JP3838599B2 - 感光性組成物およびそれを用いた平版印刷版の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光架橋型の感光性平版印刷版の感光層に用いられる感光性組成物に関し、また、該感光性組成物を用いて平版印刷版を製造する方法に関する。更に詳しくは、中性領域(弱酸性から弱アルカリ性を含む)の水または水溶液で現像し得る感光層となり得る感光性組成物に関し、また、該感光性組成物を用いて平版印刷版を製造する方法に関する。
【0002】
【従来技術】
環化付加反応によって架橋する光架橋性材料はよく知られており、感光性平版印刷版等の製造に用いる感光性組成物の主要成分として数多く用いられている。
この環化付加反応によって架橋する光架橋性材料を用いた感光性組成物からなる感光層を有する感光性平版印刷版は、画像露光を行ったあと現像処理を行い、未露光部の感光層を除去している。このとき、現像液としては通常pH11以上の強アルカリ性の水溶液や、その水溶液に更に界面活面剤やアルコールなどのような有機溶媒を加えた液を使用する。
【0003】
しかしながら、このような高pHの液は、安全性、作業性、環境衛生等の点から好ましくない。すなわち、高pHの液体は皮膚刺激性があるため危険であり、またそのために使用時はゴム手袋、眼鏡等の着用が必須である。更にpH12.5以上の液体については特別環境産業廃棄物に指定されており、そのまま排水できず、指定の業者に引き取ってもらうことが法律で義務づけられている。
現像液としてはこの他、界面活面剤やアルコールなどのような有機溶媒を用いるものもあるが、これらもやはり安全性、作業性、環境衛生等の点から好ましくない。
また、別の観点として、このような現像処理そのものが面倒であるということが挙げられる。最近では自動現像機を用いることがほとんどであるが、定期的に液の入れ替えや掃除をしなければならず、メンテナンスが必要である。また機械をおくのに場所が必要であり、また機械を購入するのに設備投資が必要である。
【0004】
上記環化付加反応によって架橋する光架橋性材料を用いた感光性組成物の一つとして、感度、現像性、耐刷性等の改善を目的とした、マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマーおよび増感剤を含有する感光性組成物が特開平7−295212号等に提案されている。しかし、この感光性組成物も、一般に環化付加反応によって架橋する光架橋性材料を用いた感光性組成物が抱えている上記現像処理に関する問題が十分解決されたものではなかった。
また、WO96/34316号公報には、現像処理を経ることなく印刷可能な感光性平版印刷版に関する記載がある。しかし、この感光性平版印刷版は露光時真空引きが不十分であると、感度が低下してしまうことが分かった。すなわち、該公報記載の感光層は酸素の影響を受けやすく、酸素による重合阻害により感度が低下するわけである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって、本発明の目的は、現像液として強アルカリ性の水溶液を使用しないで現像できる、優れた感度、現像性、耐刷性等を有し、かつ製版時の酸素の影響のない感光性平版印刷版の感光層を形成し得る感光性組成物を提供することにあり、他の目的は、強アルカリ性の現像液を使用しないで、耐刷性等に優れた平版印刷版を製造する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマーおよび増感剤を含有する感光性組成物に、特定のアルカリ性化合物を配合することにより、あるいは、当該感光性組成物の光架橋性ポリマーの側鎖の酸基を特定のアルカリ性化合物にて塩を形成させることにより、上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、第一には、マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマー、増感剤および下記アルカリ性化合物(I)を含有する感光性組成物に関する。
アルカリ性化合物(I):
一般式XOH、X2CO3 、XHCO3 、NR3R4R5 、Y(OH)2 およびYCO3 で表される化合物から選ばれた1種類ないし2種類以上の化合物〔式中、Xはアルカリ金属またはNR6R7R8R9 を表し、Yはアルカリ土類金属を表し、R3 からR9 はそれぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。〕。
