JP3565111B2 - インクジェット式記録装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、印刷デ−タに対応してインク滴を吐出する記録ヘッドを備えたインクジェット式記録装置に関し、特に記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出するキャッピング手段を具備したインクジェット式記録装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット式記録装置は印刷時の騒音が比較的小さく、しかも小さなドットを高い密度で形成できるため、昨今においてはカラー印刷を含めた多くの印刷に使用されている。このようなインクジェット式記録装置は、インクカートリッジからのインクの供給を受けるインクジェット式記録ヘッドと、記録用紙を記録ヘッドに対して相対的に移動させる紙送り手段を備え、記録ヘッドを移動させながら印刷データに基づいて記録用紙にインク滴を吐出させることで記録が行われる。
【0003】
そしてキャリッジ上に例えばブラック、イエロー、シアン、マゼンタのインクの吐出が可能な記録ヘッドを搭載し、ブラックインクによるテキスト印刷ばかりでなく、各カラーインクの吐出割合を変えることにより、フルカラー印刷を可能にしている。
【0004】
前記したインクジェット式記録ヘッドは、圧力発生室で加圧したインクをノズルからインク滴として記録用紙に吐出させて印刷を行う関係上、ノズル開口からの溶媒の蒸発に起因するインク粘度の上昇や、インクの固化、塵埃の付着、さらには気泡の混入などによりノズル開口に目詰まりを発生し、印字不良を起こすという問題を抱えている。
【0005】
このために、この種のインクジェット式記録装置には、非印刷時に記録ヘッドのノズル形成面を封止するためのキャッピング手段を備えている。前記キャッピング手段は、記録ヘッドにおけるノズル開口のインクの乾燥を防止する蓋体として機能するだけでなく、ノズル開口に目詰まりが生じた場合には、キャッピング手段によりノズル形成面を封止し、吸引ポンプからの負圧により、ノズル開口からインクを吸引してノズル開口の目詰まりを解消するインクの吐出能力回復機能をも備えている。
【0006】
記録ヘッドの目詰まり解消のために行う強制的なインクの吸引排出処理は、クリーニング操作と呼ばれ、装置の長時間の休止後に印刷を再開する場合や、ユーザが印刷不良を認識して例えばクリーニングスイッチを操作した場合などに実行され、吸引ポンプによる負圧を加えて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、例えばゴム材料等により形成してなるワイピング部材により、ノズル形成面を払拭操作を行うようになされる。
【0007】
そして、前記キャッピング手段は印刷領域を外れた例えば記録装置の端部(ホームポジション)に配置されており、且つキャリッジのホームポジション側への移動に伴うキャリッジの駆動力によって、記録ヘッドのノズル形成面側にせり上がることができるように構成された昇降機構上に搭載されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来の記録装置に搭載されたキャッピング手段においては、キャッピング手段の下底部にインクを吸引排出させるための排出口と、同じく下底部にキャッピング手段のキャッピング状態において内部空間に大気を導入させる大気導入口を形成したものが提供されている。そして、従来の記録装置においては、クリーニング操作において前記排出口を介して吸引ポンプによる負圧を作用させて記録ヘッドよりキャッピング手段内にインクを吸引排出させた後に、大気導入口に連通する大気開放バルブを開弁させる操作がなされ、大気開放バルブの開弁状態において再び吸引ポンプを駆動させることで、キャッピング手段内のインクを排出口より排出させる制御シーケンスが採用されている。
【0009】
しかしながら、このような制御シーケンスを採用した場合には、キャッピング手段内のインクを排出口より排出させるに際し、大気導入口よりキャッピング手段内に空気が導入されるために、キャッピング手段内に大量の気泡が発生し、この気泡が記録ヘッドのノズル開口に浸入し、ノズル開口に形成されたメニスカスを破壊して、結果として印字不良を発生させるという問題を抱えている。
