JP4178654B2 - 電気泳動用チップとその製造方法、該電気泳動用チップを用いた電気泳動装置及び荷電性物質の分離方法 - Google Patents

電気泳動用チップとその製造方法、該電気泳動用チップを用いた電気泳動装置及び荷電性物質の分離方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はキャピラリー電気泳動に利用される電気泳動用チップとその製造方法、該電気泳動用チップを用いた電気泳動装置及び荷電性物質の分離方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
イオン、有機酸、アミノ酸、タンパク質、核酸、糖、ウイルス、細胞等の荷電性物質を分離する一般的な方法として電気泳動法が広く利用されている。特に核酸やタンパク質等の生体物質やその他の低分子物質といったごく微量物質を分離同定する手法としてキャピラリー電気泳動法がある。これは、内径が100ミクロン以下程度のガラス細管(キャピラリー)を用い、この中に電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を充填し、キャピラリーの一端に試料を導入した後その両端に高電圧を印加して試料をキャピラリー内で移動させ、その電荷や分子量の差などにより分離し、これをUV吸収や蛍光などにより検出するものである。
このキャピラリー電気泳動法は長所として、1)必要試料量がごく微量で済む、2)分離特性に優れる、3)高速分離が可能、4)様々の分離モードにより幅広い試料分析に対応可能、などが挙げられるが、従来、キャピラリーは内径が100ミクロン以下程度のファイバー状であるためその強度は非常に低く、キャピラリーの交換等の作業は極めて取り扱いにくいものであった。また、複数回キャリピラリを使用するためにはその度に洗浄する必要もあり、分析方法としてはユーザの簡便性の面でも問題があった。
【0003】
これに対し、キャピラリー電気泳動法の概念をさらに推し進めた一般に「マイクロチップケミストリー」と呼ばれる手法が提案されている(D.J.Harrison.ら:Analytical Chemistry,1992年,64巻,1926-1932頁)。これは、ガラス基板上に微細溝をつくり、それをもう一枚の基板と貼り合わせることによりキャピラリーを形成させて、この流路中でキャピラリー電気泳動を行うというというものである。このキャピラリーを内在したガラス基板を貼り合わせたものがマイクロチップと呼ばれている。構造としては、2枚のガラス基板を張り合わせて形成されたキャピラリー部の端部に、電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ、及び分析試料を供給するための液溜め部を有したものが一般的である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のマイクロチップケミストリーという手法では、キャピラリーがマイクロチップ内に形成されたことで、取り扱い性は従来のキャピラリー電気泳動法に比べ大きく改善されたが、簡便性の面では、分析作業における電圧印加の為の電極接合や装置への固定といった面倒な付随作業が伴い、十分なものではない。例えば、電極接合は、分析装置或いは高電圧電源からの電気端子の白金線を液溜まり部に挿入固定するという作業が必要で、高価な白金線を分析毎に洗浄して使うといった面倒さがあり、この洗浄作業が不十分であると分析対象物質以外のコンタミの心配があった。また、ガラス基板の孔加工の難しさから、従来のチップは、キャピラリー形成のための2枚のガラス基板のうちの一方の基板部材に溝を、他方の基板部材に液溜まり用孔を設けていた。このため、それぞれの部材が構造体としての必要強度から、厚さが1mm程で剛性が高いことが必要であり、貼り合わせ時に密着不足が生じ易くエアの巻き込み等の問題があり、品質の再現性が低かった。
【0005】
本発明はかかる状況に鑑みなされたもので、荷電性物質の分離に適し、取り扱い性と簡便性とを合わせ持ち、しかも再現性と生産性の良いキャピラリーを内在する電気泳動用チップとその製造方法、その電気泳動用チップを用いた電気泳動装置及び荷電性物質の分離方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、注入孔と排出孔、それらを連結する溝、及び電極を有する板状部材とシール部材とを接合した電気泳動用チップを作製することにより上記の目的を達成し得ることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、
(1)板状部材(A)とシール部材(B)とからなり、板状部材(A)が、板厚方向に貫通した1個以上の注入孔(C)と、板厚方向に貫通又は非貫通の1個以上の排出孔(D)と、一方の面に形成される注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する1本以上の溝(E)と、注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面の注入孔(C)及び排出孔(D)の周辺部に形成された電極(F)、とを有し、シール部材(B)が板状部材(A)の溝形成面に接合されていることを特徴とする電気泳動用チップ、
(2)注入孔(C)と排出孔(D)をそれぞれ2個以上有し、溝(E)を2本以上有し、かつ溝(E)のうちの少なくとも2本が交差していることを特徴とする上記(1)記載の電気泳動用チップ、
(3)板状部材(A)がさらに電気回路(G)を有することを特徴とする上記(1)又は上記(2)記載の電気泳動用チップ、
(4)板状部材(A)及び/又はシール部材(B)がアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂製であることを特徴とする上記(1)〜(3)記載のいずれかの電気泳動用チップ、
(5)シール部材(B)がフィルム状であることを特徴とする上記(1)〜(4)記載のいずれかの電気泳動用チップ、
