JP3841037B2 - 鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体およびその取付け方法 - Google Patents
鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体およびその取付け方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は鉄筋コンクリートの内部にある鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体、電解質を充填した底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付ける方法およびこの底浅容器状電気防食構造体を用いた鉄筋コンクリートの電気防食方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鉄筋コンクリート中の鉄筋は、コンクリートの中性化および塩分濃度の増加に伴って腐食し、その鉄筋コンクリート構造物の機能を低下させることがある。例えば、臨海および海洋環境において海水、波浪および気温の変化等に起因して、鉄筋コンクリート中の塩分濃度が上昇したり、あるいはコンクリートが中性化したりする場合がある。このような環境下におかれた鉄筋コンクリートの構造物を防食する方法として電気防食がある。これは、コンクリートを介して陽極から鉄筋コンクリート中の鉄筋に直流電流を通電し、その鉄筋表面を腐食に対して不活性にすることにより達成されるものである。
【0003】
例えば、図11に示されるように、鉄筋コンクリート1からなる構造物に接合部材2および陽極3を固定したのち、開口部を有する支持容器4に電解質(バックフィルともいう)5を充填し、この電解質5を充填した支持容器4を接合部材2の鉤6が支持容器4の側壁に設けられた穴7に契合するように支持容器4を鉄筋コンクリート1に押し当てて接合させ、それにより電解質5を陽極3に接触させると共に鉄筋コンクリート1からなる構造物の鉄筋コンクリートの表面に電解質5を充填した支持容器4を取付け、陽極3を電源のプラス極に接続し、鉄筋コンクリート内部の鉄筋8をマイナス極に電気的に接合し、それによって鉄筋コンクリート1における鉄筋8を電気防食する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭62−188784号公報
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】
しかし、一般に、鉄筋コンクリート1の表面には、図11に示されるように、鉄筋コンクリート内部に埋め込まれた細い鉄筋9がコンクリート表面に露出突出しており、このコンクリート表面に露出突出している細い鉄筋9が陽極3と接触して電気防食回路が短絡し、十分な防食効果が得られないことがある。
そのために、通常、鉄筋コンクリート1に接合部材2および陽極3を固定する前に、コンクリート表面に露出突出しているわずかな細い鉄筋9を探して取り除き、オーバーレイの塗布を行う必要があり、この露出した細い鉄筋9の除去およびオーバーレイの塗布を行うには多大な労力が必要となってコストを押し上げていた。
また、陽極3の電気抵抗により電源から遠くなるほど防食電流が少なくなるため、防食が場所によって不均一となるという問題があり、この問題を解決するために陽極3に電流を配分するための配線(図示せず)を付加する必要があった。
さらに、前記従来の支持容器4は、予め、支持容器4に電解質5を充填したのち、鉄筋コンクリートに取付けていたので、重い電解質5を充填した支持容器4を鉄筋コンクリートに取付けることは困難であり、特に重い電解質5を充填した支持容器4を鉄筋コンクリートの下向き面に取付けるには重労働と熟練を要した。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明者らは、これらの課題を解決すべく研究を行った結果、