【0010】
そこで、このような気泡の発生による悪影響を避けるために、大気導入口を廃止し、ノズル形成面からキャッピング手段を若干引き離した状態で、キャッピング手段内のインクを排出させる制御シーケンスを採用したインクジェット式記録装置が本件出願人において提案されている。
【0011】
このような制御を実行することで、前記した気泡の発生による悪影響を避けることができるものの、ノズル形成面からキャッピング手段を若干引き離した状態において、振動等の影響を受けてキャッピング手段内からインクが外部に漏れ出て、特にキャッピング手段のシール部を構成するキャップ部材の外周面にインクが付着して滞留するという問題が発生する。そして、この滞留したインクは記録ヘッドに付着して、時には印字中において印字領域に装填された記録用紙上にボタ落ちして記録用紙を汚染させるという問題に発展する。
【0012】
一方、記録ヘッドよりインクを吸引排出した後にノズル形成面を前記したワイピング部材によって払拭した場合、ノズル形成面より掻き取ったインクを、ワイピング部材の機械的な戻りの反作用によってキャッピング手段側に飛散させるという問題もあり、これにより同様にキャップ部材の外周面にインクが付着して滞留するという問題も有している。
【0013】
特に、従来のようにキャッピング手段のシール部を構成するキャップ部材と、このキャップ部材を保持するキャップホルダとを別々に構成して組み上げたキャッピング手段においては、キャップ部材とキャップホルダとの間に形成された隙間にインクが入り込んで、ある程度インクの重力方向への排出効果が得られる。これにより、前記したように印字中等において記録ヘッドより記録用紙上にインクがボタ落ちして記録用紙を汚染させるという問題は発生し難い状況であった。
【0014】
しかしながら、キャップ部材とキャップホルダとの間に隙間が発生しない一体成型品においては、インクの重力方向への逃げが妨げられ、これによりインクがキャップ部材の外周面部分に滞留するという問題が発生し、前記したような作用により記録用紙を汚染させるという問題が顕著に発生することが実験的に確かめられている。
【0015】
本発明は前記したような観点に基づいてなされたものであり、キャップ部材の外周面に滞留しようとするインクを、積極的に重力方向に逃がすように構成させることで、記録ヘッドに付着するインク量を低減せしめ、前記したように記録用紙を汚染させることのないインクジェット式記録装置を提供することを目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
前記した目的を達成するためになされた本発明にかかるインクジェット式記録装置は、印刷デ−タに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出するキャッピング手段とを具備したインクジェット式記録装置であって、前記キャッピング手段には、記録ヘッドのノズル形成面に当接してノズル形成面をシールする軟質性素材により形成されたキャップ部材と、前記キャップ部材を保持する硬質性素材により形成されたキャップホルダとが具備され、 前記キャップホルダの長手方向の両側壁部には、キャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に当接した状態において、キャップ部材をノズル形成面側に付勢するバネ部材の一端を受けるバネ受け部がそれぞれ形成され、前記バネ受け部にはキャップ部材の外周面に滞留したインクを重力方向に逃がす開口部が形成されており、前記キャップ部材は、前記キャップホルダの内側面において、キャップホルダの開口端面に対して突出して形成されると共に、前記キャップホルダの開口端面からのキャップ部材の突出高さYと、キャップホルダの開口端面に接するキャップ部材の立上り部から、前記開口部までの水平方向の幅Xとの寸法関係が、X<Yとなるように構成されている。
【0017】
この場合、好ましくは前記キャップホルダの開口端面に突出して形成されたキャップ部材は、突出部の断面形状がほぼ三角形状に構成される。
【0018】
この場合、前記バネ受け部に形成される開口部が、キャップホルダの側壁部に沿うようにして複数個隣接して配置される場合もあり、好ましくはバネ受け部に形成される前記開口部が、開口部内面に隅角部を形成した多角形状になされる。そして、前記した構成は、バネ受け部の上面がキャップホルダの開口端面とほぼ面一に形成された構成において、好ましい効果を発揮することができる。