(6)板状部材(A)が電気泳動用装置に位置決めされるための突起、凹み及び穴のうちのいずれかひとつ以上を有することを特徴とする上記(1)〜(5)記載のいずれかの電気泳動用チップ、
(7)板厚方向に貫通する1個以上の注入孔(C)と、板厚方向に貫通又は非貫通の1個以上の排出孔(D)と、片面上に注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する1本以上の溝(E)とを形成したした後に、電極(F)を注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面の注入孔(C)及び排出孔(D)の周辺部に形成した板状部材(A)を、溝(E)形成面を内側にしてシール部材(B)と接合して製造することを特徴とする電気泳動用チップの製造方法、
(8)電極(F)を印刷、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングのいずれかにより形成することを特徴とする上記(7)記載の電気泳動用チップの製造方法、
(9)板厚方向に貫通する1個以上の注入孔(C)と、板厚方向に貫通又は非貫通の1個以上の排出孔(D)と、片面上に注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する1本以上の溝(E)とを形成したした後に、電極(F)及び電気回路(G)を注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面の注入孔(C)及び排出孔(D)の周辺部に形成した板状部材(A)を、溝(E)形成面を内側にしてシール部材(B)と接合して製造することを特徴とする電気泳動用チップの製造方法、
(10)電極(F)及び電気回路(G)を印刷、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングのいずれかにより形成することを特徴とする上記(9)記載の電気泳動用チップの製造方法、
(11)板状部材(A)とシール部材(B)との接合が熱融着によりなされることを特徴とする上記(7)〜(10)記載のいずれかの電気泳動用チップの製造方法、
(12)上記(1)〜(6)記載のいずれかの電気泳動用チップ若しくは請求上記(7)〜(11)記載のいずれかの製造方法により得られる電気泳動用チップを用いる電気泳動用装置、
(13)上記(1)〜(6)記載のいずれかの電気泳動用チップ若しくは請求上記(7)〜(11)記載のいずれかの製造方法により得られる電気泳動用チップを用いることを特徴とする荷電性物質の分離方法。
(14)上記(12)記載の電気泳動用装置を用いることを特徴とする荷電性物質の分離方法、
(15)荷電性物質が荷電性分子又は荷電性粒子である上記(13)又は上記(14)記載の荷電性物質の分離方法、
(16)荷電性分子がイオン、有機酸、アミノ酸、タンパク質、核酸及び糖のいずれかで、荷電性粒子がウイルス又は細胞である上記(15)記載の荷電性物質の分離方法、
(17)分離用媒体として高分子ゲルを用いることを特徴とする上記(13)〜上記(16)記載のいずれかの荷電性物質の分離方法、
(18)高分子ゲルが非交差型高分子ゲルであることを特徴とする上記(17)記載の荷電性物質の分離方法、
(19)非交差型高分子ゲルが直鎖状ポリアクリルアミド、直鎖状ハイドロキシエチルセルロース、直鎖状ハイドロキシプロピルメチルセルロース、直鎖状ハイドロキシプロピルセルロース、直鎖状メチルセルロース、直鎖状ポリエチレングリコール及び直鎖状ポリエチレンオキサイドのいずれかである上記(18)記載の荷電性物質の分離方法、
である。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明において用いられる板状部材(A)は、板厚方向に貫通した注入孔(C)、貫通又は非貫通の排出孔(D)、注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する溝(E)、及び電極(F)を有する部材である。
【0009】
板状部材(A)に用いられる材料は、UV吸収や蛍光などにより検出することを考慮し透明又は半透明の材料であることが必要であるが、特に限定されるものではない。再現性向上の観点からは、注型可能なガラス、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂等の型で成形可能なものが好ましい。絶縁性や成形の自由度から樹脂材料であることがより好ましい。また、樹脂材料は、弾力性があるために接触面積が面圧により確保でき、ガラス基材のものより有利な電気条件となり好ましい。特に熱可塑性樹脂材料は生産性の面からも有効であり、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレンコポリマ等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレートなどが好ましい。中でも、透明性及び蛍光特性の面で、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂がより好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンがさらに好ましい。また、本発明の電気泳動用チップは生産性が高く化学的検体を扱うために、使い捨て製品として使用されることも考えられ、このような観点からは生分解性プラスチックであることが好ましい。生分解性プラスチックとしては、例えば、マタービー(ノバモント社(伊)製商品名)等の澱粉を利用したポリマ、セルグリーンP−CA(ダイセル化学工業株式会社製商品名)、ルナーレZT(日本触媒化学工業株式会社製商品名)等のセルロースエステル系ポリマ、ビオノーレ(昭和高分子社製商品名)等の脂肪族ポリエステル系ポリマ、エコプレ(カーギル社(米)製商品名)等のポリ乳酸系ポリマ、ポリヒドロキシブチレート/バリレート等の微生物ポリエステルなどが挙げられる。
【0010】