第二には、マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基が塩を形成している基を側鎖に有する光架橋性ポリマーおよび増感剤を含有する感光性組成物であって、該塩がアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはNR6R7R8R9 (R6 からR9 は、それぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。)で表わされるアンモニウム塩であることを特徴とする感光性組成物に関する。
本発明の感光性組成物からなる感光層は、画像露光後、pH3〜11の中性領域の水または水溶液で現像することができ、強アルカリ性の現像液を用いる必要はない。また、本発明の感光性組成物からなる感光層が優れた感度、現像性、耐刷性等を有することは無論である。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の第一の発明で用いるマレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマーは、マレイミド基を有するモノマーとアルカリ水溶液で解離し得る酸基を有するモノマーを共重合させることによって得られる。
マレイミド基を有するモノマーとしては、下記一般式(I)で表されるマレイミド基を有するモノマーが挙げられる。
【0008】
【化1】
【0009】
〔式(I)中、R1 およびR2 はそれぞれ水素原子、ハロゲン原子またはアルキル基を示すか、R2 とR2 が一緒になって5員環または6員環を形成してもよい。〕
上記一般式(I)のR1 および/またはR2 がアルキル基である場合は、炭素数1〜4のものが好ましく、特に好ましいのはメチル基である。また、R1 とR2 とが一緒になって6員環を形成しているのも好ましい。ハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子または沃素原子が好ましい。
上記一般式(I)で表されるマレイミド基を有するモノマーの具体例として、下記一般式(A)、(B)あるいは(C)で表されるモノマーが例示される。
【0010】
【化2】
【0011】
〔式(A)〜(C)中、R11およびR12は一般式(I)のR1 およびR2 と同じ意味を有し、R13は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基)を表し、n3 、n4 およびn5 は整数を示し、好ましくは1から6である。〕
また、アルカリ水溶液で解離し得る酸基を有するモノマーとしては、pKaが14以下の酸基を有するモノマーが挙げられる。かかる酸基を有するモノマーの具体例として、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のカルボキシル基を有するビニルモノマー、スルホン酸基を有するビニルモノマー、下記一般式(D)で示されるような−CONHSO2 −基を含むビニルモノマー、下記一般式(E)で示されるような−SO2NH−基を含むビニルモノマー、下記一般式(F)で示されるようなフェノール性水酸基を含むビニルモノマー、下記一般式(G)で示されるようなリン酸基あるいはホスホン酸基を含むビニルモノマーの他、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物等が例示される。
【0012】
【化3】
【0013】
〔式(D)中、R14は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基)を表し、R15は置換基を有していても良い炭素数12以下の炭化水素基を表す。〕
なお、R15として好ましいのは、メチル基、フェニル基、トリル基である。
【0014】
【化4】
【0015】
〔式(E)中、R16は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基)を表し、R17は水素原子または置換基を有していても良い炭素数12以下の炭化水素基を表す。〕
なお、R17として好ましいのは、水素原子、メチル基、フェニル基、トリル基である。
【0016】
【化5】
【0017】
〔式(F)中、R18は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基)を表す。〕
【0018】
【化6】
【0019】
〔式(G)中、R19は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基(例えば、メチル基)を表し、R20は置換基を有していても良い炭素数12以下の炭化水素連結基を表し、Zは酸素原子または単結合を表す。〕
