JP3842093B2 - 撮像装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカメラなどにおいて、手振れ補正や光軸合わせのために鏡胴に対して揺動可能に配置された撮像素子を有する撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
撮像素子による空間的サンプリングの前に被写体像の高周波成分を制限するようにした撮像装置が特開平9−116910号公報に開示されている。
【0003】
この撮像装置は、撮像装置の露光期間中に撮像素子と撮像素子に結像される被写体との相対位置を変化させることにより、2次元空間周波数特性を得、又その特性を変化させて、折り返し歪みを低減してモアレを低減させるために、撮像素子を結像手段に対して相対的に位置変化できるようにしたものであり、同公報の図1に撮像素子を位置変化させるための駆動機構が開示されている。
【0004】
この駆動機構はL字型の保持部材によって囲まれた空間に撮像素子を配置し、X方向に揺動することができるように、保持部材の一辺と撮像素子の一辺を圧電素子により連結する。そして、このように撮像素子と連結された保持部材自体をX方向と直交するY方向に揺動するために、保持部材の他辺と土台との間を圧電素子で連結する。そして、各圧電素子にそれぞれ三角関数で表される波形の電圧を印加することにより、各圧電素子が伸縮してそれぞれの移動が重畳し、撮像素子が円形又は楕円形に揺動する。
【0005】
しかし、このように撮像素子と圧電素子を直接連結させる駆動機構では、撮像素子の移動範囲はきわめて狭く、たとえば、手振れ補正のために光軸のずれを補正するように、撮像素子を大きく移動させるための機構として用いることができない。そして、そのように撮像素子の移動幅を大きく取るためには、駆動機構も大型化せざるを得ず、結果として、撮像装置自体が大型化するという問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明が解決しようとする技術的課題は、撮像素子が移動可能に配置されている小型の撮像装置を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および作用・効果】
本発明は、上記技術的課題を解決するために、以下の構成の撮像装置を提供する。
【0008】
撮像装置は、撮像素子及び該撮像素子を撮像面を鏡胴側に向けて搭載している基板が、光軸に垂直な面内で移動可能に、鏡胴の一端に配置されたものである。そして、前記撮像素子及び前記基板を移動させるための駆動手段が、該撮像素子に関して該撮像素子の光軸に垂直方向の周囲であって、かつ前記基板と前記鏡胴の端部により形成される空間に搭載されている。
【0009】
上記構成において、撮像素子は、撮像面を鏡胴側に向くように基板に固定されており、撮像素子と基板とが一体的に、鏡胴の一端に入射光が撮像素子の撮像面上で結像するように配置される。撮像素子及び基板を移動させるための駆動手段は、該撮像素子に関して撮像素子の光軸に垂直方向の周囲で、かつ基板と鏡胴の端部により形成される空間に搭載される。
【0010】
撮像素子を用いた撮像装置に用いられる鏡胴は、高画素の撮像素子になればなるほど画素間のピッチが小さくなってくるため、鏡胴に求められる性能が高くなる。このため、面積当たりの光学性能をよくするために、レンズに大径のものを用いる必要があり、鏡胴径が大きくなる傾向がある。また、手振れ補正が必要となる標準画角から望遠のレンズは、とりわけ鏡胴径が大きくなる傾向が大きい。したがって、撮像素子の周囲の領域が大きくなり、この空間に撮像素子を駆動させるための駆動手段を搭載したものである。そして、このように駆動手段を配置することにより、撮像素子を搭載する基板は、撮像素子と駆動手段を覆うような大きさのものを用いることができ、撮像素子からの出力信号の処理回路など撮像素子以外の他の素子を分割して配置させることもできる。
【0011】
上記構成によれば、撮像素子の周囲の空間を有効に利用することができ、撮像装置を小型に構成することができる。
【0012】
本発明の撮像装置は、具体的には以下のように種々の態様で構成することができる。
【0013】
