジからインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段が備えられ、記録ヘッドを移動させながら印刷データに基づいて記録用紙にインク滴を吐出させることで記録が行われる。そしてキャリッジ上に例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクの吐出が可能な記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各カラーインクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能にしている。
【0003】
前記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口からのインクの吐出作用に障害が発生して印字不良を起こすという問題を抱えている。
【0004】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。このキャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引してノズル開口の目詰まりを解消する機能も備えている。
【0005】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成してなるワイピング部材により、ノズル形成面を払拭する操作が伴われる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の記録装置におけるクリーニング操作は、前記したようにキャッピング手段によって記録ヘッドのノズル形成面を封止した状態で、吸引ポンプによる負圧を作用させることで、ノズル開口からインクを吸引排出させるようになされる。そして、記録ヘッドのノズル形成面に封止状態とされたキャッピング手段を若干引き離した状態で、再び吸引ポンプを駆動することで、キャッピング手段内に排出されたインク廃液を、廃液タンクに送り出す操作が実行される。
【0007】
前記したクリーニング操作に伴い、インクの吸引排出後にキャッピング手段をノズル形成面から若干引き離す操作が実行された場合、その引き離し動作における振動等を受けてキャッピング手段内に貯留されたインク廃液が、キャッピング手段より溢れ出るという問題が発生する。
【0008】
一方、前記キャッピング手段は、キャリッジのホームポジション側への移動に伴うキャリッジの駆動力によって、記録ヘッドのノズル形成面側にせり上がることができるように構成された昇降機構上に搭載されている。したがって、キャッピング手段から溢れ出たインク廃液は、前記した昇降機構に回り込み、インク廃液は時間の経過と共に凝固するために、前記昇降機構の正常な動作を阻害させるという問題を抱えている。
【0009】
本発明は、前記した問題を回避するためになされたものであり、キャッピング手段内に排出されたインクが、キャッピング手段を昇降させる前記した機構部分に回り込む度合いを低減し、長期にわたって信頼性を確保することができるインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置は、往復移動可能なキャリッジに搭載されて印刷デ−タに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出させることができるキャッピング手段とを具備したインクジェット式記録装置であって、前記キャッピング手段には、記録ヘッドのノズル形成面に当接してノズル形成面をシールする軟質性素材により形成されたキャップ部材と、前記キャップ部材を保持するキャップホルダとが具備され、前記キャップホルダにおける印字領域側には、前記キャップ部材に隣接してインク受け凹部が形成されると共に、前記キャッピング手段は、前記記録ヘッドのノズル形成面に対する封止を解除するに際して、キャップ部材の印字領域側が先にノズル形成面から離れるように構成された点に特徴を有する。
【0011】
この場合、好ましくは前記キャップ部材に隣接して形成されたインク受け凹部の開口端が、前記キャップ部材上端のシール部よりも重力方向に低い位置に形成される。また、好ましくは前記キャップ部材に隣接する部分のインク受け凹部の幅は、隣接するキャップ部材の幅に等しいか、またはそれ以上の寸法となるように構成される。そして、前記インク受け凹部の下底部には、少なくとも1つの排出孔が貫通状態に形成されることが望ましい。さらにこの場合、排出孔が貫通状態に形成されたインク受け凹部の裏面が、前記キャップホルダに対して重力方向において下方に位置するように構成されることが望ましい。
【0012】
