JP3843344B2 - ナット - Google Patents

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Description

【0001】
【発明が属する技術分野】
本発明は、分割されたナット片を外周から締付けることによりボルトに螺合させるナットの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のナットは一般に螺合ボルトに締付けるので、長いボルトでは作業に手間取り、また一旦締めたナットも振動などにより緩むことは避けられない。これを改善するものとしてナットを半円筒状の片に分割して嵌め殺しにより締付けるものが考えられている。しかしながら構造が複雑であり、また締付けの調整が困難で、一旦緩むと増し締めが出来ない欠点があった。
【0003】
これを改良したものとして、本願発明者は既に、上記半筒状のナット片の外周を結束部材で締付けるタイプのナットを提案したが、このものは結束部材を一対のナット片の外周に装着するのに手間がかかり、殊に小さいサイズのナットの場合は作業が一層困難になるものであった。
【0004】
また結束部材を締付けても、結束部材の経年変化により緩むという欠点があった。これはサイズが大きい場合に顕著であった。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする問題点は、一対のナット片を結束部材で締付けるタイプのナットに於いて、作業性の向上を図るものである。
【0006】
また更に本発明が解決しようとする別途問題点は、結束部材の経年変化による緩みを防止する点である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ボルト1の外周にほぼ半筒形の一対のナット片2、3を被せて外周から締付けるタイプのナットにおいて、両ナット片2、3の螺子溝部21、31の直背後において外側面に周方向に延びる凹溝22、32を設け、この凹溝22、32内に、一対のナット片2、3の外周の一方から他方に渡り、略U字状の結束部材4を、この結束部材4が両ナット片2、3の外周面より突出しないように掛け渡して仮止めしておき、他方の側端部を結束部材4により締付けるようにしたことを最も主要な特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】
図1に示すナットは、金属材料から形成された一対の分割されたナット片2、3と、金属線材からなる結束部材4とから構成され、これらナット片2、3の分割面中央にはそれぞれ半円形状の螺子溝部21、31が形成され、両ナット片2、3の分割面同士を合わせることにより、その軸心部に螺子孔を有する六角ナットとして機能するようにしたものである。
【0009】
そして図に示す実施形態では、両ナット片2、3の外側面に周方向に延びる凹溝22、32を設け、この凹溝22、32内に、結束部材4の長さ方向中間部を係合させる。そして両凹溝22、32には、それぞれの一部の開口縁に膨出部23、33を形成して狭くするなどして、この両凹溝22、32に渡って掛け渡した結束部材4が膨出部23、33に引っかかることにより、両ナット片2、3が分離しないように、且つボルト1の周方向には摺動自在な仮止め状態で組み付けられている。膨出部23、33は、両ナット片2、3の素材が樹脂であれば、成形時に設けることができ、金属の場合は成形時または成形後の処理に任意の手段で設けることができる。
【0010】
また図に示す実施形態では、両ナット片2、3における分割面20、30の一端部を斜めに切削して、両ナット片2、3をボルト1の外周に接合した際に、両ナット片2、3間に、結束部材4の切断用スペース5が画成されるようにしている。ここで両ナット片2、3で形成される雌螺子形状は螺合するボルト1の雄螺子形状に比して実質的に同サイズか若しくはやや小さく形成する。また両ナット片2、3で形成される雌螺子形状の周方向の長さはボルト1の雄螺子形状の周方向の長さに比して実質的に同サイズか若しくはやや小さく形成する。こうして両ナット片2、3による締付けが強固に行える。即ち、ボルトに対する両ナット片2、3による締付けは、ボルト1の軸と平行な方向の締付けではなく、ボルト1の軸方向に対して垂直な方向の力により締付けられるものであって、両ナット片2、3により形成される雌螺子がボルト1の雄螺子形状と実質的に同一サイズになるまで縮小し、遊びがなくなり、雌雄螺子が全面接触することになり、いわば錆付いて密着した時のように強固に結合して緩まなくなるのである。
【0011】
以上の構成からなるナットを、例えば仮設部材を固定すべく、ボルト1の螺子部11に装着するには、両ナット片2、3をボルト1における螺子部11の締付け所定位置付近外周にこの螺子部11を挟むように係合させる。
【0012】
続いて、ペンチなどの工具により、図5に示すように、結束部材4の両端部をねじ曲げて、結束部材4を結束すると、両ナット片2、3が結束部材4を介して一体となって、六角ナットとして機能するのである。この場合、最終締付けの前にスパナやレンチ等の締め具で所定位置まで締めこみ、然る後に結束部材4の最終締付けを行えばよい。
【0013】
ここで、従来のナットはボルトに螺合するために必然的に遊びの隙間が不可欠になるが、本発明のナットの場合では実質的にボルトの雄螺子形状に遊びなく合致する形状の雌螺子形状を形成しておくことができて、結束部材4の最終締結後の緩みは極めて少なくなるのである。
ここで、螺子の波形は通常の三角波の他、四角波、丸波等形状を問わずいずれでも適用できる。
【0014】
尚、結束部材4は凹溝22、32内に、この結束部材4が両ナット2、3の外周面より突出しないように掛け渡して係合しているので、結束部材4が実質的にナットの外形を損なうことがなく、単独のナットと同様にスパナなどの工具によって簡単且つ容易に回転させることが出来る。
【0015】