好ましくは、前記駆動手段は、第1の方向に延在する第1アクチュエータを保持し、前記鏡胴に固着するベース板と、前記第1アクチュエータと移動可能に係合し前記ベース板に対して前記第1の方向に移動する第1スライダと、前記第1スライダと移動可能に係合しかつ前記第1の方向に対して直交する第2の方向に延在する第2アクチュエータを保持し、前記第2の方向に移動する第2スライダとを備え、前記撮像素子は前記第2スライダに固定される。
【0014】
また、好ましくは、前記駆動手段は、第1の方向に延在する第1アクチュエータを保持し、前記鏡胴に固着するベース板と、前記第1アクチュエータと移動可能に係合し前記ベース板に対して前記第1の方向に移動し、かつ前記第1の方向に対して直行する第2の方向に延在する第2アクチュエータを保持する第1スライダと、前記第2アクチュエータと移動可能に係合し、前記第2の方向に移動する第2スライダを備え、前記撮像素子は前記第2スライダに固定される。
【0015】
上記各構成おいて、第2スライダを係合する第1スライダは、ベース板に対して第1の方向へ移動可能に係合され、また、第2スライダは撮像素子を固定し、第1スライダに対して第2の方向へ移動する。すなわち、第1の方向及び第2の方向それぞれに動く第1及び第2スライダの組み合わせによって、2次元的に撮像素子を移動させることができる駆動機構をコンパクトにかつ簡単に構成することができる。また、撮像素子の移動は、これを固定する少なくとも第2スライダの移動によってなされるため、撮像素子を搭載する基盤の大きさは少なくとも第2スライダよりも広くすることができる。
【0016】
上記各構成において前記ベース板、第1スライダ、第2スライダはそれぞれ環状形状であり、前記第2スライダは前記第1スライダの環中及び前記ベース板の環中にそれぞれ挿入されて配置される。
【0017】
上記構成において、環状、好ましくは四角環状に構成された各部材のうち中央に位置する第2スライダを第1スライダの環中及びベース板の環中にそれぞれ挿入して配置させることによって、高さ方向の寸法を小さくすることができると共に、撮像素子の側方周囲に第1及び第2アクチュエータを配置することができる。
【0018】
好ましくは、前記第1及び第2アクチュエータは圧電アクチュエータである。
【0019】
上記構成において、圧電アクチュエータを用いることによりアクチュエータをコンパクトに構成することができると共に、駆動制御の精度を向上させることができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態に係る撮像装置について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
撮像装置は、図1に示すように、デジタルカメラ1に搭載されて用いられる。デジタルカメラ1は、カメラ本体2と、撮像装置3とで構成される。撮像装置3は、レンズ4などを含む光学系である鏡胴本体7と撮像素子を移動可能に鏡胴本体7の一端に配置するための駆動装置10とで構成される。撮像装置10は、鏡胴本体7の端に取りつけられる。後述するように、撮像装置3に設けられている駆動装置10には、CCDなどの撮像素子が設けられている。そして、図1の矢印5で示すように、撮影中にデジタルカメラ1がブレて、鏡胴本体7に入射する光軸Lがずれた場合に、撮像素子を矢印6に示すように移動させて光軸のずれを補正する。
【0022】
図2に図1の撮像装置に用いられている駆動装置の組立分解斜視図を示す。図3に、図2の駆動装置を鏡胴本体に固定した状態でI−I断面で切断した撮像装置の要部拡大断面図を示す。図4に図2の駆動装置を鏡胴本体に固定した状態でII−II断面で切断した撮像装置の要部拡大断面図を示す。駆動装置10は、土台となるベース板12と、該ベース板12に対して水平方向(以下、X軸方向として説明する。)に移動する第1スライダ14と、該第1スライダの移動方向に対して垂直方向(以下、Y軸方向として説明する。)に移動する第2スライダと、該第2スライダに固定される撮像素子16とで構成される。
【0023】
ベース板12は、図3及び図4に示すように、鏡胴本体7との位置(煽りとレンズバック)を調整されて鏡胴本体7に固定され、ネジ98とスプリング100により鏡胴本体7と駆動装置10との間隔を調整できるようになっている。ベース板12は、光路方向(以下、Z軸方向として説明する。)に直交し、中央に大穴20を有する環状の金属フレーム19で構成される。
