JP6640573B2 - 流電陽極ユニット及びそれを用いたコンクリート構造物の電気防食構造 - Google Patents

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本発明は、コンクリート構造物に埋設される鉄筋、PC鋼線等の鋼材を流電陽極方式によって電気防食するための流電陽極ユニットに関する。
かつてはコンクリート構造物の耐久性は半永久的と言われていたが、鋼材の腐食を起因とするコンクリート構造物の劣化が頻繁に生じるようになり、今では防食対策を講ずることが一般的となった。鋼材の腐食による劣化で最も多い要因は塩害である。一般に健全なコンクリートのpHは12.5前後と言われており、コンクリート構造物におけるかぶりコンクリートで覆われた状態の鋼材は、そのようなアルカリ環境においては表面に不動態皮膜を形成するため、腐食は殆ど進行しない。しかしながら、海から飛来する塩分や冬季に散布される融雪剤中の塩分がコンクリート構造物のコンクリート表面から内部にかけて侵入し、鋼材表面に到達すると、その鋼材表面の不動態皮膜を破壊して鋼材の腐食を促進させる。その際、鋼材の腐食によって生成する錆の膨張圧によってかぶりコンクリートのひび割れを誘発し、さらに腐食が進行するとコンクリートの剥落に至る場合があり、コンクリート構造物の耐力を低下させる。
このような塩害に対し、電気防食は極めて有効な防食対策であり、実績も年々上昇している。電気防食は、腐食している鉄筋などの鋼材に対して防食電流を供給することにより、電位を卑方向に変化させて鋼材を再不動態化、又は不活性な電位域に変化させる鋼材の防食方法である。電気防食の方式としては従来、外部電源方式と流電陽極方式と知られている。
外部電源方式は、直流電源装置及び陽極を設置し、防食対象の鋼材を陰極として電気回路を構成し、直流電源装置より陽極から鋼材に防食電流を供給する方式であり、陽極の形状により、線状陽極方式、面状陽極方式、点状陽極方式などに分類される。中でも線状陽極方式は、構造物の補強との併用又は表面状態の観測が容易であることなどから、コンクリート構造物の電気防食に多用されている。典型的な線状陽極として、幅10〜20mm程度、厚さ0.5〜1mm程度の網目状に加工された複合金属酸化物被膜付きチタン陽極などがあり、線状陽極方式ではこのような線状陽極を、コンクリート表面に一定間隔で切削された複数の溝に設置し、あるいは線状陽極と他の部材とが一体となった陽極ユニットをコンクリート表面に間欠配置するなどして使用する(非特許文献1〜3参照)。外部電源方式は、流電陽極方式に比して大きな防食電流を鋼材に対して長期にわたり供給可能であることから、外部電源方式によるコンクリート構造物の電気防食においては通常、面状などに比して表面積が小さい線状の陽極を複数が間欠配置して使用する。
一方、流電陽極方式は、防食対象の鋼材と、該鋼材よりもイオン化傾向の高い卑金属(例えば鋼材が鉄筋の場合は、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム又はその合金など)とを電気的に接続し、該卑金属を陽極、該鋼材を陰極として電池を構成させ、両極間の電位差(起電力)を利用して該鋼材に防食電流を供給する方式である。ここで該卑金属は流電陽極又は犠牲陽極と言われる。一般に流電陽極方式は起電力が小さいことから、流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食においては従来、防食電流の供給不足を避けるために、特許文献1及び2に記載されているように、板状即ち面状の流電陽極をできるだけ密に設置する。
特許文献1記載の流電陽極方式による電気防食工法では、保護板、面状の流電陽極及びバックフィルを備えた流電陽極ユニットを、該バックフィルが防食対象面に接触するように、アンカーボルトを用いてコンクリート構造物に複数取り付けて使用する。特許文献1記載の電気防食工法においては、流電陽極ユニットどうしを接続するのに、面状の流電陽極から導出されるリード線の端部どうしを圧着スリーブなどを用いて結線する作業が必要であり、また、外部に露出しているリード線をパテ材又は発泡材などで被覆する作業も必要であり、設置に多大な時間と労力を要する。また、特許文献2記載の流電陽極方式による電気防食工法は、特許文献1記載の電気防食工法の改良技術に関するもので、流電陽極ユニットの配置作業効率の向上を図ったものであるが、防食対象面に面状の流電陽極を高密度で配置するという点では、特許文献1記載の電気防食工法と同じである。