そして、好ましい実施の形態においては、フラッシング操作により前記記録ヘッドのノズル開口からインク滴が選択的に吐出されるように構成され、前記記録ヘッドが移動しつつフラッシング操作によるインク滴が、前記インク受け凹部に吐出されるように構成される。この場合、好ましくは前記インク受け凹部の直上に位置したインクジェット式記録ヘッドのノズル形成面と、前記インク受け凹部における下底部内面との距離が、7mm以下となるように形成される。
【0013】
以上のように構成された本発明にかかるインクジェット式記録装置によると、キャッピング手段は、記録ヘッドのノズル形成面に対する封止を解除するに際して、キャップ部材の印字領域側がノズル形成面から離れるように作用する。したがって、例えばクリーニング動作によってキャッピング手段内に排出されたインク廃液が、キャッピング手段から溢れ出る場合においては、キャップ部材の印字領域側から溢れ出る。
【0014】
この場合、キャップホルダにおける印字領域側の側壁部には、前記キャップ部材に隣接してインク受け凹部が形成されているので、溢れ出たインク廃液の殆どはインク受け凹部に流入する。そして、前記インク受け凹部に流入したインク廃液は、その下底部に貫通状態に形成された排出口を介して重力方向に排出される。したがって、クリーニング動作によってキャッピング手段内に排出されたインク廃液が、キャッピング手段を昇降させる機構部分に回り込む度合いを遥かに軽減させることができる。
【0015】
加えて、前記インク受け凹部を利用して、フラッシング操作に伴って吐出されたインク滴を受けるように構成することで、フラッシング操作によるインク滴をキャッピング手段において受けていた構成に比較すると、キャリッジの移動に伴うキャップピング手段の昇降位置の位置決めを厳しく管理する必要もなくなり、結果としてスループットを向上させることに寄与できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図1は装置の上面から視た状態を示し、また図2および図3は側面から視た状態で示しており、それぞれ非キャッピング状態およびキャッピング状態を示している。
【0017】
図2および図3に示した符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はガイドロッド2に案内されて用紙ガイド板3に対向して平行に移動することができるように構成されている。そしてキャリッジ1は、図には示されていないがキャリッジモ−タにより往復動されるタイミングベルトの一部に結合されて、ガイドロッド2に沿って往復移動されるように構成されている。
【0018】
前記キャリッジ1には記録ヘッド5が、用紙ガイド板3の上面において移送される記録用紙4に対向するように搭載されており、記録ヘッド5に対してインクが導入され、印刷デ−タに対応して用紙ガイド板3上の記録用紙4にインク滴を吐出して印字することができるように構成されている。
【0019】
前記記録ヘッド5のノズル形成面5aを封止することができるキャッピング手段6は、記録装置の端部における非印字領域(ホームポジション)に配置されており、記録ヘッド5のノズル形成面に密封空間をもって封止できるサイズのキャップ部材7を備え、非印字時に記録ヘッド5のノズル形成面6aを封止してノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、クリーニング操作時に後述する吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッド5からインクを強制的に排出させる機能とを備えている。
【0020】
前記キャッピング手段6には、前記記録ヘッドのノズル形成面5aに当接してノズル形成面をシールする軟質性素材、例えばエラストマーにより形成されたキャップ部材7が具備されている。そして、キャップ部材7の内底部には、図1に示すようにインク排出口7aが形成され、このインク排出口7aには吸引ポンプとしての後述するチューブポンプを構成するチュ−ブの一端が接続され、このチュ−ブの他端は、同じく後述する廃液タンク接続されている。
【0021】
前記した構成により、非印字時にはキャップ部材7によって記録ヘッド5のノズル形成面が封止され、またクリ−ニング指令を受けた場合には、吸引ポンプによる負圧がキャッピング手段の内部空間に印加され、記録ヘッド5からインクを強制的に排出させることができる。また、キャップ部材7は方形状のキャップホルダ9に対して例えば二色成形法により一体に成形されており、このキャップホルダ9の長手方向の両側壁には、それぞれ平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。
【0022】
