JP3841386B2 - 給水・給湯用ホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水道用配管や給水・給湯用配管に適したホースに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、給水・給湯用配管に用いられるホースとして軟質塩化ビニル、エチレン・プロピレン系ゴム、オレフィン系熱可塑性エラストマーを成形してなる単層の給水・給湯用ホースが知られていた。
しかしながら、軟質塩化ビニル及び可塑剤を含むオレフィン系熱可塑エラストマーを成形してなる単層の給水・給湯用ホースは、ホースに温水が通ることによって可塑剤がブリードし、硬化するなどしてもろくなるに伴って亀裂が生じやすくなり、長期使用に対する耐久性及び衛生性が不十分であるという問題点があった。また、エチレン・プロピレン系ゴム及びオレフィン系熱可塑性エラストマーを成形してなる単層の給水・給湯用ホースは水道水中に含まれる次亜塩素酸によって劣化し、もろくなるに伴って亀裂が生じやすくなり、長期使用に対する耐久性及び衛生性が不十分という問題点があった。
さらに、前記エチレン・プロピレン系ゴム及びオレフィン系熱可塑エラストマーを成形してなる単層の給水・給湯用ホースにおいて、水道水中に含まれる次亜塩素酸に対する耐久性を改善すべく、前記外層にポリブテンまたは架橋ポリエチレンからなる内層を設けた複層の給水・給湯用ホースが提案されている。例えば特開平9−178058公報等に開示されている。しかし、この方法はホースの柔軟性に乏しく、曲げに対してキンク(ねじれ)しやすいという問題点があった。
一般にポリオレフィンの遊離塩素水に対する耐久性、すなわち耐塩素水性を向上させるには、ポリオレフィンをシラン架橋することが知られている。しかし、シラン架橋したエチレン・プロピレン系ゴムは耐塩素水性に優れるが、接触した水の臭気が問題であった。
一方、従来ポリオレフィンを架橋させる簡便な方法としては、該ポリオレフィンに遊離ラジカル発生剤の存在下で有機不飽和シランをグラフト反応させてシラングラフト化した後、このシラングラグトマーをシラノール縮合触媒の存在下で水分と接触させて架橋させる所謂シラン架橋法が一般に知られている。例えば特公昭48−1711号公報、特開昭57−49109号公報等に開示されている。しかし、この方法は少なくとも二工程を伴う。即ちシラングラフト化反応工程及びシラノール縮合反応工程である。従って少なくとも二回の押出工程を経る事となり、最終製品としての経済的な問題が避けられない。
また一工程プロセスとしてはモノシール法がある。しかし、この方法は有機不飽和シランを液状で押出機に注入する液添装置が必要であるが、滑りや計量不良の問題がある。また押出機も少量添加物を均一分散する為にL/Dの大きな高価で特殊なタイプが必要であり、経済的な問題が避けられない。更に押出においても非常に高度な技術が必要である。更に一工程プロセスとしては、シランを固体キャリアーポリマーに導入したシラン架橋方法が特開平3−167229号公報に開示されている。しかし、この方法は固体キャリアーポリマーとしては多孔質ポリマー或いはEVAであり、シラン及び遊離ラジカル発生剤の他にシラノール縮合触媒、酸化防止剤等の添加剤も固体キャリアーポリマーに導入している。この為シランの縮合によるオリゴマー化或いはラジカル捕捉による架橋阻害により架橋効率や保存性が劣るという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、これらの問題を解決したもので、柔軟で押出加工性、衛生性に優れたポリオレフィンのシラン架橋において、有機不飽和シラン等を高濃度に含有したキャリアーポリマーA及びシラノール縮合触媒等を含有したキャリアーポリマーBにより、一工程でシラン架橋ポリオレフィン樹脂組成物を成形した、曲げ施工性、耐塩素水性、衛生性、高温での機械的特性、押出加工性及び生産性に優れた水道及び給水・給湯配管用ホースの提供を目的としたものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、内周面層及び外周面層からなる給水・給湯用ホースにおいて、外周面層が下記(a)〜(c)からなる組成物をベースポリマーの結晶融点よりも高い温度において溶融混合して成形し、次いで水分と接触させて架橋し、密度が0.860〜0.885g/cm3である柔軟性シラン架橋ポリオレフィンからなり、内周面層が下記(a)〜(c)からなる組成物をベースポリマーの結晶融点よりも高い温度において溶融混合して成形し、次いで水分と接触させて架橋し、密度が0.885〜0.910g/cm3である柔軟性シラン架橋ポリオレフィンからなる給水・給湯用ホースである。
(a)少なくとも1種以上のオレフィン共重合体からなるベースポリマー