なお、R20として好ましいのは、炭素数1から6までのアルキレン基、フェニレン基である。
【0020】
上記のようなアルカリ水溶液で解離し得る酸基を有するモノマーと、マレイミド基を有するモノマーとを、一般に5/95〜70/30(モル比)、好ましくは10/90〜60/40(モル比)の割合で、共重合させることによって、第一の本発明で用いる光架橋性ポリマーを合成することができる。このポリマーの酸価は、10〜500の範囲が好ましく、特に好ましいのは30〜300である。また、重量平均分子量は、1000以上が適当であり、好ましくは1万〜50万、特に好ましくは2万〜30万である。また、1分子当り平均1個以上の酸基と2個以上のマレイミド基を有する。更にまた、該当する2種以上の光架橋性ポリマーを組み合わせて用いることも可能である。
【0021】
本発明の第一の発明で感光性組成物に配合するアルカリ性化合物(I)は、一般式XOH、X2CO3 、XHCO3 、NR3R4R5 、Y(OH)2 およびYCO3 で表される化合物から選ばれた1種類ないし2種類以上の化合物である。一般式XOH、X2CO3 およびXHCO3 におけるXは、アルカリ金属またはNR6R7R8R9 を表す。ここで、Xがアルカリ金属の場合、好ましいものはリチウム、ナトリウム、カリウムであり、XがNR6R7R8R9 (R6 からR9 はそれぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す)の場合、置換されていてもよいアルキル基として好ましいものはエチル基、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基である。また、一般式NR3R4R5におけるR3 からR5 は、それぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。ここで、R3 からR5 が置換されていてもよいアルキル基の場合、好ましいものはエチル基、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基である。また、一般式Y(OH)2 およびYCO3 におけるYは、アルカリ土類金属を表し、好ましいものはマグネシウム、カルシウムである。
これらのアルカリ性化合物(I)の配合量は感光性組成物全成分の0.1〜30重量%であることが好ましく、特に好ましくは0.5〜20重量%である。これより添加量が少ない場合は現像性が劣化するおそれがあり、また逆に多い場合には感度や耐刷性が低下してしまうため好ましくない。
【0022】
本発明の第二の発明で用いるマレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸を塩の形にした基を側鎖に有する光架橋性ポリマーは、次の二つの方法で得ることができる。
その一つの方法は、上記したアルカリ水溶液で解離し得る酸基を有するモノマーを、上記したアルカリ性化合物(I)を用いて、その酸基を塩の形になし、該酸を塩の形にした基を有するモノマーと上記したマレイミド基を有するモノマーとを、一般に5/95〜70/30(モル比)、好ましくは10/90〜60/40(モル比)の割合で、共重合させることによって合成する方法である。この合成に際し、必要に応じて、アルカリ水溶液で解離し得る酸を塩の形にした基を有するモノマーの60モル%まではアルカリ水溶液で解離し得る酸基を有するモノマーを併用することができる。
他の一つの方法は、上記のようにして合成した、マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマーの側鎖の酸基を、上記したアルカリ性化合物(I)を用いて塩の形にする方法である。この合成に際し、必要に応じて、光架橋性ポリマーの側鎖の酸基の60モル%までは、酸基のまま残存させることができる。
この第二の発明で用いる光架橋性ポリマーは、重量平均分子量は、上記第一の発明で用いる光架橋性ポリマーと同程度が適当であり、また、1分子当り平均1個以上の酸を塩の形にした基と2個以上のマレイミド基を有する。更にまた、該当する2種以上の光架橋性ポリマーを組み合わせて用いることも可能である。
【0023】