そして、キャップホルダ9は昇降機構を構成するスライダ10上に搭載され、スライダ10とバネ受け部9aとの間に介装された一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢された状態で取り付けられている。また、図1に示されたようにキャップホルダ9の一端部中央および他端部の両側部には、それぞれ係合部9bが形成されており、これら3つの係合部9bは、スライダ10に形成されたそれぞれの係止部材10aによって3点で係止されている。
【0023】
これにより、キャップホルダ9は一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢されると共に、所定のストローク以上の移動が規制されて、スライダ10上に取り付けられている。なお、後で詳細に説明するが、前記キャップホルダ9の印字領域側には、前記キャップ部材7に隣接してインク受け凹部8がキャップホルダ9と一体に形成されている。
【0024】
一方、前記スライダ10の下底部には一対の長穴12がほぼ水平方向に形成されており、この各長穴12内にはフレ−ム13に対して回動可能に取り付けられたア−ム14の自由端側に配置された一対の水平軸15が、それぞれ移動可能となるように収容されている。これにより、スライダ10はア−ム14を介してフレ−ム13に対して円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0025】
また、前記スライダ10の非印字領域側の端部両側には、それぞれガイド片10bが形成されていて、この一対のガイド片10bはフレ−ム13に形成された一対の案内溝16によって支持されるように構成されている。この案内溝16は一端部に形成された低所部16aと、他端部に形成された水平な高所部16bと、さらにこれらを接続する傾斜部16cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0026】
さらに、図1に示されたように一方のガイド片10bには、一端がフレ−ム13に固定された引っ張りバネ17の他端が固定されていて、この引っ張りバネ17の作用により、スライダ10は印字領域方向に牽引されている。これにより、スライダ10は記録ヘッド5のノズル形成面から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方向に移動されるように付勢されている。
【0027】
そして、図2に示すようにキャリッジ1がホームポジション側(図中右端部側)に移動した際、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダ10に直立するように形成された係合部10cに当接することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はア−ム14を介して立ち上がり、これによりキャップホルダ9に一体に形成されたキャップ部材7が、キャリッジ1に配置された記録ヘッド5のノズル形成面5aを封止することができるように構成されている。
【0028】
また、キャリッジ1が印字領域側に移動した場合には、スライダ10に配置された係合部10cに対するキャリッジ1側の係合体1aの当接が解かれ、スライダ10はバネ17の引張力によって図2に示した状態になされ、これにより、キャップ部材7による記録ヘッド5のノズル形成面の封止が解除される。
【0029】
なお図2に示したように、前記キャップ部材7におけるシール面、すなわち記録ヘッド5のノズル形成面に当接する上端面は、記録ヘッド5のノズル形成面に対して非平行状態となるように構成されている。すなわち、キャップ部材7のシール面はホームポジション側(図2における右側)端部に対して印字領域側に僅かに下降するように傾斜状態になされている。これは、スライダ10に形成された長穴12内の水平軸15の位置と、フレ−ム13に形成された一連の案内溝16内を摺動するガイド片10bの配置位置との関係により構成されている。
【0030】
そして、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面を封止する状態においては、先ずホームポジション側よりノズル形成面に当接し、スライダ10の上昇にしたがう圧縮バネ11の縮小作用により、記録ヘッド5のノズル形成面5aの全面を封止するように作用する。また、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面の封止を解く場合においては、記録ヘッド5のノズル形成面に対して、先ず印字領域側の端部から離れ、キャップ部材の印字領域側に、より大きな距離をおいたままノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用する。
【0031】