【0024】
ベース板12からは、後述する各種腕(押圧スプリング掛け21、基板保持腕22、浮き防止係止爪24、位置決め腕31、ロッド支持腕36)が光軸方向(Z軸方向)に伸びている。また、金属フレーム19には、圧電素子32を振動伝達ロッド34とウェイト30で挟み込んだ構成の第1リニアアクチュエータ28がX軸方向に固定されている。
【0025】
第1リニアアクチュエータ28は、振動伝達ロッド34の先端と末端(圧電素子32側)をベース板に設けられている2本のロッド支持腕に嵌合され、ベース板12の位置決め腕31にウェイト30を当接した状態で、ロッド支持腕36との2つの嵌合個所とウェイト30をベース板12に対して接着している。ロッド支持腕30と振動伝達ロッド34との間の接着には、シリコン接着剤などの硬化後も弾性の残る接着剤、位置決め腕31とウェイト30との間の接着には、柔らかいゴム系又はシリコン含有の接着剤が好適に用いられる。
【0026】
ベース板12の2つのロッド支持腕36の上面には、Z軸方向に延在する突部38が設けられている。突部38は、後述するように、組立時に第1スライダ14の移動制限穴79に嵌合される。
【0027】
第1スライダ14は、光軸方向(Z軸方向)でベース板12に対して結像面側に位置し、ほぼ同一面内に第2スライダ13を収めるための開口68が設けられたアルミニウム製の環状のフレーム66により構成される。第1スライダ14には、ベース板12に固定されたアクチュエータ28の振動伝達ロッド34に当接する第1ロッド当接部74と、後述する第2スライダに固定されたアクチュエータ56の振動伝達ロッド60に当接する第2ロッド当接部76と、ベース板12の押圧スプリング掛け21との間に押圧スプリング70を係止するための押圧スプリング掛け72と、移動制限穴79とを備える。
【0028】
第1スライダ14は、図3に示すように、組み上げ時にベース板12と第1スライダ14にそれぞれ設けられた押圧スプリング掛け72に設けられた押圧スプリング70によって、ベース板12に近づくように付勢されており、第1スライダ14の振動伝達ロッド34を中心とする回転を防止している。
【0029】
第1ロッド当接部には、断面がV字型の溝(図3参照)が設けられており、溝をアクチュエータ28の振動伝達ロッド34に当接させた状態でキャップ40を用いて振動伝達ロッド34を挟み込むことによって、振動伝達ロッド34に沿って摺動可能に摩擦結合する。第1ロッド当接部とキャップ40との固定には挟持スプリング42が用いられる。図5に第1スライダ14を摩擦係合した第1アクチュエータ28の構造図を示す。上述したように、アクチュエータ28は圧電素子32を振動伝達ロッド34とウェイト30で挟み込んだ構成であり、ベース板12のロッド支持腕36と位置決め腕31に嵌合し、嵌合ガタを固定するためにそれぞれ接着剤33で固定されている。
【0030】
なお、アクチュエータ28とベース板12との間の固定の変形例として、図6に示すような板バネを用いたものも例示できる。すなわち、L字型に曲げられた板バネ35を振動伝達ロッド34の先端に位置するようにベース板12上に固定し、板バネ35に取りつけられた先尖部39が振動伝達ロッド34の先端に突き刺さるようにする。板バネは、常時、弾性力で振動伝達ロッド34を圧電素子側へ付勢しており、ロッド34の嵌合ガタを防止することができると共に、振動時には、弾性力に打ち勝ってロッド34が振動できるようにすることができる。
【0031】
アクチュエータ28の振動伝達ロッド34には、上述したように第1スライダ14が配置される。第1スライダ14は、第1ロッド当接部74とキャップ40とで振動伝達ロッド34を挟み込んで摩擦結合する。第1ロッド当接部74とキャップ40の固定には、挟持スプリング42が用いられる。キャップ40の一端は、第1ロッド当接部74に係止され、中央部は振動伝達ロッド34と当接し、他端が挟持スプリング42に引っ張られる。キャップ40と振動伝達ロッド34との接触圧は、用いられる挟持スプリング42の付勢力の2倍程度となる。挟持スプリング42は、長円形状をしており、1つの直線部中央に両端がくるようになっている。挟持スプリング42は、キャップ40のフックと第1スライダの第1ロッド当接部74のスプリングフックの間に端部と直線部中央とを掛け渡すようにして両者を固定する。
