JP3839198B2 - 外壁パネルの固定金具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄骨系住宅において、外壁パネルを鉄骨梁などに対して固定する固定金具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、裏面側の所定位置にナット金具が予め配設されるとともに、複数個の中空部が上下方向に貫通して形成された外壁パネルが知られている。このような外壁パネルを用いて鉄骨系住宅の外壁を形成する場合、基礎や鉄骨梁に固定された壁軸組に対して外壁パネルを固定するようにしている。具体的には、外壁パネルに埋設されたナット金具に取付金具をボルトを介して固定する一方、壁軸組に接合金具をボルトを介して固定し、外壁パネルに固定された取付金具を壁軸組に載置するとともに、壁軸組に固定された接合金具を外壁パネルのナット金具にボルトを介して固定することにより、外壁パネルを壁軸組に固定していた(例えば、特開平9−328864号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、外壁パネルを固定するためには、壁軸組が必要になるとともに、一の外壁パネルに多数個のナット金具を埋設しなければならない他、一の外壁パネルにナット金具を利用して複数個の取付金具を固定する一方、一の壁軸組に複数個の接合金具を固定しなければならず、部品点数が増加してコストが上昇するとともに、作業に多くの時間が必要になり、作業性が低いという問題があった。
【0004】
さらに、製造上の誤差により、壁軸組に固定した接合金具と、外壁パネルに埋設したナット金具との位置が適合しない場合、現場において調整しなければならず、その際、手直しにも多くの時間が必要になっていた。
【0005】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、外壁パネルを壁軸組を用いることなく鉄骨梁などに簡単確実に固定することのできる外壁パネルの固定金具を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、鉄骨梁などに固定されたリップ部を有する取付部材に外壁パネルを固定する固定金具であって、外壁パネルに配設可能なナット金具と、取付部材のリップ部に係合可能な係合金具と、から構成され、前記ナット金具は、雌ねじが形成された金具本体と、断面略U字状に形成されて金具本体を挟むように金具本体の一面に固定されたバネ材と、からなり、バネ材には、金具本体の雌ねじに対応する位置に雌ねじの内径よりも大きな内径の円筒状張出部が形成され、一方、係合金具は、一面側を外壁パネルに対する取付面とされた取付部および取付部の取付面と反対側に鋭角状に突出する鉤状部を有して断面略P字状に折曲され、取付部には長穴が形成され、また、鉤状部の、取付部の取付面からの内壁の高さが取付部材のリップ部の幅よりも小さく設定され、ナット金具と係合金具とは、係合金具の長穴を通して嵌挿されたボルトをナット金具の雌ねじに螺合させることにより一体に連結されるとともに、前記係合金具の取付部は、その端縁が取付面と反対側に一定勾配で傾斜する傾斜部に形成されているとともに、両隅角部が切り落とされて面取り部に形成されていることを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、外壁パネルの下穴に連通する一の中空部の上下端部からナット金具を挿入すると、ナット金具におけるバネ材の円筒状張出部が下穴に嵌まり込み、その際、バネ材がその弾性により外壁パネルの中空部の内壁を押圧することから、金具本体の雌ねじを外壁パネルの下穴に臨ませたナット金具を外壁パネルの下穴からの抜け出しを防止して外壁パネルの所定位置に配設することができる。また、係合金具における取付部の長穴を通してボルトを挿入し、外壁パネルの下穴に配設されたナット金具の金具本体の雌ねじにねじ込むことにより、係合金具を外壁パネルに配設されたナット金具とボルトを介して一体に連結することができる。
【0008】