一方、図1または図3に示すようにキャッピング手段6に隣接する印字領域側には、キャリッジ1の移動に伴ってキャリッジ1に搭載された前記記録ヘッド5のノズル形成面5aを払拭することができる例えばゴム素材を短冊状に形成したワイピング部材21が配置されている。このワイピング部材21は保持部材20に取り付けられており、必要に応じて保持部材20は水平方向に移動され、ワイピング部材21を記録ヘッド5の移動経路上のワイピング位置に対して進入または退避できるように構成されている。
【0032】
したがって、クリ−ニング操作時において、前記記録ヘッド5はこのワイピング部材21により、そのインク吸引前においてノズル形成面5aに付着している塵埃や紙粉などが除去される。また、クリーニング動作によるインク吸引後においては、ノズル形成面5aに付着しているインクの払拭がなされ、印字領域に移動した記録ヘッドから、インクがボタ落ちするような不都合が避けられるようになされている。
【0033】
以上の構成において、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1が非印字領域側に移動すると、図2に示すように、キャリッジ1に配置された係合体1aが、スライダ10に形成された係合部10cに当接する。そして、なおもキャリッジ1がホームポジション側に移動することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はア−ム14を介して立ち上がる。一方、スライダ10に形成されたガイド片10bは、案内溝16を構成する低所部16aから傾斜部16cに、さらに水平な高所部16bへと移動し、これにより、キャップホルダ9に一体成形されたキャップ部材7がキャリッジ1に配置された記録ヘッド5を封止する。
【0034】
このようにして、キャップ部材7によるノズル形成面の封止が完了した段階で、キャップ部材7は大気との連通が断たれて気密状態となり、ノズル開口からのインクの蒸発を抑制して、記録ヘッドの目詰まりを防止するように作用する。また、この状態で吸引ポンプが駆動されることにより、記録ヘッドのノズル開口からインクを吸引排出させるクリーニング操作を実行することができる。
【0035】
一方、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1が印字領域側に移動すると、キャリッジ1に配置された係合体1aは、スライダ10に形成された係合部10cから離れる。したがって前記バネ17の引張力によって、スライダ10はア−ム14を介して、またスライダ10に形成されたガイド片10bが低所部16a側に移動することにより降下する。これによりキャップ部材7による記録ヘッド5の封止状態が解かれる。
【0036】
図4および図5は、前記したキャッピング手段を構成するキャップホルダとキャップ部材の詳細な構成を示したものである。なお、図4はキャップホルダとキャップ部材のアッセンブリを上面から視た状態の平面図で示しており、また図5は図4におけるA−A線から矢印方向に視た状態の断面図で示し、さらに吸引ポンプを介して廃液タンクに至るインク廃液の送出経路を模式的に示している。なお、図4および図5において図1乃至図3において既に説明した各部は、同一符号で示している。
【0037】
前記したようにエラストマーなどの素材によるキャップ部材7は、方形状に形成されたキャップホルダ9の内側部に、例えば二色成形法によって一体に成形されており、キャップホルダ9の内側面において、キャップ部材7が、キャップホルダ9の開口端面9cに対して突出して形成されている。そして、キャップ部材7における開口端面9cからの突出部の断面形状は、ほぼ三角形状を構成しており、その頂部の端面が記録ヘッドのノズル形成面に当接するシール部7bを構成している。この構成により、記録ヘッドのノズル形成面5aに対する密着度合いを向上させて、キャッピング手段における内部空間の密封状態が良好に保持できるようになされている。
【0038】
前記したように、キャップホルダ9の印字領域側には、キャップ部材7に隣接してインク受け凹部8がキャップホルダ9と一体に形成されている。前記インク受け凹部8は、図4および図5に示されたように、その内容積が直方体状に形成されており、平面上における長辺方向の幅は、キャップ部材7の短辺方向の幅にほぼ等しい程度に形成されている。換言すれば、キャップ部材7に隣接する部分のインク受け凹部8の幅は、隣接するキャップ部材7の幅にほぼ等しい程度の寸法となるように構成されている。
【0039】
なお、実施の形態においては、前記した両者の寸法関係がほぼ等しくなるようになされているが、前記したインク受け凹部8の幅は、隣接するキャップ部材7の幅と同等か、またはそれよりも大きく形成されていることが望ましい。そして、図5に示されたように、キャップ部材7に隣接して形成されたインク受け凹部8の開口端8aは、前記キャップ部材7のシール部7bよりも重力方向に低い位置に形成されている。