板状部材(A)のサイズは、片手で取り扱い易いように10mm角〜150mm角程度の大きさが好ましく、20mm角〜100mm角がより好ましく、電気泳動装置小型化の観点からは30mm角〜50mm角がさらに好ましい。また、板状部材(A)の板厚は、成形性、取り扱い性の観点から0.2mm〜5mm程度が好ましく、1mm〜2mmがより好ましい。
板状部材(A)の成形方法は特に限定するものではないが、例えば、金型を用いて射出成形、注入成形、プレス成形等で成形する方法や、機械加工で成形する方法などが挙げられるが、金型を用いる方法が寸法、形状共に再現性が高いものが得られるために好ましい。
【0011】
板状部材(A)に形成される注入孔(C)は、電気泳動用緩衝液、分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を含む泳動液や分析対象物質を含む試料液等の供給のための液溜め部であり、板厚方向に貫通した形で1個以上の孔が形成されることが必要である。注入孔(C)のサイズは、泳動液や試料液が注入できる大きさであれば特に制限はないが、注入作業の観点から内径が1〜10mmの範囲に設定されることが好ましく、2〜5mmがより好ましい。
【0012】
板状部材(A)に形成される排出孔(D)は、電気泳動用緩衝液、分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を含む泳動液や分析対象物質を含む試料液等の排出のための液溜め部であり、板厚方向に貫通又は非貫通の形で1個以上の孔が形成されることが必要である。排出孔(D)のサイズは、注入孔(C)に注入された泳動液や試料液が十分排出できる大きさであれば特に制限はないが、作業上の観点から内径が1〜10mmの範囲に設定されることが好ましく、2〜5mmがより好ましい。
【0013】
板状部材(A)に形成される溝(E)は、分析対象試料や電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体を含む泳動液を導入したり、分離したりするための流路(導入流路または分離流路)となるためのもので、注入孔(C)と排出孔(D)とを連結するよう形成されることが必要である。試料を分離するための分離流路は必ず必要であるが、この分離流路は導入流路を兼ねることができるので、溝(E)は板状部材(A)に少なくとも1本は形成されることが必要である。
分離流路と導入流路とは兼用が可能であるが、分析精度の観点からは、分離流路と導入流路とを互いに接する別々の溝とすることが好ましい。分析精度の向上には、分析対象試料液の容量を制御する手法が有効であるが、試料の導入流路と分離流路とが同一の溝で構成される場合は分離流路中に導入される試料液の容量の制御が難しい。分離流路と導入流路とを互いに接する別々の溝とした場合には、導入された試料液の一部を分離流路に導入することが可能であるため、試料液量の制御が容易で分析精度が向上する。試料液量の制御の観点からは、分離流路と導入流路とは互いに交差していることがより好ましく、交差角は特に限定はないが、交差部の試料液が分離流路に導入されることを鑑みると、交差空間は菱形形状よりも直方形状の方が泳動像がよりシャープになり好ましいので、交差角は直角に近いほうが好ましい。
また、分離流路と導入流路を別に設けることも、分離流路と導入流路をそれぞれ複数設けることも可能であるので、溝(E)は2本以上の複数形成されていてもよい。分離流路を複数設けることで、複数の分析対象物質を同時に分離分析することが可能となる。分離流路となる複数の溝(E)は、それぞれ並列に形成され、ほぼ平行に並んでいることが、分析感度の観点から好ましい。
複数の分析対象物質を同時に分離分析する場合、分析対象物質を含む試料液の供給や排出のための液溜め部である注入孔(C)と排出孔(D)は、分析対象物質ごとに別々に用意されることが好ましいので、分離流路が試料の導入流路を兼ねている2本以上の溝(E)には、それぞれ両端に独立した別個の注入孔(C)と排出孔(D)とが連結していることが好ましい。試料の導入流路が分離流路とは別に用意されいる場合は、導入流路となる2本以上の溝(E)には、それぞれの両端に独立した別個の注入孔(C)と排出孔(D)とが連結していることが好ましいが、分離流路となる2本以上の溝(E)にはそれぞれ独立した別個の注入孔(C)と排出孔(D)を用意しなくてもよい。すなわち、1個の注入孔(C)と1個の排出孔(D)とを連結する溝(E)が2本以上あって、別個の溝(E)が同じ注入孔(C)と排出孔(D)を共有する場合があってもかまわない。この場合、2本以上の溝(E)に連結した注入孔(C)と排出孔(D)は、泳動液の導入又は排出のための液溜り部として使用することができるが、分析対象物質を含む試料液の導入用の液溜り部として使用することは好ましくない。
溝(E)の形状は、分析の精度、形態により任意に設計でき、例えば、直線状でも、ループ状でも、くの字型でも、複雑に折れ曲がった形状でもかまわない。複数の溝を形成させる場合には、溝同士を平行に並列しても、交差させても、並列と交差が混在していてもよく、いかなる設計も可能であるが、取り扱い性と分析精度の観点からは、分析試料の分離流路と導入路とを別々の溝として、それらを直交するよう設計することが好ましい。
溝(E)のサイズは分析対象の物質が分離できれば特に限定はなく任意に設計できるが、取り扱い性、成形性、電気泳動装置の小型化の観点から、幅は10〜2000μmが好ましく、20〜1000μmがより好ましく、30μm〜500μmがさらに好ましい。深さは5〜1000μmが好ましく、5〜500μmがより好ましく、10μm〜100μmがさらに好ましい。長さは5mm〜150mm程度が好ましく、より好ましくは10mm〜100mm、さらに好ましくは、15〜50mmである。
【0014】