【0032】
移動制限穴79は、上述したベース板12のロッド支持腕36の上面に設けられた突部38と緩く嵌合する。移動制限穴79は、第1スライダ14の移動可能幅の長さを有し、第1スライダ14の移動方向すなわち振動伝達ロッド34の延在方向(X軸方向)に伸びる長穴で、ベース板12のロッド支持腕36上面の突部38と嵌合し、第1スライダ14が移動制限穴の短辺方向(Y軸方向)へ移動(脱落)するのを規制する。
【0033】
図7にロッド支持腕と第1スライダの嵌合の変形例を示す。この変形例では、第1スライダ14のベース板と対向する側の表面に第1スライダの移動方向、すなわち、振動伝達ロッド34の延在方向(X軸方向)に伸びる帯状の突部77を設ける。そして、ロッド支持腕36には、その上面両端に設けられた突部38と第1スライダの帯状突部77を挟むように、突部38の間に設けられた凹部39からなるフォーク部を備える。そして、第1スライダ14の第1ロッド当接部74がキャップ40によって振動伝達ロッド34に摩擦結合されたとき、フォーク部の凹部39が第1スライダ14の帯状突部77にはまり込むように配置される。
【0034】
第2スライダ13は、底壁44に開口48を備えた樹脂製の箱体であり、撮像素子16と放熱板18とローパスフィルタ17と第2アクチュエータ56とを保持する。放熱板18は、撮像素子16の撮像面が付されていない背面側に当接して、第2スライダの周壁46によって区画された空間を覆うようにして、ビス止め穴64を貫通するビス62によって第2スライダに固定される。図3、4に示すように、放熱板の背面には第1基板80が設けられており、撮像素子16はこの基板に配設されている。第1基板80の背面側には、図3、4に示したように第2スライダの位置を検知するための赤外LED94と、撮像素子ドライバ、撮像素子からの光電信号を処理するためのプリアンプ及び色分離回路、ホワイトバランス調整回路、アナログ処理回路などの撮像素子の画像信号読み出しに関する素子81の一部が搭載される。
【0035】
ローパスフィルタ17は、撮像素子の有効撮像面を覆うように密着して取りつけられ、第2スライダの開口48に嵌め込まれる。このとき、開口48の周囲に配置された密着スプリングにより押圧され、撮像素子16の背面が、放熱板18に密着するようになっている。
【0036】
第2スライダ13に保持される第2アクチュエータ56は、周壁の側方に設けられたロッド支持腕50に接着保持されている。振動伝達ロッド60の先端と末端(圧電素子59側)を、それぞれ第2スライダ13の2本のロッド支持腕に嵌合させた上、同じく第2スライダの位置決め面57にウェイト58を当接した状態で2つの嵌合個所とウェイト58を第2スライダ13に対して接着する。接着には上述の第1アクチュエータの接着と同様に、振動伝達ロッド60の接着には、シリコン接着剤などの硬化後も弾性の残る接着剤、ウェイト58の接触には、柔らかいゴム系若しくはシリコン含有の接着剤が好適に用いられる。
【0037】
第2スライダの第2アクチュエータ56は、第1スライダ13の第2ロッド当接部76とキャップ75とで挟み込まれ、第1スライダ14が第2スライダ13に摩擦結合する。第2ロッド当接部76とキャップの固定には、挟持スプリング78が用いられる。キャップの一端は、第2ロッド当接部76に係止され、中央部は振動伝達ロッド60と当接し、他端が挟持スプリング78に引っ張られる。キャップと振動伝達ロッド60との接触圧は、用いられる挟持スプリング78の2倍程度となる。挟持スプリング78は、第1アクチュエータに用いられたものと同様に長円形状をしており、1つの直線部中央に両端がくるようになっている。挟持スプリング78は、キャップのフックと第1スライダの第2ロッド当接部76のスプリングフックの間に端部と直線部中央とを掛け渡すようにして両者を固定する。
【0038】
第2スライダの第2アクチュエータの対向する周壁44に付された方向基準板52は、その表裏に剛球15を保持するための凹状の剛球受け54を備え、剛球受け54に剛球15を遊嵌した状態で、第1スライダ14とベース板12とに剛球15を介して挟まれるように固定される。上述のように第1スライダ14とベース板12との間に押圧スプリング70が掛けられることで、第2スライダ13は、第2アクチュエータの振動伝達ロッド60を中心とした回転を阻止される。