また、第二の発明で用いる光架橋性ポリマーにおいて、アルカリ水溶液で解離し得る酸を塩の形にした基は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩もしくはアンモニウム塩である。これらの内、アルカリ金属塩として好ましいものはリチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩であり、アルカリ土類金属塩として好ましいものはマグネシウム塩、カルシウム塩である。また、アンモニウム塩は、一般式NR6R7R8R9 (R6 からR9 はそれぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す)で表されるものであるが、この内置換されていてもよいアルキル基として好ましいものはエチル基、メチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、1−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシプロピル基、1−ヒドロキシプロピル基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基である。
また、第二の発明の組成物においても、必要に応じて、上記したアルカリ性化合物(I)を配合することができる。この配合量は感光性組成物全成分の30重量%以下が適当である。
【0024】
本発明の第一あるいは第二の発明で用いる光架橋性ポリマーの合成に際して、アルカリ水溶液で解離し得る酸基あるいは該酸を塩の形にした基を有するモノマーおよびマレイミド基を有するモノマーに加えて、第3成分のビニルモノマーを共重合させることで、目的に応じた多元共重合体にすることができる。例えば、第3成分のビニルモノマーとして、そのホモポリマーのガラス転移点が室温以下のアルキルメタアクリレートやアルキルアクリレートを用いることによって共重合体に柔軟性を与えることができる。またアリル基を側鎖に有するモノマー、例えばアリルメタアクリレートを共重合させることで更に架橋密度を向上させることも可能である。
【0025】
本発明(第一および第二の発明)で用いる増感剤としては、300nm以上の範囲で実際に充分な光吸収を可能にするような極大吸収を有する三重項増感剤が好ましい。
そのような増感剤としては、ベンゾフェノン誘導体、ベンズアンスロン誘導体、キノン類、芳香族ニトロ化合物、ナフトチアゾリン誘導体、ベンゾチアゾリン誘導体、チオキサントン類、ナフトチアゾール誘導体、ケトクマリン化合物、ベンゾチアゾール誘導体、ナフトフラノン化合物、ピリリウム塩、チアピリリウム塩等を挙げることができる。 具体的には、ミヒラーケトン、N,N′−ジエチルアミノベンゾフェノン、ベンズアンスロン、(3−メチル−1,3−ジアザ−1,9−ベンズ)アンスロンピクラミド、5−ニトロアセナフテン、2−クロルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジメチルチオキサントン、メチルチオキサントン−1−エチルカルボキシレート、2−ニトロフルオレン、2−ジベンゾイルメチレン−3−メチルナフトチアゾリン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、2,4,6−トリフェニルチアピリリウムパークロレート、2−(p−クロルベンゾイル)ナフトチアゾールの他、特公昭45−8832号、特開昭52−129791号、特開昭62−294238号、特開平2−173646号、特開平2−131236号、欧州特許368327号、特開平2−236552号、特開平3−54566号、特開平6−107718号の各公報に記載されている増感剤などを挙げることができる。
これらのうち好ましくは、特開平2−236552号、特開平3−54566号、特開平6−107718号の各公報に記載されている増感剤であり、特に好ましくは特開平6−107718号号明細書に記載されるように、分子中にアルカリ可溶性基として、−COOH基、−NHSO2R21基、−CONHCOR21基、−CONHSO2R21基(R21はアルキル基、芳香族基またはアルキル芳香族基を示す)を1つ以上含む増感剤である。
また下記一般式(H)に記載した増感剤も好適に使用される。
【0026】
【化7】
【0027】
〔式(H)中、R22およびR23はそれぞれ単独で水素原子、ハロゲン原子、(置換)アルキル基、(置換)アリール基、(置換)へテロ環基、カルボキシル基を示すか、R22とR23とが一緒になって結合している炭素原子と共に非金属原子よりなる環を形成してもよく;R23およびR25はそれぞれ単独で水素原子、ハロゲン原子、(置換)アルキル基、(置換)アリール基を示し;Yは環を形成するのに必要な非金属原子群を示し;
R22、R23およびYのいずれか1つ以上が、置換基として1つ以上のCOOH基、COOR26基、NHSO2R26基、CONHCOR26基、CONHSO2R26基より選ばれた基を含み;R26はアルキル基、芳香族基、芳香族アルキル基を示し;
nは0から4 までの整数を示す〕
一般式(H)で表される増感剤の具体例を次に示す。
【0028】
【化8】
