JP3839524B2 - 小型化全分析システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、概して、液相分析のための小型化平坦カラム技術に関する。より詳細には、本発明は、レーザ切削(アブレーション)技術を使って新規の分離支持メディアに作り込まれる小型化全分析システム(μ−TAS)に関し、本明細書に開示されたμ−TASは、特に小被検体及び/又は巨大分子被検体の液相分析に応用される。
【0002】
【技術背景】
試料分析の計装、特に液体クロマトグラフィー及び毛管電気泳動システムのような分離システムにおいては、一般的に、寸法が小さいほど性能特性が改善され、かつ同時に生産及び分析費用が低減されることになる。これに関連して、小型化分離システムによってより効率的なシステム設計が実現され、結果として計装サイジングの減少により経費低減をもたらし、加えて、分析速度を上げ、試料と溶媒の消費量を減じ、かつ高い分析効率を上げることが可能となる。
【0003】
液相分析のための小型化を志向したいくつかのアプローチ、例えば、引抜き融解石英毛管(延伸石英ガラスキャピラリー)を利用する従来のアプローチ、及びシリコンのマイクロマシーニングを使う進展中のアプローチ、が当分野で開発されている。小型化技術において、従来より一般的に考えられていることは、通常、分離システムの寸法の低減を目指す何らかの処理である。
【0004】
従来の小型化技術では、計装は寸法が削減されたのではなく、むしろ顕著に削減されたのは分離区画の寸法である。一例として、マイクロカラム液体クロマトグラフィー(μLC)では、ほぼ4.6mmという直径の従来型カラムに較べ100〜200μmの直径を有するカラムが採用されている。
【0005】
小型化を志向する別のアプローチは、直径25〜100μmのキャピラリーで実施される分離技術を伴う電気泳動(CE)の利用であった。CEは小被検体の分離方法として有用なものであることが立証されている。J.Chromatogr.218:209(1981);Analytical Chemistry 53:1298(1981)。対照的に、ポリアクリルアミド・ゲル電気泳動は、元来、直径1mmの管で実行された。上述の「従来型の」両小型化技術(μLCとCE)は、液相分析システムの化学部分の寸法を削減するための最初の重要な処理法を象徴するものである。しかし、前述の従来型小型化デバイスでの実験は、原理的に小型化の利点を立証する一助になったが、それでもこれらの技術に固有のいくつかの主要な問題が残されている。
【0006】
例えば、従来の電気泳動技術には実質的な検出限界がある。例えば、CEでは、一般に、光学検出が単一経路検出技術によってオンカラム(on−column)で実施されており、この場合、電磁エネルギーは試料中を通過し、光ビームはキャピラリー軸に垂直に進みかつ一度だけキャリラリーを横切る。従って、従来型のCEシステムでは、検出経路長は、本質的にキャピリラリーの直径で限定される。
【0007】
下記の関係によって経路長に対する吸光度に関するベール(Beer)の法則:A=ε・b・C
ここで、A=吸光度
ε=モル吸光計数、(l/m・cm)
b=経路長(cm)
C=濃度(m/l)
が与えられる。25μmのキャピラリー中の試料の吸光度(A)は、典型的にUV/Vis分光に用いられるような在来型の1cmの経路長セルにおけるものより400倍小さい率になることが容易に分かる。
【0008】
この重大な検出限界を考え合わせて、検出経路長を拡大し、従ってCEシステムの分析感度を向上させるための多数の試みが従来技術で採用されてきた。Gordonに対する米国特許第5,061,361号では、検出点で気泡を形成するキャピラリーフローセルの顕微操作を伴う対処法が記載されている。Chervetに対する米国特許第5,141,548号では、形状がZ型のキャピラリーを用いて、そのZの延長部分を横切って検出を実行する方法が記載されている。さらに別のアプローチでは、キャピラリーの主軸に沿った検出(軸ビーム検出)により経路長を増やそうとしている(Xi等、Analytical Chemistry 62:1580(1990)参照)。
【0009】
Wangに対する米国特許第5,273,633号では、CEでの拡大検出経路長に対するさらに進んだアプローチが記載されており、このシステムではキャピラリーの外側に反射表面を設け、当該システムはさらに入射窓とその入射窓の下流に出口窓を包含するものである。Wangによれば、入射窓に入る光は、多重内部反射によってキャピラリー部分を通過しその後で出口窓を通過して検出されるもので、当該多重内部反射によって経路長の有効な延長が行われる。前述のアプローチの各々は経路長を拡大するという課題の達成を目指しているが、各アプローチは、キャピラリーの事後加工又はそうでなければ分析コストの増大を伴うことで制限される。
【0010】
小型化に対する現行アプローチの第2の主な欠点は、通常、CE及びμLCシステムに用いられているシリカ、石英(クォーツ)又はガラスのような二酸化ケイ素(SiO2)基板の化学活性と化学的不安定性とを伴うことである。より詳細には、二酸化ケイ素基板は、その高エネルギー表面を特色としており、かつ多くの化合物を激しく、塩基類を最も顕著に吸収する。分離システムにおける二酸化ケイ素材料の使用は、SiO2材料の溶解が(7.0を上回るpHの)塩基状態で増大するという、それらの基板の化学的不安定性によりさらに制限される。
【0011】
二酸化ケイ素材料固有の化学活性から生ずる諸問題を避けるために、従来の分離システムは、キャピラリー壁のシリカ内面に対して化学的改質を試みてきた。一般に、そのような事後形成改質は、例えば、Si−O−Si−C結合を作るためにシリル化剤を用いてキャピラリー表面に所望の表面処理物を結合するために、界面層を準備しなければならないので困難である。前述の改質は、キャピラリー表面による溶質分子の不可逆吸着を減少できるが、それでもこれらのシステムは7.0以上ののpHでのSi−O−Si結合の化学的不安定性という問題を抱える。従って、SiO2材料の化学的不安定性は主要な問題として残ることになる。
【0012】
しかし、SiO2基板の化学的性質に関して諸欠点が認識されても、これらの材料は、それらのもつ望ましい光学特性の故に、分離システムに依然として用いられている。この点に関して、二酸化ケイ素に比して優れた化学特性を示す可能な置換材料は、それらも検出が不可欠のUV領域において高い吸収性をもつことから一般に制限される。
【0013】
在来型のμLC及びCEの技術に現存するいくつかの実質上の限界を避けるために、さらには分離システムの寸法のより大幅な削減をも可能にするため、キャピラリー分離のマイクロストラクチャー(微細構造)を有する平坦化システムの実現を目指す傾向があった。この点に関して、マイクロマシーニング又はマイクロリソグラフィー技術によるケイ素のマイクロストラクチャーの組立てに関連した小型化分離システムの製造法が知られている(例えば、Fan等、Anal.Chem.66(1):177〜184(1994);Manz等、Adv.Chrom.33:1〜66(1993);Harrison等、Sens.Actuators,B10(2):107〜116(1993);Manz等、Trends Anal.Chem.10(5):144〜149(1991);及びManz等、Sensors and Actuators B(Chemical)B1(1〜6):249〜255(1990)を参照)。
【0014】
薬品製造、環境分析、医学診断及び基本的な研究分析に用いられる現代の化学分析システムは、完全な自動化ができなければならない。そのような全体的分析システム(TAS)(Fillipini等、(1991)J.Biotechnol.18:153;Garn等、(1989)Biotechnol.Bioeng.34:423;Tshulena(1988)Phys.Scr.T23:293;Edmonds(1985)Trends Anal.Chem.4:220;Stinshoff等、(1985)Anal.Chem.57:114R;Guibault(1983)Anal.Chem Symp.Ser.17:637;Widmer(1983)Trends Anal.Chem.2:8)は、そのシステムへの試料導入、システム全域における試料の搬送、試料作成、分離、精製及び検出に及ぶ諸機能をデータの蓄積と評価を併せて自動的に実行するものである。小型化全分析システムは「μ−TAS」と呼ばれている。
【0015】
最近、試料作成技術は成功裏に小型化形式に変わってきた。ガスクロマトグラフィー(Widmer等、(1984)Int.J.Environ.Anal.Chem.18:1)、高圧液体クロマトグラフィー(Muller等、(1991)J.High Resolut.Chromatogr.14:174;Manz等、(1990)Sensors&Actuators B1:249;Novotny等、eds.(1985)Microcolumn Separations:Columns,Instrumentation andAncillary Techniques(J.Chromatogr.Library,Vol.30);Kucera,ed.(1984)Micro−Cokumn High Performance Liquid Chromatography,Elsevier,Amsterdam;Scott,ed.(1984)Small Bore Liquid Chromatography Columns:Their Properties and Uses,Siley,NY;Jorgenson等、(1983)J.Chromatogr.255:335;Knox等、(1979)J.Chromatogr.186:405;Tsuda等、(1978)Anal.Chem.50:632)及び毛管電気泳動(Manz等、(1992)J.Chromatogr.593:253;Manz等、TrendsAnal.Chem.10:144;Olefirowicz等、(1990)Anal.Chem.62:1872;Second Int’l Symp.High−Perf.Capillary Electrophoresis(1990)J.Chromatogr.516;Ghowsi等、(1990)Anal.Chem.62:2714)は、小型化形式に変わってきた。
【0016】
毛管電気泳動は、その分離効率がキャピラリー長に関係なく印加電圧に比例する故、特に小型化が可能である(Harrison等、(1993)Science261:895〜897参照)。電気浸透流体ポンピング及びレーザ蛍光学検出を用いる毛管電気泳動デバイスが平坦ガラスのマイクロストラクチャー上に作り込まれている(Effenhauser等、(1994)Sensorsand Actuators B20:103〜110参照)。シリコン材料とは対照的に(Harrison等、(1993)Sensors and Actuators B10:107〜116参照)、ポリイミドは極めて高い降伏電圧を有し、それ故、相対的に著しく高い電圧を使うことができる。
【0017】
シリコンで分離システムを作るのにマイクロマシーニング技術を用いることで該システムの大量生産ができるという実用的利点がもたらされる。この点に関して、シリコンのような平坦材料のマイクロマシーニングを含む、マイクロエレクトロニクス工業で開発された多数の確立技術が現存しており、これは小型化に対する有用でかつ十分受け入れられるアプローチを提供するものである。シリコン又はボロシリケートガラスのチップ上に小型化分離デバイスを組立てるための前述のマイクロマシーニング技術の利用例は、Clark等に対する米国特許第5,194,133号;Miura等に対する米国特許第5,132,012号;Paceに対する米国特許第4,908,112号;及びSethi等に対する米国特許第4,891,120号に記載されている。
【0018】
小型化分離システムを作るためのシリコン基板のマイクロマシーニングは、多数の三次元構造を作り込むための薄膜堆積、フォトリソグラフィー、エッチング及びボンディング技術の組合せからなる。シリコンは高い強度と硬度特性を示しかつマイクロマシーニングされて数ミクロンオーダの寸法を有する構造を提供し得るという理由から、上記の点に関してシリコンは有用な基板となる。
【0019】
シリコンのマイクロマシーニング法は単一表面における小型化システムの組立には有用であったが、小型化分離システムの分析デバイス部分を作り出すのにこのアプローチを用いることに対しては重大な欠点がある。
【0020】
第1に、シリコンのマイクロマシーニング法は、エッチングかもしくは加工した2つの部分品間に高度のアライメントを生じ難い。このことはマイクロマシーニングで形成された分離チャネルの対称性と形状にマイナスの影響を及ぼし、それがまた分離効率に影響することがある。第2に、マイクロマシーニングしたシリコン表面の封止(シーリング)は、一般に、液相分析で課せられる分離条件によって侵されがちな接着剤を用いて実施されることである。さらに、酸化条件下で、シリカ表面がシリコンチップ基板上に形成されることである。この点に関して、シリコンのマイクロマシーニング法もSiO2の化学作用によって根本的に制限される。従って、慣用の小型化及びシリコンマイクロマシーニング技術がもつ固有の欠点を避けることができる改善された小型化全分析システムに対する要請は残存するのである。
【0021】
【発明の目的】
本発明は、液相分析システムにおいて使用するための小型化平坦カラムデバイスに関する。本発明の主要な目的は、実質的に平坦な基板にレーザ切削された小型化カラムデバイスを提供することにあり、この場合、前記基板は、シリコン及び従来の二酸化ケイ素を素地としたデバイス基板で経験される固有の化学活性とpHの不安定性を避けるべく選択した材料から成る。
【0022】
本発明はまた、小型化平坦カラムデバイスに作り込まれ、それによって液体試料中の成分の精密なオンカラム分析又は検出が可能となる検出手段の装備に関する。さらに目的とされていることは、従来技術に比して極めてコンパクトな形でデバイス中に設けられた検出手段を有する液相分析用カラムデバイスを実現することである。本発明の1つの特殊な態様では、小型化平坦カラムデバイスにおいても切削され、かつ実質的に改善された検出経路長を有する光学式検出手段を提供することを目的としている。
【0023】
本発明のさらに別の関連目的は、試料注入を含む液体取扱いのための改良型手段を特徴とするデバイスを提供し、かつ種々の外部液体容器とインタフェースできる手段を有する小型化カラムデバイスを提供することである。特に、ここで意図していることは、平坦構造に対して、加圧注入、流体力学的注入又は動電学的注入のような様々な注入法を容易に採用できるようにするシステム設計である。
【0024】
本発明のさらに別の関連目的は、単一の平坦表面に完全に包含される小型化全化学分析システム(μ−TAS)を実現することである。この点に関して、本発明による小型化システムは、技術者の操作と介入を軽減した複雑な試料の処理、分離、及び検出を実行できるものである。従って、本発明は、工業化学、生物学、生化学及び医学的諸処理等において成分のモニタリング及び/又は分析における重要な用途を見い出すものである。
【0025】
【発明の概要】
本発明の特に有利なところは、分離システムの分析部分に関して所望の属性を有する様々な種類のポリマー及びセラミック基板に小型化カラム群を作り込むのにシリコンマイクロマシーニング技術やエッチング技術以外の諸プロセスを利用することである。より詳細には、ここでは、レーザ放射を使って基板に構成成分のマイクロストラクチャーを切削することにより小型化平坦カラムデバイスを実現することが意図されている。1つの好ましい実施例では、小型化カラムデバイスは、その上にレーザ切削されたマイクロストラクチャーを有する実質上平坦な2つの半分部分を与えることによって形成され、その2つの半分部分が互いに折り重ねられるときに高度の対称性と軸一致性を特徴とする試料処理区画を定めるものである。
【0026】