(b)一般式RR’SiY2(Rは1価のオレフィン性不飽和炭化水素基、Yは加水分解しうる有機基、R’は脂肪族不飽和炭化水素以外の1価の炭化水素基あるいはYと同じもの)で表される有機不飽和シラン及び遊離ラジカル発生剤を含有させた実質的に水の存在しないキャリアポリマーA
(c)シラノール縮合触媒及び酸化防止剤を含有させたキャリアポリマーB
好ましくは前記ベースポリマーであるオレフィン共重合体の少なくとも1種が、エチレンと少なくとも1種以上の炭素数が4〜12のα−オレフィンであり、メタロセン系触媒を用いて製造した実質的に線状であり、α−オレフィンの少なくとも1つが1−オクテンであるポリマーであり、前記キャリアポリマーAがエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体及びこれらの混合物からなる群より選ばれたポリマーであり、前記キャリアポリマーBがポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体及びこれらの混合物からなる群より選ばれたポリマーである給水・給湯用ホースである。
更には、前記内周面層の厚みが0.5〜2.5mmであり、合成繊維、軟質又は硬質のステンレスのいずれかの細線1種以上よりなる筒状体を前記内周面層と前記外周面層との間の内部に内在させた給水・給湯用ホースである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明にて用いられるベースポリマーは少なくとも1種以上のオレフィン共重合体からなる。また、本発明にて用いられるベースポリマーのオレフィン共重合体の少なくとも1種は、エチレンと少なくとも1種以上の炭素数が4〜12のα−オレフィンからなる。炭素数4〜12のα−オレフィンとしては、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、ヘプテンー1、オクテン−1、ノネン−1、デセンー1、ウンデセン−1、ドデセン−1、等が挙げられる。α−オレフィンとしては、1−オクテンがより好ましい。この場合、機械的強度のより一層の向上が見込まれる。また、本発明にて用いられるベースポリマーのオレフィン共重合体の少なくとも1種は、実質的に線状であり、公知のメタロセン系触媒により製造されることができる。
本発明にて用いられる前記実質的に線状であるオレフィン共重合体は、チーグラー系触媒等を用いる従来のもと比較して重合触媒が異なり、且つ得られる重合体の性質も従来のものと比較して大きく異なっている。
メタロセン系重合触媒を用いた実質的に線状であるオレフィン共重合体の特徴を列挙すると、
1.重合触媒が超高活性であるため、コモノマーのα−オレフィンの組成を従来より大幅に高めることが可能となり、可塑剤を含まない状態でも柔軟性に富むエラストマー状の重合体が得られる。
2.チーグラー系ポリマーと比較してコモノマーの分布が均一である。
3.チーグラー系ポリマーと比較して分子量分布が極めてシャープであり、低分子量成分が極めて少なく、低臭気、耐塩素水性、易架橋性、耐磨耗性、機械的強度、及び加工性に優れ、高品質である。
4.分子量分布がシャープであるにもかかわらず、長鎖分岐を導入した場合はASTM D1238により規定される190℃/10kgfにおけるメルトインデックス(I10)と、190℃/2.16kgfにおけるメルトインデックス(I2)との比(I10/I2)の値が大きく、加工性に優れる。
5.耐候性に大変優れている。等である。
【0007】
メタロセン系触媒とは、チタン、ジルコニウム等のIV族金属のシクロペンタジエニル誘導体と助触媒からなり、重合触媒として超高活性であるだけでなく、従来の触媒、例えばチーグラー系触媒と比較して、得られる重合体の分子量分布が狭く、共重合体中のコモノマーである炭素数4〜12のα−オレフィンの分布が均一であり、触媒種が均一であることを特徴としている。
また、チーグラー触媒によるエチレンとα−オレフィンの共重合体であるオレフィン共重合体では、上記のメルトインデックス比(I10/I2)と分子量分布は、ほぼ直線的な比例関係を示し、メルトインデックス比の増加とともに分子量分布も増大する傾向を示す。分子量分布は3〜10程度である。
一方、メタロセン系触媒によるオレフィン共重合体ではメルトインデックス比の値の如何にかかわらず、分子量分布は3.0未満のシャープな値となり、低分子量成分が極めて少ない。このため、本発明の給水・給湯用ホースに用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体の低臭気性、耐塩素水性、易架橋性、機械的強度、耐磨耗性及び加工性は大変優れている。
(1)線状もしくは実質的に線状であるオレフィン共重合体が示す分子量分布の測定
本発明の線状もしくは実質的に線状であるオレフィン共重合体が示す分子量分布の測定はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPC)により算出される。GPC装置は及び測定法は特に限定はないが、本発明者は下記の装置及び測定法を用いた。