注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)の形成方法は特に限定するものではないが、例えば、金型を用い、射出成形や注入成形、プレス成形といった生産性の高い工法を適用することで寸法、形状共に再現性が高いものが得られるが機械加工で形成することもできる。注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)の形成は、それぞれべつべつにどの順序で行ってもかまわないが、1回の成形で全てを同時に行う手法が工程が少なくなり簡便である。
【0015】
板状部材(A)に形成される電極(F)は、電圧印加して電位差により分析対象試料を溝(E)によって形成された流路(キャピラリー)を移動させることにより、試料を分離するために使用するもので、試料や泳動液の導入流路及び分離流路の両端の液溜め部すなわち注入孔(C)及び排出孔(D)の開口部周辺に形成されることが必要である。そこで、本発明においては、電極(F)は注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面の注入孔(C)及び排出孔(D)の周辺部に形成される。この場所に形成されることにより、シール部材(B)を接合した電気泳動用チップにおいて、電極(F)はチップの内部に位置し、液による腐食が起き難くなる。電極(F)への導電を外部からの配線等により行う場合には、分析対象物質を含む試料液に配線等を接触させないようにするために、電極(F)は、注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁だけでなく、少なくとも溝(E)形成面上に形成されることが好ましい。
【0016】
電極(F)への電圧印加には、パワーサプライ等の高電圧供給源から白金等の配線を用いて行うことが可能であるが、操作の簡便性の観点から、板状部材(A)にさらに電気回路(G)を形成することが好ましい。電気回路(G)は、電極(F)に密接するように形成されることが必要である。本発明においては、電極(F)は注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面上に形成されるので、電気回路(G)も、注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び/又は溝(E)形成面上に形成される。分析対象物質を含む試料液に導電用の配線等を接触させないようにするために、電気回路(G)は少なくとも溝(E)形成面上に形成されることが好ましい。電気回路(G)は、板状部材(A)の外周部まで延ばすと、外部からの導電が容易になり好ましいが、この場合、板状部材(A)とシール部材(B)とをすきまなく接合することが難しくなるので完全にシールできるよう注意を要する。シールが不完全であると液漏れの不具合を招き好ましくないので、接合力が弱い接合方法を採択する場合は、電気回路(G)は板状部材(A)の外周部まで延ばさないように形成されることが好ましい。
【0017】
電極(F)及び電気回路(G)の形成方法としては、特に限定はなく、メッキ工法、印刷工法、蒸着工法等従来からある種々の工法が適用できるが、メッキ工法は板状部材(A)が透明樹脂の場合は薬液に対する保護等の面で取り扱いが難しく、生産性の観点から印刷工法又は蒸着工法が好ましい。中でも真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の蒸着工法が好ましい。電極(F)及び電気回路(G)は、両者が一体化した形の一体化物として形成してもよい。
電極(F)及び電気回路(G)の材質は、導電性のある材料であれば特に限定はなく、例えば、金、銀、銅、白金、アルミニウム、カーボン等が挙げられる。中でも、電極(F)の材質は、電極表面部での液による腐食等で接触電気抵抗が変化すると泳動条件に悪影響を及ぼす可能性があるため、金、銀、白金、カーボン等の耐食性の良い材料が好ましい。電気回路(G)の材質は、価格や使い易さの観点から銀、白金、銅、アルミニウムが好ましく、銀、白金がより好ましい。板状部材(A)及び/又はシール部材(B)が樹脂製の場合には、この樹脂と密着性のよい樹脂系のバインダーを用いた銀ペースト等が好ましい。
電極(F)及び電気回路(G)の厚みは、通電に支障がなければ特に限定されるものではないが、印刷工法の導電膜の場合、1〜100μmが好ましく、5μm〜50μmがより好ましい。スパッタリングまたはイオンプレーティングの金属膜の場合、0.005μm〜20μmが好ましく、0.01μm〜5μmがより好ましい。電極(F)及び電気回路(G)の幅は、0.1mm〜20mmが好ましく、0.5mm〜10mmがより好ましく、1〜5mmがさらに好ましい。
【0018】
板状部材(A)に電極(F)が形成されることで、従来の煩わしい電極接続作業をすることなく、簡単に電気泳動チップ上の電極と配線とを接触させることができる。また、電気回路(G)が形成されることで配線もさらに簡便化され、試料液に配線が直接触れない構造にすれば分析毎の洗浄も不要となる。
【0019】
本発明において用いられるシール部材(B)は、キャピラリーを形成するために、板状部材(A)の溝(E)が形成されている面に接合させることが必要である。
【0020】
シール部材(B)の材料は、UV吸収や蛍光などにより検出することを考慮し透明又は半透明の材料で、シールしやすいようフィルム状に成形できる樹脂材料が好ましい。特に熱可塑性樹脂材料は生産性の面からも有効であり、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート等のアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレンコポリマ等のスチレン系樹脂、ポリカーボネート、ナイロン6、ナイロン66、ポリエチレンテレフタレートなどが好ましい。中でも、透明性及び蛍光特性の面で、アクリル系樹脂とスチレン系樹脂がより好ましく、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンがさらに好ましい。また、使い捨て製品として使用される場合は、生分解性プラスチックが好ましい。生分解性プラスチックとしては、例えば、マタービー(ノバモント社(伊)製商品名)等の澱粉を利用したポリマ、セルグリーンP−CA(ダイセル化学工業株式会社製商品名)、ルナーレZT(日本触媒化学工業株式会社製商品名)等のセルロースエステル系ポリマ、ビオノーレ(昭和高分子社製商品名)等の脂肪族ポリエステル系ポリマ、エコプレ(カーギル社(米)製商品名)等のポリ乳酸系ポリマ、ポリヒドロキシブチレート/バリレート等の微生物ポリエステルなどが挙げられる。