真田、池谷、佐藤、石井、「道路橋のPC桁に用いた新しい線状陽極方式電気防食工法の防食効果と維持管理の省力化」、コンクリート工学年次論文集、Vol.32、No.1、第1025頁−第1030頁、2010年 青山、鴨谷、石井、「線状陽極を用いた電気防食の陽極設置の合理化に関する実験的検討」、コンクリート工学年次論文集、Vol.34、No.1、第1078頁−第1083頁、2012年 小林、大谷、堀越、「ニッケル被覆炭素繊維シートを陽極に用いた電気防食工法〜コンクリート構造物への新たな電気防食工法の開発〜」、第1回北陸橋梁保全会議報文集、第251頁−第256頁、2013年
特開平2−209494号公報 特開2008−57016号公報
流電陽極方式は、本来的に起電力が小さく防食電流の供給不足が懸念されることなどから、流電陽極としては従来、外部電源方式で使用される線状タイプは使用されず、面状タイプが使用され、且つその面状の流電陽極を防食対象面に高密度で敷き詰めることが行われている。図8には、従来の流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食構造の典型例が示されている。図8に示す電気防食構造20Zは、コンクリート構造物10の表面10Sに設置した複数枚(4枚)の面状の流電陽極パネル22と、コンクリート構造物10中の陰極としての鋼材11とがリード線21で電気的に接続された構成を有し、流電陽極パネル22から鋼材11に防食電流を供給するようになされている。図8に示すように、コンクリート構造物10に電気防食構造20Zを設置すると、その設置面であるコンクリート表面10Sの大部分が流電陽極パネル22によって被覆され、コンクリート表面10Sに露出部分がほとんど存在しない状態となる。このような従来の流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食構造は、流電陽極の設置作業の煩雑さに加えてさらに、防食対象面であるコンクリート表面の略全体が流電陽極で覆われることに起因して、コンクリートの状態を目視で観察することが困難、コンクリートの補強工事などの作業の実施が困難、などの課題があり、設置後の作業性の点でも改善の余地がある。
従って本発明の課題は、前述した従来の流電陽極方式が有する課題を解消し得る流電陽極ユニット及びコンクリート構造物の電気防食構造を提供することにある。
本発明者らは、外部電源方式の線状陽極を用いたコンクリート構造物の電気防食について種々検討した結果、従来使用されていないような小さな印加電圧で通電しても鋼材が防食状態に達することを、例えば非特許文献1〜3のデータから確認した。具体的には例えば、外部電源方式の線状陽極の自然電位0.0V(飽和塩化銀電極を基準に測定した電位)であるときに印加電圧約0.8Vで通電して防食状態に達していた。この印加電圧0.8Vは、流電陽極の自然電位−0.8V(飽和塩化銀電極を基準に測定した電位)に相当すると考えられる。斯かる事実から本発明者らは、流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食においても、従来の当業者の常識に反して、線状あるいはこれに準じた形状の流電陽極を使用し得ることを知見した。
本発明は、前記知見に基づきなされたもので、コンクリート構造物中の鋼材を流電陽極方式によって電気防食するための流電陽極ユニットにおいて、平面視帯状(線状又は棒状)の流電陽極本体と、該流電陽極本体と接触しつつその長手方向の全長にわたって連続する導電体とを具備する流電陽極ユニットである。
また本発明は、前記知見に基づきなされたもので、コンクリート構造物の表面に設置した陽極と、該コンクリート構造物中の陰極としての鋼材との間に防食電流を流す流電陽極方式の電気防食構造において、前記陽極が前記本発明の流電陽極ユニットであるコンクリート構造物の電気防食構造である。
本発明によれば、コンクリート構造物の鋼材を長期間にわたって電気防食することができ、しかも作業性に優れる流電陽極ユニット及び電気防食構造が提供される。
特に本発明の流電陽極ユニットは、「流電陽極方式で用いる流電陽極は面状」という従来当業者の常識を覆し、線状あるいはこれに準じた平面視帯状(線状又は棒状)の流電陽極を採用しているため、従来の面状の流電陽極の欠点が解消されている。具体的には本発明の流電陽極ユニットは、設置作業が容易で従来品よりコスト節減が可能であり、しかも従来の面状の流電陽極のように、防食対象面であるコンクリート表面に高密度で敷き詰める必要が無いため、電気防食の実施に必要な数を設置した後もなお、コンクリート表面の多くの部分が露出し得る離散的な配置形態を採ることが可能である。そのような流電陽極の離散的な配置形態によれば、流電陽極の非設置部分を介して、コンクリートの変色、汚れ、ひび割れの有無その他の表面状況が誰でも目視で観察点検することが可能となり、コンクリート構造物の所有者や管理者が安心して管理できる。