本発明に従って小型化デバイスを形成するためにレーザ切削技術を使うことで、シリコン又は二酸化ケイ素材料に諸システムを形成するのに用いられる従来のエッチング及びマイクロマシーニング技術に勝るいくつかの利点が与えられる。第1に、レーザ切削処理に対して精密なコンピュータ化制御を適用できるためマイクロストラクチャーの形成を優れた精度で実行でき、従って、諸構成部品によって形成される構造において高度のアライメントが可能となる。レーザ切削処理はまた、エッチング中にマスキングの下をくり抜いて、湾曲側面と平坦底部を有する非対称構造を生ずるかも知れないマイクロリソグラフィー等方エッチング技術で経験される諸問題を避けるものである。
【0027】
レーザ切削はさらに部品寸法を大幅に縮小したマイクロストラクチャーの生成を可能にするものである。この点に関して、本発明によって形成されるマイクロストラクチャーは従来のエッチング技術を使って可能なのもより数桁高いアスペクト比(縦横比)を有することができ、従って、該デバイスにおける応用性の高い試料処理を提供することができる。ポリマーのような基板にマイクロストラクチャーを形成するのにるレーザ切削処理を応用すれば、シリコンに諸手段をマイクロマシーニングするような従来のアプローチと比較して組立がより容易になりかつ標記デバイスのユニット当りの製造コストが低減される。この点に関して、本発明に従って低コストのポリマー基板で形成されたデバイスは、実質上使い捨て式の小型化カラムユニットとして使用できるという別の特徴をももつ。
【0028】
本発明の別の態様では、平坦基板におけるレーザ切削法は、殆ど任意の寸法形状をもつマイクロストラクチャーの形成を考慮している。この特徴は、複雑なデバイス配置の形成を可能にするばかりではなく、さらに、全体寸法が大幅に縮小された小型化全分析システムにおける試料作成、試料注入、後カラム(post−column)反応及び検出手段の集積化をも考慮に入れたものである。
【0029】
さらに、本発明の下で作られたデバイスの分析部分のコンパクト性は、注入、試料操作及び検出のような集積機能を標記デバイスに特別に作り込んでμ−TASデバイスを実現してよいという特徴と共に、システムのハードウェアの集積化設計を可能にして大幅縮小のシステム占有面積(footprint)を達成するものである。
【0030】
本発明により、液相分離デバイスの小型化を目指す従来のアプローチに存在している固有の諸々の弱点と、小型化カラムデバイスを形成するためにシリコン微細技術を用いる際の諸問題とが扱われた。それに応じて、本発明は、多数の液体試料について様々な液相分析ができる小型化全分析システムを開示するものである。
【0031】
【実施例】
本発明を詳細に説明するに先立ち、デバイス類及び諸方法は様々に変わってよいという理由から、本発明は、説明されたデバイスの特定構成部品又は説明された諸方法の各処理ステップに限定されるものではないと理解すべきである。また、本明細書に用いた専門用語は、特定の実施例を説明することだけを目的としたものであって、制限しようとするものではないと理解すべきである。本明細書と前出の請求の範囲に用いられているように、単数形として記載されている場合でも、その関係が別途明確に指図されない限り、複数の関係を含むものと留意すべきである。従って、例えば、「被検体」に対する引用は複数の被検体からなる混合物を含み、「検出手段」に対する引用は2つ以上の該検出手段を含み、「試料流動成分」に対する引用は少なくとも2つの該成分を含み、「オンデバイス流動容器区画」に対する引用は2つ以上の該区画を含み、その他についても同様である。
【0032】
本明細書と前出の請求の範囲において、多くの用語に対して言及がなされ、それらは下記の意味をもつものと定義される。
【0033】
用語「基板」は、ここでは、UV吸着性があり、レーザ切削ができる材料で、クォーツ、融解シリカ又はガラス(ボロシリケートガラス)のような、シリコン又は二酸化ケイ素材料でない任意の材料を指すのに用いる。従って、小型化カラムデバイスは、ここでは、適当な基板、例えば、レーザ切削可能な(ポリイミド及びその類を含む)ポリマー及び(酸化アルミニウム及びその類を含む)セラミックスを使って作られる。さらに、小型化カラムデバイスは、ここでは、ラミネートのような複合基板を使って作られる。「ラミネート」は、同一か又は異なった材料の数段の異なった結合層から成る複合材料を指す。1つの特に好ましい複合基板は、Kapton(商標)(DuPont;Wilmington,Delaware)のようなポリイミドの第1層が、第2層のKJ(商標)(DuPont)として知られている熱接着方式のポリイミド薄層と共押出しされて形成されたポリイミドのラミネートから成る。この熱可塑性接着剤は、第1ポリイミド層の一方又は両側に塗布してよく、これによって所望の厚みをもつラミネートを作り出す手段を提供することができる。
【0034】
用語「試料操作領域」は、マイクロチャネルの一部分、即ち、以下に詳細に説明するようにマイクロチャネルの鏡像がそこにレーザ切削されたカバー板又は基板によってマイクロチャネルの囲い上に形成される「試料処理区画」の部分を指し、これは「試料流動成分」又は「試料取り扱い要素」を含む。試料流動成分により、試料取り扱い要素を相互連絡させる試料処理区画の部分を意味する。
【0035】
「試料取り扱い要素」は、特定の試料作成の化学作用がそこで行われる試料処理区画の部分である。特に、対象の被検体は、一般に、その被検体の検出と分析に潜在的に干渉するかも知れない他の種のものを含有しているマトリックスで得られる。従って、試料取り扱い要素は、マトリックスからの被検体の分離が実行される試料処理区画の部分である。試料取り扱い要素によって提供できる諸機能の例には、クロマトグラフィー分離、電気泳動分離、電気クロマトグラフィー分離、及びその類がある。
【0036】
本明細書で用いられているように、用語「検出手段」は、当分野で周知の分析検出技術を使って試料処理区画内部の試料を、それによって人が検出することができる任意の手段、構造又は構成を指す。従って、検出手段は、試料処理区画と連絡しかつ外部検出装置又はデバイスを試料処理区画とインタフェースさせてその区画を通過する被検体の検出を可能にする1つ以上のアパチャー(開口)、細形のアパチャー又はグルーブ(みぞ)を包含する。
【0037】
試料処理区画を通過する液体試料の電気化学的性質の変化は、試料処理区画を通過する試料と物理的に接触する検出手段を使って検出することができる。1つの実施例では、アパチャー又はグルーブのような検出手段に電極を内蔵するか又はそれに突合せ連結してよく、それによって電極を試料の流れに直接接触させることが可能となる。試料処理区画に対して(外部伝導回路で接続した)2つの異質の電極を互いに対向させることによって、試料処理区画に電界を(試料流動方向を横断して)発生させることができ、よって、その区画を通過する被検体の電気化学的検出についての準備手段が設定される。
【0038】
試料処理区画を通過する液体試料の電気化学的性質の変化は、試料処理区画を通過する試料と物理的に接触しない検出手段を使って検出することができる。従って、試料処理区画を通過する試料の「電気的性質の変化」は、特定試料中の被検体の有無に起因する該試料の導電率、誘電率、もしくはその両方の検出可能な変化を指す。試料の「導電率」は、同試料中の電界に対する電流密度の比を指す。試料の「誘電率」は、試料の誘電定数に真空中の誘電率を乗じたものを指し、ここで真空中の誘電率(ε0)は、クーロンの法則に現れる定数でセンチメートル−グラム−秒(cm−gr−sec)の静電単位で1の値をもつ。
【0039】
試料処理区画を通過する液体試料の電気的性質の変化は、ここでは、液体試料のインピーダンスの検出により測定される。回路の「インピーダンス」又は「電気インピーダンス」は、その回路が交流(「AC」)に対して呈する全抵抗を指し、複素表示の電流に対する電圧の複素比に等しい。従って、回路が交流に対して呈する全抵抗の大きさは、AC回路における最大電圧の最大電流に対する比に等しい。「電気インピーダンス・メータ」は、与えられた回路における与えられた周波数での電圧対電流の複素比を測定する装置を指す。
【0040】
電流を搬送及び/又は伝送できる複数の電気的「連絡経路」は、その連絡経路が、組み合って、回路を形成するよう、試料処理区画に隣り合わせて配置することができる。ここで用いられているように、連絡経路は、AC信号を送信又は受信できる任意の伝導性材料を含む。特に好ましい伝導性材料は銅である。従って、一実施例では、アンテナ回路(例えば、1対の銅アンテナ)を形成する複数の連絡経路が試料処理区画に隣り合わせて配置され、それによって、試料処理区画中を流れる液体試料のインピーダンスの変化に応答する振動電圧をそこを通して流すことができる回路が形成される。「アンテナ」は、交流(AC)信号のような電磁波を放射及び/又は受信できるデバイスを指す。「アンテナ回路」は、1つのアンテナを含む完全な電気回路を意味する。「アンテナコイル(antenna coil)」は、そこを通してアンテナ電流(例えば、AC信号)が流れるコイルを指す。
【0041】
さらに、試料処理区画に関して2つの検出手段を互いに対向させて配置することにより、「検出経路」が都合良く形成され、よって、当分野で周知の検出技術を使って試料処理区画中を通過する被検体の検出が可能となる。
【0042】
「光学的検出経路」は、光線のような、放射線がそれによって外部の線源からそれを受ける手段まで進行できる経路を形成する検出手段の構成または配置を指す(ここで放射線は試料処理区画中を通り、そして試料処理区画中を流れる試料又は試料中の分離被検体によって影響を受けることになる)。光学的検出経路は、一般に、本発明に従い、試料処理区画に関して1対の検出手段を互いに直接対向させて配置することにより形成される。この構成において、試料処理区画中を通過する被検体は、試料処理区画の主軸に直交する(そして、従って、電気泳動分離における電気浸透の流れ方向に直交する)放射線の伝達を介して検出することができる。種々の外部光学的検出技術は、限定はされないが、UV/Vis(紫外/可視)、近赤外線、蛍光、屈折率(RI)及びラマン技術を含む光学的検出経路を使って、試料処理区画と容易にインタフェースされてよい。
【0043】
ここで用いられているように、用語「透明」は、異なった波長をもつ光を透過できる物質の能力を指し、該能力は、特定物質において1メートルの距離を浸透する放射線についてのパーセントとして評価してよい。従って、発明に従い、「透明シート」は、対象とされる放射線又は粒子の一定の種類に対して透過性である物質のシートとして定義される。光学的検出構成に関連して本発明に特に採用されている透明シートは、限定はされないが、クォーツ、サファイア、ダイヤモンド及び融解シリカのような物質から作られる。
【0044】
ここでの試料被検体のUV〜可視吸収検出の関連では、用語「経路長」、又は「光学経路長」は、ベールの法則(Beer’s law)から誘導される光学経路長「b」を指し、これはA=log(Ii/If)=ε・b・Cで明確に示されるもので、ここでAは吸光度、Iiは被検体が無いときに測定された光強度、Ifは被検体中を透過した光強度、εは試料のモル吸光係数(l/m・cm)、Cは被検体の濃度(m/l)、及びbは光学経路長(cm)である。従って、試料被検体のUV〜可視吸収が光学検出経路を介して試料処理区画の主軸に垂直な経路に沿って光を試料処理区画中に通すことにより測定される検出構成では、その測定の経路長(b)は、実質的に、試料処理区画の寸法で定められる。
【0045】
「検出交点」は、試料処理区画と連絡する複数の検出手段が試料処理区画の特定の位置で収れんする構成を指す。この方法では、試料もしくは分離被検体に関して多数の検出技法を検出交点で同時に実行できる。本発明に従い、検出交点は、複数の検出経路が交差するか、又はアパチャーのような検出手段が検出経路と同じ点で同時に試料処理区画と連絡するときに形成される。従って、試料、もしくは分離被検体を、UV/Visと蛍光との技法、光学的なものと電気化学的技法、光学的なものと電気的技法といった組合せ、又は類似の組合せを使って検出することで、高感度検出情報をもたらすことができる(例えば、Beckers等、(1988)J.Chromatogr.452:591〜600;Brownleeに対する米国特許第4,927,265号参照)。
【0046】
ここで用いられているように、「導光手段」は、光を透過させるために用いることができる透明な物質の実質的に長くて細い線条を指す。本発明の実施上有用な導光手段には、光ファイバー、一体化レンズ構成及びその類がある。特に好ましい実施例では、光ファイバーを、検出手段とインタフェースさせて、当分野で周知の光学的検出技法が使えるようにする。ここでは、用語「光ファイバー」、「ファイバー光導波管」又は「光ファイバー手段」は、単一の光ファイバーもしくは保護被覆材料で随意に包装された光ファイバー束を指すのに用いる。適当な光ファイバーの基板材料の例には、ガラス、プラスチック、ガラス/ガラス複合、及びガラス/プラスチック複合ファイバーがある。光ファイバーの臨界特性は光信号の減衰である。さらに、化学的センサは、その化学的センサが液体試料の被検体と交差するような方法でファイバー光導波管に内蔵してよい。該ファイバーの光化学センサに関する構造、性質、機能及び動作詳細は、Hirschfeldに対する米国特許第4,577,109号、Kaneに対する米国特許第4,785,814号、及びBlaylockに対する米国特許第4,842,783号に見い出すことができる。
【0047】
本発明の実施においてレーザ切削技術を用いれば、従来のシリコン又はガラス基板を素地としたデバイスでは困難であったか又は不可能であった微小規模の構成部品と構造体とのアライメントが高精度でできる。従って、ここで用いられる用語「マイクロアライメント」は、相補的なマイクロチャネル群又はマイクロ区画群相互の、入口及び/又は出口ポートとマイクロチャネル又は分離区画との、検出手段とマイクロチャネル又は分離区画との、検出手段と他の検出手段との、及びその類との高精度アライメントを含む、レーザ切削した特徴構造の精密かつ的確なアライメントを指す。
【0048】
用語「マイクロアライメント手段」は、ここでは、小型化カラムデバイスにおけるレーザ切削した特徴構造の精密なマイクロアライメントを保証する任意の手段を指すものとする。マイクロアライメント手段は、レーザ切削法によるか又は当分野で周知の成形部品類の別の組立法によって、カラムデバイスに形成してよい。ここに採用し得る代表的マイクロアライメント手段には、構成部品にレーザ切削した複数の共軸配置アパチャー及び/又はカラムデバイス基板における複数の対応する特徴構造、例えば、突起とそれに組み合う凹部、グルーブとそれに組み合うエッジ部又はその類がある。
さらに、構成部品の正確なマイクロアライメントは、基板部分を他の部分の上に乗せ、折り重ねて複合した微小規模の区画を形成し、アパチャー又は分離区画を有する検出手段のような特徴構造群をアライメントし、又はマイクロチャネルから微小規模の分離区画を形成できるよう、そこにレーザ切削された少なくとも1つの折曲げ手段を有するフレキシブル基板に小型化カラムを作り込むことによって実行できる。前述の折曲げ手段は、個々の基板に間隔を持たせて切削した送り穴、基板中に部分通路だけを延長できるよう間隔を置いて切削した溝(みぞ)穴様の凹部又はアパチャー、もしくはその類の列で作り付けてよい。送り穴又は凹部は、円形、ダイヤモンド形、六角形又は予定の直線に沿って蝶番を形成しやすい他の形状を持っていてよい。
【0049】
用語「液相分析」は、液相中の小量の及び/又は巨大分子のいずれか又は両方の溶質について実行される任意の分析を指すのに用いる。従って、ここで用いる「液相分析」には、クロマトグラフィー的分離、電気泳動的分離、及び電気クロマトグラフィー的分離が含まれる。
【0050】
この点に関して、「クロマトグラフィー」処理は、一般に、成分の優先分離から成り、逆相、疎水的相互作用、イオン交換、分子ふるいクロマトグラフィー及び類似法を包含する。
【0051】
「電気泳動的」分離は、実効電荷を有する粒子又は巨大分子の移動を指し、この場合、前記移動は電界によって影響を受ける。従って、本発明における利用が予想される電気泳動的分離は、(ポリアクリルアミド、アガロース及びその組合せのような)ゲルを充填したカラムで実施される分離並びに溶体で実施される分離を含む。
【0052】