【0039】
ベース板12と第1スライダ14が組みあがる場合は、第1スライダ14はベース板12に設けられる4つの基板保持腕22に囲まれた領域内に収まるように配置され、浮きあがり防止のために、浮き防止係止爪24によってその上端を係止される。一方、第2スライダ13は、その箱体部分が第1スライダ14の開口68に収まるように、第1スライダ14に組み込まれる、第2スライダ13は、第1スライダ14にぶら下がるようにして一体的に構成される。上述のように第1スライダ14は、第1アクチュエータに沿ってX軸方向に摺動可能であり、このとき第2スライダ13は第1スライダ14の移動にあわせて一体的に移動し、第2スライダ13に固定されている撮像素子16もX軸方向に移動する。一方、第2スライダ13は、第1スライダ14に対してY軸方向に独立して移動可能であり、また、第1スライダがベース板12に固定されているため、ベース板12に対しては、Y軸方向に移動可能である。したがって、第2スライダ13に固定されている撮像素子16もY軸方向に移動する。
【0040】
第1及び第2スライダ14,13を組み込んだ状態で、ベース板12の基板保持腕22には、第2基板82が固定される。上述のように第1基板80は、第2スライダ13に固定されているため、両者は光軸方向に重なって配置され、かつ第2スライダの移動によって、第1基板80は、第2基板82に対して平行に移動する。両者はフレキシブル基板84によって結線され、信号の送受信が可能になっている。フレキシブル基板84は、水平方向に第1基板80を出た直後に光軸方向(Z軸方向)に折り曲げられ、第2基板82と接続される。
【0041】
第2基板82には、ADコンバータやメモリコントローラなどの撮像素子16(第1基板80)からの信号を処理する回路83と、第2スライダ13の位置を検知する位置検出素子88(以下、PSDという。)と、PSDの位置信号とジャイロ回路86からの角速度信号に基づいて、2つのリニアアクチュエータの移動制御回路とが搭載されている。PSDは、検出誤差を防止するため、スリット付きのカバー92で覆われており、第1基板80に設けられている赤外LEDからの光を受けた受光素子90がその位置を検知する。第2基板82へは、直交する検出方向(X軸、Y軸)の角速度信号がジャイロ素子86より入力される。また、第2基板82からはリニアアクチュエータ制御信号と処理された画像信号が出力される。
【0042】
なお、撮像素子16を支持、揺動するための機構であるベース板12、第1スライダ14、第2スライダ13は、互いに嵌め込まれるように組み上げられ、撮像素子16および撮像素子16に直接接続する第1基板80の周囲かつ光軸方向上流側に位置する。したがって、図3、4に示すように、手振れ補正ユニット10が鏡胴本体7に取りつけられたとき、撮像素子の支持、揺動するための機構は、鏡胴本体7及び撮像素子16からなる光学系に必要な部材の輪郭に対して余剰空間を充填するように配置され、撮像素子の支持、揺動するための機構を含む光学ユニットを小さくまとめることができる。
【0043】
次に本実施形態にかかる撮像装置の動作について説明する。図8は、本実施形態にかかる撮像装置の駆動制御回路の電気的構造を示すブロック図である。
【0044】
制御回路は、カメラ本体すなわち、鏡胴本体7に入射される光軸Lのブレ5を検知して角速度信号を出力するジャイロ素子86と第2スライダ13(撮像素子16)の位置を検出するPSD回路90と、回路の総合的な制御を行い、入力された信号に基づいて移動量や存在位置を演算するマイコン102と、マイコンからの駆動信号に基づいて所定周波数の駆動パルスを発生させるドライブ回路104とで構成される。ドライブ回路から発生された駆動パルスは第1及び第2アクチュエータ28,56に出力され、アクチュエータに沿って第1及び第2スライダ14、13が移動する。
【0045】
ジャイロ素子86は、図4に示すように鏡胴本体7に固定されており、カメラ本体が矢印5で示すようにぶれると2軸方向(X軸方向、Y軸方向)の角速度を検出してマイコン102に出力する。
【0046】