したがって、ナット金具および係合金具からなる固定金具を用いることにより、下階の鉄骨梁や上階の鉄骨梁あるいは基礎などに固定された取付部材のチャンネル材のリップ部に、外壁パネルに固定された係合金具の鉤状部を係合させ、係合金具を外壁パネルに配設したナット金具にボルト締めすることで外壁パネルを下階の鉄骨梁と上階の鉄骨梁にわたって、あるいは基礎と上階の鉄骨梁にわたって簡単に固定することができる。この場合、係合金具の取付部に長穴が形成されていることにより、取付部材のチャンネル材のリップ部に対する鉤状部の係合位置を長穴に沿って調整することができる。また、鉤状部の、取付部の取付面からの内壁の高さが取付部材のリップ部の幅よりも小さく設定されていることにより、係合金具の鉤状部の内面が取付部材のチャンネル材のリップ部に確実に接触し、地震などによっても、外壁パネルが水平移動することがない他、係合金具が回転してチャンネル材から離脱することもなく、外壁パネルを確実に固定することができる。
【0009】
本発明において、係合金具の取付部の端縁が取付面と反対側に一定勾配で傾斜する傾斜部に形成されているとともに、両隅角部が切り落とされて面取り部に形成されていると、係合金具の鉤状部を取付部材のチャンネル材のリップ部に係合した際、係合金具の取付部の傾斜部が外壁パネルの裏面に対し面接触することになり、外壁パネルを円滑に移動させることができる。また、地震などにより、外壁パネルが躯体の変形に追従して移動する際、外壁パネルの裏面に対し係合金具を円滑に移動させることができる。
【0010】
本発明において、係合金具の取付部に長穴を挟んで取付面と反対方向に突出する2本の凸条が形成されていると、取付部の剛性が大きくなり、曲げ強度を高めることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の外壁パネルの固定金具の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明の外壁パネルの固定金具の一実施形態が示されている。
この固定金具1は、鉄骨梁Hに固定されたリップ部52aを有する取付部材5に外壁パネル10を取り付ける際に使用され、外壁パネル10に固定可能なナット金具2と、取付部材5のリップ部52aに係合可能な係合金具3と、から構成されている。
【0013】
ナット金具2は、図2に示すように、略方形の金具本体21と、該金具本体21に一体に固定されたバネ材22と、からなり、金具本体21には、略中央部に雌ねじ21aが形成されているとともに、上端部および下端部にそれぞれ切欠部21b,21cが形成されている。また、バネ材22は、断面略U字状に折曲され、前述の金具本体21の雌ねじ21aに対応する位置に雌ねじ21aの内径よりも若干大きな内径の円筒状張出部22aが外方に突出して形成されるとともに、金具本体21の切欠部21b,21cに対応する位置に切り込みによる係止片22b,22cが形成されている。
【0014】
ナット金具2は、金具本体21の表裏両面を挟み込むようにバネ材22を配置した後、金具本体21の一面にバネ材22の内面を接触させ、金具本体21の雌ねじ21aにバネ材22の円筒状張出部22aを位置合わせした後、バネ材22の係止片22b,22cを金具本体21の切欠部21b,21cに沿わせて先端部を金具本体21の他面側に折り曲げて一体化されている。
【0015】
係合金具3は、図3に示すように、一面側を外壁パネル10に対する取付面311とされた取付部31および取付部31の取付面311と反対側に断面V字状に突出する鉤状部32を有して断面略P字状に折曲されてなり、取付部31には長穴31aが形成され、また、鉤状部32の、取付部31の取付面311からの内壁の高さxが後述する取付部材5のリップ部52aの幅wよりも小さく設定されている(図5参照)。さらに、係合金具3の取付部31には、取付面311と反対側に突出する2本の凸条31bが長穴31aを挟んで形成されている他、取付部31はその端縁が取付面311と反対側に一定勾配で傾斜する傾斜部31cに形成されているとともに、両隅角部が切り落とされて面取り部31dに形成されている。
【0016】
外壁パネル10は、セメントの押出成形品であって、断面長穴状の複数個の中空部10aが上下方向に貫通して形成されているとともに、その裏面側四隅近傍に一の中空部10aに連通する下穴10bが形成されている。そして、外壁パネル10の各下穴10bには前述したナット金具2が配設されている
すなわち、ナット金具2は、外壁パネル10の、下穴10bに連通する一の中空部10aの上下端部から、そのバネ材22の湾曲部分を内方に向けて、かつ、バネ材22の円筒状張出部22aを外壁パネル10の裏面側に向けて挿入され、ナット金具2が下穴10bに到達すると、バネ材22の円筒状張出部22aが下穴10bに嵌まり込む。この際、バネ材22は、その弾性により中空部11aの内壁面を押圧し、ナット金具2が下穴10bから抜け出すのを防止する。こうして、ナット金具2は、外壁パネル10の所定位置に配設される。
