JP3798189B2 - コンクリート構造物の補修方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼構造物やコンクリート構造物、例えば橋梁、建築物の桁、梁、柱、スラブ等の鉄筋などの鋼材の防食に用いられる電極体に関し、更に詳しくは外部電源方式電気防食法に使用される陽極(アノード)電極を用いたコンクリート構造物の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
古来人類は、地球上に大量に存在し、比較的簡単に精錬でき加工性が良く安価で安定性のある金属として、大量の鉄(Fe)を利用してきた。しかし、近年、塩や酸性環境下の鋼構造物やコンクリート構造物中の鉄筋などの腐食が社会的な問題となっている。これは鋼構造物や鉄筋として使用される鉄(Fe)の化学的な性状が、通常の環境下ではその表面に薄い酸化鉄の不動態膜で覆われ安定しているが、海洋などの塩分環境下や環境汚染などによる酸性環境下ではその不動態膜が破壊され酸化が内部にまで進行し、ついには構造物の破壊にまで至る事態が発生するからである。
【0003】
このことは古くから認識されており、その対策として、鉄の表面に異種金属をメッキするなどの腐食を防止する手段が実施されてきた。この手段には二通りあって、鉄(Fe)と化学的性質(イオン化傾向)の異なる亜鉛(Zn)や錫(Sn)をメッキしたもので、前者はトタン板、後者はブリキ板として知られている。トタン板は鉄よりイオン化傾向の大きい(腐食し易い)亜鉛をメッキすることによって、鉄自体よりも先に亜鉛を腐食させ、亜鉛を犠牲にして鉄を腐食から守ろうとするのに対し、後者のブリキ板は鉄よりイオン化傾向の小さい(腐食し難い)錫をメッキすることによって、鉄自体を覆い鉄を腐食から守ろうとする違いがある。
【0004】
近年金属の腐食のメカニズムが解明され、金属の持つ固有の化学的性質(自然電位差)を積極的に利用して化学的性質の異なる異種金属を組合せて電気的に腐食を防止する電気防食技術が開発されている。電気防食技術には流電陽極方式、外部電源方式の二通りの方法があり、いずれも鉄を陰極(カソード)とし、これに対する異種金属を陽極(アノード)として利用するものである。
【0005】
流電陽極方式は、鉄よりイオン化傾向の大きい(低電位の)、亜鉛やアルミニウム合金、マグネシウム合金などの犠牲電極片を陽極として、鉄の被防食体に添設しておき、自然界の電界質例えば海水中に浸漬し電気的回路を形成するものである。この電気回路が形成されると金属のもつ固有の電位差によって電流が流れ、鉄よりイオン化傾向の大きい亜鉛などの陽極がイオン化して溶出し、その陽極を犠牲にして被防食体である鉄の腐食が防止される。この方式は設置が簡単で特別な設備を必要しないこと等の利点はあるものの、犠牲となる陽極金属片の定期的な交換の必要性があり、また制御が難しいという欠点がある。
【0006】
外部電源方式は、被防食体の鉄よりイオン化傾向の小さい金属、例えば白金などの貴金属を用いることが望ましいが高価であることから、白金メッキチタン線や鉛合金、黒鉛などを陽極片として用いる。そして、被防食体及び陽極片からそれぞれリード線を引き出し、これらを直流電源に接続し、電源から防食電流を流すことによって被防食体の腐食を防止するものである。防食の制御は直流電源の出力電圧を制御することによって簡単に行うことができる。電源のメンテナンスなどを必要とするが、電極体の交換などを必要としない利点がある。
【0007】
本発明者は、この外部電源方式の防食技術を橋桁に適用する技術を特開平6−158365号公報にて開示した。この技術は陽極として白金メッキチタン線の不溶性電極線条を被防食材である鋼材と一定間隔を保持するように電極線条に張力を付与し展張する技術である。このようにしたのは電極間の間隔が変動すると流れる防食電流が不均一になり防食効果を阻害するためである。従来の電極は細線状、細線をメッシュ状に織ったもの、又は薄いリボン状の形状のものが用いられていた。これらの電極は剛性が小さく変形し易く被防食体と均一な間隔に配設するには問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は簡単に配設することが可能で、被防食体との間隔を均一に保持することができ、被防食体と電極が直接接触することのないアノード電極体の開発を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、Tiを主成分とする金属薄板からなる電極、またはTiを主成分とする金属細線をメッシュ状に織って帯状に形成した電極を、モルタル又はコンクリートで被覆して外部電源方式のアノード電極体を形成しておき、鉄筋の腐食によってコンクリートが剥離した既設コンクリート構造物の剥離部分のコンクリートをはつり取り、鉄筋及びPC鋼材の除錆を行い、該アノード電極体をコンクリート中に埋装し、骨材及び充填モルタルを充填してはつり部分を復旧し、該アノード電極体に外部電源を接続し、鉄筋の腐食が再発しないように、コンクリート構造物を補修することを特徴とするコンクリート構造物の補修方法である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施例のアノード電極体1を示す斜視図である。