【0019】
さらに、前記キャップ部材はキャップホルダに対してインサート成形あるいは二色成形によって一体に形成された構成において好ましい効果を得ることができ、この場合、前記キャップ部材を構成する軟質性素材としてエラストマーあるいはゴム素材が用いられる。
【0020】
以上の構成によるインクジェット式記録装置によると、キャップホルダの内側面に形成されるキャップ部材は、キャップホルダの開口端面に対して突出して形成され、その突出高さがキャップ部材の外周面に位置するキャップホルダの開口端面の幅よりも大きくなるように構成されており、したがってキャップ部材の外周面に滞留しようとするインクを重力方向に積極的に逃がすように作用する。
【0021】
これにより、キャップ部材の外周面に滞留するインク量を常に低減させることができ、キャップ部材の外周面に滞留するインクが記録ヘッドに付着して記録用紙を汚染させるという問題を最小限にとどめることが可能となる。
【0022】
また、キャップホルダの側壁部に形成されたバネ受け部には、キャップ部材に近接して開口部を配置したことにより、この開口部を介してインクを重力方向に逃がすことができ、これによりバネ受け部の上面に滞留しようとするインク量を効果的に低減させることができる。
【0023】
この場合、前記開口部をキャップ部材の外周面に沿って複数個隣接して配置させることにより、平板状のバネ受け部の上面に滞留しようとするインクを、いずれかの開口部を介して重力方向に排出させることができ、滞留しやすいバネ受け部の上面におけるインク量の低減効果に寄与することができる。
【0024】
さらに前記開口部が、開口部内面に隅角部を形成する例えば四角形などの多角形状に構成することにより、開口部内面の隅角部における毛細管作用により、インクの誘導および排除作用を促進させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるインクジット式記録装置について、図に示す実施の形態に基づいて説明する。図1乃至図3は、本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示したものである。なお、図1は装置の上面から視た状態を示し、また図2および図3は側面から視た状態で示しており、それぞれ非キャッピング状態およびキャッピング状態を示している。
【0026】
図2および図3に示した符号1はキャリッジであり、このキャリッジ1はガイドロッド2に案内されて用紙ガイド板3に対向して平行に移動するように構成されている。そしてキャリッジ1は、図には示されていないがキャリッジモ−タにより往復動されるタイミングベルトの一部に結合されて、ガイドロッド2に沿って往復移動されるように構成されている。
【0027】
前記キャリッジ1には、記録ヘッド5が用紙ガイド板3の上面に配置された記録用紙4に対向するように搭載されており、記録ヘッド5に対してインクが導入され、印刷デ−タに対応して用紙ガイド板3上の記録用紙4にインク滴を吐出して印字することができるように構成されている。
【0028】
前記記録ヘッド5を封止するキャッピング手段6は、記録装置の端部における非印字領域(ホームポジション)に配置されており、記録ヘッド5のノズル形成面に密封空間をもって封止できるサイズのキャップ部材7を備え、非印字時に記録ヘッド5のノズル形成面を封止してノズル開口のインクの乾燥を防止する機能と、クリーニング操作時に図示せぬ吸引ポンプからの負圧を受けて記録ヘッド5からインクを強制的に排出させる機能とを備えている。
【0029】
前記キャッピング手段6に配置されたキャップ部材7の内底部には、図1に示すようにインク排出口7aが形成され、このインク排出口7aにはチュ−ブ(図示せず)の一端が接続され、このチュ−ブの他端は吸引ポンプに接続されている。これにより、非印字時にはキャップ部材7によって記録ヘッド5のノズル形成面を封止し、またクリ−ニング指令を受けた場合には、吸引ポンプによる負圧がキャッピング手段の内部空間に印加され、記録ヘッド5からインクを強制的に排出させることができる。なお、前記キャップ部材7内にはインク吸収シ−ト8が収容され、吸引したインクをこれにより保持するように構成されている。
【0030】