(イ)図1の斜視図に示されるように、絶縁性材料で構成された絶縁体フレーム(以下、絶縁体フレームという)10と、この絶縁体フレームの片面開口部を塞ぐように取付けられた耐食性を有する導電性板(以下、導電性板という)11と、この導電性板11の内側に取付けた陽極部14からなる底浅容器形状を有する底浅容器状電気防食構造体13を作製し、この底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリートの表面に図2の断面図に示されるように予め取付け、この底浅容器状電気防食構造体13と鉄筋コンクリート1の表面とで形成された空間に電解質注入口19から電解質21を注入し、導電性板11をプラス極に、鉄筋コンクリート1中の鉄筋8をマイナス極にそれぞれ接続すると、底浅容器状電気防食構造体自体は軽いものであるから底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリート1の表面に比較的簡単に取付けることができ、したがって簡単な作業で鉄筋コンクリートを電気防食することができる、
(ロ)このようにして取付けられた底浅容器状電気防食構造体の導電性板11は、前記絶縁体フレーム10を介して鉄筋コンクリート表面に固定するために、導電性板および陽極部が鉄筋コンクリート表面から離れて固定され、そのために鉄筋が鉄筋コンクリートの表面から露出突出している細い鉄筋があっても、導電性板および陽極部と短絡することがない、
(ハ)鉄筋コンクリートの表面は滑らかではなく、一般に凹凸の激しい表面を有しており、一方、前記底浅容器状電気防食構造体の絶縁体フレームは、剛性のある合成樹脂で作られているので靭性に乏しく、したがって、鉄筋コンクリート面と絶縁体フレームの間に隙間ができることは避けられず、かかる隙間があると、後述する電解質が隙間から漏れ出るので好ましくないところから、前記(イ)に記載の底浅容器状電気防食構造体における絶縁体フレームの片面に、図3に示されるように、ポリウレタン、ポリエチレン、クロロプレン、シリコンなどからなるスポンジ、発泡スチロール等の弾性体からなる弾性体シール層15を形成することが一層好ましい、などの研究結果が得られたのである。
【0007】
この発明は、かかる研究結果に基づいてなされたものであって、図1および図3に示されるように、
(1)絶縁性材料で構成された絶縁体フレーム10と、この絶縁体フレーム10の片面開口部を塞ぐように取付けられた耐食性を有する導電性板11とからなり、さらに電解質注入口19が設けられており、前記導電性板の内側に陽極部を取付けてなる鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体、
(2)絶縁体フレーム10と、この絶縁体フレーム10の片面開口部を塞ぐように取付けられた導電性板11とからなり、さらに電解質注入口19が設けられており、前記導電性板11の内側に陽極部14が接合されており、一方、前記導電性板と対抗する絶縁体フレーム10の鉄筋コンクリート取付け面側に弾性体からなる弾性体シール層15を介在させてなる鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体、に特徴を有するものである。
【0008】
この発明の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体13を構成する絶縁体フレーム10は軽量でかつ絶縁性の高い材料で作ることが好ましく、したがって、合成樹脂で構成することが最も好ましい。
また、底浅容器状電気防食構造体13を構成する導電性板11は、高強度を有し、塩分や亜硫酸ガスなどが含まれる環境に対して耐食性があり、かつ軽量である材料で作られることが好ましく、かかる材料としてカーボン、チタンクラッド板、カーボン繊維板、チタンまたはチタン合金板などが考えられるが、これらの中でもチタンまたはチタン合金板が最も好ましい。このチタンまたはチタン合金板は幅:50〜1000mm、長さ:200〜2000mm、厚さ:0.1〜2mmの範囲内にあることが好ましい。チタンまたはチタン合金板はあまり大きいと底浅容器状電気防食構造体13の鉄筋コンクリートに対する取付けが困難になるという理由からである。
【0009】
絶縁体フレーム10に導電性板11を取付けて底浅容器状電気防食構造体13を作製するには、絶縁体フレーム10に導電性板11を接着剤で接合することにより作ることができる。絶縁体フレーム10は可能な限り断面積を小さくして軽量化することが好ましいが、絶縁体フレームの断面積を小さくすると強度が不足し、底浅容器状電気防食構造体13の強度が不十分な場合がある。そのような場合に、底浅容器状電気防食構造体13の強度を一層向上させるべく、図4に示されるように、導電性板11の縁を折り曲げて折曲げ縁34を形成し、この折曲げ縁34で絶縁体フレーム10を囲むようにして絶縁体フレーム10に導電性板11を接合すると、絶縁体フレーム10および導電性板11の接合強度を一層高めることができるとともに、底浅容器状電気防食構造体13全体の強度を一層高めることができる。