【0040】
一方、前記インク受け凹部8を構成する下底部8bの一部には、排出孔8cが貫通状態に形成されており、図5に示されたように下底部8bの裏面8dは、キャップホルダ9の下底面9dに対して重力方向において下方に位置するように、すなわち、インク受け凹部8の裏面8dは、キャップホルダ9の下底面9dよりも下方に突出するように形成されている。
【0041】
また、図5に示されたように、キャップ部材7の内底部に形成されたインク排出口7aには吸引ポンプを構成するチューブポンプ31におけるのチュ−ブ31aの一端が接続されている。そして、チューブポンプ31によって吸引されたインク廃液は、廃液タンク32に収納された廃液吸収材33に向かって排出されるように構成されている。
【0042】
以上の構成により、記録ヘッドからインクを吸引排出させるクリーニング操作が実行された場合、前記したように吸引ポンプ31の駆動により発生する負圧によって記録ヘッド5よりインクが吸引排出され、インク廃液はキャッピング手段6内に貯留される。そして、キャリッジ1が印字領域側に若干移動され、これに伴って記録ヘッドのノズル形成面を封止していたキャッピング手段6が下方に移動される。
【0043】
この場合、キャッピング手段を構成するキャップ部材7は、前記したように記録ヘッド5のノズル形成面に対して、先ず印字領域側の端部から離れ、キャップ部材の印字領域側に、より大きな距離をおいたままノズル形成面5aに対して非平行状態で離間するように作用するので、キャップ部材7からインク廃液が溢れ出たとしても、インク廃液はキャップ部材の印字領域側より溢れ出る。そして、実施の形態においてはキャップ部材7に隣接して形成されたインク受け凹部8の開口端8aが、前記キャップ部材上端のシール部7bよりも重力方向に低い位置に形成されており、またキャップ部材に隣接する部分のインク受け凹部8の幅は、隣接するキャップ部材の幅にほぼ等しくなるように形成されているので、キャップ部材から溢れ出たインク廃液は、その殆どがインク受け凹部8に流入する。
【0044】
そして、インク受け凹部8に流入したインク廃液は、インク受け凹部8を構成する下底部8bに貫通状態に形成された排出孔8cを介して重力方向に滴下する。この滴下されたインク廃液は、その下方に配置された廃液吸収材によって吸収されるようになされる。この場合、図5に示されたように、廃液吸収材は吸引ポンプ31によって排出されるインク廃液を受ける廃液タンク32内に配置された廃液吸収材33を利用すると好都合である。
【0045】
なお、前記排出孔8cを通過したインク廃液の一部は、インク受け凹部8における下底部8bの裏面8dに回り込むこともあるが、下底部8bの裏面8dは、キャップホルダ9の下底面9dに対して重力方向において下方に位置するように構成されているので、キャップホルダ9を支持して昇降させる機構部分にインク廃液が回り込むという事態を避けることができる。
【0046】
一方、前記したインク受け凹部8は、記録ヘッドに印字とは関係のない駆動信号を印加してインク滴を空吐出させるフラッシング動作時のインク滴の捕獲機能を持たせることができる。この場合、フラッシング操作を実行するにあたっては、記録ヘッド5のノズル開口からインク滴が選択的に吐出されるように制御される。そして、図5に鎖線で示されたように記録ヘッド5が移動しつつ、インク受け凹部8の直上に位置するノズル開口よりインクの空吐出が順次実行される。したがって、フラッシング操作によって空吐出されたインク滴は、インク受け凹部8において確実に捕獲される。
【0047】
この場合、インク受け凹部8の直上に位置した記録ヘッド5のノズル形成面5aと、インク受け凹部における下底部8bの内面との距離hは、7mm以下となるように形成されていることが望ましい。すなわち、この距離hが7mmを超えると、ノズル開口から空吐出されたインク滴がインク受け凹部8における下底部8bの内面に到達する前に、霧状となって浮遊するインクミストの発生度合いが大きくなり、このインクミストにより周囲を汚染させることになる。このように、前記距離hを7mm以下となるように形成させることで、インクミストの発生度合いを低減できることが、実験の結果において明らかになっている。
【0048】
また、前記したように記録ヘッド5が移動しつつ、インク受け凹部8にフラッシングによるインク滴を空吐出させるように構成したことで、スループットを向上させることが可能となる。また、フラッシング操作によるインク滴をキャッピング手段において受けていた構成に比較すると、キャリッジの移動に伴うキャップピング手段の昇降位置の位置決めを厳しく管理する必要もなくなり、さらにスループッドを向上させることに寄与することができる。