図1は、本発明のコンクリート構造物の電気防食構造の一実施形態の模式的な斜視図である。 図2は、図1のI−I線断面の模式的な断面図である。 図3は、図1に示す電気防食構造における流電陽極ユニットどうしの接続部分を模式的に示す上面図である。 図4は、本発明のコンクリート構造物の電気防食構造の他の実施形態の模式的な斜視図(図1相当図)である。 図5は、図4のII−II線断面の模式的な断面図(図2相当図)である。 図6は、本発明の流電陽極ユニットの他の実施形態の高さ方向に沿う断面の模式的な断面図(図2相当図)である。 図7は、図6に示す流電陽極ユニットどうしの接続部分を模式的に示す上面図(図3相当図)である。 図8は、従来の流電陽極方式によるコンクリート構造物の電気防食構造の模式的な斜視図(図1相当図)である。
以下、本発明の流電陽極ユニットについて、これを備えた本発明のコンクリート構造物の電気防食構造と共に、図面を参照して説明する。図1〜図3には、本発明のコンクリート構造物の電気防食構造の一実施形態である電気防食構造20Aが示されている。電気防食構造20Aは、コンクリート構造物10の表面10Sに設置した陽極と、コンクリート構造物10中の陰極としての鋼材11との間に防食電流を流す流電陽極方式の電気防食構造であり、該陽極としての流電陽極ユニット30Aと、流電陽極ユニット30Aと鋼材11とを電気的に接続するリード線21とを具備する。
流電陽極ユニット30Aは、平面視帯状換言すれば線状又は棒状の流電陽極本体31と、流電陽極本体31と接触しつつその長手方向Xの全長にわたって連続する導電体32とを具備する。流電陽極本体31は、鋼材11に比べて電位が卑である即ち低いため、導電体32及びリード線21で両者を接続すると、流電陽極本体31の溶解反応により、コンクリートを介してコンクリート構造物10中の鋼材11に防食電流を供給する。流電陽極ユニット30Aにおいては、斯かる構成を具備することで、継続的な使用によって流電陽極本体31が消耗してきても、流電陽極本体31と導電体32との導通が継続するため、コンクリート構造物中の鋼材を長期間にわたって電気防食することができる。
流電陽極本体31は流電陽極ユニット30Aの主体をなすものであり、流電陽極ユニット30Aの外部形状を実質的に決定する要素となり得るものであるところ、その流電陽極本体31の形状が平面視帯状、即ち平面視において一定の幅があって細長く続く形状をなしていることにより、流電陽極ユニット30Aも平面視帯状(線状又は棒状)あるいはそれに準じた外部形状をなすこととなる。その結果流電陽極本体31は、図8に示す電気防食構造20Zにおける流電陽極パネル22の如き、従来の面状の流電陽極に比して小型になり得るため、ハンドリング性の向上により作業性が向上し、流電陽極ユニット30Aの設置作業、複数の流電陽極ユニット30Aどうしの接続作業、設置された流電陽極ユニット30Aを新品と交換する交換作業など、流電陽極ユニット30Aを扱う種々の作業の効率向上が期待できる。また従来のように、流電陽極本体31を面状に圧延する必要がないから、大型の圧延設備及び複雑な技術を使用することなく流電陽極ユニット30Aを容易且つ低コストで製造できる。
また、流電陽極ユニット30Aの外部形状が比較的小型の平面視帯状(線状又は棒状)であることで、図1に示す通り、電気防食の実施に必要な複数の流電陽極ユニット30Aをコンクリート表面10Sに設置した後もなお、その表面10Sの多くの部分が露出し得る状態となり得る。電気防食構造20Aは、図1に示すように、流電陽極ユニット30Aを複数(8個)備えており、その複数の流電陽極ユニット30Aは、コンクリート表面10Sに所定の間隔を置いて間欠的に配置されている。より具体的には、複数の流電陽極ユニット30Aは、何れも平面視帯状をなしていて互いに同形状同寸法であり、長手方向Xに所定間隔を置いて複数(2個)が列状に配置され、且つその長手方向Xに延びる複数の流電陽極ユニット20Aの列が、長手方向Xと直交する幅方向Yに所定間隔を置いて複数(4列)間欠配置されている。
