JP3840683B2 - 単結晶引上方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体融液より半導体単結晶を引き上げる単結晶引上方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)等の半導体単結晶を成長させる方法の一つとして、CZ法が知られている。
【0003】
このCZ法(以下、便宜的に「通常CZ法」と称す。)は、石英製のルツボ中において半導体原料を溶解させて半導体融液とし、この半導体融液から種結晶に導かせて半導体単結晶を成長させ半導体単結晶を引き上げる方法である。
このような通常CZ法は、大口径、高純度の単結晶が無転位あるいは格子欠陥の極めて少ない状態で容易に得られること等の特徴を有することから、様々な半導体単結晶の成長に用いられている方法である。
【0004】
しかしながら、通常CZ法においては、半導体単結晶を引き上げるにつれて半導体融液の量が減少するため、不純物の偏析現象により、引上軸方向において不純物濃度が変化してしまうという欠点があった。
【0005】
上記欠点を避ける技術として、CCZ法が提案されている。
このCCZ法は、初期半導体融液に対して原料を連続的に供給することにより、同時に所定量のドーパントを連続的または間欠的に供給することにより半導体融液の量を一定とする条件のもとで、半導体単結晶の引上を行う方法であって、引上軸方向における不純物濃度を一定として一層高品質な半導体単結晶を成長させ得る方法である。
【0006】
上記CCZ法の改良型の一つにいわゆる二重ルツボを用いた連続チャージ型磁界印加CZ法(以下、「CMCZ法」と称す。)が提案されている。この方法は、CCZ法において、外部からルツボ内の半導体融液に磁界を印加することにより半導体融液内の対流を抑制し得るものであり、極めて酸素濃度の制御性が良く単結晶化率が高い単結晶を成長させることができる方法であると言われている。
【0007】
図2は、上記CMCZ法を用いたシリコンの単結晶引上装置の一例を示すものであり、特開平4−305091号公報記載の図である。この単結晶引上装置1は、中空の気密容器であるチャンバ2内に、二重ルツボ3、ヒーター4、原料供給装置5がそれぞれ配置され、該チャンバ2の外部にマグネット6が配置されている。
【0008】
二重ルツボ3は、略半球状の石英(SiO2 )製の外ルツボ11と、該ルツボ11内に設けられた円筒状の仕切り体である石英(SiO2 )製の内ルツボ12とから形成され、該内ルツボ12の側壁には、内ルツボ12と外ルツボ11との間(原料融解領域)と内ルツボ12の内側(結晶成長領域)とを連通する連通孔13が複数個形成されている。
【0009】
この二重ルツボ3は、チャンバ2の中央下部に垂直に立設されたシャフト14上のサセプタ15に載置されており、前記シャフト14の軸線を中心として水平面上で所定の角速度で回転する構成になっている。そして、この二重ルツボ3内には半導体融液(加熱融解された半導体単結晶の原料)21が貯留されている。
【0010】
ヒーター4は、半導体の原料をルツボ内で加熱・融解するとともに、生じた半導体融液21を保温するもので、通常、抵抗加熱が用いられる。原料供給装置5は、所定量の半導体の原料22を外ルツボ11と内ルツボ12との間の半導体融液21面上に連続的に投入するものである。
【0011】
マグネット6は、二重ルツボ3の外方から二重ルツボ3内の半導体融液21に磁界を印加することで、半導体融液21内で発生するローレンツ力により該半導体融液21の対流の制御および酸素濃度の制御、液面振動の抑制等を行うものである。
【0012】
上記原料供給装置5から供給される原料22としては、例えば、多結晶シリコンのインゴットを破砕機等で破砕してフレーク状にしたもの、あるいは、気体原料から熱分解法により粒状に析出させた多結晶シリコンの顆粒が好適に用いられ、必要に応じてホウ素(B)(p型シリコン単結晶を作る場合)やリン(P)(n型シリコン単結晶を作る場合)等のドーパントと呼ばれる添加元素がさらに供給される。
また、ガリウムヒ素(GaAs)の場合も同様で、この場合、添加元素は亜鉛(Zn)もしくはシリコン(Si)等となる。
【0013】
上記の単結晶引上装置1により、内ルツボ12の上方かつ軸線上に配された引上軸24に種結晶25を吊り下げ、半導体融液21上部において種結晶25を核として半導体単結晶26を成長させる。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記CMCZ法においては、半導体単結晶の引上終了時において、通常CZ法と比較して多量の残融液が残ることになり、結果的に半導体原料の利用率が低くなってしまうという問題点があった。