また、キャップ部材7は、後で詳述するように方形状のキャップホルダ9に対して一体成形されており、このキャップホルダ9の長手方向の両側壁には、それぞれ平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。そして、キャップホルダ9は昇降機構を構成するスライダ10上に搭載され、スライダ10とバネ受け部9aとの間に介装された一対の圧縮バネ11によって、記録ヘッド5側に付勢された状態で取り付けられている。
【0031】
なお、キャップホルダ9の一端部中央および他端部の両側部には、それぞれ係合部9bが形成されており、これら3つの係合部9bは、スライダ10に形成されたそれぞれの係止部材10aによって3点で係止されることにより、キャップホルダ9は上方向、すなわち記録ヘッド5側への移動が規制されて、スライダ10上に搭載されている。
【0032】
また、前記スライダ10の下底部には一対の長穴12がほぼ水平方向に形成されており、この各長穴12内にはフレ−ム13に対して回動可能に取り付けられたア−ム14の自由端側に配置された一対の水平軸15が、それぞれ移動可能となるように収容されている。これにより、スライダ10はア−ム14を介してフレ−ム13に対して円弧状軌跡をもって立ち上がることができる。
【0033】
また、前記スライダ10の非印字領域側の端部両側には、それぞれガイド片10bが形成されていて、この一対のガイド片10bはフレ−ム13に形成された一対の案内溝16によって支持されるように構成されている。この案内溝16は一端部に形成された低所部16aと、他端部に形成された水平な高所部16bと、さらにこれらを接続する傾斜部16cとにより構成されており、これら3つの領域が連通して形成されている。
【0034】
さらに、図1に示すように一方のガイド片10bには、一端がフレ−ム13に固定された引っ張りバネ17の他端が固定されていて、この引っ張りバネ17の作用により、スライダ10は印字領域方向、かつ記録ヘッド5から離間する方向、すなわちこの実施の形態においては下方に位置するように付勢されている。
【0035】
そして、図2に示すようにキャリッジ1がキャッピング手段6の直上に移動した際、キャリッジ1に配置された係合体1aがスライダ10に直立するように形成された係合部10cに当接することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はア−ム14を介して立ち上がり、これによりキャップホルダ9に一体に形成されたキャップ部材7が、キャリッジ1に配置された記録ヘッド5のノズル形成面を封止することができるように構成されている。
【0036】
また、キャリッジ1が印字領域側に移動した場合には、スライダ10に配置された係合部10cに対するキャリッジ1側の係合体1aの当接が解かれ、スライダ10はバネ17の引張力によって図2に示した状態になされ、これにより、キャップ部材7による記録ヘッド5のノズル形成面の封止が解除される。
【0037】
なお図2に示したように、前記キャップ部材7におけるシール面、すなわち記録ヘッド5のノズル形成面に当接する上端面は、記録ヘッド5のノズル形成面に対して非平行状態となるように構成されている。すなわち、キャップ部材7のシール面はホームポジション側(図2における右側)端部に対して印字領域側に僅かに下降するように傾斜状態になされている。
【0038】
これは、スライダ10に形成された長穴12内の水平軸15の位置と、フレ−ム13に形成された一連の案内溝16内を摺動するガイド片10bの配置位置との関係により構成されている。
【0039】
そして、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面を封止する状態においては、先ずホームポジション側よりノズル形成面に当接し、スライダ10の上昇にしたがって圧縮バネ11の縮小作用にしたがって、記録ヘッド5のノズル形成面の全面を封止するように作用する。また、キャップ部材7は、記録ヘッド5のノズル形成面の封止を解く場合においては、記録ヘッド5のノズル形成面に対して、先ず印字領域側の端部から離れ、ノズル形成面に対して非平行状態で離間するように作用する。
【0040】