1.装置 Waters 150C高温クロマトグラフィー
2.カラム Laboratories 103、104、105、及び106
3.溶媒 1,2,4−トリクロロベンゼン
4.測定温度 140℃
5.標準物質 ポリスチレン
(2)実質的に線状であるオレフィン共重合体
本発明にて用いられるベースポリマーの「実質的に線状である」オレフィン共重合体とは、このポリマーのバックボーンが炭素1000個当たり0.01個の長鎖分岐から炭素1000個当たり3個の長鎖分岐で置換されていることを意味しており、上記のメルトインデックス比(I10/I2)が5以上と大きく、良好な押出成形性を与える。
本明細書では、少なくとも約6個の炭素から成る鎖長として長鎖分岐を定義し、13C核磁気共鳴(NMR)分光法を用いて長鎖分岐を測定し、そしてRandallの方法(Rev.Macromol.Chem.Phys.、C29(2&3)、285−297貢)を用いてそれの定量を行う。
これに対し、「線状」オレフィン共重合体という用語は、このオレフィンコポリマーが長鎖分岐を含んでいないことを意味している。
また、本発明にて用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体は重合時にメタロセン系触媒のうち適切な拘束幾何触媒(constrained geometrycatalysts)を用いて製造する。米国特許第5,026,798号の中に教示されているモノシクロペンタジエニル遷移金属のオレフィン重合触媒もまた、反応条件が以下に明記するが如くであることを条件として、本発明にて用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体の製造で用いるに適切である。
本発明にて用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体の製造で用いるに適切な共触媒には、これらに限定するものでないが、例えばポリマー状もしくはオリゴマー状のアルミノキサン類、特にメチルアルミノキサン、並びに不活性であり、適合性を示し、配位しない、イオンを生じる化合物などが含まれる。好適な共触媒は、配位しない不活性なホウ素化合物である。
(3)実質的に線状であるオレフィン共重合体の重合
本発明にて用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体を製造するのに適した重合条件は、一般に、溶液重合方法で有効な条件であるが、本発明の出願はそれに限定するものではない。スラリーおよび気相重合方法もまた、適当な触媒および重合条件を用いることを条件として有効である。
本発明にて用いられるベースポリマーの実質的に線状であるオレフィン共重合体の製造では、多重反応槽重合法、例えば米国特許第3,914,342号の中に開示されている重合方法なども使用可能である。この多重反応槽の1つの中で少なくとも1種の拘束幾何触媒を用いこれらの反応槽を直列もしくは並列運転することができる。
【0008】
本発明にて用いられる有機不飽和シランは、ベースレジン相互の架橋点となるべくベースレジンにグラフト化されるものである。本発明において使用される有機不飽和シランとしては、一般式RR'SiY2(Rは1価のオレフィン性不飽和炭化水素基、Yは加水分解しうる有機基、R'は脂肪族不飽和炭化水素以外の1価の炭化水素基あるいはYと同じもの)で表される化合物が使用される。R'がYと同一で一般式RSiY3で表される有機不飽和シランを使用するのが望ましく、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン等が挙げられる。
【0009】
本発明にて用いられる遊離ラジカル発生剤は、シラングラフト化反応の開始剤として働く。本発明にて用いられる遊離ラジカル発生剤には、重合開始作用の強い種々の有機過酸化物及びパーエステル、例えばジクミルパーオキサイド、α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の中から選ばれる1種または2種以上の有機過酸化物が使用される。
【0010】
本発明にて用いられるキャリヤーポリマーAは、遊離ラジカル発生剤をシランに溶解した液体混合物をこのシランの液体混合物で膨潤させることによって加入することができる。この時シランを高濃度に加入させる為にはキャリヤーポリマーAの予熱が必要であるが、ポリマーが溶融しないように結晶融点以下の温度でなければならない。又キャリヤーポリマーAは、粒状形であり且つ架橋するベースポリマー及びシランと相溶性の個体でなければならない。相溶性とは、キャリヤーポリマーAがシランと容易に反応してはならず、且つベースポリマーに分散可能或いは可溶性でなければならないことを意味する。適したキャリヤーポリマーAは非吸湿性である。即ちシランの早期加水分解及び縮合の可能性を最小にする為に水分の吸収が比較的遅いのが好ましい。何れにしても、キャリヤーポリマーAは実質的に水が存在すべきでない。本発明のキャリヤーポリマーAはグラニュール、或いはペレットの形の粒状物にするのが普通であり、好ましい形はペレットである。