【0021】
シール部材(B)と板状部材(A)とを接合させる方法としては、両者が密着して溝(E)の開口部がシール部材によって封鎖されてキャピラリーが形成され、注入孔(C)と排出孔(D)の開口部の少なくとも一方がシール部材によって封鎖されて液溜め部が形成され、液漏れが起こらない方法であれば特に限定はないが、例えば、機械的に対向する面を圧接させるように接合させる方法、接着剤を用いる方法、熱融着による方法等が挙げられる。シール部材(B)が弾力性を持つ場合は、別の部材を介してシール部材(B)を板状部材(A)に押し付け固定するか、または、シール部材を変移(圧縮)させた状態で固定する等の方法により、溝(E)、電極(F)及び電気回路(G)の周りでの密着したシールが容易にでき、キャピラリー形成ができる。接着剤を用いてシール部材(B)と板状部材(A)とを接合させる場合は、溝(E)のサイズによっては接着剤が流れ込み管路が消失或いは大きく変化する心配があり、微細な溝には適用が難しい。
本発明の板状部材(A)は、液溜まり用の注入孔(C)及び排出孔(D)と溝(E)とを有するので、従来の溝を有する部材と液溜まり孔を有する部材とを貼り合わせたマイクロチップと比較して溝と孔の位置を合わせるなどの手間が省け、シール部材(B)を板状部材(A)に接合する際の位置決めが容易で、自由度の高い設計、選択ができる。また、再現性が高く、分析精度が向上する利点を有する。
【0022】
シール部材(B)の形状は、シールできる形状であれば特に限定はなく、板状、フィルム状等が挙げられるが、成形性の観点からは、フィルム状が好ましい。特に、シール部材(B)と板状部材(A)とを熱融着により接合させる場合は、フィルム状のシール部材を用いることが好ましい。フィルムは薄くすることで低い熱量で熱融着でき、しかも低熱量であるために溝(E)を変形させることも少ない。また、蛍光やUV吸光による検出時のノイズ低減の観点からもフィルム状であることが好ましい。溝(E)が微細な溝の場合にもフィルム状のシール部材が好適である。
シール部材(B)のサイズは、接合する板状部材(A)と同程度の大きさが好ましい。シール部材(B)の厚みは、成形性、密着性の観点から、フィルム状の場合は1〜250μm程度が好ましく、5〜100μmがより好ましく、10μm〜80μmがさらに好ましい。板状の場合は、0.05mm〜10mm程度の厚さが好ましく、0.2mm〜5mmがより好ましく、0.5mm〜2mmがさらに好ましい。
【0023】
シール部材(B)の成形方法は、シールしやすい形に成形されれば特に限定はないが、例えば、金型を用いて射出成形、注入成形、プレス成形等で成形する方法や、機械加工で成形する方法、インフレーション成形、カレンダー成形、ダイ押出成形等のフィルム状に成形される方法などが挙げられ、中でもフィルム状に成形される方法が好ましい。板状に成形する場合には、金型を用いる方法が寸法、形状共に再現性が高いものが得られるために好ましい。
また、フィルム状に成形された市販の材料をシール部材(B)として用いることもできる。
板状部材(A)に電気回路(G)を有しない場合、及び電気回路(G)が板状部材(A)の外周部まで達していない場合には、シール部材によって電極(F)及び電気回路(G)が完全にシールされてしまうので、電極(F)又は電気回路(G)に導電が行えるような手段、例えば、貫通孔等を設けておくことが好ましい。
【0024】
本発明の電気泳動用チップは、板状部材(A)とシール部材(B)とを、板状部材(A)の溝(E)形成面を内側にして接合し、溝(E)の開口部がシール部材によって封鎖されてキャピラリーが形成されればよく、いかなる方法においても製造することができるが、例えば次のような方法が挙げられる。注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)を形成した板状部材(A)と、シール部材(B)とを接合する方法、注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)及び電気回路(G)を形成した板状部材(A)と、シール部材(B)とを接合する方法、注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)を形成した板状部材(A)と、貫通孔を形成したシール部材(B)とを接合する方法、注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)及び電気回路(G)を形成した板状部材(A)と、貫通孔を形成したシール部材(B)とを接合する方法、注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)を形成した板状部材(A)と、シール部材(B)とを接合した後に、シール部材(B)に電極(F)に達するような貫通孔を開ける方法、注入孔(C)、排出孔(D)及び溝(E)を形成した後に電極(F)及び電気回路(G)を形成した板状部材(A)と、シール部材(B)とを接合した後に、シール部材(B)に電気回路(G)に達するような貫通孔を開ける方法、等が挙げられる。
本発明の電気泳動用チップは、電気泳動用緩衝液や分子ふるい用ポリマ等の分離用媒体があらかじめ充填されていてもよい。
【0025】
本発明の電気泳動用チップを用いて分析を行う電気泳動用装置は、分析対象物質を含む試料の導入流路または分離流路の両端に電位差を与えて分析対象物質を電気泳動させるために電極(F)又は電気回路(G)に電圧を印加するための手段、分析対象物質に光を照射するための手段、分析対象物質からの検出光を測定するための手段、電気泳動用チップを位置決めする手段とを備えるものである。
【0026】