【0015】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、半導体原料の利用率を向上し得る単結晶引上方法を提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明の単結晶引上方法においては、外ルツボと該外ルツボ内に設けられた内ルツボとから形成され、該内ルツボの側壁に前記内ルツボと前記外ルツボとの間である原料融解領域と内ルツボの内側である結晶成長領域とを連通する連通孔が形成されるとともに、原料融解領域の半導体融液面上に原料を投入する原料供給装置を備える二重ルツボにおいて、CZ法により結晶成長領域で半導体の単結晶を引き上げる方法であって、
原料供給装置により半導体融液量を一定とするよう原料を連続的に供給しながら定径の半導体単結晶を引き上げる工程と、
原料供給装置からの原料供給を停止して前記工程における残融液をもととして定径の半導体単結晶を引き上げ、引き上げ終了時まで原料供給を停止する工程とを有し、
初期融液量と前記原料供給装置から供給された供給量とからなる原料総量Wtに対する前記半導体単結晶の重量のうち上端部及び下端部を除いた部分の有効製品量W1の比の値W1/Wtを77%以上とする。
この方法であると、まず、原料を連続的に供給するCCZ法により半導体単結晶を引き上げる。そして、この際の残融液を原料融液として通常CZ法により半導体単結晶を引き上げる。すなわち、残融液量の多いCCZ法で操作を終了せずに、残融液量の少ない通常CZ法で操作を終了するので、引上終了時における残融液の量が少ない。
【0017】
本発明の単結晶引上方法においては、外ルツボと該外ルツボ内に設けられた内ルツボとから形成され、該内ルツボの側壁に前記内ルツボと前記外ルツボとの間である原料融解領域と内ルツボの内側である結晶成長領域とを連通する連通孔が形成されるとともに、原料融解領域の半導体融液面上に原料を投入する原料供給装置を備える二重ルツボにおいて、CZ法により結晶成長領域で半導体の単結晶を引き上げる方法であって、
半導体融液量を一定とするよう原料供給装置により原料を連続的に供給しながら定径の半導体単結晶を引き上げる工程と、
該工程に引き続いて半導体単結晶の定径部の引上終了時点まで原料供給装置からの原料供給量を徐々に減少させつつ半導体単結晶を引き上げるとともに、ドーパント量を原料の供給量の減少量に対応させて減少させつつ供給する工程とを有し、
初期融液量と前記原料供給装置から供給された供給量とからなる原料総量Wtに対する前記半導体単結晶の重量のうち上端部及び下端部を除いた部分の有効製品量W1の比の値W1/Wtを77%以上とする。
この方法であると、まず、原料を連続的に供給するCCZ法により半導体単結晶を引き上げる。引き続いて、原料の供給量を徐々に減少させつつCCZ法により半導体単結晶を引き上げる。この場合、原料の供給量を徐々に減少させることにより、引上終了時点における残融液量が低減されることに加えて、ドーパント量を原料の供給量の減少量に対応させて減少させつつ供給することにより、偏析等による不純物濃度の変動を補償して、不純物濃度が一定に維持され品質が安定する。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0019】
〔第1実施形態〕
図1(a)は、本発明の単結晶引上方法の第1実施形態における原料供給パターンを、縦軸を単位時間あたりの原料供給量(原料供給率と同義)、横軸を時間として示している。
本発明の単結晶引上方法の第1実施形態は、例えば、図2に示す単結晶引上装置を利用してなされ、その際、図3に示すような半導体単結晶30が得られる。この半導体単結晶30は、CCZ法の一種であるCMCZ法による部分Aと、通常CZ法による部分Bと、両端部C、Cとから形成されている。
【0020】
次に、1例として、本実施形態の単結晶引上方法を使用したシリコンの半導体単結晶成長方法について、図2を参照して説明する。
【0021】
〔初期原料融解工程〕
まず、多結晶シリコン塊等の多結晶原料を所定量だけ外ルツボ11内に入れ、チャンバ2内を真空ポンプ等で排気し真空状態とする。また、チャンバ2内に、雰囲気ガスであるアルゴン(Ar)等の不活性ガスを導入し、シャフト14を軸線の中心として所定の角速度で水平面上で回転させることで外ルツボ11を所定の角速度で回転させながら、ヒーター4に通電し外ルツボ11内の多結晶原料を単結晶成長温度以上の温度まで加熱し、この原料を完全に融解して、初期半導体融液(図示せず)とする。