一方、図1または図3に示すようにキャッピング手段6に隣接する印字領域側には、キャリッジ1の移動に伴ってキャリッジ1に搭載された前記記録ヘッド5のノズル形成面をワイピングする、例えばゴム性のワイピング部材21を備えたクリ−ナ保持部材20が配置されている。このクリ−ナ保持部材20は水平方向に移動され、ワイピング部材21を記録ヘッド5の移動経路上のワイピング位置に対して進入または退避できるように構成されている。
【0041】
したがって、クリ−ニング操作時において、前記記録ヘッド5はこのワイピング部材21により、そのインク吸引前においてノズル形成面に付着している塵埃や紙粉などが除去され、またインク吸引後においてノズル形成面に付着しているインクの払拭がなされる。
【0042】
この場合、実施の形態においては、ワイピング部材21を保持する保持部材20の移動と、前記キャッピング手段の内部空間を負圧に吸引するポンプとは、用紙ガイド板3上における記録用紙4を搬送する図示せぬ紙送りモータの駆動力を利用するようになされている。そして吸引ポンプの駆動に伴ってワイピング部材21は記録ヘッドの移動軌跡上に進出するよう構成されている。
【0043】
以上の構成において、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1が非印字領域側に移動すると、図2に示すように、キャリッジ1に配置された係合体1aが、スライダ10に形成された係合部10cに当接する。そして、なおもキャリッジ1がホームポジション側に移動することで、図3に示すようにバネ17の引張力に抗しながら、スライダ10はア−ム14を介して立ち上がる。一方、スライダ10に形成されたガイド片10bは、案内溝16を構成する低所部16aから傾斜部16cに、さらに水平な高所部16bへと移動し、これにより、キャップホルダ9に一体成形されたキャップ部材7がキャリッジ1に配置された記録ヘッド5を封止する。
【0044】
このようにして、キャップ部材7によるノズル形成面の封止が完了した段階で、キャップ部材7は大気との連通が断たれて気密状態となり、ノズル開口からのインクの蒸発を抑制して、記録ヘッドの目詰まりを防止するように作用する。
【0045】
また、キャリッジモータの駆動によりキャリッジ1が印字領域側に移動すると、キャリッジ1に配置された係合体1aは、スライダ10に形成された係合部10cから離れる。したがって前記バネ17の引張力によって、スライダ10はア−ム14を介して、またスライダ10に形成されたガイド片10bが低所部16a側に移動することにより降下する。これによりキャップ部材7による記録ヘッド5の封止状態が解かれる。
【0046】
図4および図5は前記したキャッピング手段を構成するキャップホルダとキャップ部材の詳細な構成を示したものである。なお、図4はキャップホルダとキャップ部材のアッセンブリを上面から視た状態の平面図であり、また図5は図4におけるA−A線から矢印方向に視た状態の断面図である。また図1乃至図3において既に説明した各部は、同一符号で示している。
【0047】
前記したように、キャップ部材7は方形状に形成されたキャップホルダ9の内側部に、例えばインサート成形あるいは二色成形によって一体に成形されており、キャップホルダ9は例えば硬質合成樹脂により構成され、またキャップ部材7は軟質性素材、例えばエラストマーあるいはゴムにより構成されている。
【0048】
両者をインサート成形により一体成形する場合においては、まず、キャップホルダ9が所定の金型内において成形され、こうして成形されたキャップホルダ9は、第2の金型内に装填され、さらにキャップ部材7を構成する軟質性素材がインサート成形されることで、両者が一体に成形される。
【0049】
また、両者を二色成形によって一体成形する場合においては、まず、キャップホルダ9が所定の金型内において一次成形され、一次成型品であるキャップホルダ9と二次成形キャビティとにより形成される空間内にキャップ部材7を構成する軟質性素材が充填されることにより、両者が一体に成形される。
【0050】
図5に示されたように、一次成形されるキャップホルダ9の内側面において、二次成形されるキャップ部材7が、キャップホルダ9の開口端面9cに対して突出して形成されている。そして、図6に要部を拡大して示したように、キャップ部材7における突出部7bの断面形状はほぼ三角形状を構成しており、その頂部の端面が記録ヘッドのノズル形成面に当接するシール部を構成している。この構成により、記録ヘッドのノズル形成面に当接するシール部における密着度合いを向上させて、キャッピング手段における内部空間の密封状態が良好に保持できるようになされている。