また、絶縁体フレーム10を射出成形する際に導電性板11を鋳包むことにより一体的に形成することができる。さらに絶縁体フレーム10に導電性板11を作業現場で組み立てて底浅容器状電気防食構造体13を完成させても良い。
【0010】
また、底浅容器状電気防食構造体13のフレームは、図10の一部断面斜視図に示されるように、耐食性を有する導電性板の周囲を曲げ加工して導電体フレーム33を成形し、導電性板とフレームを一体成形することができる。この導電体フレーム33は絶縁体フレーム10に比べて一層軽量化することができる。しかし、この場合、導電体フレーム33は導電性であるから、鉄筋コンクリート1と導電体フレーム33を絶縁状態に保持するために絶縁体からなる絶縁層31を導電体フレーム33の鉄筋コンクリート取付け側面に設ける必要がある。
したがって、この発明は、
(3)耐食性を有する導電性板11と、前記耐食性を有する導電性板の周囲を曲げ加工して成形した導電体フレーム33と、前記導電体フレーム33の鉄筋コンクリート取付け側面に設けた絶縁層31とからなり、さらに電解質注入口19が設けられており、前記耐食性を有する導電性板11の内側に陽極部14を取付けてなる鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体、に特徴を有するものである。
前記絶縁層31は、絶縁性弾性体からなる絶縁性弾性体シール層で置換することができる。前記(2)記載の絶縁体フレーム10の鉄筋コンクリート取付け面側に貼り付けた弾性体からなる弾性体シール層15は、導電体または絶縁体のいずれで構成されていても良いが、前記(3)記載の底浅容器状電気防食構造体における絶縁層31はフレーム33が導電体で構成されているので、特に絶縁性に優れたポリウレタン、ポリエチレンなどの絶縁性弾性体からなる絶縁性弾性体シール層で構成することが必要である。
【0011】
チタンまたはチタン合金板で作製した導電性板11は、軽量で高強度を有するが、長期間放置すると、表面に薄い酸化チタン膜が形成されて導電性が徐々に低下する。そのために、チタンまたはチタン合金板からなる導電性板11の表面に陽極部14を取付ける。陽極部14は、図1に示されるように、白金など白金族金属メッキ被膜、貴金属酸化物(MMO)被膜またはカーボン被膜など長期間高導電性を保持することのできる被膜を導電板11に直接形成することにより取付けることができる。しかし、チタンまたはチタン合金板の表面全面に白金メッキした導電性板はコストが大幅に上昇する。従って、白金族金属のメッキを施したチタンまたはチタン合金の棒を用意し、これを曲げ加工して取っ手状に成形し、この曲げ加工したチタンまたはチタン合金の棒に白金族金属メッキした棒状体からなる陽極部14を図1に示されるように導電性板11に溶接し取付けることが好ましい。陽極部14は図1に示される曲げ棒に限定されるものではなく、白金族金属メッキ被膜、貴金属酸化物(MMO)被膜などを形成した帯、直線棒、網、リングなどでもよく、陽極部は幅:2〜50mm×厚さ:0.3〜3mmからなる寸法の帯、直径:3〜20mmの棒、または直径:0.5〜5mmの線からなる網でつくることが好ましい。帯で作製した帯状体からなる陽極部を図9に示す。帯状体からなる陽極部14は、断面積に対して表面積を多くすることができ、さらに図9に示されるように片面に白金族金属メッキ、貴金属酸化物(MMO)などからなる被膜29などを形成し、鉄筋方向のみに広く活性面を設けることができるので棒状体からなる陽極部よりも有利である。
図1では、導電性板11に白金被膜、貴金属酸化物被膜またはカーボン被膜などの膜からなる陽極部14およびチタンまたはチタン合金棒に白金族金属メッキ被膜または貴金属酸化物被膜を被覆してなる棒状体からなる陽極部14が共に取付けられたものが示されており、図10ではチタンまたはチタン合金棒に白金族金属メッキ被膜または貴金属酸化物被膜を被覆してなる帯状体からなる陽極部14が取付けられているが、導電性板11に取付けられる陽極部14は膜からなる陽極部、棒状体からなる陽極部、帯状体からなる陽極部の内のいずれか一つを設けることで十分である。
【0012】
次に、前記(1)〜(3)記載の底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付ける方法を説明する。