【0022】
〔二重ルツボ形成工程〕
原料が完全に融解した後、ヒーター4による加熱を若干弱めるとともに、外ルツボ11の上方に軸線を同じくして配される内ルツボ12を半導体融液21内に載置し、二重ルツボ3を形成する。
【0023】
〔単結晶成長の第1工程(CMCZ法)〕(0<t<t1
二重ルツボ3を形成した後、マグネット6に通電して所定の磁界を印加し、ヒーター4の電力を調整して半導体融液21の中央液面23付近を単結晶成長温度に保ち、引上軸24により吊り下げられた種結晶25を半導体融液21になじませた後、この種結晶25を核として半導体単結晶を成長させる。この場合、種結晶を無転位化した後にこの単結晶の径を徐々に大口径化し定径の半導体単結晶26とする。
【0024】
この結晶成長過程においては、半導体単結晶26の成長量(引上量)に応じてシリコンの粒状の原料22を図1(a)に示すように一定の供給率にて連続的に投入するとともに、必要に応じてドーパントを連続的または間欠的に投入する。この投入された原料22およびドーパントは、外ルツボ11と内ルツボ12との間の領域(原料融解領域)で融解し、連通孔13を通って内ルツボ12内に連続的に供給される。
【0025】
〔単結晶成長の第2工程(CMCZ法)〕(t1<t<t2
所定長の半導体単結晶26が得られた後に、図1(a)に示すように、原料22の供給量を短時間(t1 <t<t2 )の間に減少させて、供給を停止する。このとき、原料22の供給量の減少率に対応させて半導体融液21の液面23高さを一定に維持するように、二重ルツボ3を上昇させる。
【0026】
〔単結晶成長の第3工程(通常CZ法)〕(t2<t<t3
次に、図1(a)に示すように、原料22の供給を停止させた状態で、第2工程における残融液をもととして半導体単結晶26を引き上げる工程を行う。このとき、半導体融液21の液面23高さを一定に維持するように、二重ルツボ3を上昇させる。
以上のようにして、半導体単結晶30(図3に図示)を成長させることができる。
【0027】
上記単結晶引上方法においては、残融液量の多いCCZ法で操作を終了せずに、残融液量の少ない通常CZ法で操作を終了するので、引上終了時における残融液の量を少なくすることができ、半導体原料22の利用率を向上して生産性を高めることができる。
【0028】
〔第2実施形態〕
本実施形態が、上記第1実施形態と相違するのは、原料供給パターンのみであり、他は同様である。
本実施形態においては、原料22の供給は、図1(b)に示す原料供給パターンでなされる。
【0029】
次に、本実施形態の単結晶引上方法について説明するが、ここで、〔初期原料融解工程〕、〔二重ルツボ形成工程〕、〔単結晶成長の第1工程(CMCZ法)〕(0<t<t1)については、同様であるので、説明を省略する。
【0030】
〔単結晶成長の第2工程(CMCZ法)〕(t1<t<t3
所定長の半導体単結晶26が得られた後に、原料22の供給量を徐々に、本実施形態の場合、図1(b)に示すように、定径部の引上終了時点で供給量が零となるように時間に比例させて減少させる。このとき、投入するドーパントの量については、原料の供給量の減少量に対応させて減少させるわけであるが、半導体融液量の減少に基づく偏析量の変化を考慮して、不純物濃度の変動を補償し得るように行う。
以上のようにして、半導体単結晶を成長させることができる。
【0031】
本実施形態においては、原料22の供給量を徐々に減少させつつCCZ法により半導体単結晶を引き上げることにより、引上終了時点における残融液量を低減し得ることに加えて、ドーパント量を原料22の供給量の減少量に対応させて減少させることにより、偏析等による不純物濃度の変動を補償して、不純物濃度を一定に維持することができ、半導体単結晶の品質を安定させることができる。
【0032】
【実施例】
〔第1実施形態に基づく実験例〕
上記第1実施形態に基づく単結晶引上方法を実施して、図3に示すような半導体単結晶30を得た。このとき、各部の重量は、以下の通りである。
Figure 0003840683
したがって、半導体原料の利用率は、W1÷Wt=約77%であり、約8割である。
【0033】
〔比較例1〕
上記単結晶引上方法とは異なり、CMCZ法のみにて単結晶の引上を行い、図4に示すような半導体単結晶40を得た。このとき、各部の重量は、以下の通りである。
Figure 0003840683
したがって、半導体原料の利用率は、W1÷Wt=約61%であり、約6割である。