流電陽極ユニット30Aの配置形態が図1に示すような離散的な配置形態であれば、流電陽極ユニット30Aが設置されていないコンクリート露出部分が比較的多いためにコンクリートの目視観察が容易になり、それによってコンクリート構造物の状態把握が容易になり得るし、また、コンクリート構造物に何らかの工事が必要となった場合には、流電陽極ユニット30Aが設置されたままの状態でその工事を実施し得るようになる等、得られる利点は多い。流電陽極ユニット30Aの採用に起因する斯かる利点は、図8に示す如き従来の流電陽極の配置形態、即ち複数の流電陽極を実質的に隙間無く高密度で敷き詰める配置形態では得られ難いものである。
流電陽極本体31の素材としては、アルミニウム系、亜鉛系、マグネシウム系等の鋼材よりも低電位を示し、犠牲陽極として作用する金属又はこれらの合金を用いることができる。流電陽極本体31は、金属素材を鋳造する、又は押出し成形することなどによって製造することができる。
流電陽極本体31の大きさ及び配置数などは、電気防食構造20Aの電気防食効果を決定づける要素であり、これらを適宜設定することで電気防食を行う期間を調節できる。
流電陽極本体31の平面視における幅、即ち流電陽極本体31の長手方向Xと直交する幅方向Yの長さは、一般的な塩害環境下であれば、好ましくは10〜150mm、さらに好ましくは30〜50mmである。従来汎用されている面状の流電陽極の平面視における寸法は、例えば図8に示す流電陽極パネル22の如き平面視四角形形状のものであれば、縦200〜400mm、横200〜500mmであり、流電陽極本体31に比して大型である。流電陽極本体31の幅が短すぎると、防食性能の低下が懸念される他、ハンドリング性についても却って低下するおそれがある。また、流電陽極本体31の長手方向Xの長さは、特に制限されないが、運搬又は移動時の作業性等を考慮すると、最大で10000mm程度である。
流電陽極ユニット30Aの配置数は、防食対象の状態等によって適宜設定するものであり、特に限定されるものではないが、例えば流電陽極本体31の幅が前記範囲にある場合、防食効果と作業性とのバランスの観点から、設置面1m2当たり、好ましくは2〜9個、さらに好ましくは3〜5個である。
同様の観点から、流電陽極ユニット30Aの電気防食対象部位の全面積(図1に示す形態の場合、コンクリート表面10Sの面積)に対する、流電陽極ユニット30Aの設置部分の総面積(図1に示す形態の場合、8個の流電陽極ユニット30Aに覆われている部分の総面積)の割合は、好ましくは20〜80%、さらに好ましくは20〜30%である。
本実施形態において導電体32は、図1〜図3に示すように線状をなし、1本の線状の導電体32が、流電陽極本体31の内部を通って長手方向Xに延び且つ流電陽極本体31の長手方向端から外方に延出している。即ち流電陽極ユニット30Aでは、線状の導電体32が流電陽極本体31の内部を通ってこれを長手方向Xに貫通する形態が採用されている。斯かる形態においては、流電陽極本体31と導電体32とが一体不可分に形成されている。
尚、本発明に係る導電体の形状は、線状に限定されず、後述する図6に示す実施形態のように、流電陽極本体31を収容し得る形状及び大きさを有するものであっても良いが、強度、導体抵抗及び結線処理を考慮すると、本実施形態のように線状が好ましい。線状の導電体32の直径(導電体32の長手方向と直交する方向に沿う断面が真円形状でない場合は、最も長い部分の長さ)は、例えば直径1〜3mmである。導電体32の材質としては、導電性を有するものであれば良くて特に制限されず、鉄鋼又は銅が一般的であるが、耐食性の高いチタン、チタン合金、ニッケル基合金、ステンレス鋼などを選択した場合には、導電体32を介しての流電陽極ユニット30Aどうしの接続部分における保護処理が不要となるため好ましい。
図3には、電気防食構造20Aにおける流電陽極ユニット30Aどうしの接続部分が示されている。特許文献1に記載の如き従来の流電陽極方式では、流電陽極どうしを接続するのに別体のリード線が必要であったが、本実施形態のように、流電陽極本体31(収容体34)の長手方向端から線状の導電体32が延出している、さらに言えば、流電陽極ユニット30Aの長手方向端が導電体32であると、複数の流電陽極本体31どうしを接続する場合に、別体のリード線を用いる必要はなく、この導電体32の延出部分どうしを溶接などの公知の接続手段によって接続するだけで良いため、流電陽極本体31どうしの接続作業の効率向上が期待できる。本実施形態においては図3に示すように、一方の流電陽極ユニット30Aの導電体32の長手方向Xの端部と、他方の流電陽極ユニット30Aの導電体32の長手方向Xの端部とが、圧着スリーブ37内に挿入された状態で圧着されており、これにより複数の流電陽極本体31どうしの導電体32を介しての電気的な接続がなされている。