まず、図1に示されるように、絶縁体フレーム10に予め穴16を明けておく。この穴16は取付ける直前に明けてもよいが、予め明けておく方が好ましい。
底浅容器状電気防食構造体を取付ける個所の鉄筋コンクリートにも穴12を予め形成し、底浅容器状電気防食構造体13の絶縁体フレームに設けられた穴16および鉄筋コンクリートの穴12に固定具を挿入することにより鉄筋コンクリート1に固定して底浅容器状電気防食構造体13を取付ける。固定具としては、合成樹脂、チタン、チタン合金またはステンレス製の木螺子、オールアンカなどを使用することができる。これら固定具の中でもチタンまたはチタン合金製の木螺子17を使用することが強度および耐食性の観点から最も好ましい。
鉄筋コンクリートの穴12にプラグ28をセットし、絶縁体フレーム10に明けた穴16に木螺子17を挿入し、木螺子17により絶縁体フレーム10を鉄筋コンクリート1に固定して底浅容器状電気防食構造体13を取付けた状態の断面図を図2に示した。チタンまたはチタン合金製の木螺子の場合、鉄筋コンクリート1中の鉄筋8と導電性板11とが絶縁状態に保たれるように、木螺子17に絶縁ワッシャー18を挿入したのち、木螺子17を締める必要がある。
以上、絶縁体フレーム10を有する前記(1)〜(2)記載の底浅容器状電気防食構造体について述べたが、図10に示される耐食性を有する導電性板の周囲を曲げ加工して成形した導電体フレーム33を有する前記(3)記載の底浅容器状電気防食構造体を同様にして鉄筋コンクリートに取付けることができる。
【0013】
底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリート1に取付けた後、電解質を底浅容器状電気防食構造体13と鉄筋コンクリート1とで形成された空間に注入する必要があるが、電解質注入口19は図1〜4に示されるように、導電性板11に予め形成しておき、この電解質注入口19には電解質注入ホース20を接続することのできる接続具24を取付けておく。接続具24の取付け方法はいかなる方法でも良く特に限定されるものではないが、電解質注入口19内面に螺子溝を形成し、接続具24を螺入して取付けることが好ましい。接続具24にはスリット25が設けられており、スリット25にスライド板26が挿入可能となっている。
このようにして、底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリートに取付けたのち、導電性板11に設けられている電解質注入口19に接続具24を螺入し、この接続具24に電解質注入ホース20をはめ込み、注入ポンプ等を用いて、図2に示されるように、電解質21を鉄筋コンクリート表面と底浅容器状電気防食構造体の導電性板11および絶縁体フレーム10とで形成された空間22に電解質21を注入し充填し、電解質21の注入充填が終了したのち電解質21の供給を中止し、接続具24に設けられたスリット25にスライド板26を挿入して、電解質21の流出を防止し、電解質注入ホース20を接続具24から外し、電解質が充填された底浅容器状電気防食構造体の取付け作業を終了する。
【0014】
電解質注入口は、図1〜4に示されるように、導電性板11に設けることができるが、図5〜8および図10に示されるように、電解質注入口は絶縁体フレーム10または導電体フレーム33に設けることができる。この場合、絶縁体フレーム10または導電体フレーム33に内側から外側に貫通する切抜き口35を形成し、この切抜き口35を収縮可能なスポンジ状弾性体27で塞いだ構造に形成する。導電性板11を曲げ加工して形成した導電体フレーム33の切抜き口35は敷居板32で導電体フレーム33の内部空間を塞ぐことが好ましい。図5〜8および図10に示される電解質注入口を採用した場合の電解質注入方法は、底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリート1に取付けたのち、まず、図6に示されるように、注入ノズル30を鉄筋コンクリートの表面に沿って差し込む。注入ノズル30は硬いが、スポンジ状弾性体27は収縮可能であるので、注入ノズル30を鉄筋コンクリートの表面に沿って差し込むと、図7に示されるように、スポンジ状弾性体27は収縮して注入ノズル30の先端がスポンジ状弾性体27を押し広げられ差し込まれる。この状態で電解質21を注入し電解質27の充填が終了したのち注入ノズル30を引抜くと、スポンジ状弾性体27は膨らんで再び切抜き口35を塞ぎ、電解質は底浅容器状電気防食構造体と鉄筋コンクリートとで構成された空間に保持される。