「電気クロマトグラフィー的」分離は、電気泳動とクロマトグラフィーの両技法の組合せを指す。模範的な電気クロマトグラフィー的分離は、起電力を利用する充填カラム分離(Knox等、(1987)Chromatographia24:2435;Knox等、(1991)Chromatographia32:317)、及びミセル電気泳動分離(Terabe等、(1985)Anal.Chem.57:834〜841)を包含する。
【0053】
用語「推進力」は、液相分析においてカラムに沿って試料の移動を誘発する任意の手段を指し、カラムの任意の部分のわたる電位の印加、カラムの任意の部分にわたる差動圧力の付加又はその任意の組合せを包含する。
【0054】
用語「表面処理」は、分離中、試料と接触することになるマイクロチャネル表面の作成又は改質を指すのに用い、それによって、デバイスの分離特性が変更され、又は改善される。従って、ここで用いる「表面処理」には、物理的表面吸着、マイクロチャネル基板表面上の官能基(例えば、縮合重合体上のアミン、ヒドロキシル又はカルボン酸基)への選択部分(moieties)の共有結合、(媒質への界面活性剤の付加によるような)チャネル表面の動的失活(ダイナミック デアクチベーション)、(ポリスチレン又はジビニルベンゼンのような)チャネル基板の表面に対するポリマー移植及びマイクロチャネル基板に対するダイヤモンド又はサファイアのような物質の薄膜堆積を含む表面コーティングが含まれる。
【0055】
用語「レーザ切削」は、エキシマーレーザのような高エネルギー光子レーザを使って適当な基板に特徴構造を切削する加工処理を指すのに用いる。エキシマーレーザは、例えば、F2、ArF、KrCl、KrF、又はXeClのタイプであってよい。
【0056】
一般に、UV吸収性である基板はどれも特徴構造をそこにレーザ切削できる適当な基板となる。従って、選択された形状をもつマイクロストラクチャーは、本発明の下で、ポリマー又はセラミック材料のような適当な基板上にリソグラフィー用マスクを撮像し、次いでそのリソグラフィー用マスクで保護されていない基板領域をレーザ光でレーザ切削することにより形成できる。
【0057】
レーザ切削では、短パルスの強力な紫外光が材料の薄い表面層にその表面から約1μm未満の範囲内で吸収される。好ましいパルスエネルギーはcm2当り約100mJ(ミリジュール)を上回るもので、パルス持続時間は約1μ秒より短い。これらの条件下で、強い紫外光が材料の化学結合を光解離する。さらに、吸収された紫外線エネルギーは、それが解離した断片を素早く加熱してそれらを材料の表面から追い出せるような材料の小容積に集中される。これらの諸プロセスは急速に行われるので、熱が周囲の材料へ伝播する時間はない。結果として、周囲の領域は溶解されないかそうでなければ損傷されず、切削された特徴構造の周辺部は、約1ミクロンの尺度の精度で入射光ビームの形状を複製できるのである。
【0058】
ここでは、レーザ切削はエキシマーレーザを使って説明したが、実質上同じ光波長とエネルギー密度を有する他の紫外線源もレーザ処理を実行するのに用いてよい、ということを理解すべきである。好ましくは、前述の紫外線源の波長は、切削すべき基板での高吸収を可能にする150〜400nmの範囲に入る。さらに、エネルギー密度は、周囲の残りの材料を実質上加熱しないで切削した材料の速やかな追い出しを実施するには、約1μ秒より短いパルス長でcm2当り約100mJを上回るものでなければならない。上述のようなレーザ切削技術は当分野で説明されている。Znotins,T.A.等、Laser Focus Electro Optics,(1987)pp.54〜70;Schantz等に対する米国特許第5,291,226号及び第5,305,015号。
【0059】
用語「射出成形」は、一定量の溶解したプラスチック又はセラミック基体をダイ(即ち型)中に射出することにより塑性又は非塑性のセラミック形状を成形するプロセスを指すのに用いる。本発明の一実施例では、射出成形を用いて小型化カラムデバイスが作られる。
【0060】
より詳細には、小型化カラムデバイスの型即ちダイを作ることが考えられており、そこでは適当なポリマー基板に原型のマイクロストラクチャーパターンを定めるのにエキシマーレーザ切削が使われる。そのようにして作られたマイクロストラクチャーは、次いで、極めて薄い金属層でコーティングしかつキャリアを与えるためニッケルのような金属で(電型法によるように)電気めっきしてよい。金属キャリアが元のポリマーから切り離されると、ポリマーのネガ(凹)構造を有する型挿入物(即ち治具)が得られる。従って、切削されたマイクロストラクチャーパターンの多重複製を、当分野でよく知られている射出成形技術を使って適当なポリマー又はセラミック基板に作り込んでよい。
【0061】
用語「LIGA処理」は、シンクロトロン放射リソグラフィー、電型法、及び塑性成形法を使って高アスペクト比と高い構造精度を有するマイクロストラクチャーを組み立てる処理法を指すのに用いる。LIGA処理では、放射線に鋭敏な樹脂にシンクロトロン源を使ってリソグラフィーできるよう高エネルギー放射量を照射して、(チャネル、ポート、アパチャー及びマイクロアライメント手段のような)所望のマイクロストラクチャーを作り出し、それで一次の型板を形成する。
【0062】
次いで、その一次型板に電着技術で金属を充填する。このようにして形成した金属の構造体は、一次型板にとって代わる二次の樹脂型板組立用の型挿入物から成る。この方法で射出又は反応性射出成形技術を使って種々の基板に元のマイクロストラクチャーの高精密レプリカ(複製品)を形成してよい。LIGA技術は、Becker,E.W.,等によるMicro electric Engineering(1986)4:35〜56に記載されている。LIGA型板を使って射出成形してよいもので、かつ本発明の実施に適する基板である多数のポリマー基板の記述は、「Contemporary Polymer Chemistry」,Allcock,H.R. and Lampe,F.W.(Prentice−Hall,Inc.) New Jersey(1981)に見い出すことができる。
【0063】
「選択的」又は「選択的に」は、その次ぎに記述される特徴もしくは構造がμ−TASに存在しても存在しなくてもよいこと又はその次ぎに記述される事象もしくは状況が起きても起きなくてもよいことを、及びその記述は前記の特徴もしくは構造が存在する場合と、特徴もしくは構造が存在しない場合、又は事象もしくは状況が起きる場合と起きない場合を包含すること、を意味する。例えば、文節「選択的に検出手段を持つμ−TAS」は、アクセスポートがデバイス上にあっても無くてもよいこと及びその記述はアクセスポートがある場合と無い場合の両方の状況を包含することを意味する。
【0064】
従って、本発明は、適当な基板にレーザ切削法を使って行うμ−TASを含む小型化カラムデバイスの作成に関する。また、射出成形技術を使って本発明に従うカラムデバイスとμ−TASとを形成することが意図されており、この場合、原型のマイクロストラクチャーはエキシマーレーザ切削処理で予め形成されるか、又は原型のマイクロストラクチャーはLIGA処理で予め形成される。
【0065】
より詳細には、試料処理区画、注入手段、検出手段及びマイクロアライメント手段のようなマイクロストラクチャーは、エキシマーレーザ切削によって平坦基板に形成してよい。周波数逓倍ヤグ(YAG)レーザもエキシマーレーザの代わりに用いてよい。そのような場合、発明を実施するのに有用な複合マイクロストラクチャーパターンは、ステップ・アンド・レピート処理におけるように、マスキング処理とレーザ切削手段とを組み合わせて適当なポリマー又はセラミック基板上に形成してよく、この場合における前述の諸処理法は熟練した当業者には容易に理解されるであろう。
【0066】
本発明の実施において、好ましい基板は、DuPont社から商標Kapton又はUpilexで市販されているもののようなポリイミド材料から成るが、選択された特定の基板は他の任意の適当なポリマー又はセラミック基板から成ってよい。特に、ここで予想されるポリマー材料は、次の部類から選択される材料、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリオレフィン、又はその混合物、を包含する。さらに、選択されたポリマー材料はリールに巻いた長い線条の形で製造してよく、また、ステップ・アンド・レピート処理を通して基板を正確かつ確実に搬送するために、材料の側面に沿う選択なスプロケット穴を設けてよい。
【0067】
本発明に従い、選択ポリマー材料はレーザ処理室へ搬送され、1つ以上のマスクで限定されたパターンがレーザ放射を使ってレーザ切削される。好ましい実施例においては、該マスクは、例えば、(入口及び出口ポートを含む)多重アパチャー(開口部)、マイクロアライメント手段及び試料処理チャンバーを包含する、材料の拡張領域について切削した特徴構造の全てを限定する。
【0068】
あるいは、アパチャーパターン、試料処理チャネルパターン、等のような諸パターンは、実質的にレーザビームより大きい共通マスク基板上に並べて配置してよい。次いで、そのようなパターンを順次ビーム中へ移動してよい。他の意図した製造法では、1つ以上のマスクを用いて基板を通してアパチャー群を形成してよく、そして別のマスクとレーザエネルギー強度(及び/又はレーザ放射(ショット)数)を用いて基板の厚み部分を貫いて専ら形成される試料処理チャネルを定めてよい。前述のマスクに用いられるマスキング材料は、好ましくは、レーザ波長で十分反射するものであって、例えば、多層誘電材料又はアルミニウムのような金属から成るものである。
【0069】
本発明に採用されるレーザ切削システムは、一般的に、ビーム送り出し光学系、アライメント用光学系、高精度で高速のマスクシャットルシステム、及び材料の操作及び位置決め機構を含む処理チャンバを包含する。好ましい実施例では、レーザシステムは投影マスク配列構成を用いており、この構成では、マスクと基板との間に挿入された精密レンズがエキシマーレーザ光をマスクで限定されたパターン像として基板上へ投影するものである。
【0070】
レーザ切削は、広範囲の形状寸法の小型化試料処理チャネル群及びアパチャー群を形成するのに用いてよい、ということは通常の技能を持つ当業者には容易に理解されるであろう。アンダーカッティングを包含しない形状寸法はどれも、基板全域でのレーザ光強度の変調のような切削技術を使い、対応する深さを制御するため光束を表面全域でステップ状に切換えるか又は各位置に加えられる誘導とパルス数をステップ状に切換えて設定してよい。さらに、本発明に従って作成されたレーザ切削チャネル又はチャンバーは、シリコンのマイクロマシーニングのようなエッチング技術を使って以前に可能であったより、はるかに大きいチャネル深さ対チャネル幅の比をもって容易に製造されるものである。そのようなアスペクト比は難なく1を超え、10に達することさえあり得る。
【0071】
発明の好ましい実施例では、半円の断面を持つチャネルは、露光強度を制御して又は各露光間でビームを再度方向決めする多重露光を実施してレーザ切削される。従って、対応する半円形チャネルがそのように形成されたチャネルとアライメントして合体されると、高度に対称的な円形断面を持つ試料処理チャンバーが定められ、これは分離デバイス中の流体の流れを増進するには望ましいものといえる。
【0072】
本発明で予測されるレーザ切削工程の最終段階として、洗浄処理が実施され、ここでは基板のレーザ切削部分が洗浄ステーションの下に置かれる。洗浄ステーションでは、レーザ切削で出る破片は、標準の工業上の慣用手段によって取り除かれる。
【0073】
液相分析デバイスの分野に携わる人には理解されるように、上述の方法は広範囲の小型化デバイスを製造するのに用いてよい。そのようなデバイスの1つが図1に示されており、ここでは、小型化カラムデバイスの特定の実施例は全体的に符号2で表されている。一般に、小型化カラム2は、レーザ切削技術を使って選択した基板4に形成する。基板4は、一般に、それぞれ6と8で表される第1及び第2の実質上平坦な対向表面から成り、かつレーザ吸収性であるシリコン以外の材料から選択されるもので、従って、レーザ切削可能である。
【0074】
本発明の特定実施例では、小型化カラム(デバイス)2はチップ上に切削されたカラム構造から成り、それは、本発明の実施において、Vespel(商標)のような塑性ポリイミドの加工可能な形であってよい。本発明において特に意図されることは、融解石英の欠点に関する相当の経験とその代替物への研究に基づいて、ポリイミドが液相分離システムの分離部分として非常に望ましい基板材料であることが証明されているようなポリイミド基板を用いることである。
【0075】
この点に関して、ポリイミドは、従来の二酸化ケイ素を素地とした分離システムでは分析が特に困難であることが分かっているタンパク質に対して低吸着性を示すことが立証されている。この困難な部類の溶質の分離についての好結果の実例から、他の溶質の分離は問題とならないであろうことが特徴的に保証される。さらに、ポリイミドは縮合重合体であるため、その表面に複数の基(groups)を化学的に結合させることが可能であり、これによって目的とする分析に依存して様々な所望の表面特性を実現することができる。従来の二酸化ケイ素を素地としたシステムとは異なり、ポリマー基板に対するこれらの結合で塩基性領域(pH9〜10)におけるpHの安定性が証明されるのである。
【0076】
次に、図1〜図3に参照されるように、基板4は、第1平坦表面6にレーザ切削されたマイクロチャネル10を有する。マイクロチャネル10は全体的に拡大された形で表されているが、本発明のもとに形成されたマイクロチャネル群は、多様な形状、例えば、直線状、ヘビ状、螺旋状、又は所望の任意の湾曲経路状に切削してよい、ということは容易に分かるであろう。さらに、上文で比較的詳細に説明したように、マイクロチャネル10は、半円、矩形、菱形、及びその類を含む多様なチャネル形状で形成してよく、かつそのチャネル群は広範囲のアスペクト比で形成してよい。また、留意すべきは、その上にレーザ切削された複数のマイクロチャネルを有するデバイスは、本発明の精神の範囲内に帰着するということである。
【0077】
特に、図1と図4を参照して、カバー板12は、前記の第1平坦表面6上に配置され、レーザ切削されたマイクロチャネル10と組み合わせて、細長の試料処理区画14を形成する。カバー板12は、ポリイミドのような、任意の適当な基板で作ってよく、基板の選択は、シリコン(ケイ素)又は二酸化ケイ素材料のような望ましくない分離表面を避けることで制限されるだけである。
【0078】
本発明に基づき、カバー板12は、第1平坦表面6上に固定できるようにアライメントして、加圧シーリング技術を使うことにより、(クリップ、応力ばね又は関連締付け器具のような)部分品を合体する外部手段を使うことにより又はポリマー、セラミックス及びその類を連結する分野でよく知られている接着剤を使うことにより、液体の漏れない(液密)試料処理区画を形成してよい。
【0079】
図1〜図4を参照して、カバー板12がさらにそこに切削されたアパチャーを包含する発明の特殊な実施例を示す。この点に関して、第1アパチャーはその第1末端16で試料処理区画14と通じて外部源から前記試料処理区画への流体の通過を可能にする入口ポート18を形成する。第2アパチャーはその第2末端20で試料処理区画14と連絡して試料処理区画から外部の容器への流体の通過を可能にする出口ポート22を形成する。従って、小型化カラムデバイスは、試料処理区画の第1末端16から延びてその第2末端20まで通過する流体経路をもって形成され、それによって試料の液相分析が周知の諸技術を使って実行できるのである。
【0080】
やはり図1〜図4を参照して、基板4とカバー板12の両方にレーザ切削された試料導入手段を包含する本発明の特殊な実施例を示す。内部切削されたバイパスチャネル24が基板4に形成され、前記チャネル24は試料処理区画の第1末端16近くで露出する。2つの別のアパチャー26及び28をカバー板12に作りかつそれをバイパスチャネル24の第1及び第2末端(それぞれ30及び32で表示)に連携するよう配置する。この方法で、外部容器に保持されている試料をバイパスチャネル24に導入して(チャネル24の寸法で決まる)既知容積を持つ試料プラグ(栓)を形成してよい。このように形成した試料プラグは、次いで、入口ポート18を介して試料処理区画14の第1末端16に、外部の機械的弁機構を前記入口ポートとレーザ切削アパチャー26と28とに連絡させかつ溶液をバイパスチャネル24を通して試料処理区画の中へ流すことにより導入してよい。