【0017】
外壁パネル10にナット金具2が配設されると、各ナット金具2に係合金具3が固定される。すなわち、係合金具3を把持し、その取付部31の取付面311を外壁パネル10の裏面に接触させ、取付部31の長穴31aを外壁パネル10の下穴10bに位置合わせした後、取付部31の長穴31aを通してボルトBを外壁パネル10の下穴10bに挿入し、外壁パネル10の下穴10bに配設されたナット金具2の金具本体21の雌ねじ21aにねじ込むことにより、係合金具3は、外壁パネル10に配設されたナット金具2とボルトBを介して一体に連結される。
【0018】
この場合、外壁パネル10の上部左右に設けられる係合金具3は、その鉤状部32が上方となるように配置され、外壁パネル10の下部左右に設けられる係合金具3は、その鉤状部32が下方となるように配置される。また、係合金具3は、ナット金具2から離脱しない程度に仮止めされる。
【0019】
次に、このようなナット金具2および取付金具3からなる固定金具1を設けた外壁パネル10を鉄骨梁Hに固定する作業要領を説明する。
【0020】
まず、下階の鉄骨梁Hの上フランジh1および上階の鉄骨梁Hの下フランジh2にそれぞれ取付部材5を固定する。
【0021】
ここで、下階の鉄骨梁Hとしては、例えば、2階の梁が、上階の鉄骨梁Hとしては、例えば、3階の梁がそれぞれ対応している。また、鉄骨梁Hは、断面H字状の形鋼が採用され、その上下のフランジh1,h2には、その室内側および室外側において、それぞれ設定間隔をおいて複数個の下穴haが予め形成されている(図7および図8参照)。
【0022】
取付部材5は、1個のボルト用下穴(図示せず)がそれぞれ形成されるとともに、設定間隔をおいて配置された複数枚の取付板51と、これらの取付板51に溶着された断面略L字状のチャンネル材52、例えば、リップ山形鋼と、からなり、チャンネル材52の垂直片521の先端にはリップ部52aが形成されている。
【0023】
なお、上階の鉄骨梁Hに固定される取付部材5においては、取付板51の先端面と、チャンネル材52の垂直片521の外面とがほぼ同一の垂直面上に位置するように、取付板51にチャンネル材52の水平片522が溶着されるのに対し、下階の鉄骨梁Hに固定される取付部材5においては、取付板51の先端部に外壁パネル10の下端を載置する一定長さをおいてチャンネル材52の垂直片52が位置するように、取付板51にチャンネル材52の水平片522が溶着される。
【0024】
取付部材5を鉄骨梁Hに固定する場合、下階の鉄骨梁Hにおいては、その上フランジh1の上面に取付部材5の取付板51を載置し、取付板51のボルト用下穴および鉄骨梁Hの上フランジh1の下穴haを通してボルトB1を挿通し、ナットN1を用いて固定する(図7参照)。この際、取付部材5のチャンネル材52の垂直片521が水平片522よりも室外側に位置するように取り付ける。また、上階の鉄骨梁Hにおいては、その下フランジh2の下面に取付部材5の取付板51を配置し、その取付板51のボルト用下穴および鉄骨梁Hの下フランジh2の下穴haを通してボルトB1を挿通し、ナットN1を用いて固定する(図8参照)。この際、取付部材5のチャンネル材52の垂直片521が水平片522よりも室外側に位置するように取り付ける。
【0025】
次いで、クレーンなどを利用して固定金具1を設けた外壁パネル10を吊り上げ、その下端を下階の鉄骨梁Hに固定された取付部材5の取付板51の先端部に載置して外壁パネル10を支持するとともに、その裏面を上下の取付部材5のチャンネル材52の垂直片521の外面にそれぞれ当接させた後、係合金具3の鉤状部32を上下の取付部材5のチャンネル材52のリップ部52aにそれぞれ係合させ、ボルトBを締め付けて係合金具3を外壁パネル10に配設されたナット金具2に締結する。
【0026】
ここで、係合金具3は、取付部31に形成された長穴31aの範囲内で移動させることができ、取付部材5のチャンネル材52のリップ部52aに対する鉤状部32の係合位置を調整することができる。この際、係合部材3の取付部31の端縁には、傾斜部31cが形成されるとともに、面取り部31dが形成されているため、外壁パネル10の裏面に対する係合部材3の係合時の移動を円滑に行うことができる。また、係合部材3における鉤状部32の内壁の高さxが取付部材5のリップ部52aの幅wよりも小さく設定されているため、係合金具3の鉤状部32の内面は、取付部材5のチャンネル材52のリップ部52aに確実に接触して係合することになる。