【0029】
このうち、化合物4の合成方法を次に示す。
合成例1.メチル-6- チオキソ-5、7-ジチオー3-オキソペンタデカノエート(化合物11:化合物4の合成中間体)の合成;
【0030】
【化9】
【0031】
n-オクタンチオール146.3g(1mole) 、メタノール500ml とを3 Lの三口フラスコに入れ氷冷した。NaOMe (28%MeOH 溶液)を206g(1.07mole)とり、これを15分かけて添加した。内温は15℃まで上昇した。滴下終了後15分撹拌を続けた後、二硫化炭素を 81.5g(1.07mole)を10分で滴下した。反応液の色は黄色に変化した。滴下終了後、氷冷しながら4-クロロアセト酢酸メチル 150.6g(1mole)を15分かけて滴下した。滴下後13分の時点で黄色結晶が析出し、内温は18℃まで上昇した。滴下終了後氷冷をやめ、室温にて2 時間30分撹拌した。撹拌後反応液を30℃まで加熱し、一旦均一溶液にし、濾過により食塩を取り除いた後冷却し生じた結晶を濾取した。収量218g、収率65% 、HLPC純度98% 、mp39℃。
合成例2.(1,3-dibutyltetrahydro-4,6-dioxo-2-thioxo-5-(2H)pyrimidinylidene)-2-(2H)-1,3-dithiole acetic acid (化合物4)の合成;
メチル-6- チオキソ-5、7-ジチオー3-オキソペンタデカノエート( 化合物11)50.4g(o.15mole)、無水酢酸75mlとを1lの三口フラスコに取り撹拌した。次にp-トルエンスルホン酸1 水和物57.0(0.3mole) を内温を22-30 ℃に保ちながら15min かけて添加した。室温にて1.5hr 撹拌後、無水酢酸を減圧下50-60 ℃で留去した。次に残査にアセトニトリル150ml を加え溶解し、氷冷下ジブチルチオバルビツル酸38.4g(0.15mole) を加えた後、トリエチルアミン45.5g(0.45mole) を少しずつ滴下した。滴下後1時間撹拌を続けた。次にアセトニトリルを減圧にて取り除いた。濃縮残査に酢酸 200mlと濃塩酸85mlとを加え、110 ℃で 45min間加熱した。室温にまで反応液を冷却後析出した結晶をろ過、その結晶を水、およびトルエンそれぞれ150ml でかけ洗いした。結晶を風乾後アセトニトリル300ml を用いてかけ洗いし、アセトニトリル1500mlを用いて再結晶を行った。収量28g 、収率45% 、純度(HLPC) 99.1%、mp247-249 ℃。
なお上記合成例2では酸性条件下での加水分解を行っているが、アルカリ条件でも加水分解を行うことが出来る.
これらの増感剤は、2種類以上併用して用いることも可能である。また、これらの増感剤の添加量は、感光性組成物全成分の1〜20重量%が適当であり、好ましくは2〜15重量%であり、特に好ましいのは3〜10重量%である。
【0032】
本発明の感光性組成物には、必要に応じて、更に以下のようなものを添加することができる。
まず、結合剤を含有させることができ、結合剤は通常線状有機ポリマーより適宜選択される。その具体例としては、フェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン及びカルボキシル基含有エポキシ樹脂、ポリアセタール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、カルボキシル基含有ポリウレタン樹脂等、公知のアルカリ可溶性の高分子化合物が挙げられる。かかるアルカリ可溶性の高分子化合物は感光性組成物全成分の50重量%以下の添加量で用いられる。
また、ラジカル重合可能なエチレン性二重結合を分子内に2個以上有する多官能モノマーを添加することができる。このような化合物としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールおよびジペンエリスリトールのトリ−、テトラ−もしくはヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能モノマーの添加量は感光性組成物全成分の10重量%以下である。
【0033】
また、可塑剤などを含有させることができる。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジヘキシルフタレートなどフタル酸ジアルキルエステル、オリゴエチレングリコールアルキルエステル、リン酸エステル系の可塑剤などを使用することができる。