マイコン102は、ジャイロ素子86から角速度信号が入力されると、光学系の焦点距離信号から撮像素子上(結像面上)のぶれによる像の移動量、移動速度を算出する。算出した移動速度と第2スライダ13(撮像素子16)の位置から2つのリニアアクチュエータへ印加される所定周波数の供給電圧を決定する。すなわち、マイコン102は、PSD回路90から入力された信号に基づいて演算される第2スライダ13(撮像素子16)が現在存在している位置及び、ジャイロ素子86から入力された角速度信号に基づいて、撮像素子16が本来あるべき位置を計算し、現在位置との差を比較して、あるべき位置に撮像素子が戻るようにスライダを移動させるフィードバック制御を行なう。
【0047】
ドライブ回路104は、マイコン102からの信号を受けて、アクチュエータ28、56の共振周波数の7割程度の周波数の駆動パルスを出力する。駆動パルスは、圧電素子32、59に印加され、以下の原理によって、第1及び第2スライダを振動伝達ロッド34、60に沿って移動させる。
【0048】
図9(a)に示すような緩やかな立ち上がり110と急激な立下り部分112を有する鋸歯状波の駆動パルスを圧電素子32、59に印加すると、(b2)に示すように、駆動パルスの緩やかな立ち上がり部分110では圧電素子32,59が緩やかにその厚み方向に伸び変位し、圧電素子に固定されている振動伝達ロッド34、60が軸方向に緩やかに変位する。このとき振動伝達ロッド34、60に摩擦結合したスライダ13、14は摩擦力により振動伝達ロッド34、60と共に移動する。
【0049】
一方、駆動パルスの急激な立下り部分112では、圧電素子32、59は、急速に厚み方向に縮み変位し圧電素子32、59に結合する振動伝達ロッド34、60も急速に軸方向に変位する。このとき、(b3)に示すように、振動伝達ロッド34、60に摩擦結合したスライダ13、14は慣性力により摩擦結合力に打ち勝って実質的にその位置に留まり移動しない。結果として、(b1)に示す初期状態よりもスライダは振動伝達ロッドに沿って右側に移動する。圧電素子32、59に前記鋸歯状波の駆動パルスを連続的に印加することにより、スライダ13、14を連続的に軸方向に移動させることができる。なお、ここで実質的にその位置に留まり移動しないとは、振動伝達ロッド34、60の正方向及び負方向の伸縮時のいずれにおいてもスライダ13、14と振動伝達ロッド34、60との間で滑りを生じつつスライダがそれぞれ移動するが、移動量が対称ではないため、全体としてどちらか任意の位置方向にスライダ13、14移動する場合を含む。
【0050】
なお、スライダ13、14を左方向に移動させるには、圧電素子32、59に印加する鋸歯状波の波形を変えて、急速な立ち上がりと緩やかな立下りからなる駆動パルスを印加すれば、上述とは逆の作用によってこれを達成することができる。なお、駆動パルスは、矩形波やその他の波形を適用することもできる。
【0051】
ベース板に保持された第1アクチュエータの圧電素子に駆動パルスが印加された場合は、上述のように圧電素子32は伸縮を繰り返す。圧電素子32の伸縮はウェイト30と振動伝達ロッド34に伝達する。ウェイト30と振動伝達ロッド34の慣性質量の差からウェイト30はほとんど移動せず、振動伝達ロッド34のみに伸縮が伝達される。振動伝達ロッド34は、上述のように、ロッド支持腕36に接着されているが、接着剤33が弾性的に撓むため伸縮が妨げられることがない。上述のように、ロッドの左右に移動する速度差によって、摩擦結合する第1スライダ14が振動伝達ロッド34に沿ってX軸方向に移動する。第1スライダ14の加減速に伴ない第1アクチュエータ28に嵌合ガタ内で移動しようとする力が働くが、振動伝達ロッド34とロッド支持腕36とが接着されているため、移動は起こらず、補正性能のみならず焦点移動による光学性能劣化も防止することができる。
【0052】
第1スライダ14がX軸方向へ移動すると、第1スライダに連結されている第2スライダ13も同時にX軸方向に移動する。第2スライダ13は第1スライダ14とベース板12の間にかかる押圧スプリング70と、第2スライダ13とベース板12との間の剛球15により、抵抗が少なくかつ光軸方向に変動することなく移動する。このとき第1及び第2の基板80,82を接続するフレキシブル基板84は折り曲げられた開放角度が変動して第1スライダの移動を吸収する。
【0053】