【0027】
この結果、下階の鉄骨梁Hに固定された取付部材5のチャンネル材52のリップ部52aおよび上階の鉄骨梁Hに固定された取付部材5のチャンネル材52のリップ部52aに係合金具3の鉤状部32を係合させてボルトBを締め付けるだけの簡単な作業により、外壁パネル10を固定することができる。したがって、部品点数が削減されるとともに、外壁パネルの固定作業を少ない作業時間によって行うことができ、コストを削減することができる。また、係合金具3の鉤状部32が取付部材5のリップ部52aにそれぞれ係合していることにより、地震などによっても、外壁パネル10が水平移動することがない他、係合金具3が回転して取付部材5から離脱することもないことから、外壁パネル10を確実に固定することができる。
【0028】
なお、前述した実施形態においては、下階の鉄骨梁Hおよび上階の鉄骨梁Hにそれぞれ取付部材5を固定し、これらの鉄骨梁Hに固定した取付部材5にわたって外壁パネル10を固定金具1によって固定した場合を例示したが、基礎などに取付部材5を固定し、基礎と上階の鉄骨梁Hにわたって外壁パネル10を固定することもできる。
【0029】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ナット金具および係合金具からなる固定金具によって外壁パネルを下階の鉄骨梁と上階の鉄骨梁との間あるいは基礎と上階の鉄骨梁との間に壁軸組を用いることなく簡単確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の外壁パネルの固定金具を示す斜視図である。
【図2】固定金具を構成するナット金具の分解斜視図である。
【図3】固定金具を構成する係合金具の斜視図である。
【図4】外壁パネルに配設されるナット金具と係合金具との関係を示す分解斜視図である。
【図5】係合金具の鉤状部と取付部材のリップ部との寸法関係を示す側面図である。
【図6】本発明の外壁パネルの固定金具によって下階の鉄骨梁と上階の鉄骨梁にわたって外壁パネルを固定した状態を一部省略して示す縦断面図である。
【図7】外壁パネルに設けた係合金具と下階の鉄骨梁に設けた取付部材との関係を示す斜視図である。
【図8】外壁パネルに設けた係合金具と上階の鉄骨梁に設けた取付部材との関係を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 固定金具
2 ナット金具
21 金具本体
21a 雌ねじ
22 バネ材
22a 円筒状張出部
3 係合金具
31 取付部
311 取付面
31a 長穴
31b 凸条
31c 傾斜部
31d 面取り部
32 鉤状部
5 取付部材
51 取付板
52 チャンネル材
52a リップ部
10 外壁パネル
10a 中空部
10b 下穴
H 鉄骨梁
B ボルト
Claims (2)
- 鉄骨梁などに固定されたリップ部を有する取付部材に外壁パネルを固定する固定金具であって、外壁パネルに配設可能なナット金具と、取付部材のリップ部に係合可能な係合金具と、から構成され、前記ナット金具は、雌ねじが形成された金具本体と、断面略U字状に形成されて金具本体を挟むように金具本体の一面に固定されたバネ材と、からなり、バネ材には、金具本体の雌ねじに対応する位置に雌ねじの内径よりも大きな内径の円筒状張出部が形成され、一方、係合金具は、一面側を外壁パネルに対する取付面とされた取付部および取付部の取付面と反対側に鋭角状に突出する鉤状部を有して断面略P字状に折曲され、取付部には長穴が形成され、また、鉤状部の、取付部の取付面からの内壁の高さが取付部材のリップ部の幅よりも小さく設定され、ナット金具と係合金具とは、係合金具の長穴を通して嵌挿されたボルトをナット金具の雌ねじに螺合させることにより一体に連結されるとともに、前記係合金具の取付部は、その端縁が取付面と反対側に一定勾配で傾斜する傾斜部に形成されているとともに、両隅角部が切り落とされて面取り部に形成されていることを特徴とする外壁パネルの固定金具。
- 前記係合金具の取付部には、長穴を挟んで取付面と反対方向に突出する2本の凸条が形成されていることを特徴とする請求項1記載の外壁パネルの固定金具。
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