ジアゾ樹脂を含有させることも可能である。ジアゾ樹脂としては、芳香族ジアゾニウム化合物とアルデヒド類の共縮合体が挙げられる。その具体例としては、特公昭49−48001号、特公昭50−7481号、特公平5−2227号、特開平3−2864号、特開平3−240061号、特開平4−274429号の各公報に記載されているジアゾ樹脂が挙げられる。中でも、特開平3−240061号公報に記載された、少なくとも1つのカルボキシル基を有する芳香族化合物を共縮合させたジアゾ樹脂、および特開平3−2864号公報に記載された、カルボキシル基を有するアルデヒドを用いて縮合させたジアゾ樹脂等の、分子中にカルボキシル基を導入したジアゾ樹脂が好ましい。
【0034】
更に、感脂化剤、界面活性剤、フッ素系化合物、シリカ化合物等を添加することによって、感光層表面の性質を変えることもできる。
また、熱重合防止剤、酸化防止剤を配合することも可能であり、その例としてハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4′−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2−メルカプトベンゾイミダゾール等が有用なものとして挙げられる。
また、ジアゾ樹脂の安定化剤としての各種酸化合物、現像促進のためのアルカリ水に可溶な酸基含有化合物を添加してもよい。
更に、感光層の着色を目的として、染料もしくは顔料、例えばジフェニルメタン系染料、トリフェニルメタン系染料、チアジン系染料、オキサジン系染料、キサントン系染料、アントラキノン系染料、イミノナフトキノン系染料、アゾメチン系染料、アゾ系染料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料等を加えてもよい。また焼き出し剤として、例えばトリハロメチル基含有化合物、ジアゾ単量体、スルホニウム塩、ヨードニウム塩といった光酸発生剤や光酸化剤と、pH指示薬、ロイコ染料の組み合わせを加えることもできる。
【0035】
本発明の感光性組成物からなる感光層を親水性表面を有する支持体上に形成するには、感光性組成物の各成分を溶解する溶媒に溶かして該支持体上に塗布する。ここで使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、アセトン、メチルエチルケトン、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、トルエン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられ、これらの溶媒を単独であるいは混合して使用することができる。これらの溶媒や混合溶媒に少量の水を添加することができる。また、感光性組成物成分の溶媒中の濃度(固形分)は、1〜50重量%が適当である。
【0036】
感光層の形成は、感光性組成物成を溶媒に溶解させた感光液を支持体上に塗布し、乾燥させて行われる。この乾燥は、50℃〜120℃で乾燥させることが望ましい。乾燥方法は始め温度を低くして予備乾燥した後高温で乾燥させてもよいが、適当な溶媒と濃度を選ぶことによって直接高温で乾燥させてもよい。
乾燥後の感光層の塗布量としては、0.1g/m2〜10g/m2の範囲が適当であり、好ましくは0.5g/m2〜5g/m2である。
【0037】
本発明の実施に当たり、支持体と感光層との密着性を高めるためや、現像後に未露光部の感光層が残存しないようにするため、またはハレーションを防止する等の目的で、必要に応じて、中間層を設けてもよい。密着性の向上のためには、一般に中間層は、ジアゾ樹脂や、例えばアルミニウムに吸着するリン酸化合物、シランカップリング剤等からなっている。また、現像後に感光層が残存しないようにするためには、一般に中間層は、溶解性の高い物質から選択され、溶解性の良好なポリマーや、水溶性ポリマーからなっている。更に、ハレーション防止のためには、中間層は一般に染料やUV吸収剤を含む。中間層の厚さは任意であるが、露光した時に、上層の感光層と均一な結合形成反応を行い得る厚みであることが望ましい。中間層は、通常、乾燥固体で約1〜100mg/m2の塗布割合がよく、5〜40mg/m2が特に良好である。
中間層には、必要に応じて、感光層中に用いられる光架橋型ポリマーや、共縮合ジアゾ樹脂や、増感剤を入れてもよい。また、中間層には、必要に応じて、増感剤、ジアゾ安定化剤、高分子結合剤、ハレーション防止剤、界面活性剤の他、各種添加剤を入れてもよい。
中間層を設けるには、上記各種化合物を、任意の溶剤に所望の濃度で溶解し、それを塗布または浸漬し、次いで乾燥することによって得られる。
【0038】