一方、第2スライダ13に保持された第2アクチュエータの圧電素子59に駆動パルスが印加された場合は、上述のように圧電素子59は伸縮を繰り返す。圧電素子59の伸縮はウェイト58と振動伝達ロッド60に伝達する。ウェイト58と振動伝達ロッド60の慣性質量の差からウェイト58はほとんど移動せず、振動伝達ロッド60のみに伸縮が伝達される。振動伝達ロッド60は、上述のように、第2スライダ13のロッド支持腕50に接着されているが、接着剤が弾性的に撓むため伸縮が妨げられることがない。上述のように、ロッドの左右に移動する速度差で第2スライダ13が第1スライダ14と相対的に振動伝達ロッド60の延在方向(Y軸方向)に移動(自走)する。第2スライダ13の加減速に伴ない第2アクチュエータ56に嵌合ガタ内で移動しようとする力が働くが、振動伝達ロッド60とロッド支持腕50とが接着されているため、移動は起こらず、補正性能のみならず焦点移動による光学性能劣化も防止することができる。
【0054】
このように第2アクチュエータに駆動パルスが印加された場合は、第1スライダとは独立して第2スライダだけがY軸方向に移動(自走)する。第2スライダ13は第1スライダ14とベース板12との間にかかる押圧スプリング70と、第2スライダ13と第1スライダの間の剛球15により、抵抗が少なく、かつ光軸方向への変動を起こすことなく移動する。このとき、第1及び第2基板80、82を接続するフレキシブル基板84は、折り曲げられた曲げ部分がよれて、第2スライダの移動を吸収する。
【0055】
以上説明したように、本実施形態にかかる撮像装置は、ジャイロ素子86により検知されたカメラ本体のブレを補正するように、第1及び第2アクチュエータを駆動させることで、撮像素子をそれぞれX軸方向及びY軸方向に移動させることができる。
【0056】
また、撮像素子16の信号を処理する基板が2つに分割されており、また、処理の役割を分けて構成しているため、撮像素子が配設されている第1基板のサイズを小さくすることができる。よって撮像素子の移動に伴うスペースを小さくすることができ、装置全体を小型化することができる。撮像素子とその信号を処理する基板が直接接続されており、ノイズを小さくすることができる。
【0057】
また、両者が光軸方向に重なって配置されているため、第1基板すなわち、撮像素子の移動を第2基板との相対位置を用いて容易に導くことができ、そのための位置検出素子を直接第1及び第2基板に配置させることで、装置のさらなる小型化を図ることができ、必要な部材をスペース効率良く配置することができる。
【0058】
また、撮像素子の移動に伴って可動な基板は、その基板の負担を固定された第2基板にふり分けて構成することができるため、回路規模を小さくし重量を小さくすることができる。よって、可動部分の軽量化を図ることができ、装置の共振周波数を高く維持することができる。したがって、圧電素子を用いたアクチュエータによる撮像素子による撮像素子の移動制御を容易にすることができる。
【0059】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その他種々の態様で実施可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態においては、第2アクチュエータは第2スライダに搭載され、第2スライダを自走式とした構成であるが、第2アクチュエータを第1スライダに固定させ、第2スライダを移動させるように構成してもよい。このような構成であっても同様の作用を実現することができる。なお、この場合、第1スライダにロッド支持腕、第2スライダに第2ロッド当接部が設けられる。
【0061】
また、上記実施形態においては、第2基板82が第1基板80とほぼ重なるように基板を区分し、両者を対向させて配置させているが、第1基板と第2基盤の大きさを変えたり配置位置を変えたりして一部のみが重なるように構成されていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態においては、ジャイロ素子86は、鏡胴本体7に取りつけられ、第1及び第2基板80、82へ角速度信号を送信するように構成されているが、対向する第1及び第2基板80、82の対向面に直接取りつけられていてもよい。このとき、マイコン102は、ジャイロ素子からの角速度信号が零になるように第1及び第2アクチュエータを駆動させるように制御を行う。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の撮像装置を搭載するデジタルカメラの概略構成を示す図である。