【0015】
導電性板11に設けられた電解質注入口19と反対側の位置にガス抜き細孔23を設けることが好ましい。このガス抜き細孔23は空間22に電解質21を充填すると空間22の空気を底浅容器状電気防食構造体の外に逃す作用をする。さらに電解質21が十分に充填されたことを、覗きながら確認し、電解質21の供給を中止する役目もする。さらに前記底浅容器状電気防食構造体の導電性板11に設けられているガス抜き細孔23は、電気防食を開始すると電気分解作用により塩素等のガスが発生し、そのガスにより電解質が劣化するが、そのとき発生したガスを排出させる作用もする。前記電解質としてはモルタル、ベントナイトなどのゲル状の電解質を使用する。
【0016】
鉄筋コンクリートの構造物の表面は平でないことが多く、底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付けたあとでゲル状の電解質を注入し充填する場合にはコンクリート面と絶縁体フレームとの間の隙間から電解質が漏れ出ることがある。そこで、底浅容器状電気防食構造体の絶縁体フレーム面に弾性体からなる絶縁体シール層を形成することが好ましい。この弾性体からなる絶縁体シール層を形成した底浅容器状電気防食構造体が図3に記載の底浅容器状電気防食構造体13である。この図3に記載の底浅容器状電気防食構造体13を鉄筋コンクリート1に取付ける方法は、前記(1)〜(3)記載の底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付ける方法と全く同じであるから、その説明は省略する。
【0017】
このようにして鉄筋コンクリート1に電解質21を充填した状態で底浅容器状電気防食構造体を取付けたのち、導電性板11を電線により直流電源Eのプラス極に接続し、一方、鉄筋コンクリートの鉄筋8に直流電源Eのマイナス極を接続することにより鉄筋コンクリートにおける鉄筋8を電気防食することができる。
また、広い面積の鉄筋コンクリートを防食する場合は、底浅容器状電気防食構造体を多数並べて鉄筋コンクリートに取付け、底浅容器状電気防食構造体の導電性板を例えばチタン線のような導電体で接続することにより広範囲の鉄筋コンクリートの鉄筋を防食することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
チタン板(幅:250mm×長さ:1000mm×厚さ:0.5mm)を用意し、端部に直径:40mmの電解質注入口を形成し、電解質注入口と対抗する他端部に直径:2mmのガス抜き細孔を形成した。
さらに直径:1.5mm×長さ:100mmの寸法を有する白金メッキチタン線を用意し、さらに片面に白金メッキした厚さ:0.5mm、幅:20mm、長さ:400mmの寸法を有する白金メッキチタン板を用意し、これを取っ手状に曲げ加工して棒状体からなる陽極部および帯状体からなる陽極部を作製し、これら陽極部をチタン板に溶接により接合し、導電性板を作製した。
【0019】
さらに、発泡ポリビニル樹脂を射出成形して作製した外寸法が幅:250mm×長さ:1000mmを有し、開口部の内寸法が幅:210mm×長さ:960mmを有し、さらに厚さ:10mmを有する絶縁体フレームを用意した。
導電性板に絶縁体フレームを接着剤で接着することにより底浅容器状電気防食構造体を作製し、さらに底浅容器状電気防食構造体の絶縁体フレームにスポンジ層を接着したのち、絶縁体フレーム、導電性板およびスポンジ層を共に貫通する穴を絶縁体フレームに沿って形成した。
【0020】
屋外にある鉄筋コンクリート床板の下面における底浅容器状電気防食構造体の取付け位置面を選定し、電動工具で突起物、脆弱層およびほこりなどを取り除いたのち、底浅容器状電気防食構造体の穴にチタン製の木螺子を挿入し、木螺子を螺入して底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリート床板の下面に取付けた。木螺子と導電性板とが電気的に絶縁状態を保つように、木螺子に絶縁ワッシャーを挿入したのち、木螺子を螺入して締めた。
【0021】