【0081】
バイパスチャネル24及びアパチャー26と28により様々な試料導入技術が本発明に従ってさらに実施できるようになる、ということは留意すべきである。特に、試料処理区画に接続されないバイパスチャネルを設けることで、ユーザは、試料のキャリーオーバー(残余)又はカラム汚染を被らないでバイパスチャネルを通して試料を流すことができる。本明細書を読めば通常技術をもつ当業者に明らかになるように、前述の試料導入技術は、関連回転子を小型化カラムの外表面の固定子に突合せ結合して実行してよく、この場合、回転子は外部の配管及び流体源を入口ポート18及びアパチャー26と28とに選択的にインタフェースして、試料をバイパスチャネル24から外部配管に流し、次いでそこからその液相分析を行うためその試料を入口ポート18を介してカラム中へ導入してよい。この点に関して、ポリイミド基板に作り込まれた小型化カラムデバイスは、(液密シールを形成するため)応力を使ってそのデバイスに押しつけられているセラミックの回転子をデバイス上の選択されたアパチャー位置の間で2つの材料の摩擦特性によってさらに回転させる。他の適当な回転子は、限定しないが、ガラス及び非伝導性物質のような堅い材料で作ってよい。
【0082】
従って、本発明の実施において、外部ハードウェアにより、カバー板12の中へ向けてレーザ切削された穴を経由して電解液、フラッシュ(流し)液又は試料のような個々の外部液体の容器に小型化カラムデバイスを連絡させるのに必要な機械的弁機構が与えられる。この特徴から、本発明に従って構築された小型化平坦カラムデバイスに、加圧注入、流体力学的注入又は界面動電注入を含む種々の注入法を適用することが可能となる。図1〜図3の特定実施例では、外部の弁機構と注入手段とはレーザ切削アパチャーへの突合せ結合によって試料処理デバイスに連絡することが意図されているが、当分野で知られている他の適当な接続法はどれも本発明に容易に適用することができる。さらに、留意すべきは、他の多数の試料注入法及び流体をインタフェースする諸構想が実施されてよくかつそれらもやはり本発明の精神の範囲内に帰着するということである。
【0083】
また、本発明に従い、試料処理区画14の長手方向に沿って推進力を加えるための各種手段を標記デバイスと結合させてよい。この点に関して、駆動手段を入口ポート18と出口ポート22とにインタフェースさせて試料処理区画の長手方向全体に沿って圧力差又は電位を印加してよい。
【0084】
本発明のもとで小型化カラムの構築にポリイミドのような基板を使用することにより、標記カラムを通過する対象の分離被検体を検出するために屈折率(RI)検出法を用いることが可能となる。この点に関して、ポリイミドが「透明」になる(即ち、ポリイミドを透過する)波長の(例えば、>500nmの)放射線を放射する関連レーザダイオードの装備は、カラムデバイスにそれ以上の付帯的な特徴構造を何ら切削する必要のない検出法の設定を考慮したものである。
【0085】
ここで図2〜図4に参照されるように、本発明の好ましい実施例では、検出手段は基板4及びカバー板12中に切削してよく、この場合、前記検出手段は試料処理区画14の第1末端16の事実上下流に露出する。より詳細には、アパチャー34は、試料処理区画14と連絡させるため基板4を通して切削してよい。対応するアパチャー36も同様にカバー板12に形成し、かつカバー板を基板に貼り付けるときにそれがアパチャー34と共軸にアライメントされて試料処理区画14を形成するよう配置してよい。この方法で、試料処理区画を通過する対象の分離被検体を電気化学的検出技術によって検出するため、アパチャー34及び36を経由して電極(表示しない)を小型化カラムデバイスに接続してよい。
【0086】
図5を参照して、全体を42で表示した好ましい検出手段から成る本発明の別の実施例(符号2′で表示)を示す。より詳細には、第1透明シート38を設け、ここでカバー板12が前記第1透明シートと基板4との間に挟まれる。第2透明シート40も設け、この場合は、第2シートは基板4の第2平坦表面8の上に配置される。この方法で、試料処理区画の主軸に直交する(及び、従って、電気泳動分離における電気浸透の流れ方向に直交する)放射線の伝達を介して、マイクロチャネル10とカバー板12との組合せで形成された試料処理区画を通過する分離被検体の光学的検出が検出手段42により可能となる。さらに、本発明の実施において、透明シートは、クォーツ、ダイヤモンド、サファイア、融解シリカ又はその中を光が通過できる他の任意の適当な基板のような材料から成ってよい。
【0087】
標記透明シートは、検出アパチャー34と36とを覆いかつシールできるだけの表面積をもたせて作ってよく、又は前記シートはカラムデバイスの全表面積を完全に覆うことができる寸法であってもよい。この点に関して、例えば、融解シリカの実質的に共平面シートを用いて、特に薄い基板フィルム、例えば、薄膜ポリイミド基板で形成されたカラムデバイスに対して構造的補強を施してよい。
【0088】
従って、上述の光学的検出手段42では、本発明によって構成されるカラムを小型化するため種々の外部光学検出手段を採用することが可能となる。さらに、例えば、基板4とカバー板12とが熱接着性のポリイミドの層を含むポリイミド材料で形成されるときは、前述の接着剤を用いて形成されたクォーツ/Kapton(商標)結合は極めて弾力性があることが分かっているので、小型化カラムデバイス2′に対する透明シート38と40のシーリングが容易にできる。標記デバイスに対する他の好ましい透明シート材、例えば、ダイヤモンド、サファイア又は融解シリカのシーリングは、当分野で周知の接着技術を使って実行してよい。
【0089】
電磁波長の範囲を越える放射で検出ができるということは、UV/Vis、蛍光、屈折率(RI)及びラマンを含む種々の分光光度検出法を、本発明による小型化カラムとインタフェースで接続できることになる。
【0090】
さらに、容易に理解できるように、基板とカバー板とに切削されたアパチャーから成る光学的検出手段を用いることによって、本発明により構成された小型化カラムデバイスの有効検出経路長にわたって十分な制御が実行される。この点に関して、検出経路長は、基板4とカバー板12の複合厚に実質上等しく、250μm未満の検出経路長は、ポリイミドのような薄膜基板の標記検出手段42を使って容易に得ることができる。
【0091】
次に、図6を参照して、アパチャー34と36によって、試料処理区画14の細長い容積が検出手段42との交差点で設定され、ここでその容積は基板4とカバー板12の複合厚に比例する。この方法で、試料処理区画14を通過する試料プラグは、検出領域における区画容積の増加によってそのプラグが影響されるとき、特に、基板とカバー板の複合厚が約250μmを越える場合は不都合にひずみ、それによってデバイスの検出効率が多分低下するかも知れない。
【0092】
従って、本発明において、250μmを越える検出経路長が望まれる場合、基板の2つの対向する表面上に特徴構造がレーザ切削された代替デバイスの実施例が与えられる。より詳細には、図7と図8において、小型化カラムデバイスのさらに別の実施例が全体を52で表示されている。その小型化カラムは、それぞれ56及び58で表示された第1及び第2の実質上平坦な対向表面を有する基板54から成る。基板54は、第1平坦表面56にレーザ切削された第1マイクロチャネル60と第2平坦表面58にレーザ切削された第2マイクロチャネル62を有し、そのマイクロチャネルは、上述のように、様々な寸法、形状及びアスペクト比をもって与えられてよい。
【0093】
図7と図8の小型化カラムデバイスはさらに、それぞれ64及び66で表示された第1及び第2カバー板を含み、それらは、第1及び第2マイクロチャネル60及び62と組み合わされて、基板54が第1及び第2カバー板の間にサンドイッチされるときに第1及び第2の細長い分離区画を定める。
【0094】
同じく図7と図8を参照して、複数のアパチャーをデバイスにレーザ切削して拡張された分離区画を設定し、さらに流体伝達手段を設けてよい。より詳細には、第1及び第2平坦表面56と58とに直交する軸を有する基板54にレーザ切削されたアパチャーから成るコンジット手段72は、第1マイクロチャネル60の末端74を第2マイクロチャネル62の第1末端76に連絡させて拡張分離区画を形成する。
【0095】
さらに、第1カバー板64にレーザ切削された第1アパチャー68によって、第1マイクロチャネル60との流体伝達が可能となり、第2カバー板62にレーザ切削された第2アパチャー70によって、第2マイクロチャネル62との流体伝達が可能となる。容易に理解されるように、第1アパチャー68が入口ポートとして使われ、かつ第2アパチャー70が出口ポートとして使われるとき、第1及び第2マイクロチャネル60及び62の複合長に沿って拡張する流路を有する小型化カラムデバイスが設定される。
【0096】
図7と図8に示す本発明の実施例において、上述したような様々な試料導入手段を採用することができる。液体処理能力を与えるために外部ハードウェアも当該デバイスにインタフェースで接続でき、また、分離区画の長手方向に沿って推進力を加えるための様々な手段も、例えば、上述のように推進デバイスを第1及び/又は第2アパチャー68と70にインタフェースで接続して、同デバイスに結合してよい。
【0097】
加えて、種々の検出手段は標記実施例に容易に包含される。この点に関して、第1アパチャー78を第1カバー板64にレーザ切削し、第2アパチャー80を第2カバー板66に同様に形成して、結果的に、基板54が第1及び第2カバー板の間にサンドイッチされるときに第1及び第2アパチャーアがコンジット手段72と共軸で並ぶようにしてよい。従って、例えば、電極をアパチャー78と80とを介して小型化カラムに接続しかつ電気化学的技法を使うことにより、コンジット手段を通過する分離試料の被検体の検出が容易にできることになる。
【0098】
しかし、レーザ切削したコンジット手段72の主要な特徴は、検出点での分離区画容積の増加に起因する不都合な試料プラグの歪みを経験しないで、1mm未満、もしくはそれより大きい、拡張光学検出経路長を実現できるという能力である。図7、図8及び図11に参照されるように、それぞれ82及び84で表示された第1及び第2透明シートは、第1カバー板64が第1透明シートと第1平坦表面56との間に挟まれ、かつ第2カバー板66が第2透明シートと第2平坦表面58との間に挟まれるように、設けることができる。透明シート82と84は、石英結晶(クォーツ)、融解シリカ、ダイヤモンド、サファイア及びその類のような適当な材料から選択してよい。さらに、透明シートは、検出アパチャー78と80とを覆いかつシールできるだけの表面積をもたせて作ってよく、又はそれらのシートはカラムデバイスの全表面積を完全に覆うことができる寸法であってもよい。上述のように、この特徴のため、特に薄い基板で形成されたカラムデバイスに対して構造的補強を施すことが可能となる。
【0099】
図11に最もよく示されているように、標記配置によって、小型化カラムデバイスを通過する試料被検体の光学的検出がコンジット手段72の主軸に対応する光学検出経路長86に沿って実行できることになる。容易に分かるように、光学検出経路長86は、基板54の厚みによって実質的に決められ、かつ、従って、μmのカラム寸法と1mm未満又はそれより大きい光学経路長を有する小型化カラムデバイスを調製する上で大幅の柔軟性を持たせることが、本発明のもとで可能となる。この方法において、関連した様々な光学検出手段は、本発明によって構成された小型化カラムデバイスにインタフェースさせてよく、かつコンジット手段72を通過する試料被検体の検出は、UV/Vis、蛍光、屈折率(RI)、ラマン及び類似の分光光度検出法を使って実行してよい。
【0100】
次に、図9と図10を参照して、小型化カラムデバイス52′から成る本発明の関連実施例を示し、この場合、カラム部分と第1及び第2カバー板が全体的に88で表示された単一のフレキシブルな基板で形成される。このように、フレキシブルな基板88は3つの別々の領域:それぞれ第1及び第2の実質的に平坦な対向表面56′及び58′を有するカラム部分88B、そのカラム部分を挟む第1カバー板部分88A、及び第2カバー板部分88C、から構成される。第1及び第2カバー板部分は、少なくとも1つの実質的に平坦な表面を持つ。第1カバー板部分88Aとカラム部分88Bとは、少なくとも1つの折曲げ手段90で区切られており、その結果、第1カバー板部分はカラム部分88Bの実質的に平坦な第1表面56′の上に容易に折り重ねることができる。同様に、第2カバー板部分88Cとカラム部分88Bとは、少なくとも1つの折曲げ手段92で区切られており、その結果、第2カバー板部分はカラム部分88Bの第2の実質的に平坦な表面58′の上に容易に折り重ねることができる。特に好ましい実施例では、各折曲げ手段90及び92は、フレキシブル基板に間隔を持たせて切削した送り穴、基板を通して部分通路だけを延長できるよう間隔を置いて切削した溝(みぞ)穴様の凹部又はアパチャー、もしくはその類の列で構成されてよい。送り穴又は凹部は、円形、ダイヤモンド形、六角形又は予定の直線に沿って蝶番(ヒンジ)を形成しやすい他の形状を持っていてよい。
【0101】
従って、小型化カラムデバイス52′は、カラム部分88Bの第1平坦表面56′に第1マイクロチャネル60′をレーザ切削し、かつカラム部分の第2平坦表面58′に第2マイクロチャネル62′をレーザ切削することによって作られる。各マイクロチャネルは、様々な寸法、形状及びアスペクト比をもって与えられてよい。その後、第1カバー板部分88Aが第1マイクロチャネル60′を覆って細長い分離区画を形成するように第1折曲げ手段90の所でフレキシブル基板88を折り曲げて第1分離区画を形成する。その後、第2カバー板部分88C、が第2マイクロチャネル62′を覆って上述のように細長い分離区画を形成するように、第2折曲げ手段92の所でフレキシブル基板88を折り曲げて、第2分離区画を作る。第1及び第2平坦表面56′と58′とに直交する軸を有するカラム部分88Bにレーザ切削されたアパチャーから成るコンジット手段72は、第1マイクロチャネル60′の末端を第2マイクロチャネル62′の第1末端に連絡させて単一の拡張分離区画を形成する。
【0102】
さらに、第1カバー板部分88Aにレーザ切削されたアパチャー68′によって、第1マイクロチャネル60′との流体伝達が可能となり、第2カバー板部分88Cにレーザ切削された第2アパチャー70′によって、第2マイクロチャネル62′との流体伝達が可能となる。容易に理解されるように、第1及び第2アパチャーがそれぞれ入口ポートと出口ポートとして使われるとき、第1及び第2マイクロチャネルの複合長に沿って拡張する流路を有する小型化カラムデバイスが設定される。
【0103】
図9と図10のデバイスに、選択的に、検出手段を包含させてよい。1つの特定実施例では、第1アパチャー78′を第1カバー板部分88Aにレーザ切削し、かつ第2アパチャー80′を同様に第2カバー板部分88Cに形成してよく、この場合、両アパチャーは、フレキシブル基板88が上述のようにヒンジで折り曲げられてアパチャー78′と80′とをコンジット手段72′に正確にアライメントするとき、互いに共軸的に連絡しかつコンジット手段72′と連絡するよう配置される。
【0104】
本発明のさらに別の関連態様では、レーザ切削技術によるか又は当分野で周知の成形部品の別の組立方法によって形成された、選択的なマイクロアライメント手段は、小型化カラムデバイス52′に設けられる。より詳細には、複数のレーザ切削した対応アパチャー(表示しない)を、フレキシブル基板88のカラム部分88Bと第1及び第2カバー板部分、それぞれ88A及び88Cとに設けることができる。標記アパチャーは、選択的な検出手段のような種々の特徴構造を切削したコンジットにアライメントするため、その共軸のアライメントによってカラム部分とカバー板部分の1つ、又は両方との正確なアライメントができるよう配置される。前述の選択的なアライメントは、共軸アパチャーと協同する(ピンのような)手段を備えた外部装置を使って実施して、諸構成部品と諸部分とを互いに正確な軸一致状態に維持することができる。
【0105】