【図2】 (a)は図1の撮像装置に用いられている駆動装置の組立分解斜視図であり、(b)は(a)の第1アクチュエータ部分の詳細図である。
【図3】 図2の駆動装置を鏡胴本体に固定した状態でI−I断面で切断した撮像装置の要部拡大断面図である。
【図4】 図2の駆動装置を鏡胴本体に固定した状態でII−II断面で切断した撮像装置の要部拡大断面図である。
【図5】 第1スライダを摩擦係合した第1アクチュエータの構造図である。
【図6】 第1アクチュエータの固定構造の変形例を示す図である。
【図7】 ロッド支持腕と第1スライダの嵌合の変形例を示す図である。(a)はロッド支持腕の構造を示す斜視図であり、(b)は嵌合した状態を示す断面図である。
【図8】 図2の撮像装置の駆動制御回路の電気的構造を示すブロック図である。
【図9】 アクチュエータの駆動原理を説明するための図である。(a)は圧電素子に印加される駆動パルスの波形の例である。(b)はアクチュエータの動きを説明する図である。
【符号の説明】
1 デジタルカメラ
2 ボディ
3 撮像装置
4 レンズ
7 鏡胴本体
10 駆動装置
12 ベース板
13 第2スライダ
14 第1スライダ
15 剛球
16 撮像素子
17 ローパスフィルタ
18 放熱板
19 フレーム
20 大穴
21,72 押圧スプリング掛け
22 基板保持腕
24 浮き防止係止爪
26 位置決め腕
28 第1リニアアクチュエータ
30 ウェイト
32 圧電素子
34 駆動軸
36 ロッド支持腕
38 突部
40 キャップ
42,78 挟持スプリング
44 底板
46 周壁
48 開口部
50 ロッド支持腕
52 方向基準板
54 剛球受け
56 第2リニアアクチュエータ
57 位置決め面
58 ウェイト
60 駆動軸
62 ビス
64 通孔
66 フレーム
68 開口
70 押圧スプリング
74 第1ロッド当接部
76 第2ロッド当接部
79 移動制限穴
80 第1基板
82 第2基板
84 フレキシブル基板
86 ジャイロ素子

Claims (5)

  1. 撮像素子及び該撮像素子を撮像面を鏡胴側に向けて搭載している基板が、光軸に垂直な面内で移動可能に、鏡胴の一端に配置された撮像装置であって、
    前記撮像素子及び前記基板を移動させるための駆動手段が、該撮像素子に関して該撮像素子の光軸に垂直方向の周囲であって、かつ前記基板と前記鏡胴の端部により形成される空間に搭載されていることを特徴とする撮像装置。
  2. 前記駆動手段は、
    第1の方向に延在する第1アクチュエータを保持し、前記鏡胴に固着するベース板と、
    前記第1アクチュエータと移動可能に係合し前記ベース板に対して前記第1の方向に移動する第1スライダと、
    前記第1スライダと移動可能に係合しかつ前記第1の方向に対して直交する第2の方向に延在する第2アクチュエータを保持し、前記第2の方向に移動する第2スライダとを備え、
    前記撮像素子は前記第2スライダに固定されることを特徴とする、請求項1記載の撮像装置。
  3. 前記駆動手段は、
    第1の方向に延在する第1アクチュエータを保持し、前記鏡胴に固着するベース板と、
    前記第1アクチュエータと移動可能に係合し前記ベース板に対して前記第1の方向に移動し、かつ前記第1の方向に対して直行する第2の方向に延在する第2アクチュエータを保持する第1スライダと、
    前記第2アクチュエータと移動可能に係合し、前記第2の方向に移動する第2スライダを備え、
    前記撮像素子は前記第2スライダに固定されることを特徴とする、請求項1記載の撮像装置。
  4. 前記ベース板、第1スライダ、第2スライダはそれぞれ環状形状であり、前記第2スライダは前記第1スライダの環中及び前記ベース板の環中にそれぞれ挿入されて配置されることを特徴とする、請求項2又は3記載の撮像装置。
  5. 前記第1及び第2アクチュエータは圧電アクチュエータであることを特徴とする、請求項2から4のいずれか1つに記載の撮像装置。
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