一方、仮設部材の解体時などにおいて、ナットをボルト1から外したい場合には、ニツバーなどの工具の刃先で切断用スペース5内に介在する結束部材4を切断すれば、両ナット片2、3が分離して、ボルト1の螺子部11より即座に外すことが出来るのである。
【0016】
以上の実施形態では、ナット片2、3を金属材料から形成したが、これに限定されるものではなく、例えば合成樹脂材料から形成してもよい。
【0017】
また以上の実施形態では、結束部材4を金属線材で構成したが、これに限定されるものではなく、例えば金属帶材、合成樹脂製の線材やバンド部材から構成してもよい。
【0018】
図6に示す結束部材4は、帯状部材で形成され、帯状の結束部材4を凹溝22、32内に、結束部材4の長さ方向中間部を係合させると共に、両凹溝22、32のそれぞれの一部の開口縁に膨出部23、33を形成して部分的に狭くするなどして、この両凹溝22、32に渡って係合した結束部材4で両ナット片2、3を分離しないように仮止め状態で組み付けている。この仮止め状態では、上記の実施例の場合も同様であるが、結束部材4はボルト1の周方向には摺動自在であって、結束部材4の締め付けには支障がない程度の遊嵌状態で、両ナット片2、3が分離しない程度になっている。
【0019】
また図6は上記の帯状の結束部材4を二重構造にしたもので、袋状の端部4A、4B間を締付けるようにした。この袋状の端部4A、4Bには筒状の補強材7A、7B装着することが出来る。そしてこの端部4A、4Bを別途線材や帯材で形成された補助結束部材6で締付けることが出来る。
【0025】
尚、以上の実施形態では、両ナット片2、3を接合した際に六角ナット1として機能するように構成したが、これに限定されるものではなく、例えば三角や四角、五角ナットとして機能するように構成してもよいし、あるいはその外周が円形や楕円のナットとして機能するように構成してもよい。
【0026】
【発明の効果】
本発明にあっては、ボルト1の外周にほぼ半筒形の一対のナット片2、3を被せて外周から締付けるタイプのナットにおいて、両ナット片2、3の螺子溝部21、31の直背後において外側面に周方向に延びる凹溝22、32を設け、この凹溝22、32に渡って結束部材4を掛け渡して締め付けるものであるから、締め付けは、ナットの螺子溝部をボルトの雄螺子部にその軸に対して垂直に締め付けるものであって、雌雄ねじの山と谷を実質的に全面が接触して締め付けられることになり、強い締結を得ることが出来る。
【0027】
また、この凹溝22、32内に、一対のナット片2、3の外周の一方から他方に渡り、略U字状の結束部材4を掛け渡して仮止めしているから、外形は似ているが互いに同じではないナット片2、3を組み合わせて使用するものであって、正確に組み合わせる必要があるが、予め正確にペアリングしておけるものであって、作業の精度が向上する上、いわばボタンの掛け違いのような組み合わせ違いによる外見を損なうことがない利点がある
【0028】
しかもこの結束部材4が両ナット片2、3の外周面より突出しないように掛け渡して仮止めしておきし、他方の側端部を結束部材4により締付けるようにしてあるから、結束部材4はナット2、3の外周面に突出することがなく、最終締結段階での増締め等を通常のナットと同様にその外周にレンチなどの工具を利かせて締め付けることが出来て、結束部材の存在により作業性を損なうことがないのである。
【0029】
尚、結束部材4を帯状としておけば、ナット片2、3への締付けが面状となり、線材によるものに比べて局所的な締付けによる部分的な変形が防止できて、均等な締付けが出来、その結果、ナット片2、3の局所的な締付け力集中が避けられ、締め着けが確実に行えると共に部分変形による経年変化が低減する利点がある。
この場合も、勿論、結束部材4はナット片2、3の外周面に突出しないから、最終締結段階での増締め等を通常のナットと同様にその外周にレンチなどの工具を利かせて締め付けることが出来て、結束部材の存在により作業性を損なうことがないのである。
【0030】
また、凹溝22、32に、ナット片2、3の外周に突出しないように膨出部23、33を形成し、結束部材4をこの膨出部23、33にて係止しておけば、両ナット片2、3の仮止めが確実になって、作業中のナット片の脱落などが防止でき、かつ、結束部材4は膨出部23、33に係止されているだけであるから、作業中摺動可能であって、作業性を低下させることもない。しかも上記と同様、ナットの外形を保つので、通常のナット締め付け工具を使える利点を保持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例の平面図。
【図2】 同、側面図。
【図3】 同、ナット片の正面図。
【図4】 同、斜視図。
【図5】 本発明ナットをボルトに装着した状態を示す斜視図。
【図6】 本発明の他の実施例の平面図。
【符号の説明】
1 ボルト
2 ナット片
2A 接合縁
2B 接合縁
3 ナット片
3A 接合縁
3B 接合縁
4 結束部材
4A 端部
4B 端部
21 螺子溝部
22凹溝
23 膨出部
31 螺子溝部
32 凹溝
33 膨出部
6 補助結束部材
66 ボルト
7 補強材

Claims (1)

  1. ボルト1の外周にほぼ半筒形の一対のナット片2、3を被せて外周から締付けるタイプのナットにおいて、両ナット片2、3で形成される雌螺子形状を螺合するボルト1の雄螺子形状に比して実質的に同サイズか若しくはやや小さく形成し、両ナット片2、3の螺子溝部21、31の直背後において外側面に周方向に延びる凹溝22、32を設け、この凹溝22、32内に、一対のナット片2、3の外周の一方から他方に渡り、略U字状の結束部材4を、この結束部材4が両ナット片2、3の外周面より突出しないように掛け渡して仮止めし、他方の側端部を結束部材4により締付けるようにしたことを特徴とするナット。
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