【0051】
さらに、前記キャップホルダ9の開口端面9cからのキャップ部材7の突出高さYと、キャップホルダの開口端面9cに接するキャップ部材7の立上り部7cから、その外周面に位置するキャップホルダの開口縁部9dに至る水平方向の幅Xとの寸法関係が、X<Yとなるように構成されている。
【0052】
これにより、図5にその様子を示したように、キャップ部材7の立上り外周壁に滞留しようとするインクIKは重力によってキャップホルダの開口縁部9dを超えてキャップホルダ9の側壁部9eを伝わって流れ落ち、したがってキャップ部材7の立上り外周壁に滞留するインクIKの量を可及的に低減させることができる。それ故、キャップ部材7の立上り外周壁に滞留したインクIKが記録ヘッドに付着して、記録用紙上にボタ落ちすることで記録用紙を汚染させるという問題を効果的に回避することが可能となる。
【0053】
また、前記したようにキャップホルダの長手方向の側壁部には、平板状のバネ受け部9aがそれぞれ水平方向に形成されている。このバネ受け部9aは実施の形態においては、その上面がキャップホルダの前記開口端面9cとほぼ面一に形成されており、このバネ受け部9aにはキャップ部材の外周面に滞留したインクを重力方向に逃がすための開口部9fが形成されている。
【0054】
そして図7に要部を拡大して示したように、開口部9fはキャップホルダ9の側壁部9eに沿うようにしてそれぞれ2つ隣接して配置されている。このような構成によると、バネ受け部9aの上面に滞留しようとするインクIKは、例えば図7に模式的に示したように、隣接する2つの開口部9fの間において、2つの開口部9fの距離と、各開口部9fとキャップ部材7の立上がり部7cの距離との関係において形成されるIKとして示した位置にインク溜まりが発生するものの、その面積は僅かなものとなる。
【0055】
また、同様にバネ受け部9aの延出方向の端部と開口部9fの距離と、開口部9fとキャップ部材7の立上がり部7cの距離との関係において形成されるIKとして示した位置にインク溜まりが発生するものの、その面積は僅かなものとなる。この結果、平板状のバネ受け部9aの上面に滞留しようとするインクを、開口部9fを介して効果的に排出させることができ、滞留しやすいバネ受け部の上面におけるインク量の低減効果に寄与することができる。
【0056】
この場合、前記開口部9fは開口部内面に隅角部を形成する多角形状になされていることが好ましく、図に示した例においては四角形状になされている。すなわち四角形状になされた開口部内面の直交する隅角部においては、ここにインクが到来した場合に毛細管作用により、インクを隅角部に集合させる働きが生じ、集合したインクは重力にしたがってバネ受け部9aの裏面側に誘導される。
【0057】
したがって、平板状のバネ受け部9aが形成されている構成であっても、バネ受け部9aの上面に滞留しようとするインク量を大幅に低減させることができ、滞留したインクが記録ヘッドに付着して、記録用紙を汚染させるという問題を回避することが可能となる。
【0058】
なお、図に示した実施の形態においては、バネ受け部9aに2つの開口部9fが形成されているが、この数はバネ受け部9aの長手方向に形成される幅に応じて適宜選定される。また開口部9fの形状についても四角形状に限らず、他の多角形状を選定することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上の説明で明らかな通り、本発明にかかるインクジェット式記録装置によると、キャップホルダの長手方向の両側壁部には、キャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に当接した状態において、キャップ部材をノズル形成面側に付勢するバネ部材の一端を受けるバネ受け部がそれぞれ形成され、バネ受け部にはキャップ部材の外周面に滞留したインクを重力方向に逃がす開口部が形成されており、キャップ部材は、キャップホルダの内側面において、キャップホルダの開口端面に対して突出して形成されると共に、キャップホルダの開口端面からのキャップ部材の突出高さYと、キャップホルダの開口端面に接するキャップ部材の立上り部から、開口部までの水平方向の幅Xとの寸法関係が、X<Yとなるように構成されていることにより、インクが滞留しやすいキャップ部材の立上り部やバネ受け部において、キャップ部材に近接して配置させた開口部から、インクを重力方向に逃がすことができ、滞留するインクが記録ヘッドに付着して記録用紙を汚染させるという問題を最小限にとどめることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明が適用されたインクジェット式記録装置における主にキャッピング手段の構成を示した平面図である。