シリコン又は二酸化ケイ素材料以外の基板にレーザ切削され、かつマイクロカラムデバイスを供給するに当って以前の試みに関連して生じたいくつかの主要な問題を避ける、新規の小型化カラムデバイスを説明してきた。本発明の実施においてレーザ切削技術を用いることにより、高度に対称的でかつ精密に限定されたマイクロカラムデバイスを各種のポリマー及びセラミック基板で組み立てて種々の小型化液相分析システムを実現することが可能となる。この点に関して、(直径5〜200μmの範囲の)マイクロキャピラリーの寸法と1mm未満又はそれを上回るカラム検出経路長とを有する小型化カラムを与えてよい。この特徴は、小型化を目指す従来の試み、例えば、毛管電気泳動においては、キャピラリー作成後にデバイスに実質的加工を加えないで、達成はできなかった。さらに、ポリイミドのような不活性物質における小型化カラムのレーザ切削によって、シリコン又は二酸化ケイ素素地の材料で形成された従来のデバイスが遭遇した諸問題が避けられる。そのような問題には、シリコン又は二酸化ケイ素材料の物質固有の化学活性とpHの不安定性が含まれ、そのためそれらのデバイスで実施し得る分離法の種類が制限されることになる。
【0106】
本発明の実施において、個別ユニットを作成するために選択された基板にステップ・アンド・レピート処理を使って1組の所望の特徴構造をレーザ切削することによって小型化カラムデバイスを形成してよい。この点に関して、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル及びポリカーボネートを含む縮合ポリマー基板に標記デバイスをレーザ切削することは特に意図されるところである。さらに、本発明は、1組の所望の特徴構造を包含する型板を作成するのにレーザ切削処理かもしくはLIGA処理を使って実施してよく、これによって、小型化カラムの多重コピーを当分野で周知の射出成形技術を使って大量生産してよい。より詳細には、ここでは、次のような材料、ポリカーボネート、ポリ(エチレン・テレフタラート)とポリ(ブチレン・テレフタラート)を含むポリエステル、ポリアミド、(例えばナイロン)、ポリホルムアルデヒドとポリ(フェニレン・スルフィド)を含むポリエーテル、ポリイミド(例えば、Kapton(商標)及びUpilex(商標))、ABSポリマー,Kel−Fコポリマー,ポリ(メチル・メタクリレート),ポリ(スチレンーブタジエン)コポリマー,ポリ(テトラフルオロエチレン),ポリ(エチレンー酢酸ビニル)コポリマー,ポリ(N−カルバゾール)を含むポリオレフィン化合物及びポリスチレン、から成る基板の射出成形によって小型化カラムを作ることが意図されている。
【0107】
上述の基板の表面におけるマイクロチャネルのレーザ切削法は、試料処理区画の形成以前に様々な表面処理をマイクロチャネルに適用できるというさらに別の特徴をもっている。即ち、本発明の方法を用いて作られたレーザ切削マイクロチャネルの開放型形状(openconfiguration)により、従来のマイクロキャピラリーにおけるような、密閉型構造では不可能であるところの、多数の表面処理又は改質を実施することができる。より詳細には、縮合ポリマー基板におけるレーザ切削は、カルボキシル基、ヒドロキシル基及びアミン基のような官能基を特色とする表面を持つマイクロチャネルを与え、そのため、当分野で周知の技術を使って標記マイクロチャネル表面に選択した種を化学的に結合することが可能となる。本デバイスの開放型形状によって可能となる他の表面処理には、表面吸着、高分子移植及びマスキングと堆積技術並びに液体分離の分野で周知の動的失活技術を用いるマイクロチャネル表面へのダイヤモンド又はサファイアのような材料の薄膜堆積がある。
【0108】
標記レーザ切削処理全般に対し厳密なコンピュータ化制御を加えることができるため、極めて精密なマイクロチャネルの形成が可能となり、それがまた、2つの実質的に平坦な構成部品に特徴構造が切削された小型化カラムの形成を可能にし、そのときに、それらの部品をアライメントして対称性と軸一致性が向上された複合試料処理区画を定めることができる。この点に関して、折り曲げられ又は互いにアライメントされるときに単一の小型化カラムデバイスを定めるところの2つの要素半分を作製するのに、レーザ切削法を用いる発明のさらに別の実施例を与えることが意図されている。
【0109】
次に図12を参照して、試料の液相分析用小型化カラム全体を102で表示する。小型化カラム102は、それぞれ、106及び108で示された第1及び第2の要素半分を有する支持体104を設けることによって作られる。支持体は、レーザ切削が可能でかつ切削後折り曲げられるようにフレキシブルであって、実質的に平坦なポリイミドフィルムのような基板から構成されてよい。しかし、選択された特殊な基板も本発明において限定されるものではない。
【0110】
第1及び第2の要素半分106及び108は共に、それぞれ110及び112で表示された実質的に平坦な内表面を有し、そこに小型化カラムの特徴構造をレーザ切削してよい。より詳細には、第1マイクロチャネルのパターン114を第1平坦内表面110にレーザ切削し、第2マイクロチャネルパターン116を第2平坦内表面112にレーザ切削する。本発明に従い、前記第1及び第2マイクロチャネルパターンは、相互の鏡像を与えるよう支持体104に切削する。
【0111】
次に、図13と図14を参照して、第1及び第2マイクロチャネルパターン114と116で定められる細長い穴から成る試料処理区画118は、第1及び第2の要素半分106と108を互いに接合点に面して(折り曲げることによるような)アライメントをして形成してよい。本発明の実施において、第1及び第2の要素半分は互いに固定できるようにアライメントして保持し、応力を掛けることによるか、又は液相分離デバイスの分野で周知の接着剤の使用によるような加圧密封技術を用いて液密試料処理区画を形成してよい。発明によりさらに意図されることは、半円型の断面を有する第1及び第2マイクロチャネルパターン114及び116を形成し、そのとき、構成半分のアライメントで高度に対称的な円形断面を有する試料処理区画を定めてそこを通る流体の流れを増すことができるようにすることである。しかし、上で議論したように、様々なマイクロチャネルの形状も本発明の精神の範囲内である。
【0112】
発明のさらに好ましい実施例において、特に意図されることは、KJ(商標)と呼ばれDuPont社から市販されている熱塑性の種類のポリイミドの薄層と共押出しされたKapton(商標)フィルムから成るポリマーの積層基板から支持体104を作ることである。この方法で、第1及び第2の要素半分106及び108は、一緒に熱シールしてよく、結果として、バルク(塊状)のKapton(商標)の材料と同じ化学的性質及び、従って、同じ機械的、電気的かつ化学的安定性を備えた液密溶接となる。
【0113】
次に図12〜図14を参照して説明すると、小型化カラムデバイス102は、さらに、関連外部流体収容手段(表示しない)を試料処理区画118に連絡させるための手段を包含して、液相分離デバイスを実現する。より詳細には、複数のアパチャーを支持体104にレーザ切削してよく、その場合、前記アパチャーは支持体の少なくとも1つの外表面から伸びかつ少なくとも1つのマイクロチャネルと連絡して、その中に流体を通過させることができる。この点に関して、入口ポート120は、第1の要素半分106にレーザ切削されてよく、そして前記の第1マイクロチャネル114の第1末端122に連絡する。同様に、出口ポート124は、第1の要素半分にレーザ切削されてよく、そして前記の第1マイクロチャネル114の第2末端126に連絡する。
【0114】
容易に分かるように、液相試料処理デバイスは、マイクロチャネル114の第1末端122から伸びてその第2末端126に至る流路をもたせて形成してよい。この構成では、入口ポート120を通して関連した流体源(ソース)(表示しない)から流体を伝達し、その流体をマイクロチャネル114と116とのアライメントをして作製した試料処理区画118中を通過させ、そしてその流体を出口ポート124を介して試料処理区画から外へ出すことにより行われる。この方法で、当分野で周知の技術を使って広範囲の液相分析処理を標記小型化カラムデバイスで実行してよい。さらに、試料処理区画118の長手方向に沿って推進力、例えば、圧力差又は電位を加えるための種々の手段を、入口及び出口ポート経由でカラムデバイスに容易にインタフェースさせるか、又は支持体104に切削してよい別のアパチャーを経由して試料処理区画にインタフェースさせてよい。
【0115】
入口ポート120は、種々の外部流体及び/又は試料導入手段が、小型化カラムデバイス102と容易にインタフェースできるように設けてよい。既に比較的詳細に議論したように、前述の手段は、外部圧注入、流体力学的注入又は界面動電的(electrokinetic)注入メカニズムを包含する。
【0116】
次に、図12と図13に参照されるように、小型化カラムデバイス102は、さらに、支持体104にレーザ切削された検出手段を包含する。より詳細には、第1アパチャー128は、前記の第1の要素半分106に切削され、その第2末端126に近い点で第1マイクロチャネル114に連絡する。第2アパチャー130も前記の第2の要素半分108に同様に形成されて第2マイクロチャネル116に通ずる。従って、様々な関連検出手段は、次いで、試料処理区画118にインタフェースさせて、例えば、第1及び第2アパチャー128及び130を介して小型化カラムに電極を接続して、その中を通過する対象の分離された被検体を検出してよい。
【0117】
本発明のさらに別の好ましい実施例では、光学的検出手段が小型化カラムデバイス102に設けられる。この点に関して、第1及び第2アパチャー128及び130は、各要素半分の軸を合わせて試料処理区画118を形成するときに、支持体104の面に直交する軸をさらに有する前記アパチャーが、互いに共軸でアライメントされるように、前記支持体に切削してよい。通常技術をもつ当業者に容易に理解されるように、支持体104の外面上に配置して、透明シート(表示しない)を設けかつ前記第1及び第2アパチャー128及び130を覆うことにより、試料処理区画118を通過する試料は、透明シートを通して分光光度検出手段を試料とインタフェースさせて、当分野で周知の技術を使って分析することができる。光学検出経路長は、前記第1及び第2の要素半分106及び108の複合厚によって実質的に決められてよい。この方法で、250μm未満の光学検出経路長は、125μmのポリマーフィルムに小型化カラムデバイスを切削することにより容易に与えられる。
【0118】
それに応じて、発明により、構成部品上にマイクロストラクチャーをレーザ切削しかつその部品をアライメントして優れた対称性を有するカラムを作ることによって形成された、小型化カラムデバイスの好ましいいくつかの実施例を説明した。既に詳しく記述したように、開放型形状で標記マイクロチャネルを作成することにより、様々な表面処理及び改質を試料処理区画の作成以前にチャネルの内表面に施すことができる。この方法で、このようにして作成された複合試料処理区画において、クロマトグラフィー、電気泳動及び電気クロマトグラフィー的分離を含む広範囲の液相分析技法を実施してよい。
【0119】
本発明の実施において、さらに意図されていることは、部品支持体の半分の精密なアライメント用の光学手段を提供することであり、これによって、本発明によって作成された複合試料処理区画の精密な設定が可能となる。より詳細には、発明のさらに好ましい実施例において、マイクロチャネル、検出アパチャー及びその類のようなレーザ切削した構成部品の高精度のアライメントができるようマイクロアライメント手段が提供される。
【0120】
次ぎに、図15と図16に参照されるように、本発明に従って構成された小型化カラムデバイスは、全体的に150で表示されており、フレキシブル基板152に形成されている。そのカラムデバイスは、それぞれ、154及び156で表された第1及び第2の支持体半分から成り、各々は、それぞれ、158及び160で表された実質的に平坦な内表面をもつ。その内表面は、全体が162で表示された、レーザ切削したマイクロストラクチャーを包含し、そこでは前記マイクロストラクチャーは、既ににより詳細に記述したものと同様の方法で、互いに鏡像を与えるように配置される。
【0121】
構成部品の精密なアライメントは、第1の本体半分154を第2の本体半分156の上に重ねて折り曲げられるように、全体が180で表示された、少なくとも1つの折曲げ手段を有するフレキシブル基板152に小型化カラムデバイスを形成することにより実現してよい。折曲げ手段180は、基板152に間隔を持たせて切削した送り穴、基板を通して部分通路だけを延長できるよう間隔を置いて切削した溝(みぞ)穴様の凹部又はアパチャー、もしくはその類の列で構成されてよい。送り穴又は凹部は、円形、ダイヤモンド形、六角形又は予定の直線に沿って蝶番(ヒンジ)を形成しやすい他の形状を持っていてよい。
【0122】
それに応じて、本発明の実施において、折曲げ手段180によって、前記の第1及び第2の支持体の各本体半分154及び156を互いにヒンジで折り曲げかつ前記の第1及び第2の平坦内表面158及び160上に切削された前記マイクロストラクチャーにより定められた複合特徴構造を正確にアライメントすることが可能となる。
【0123】
さらに意図されていることは、レーザ切削技術によるか又は当分野で周知の成形部品の別の組立方法によって形成された付帯のマイクロアライメント手段を設けることである。より詳細には、複数のレーザ切削したアパチャー(表示しない)を、前記第1及び第2の支持体の各本体半分154及び156に設けてよく、ここで前記のアパチャーは、その共軸アライメントによって支持体の各半分同士の精密なアライメントができ、それによって切削された細長い穴のような複合特徴構造が定められるよう配置する。アライメントは、前記共軸アパチャーと協同する(ピンのような)手段を備えた外部装置を使って実施して、各本体半分を互いに正確な軸一致状態に維持することができる。
【0124】
図15と図16に参照されるように、本発明のさらに別の特定実施例では、マイクロアライメント手段は、当分野で周知の組立技術、例えば、成形又はその類を使って前記第1及び第2の支持体の各本体半分154及び156に作り込んでよい。この方法において、符号164、166及び168で表された、複数の突起を前記第1支持体の本体半分154に形成してよい。また、符号170、172及び174で表された、複数の凹部を前記第2支持体の本体半分156に形成してよい。
【0125】
これに応じて、容易に分かるように、マイクロアライメント手段は、互いに対応する構造を形成するよう作られ、それによって、前記の支持体の各本体半分同士が接合点で互いに向き合ってアライメントされるとき、突起164が凹部170と噛み合い、突起166が凹部172と噛み合い、そして突起168が凹部174と噛み合う。この方法において、支持体の各本体半分154及び156の明確かつ正確なアライメントが可能となり、それによって、前記のレーザ切削したマイクロストラクチャー162によって限定された複合特徴構造を精密に定めることができる。
【0126】
本明細書を読めば通常技術をもつ当業者には容易に分かるように、対応するマイクロアライメントの様々な特徴構造は、本発明の精神から逸脱しないで標記小型化カラムデバイスに形成することができる。そのような付帯特徴構造は、穴及び/又は前記の構成部品におけるグルーブ(溝)及びエッジのような対応構造体の任意の組合せを包含し、そこで前記の特徴構造が協同して構成体部品の正確なアライメントを可能にするものである。
【0127】
図17は、μ−TASの一実施例を説明するものである。この実施例は生体分析の応用(実施例1参照)について記述されているが、複合マトリックスにおける(約1000分子量未満の)小さい溶質種と(約1000分子量を越える)大きい種を含む、任意の溶質種に関して初めから終わりまでの一貫分析を実現することは、本発明の目的とするところである。
【0128】
一般に、μ−TAS200は、上に詳述したように、第1及び第2の平坦な対向表面を有し、その第1の平坦な基板に少なくとも2つの試料操作領域(202〜212及び214〜220)を有するマイクロチャネルをレーザ切削し、さらに選択的に、複数のレーザ処理したアクセスポート(222〜232)と検出手段(234〜240)を有する基板を設けることによって構成することができる。試料流路の構成要素(202〜212)と試料操作領域に対応する試料取り扱い部の構成要素(214〜220)とを有する試料処理区画は、平坦表面上にカバー板を配置して作ることができる(例えば、図1〜図4参照)。