このようにして、底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリート床板の下面の固定したのち、チタン板に設けた電解質注入口に接続具を螺入し、この接続具に電解質注入ホースをはめ込み、モルタルポンプで電解質であるモルタルを圧入したところ、約9.8KPaという低い圧力で底浅容器状電気防食構造体内に注入することができた。モルタルが十分に充填されたか否かはガス抜き細孔から確認した。モルタルが十分に充填されたのち、直流電源のプラス極に導電性板を接続し、マイナス極を鉄筋に接続して電気防食回路を形成した。この電気防食回路に流す電流は、鉄筋コンクリートの面積に対して電流密度が40mA/m2の電流が流れるように調整した。この電流密度は鉄筋コンクリート中の鉄筋を電気防食するに必要な電流密度の最大値である。電解電圧(陽極と鉄筋との間の電圧)は1.8v〜3.0vであり、電圧は温度の影響によって異なり、冬期に高く夏期に低くなったが、ほぼ安定していた。
【0022】
【発明の効果】
この発明は、電解質を注入した底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートの表面に取付ける作業が簡単であるとともに、導電性板を絶縁体フレームにより離して鉄筋コンクリート表面に固定するために、導電性板が鉄筋コンクリート表面から露出突出している鋼材の除去作業を完璧に行う必要がなく、従来のような短絡防止のための作業を省略することができ、かつ電解質を容易に充填することができるので熟練度の高い左官工が不要となり、さらに施工費用および工期が大幅に縮小されるなど優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の底浅容器状電気防食構造体の斜視図である。
【図2】この発明の底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付け、電解質を注入している状態を示す一部断面説明図である。
【図3】この発明の底浅容器状電気防食構造体の斜視図である。
【図4】この発明の底浅容器状電気防食構造体の斜視図である。
【図5】この発明の底浅容器状電気防食構造体の斜視図である。
【図6】この発明の図5の底浅容器状電気防食構造体と鉄筋コンクリート表面とで形成された空間に電解質を注入する方法を示す断面説明図である。
【図7】この発明の図5の底浅容器状電気防食構造体と鉄筋コンクリート表面とで形成された空間に電解質を注入する方法を示す断面説明図である。
【図8】この発明の図5の底浅容器状電気防食構造体と鉄筋コンクリート表面とで形成された空間に電解質を注入する方法を示す断面説明図である。
【図9】帯状体からなる陽極部の斜視図である。
【図10】この発明の底浅容器状電気防食構造体の一部断面斜視説明図である。
【図11】従来の鉄筋コンクリートの電気防食装置を示す一部斜視図である。
【符号の説明】
1:鉄筋コンクリート、2:接合部材、3:陽極、4:支持容器、5:電解質、6:鉤、7:穴、8:鉄筋、9:細い鉄筋、10:絶縁体フレーム、11:導電性板、12:穴、13:底浅容器状電気防食構造体、14:陽極部、15:絶縁性シール層、16:穴、17:木螺子、18:絶縁ワッシャー、19:電解質注入口、20:電解質注入ホース、21:電解質、22:空間、23:ガス抜き細孔、24:接続具、25:スリット、26:スライド板、27:スポンジ状弾性体、28:プラグ、29:被膜、30:注入ノズル、31:絶縁層、32:敷居板、33:導電体フレーム、34:折曲げ縁、35:切抜き口、E:直流電源
Claims (12)
- 絶縁性材料で構成された絶縁体フレーム(以下、絶縁体フレームという)と、この絶縁体フレームの片面開口部を塞ぐように取付けられた耐食性を有する導電性板(以下、導電性板という)とからなり、さらに前記絶縁体フレームまたは導電性板に電解質注入口が設けられており、前記導電性板の内側に陽極部を取付けてなることを特徴とする鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 絶縁体フレームと、この絶縁体フレームの片面開口部を塞ぐように取付けられた耐食性を有する導電性板とからなり、さらに電解質注入口が設けられており、前記導電性板の内側に陽極部を取付けてなる鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体であって、前記導電性板と対抗する絶縁体フレームの鉄筋コンクリート取付け側面に弾性体からなる弾性体シール層を介在させてなることを特徴とする鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 