電圧を印加するための手段は、パワーサプライ等の電圧を発生させるための
電源と配線を備えるもので、電源は装置と一体化したものでなくてもよいが、装置を小型化する観点からは装置の中に一体に組み込まれたものが好ましい。
【0027】
分析対象物質に光を照射するための手段は、少なくとも光を発生するための光源を備えるもので、光源から発せられる光を効率的に照射するためには集光手段も備えていることが好ましい。光源としては特に制限はないが、例えば、水銀ランプ、QIランプ(石英ーヨウ素ランプ)、フォトダイオード、発光ダイオード(LED)、EL(electroluminescence)等が挙げられる。また、レーザ光源も用いることができる。集光手段も特に制限はないが、例えば、ダイクロイックミラー、光フィルタ、対物レンズ、プリズムレンズ等のレンズ、マイクロレンズ、光ファイバーなどが挙げられ、これらを1種あるいは2種以上組み合わせて用いることができる。集光手段としてレンズを用いる場合、球面レンズと非球面レンズのどちらを用いてもかまわないが、焦点の合わせやすさの観点から集光面積が小さい場合には非球面レンズが好ましく、これらレンズは集光面積に応じて1枚又は2枚以上複数重ねて用いることができる。励起光を照射する場合には、ダイクロイックミラーや光フィルタを用いることが好ましい。レーザ光源を用いる場合には、複数のプリズムレンズを備えてドット状のレーザ光源を拡大して全走査線を含有するようにすることが好ましい。
【0028】
分析対象物質からの検出光を測定するための手段は、少なくとも光検出器を備えるもので、測定感度の観点からは集光手段を備えていることが好ましい。
励起光が照射される場合には検出する光は蛍光となる。光検出器は特に限定はないが、例えば、蛍光検出器、光電子倍増管(フォトマル)、CCD、フォトダイオード等が挙げられる。集光手段も特に制限はないが、例えば、ダイクロイックミラー、光フィルタ、球面又は非球面のレンズ、マイクロレンズ等が挙げられる。
【0029】
電気泳動用チップを位置決めする手段としては特に制限はないが、例えば、電気泳動用チップの形状に合うように設計された突起、凹み、穴、ピン等の位置決め用の型や、コイル、バネ状物質等を挙げることができる。これらは1種類1個でも複数でも、複数種類の手段を併設してもよく、必要に応じて用いることができる。
【0030】
本発明の電気泳動用装置は、電気泳動用チップを移動させての分析も可能なように電気泳動用チップの移動手段を備えていてもよい。また、光照射部や検出部の位置を変更可能なように光を照射するための手段及び/又は検出光を測定するための手段に移動手段を備えていてもよい。測定した検出光を分析するための解析器を装置の内部に一体化して、または外部に接続して備えていてもよい。
【0031】
本発明の電気泳動用チップは、電気泳動装置に簡便にセット位置決めされることが好ましい。電気泳動用チップは、前記の電気泳動用装置の位置決め手段に板状部材(A)の端面を接触することにより通常位置決めされる。電気泳動用チップを測定時に動かないよう固定するためには、電気泳動装置側だけでなく、電気泳動用チップ側にも位置決めの手段を有していることが好ましい。この場合、電気泳動用装置の位置決め手段と電気泳動用チップの位置決め手段の形状との一致していることが有効である。電気泳動用チップの位置決め手段としては特に限定はないが、板状部材(A)に位置決めのための突起、凹み及び穴のうちいずれか1つ以上を有していることが好ましい。この突起、凹み及び穴のサイズは任意に設計できるが、単一の形状であれば内径1〜5mm程度のもの、ライン状の形状であれば幅1〜3mm程度のものが好ましい。
【0032】
本発明の電気泳動用チップは、イオン、有機酸、アミノ酸等の低分子や、タンパク質、核酸、糖等の高分子からなる荷電性分子、ウイルス、細胞等の荷電性粒子、などの荷電性物質を分離して、対象物質を分析するのに有効な手段として用いることができる。また、本発明の電気泳動用チップは、荷電性ラテックスビーズを利用して間接的に分析対象物質を分析する方法にも利用可能である。
具体的には、本発明の電気泳動用チップの溝(E)の中に分離用緩衝液、分離用高分子ゲル、分離用等電性フォーカッシング緩衝液等の分離用媒体を充填させて、分析対象物質を含む試料を注入し、溝(E)の両端に電圧を印加することによって、分離用媒体中で分析対象物質を電位差で移動させて分離することができる。
【0033】
分離用媒体を電気泳動用チップの溝(E)に充填するためには、注入孔(C)と排出孔(D)の液溜まり部に分離用媒体を介して溝(E)に注入すればよい。注入方法としては特に制限はないが、例えば、毛細管現象を利用する方法、注射筒等を用いる加圧注入法、一方の液溜まり部に滴下した媒体をもう一方の液溜まり部から水流ポンプ、真空ポンプ等を用いて減圧することによって注入する減圧注入法などが挙げられる。この際、気泡やホコリ等のその他の夾雑物が溝(E)に入らないようにすることが重要である。
【0034】
荷電性物質等の分離対象物質は、分離流路用の溝(E)に一定量導入されることが必要である。分離対象物質を溝(E)に導入する方法としては、例えば、動電学的導入法(electrokinetic injection)や動水力学的導入法(hydrodynamic injection)等が挙げられる。動電学的導入法は、試料の導入流路と分離流路とを別にして、試料導入用液溜まり部に荷電性物質を含む試料溶液を少量滴下し、この液溜まり部と導入流路を挟んで逆端に位置する液溜まり部とに適当な電界をかけることによって、試料を導入流路と直交する分離流路の溝交差部に移動させて、試料を導入する方法である。この方法は、シャープな検出像が得られるので好ましい。
本電気泳動用チップを用いて電気泳動分離した荷電性物質は、その光学的特性や電気化学的特性等を利用して検出することができる。例えば、核酸分子の有するUV吸収特性を利用して吸光度を測定したり、核酸分子に蛍光色素を標識して蛍光を測定することにより検出することが可能で、DNAやRNAのような核酸断片を分離してその断片の大きさを分析することができる。