本発明にて用いられるキャリヤーポリマーAとしては、例えばエチレンーエチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレンーメチルメタクリレート共重合体(EMMA)、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体、例えば水添スチレン−イソプレンブロック共重合体(SEPS)、水添スチレン−ブタジエンブロック共重合体(SEBS)等であり、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0011】
本発明にて用いられるキャリヤーポリマーBはシラノール縮合触媒及び酸化防止剤等を混練し造粒することにより加入することができる。又キャリヤーポリマーBは粒状形であり且つ架橋するベースポリマーと相溶性の固体でなければならない。
本発明のキャリヤーポリマーBはグラニュール、或いはペレットの形の粒状物にするのが普通であり、好ましい形はペレットである。
本発明において使用されるキャリヤーポリマーBとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体、α−オレフィンとしてはC3〜C12の例えばプロピレン、ブテン−1、ペンテン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン−1、4−メチルヘキセン−1、4,4−ジメチルペンテン−1、ノネン−1、デセン−1、ウンデセン−1、ドデセン−1等であり、及びこれらの混合物を挙げることができる。
【0012】
本発明に用いられるシラノール縮合触媒としては、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジラウレート、酢酸第一錫、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジオクトエート、ナフテン酸鉛、カプリル酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、チタン酸テトラブチルエステル、ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カドミウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の有機金属化合物が挙げられる。
シラノール縮合触媒はキャリヤーポリマーBに加入しなければならない。これはキャリヤーポリマーAに加入するとシランの縮合によるオリゴマー化を促進し外観悪化を引き起こす為である。
【0013】
本発明に用いられる酸化防止剤は、ポリオレフィンを加工する際に通常用いられるもので特に限定するものではないが、キャリヤーポリマーBに加入しなければならない。これはキャリヤーポリマーAに加入するとラジカル捕捉により架橋を阻害する為である。その他添加剤を加入する場合においても架橋を阻害する可能性のある添加剤はキャリヤーポリマーBに加入しなければならない。
【0014】
その他の添加剤としては所望により通常に使用される添加剤、例えば中和剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、分散剤、増粘剤、金属劣化防止剤、防カビ剤、流動調整剤、その他の無機質充填剤等、または他の合成樹脂を含有させることもできる。
【0015】
本発明の給水・給湯用ホースの外周面層にて用いられる柔軟性シラン架橋ポリオレフィンは、密度が0.860〜0.885g/cm3であることが必要である。
0.860g/cm3未満では所望の高温での機械的特性が得られず、0.885g/cm3を超えると所望の柔軟性及び耐キンク性が得られない。また、本発明の給水・給湯用ホースの内周面層にて用いられる柔軟性シラン架橋ポリオレフィンは密度が0.885〜0.910g/cm3であることが必要である。0.885g/cm3未満では所望の耐塩素水性、高温での機械的特性が得られず、0.910g/cm3を超えると所望の柔軟性及び耐キンク性が得られない。
本発明の給水・給湯用ホースの内周面層の厚みは0.5〜2.5mmであることが好ましい。0.5mm未満では所望の耐塩素水性、高温での機械的特性が得られず、2.5mmを超えると所望の柔軟性及び耐キンク性が得られない。
本発明の給水・給湯用ホースは内部に合成繊維、軟質又は硬質のステンレスのいずれかの細線1種以上よりなる筒状体をが存在するので、適当な強度を持ちながら可とう性も有している。