流電陽極ユニット30Aにおける「線状の導電体32が流電陽極本体31の内部を通ってこれを長手方向Xに貫通する形態」の製造方法としては、例えば、1)流電陽極本体31の鋳造素材と導電体32とを公知の鋳造成形又は押出加工によって一体的に成形する方法、あるいは2)流電陽極本体31の鋳造素材から鋳造された流電陽極本体31の長手方向端から線状の導電体32が突出するように絞り加工して一体的に成形する方法が挙げられる。
本実施形態において複数の流電陽極ユニット30Aはそれぞれ、図1〜図3に示すように、流電陽極本体31及び導電体32に加えてさらに、流電陽極本体31の周囲に配置されたイオン伝導体のいわゆるバックフィル33と、流電陽極本体31及びバックフィル33を収容し保護する収容体34とを具備している。バックフィル33は、流電陽極本体31の物理的に保護すると共に、流電陽極本体31の溶解反応を活性化させる機能を有し、斯かる機能が安定的に発現されるよう、流電陽極本体31と接触しつつこれを内包するように配置されている。このように流電陽極ユニット30Aが、その一構成部材である収容体34に他の構成部材が収容された形態をなしていることにより、流電陽極ユニット30Aの設置・交換作業が簡便なものとなり、斯かる作業を迅速に行うことが可能となるため、工事期間の短縮、コスト節減を図ることができる。
バックフィル33としては、従来使用されているものを特に制限なく用いることができ、例えば、セルロース系繊維の吸水体に塩化マグネシウム水溶液を含浸させた保水体、ベントナイト及び塩化マグネシウムを含んだペースト(特許文献1参照)、塩化マグネシウムとセメントと水との混合物(特開2015−145527参照)、強アルカリ水溶液を吸水させた吸水性高分子などが挙げられる。
本実施形態において収容体34は浅いトラフ状容器であり、図2及び図3に示すように、バックフィル33の収容部34aと、収容部34aの開口縁部(流電陽極ユニット30Aの設置面10Sに最も近接する部分)から幅方向Yの外方に延在する固定部34bとを有し、固定部34bにて、ピン、アンカーボルト等の固定具35により、コンクリート表面10Sに固定されている。固定具35は、コンクリート表面10S及びその近傍に埋設された樹脂プラグ36に挿入されている。図3に示すように、収容部34aの長手方向Xの両端部それぞれには、バックフィル33の外部への流出を防止するための流出防止材38が配置されている。流出防止材38としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、発泡ポリエチレン、発泡ポリウレタンを用いることができる。
収容体34の材質としては、従来バックフィルの収容体として使用されているものを特に制限なく用いることができ、例えば、耐候性塩化ビニル、ポリエステル、エポキシ、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル、ポリカルボナート、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリエーテル・エーテル・ケトン樹脂(PEEK)等の樹脂;チタン、ステンレス鋼等の金属;ガラス繊維強化プラスチック(FRP)、ガラス、セラミックが挙げられる。
図4〜図7には、本発明の他の実施形態が示されている。後述する他の実施形態については、前記実施形態と異なる構成部分を主として説明し、同様の構成部分は同一の符号を付して説明を省略する。特に説明しない構成部分は、前記実施形態についての説明が適宜適用される。尚、本明細書に記載された一の実施形態のみが有する部分は、すべて適宜相互に利用できる。
図4及び図5に示す流電陽極ユニット30B及びそれを用いた電気防食構造20Bにおいては、1個の流電陽極ユニット30Bにつき、線状の導電体32とこれを包囲する流電陽極本体31とからなる複合体40が複数(2個)配されており、その複数の複合体40どうしは、図5に示すように、幅方向Yに互いに接触しつつ併設されている。複数の複合体40においては、それぞれ、1本の線状の導電体32が、流電陽極本体31の内部を通ってその長手方向Xの全長にわたって延びている。1個の流電陽極ユニット30Bにおける複数の複合体40のうちの1つにおいては、図4に示すように、線状の導電体32が、流電陽極本体31(収容体34)の長手方向端から外方に延出しており、その延出部がリード線21に接続されている。複合体40の断面形状は特に制限されず、図5に示す如き円形状の他、図2に示す如き略長方形形状、楕円形状など、適宜選択可能である。