【0035】
【実施例】
次に、実施例により本発明を説明するが、本発明の範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
【0036】
実施例1 電気泳動用チップの作製1
50トン射出成形機で、成形温度240℃、射出圧力400kg/cm2の成形条件で透明樹脂材料であるPMMA(ポリメチルメタクリレート)樹脂(三菱レーヨン株式会社製アクリペットVH)を成形し、内径3mmの2個の注入孔4(4a、4b)、内径3mmの2個の貫通した排出孔5(5a、5b)と、片側表面に100μm幅、40μm深の2本の溝3(3a、3b)を有する、外形寸法20mm×75mm×1mm厚の図1に示す板状部材1を得た。溝3の長さは、長い方の3aが45mm、短い方の3bが6mmで、3aと3bの交差部から4a、4cの外周部までの長さはそれぞれ3mmである。外形成形及び溝3、注入孔4及び排出孔5の形成は、一度の射出成形で同時に行った。次に、板状部材1の溝3形成面上と注入孔4及び排出孔5の内壁に白金のスパッタリングによって電極と電気回路が一体となった一体化物6(0.02μm厚)を形成させた。次に、接合する板状部材の電極及び電気回路の一体化物6に相当する個所に導電用の内径3mmの貫通孔7を開けたPMMA製の50μmフィルム2(三菱レーヨン株式会社製アクリプレン)をシール部材(B)として用いて、プレス圧1kg/cm2、104℃の条件で、溝3がある平面側に熱融着させることによって接合させて、電気泳動用チップを得た。得られた電気泳動用チップの断面図を図2に、フィルム側を上方にした時の上方図を図3にそれぞれ示す。
【0037】
実施例2 電気泳動用チップの作製2
実施例1と同様にして図4に示す板状部材8を得た。板状部材8には電気泳動装置に位置決めするための貫通孔9が設けてある。貫通孔9の形成も射出成形により、外形成形と溝3、注入孔4及び排出孔5の形成と同時に行った。次に、実施例1と同様の方法、同様の素材で、電極及び電気回路の一体化物の形成を行い、その後、シール部材(B)として位置決め孔9用の逃げ形状となる貫通孔を設けたフィルムを用いた以外は実施例と同様にしてシール部材(B)の接合を行い、電気泳動用チップを得た。
【0038】
実施例3 ΦX174HaeIII分解断片の分離
0.5g/Lハイドロキシプロピルメチルセルロース(Aldrich社製、平均分子量90,000)、5mg/Lエチジウムブロマイド、44.75mM TRIS(2−アミノー2−ヒドロキシメチルー1,3−プロパンジオール)、44.75mMホウ酸(pH8.2)を含む分離用ゲル緩衝液を用いてΦX174(DNA)のHaeIII分解断片を分離した。ΦX174のHaeIII分解断片は、DNA鎖長で72bpから1353bpの11個の断片から構成されている。分離は実施例1で作製した電気泳動用チップを用いて行った。2本の溝3のうち、3aを分離流路、3bを試料導入流路として使用した。まず、上記分離用ゲル緩衝液を、泳動液導入用液溜まり4dに10μl、4cと4bに各10μl滴下し、毛細管現象を利用して分離流路3a及び試料導入流路3bに緩衝液を充填した。次に、ΦX174のHaeIII分解断片を分離用ゲル緩衝液に溶解(40μg/ml)し、3μLを試料導入用液溜まり4aに滴下し、試料導入用溝3bの両端に1000V/cmの電圧を印加して、試料を溝交差部まで移動させ分離用溝3aに導入し、続けて分離用溝3aの両端に200V/cmの電圧を印加して電気泳動を実施し、DNA断片を分離した。分離したDNA断片の検出は水銀ランプ、ダイクロイックミラー、対物レンズを有する蛍光顕微鏡(オリンパス光学工業株式会社製)と光電子倍増管(Photon Technology International社製)を組み合わせた検出系で検出した。水銀ランプからダイクロイックミラー、対物レンズを通して545nmの励起光を分離用溝3aの溝交差部から3cm離れた位置に照射し、DNAにインターカレートしたエチジウムブロマイドの蛍光を蛍光フィルタを通して光電子倍増管に送り検出した検出結果を図5に示す。
【0039】
実施例4 細胞抽出総RNAの分離
ヒト肺ガン細胞CRL5800株培養細胞から全自動RNA抽出機(MFX−2000、東洋紡績株式会社製商品名)を用いて総RNAを抽出した。抽出RNAをジエチルピロカーボネート(RNase阻害剤)処理して、0.4g/Lハイドロキシプロピルメチルセルロース(Aldrich社製、平均分子量90,000)、5mg/Lエチジウムブロマイド、44.75mM TRIS、44.75mMホウ酸(pH8.2)を含む分離用ゲル緩衝液に25μg/ml濃度となるよう溶解した試料液とし、分離用溝3aの両端に印加する電圧を200V/cmとし、蛍光照射位置(検出位置)を溝交差部から1cmとした以外は実施例3と同様にして電気泳動による分離を行い、検出した。検出結果を図6に示す。
【0040】
この実施例1及び実施例2で作製された電気泳動用チップは、キャピラリーが内蔵された板状形態であるので、取り扱いが簡便で、容易に電気泳動装置にセットすることが可能である。また、電極及び電気回路を備えているので、電気泳動装置に用意された電極とコンタクトプローブ等で接触させるなどして、高電圧供給源と接続するだけで容易に電気泳動に供することができ、従来の接続配線等の洗浄作業が不要となり、配線等が直接試料に触れない構造なので、ここからのコンタミの心配もなくなった。さらに、電極回路が内部に位置し露出していないために、液による腐食が起きにくい構造になっている。
また、実施例1で作製した電気泳動用チップを使用して、実施例3、実施例4で示したように、DNA、RNAといった核酸の分離分析を簡便に行うことができた。RNAの分析に際しては、RNase(RNA分解酵素)による分解に特に注意が必要であるが、本発明の電気泳動用チップは上述したようにコンタミを受けにくい構造のため、分析の過程でのRNaseコンタミによる分解が起こりにくくなっている。