また、本発明の給水・給湯用ホースは、一体で合成繊維、軟質又は硬質のステンレスのいずれかの細線1種以上よりなる筒状体を内周面層と外周面層との間の内部に内在させることができる。これによって、給水・給湯用ホースの内周面層と外周面層がはがれることはない。
【0016】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明する。
《キャリヤーポリマーAの製造》
表1に示すような配合割合に従って、まずキャリヤーポリマーAをスーパーミキサーに投入し攪拌混合し80℃に予熱する。次に不飽和シランに遊離ラジカル発生剤を溶かした液体混合物をスーパーミキサーに投入し攪拌しながらキャリヤーポリマーAに10分間で含浸させた。
《キャリヤーポリマーBの製造》
表2に示すような配合割合に従って、キャリヤーポリマーB、シラノール縮合触媒、酸化防止剤等を加圧ニーダーを用いて混練、造粒した。
《ホースの押出成形及び評価》
ベースポリマーと得られたキャリヤーポリマーA及びBを表3〜5に示す比率で混合し、表3〜5に示す内面周層の厚みを有し、外径19mm、内径13mmのポリエステルよりなる筒状体を内部に内在したホースを、単軸押出機を用いて押出成形した。図面に基づいて説明すると、図1及び図2において31はポリエステル細線をより合わせた直径1mmの綱である。この綱を編んで綱の筒状にしたものが筒状体3である。また綱の網目寸法はすなわち、綱31同志間の距離は3mmである。この筒状体3の内側に内周面層1、外側に外周面層2を形成したホースである。このホースは綱31を編んだ網の筒状体3の網目を通じて内周面層1と外周面層2がつながり一体となっている。
この様にして得られたホースを温水中に浸漬することによって架橋処理を行い、各種試験を行った。
【0017】
*使用した原材料
(1)EEA:エチレンーエチルアクリレート共重合体(EA含量;23重量%)
(2)SEPS:水添スチレンーイソプレンブロック共重合体(スチレン含量;30重量%)
(3)VTMOS:ビニルトリメトキシシラン
(4)VTEOS:ビニルトリエトキシシラン
(5)有機過酸化物(1):α,α′−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン
(6)有機過酸化物(2):ジクミルパーオキサイド
(7)LDPE(1):低密度ポリエチレン(密度;0.925g/cm3、MI;1.5g/10min)
(8)HDPE(1):高密度ポリエチレン(密度;0.955g/cm3、MI;4.0g/10min)
(9)DOTDL:ジオクチルスズジラウレート
(10)DBTDL:ジブチルスズジラウレート
(11)酸化防止剤:フェノール系酸化防止剤/イルガノックス1010(チバガイギー(株)製)
(12)滑剤:低分子量ポリエチレン/サンワックス171P(三洋化成工業(株)製)
(13)エチレン/1−オクテンコポリマー(1):拘束幾何触媒を用いて連続重合法で製造した実質的に線状であるエチレン/1−オクテンコポリマー(密度;0.861g/cm3、MI;0.7g/10min、Mw/Mn;3>)
(14)エチレン/1−オクテンコポリマー(2):拘束幾何触媒を用いて連続重合法で製造した実質的に線状であるエチレン/1−オクテンコポリマー(密度;0.899g/cm3、MI;2.0g/10min、Mw/Mn;3>)
(15)エチレン/1−オクテンコポリマー(3):拘束幾何触媒を用いて連続重合法で製造した実質的に線状であるエチレン/1−オクテンコポリマー(密度;0.872g/cm3、MI;4.0g/10min、Mw/Mn;3>)
(16)L−LDPE(1):直鎖状低密度ポリエチレン(密度;0.920g/cm3、MI;2.0g/10min、Mw/Mn;3≦)
(17)L−LDPE(2):直鎖状低密度ポリエチレン(密度;0.915g/cm3、MI;1.0g/10min、Mw/Mn;3≦)
(18)エチレン/1−オクテンコポリマー(4):拘束幾何触媒を用いて連続重合法で製造した実質的に線状であるエチレン/1−オクテンコポリマー(密度;0.852g/cm3、MI;0.5g/10min、Mw/Mn;3>)
【0018】
*評価方法
(19)押出成形性(−):押出成形物の表面平滑性を評価した。
50mmφ押出機(L/D=20) 130-170-180-190-180℃
評価:○>×>△の順とし、○のレベルを合格とした。
(20)密度(g/cm3):JIS K 7112による。
(21)残留塩素試験(%):残留塩素試験はオルトトリジンを用いた残留塩素測定器(柴田化学器機工業製)を用いて測定した。この測定法の概略は、次亜塩素酸ソーダで塩素濃度を1ppmに調整した水をホース内に滞留させ、24時間後の塩素濃度を前記方法で測定して減量分を比率で示した。50%以下を合格とした。