【0129】
あるいは、μ−TAS200は、平坦な内表面をもつ第1及び第2の要素半分有し、その第1及び第2の要素の内表面に少なくとも2つの試料操作領域(202〜212及び214〜220)を有するマイクロチャネルの鏡像をレーザ切削し、さらに選択的に、レーザ処理したアクセスポート(222〜232)と検出手段(234〜240)を有する基板を設けることによって構成してよい。試料流路の構成要素(202〜212)と試料操作領域に対応する試料取り扱い部の構成要素(214〜220)とを有する試料処理区画は、内表面を互いに突合せ対向させてアライメントすることにより形成してよい。
【0130】
さらに別の実施例では、μ−TAS200は、図9と図10に参照されるように、上述した3つの明確な領域、即ち、第1及び第2の実質的に平坦な対向表面を有するカラム部分、第1カバー板部分及び第2カバー板部分を有する単一のフレキシブル基板を設けることによって作ってよい。従って、例えば、少なくとも2つの試料操作領域(202〜212及び214〜220)を有するマイクロチャネルは、フレキシブル基板のカラム部分の第1内表面にレーザ切削してよい。次いで、第1折曲げ手段のところで第1カバー板部分がカラム部分の第1平坦表面を覆うようにフレキシブル基板を折り曲げることによって試料処理区画を形成する。あるいは、少なくとも2つの試料操作領域(202〜212及び214〜220)を有するマイクロチャネルの鏡像をフレキシブル基板のカラム部分と第1カバー板部分の内表面にレーザ切削して、結果として、上述のように、第1折曲げ手段のところでフレキシブル基板を折り曲げ、カラム部分の第1平坦表面を第1カバー板部分の内表面に互いに突合せ対向させてアライメントすることにより、試料処理区画を形成できる。
【0131】
一般に、試料流路の構成要素(202〜212)が形成されるマイクロチャネルの試料操作領域は、細長くかつ半円形状である。しかし、既にに比較的詳細に述べたように、マイクロチャネルは、半円、方形、菱形、及びその類を含む様々なチャネル形状で作られてよく、かつそのチャネル群は種々のアスペクト比で作られてよい。試料取り扱い部の構成要素(214〜220)が形成されるマイクロチャネルの試料操作領域は、典型的には方形である。しかし、それは所望の任意の形状でレーザ切削してよい。さらに、特定のどのμ−TASにおいても、マイクロチャネルの試料操作領域は、方形、正方形、三角形、及びその類を含む形状の任意の組合せで作られてよい。加えて、図17に説明されているμ−TASは高アスペクト比(即ち、マイクロストラクチャーの深さが幅より大きいアスペクト比)をもつ試料流路成分と低アスペクト比(即ち、マイクロストラクチャーの幅が深さより大きいアスペクト比)をもつ試料取り扱い要素を包含しているとはいえ、これは制限しようとするものではない。例えば、第4試料取り扱い要素220におけるように、試料取り扱い要素は高アスペクト比を有してよい。
【0132】
図17に描写したように、μ−TAS200は、試料流路成分(202〜212)と試料取り扱い要素(214〜220)とを交互に配する連続した配列である。選択的に、検出手段232〜240を試料流路成分に沿って配置する。検出手段は、上で詳述したように、カバー板、基板自体、又はカバー板と基板の両方に形成してよい。
【0133】
加えて、図17に示す選択的なアクセスポート(222〜232)は、試料流路成分に沿って配置する。このアクセスポートにより、μ−TASによる試料作成を実施するのに必要な試料流路成分からの試料、緩衝液及びその類の導入又は除去に要する、例えば、外部の液体容器又は弁機構との試料流路成分の流体伝達が可能となる。液体操作機能を与えるため外部ハードウェアも標記μ−TASにインタフェースで接続してよく、試料処理区画の長手方向に沿って推進力を加えるための各種手段もμ−TASに結合してよい。従って、アクセスポートは、アクセスポートに通じる弁が個別に「起動」できるよう、即ち、流れをアクセスポートを通して流すために開き、又は流れを遮るために閉じるように、弁機構のマニホルドとの流体の伝達が転換及び切り換えできる状態であってよい。
【0134】
図17を特に参照して、ここで描写されたμ−TAS200は、第1試料取り扱い要素214と流体伝達状態にある第1試料流路成分中へそれによって試料を導入できる第1アクセスポート222を包含する。その試料は、事前に処理をしないで第1アクセスポート222経由で試料流路成分へ直接加えてよい。選択的に、第1アクセスポート222を外部のプレカラム試料作成デバイスと、例えば、濾過デバイスと、インタフェースさせてよい。
【0135】
一実施例では、試料取り扱い要素214は濾過作用を行い、粒子、シート又は膜から作られた多孔性媒質を充填してよい。好ましい実施例では、媒質は、45〜60μmの有効孔寸法をもつ。好ましくは、媒質はバイオコンパチブル型であり、ナイロン、セルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、アガロース、又はその類のような材料から作ってよい。代替実施例では、濾過作用は、試料取り扱い要素214中への試料導入以前にインラインデバイスで実行してよい。
【0136】
図17に示した特定の実施例では、試料取り扱い要素214は、「捕獲機能」が働くよう設計される。従って、試料取り扱い要素214は、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、錯化反応又はそうした定量クロマトグラフィー技法(即ち、流れている試料流よりはそれとは別のバッチモードで実行されるクロマトグラフィー技法)であってよい。アフィニティークロマトグラフィーのマトリックスは、試料の性質に応じて、生物親和剤、抗体、レクチン、酵素基質又は類似物、酵素阻害剤又は類似物、酵素補因子又は類似物、捕獲オリゴヌクレオチド、又はその類、を含んでよい。イオン交換のマトリックスは、陰イオン又は陽イオン交換媒質であってよい。錯化反応は、例えば、ポルフィリン又はフェナントロリンとの、ボロネート反応、ジチオール反応、金属イオン反応、もしくは試料がクロマトグラフィーマトリックスと可逆反応するその他の反応、を含んでよい。
【0137】
第1及び第2アクセスポート222及び224は、それぞれ、第1試料取り扱い要素214から上流及び下流に配置される。第1アクセスポート222が入力ポートとして用いられ、第2アクセスポート224が回収ポートとして用いられるときは、試料取り扱い要素214は、下流側のμ−TASの試料操作領域から切り離すことができる。従って、試料が試料取り扱い要素214上に充填されると同時に、被検体捕獲中に試料取り扱い要素から流される異質の物質は、回収でき、かつ、この方法で、下流側のμ−TASの試料操作領域へのその侵入が防止がれる。あるいは、第2アクセスポート224は、外部流体源又はオンデバイス(on−device)流体収容区画であってよい流体源に接続されたときは、流量制御、試料誘導化、又は他の類似の機能をもたらす流体入力ポートとして用いてよい(図18〜図20参照)。
【0138】
試料がいったん第1試料取り扱い要素214に導入されてしまうと、試料の流れは、第1アクセスポート222にインタフェースされる外部の推進デバイスを介して作用されてよい。あるいは、試料取り扱い要素214への試料の流れは、オンデバイス推進手段、例えば、オンデバイス流体収容区画の起動でもたらされてよい。
【0139】
第1検出手段234は、第1試料取り扱い要素214とは下流側で第2試料流路要素204と直接的又は間接的に連絡していてよい。第1検出手段234は、第2試料取り扱い要素216上に充填されることになる、流路要素204における試料の存在をモニタするため、又は第1試料取り扱い要素214からの試料の溶離をモニタするために用いることができる。後者の場合、第1検出手段234は、第2アクセスポート224から上流側の第2試料流路要素204に置くのが好ましい。
【0140】
図17に示した特定の実施例では、第2試料取り扱い要素216は、第1試料取り扱い要素214から溶離される被検体を脱塩又は中和する働きがある。従って、第2試料取り扱い要素216は、電気泳動脱塩,pH中和、サイズ排除クロマトグラフィー要素、又はその類であってよい。
【0141】
第1試料取り扱い要素214での場合のように、第2試料取り扱い要素216も、その両側に第2及び第3アクセスポート224及び226が配置される。第1、第2及び第3アクセスポート222、224及び226は、入口及び出口ポートの任意の組合せで用いてよい。一般に、試料がいったんに第1試料取り扱い要素214から溶離されて第2試料取り扱い要素216上に充填されてしまうと、第2アクセスポート224は入口ポートとして作用し、第3アクセスポート226は出口ポートとして働き、それによって、μ−TASの試料操作領域の下流側から第2試料取り扱い要素216を切り離す。第1試料取り扱い要素214への逆流を防止するため、第1アクセスポート222は閉じることができる。
【0142】
図17に説明したように、第3試料取り扱い要素218は、被検体を集束しかつ最終前の試料を処理する区画として形作られている。それなので、第3試料取り扱い要素218は、等電集束要素、等速電気泳動的試料積層要素、またはその類であってよい。再度、第3試料取り扱い要素218は、その両側に第3及び第4アクセスポート226及び228が配置され、アクセスポートの対、222/224及び224/226に関して説明したそれと類似の方法で作動されて、第3試料取り扱い要素218を下流側の試料操作領域から分離する。第2及び第3検出手段236及び238も第1検出手段234に関して上述したように用いられてよい。
【0143】
第4試料取り扱い要素220は、クロマトグラフィー、電気泳動、又は電気クロマトグラフィー機能から選択される単一又は多重機能を包含してよい。図17には、試料取り扱い要素220が1個だけ示されているが、様々な寸法をもつ多種の要素が連続して切削されかつ、特に、異なった試料処理機能として連続して作成されてよい。第4試料取り扱い要素220に包含されてよいクロマトグラフィー機能の例は、逆相クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、キラル分離クロマトグラフィー、及びその類である。クロマトグラフィー機能については、固定相は、粒子表面又は要素部品の壁に結合されるかさもなければ接着されてよい。電気泳動クロマトグラフィーの例には、開放細管電気泳動、ミセル界面動電キャピラリー電気泳動(Terabe等、(1985)Anal.Chem.57:834〜841参照)、キャピラリーキラル電気泳動、及びその類がある。開放細管電気泳動は、種々の無機又は有機試薬、等電集束、及びその類の何れかを使う結合層、動的不活化を含む。ミセル界面動電キャピラリークロマトグラフィーは、ドデシル硫酸ナトリウム、臭化セチルアンモニウム、アルキルグルコシド、アルキルマルトーシドのような界面活性剤、3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニア]−1−スルホン酸プロパン(「CHAPS」)、3−[(3−コラミドプロピル)−ジメチルアンモニア]−2−ヒドロキシ−1−スルホン酸プロパン(「CHAPSO」)、又はその類のような両性イオン界面活性剤を使って実行してよい。キャピラリーキラル電気泳動は、シクロデキストリン、クラウンエーエル、胆汁酸塩、又はその類を使って実行してよい。
【0144】
第4検出手段240は、第4試料取り扱い要素220から下流側にある試料流路要素に配置してよい。その検出手段は、基板、カバー板、又は基板とカバー板の両方に切削してよい。
【0145】
選択的に、図7と図8、及び図9と図10を参照して詳しく説明記述されているように、第4検出手段240は、基板の第1平坦表面56及び第2平坦表面58に直交する軸を有する基板54にレーザ切削されたアパチャーから成り、第2マイクロチャネル62の第1末端76と試料処理区画60の末端74とを連絡するコンジット手段72であってよい。図11に示すように、この配置によって、コンジット手段72の主軸に一致する光学検出経路長に沿ってμ−TASを通過する試料被検体の光学的検出が実行できる。この方法で、各種の関連光学検出手段を発明により構成されるμ−TASにインタフェースさせてよく、それによって、コンジット手段72を通過する試料の被検体の検出が、UV/Vis、蛍光、屈折率(RI)、ラマン及び類似の分光光度技術を使って可能となる。
【0146】
μ−TASについてのさらに別の選択的な実施例では、第4アクセスポート230は、1つ以上の数の機能を提供してよい。上述のように、第4アクセスポート230は、第4試料取り扱い要素220の出口ポートとして機能してよい。それを外部の又はオンデバイスの流体収容区画に選択的に取り付けてよく、それによって、μ−TAS中の試料の流速を調節する手段又は第4試料流路要素210中へ試料と反応する試薬を導入して第4検出手段240による試料検出を助長する手段を実現できるのである。
【0147】
第6アクセスポート232は、最終検出後の試料の回収を含む以外に1つ以上の各種機能を提供してよい。選択的に、第4アクセスポート230による場合のように、第6アクセスポート232も流体収容区画に取り付けてよい。第6アクセスポート232は、試料の液滴を後カラム回収デバイスへ伝達するためのレーザ切削した別のマイクロストラクチャーをインタフェースしてよい(図21〜図25参照)。
【0148】
図18〜図20は、基板上に集積「オンデバイス」マイクロストラクチャーとしてレーザ切削した流体収容区画を有するμ−TAS250を図解するものである。流体収容区画252は、緩衝液又は他の試薬を保持できる区画を与えるために基板に適当なマイクロストラクチャーをレーザ切削して形成してよい。該収容区画は、メークアップ(補給)流体、流量調節機能を与えるかもしくは後分離前検出(post−separationpre−detection)の被検体誘導化用試薬を与えるのに用いてよい。
【0149】
図18に表示した一例では、入口ポート254及び出口ポート256を有する流体収容区画252は、平坦基板258にレーザ切削される。その容器のマイクロストラクチャーは、所望の容積を有する収容区画を実現できるよう任意の形状寸法でかつ任意のアスペクト比で形成してよい。出口ポート256は、マイクロチャネル262を相互接続する方法で試料処理区画260と流体伝達状態であってよい。入口ポートは、選択的に、収容区画がそこから充填されてよい外部流体源に切り換えできるように接続する。容器流路要素262を相互接続する収容区画252と試料処理区画260とは、カバー板264との組み合わせで、それぞれ、容器マイクロストラクチャーと相互接続マイクロチャネルとから形成される。
【0150】
図19で図解されている別の実施例では、流体収容区画252は、入口ポート254及び出口ポート256を有する容器マイクロストラクチャー252を第1平坦基板に、また鏡像構造252′、254′及び256′を第2平坦基板258′にレーザ切削して形成してよい。収容区画252は、第1及び第2基板が上に詳述したようにアライメントされるときに形成される。
【0151】
流体収容区画に保持される緩衝液又は試薬は、接続マイクロチャネルを経由して試料処理区画260、試料流路要素又は試料取り扱い要素収容区画252へ送達されてよい。収容区画から試料処理区画への流体の流れは、受動拡散を介して生じてよい。選択的に、流体は、作動手段によって収容区画から移動させてよい。ここに開示された発明に従う作動手段としての効用を見いだすであろう各種マイクロポンプ及びマイクロバルブは、当分野でよく知られており、例えば、Manz等、(1993)Adv.Chromatogr.33:1〜66及びここに引用した参考文献に記述されている。
【0152】
図20の断面図に示したように、収容区画252は、選択的に、薄膜266で覆われて薄板式ポンプを形成する。受動1方向マイクロバルブ268は、選択的に、相互接続マイクロチャネル262中に統合されて移動流体の収容区画への逆流を防ぐ。選択的な、ガス(又は液体)充填キャビティ270は、膜の上方に置かれる。作動手段272は、膜266のたわみによって収容区画252から流体の移動を生じさせるために採用してよい。