また、流電陽極ユニット30Bにおいては、収容体34自体が、流電陽極ユニット30Bをコンクリート表面10Sに固定するための固定手段(流電陽極ユニット30Aにおける固定部34bに相当する部位)を具備しておらず、その代わりに、収容体34とは別体のサドル等の固定体39が採用されている。固定体39は、図4及び図5に示すように、収容体34の外面に沿ってこれを幅方向Yに横断し、収容体34の長手方向Xに沿う両側面それぞれから幅方向Yの外方に延出する部分を有しており、その延出部にて、固定具35によりコンクリート表面10Sに固定されている。1個の流電陽極ユニット30Bにつき、複数の固定体39が長手方向Xに間欠配置されてこれをコンクリート表面10Sに固定している。電気防食構造20Bによっても、電気防食構造20Aと同様の効果が奏される。
図6に示す流電陽極ユニット30Cにおいては、収容体34(収容部34a、固定部34b)が、導電性素材例えば金属からなり、「流電陽極本体31と接触しつつその長手方向Xの全長にわたって連続する導電体」として機能する。従って流電陽極ユニット30Cにおいては、流電陽極ユニット30A(図2参照)が具備していた線状の導電体32は不要であり、導電体32を省略することができるが、その代わりに図6に示すように流電陽極本体31を、導電体として機能する収容体34と接触するように配置する。
図7には、図6に示す流電陽極ユニット30Cどうしの接続部分が示されている。前述した通り、流電陽極ユニット30Cにおいては収容体34が導電体として機能するため、複数の流電陽極ユニット30Cどうしの電気的な接続は、一方の流電陽極ユニット30Cの収容体34と他方の流電陽極ユニット30Cの収容体34とを互いに接触させることでなされる。図6及び図7に示す形態においては、一方の収容体34と他方の収容体34との境界を跨ぐように金属製の導通プレート41を配置し、その導通プレート41を、収容体34をコンクリート表面10Sに固定する固定具35で固定している。流電陽極ユニット30Cによっても、流電陽極ユニット30Aと同様の効果が奏される。
10 コンクリート構造物
10S コンクリート表面
11 鋼材
20A,20B,20Z コンクリート構造物の電気防食構造
21 リード線
22 流電陽極パネル
30A,30B,30C 流電陽極ユニット
31 流電陽極本体
32 導電体(電子伝導体)
33 バックフィル(イオン伝導体)
34 収容体
34a 収容部
34b 固定部
35 固定具
36 樹脂プラグ
37 圧着スリーブ
38 流出防止材
39 固定体
40 流電陽極本体と導電体との複合体
41 導通プレート

Claims (7)

  1. コンクリート構造物のコンクリート表面に設置され、該コンクリート構造物中の鋼材を流電陽極方式によって電気防食するための流電陽極ユニットにおいて、
    幅が30〜150mmの平面視帯状の流電陽極本体と、該流電陽極本体と接触しつつ該流電陽極本体の長手方向の全長にわたって連続する導電体とを具備する流電陽極ユニット。
  2. 前記導電体は線状をなし、前記流電陽極本体の内部を通って前記長手方向に延び且つ該流電陽極本体の長手方向端から外方に延出している請求項1に記載の流電陽極ユニット。
  3. 前記流電陽極本体と前記導電体とが一体不可分に形成されている請求項に記載の流電陽極ユニット。
  4. さらに、前記流電陽極本体の周囲に配置されたバックフィルと、該バックフィルを収容する収容体とを具備する請求項1〜のいずれか一項に記載の流電陽極ユニット。
  5. コンクリート構造物中の鋼材を流電陽極方式によって電気防食するための流電陽極ユニットにおいて、
    平面視帯状の流電陽極本体と、該流電陽極本体と接触しつつ該流電陽極本体の長手方向の全長にわたって連続する導電体と、該流電陽極本体の周囲に配置されたバックフィルと、該バックフィルを収容する収容体とを具備し、
    前記収容体が前記導電体として機能する流電陽極ユニット。
  6. コンクリート構造物の表面に設置した陽極と、該コンクリート構造物中の陰極としての鋼材との間に防食電流を流す流電陽極方式の電気防食構造において、
    前記陽極が請求項1〜のいずれか一項に記載の流電陽極ユニットであるコンクリート構造物の電気防食構造。
  7. 複数の前記流電陽極ユニットが前記コンクリート構造物の表面に間欠的に配置されている請求項6に記載のコンクリート構造物の電気防食構造。
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