帯状電極2をモルタル3で角棒状に被覆してある。帯状電極2は金属細線をメッシュ状に織って帯状に形成したものでもよく、金属薄板からなるものでもよい。アノード電極体1の長さは製造容易で取り扱い容易の観点から、約1m程度に成形されている、帯状電極の断面積は、例えば0.1cm2程度でよく、モルタルの被覆角棒の寸法は、厚さ2.5cm程度とする。角棒端部から電極の端部を露出して接続片4としておき、構造物に電極体を配設するときは接続片4同士をスポット溶接等の手段で接続し、所望の長さとして使用すればよい。電極金属として被防食体である鉄筋の鉄(Fe)より自然電位が高く耐久性に富むチタン(Ti)細線をメッシュ(グリッド)状に形成した電極を使用したが、材料はこれに限定するものではない。使用可能な電極金属としては、鉄より電位の高い材料であればよく、ニッケル、錫、鉛、銅、銀、金、白金など及びこれらの合金材、メッキ材などをコストを勘案して選択すればよい。
【0011】
図2は橋桁10の断面図で、新規に桁を製作する場合のアノード電極体の配設図である。橋桁10の底面近傍のコンクリート中にアノード電極体1を配設してある。これは、橋桁10の製作時に橋桁10の底版型枠の上にモルタルで被覆したアノード電極体1を所定の長さに接続して配置し、アノード電極体1をスペーサとして利用して桁の必要な鉄筋11及びPC鋼材12を組み込み、側型枠を建て込み、通常の方法でコンクリート13を打設し成形したものである。このアノード電極体1をスペーサとするのではなく鉄筋11に結束線で固定し、別体のスペーサを使用してもよい。
【0012】
図3は鉄筋の腐食によってコンクリートが剥離したコンクリート桁10の補修にアノード電極体1を適用した例を示した。剥離部分の桁10のコンクリート13をはつり取り、鉄筋11及びPC鋼材12の除錆を行い。さらに必要であれば防食塗装を施し、健全部分のコンクリートにインサート15を埋設して正規のコンクリート断面に復元するための型枠14をボルト16で取付け、骨材17及び充填モルタルを充填して補修した例である。この場合補修後の鉄筋などの腐食が再発しないように、防食のためにアノード電極体1を埋装した。
【0013】
図4は本発明のアノード電極体1を使用する外部電源方式の電気防食法の説明図である。コンクリート13中に埋装されたアノード電極から及びコンクリート桁10の構造鉄筋11からそれぞれリード線24、25を引き出し、外部に設置された直流電源21に接続する。アノード電極体1の電極のリード線24は、直流電源21のプラス(+)端子22に、鉄筋11からのリード線25は直流電源21のマイナス(−)端子23に接続する。このようにすることにより、直流電源21のプラス側からアノード電極1に防食電流が流れ鉄筋11の腐食が防止される。この直流電源21は大容量のものが必要な場合は、商用交流電源を整流して用いるとよい。
【0014】
以上はコンクリート桁に適用した例で説明したが、桁に限らず他のコンクリート構造物の鉄筋の防食が可能である。更にコンクリート構造物に限定されず鋼構造物の鋼部材にアノード電極を添設配置することによって鋼部材そのものの防食を図ることも可能である。
【0015】
【発明の効果】
本発明のアノード電極体は、鉄筋より自然電位の高いチタンを使用した外部電源方式の陽極電極を用い、薄板帯状の金属板、又は金属細線をメッシュ状に織った帯状の電極を、モルタルまたはコンクリートで角棒状に被覆し、角棒の長手方向端面から電極の端部を露出して接続片としたもので、モルタルで被覆することにより電極自体が鉄筋に直接接触することもなく、正確な電極間の間隔を確保することができ、均一な防食電流を流すことが可能となり、鉄筋などの被防食体の確実な腐食の防止が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例のアノード電極体の斜視図である。
【図2】橋桁の断面図である。
【図3】鉄筋の腐食によってコンクリートが剥離したコンクリート桁の補修に適用した例の説明図である。
【図4】アノード電極体を使用する外部電源方式の電気防食法の説明図である。
【符号の説明】
1 アノード電極体
2 電極
3 被覆体(モルタル又はコンクリート)
4 接続片
10 コンクリート桁(橋桁)
11 鉄筋
12 PC鋼材
13 コンクリート
14 型枠
15 インサート
16 ボルト
17 骨材
21 直流電源
22 (+)極端子
23 (−)極端子
24、25 リード線
Claims (1)
- Tiを主成分とする金属薄板からなる電極、またはTiを主成分とする金属細線をメッシュ状に織って帯状に形成した電極を、モルタル又はコンクリートで被覆して外部電源方式のアノード電極体を形成しておき、鉄筋の腐食によってコンクリートが剥離した既設コンクリート構造物の剥離部分のコンクリートをはつり取り、鉄筋及びPC鋼材の除錆を行い、該アノード電極体をコンクリート中に埋装し、骨材及び充填モルタルを充填してはつり部分を復旧し、該アノード電極体に外部電源を接続し、鉄筋の腐食が再発しないように、コンクリート構造物を補修することを特徴とするコンクリート構造物の補修方法。
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