(22)耐キンク性(−):ホースをR35で曲げた時に、キンク発生の有無を試験した。キンク発生の無いことを合格とした。
(23)23℃耐圧力(−):23℃の恒温槽内において、ホース内部を5.9MPaに昇圧し、破壊の有無を試験した。破壊発生の無いことを合格とした。
(24)80℃耐圧力(−):80℃の恒温槽内において、ホースをR30で曲げてホース内部を1.5MPaに昇圧し、破壊の有無を試験した。破壊発生の無いことを合格とした。
(25)密着力(N/25mm):ホースの内周面層と外周面層との剥離強度を測定した。49N/25mm以上を合格とした。
(26)耐水性(−):60℃の水道水をホースに4日間通水した後に、ホース内部のブリード発生の有無を試験した。ブリード発生の無いことを合格とした。
(27)臭気(−):JIS S 3200-7の水道器具−浸出性能試験方法において、加熱した水を通水することを目的とした給水管(最高使用温度90℃)として、臭気の有無を試験した。臭気の無いことを合格とした。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【表4】
【0023】
【表5】
【0024】
表から明らかなように、実施例に示す給水・給湯用ホースは押出成形性が良好で、かつ非常に優れた耐塩素水性、耐キンク性、常温と高温の機械的特性、及び衛生性を示している。これに対し比較例は全て、押出成形性、耐塩素水性、耐キンク性、常温と高温の機械的特性、及び衛生性のバランスがとれていない。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、押出成形性に優れ、また耐塩素水性、耐キンク性、常温と高温の機械的特性、衛生性、及び生産性に優れた給水・給湯用ホースを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による実施例の給水・給湯用ホースの斜視断面図
【図2】図1の軸方向直角断面図
【符号の説明】
1:内周面層
2:外周面層
3:筒状体
31:綱
Claims (5)
- 内周面層及び外周面層からなる給水・給湯用ホースの製造方法において、外周面層が下記(a)〜(c)からなる組成物をベースポリマーの結晶融点よりも高い温度において溶融混合して成形し、次いで水分と接触させて架橋し、密度が0.860〜0.885g/cm3である柔軟性シラン架橋ポリオレフィンとし、内周面層が下記(a)〜(c)からなる組成物をベースポリマーの結晶融点よりも高い温度において溶融混合して成形し、次いで水分と接触させて架橋し、密度が0.885〜0.910g/cm3である柔軟性シラン架橋ポリオレフィンとし、内周面層の厚みが0.5〜2.5mmであることを特徴とする給水・給湯用ホースの製造方法。
(a)少なくとも1種以上のオレフィン共重合体からなるベースポリマーで、オレフィン共重合体の少なくとも1種が、エチレンと少なくとも1種以上の炭素数が4〜12のα−オレフィンとをメタロセン系触媒を用いて製造した線状であるオレフィン共重合体であるベースポリマーであり、但し、上記の線状であるオレフィン共重合体は、このポリマーのバックボーンが炭素1000個当たり0.01個の長鎖分岐から炭素1000個当たり3個の長鎖分岐で置換されていてもよい
(b)一般式RR’SiY2で表され、Rは1価のオレフィン性不飽和炭化水素基、Yは加水分解しうる有機基、R’は脂肪族不飽和炭化水素以外の1価の炭化水素基あるいはYと同じものである有機不飽和シラン、及び遊離ラジカル発生剤を含有させた水の存在しないキャリアポリマーA
(c)シラノール縮合触媒及び酸化防止剤を含有させたキャリアポリマーB - ベースポリマーであるオレフィン共重合体の少なくとも1種が、α−オレフィンの少なくとも1つが1−オクテンである請求項1記載の給水・給湯用ホースの製造方法。
- キャリアポリマーAがエチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルメタクリレート共重合体(EMMA)、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックからなるブロック共重合体を水素添加して得られる水添ブロック共重合体及びこれらの混合物からなる群より選ぶ請求項1または2記載の給水・給湯用ホースの製造方法。
- キャリアポリマーBがポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとα−オレフィンの共重合体及びこれらの混合物からなる群より選ぶ請求項1、2または3記載の給水・給湯用ホースの製造方法。
- 合成繊維、軟質又は硬質のステンレスのいずれかの細線1種以上よりなる筒状体を内周面層と外周面層との間の内部に内在させた請求項1、2、3または4記載の給水・給湯用ホースの製造方法。
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