【0049】
なお、前記した実施の形態においては、インク受け凹部を構成する下底部に排出孔8cを貫通状態に形成しているが、この排出孔8cは必ずしも必要ではない。前記排出孔を形成しない場合においては、インク受け凹部内においてインク廃液は自然乾燥することもあり、前記排出孔を形成するか否かについては、この種の記録装置の個々のモデルに応じて決定すればよい。
【0050】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなとおり、本発明にかかるインクジェット式記録装置によると、キャップホルダにおける印字領域側には、キャップ部材に隣接してインク受け凹部が形成された構成とされているので、例えばクリーニング動作後に記録ヘッドのノズル形成面からキャッピング手段が離間された状態で、キャッピング手段内に貯留されたインク廃液がキャッピング手段より溢れ出したとしても、前記インク受け凹部によってインク廃液を効果的に回収することができる。したがって、例えばキャッピング手段を昇降させる機構部をインク廃液によって汚染させることで、正常な動作を阻害させるという問題を回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示した平面図である。
【図2】図1に示すキャッピング手段の構成を示した側面図である。
【図3】図1に示すキャッピング手段によって記録ヘッドをキャッピングした状態を示した側面図である。
【図4】キャッピング手段とこれに一体に形成されたインク受け凹部の構成を示した平面図である。
【図5】図4におけるA−A線から矢印方向に視た状態の断面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
2 ガイドロッド
3 用紙ガイド板
4 記録用紙
5 記録ヘッド
5a ノズル形成面
6 キャッピング手段
7 キャップ部材
7a インク排出口
7b シール部
8 インク受け凹部
8a 開口端
8b 下底部
8c 排出孔
8d 裏面
9 キャップホルダ
9c 開口端面
10 スライダ(昇降機構)
21 ワイピング部材
31 吸引ポンプ
32 廃液タンク
33 廃液吸収材

Claims (7)

  1. 往復移動可能なキャリッジに搭載されて印刷デ−タに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出させることができるキャッピング手段とを具備したインクジェット式記録装置であって、
    前記キャッピング手段には、記録ヘッドのノズル形成面に当接してノズル形成面をシールする軟質性素材により形成されたキャップ部材と、前記キャップ部材を保持するキャップホルダとが具備され、前記キャップホルダにおける印字領域側には、前記キャップ部材に隣接してインク受け凹部が形成されると共に、前記キャッピング手段は、前記記録ヘッドのノズル形成面に対する封止を解除するに際して、キャップ部材の印字領域側が先にノズル形成面から離れるように構成されてなるインクジェット式記録装置。
  2. 前記キャップ部材に隣接して形成されたインク受け凹部の開口端が、前記キャップ部材上端のシール部よりも重力方向に低い位置に形成されてなる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
  3. 前記キャップ部材に隣接する部分のインク受け凹部の幅は、隣接するキャップ部材の幅に等しいか、またはそれ以上の寸法となるように構成された請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
  4. 前記インク受け凹部の下底部には、少なくとも1つの排出孔が貫通状態に形成されてなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
  5. 前記排出孔が貫通状態に形成されたインク受け凹部の裏面が、前記キャップホルダに対して重力方向において下方に位置するように構成した請求項4に記載のインクジェット式記録装置。
  6. フラッシング操作により前記記録ヘッドのノズル開口からインク滴が選択的に吐出されるように構成され、前記記録ヘッドが移動しつつフラッシング操作によるインク滴が前記インク受け凹部内に吐出されるように構成した請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
  7. 前記インク受け凹部の直上に位置したインクジェット式記録ヘッドのノズル形成面と、前記インク受け凹部における下底部内面との距離が、7mm以下となるように構成された請求項6に記載のインクジェット式記録装置。
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