耐食性を有する導電性板と、前記耐食性を有する導電性板の周囲を曲げ加工して成形した導電体フレームと、前記導電体フレームの鉄筋コンクリート取付け側面に設けた絶縁層とからなり、さらに電解質注入口が設けられており、前記耐食性を有する導電性板の内側に陽極部を取付けてなることを特徴とする鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 請求項3記載の導電体フレームの鉄筋コンクリート取付け側面に設けられた絶縁層は、絶縁性弾性体からなる絶縁性弾性体シール層であることを特徴とする鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 前記導電性板にガス抜き細孔が設けられていることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 前記電解質注入口は導電性板に設けられていることを特徴とする請求項2、3、4または5記載の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 前記電解質注入口は、絶縁体フレームまたは導電体フレームに内側から外側に貫通する切抜き口を形成し、この切抜き口を収縮可能な弾性体で塞いだ構造を有することを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 請求項3記載の導電体フレームの鉄筋コンクリート取付け側面に設けられた絶縁層の上に、さらに弾性体シール層を貼り付けてなることを特徴とする鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 前記陽極部は、白金被膜、貴金属酸化物被膜またはカーボン被膜からなり、この膜を導電性板に被覆して取付けてなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8記載の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 前記陽極部は、チタンまたはチタン合金からなる棒または帯の表面に白金被膜または貴金属酸化物被膜を被覆してなる被覆棒状体または被覆帯状体からなり、この被覆棒状体または被覆帯状体を導電性板に接合してなることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9記載の鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体。
- 絶縁体フレームまたは絶縁層を有する導電体フレームと、この絶縁体フレームまたは絶縁層を有する導電体フレームの片面開口部を塞ぐように取付けられた耐食性を有する導電性板とからなり、この導電性板の内側に陽極部が取付けられており、さらに前記導電性板または絶縁体フレーム若しくは導電体フレームに電解質注入口を設けた鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電気防食するための底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに電解質を充填した状態で取付ける方法であって、
底浅容器状電気防食構造体を絶縁体フレームまたは導電体フレームが鉄筋コンクリート表面近くに来るようにかつ導電性板および陽極部が鉄筋コンクリートから離れた位置になるように設置し、さらに導電性板と鉄筋コンクリートとが絶縁状態に保たれるように鉄筋コンクリート表面に底浅容器状電気防食構造体を固定し、
ついで、鉄筋コンクリート表面と底浅容器状電気防食構造体の導電性板と絶縁体フレームまたは導電体フレームとで形成された空間に電解質を前記導電性板または絶縁体フレーム若しくは導電体フレームに設けられた電解質注入口から注入し充填することを特徴とする電解質を充填した底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付ける方法。 - 請求項11に記載の方法で底浅容器状電気防食構造体を鉄筋コンクリートに取付けたのち電解質を充填し、ついで導電性板を電源のプラス極に接続し、鉄筋コンクリートにおける鉄筋を電源のマイナス極に接続することを特徴とする底浅容器状電気防食構造体を用いた鉄筋コンクリートの電気防食方法。
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