【0153】
作動手段272は、膜266を直接歪ませるよう作用してよい。従って、作動手段は、圧電気、ピストン、ソレノイド又は他の方式の、膜たわみデバイスであってよい。あるいは、作動手段は、キャビティ270内部の温度がそれによって調節できる加熱手段であってよい。該加熱手段は、抵抗式加熱手段又は当分野で周知の適当な任意の方式の加熱手段であってよい。作動されると、加熱手段の温度が上昇し、それによって、キャビティ270の内容物を加熱しかつその容積を増加させ、膜266の下方へのたわみを生じさせ、そして流体を収容区画252から相互接続マイクロチャネル262、パストバルブ268及び試料処理区画260へ移動させる。
【0154】
あるいは、加熱手段272は、収容区画252そのものと熱接触して配置されてよい。この配置では、加熱手段の温度が上昇するにつれ、収容区画内の流体の容積が増大し、そのため収容区画から試料処理区画へ移動するのである。
【0155】
本明細書で開示・クレームされたμ−TASに組み込まれてよいポンピング機構の他の例には、超音波誘導搬送(Moroney等、(1991)Proc MEM S’91,p.277)又は電気水力学的誘導搬送(Richter等、(1991)Proc MEM S’91,p.271)の原理に基づいて作動するものがある。加えて、電気駆動多電解ゲルから構成された化学バルブ(Osada(1991)Adv.Materials 3:107;Osada等、(1992)Nature 355:242)を用いてよい。
【0156】
試料液滴を後カラム回収デバイス(320)へ伝達するために基板にレーザ切削されたマイクロストラクチャーを全体的に図21〜図23で示す。図21、図22及び図23は、試料液滴がそれによって作られ、そして後カラム回収できるようμ−TASから排出される手段を図解するμ−TASの断面図である。いま、図21を参照して説明すると、第6試料流路要素212と第6アクセスポート232とは、第6アクセスポート232、流体伝達手段306及び出口ノズル308と流体連絡しかつ軸が一致している混合室304から成る試料送達手段と流体連絡状態にある。流体伝達手段306は、基板にレーザ切削された外部流体源(図21)又はマイクロチャネル(図23)にインタフェースされたコンジットであってよい。図21に示すように、流体伝達手段306は、ガス又は液体の外部容器(表示しない)とガス又は液体のパルスがそれによって外部容器から排出されて試料液滴310を作ってよい手段と転換可能な流体伝達状態にある。図21において、ここに断面で示された後カラム回収デバイス320は、試料液滴を受ける微小井戸322がそこにレーザ切削されている基板であってよい。レーザ切削法で形成された他のマイクロストラクチャーに関連して説明されたように、微小井戸322は任意の形状及び任意のアスペクト比であってよい。後カラム回収デバイス320を図24及び図25により詳細に示す。
【0157】
μ−TASから試料液滴を生成させかつ排出させる手段のさらに別の例を、図22に断面で示す。加熱手段312は、試料送達手段302と熱接触して配置してよい。加熱手段312の温度が上昇するにつれ、蒸気の気泡が混合室304で増加して、それにより液滴310を作り出す。この方法を使う流体送達のさらに詳しい議論については、Allen等、(1985)Hewlett−PackardJ.May1985:21〜27を参照のこと。図21におけるように、図22に断面図で示した後カラム回収デバイス320は、試料液滴用の受け微小井戸322がそこにレーザ切削されている基板であってよい。加えて、カバー板324は、μ−TASと後カラム回収デバイス320間に動けるよう挿入されてよい。カバー板324は、ノズル308及び微小井戸322と軸が一致した開口部を有し、かつ空もしくは充填された井戸を以前に回収された試料液滴の汚染又は蒸着から防御する目的を持たせた構造である。
【0158】
μ−TASから試料液滴を生成させかつ排出させる手段のさらに別の例を、図23に断面で示す。図23に示すように、及びさらに図18〜図20に参照されるように、流体伝達手段306は、第6アクセスポート232と流体連絡している第1末端とオンデバイスの流体収容区画252と流体連絡している第2末端とを有する相互接続しているマイクロチャネルであってよい。あるいは、流体伝達手段306は、第6アクセスポート232と流体連絡している第1末端と外部の流体容器(表示しない)と流体連絡しているアクセスポートで終わる第2末端とを有するマイクロチャネルであってよい。加熱手段312は、流体伝達手段306と熱接触して配置されてよい。上述のように、加熱手段312の起動によって、その温度の上昇、混合室304での蒸気の気泡の増加、及び試料液滴の生成と排出が起こることになる。流体伝達手段306は、選択的に、カバー板264にレーザ切削したミクロチャネルから、又は内表面258と258′とにレーザ切削した鏡像のマイクロチャネルから作られる。図21及び図22におけるように、図23で断面で示されている後カラム回収デバイス320は、固相試料回収用の吸湿性シート手段328を保持する基板であってよい。固相試料回収用の吸湿性シート手段328は、ろ紙、吸収膜、又はその類であってよい。図22に関連して説明したように、カバー板324は、選択的に、μ−TASと後カラム回収デバイス320の間に可動できるよう挿入されてよい。
【0159】
図24及び図25に示すように、試料を受ける井戸322又は吸湿性シート手段328であってよい試料受け手段から成る後カラム回収デバイス320は、ノズル手段308に相関して配置されて該ノズル手段から液滴310を受けてよい。試料受け手段は、液相試料回収用の基板にレーザ切削した微小井戸322であるか又は固相試料回収用の吸湿性シート手段328であってよい。後カラム回収デバイス320用基板は、選択的に、シリコン又は二酸化ケイ素以外の材料であり、微小井戸322はその基板にレーザ切削される。図24及び図25に示すように、受け手段は、選択的に、多重画分が回収できるよう出口ノズルと回転可能にアライメントされる。あるいは、図25に示すように、後カラム回収デバイス320は、出口ノズルと軸一致した開口部326を有する保護手段324を包含し、ここで保護手段324は、μ−TASと試料を受ける井戸322との間に挿入される。後カラム回収デバイス320は、μ−TAS200に回転可能にアライメントされたディスクとして描写されているが、回収デバイスの形状はそのように制限される必要はない、ということは熟練した当業者には分かるであろう。従って、後カラム回収デバイス320は、例えば、試料を受ける井戸322の直線配置、又はその類のように形作ってよい。
【0160】
発明は、その好ましい特定実施例に関連して説明されてきたが、上記の説明並びに次の実施例は、説明を目的としたものであって、本発明の範囲を限定するものではない、と理解すべきである。本発明の範囲内の他の諸態様、諸利点及び諸修正は、本発明が属する分野の熟練した当業者には明らかになるであろう。
【0161】
次の実施例は、通常技術のもつ当業者に本発明の方法の用法についての完全な開示と説明を提供できるよう公表されるものであって、発明者が彼らの発明とみなすものの範囲を限定しようとするものではない。数値(例えば、量、温度、等)に関して正確を確保すべく多々努力を払ってきたが、いくつかの誤りと逸脱は説明されるべきである。表示されない限り、部は重量部、温度は℃かつ圧力は大気圧かもしくはその近辺である。
表1に示す実施例では、血清成分は、以下の免疫グロブリンの被検体で構成されている。
【0162】
【表1】
【0163】
免疫グロブリンの被検体がそこから抽出される他の血清成分の例には、アルブミン(4600mg/dl)、ビリルビン(0.4mg/dl)、コレステロール(211mg/dl)、クレアチン(1.1mg/dl)、グルコース(108mg/dl)、カルシウム(9/8mg/dl)及び尿酸(5.9mg/dl)がある。
【0164】
約20mm×60mmの外寸を有するμ−TASデバイスは、DuPont社から商標Kaptonで市販されているポリイミド材料に上述のレーザ切削技術を使って組立てる。言及しない限り、試料取り扱い要素部品のミリメートル単位の寸法は、以下では、幅×長さ×深さとして表示する。
【0165】
第1試料取り扱い要素214は、約5×10×0.2である。これは、容積2.0μlをもつ要素を与える。同要素には、微粒子又は膜材のような高表面積を有し、かつ被検体に関する特異性、この場合は免疫グロブリンG、A又はMを有するマトリックスを充填する。被検体ーマトリックスの相互作用の特異性は、例えば、被検体の疎水性(例えば、逆相又は疎水性相互作用クロマトグラフィー)又は被検体のイオン特性(例えば、イオン交換クロマトグラフィー)に基づいている。他方、該特異性は、被検体のマトリックスの特異的親和性に基づいてもよい。いずれの場合でも、第1試料取り扱い要素の機能は、所望の被検体を「捕捉」することであり、従って事前濃縮機能をもたらす。第1及び第2アクセスポート222及び224は、基板にレーザ切削され、第1試料取り扱い要素の側面に配置される第1及び第2試料流路要素202及び204へ流体を導入もしくはそこから流体を排出し、かつそれらと流体連絡している手段を提供する。第1及び第2アクセスポート222及び224は、指定された部品と特異的に関連したバルブ(弁)が「捕捉」段階中に個別に「作動」されてこの要素を切り離すことができるようバルブ機構のマニホルドと転換可能な連絡状態にある。この方法で、試料中の好ましくない成分は、試料充填中かつ第1試料取り扱い要素から被検体が溶離される以前に、廃水口に流される。
【0166】
本実施例の目的で、全部で約150フェムトモルのIgG、2.2フェムトモルのIgM及び25フェムトモルのIgAMを含んでいる5μlのヒトの血清を第1試料取り扱い要素214に充填した。それはIgG、IgA及びIgMへ結合するタンパク質A/G(Pierce)を含有する膜物質を含むものである。試料の充填は、第1アクセスポート222を経由してその要素中へその全量を注入するか又は試料をポンプで送ることによって実行してよい。試料は、第1試料取り扱い要素214にあるタンパク質と平衡させる。次いで、その要素は緩衝液を流して試料中の他の未結合溶質を取り除いてチャンバーを清浄する。
【0167】
試料が第1試料取り扱い要素214において捕捉マトリックスと釣り合った後、第1及び第2アクセスポート222及び224と関連するバルブが起動され、そしてデカップリング溶液が要素を通してポンプで送られてマトリックスから被検体を溶離する。第1検出手段234に光学的に結合された定性分光光度計をモニタして被検体がいつ第1試料取り扱い要素214から溶離されて第2試料取り扱い要素216に充填されたかを決める。
【0168】
第2試料取り扱い要素216(3×30×0.2;18μl)は脱塩機能を実施するよう設計されている。被検体を脱塩するのに使ってよいモードがいくつかある。例えば、脱塩は、特定マトリックスにおける大小の溶質の移動度が異なっていることに基礎を置く起電分離法を使って達成してよい。代わりの1つの脱塩法は、物質搬送を実行する手段として流体圧力を使い、分離モードとしてサイズ排除クロマトグラフィーを用いる。さらに、電気クロマトグラフィー分離モードを使って、両推進力を組み合わせるモードを同時に適用することは可能である(例えば、Knox等、(1987)Chromatographia 24:135;Knox等、(1989)J.Lig.Chromatogr 12:2435;Knox等、(1991)Chromatographia 32:317参照)。
【0169】
この実施例の目的で、第2試料取り扱い要素216は、ポリアクリルアミド、ポリメチルメタクリレート又はアガロースのような抗対流媒質を包含する。第2及び第3アクセスポート224及び226と関連するバルブが起動されて、この操作中、第2試料取り扱い要素216を切り離す。
【0170】
第3試料取り扱い要素218(3×40×0.2;24μl)は、被検体のバンド集束機能を働く。捕捉及び脱塩操作の後、バンドの拡大が起こりそうであり、それでバンド集束操作が必要になる。被検体の集束は、ゲルマトリックスにおける等電集束(IEF)メカニズム、クロマトフォーカシング、又は等速電気泳動の何れかによって実行してよい。
【0171】
この実施例の目的で、第3試料取り扱い要素218は、次の研究者によって説明されているように液体の両性電解質又はゲルマトリックスにおける両性電解質を含む(Wehr等、(1989)Electrophoresis 10:23〜29参照)。
【0172】
第3及び第4アクセスポート226及び228に結合されたバルブは、第3試料取り扱い要素218におけるマトリックスを適当な緩衝液と平衡させるために起動される。次いで、第2及び第4アクセスポート224及び228に連絡するバルブが起動されて第2試料取り扱い要素216から被検体を溶離する。第2検出手段236は、全ての被検体がいつ第3試料取り扱い要素218に充填されたかを決められるようモニタされる。最後に、第3及び第4アクセスポート226及び228に連絡しているバルブを起動させることによりpH勾配を生ずる。pH7〜4又は9〜6(Sigma)という動作範囲をもついわゆるポリバッファ(polybuffer)を用いる。この段階で、IgMとIgAからIgGの分離が起こる。
【0173】
第4試料取り扱い要素220(50μm×50mm;100nl)は、IgMからIgAの最終分離を実行する。同分離は、キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)を使って達成され、この場合、IgAとIgMとの分離は、電荷/寸法比の間の大差に基づいて生ずる。上記のように、この要素は、第4及び第5アクセスポート228及び230に連絡するマニホルドにおけるバルブの起動によって充填・分離され、試料の充填は第3検出手段238を介してモニタする。
【0174】
μ−TASによる血清の免疫グロブリンの被検体の典型的測定の最終段階は、第4検出手段240をモニタすることによって第4試料流路要素210で見られる。これは、被検体の定量化が基礎を置く検出である。分光光度計の検出は、必要とされる定量的データを与えるであろう。第5アクセスポート230は、後カラム誘導体化、例えば、ダンシル化又はDABSYLATION、及び検出用試薬を導入するための手段として用いられる。最終溶離緩衝液のナノリットル単位の疫グロブリンのフェムトモルは、ミクロモル〜高ナノモルの濃度を生ずる。分光高度計検出の経路長及びモードによっては、試薬を何ら必要としなくてよい。
【0175】
以上に述べたように、本発明は、〔1〕小型化カラムデバイス(2)から成るμ−TAS(200)であって、
(a)第1平坦表面(6)及び第2平坦表面(8)の実質的に平坦な対向表面をもつ基板(4)であり、
前記基板(4)は、前記第1平坦表面(6)にレーザ切削された第1マイクロチャネル(10)を有するが、シリコン又は二酸化ケイ素以外の材料から構成され、かつ前記第1マイクロチャネル(10)が少なくとも2つの試料操作領域(202,204,206,208,210,212,214,216,218,220)から成る、前記基板(4)と、
(b)前記第1平坦表面(6)上に配置され、前記第1マイクロチャネル(10)との組合せで第1試料処理区画(14)を形成するカバー板(12)であり、試料操作領域(202,204,206,208,210,212,214,216,218,220)が試料取り扱い要素(214,216,218,220)と流体連絡して試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を定めている、前記カバー板(12)と、
(c)第1試料処理区画(14)に連絡し、外部の流体源から該試料処理区画(14)を通して流体を通過させる、少なくとも1つの入口ポート(18)と少なくとも1つの出口ポート(22)と、
を含んで成ることを特徴とするμ−TAS(200)、を要旨とし、〔2〕〜〔9〕の好適な実施態様を含む。
【0176】
〔2〕第1試料処理区画(14)が、互い違いになる試料流路要素(202,204,206,208,210,212)と試料取り扱い要素(214,216,218,220)とを定める試料操作領域(202,204,206,208,210,212,214,216,218,220)の連続配列から成ることを特徴とする〔1〕に記載のμ−TAS(200)。