【図2】図1に示すキャッピング手段の構成を示した側面図である。
【図3】図1に示すキャッピング手段によって記録ヘッドをキャッピングした状態を示した側面図である。
【図4】キャッピング手段を構成するキャップホルダとキャップ部材の構成を示した平面図である。
【図5】図4に示すキャッピング手段をA−A線から矢印方向に視た状態の断面図である。
【図6】図5に示すキャッピング手段の要部を拡大して示した断面図である。
【図7】図4に示すキャッピング手段の要部を拡大して示した平面図である。
【符号の説明】
1 キャリッジ
2 ガイドロッド
3 用紙ガイド板
4 記録用紙
5 記録ヘッド
6 キャッピング手段
7 キャップ部材
7a インク排出口
7b 突出部
7c 立上り部
9 キャップホルダ
9a バネ受け部
9c 開口端面
9d 開口縁部
9e 側壁部
9f 開口部
10 スライダ(昇降機構)
11 圧縮バネ
13 フレ−ム
21 ワイピング部材
Claims (7)
- 印刷デ−タに対応してインク滴を吐出するインクジェット式記録ヘッドと、前記記録ヘッドのノズル形成面を封止すると共に、吸引ポンプからの負圧を受けて前記記録ヘッドからインクを吸引排出するキャッピング手段とを具備したインクジェット式記録装置であって、
前記キャッピング手段には、記録ヘッドのノズル形成面に当接してノズル形成面をシールする軟質性素材により形成されたキャップ部材と、前記キャップ部材を保持する硬質性素材により形成されたキャップホルダとが具備され、
前記キャップホルダの長手方向の両側壁部には、キャップ部材が記録ヘッドのノズル形成面に当接した状態において、キャップ部材をノズル形成面側に付勢するバネ部材の一端を受けるバネ受け部がそれぞれ形成され、前記バネ受け部にはキャップ部材の外周面に滞留したインクを重力方向に逃がす開口部が形成されており、
前記キャップ部材は、前記キャップホルダの内側面において、キャップホルダの開口端面に対して突出して形成されると共に、前記キャップホルダの開口端面からのキャップ部材の突出高さYと、キャップホルダの開口端面に接するキャップ部材の立上り部から、前記開口部までの水平方向の幅Xとの寸法関係が、X<Yとなるように構成されていることを特徴とするインクジェット式記録装置。 - 前記キャップホルダの開口端面に対して突出して形成されたキャップ部材は、突出部の断面形状がほぼ三角形状を構成してなる請求項1に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記バネ受け部に形成される開口部が、キャップホルダの側壁部に沿うようにして複数個隣接して配置されてなる請求項1または請求項2に記載のインクジェット式記録装置。
- 前記バネ受け部に形成される開口部が、開口部内面に隅角部を形成する多角形状になされた請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
- 前記バネ受け部の上面が、キャップホルダの前記開口端面とほぼ面一に形成されてなる請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
- 前記キャップ部材は、キャップホルダに対してインサート成形あるいは二色成形によって一体に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
- 前記キャップ部材を構成する軟質性素材がエラストマーあるいはゴムであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載のインクジェット式記録装置。
Priority Applications (3)
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