すなわち、上記実験例と比較して、残融液41の量が多いとともに、半導体原料の利用率も低いことは明らかである。
【0034】
〔比較例2〕
上記いずれの単結晶引上方法とも異なり、通常CZ法のみにて単結晶の引上を行い、図5に示すような半導体単結晶50を得た。このとき、各部の重量は、以下の通りである。
Figure 0003840683
したがって、半導体原料の利用率は、W1÷Wt=約54%である。
すなわち、上記実験例と比較して、半導体原料の利用率が低いことは明らかである。
この比較例2の場合、初期融液の量を130kgにすれば、この実験例と同じ半導体原料の利用率となるが、そのためには大口径で深さの大きい石英ルツボを使用する必要があり、成長用部材のコストの上昇や引上軸方向における酸素濃度、不純物濃度の大きな変化等の問題が生じる。
【0035】
【発明の効果】
本発明の単結晶引上方法によれば、以下の効果を奏する。本発明の単結晶引上方法によれば、残融液量の多いCCZ法で操作を終了せずに、残融液量の少ない通常CZ法で操作を終了するので、引上終了時における残融液の量を少なくすることができ、半導体原料の利用率を向上して生産性を高めることができる。本発明の単結晶引上方法によれば、原料の供給量を徐々に減少させつつCCZ法により半導体単結晶を引き上げることにより、引上終了時点における残融液量を低減し得ることに加えて、ドーパント量を原料の供給量の減少量に対応させて減少させることにより、偏析等による不純物濃度の変動を補償して、不純物濃度を一定に維持することができ、半導体単結晶の品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の単結晶引上方法における原料供給パターンを時間経過に沿って示すグラフであり、(a)は第1実施形態に基づく原料供給パターンを示しており、(b)は第2実施形態に基づく原料供給パターンを示している。
【図2】 単結晶引上装置の一例を示す断面図である。
【図3】 本発明の単結晶引上方法の第1実施形態に基づく実験例により成長させた半導体単結晶を概略的に示す図である。
【図4】 従来の単結晶引上方法により成長させた半導体単結晶を概略的に示す図である。
【図5】 従来の他の単結晶引上方法により成長させた半導体単結晶を概略的に示す図である。
【符号の説明】
22 原料
40 半導体単結晶

Claims (2)

  1. 外ルツボと該外ルツボ内に設けられた内ルツボとから形成され、該内ルツボの側壁に前記内ルツボと前記外ルツボとの間である原料融解領域と内ルツボの内側である結晶成長領域とを連通する連通孔が形成されるとともに、原料融解領域の半導体融液面上に原料を投入する原料供給装置を備える二重ルツボにおいて、CZ法により結晶成長領域で半導体の単結晶を引き上げる方法であって、
    原料供給装置により半導体融液量を一定とするよう原料を連続的に供給しながら定径の半導体単結晶を引き上げる工程と、
    原料供給装置からの原料供給を停止して前記工程における残融液をもととして定径の半導体単結晶を引き上げ、引き上げ終了時まで原料供給を停止する工程とを有し、
    初期融液量と前記原料供給装置から供給された供給量とからなる原料総量Wtに対する前記半導体単結晶の重量のうち上端部及び下端部を除いた部分の有効製品量W1の比の値W1/Wtを77%以上とすることを特徴とする単結晶引上方法。
  2. 外ルツボと該外ルツボ内に設けられた内ルツボとから形成され、該内ルツボの側壁に前記内ルツボと前記外ルツボとの間である原料融解領域と内ルツボの内側である結晶成長領域とを連通する連通孔が形成されるとともに、原料融解領域の半導体融液面上に原料を投入する原料供給装置を備える二重ルツボにおいて、CZ法により結晶成長領域で半導体の単結晶を引き上げる方法であって、
    半導体融液量を一定とするよう原料供給装置により原料を連続的に供給しながら定径の半導体単結晶を引き上げる工程と、
    該工程に引き続いて半導体単結晶の定径部の引上終了時点まで原料供給装置からの原料供給量を徐々に減少させつつ半導体単結晶を引き上げるとともに、ドーパント量を原料の供給量の減少量に対応させて減少させつつ供給する工程とを有し、
    初期融液量と前記原料供給装置から供給された供給量とからなる原料総量Wtに対する前記半導体単結晶の重量のうち上端部及び下端部を除いた部分の有効製品量W1の比の値W1/Wtを77%以上とすることを特徴とする単結晶引上方法。
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