【0177】
〔3〕さらに、基板(4)にレーザ切削した検出手段(232,234,236,238.240)から成り、かつ前記の検出手段(232,234,236,238.240)が、第1試料処理区画(14)と連絡して該試料処理区画(14)を通過する試料の検出を可能にすることを特徴とする〔2〕に記載のμ−TAS(200)。
【0178】
〔4〕さらに、
(a)第1平坦表面(6)にレーザ切削された容器のマイクロストラクチャー(252)であって、かつカバー板(12)が前記マイクロストラクチャーとの組合せで入口手段(254)と出口手段(256)とを有する容器区画(252)を定める、容器のマイクロストラクチャー(252)と、
(b)第1平坦表面(6)にレーザ切削された誘導マイクロチャネル(262)であって、かつカバー板(12)が前記誘導マイクロチャネル(262)との組合せで第1試料処理区画(14)及び容器区画の出口手段(256)とそれぞれ流体連絡した第1及び第2末端を有する試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を定める、誘導マイクロチャネル(262)と、
(c)容器区画の入口手段(254)と転換可能な状態で流体連絡し、外部源から容器区画(252)中への流体の通過を可能にするオリフィス(18)と、
(d)容器区画(252)から試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を介して第1試料処理区画(14)中への流体の移動を可能にする推進デバイス(266,270,272)と、
を含んで成ることを特徴とする〔1〕に記載のμ−TAS(200)。
【0179】
〔5〕さらに、
(a)第1試料処理区画の出口ポート(232)と流体連絡した試料送達手段(302)であって、前記試料送達手段(302)が流体伝達手段(306)と流体連絡しかつ軸が一致している混合室(304)と出口ノズル(308)とから成る試料送達手段(302)と、
(b)流体伝達手段(306)と転換可能な状態で流体連絡した流体源(252)と、
(c)出口ノズル(308)に関して配置されてノズル手段からの溶離液を受ける試料受け手段(322,324,328)から成る後カラム回収デバイス(320)と、
とを含んで成ることを特徴とする〔2〕及び〔4〕に記載のμ−TAS(200)。
【0180】
〔6〕さらに、
(a)第2平坦表面(8)にレーザ切削した入口ポート(68)と出口ポート(70)とを有する第2マイクロチャネル(62)と、
(b)第2平坦表面(8)上に配置され、第2マイクロチャネル(62)との組合せで第2試料処理区画(62)を定める第2カバー板(66)と、
(c)第1試料処理区画(14)の出口ポート(22)と第2試料処理区画(62)の入口ポート(68)とを互いに連絡させ、それによって、単一の連続した試料処理区画を形成するコンジット手段(72)であって、前記のコンジット手段(72)が基板にレーザ切削されたアパチャーから成り、前記アパチャーが平坦表面に直交する軸を有することを特徴とするコンジット手段(72)と、
を含んで成ることを特徴とする〔2〕に記載のμ−TAS(200)。
【0181】
〔7〕さらに、それぞれ、第1(12)及び第2(66)カバー板にレーザ切削されかつコンジット手段(72)と共軸的に連絡して配置されたアパチャーから成る検出手段(78,80)を包含することを特徴とする〔6〕に記載のμ−TAS(200)。
【0182】
〔8〕さらに、
(a)第1平坦表面(6)にレーザ切削された容器のマイクロストラクチャー(252)であって、かつカバー板(12)が前記マイクロストラクチャーとの組合せで、入口手段(254)と出口手段(256)とを有する容器区画(252)を定める、容器マイクロストラクチャー(252)と、
(b)第1平坦表面(6)にレーザ切削された誘導マイクロチャネル(262)であって、かつカバー板(12)が前記誘導マイクロチャネル(262)との組合せで第1試料処理区画(14)及び容器区画の出口手段(256)とそれぞれ流体連絡した第1及び第2末端を有する試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を定める、誘導マイクロチャネル(262)と、
(c)容器区画の入口手段(254)と転換可能な状態で流体連絡したオリフィス(18)であって、外部源から容器区画(252)中への流体の通過を可能にするオリフィス(18)と、
(d)容器区画(252)から試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を介して第1試料処理区画(14)中への流体の移動を可能にする推進デバイス(266,270,272)と、
を含んで成ることを特徴とする〔6〕に記載のμ−TAS(200)。
【0183】
〔9〕さらに、
(a)第1試料処理区画の出口ポート(232)と流体連絡した試料送達手段(302)であって、前記試料送達手段(302)が流体伝達手段(306)と流体連絡しかつ軸が一致している混合室(304)と出口ノズル(308)とから成る、試料送達手段(302)と、
(b)流体伝達手段(306)と転換可能な状態で流体連絡した流体源(252)と、
(c)出口ノズル(308)に関して配置されてノズル手段からの溶離液を受ける試料受け手段(322,324,328)から成る後カラム回収デバイス(320)と、
を含んで成ることを特徴とする〔4〕及び〔6〕に記載のμ−TAS(200)。
【0184】
また、本発明は、〔10〕(a)シリコン又は二酸化ケイ素以外の材料から成る基板(4)から形成され、各々が実質的に平坦な内表面(110,112)をもつ第1の構成要素半分(106)及び第2の構成要素半分(108)を有する支持体(104)と、
(b)第1支持体半分(104)の内表面(110)にレーザ切削された第1マイクロチャネル(114)と、第2支持体半分(108)の内表面(112)にレーザ切削された第2マイクロチャネル(116)とであり、前記第1及び第2のマイクロチャネル(114,116)が相手方の鏡像を与えるよう配置された、第1及び第2マイクロチャネル(114,116)と、
(c)支持体半分(106,108)の内表面(110,112)を互いに対向突合せでアライメントすることによって形成される第1試料処理区画(14)であって、それによって、マイクロチャネル(114,116)が前記第1試料処理区画(14)を定めかつ前記第1試料処理区画(14)が試料取り扱い要素(214,216,218,220)と流体連絡した試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を定める試料操作領域(202,204,206,208,210,212,214,216,218,220)から成る、第1試料処理区画(14)と、
(d)第1試料処理区画(14)に連絡し、外部の流体源から該試料処理区画(14)を通して流体を通過させる少なくとも1つの入口ポート(120)と少なくとも1つの出口ポート(124)と、
を含んで成ることを特徴とするμ−TAS(200)、を要旨とし、〔11〕〜〔14〕の好適な実施態様を含む。
【0185】
〔11〕第1試料処理区画(14)が、互い違いになる試料流路要素(202,204,206,208,210,212)と試料取り扱い要素(214,216,218,220)とを定める試料操作領域(202,204,206,208,210,212,214,216,218,220)の連続配列から成ることを特徴とする〔10〕に記載のμ−TAS(200)。
【0186】
〔12〕さらに、
基板(4)にレーザ切削した検出手段(232,234,236,238.240)から成り、かつ前記の検出手段(232,234,236,238.240)が第1試料処理区画(14)と連絡して該試料処理区画(14)を通過する試料の検出を可能にする〔11〕に記載のμ−TAS(200)。
【0187】
〔13〕さらに、
(a)第1平坦表面(6)にレーザ切削された容器のマイクロストラクチャー(252)であって、かつカバー板(12)が前記マイクロストラクチャーとの組合せで入口手段(254)と出口手段(256)とを有する容器区画(252)を定める、容器マイクロストラクチャー(252)と、
(b)第1平坦表面(6)にレーザ切削された誘導マイクロチャネル(262)であって、かつカバー板(12)が前記誘導マイクロチャネル(262)との組合せで第1試料処理区画(14)及び容器区画の出口手段(256)とそれぞれ流体連絡した第1及び第2末端を有する試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を定める、誘導マイクロチャネル(262)と、
(c)容器区画の入口手段(254)と転換可能な状態で流体連絡し、外部源から容器区画(252)中への流体の通過を可能にするオリフィス(18)と、
(d)容器区画(252)から試料流路要素(202,204,206,208,210,212)を介して第1試料処理区画(14)中への流体の移動を可能にする推進デバイス(266,270,272)と、
を含んで成ることを特徴とする〔11〕に記載のμ−TAS(200)。
【0188】
〔14〕さらに、
(a)第1試料処理区画の出口ポート(232)と流体連絡した試料送達手段(302)であって、前記試料送達手段(302)が流体伝達手段(306)と流体連絡しかつ軸が一致している混合室(304)と出口ノズル(308)とから成る、試料送達手段(302)と、
(b)流体伝達手段(306)と転換可能な状態で流体連絡した流体源(252)と、
(c)出口ノズル(308)に関して配置されてノズル手段からの溶離液を受ける試料受け手段(322,324,328)から成る後カラム回収デバイス(320)と、
を含んで成ることを特徴とする〔11〕及び〔13〕に記載のμ−TAS(200)。
【0189】
【発明の効果】
シリコン及び従来の二酸化ケイ素を素地としたデバイス基板で経験される、固有の化学活性とpHの不安定性を避けるべく選択した材料から基板を構成したので、実質的に平坦な基板にレーザ切削された小型化カラムデバイスを提供することができる。
【0190】
液体試料中の成分の精密なオンカラム分析又は検出が可能となり、また従来技術に比して極めてコンパクトな形でデバイス中に設けられた検出手段を有する液相分析用カラムデバイスを実現することができる。
【0191】
さらに、単一の平坦表面に完全に包含される小型化全化学分析システム(μ−TAS)の実現により、技術者の操作と介入を軽減した複雑な試料の処理、分離、及び検出を実行できるものであり、従って、工業化学、生物学、生化学及び医学的諸処理等において成分のモニタリング及び/又は分析における重要な応用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により構成された小型化カラムデバイスの分解図である。
【図2】図1の小型化カラムデバイスの内表面の平面図である。
【図3】図1のデバイスの外表面の平面図である。
【図4】図1の小型化カラムデバイスの線IV−IVによる側面断面図であり、本発明による試料処理区画の形成を示す図である。
【図5】光学的検出手段を含む、本発明の好ましい実施例の分解図である。
【図6】図5の小型化カラムデバイスにおける試料処理区画と光学的検出手段との交差面の縦方向断面図である。
【図7】支持基板の2つの対向する平坦表面上に形成されたマイクロチャネルを有する小型化カラムデバイスの第1側面の分解図である。
【図8】図7のカラムデバイスの第2側面の分解図である。
【図9】単一のフレキシブル基板から作られた図7(A)の小型化カラムデバイスの好ましい実施例の第1側面の絵画表示である。
【図10】図9のカラムデバイスの第2側面の絵画表示である。
【図11】図8の小型化デバイスの拡張した光学的検出経路長の線IX−IXによる横方向断面図である。
【図12】第1及び第2の構成要素の半分部分を有する本発明により構成された小型化カラムデバイスの平面図である。
【図13】図12のカラムデバイスの概略図であり、単一デバイスを形成するための要素半分の折曲げアライメントを示す。
【図14】図12のデバイスにおける要素半分のアライメントにより形成された試料処理区画の縦方向断面図である。
【図15】第1及び第2の要素半分上に光学式マイクロアライメント手段を有する本発明のさらに別の好ましい実施例の平面図である。
【図16】図15のカラムデバイスの概略図であって、要素半分のマイクロアライメントを示す。
【図17】典型的μ−TASの線図である。
【図18】基板上に一体化マイクロストラクチャーとしてレーザ切削した容器区画を有するμ−TASの第1例の説明図である。
【図19】基板上に一体化マイクロストラクチャーとしてレーザ切削した容器区画を有するμ−TASの第2例の説明図である。
【図20】基板上に一体化マイクロストラクチャーとしてレーザ切削した容器区画を有するμ−TASの第3例の説明図である。
【図21】図17のμ−TASの断面図であって、圧力パルスで生成した試料液滴をレーザ切削した試料液滴を受ける微小井戸を有する後カラム回収デバイスへ連絡するためのレーザ切削したマイクロストラクチャーを示ず。
【図22】図17のμ−TASの断面図であって、発生する蒸気の気泡で生成した試料液滴をレーザ切削した試料液滴を受ける微小井戸とカバー板とを有する後カラム回収デバイスへ連絡するためのレーザ切削したマイクロストラクチャーを示す。
【図23】図17のμ−TASの断面図であって、メークアップ流体流において発生する蒸気の気泡で生成した試料液滴をレーザ切削した試料液滴を受ける吸湿性シートを有する後カラム回収デバイスへ連絡するためのレーザ切削したマイクロストラクチャーを示す。
【図24】試料液滴を受ける井戸を有する後カラム回収デバイスとインタフェース接続された図17のμ−TASの概略図である。
【図25】試料液滴を受ける井戸とカバー板とを有する後カラム回収デバイスとインタフェース接続された図17のμ−TASの絵画表示である。
【符号の説明】
200 小型化全分析システム
4 実質的に平坦な対向表面をもつ基板
6 第1平坦表面
8 第2平坦表面
10 第1マイクロチャネル
12 カバー板
14 第1試料処理区画
18 入口ポート
22 出口ポート
202,204,206,208,210,212,214,216,218,220 試料操作領域
214,216,218,220 試料取り扱い要素
202,204,206,208,210,212 試料流路要素
Claims (2)
- 小型化カラムデバイスから成る小型化全分析システムであって、
第1平坦表面及び第2平坦表面の実質的に平坦な対向表面をもつ基板であって、シリコン又は二酸化ケイ素以外のポリマー又はセラミック材料でレーザ切削可能な材料から構成され、液相である流体を通過させられるよう少なくとも前記第1平坦表面にレーザ切削されたマイクロチャネルを有し、且つ該マイクロチャネルが試料操作領域を含むよう構成される基板と、該基板と一面に広がるよう一体を成し、該基板の前記第1平坦表面上に向けて折り曲げられることにより前記基板に重なるよう配置されるカバー手段であって、少なくとも前記第1平坦表面に面する平坦平面を備え、該平坦表面に前記基板の前記マイクロチャネルと鏡像の位置関係にあるレーザ切削されたマイクロチャネルを備え、該マイクロチャネルが前記基板のマイクロチャネルと組合されることによって成る前記試料操作領域を含む試料処理区画を画定するカバー手段とを有し、
前記試料操作領域に対応して、異なる機能を有する複数の試料取り扱い要素、及び該複数の試料取り扱い要素を流体連絡するように設けられる試料流路要素が前記基板と前記カバー手段との境界面に沿って画定され、
前記試料処理区画に連絡し、外部の流体源から前記試料処理区画を通して流体を通過させる、少なくとも1つの入口ポートと少なくとも1つの出口ポートとを含んで成ることを特徴とする小型化全分析システム。 - 前記複数の試料取り扱い要素の一つは、疎水性又はイオン特性に基づく試料の補足手段、脱塩手段、バンド収束手段、電気泳動手段のいずれかとされることを特徴とする、請求項1に記載の小型化全分析システム。
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