実施例3では、図5に示したように、ΦX174HaeIII分解断片DNAの全ての断片の分離が確認できた。271bpと281bpのHaeIII分解断片DNAが分離できているので、10bp以上の分離解像度(検出感度)が得られた。
実施例4では、図6に示したように、5s、18s及び28sのリボゾームRNAの分離が確認できた。これらの分離は、1cmの泳動距離で十分可能でであった。
【0041】
【発明の効果】
実施例に示したように、本発明によって取り扱い易く、しかも再現性と生産性の良い電気泳動用チップの製造が可能となり、またこの電気泳動用チップを用いることによってDNA、RNA等の核酸などの荷電性物質を簡便に分離分析することができるので、その工業的価値は大である。
最近、メッセンジャーRNAを用いた遺伝子解析が多く実施されているが、
メッセンジャーRNAは極微量しか存在しないために、生体試料等から抽出したメッセンジャーRNAがRNaseによる分解をうけていないことの確認が困難である。本発明の電気泳動用チップを用いた分離を行えば、実施例で示したように微量の試料で高感度の分析が可能であるので、メッセンジャーRNAを直接分析することにより、あるいはメッセンジャーRNAと共存する大過剰のリボゾームRNAを分析することにより間接的に、簡便にメッセンジャーRNAの分解の有無を調べることが可能となり、この分野における利用も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1で作製した板状部材の全体像を示す斜視図
【図2】実施例1で作製した電気泳動用チップの断面図
【図3】実施例1で作製した電気泳動用チップをシール部材側から見た平面図
【図4】実施例2で作製した板状部材の全体像を示す斜視図
【図5】実施例3のΦX174HaeIII分解断片の検出結果を示す図
【図6】実施例4の細胞抽出総RNAの検出結果を示す図
【符号の説明】
1:実施例1の板状部材(A)
2:シール部材(B)
3(3a、3b):溝(C)
4(4a、4b):注入孔(D)
5(5a、5b):排出孔(E)
6:電極(F)及び電気回路(G)の一体化物
7:導電用貫通孔
8:実施例2の板状部材(A)
9:位置決め用貫通孔

Claims (15)

  1. 板状部材(A)とフィルム状のシール部材(B)とからなり、
    板状部材(A)が、板厚方向に貫通した1個以上の注入孔(C)と、板厚方向に貫通又は非貫通の1個以上の排出孔(D)と、一方の面に形成される注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する1本以上の溝(E)と、注入孔及び排出孔の内壁及び開口縁部を通って溝形成面に延在する電極(F)とを有し、
    シール部材(B)が、注入孔(C)及び排出孔(D)の開口部とずれた位置に導電用貫通孔を有し、当該導電用貫通孔の開口部が溝形成面における電極部分と一致するように板状部材(A)の溝形成面に接合されていることを特徴とする電気泳動用チップ。
  2. 注入孔(C)と排出孔(D)をそれぞれ2個以上有し、溝(E)を2本以上有し、かつ溝(E)のうちの少なくとも2本が交差していることを特徴とする請求項1記載の電気泳動チップ。
  3. 板状部材(A)及び/又はシール部材(B)がアクリル系樹脂又はスチレン系樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2記載の電気泳動用チップ。
  4. 板状部材(A)が電気泳動用装置に位置決めされるための突起、凹み及び穴のうちのいずれかひとつ以上を有することを特徴とする請求項1〜のいずれか一項記載の電気泳動用チップ。
  5. 板厚方向に貫通した1個以上の注入孔(C)と、板厚方向に貫通又は非貫通の1個以上の排出孔(D)と、一方の面に形成される注入孔(C)と排出孔(D)とを連結する1本以上の溝(E)と、注入孔(C)及び排出孔(D)の内壁及び開口縁部を通って溝形成面に延在する電極(F)を形成した板状部材(A)の溝形成面に注入孔(C)及び排出孔(D)の開口部とずれた位置に導電用貫通孔を形成したシール部材(B)を、当該導電用貫通孔の開口部が溝形成面における電極部分と一致するように接合すること特徴とする電気泳動用チップの製造方法。
  6. 電極(F)を印刷、真空蒸着、スパッタリング及びイオンプレーティングのいずれかにより形成することを特徴とする請求項記載の電気泳動用チップの製造方法。
  7. 板状部材(A)とシール部材(B)との接合が熱融着によりなされることを特徴とする請求項5又は6記載の電気泳動チップの製造方法。
  8. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電気泳動チップ若しくは請求項のいずれか一項に記載の製造方法により得られる電気泳動チップを用いる電気泳動装置。
  9. 請求項1〜のいずれか一項に記載の電気泳動チップ若しくは請求項のいずれか一項に記載の製造方法により得られる電気泳動チップを用いる荷電性物質の分離方法。
  10. 請求項に記載の電気泳動装置を用いることを特徴とする荷電性物質の分離方法。
  11. 荷電性物質が荷電性分子又は荷電性粒子である請求項又は10記載の荷電性物質の分離方法。
  12. 荷電性分子がイオン、有機酸、アミノ酸、タンパク質、核酸及び糖のいずれかで、荷電性粒子がウイルス又は細胞である請求項11記載の荷電性物質の分離方法。
  13. 分離用媒体として高分子ゲルを用いることを特徴とする請求項12のいずれか一項記載の荷電性物質の分離方法。
  14. 高分子ゲルが非交差型高分子ゲルであることを特徴とする請求項13記載の荷電性物質の分離方法。
  15. 非交差型高分子ゲルが直鎖状ポリアクリルアミド、直鎖状ハイドロキシエチルセルロース、直鎖状ハイドロキシプロピルメチルセルロース、直鎖状ハイドロキシプロピルセルロース、直鎖状メチルセルロース、直鎖状ポリエチレングリコール及び直鎖状ポリエチレンオキサイドのいずれかであることを特徴とする請求項14記載の荷電性 物質の分離方法。
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