上記のようにして設けられた感光層の表面は、真空焼枠を用いた密着露光の際の真空引きの時間を短縮し、かつ焼きボケを防ぐため、マット化することが好ましい。具体的には、特開昭50−125805号、同58−182636号、特公昭57−6582号の各公報に記載されているようなマット層を設ける方法、特公昭62−62337号公報に記載されているような固体粉末を熱融着させる方法などがあげられる。
【0039】
本発明に用いる親水性表面を有する支持体は、寸度的に安定な板状物であることが望ましい。かかる寸度的に安定な板状物としては、従来印刷版の支持体として使用されたものが含まれ、それらは本発明に好適に使用することができる。かかる支持体としては、紙、プラスチックス(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)がラミネートされた紙、アルミニウム(アルミニウム合金も含む)、亜鉛、銅などのような金属板、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタールなどのようなプラスチックフィルム、上記の如き金属がラミネートもしくは蒸着された紙もしくはプラスチックフィルムなどが含まれる。これらの支持体の内、アルミニウム板は寸度的に著しく安定であり、しかも安価である上、本発明の感光性組成物からなる感光層等との接着性が特に良好なので好ましい。更に、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
【0040】
支持体が金属である場合には、特にアルミニウム支持体の場合には、砂目立て処理、陽極酸化処理などの表面処理がなされていることが好ましい。
表面の親水性を高めるために、珪酸ソーダ、弗化ジルコニウム酸カリウム、リン酸塩等の水溶液への浸漬処理が行なわれることが好ましい。米国特許第2,714,066号明細書に記載されているように、砂目立てした後に珪酸ナトリウム水溶液に浸漬処理されたアルミニウム板、特公昭47−5125号公報に記載されているようにアルミニウム板を陽極酸化処理した後に、アルカリ金属珪酸塩の水溶液に浸漬処理したものは好適に使用される。
また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。さらに、特公昭46−27481号公報、特開昭52−58602号公報、特開昭52−30503号公報に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理および珪酸ソーダ処理を組合せた表面処理も有用である。
また、特開昭56−28893号公報に開示されているような、ブラシグレイン、電解グレイン、陽極酸化処理、更に珪酸ソーダ処理を順に行ったものも好適である。また、これらの処理を行った後に、水溶性の樹脂、例えばポリビニルフォスホン酸、スルホン酸基を側鎖に有する重合体および共重合体、ポリアクリル酸等を下塗りしたものも好適である。更に、特開平2−23348号、特開平4−43359号に開示されているものも好適である。
これらの親水化処理は、支持体の表面を親水性とするために施される以外に、その上に設けられる感光性組成物との有害な反応を防ぐため、また感光層との密着性の向上等のために施される。
【0041】
本発明の感光性組成物からなる感光層を設けた感光性平版印刷版は、一般に、感光層表面をマット化した後、メタルハライドランプ、高圧水銀灯などのような紫外線に富んだ光源を用いて画像露光し、現像液で処理して感光層の未露光部を除去し、最後に不感脂化ガム液を塗布することにより平版印刷版とする。
本発明の感光性組成物の感光層を設けた感光性平版印刷版を現像処理する場合、現像液としてはpH3〜11、好ましくは3〜10、特に好ましくは3〜9の水または水溶液が使用される。水は、水道水、井戸水、湧き水等、日常生活で「水」といわれているもの全体を示している。水溶液としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、第三リン酸ナトリウム、第二リン酸ナトリウム、第一リン酸ナトリウム、第三リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、第一リン酸カリウム、第三リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、第一リン酸アンモニウム、アンモニア水などのような無機塩の水溶液や、モノ、ジまたはトリエタノールアミン等の有機アミン化合物の水溶液を挙げることができ、それらの濃度が0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜5重量%になるように添加した水溶液が適当である。この水溶液には、この他、ジアゾ溶解剤、例えば、亜硫酸塩、メチルレゾルシン、ピラゾロン化合物等の還元性物質を入れることも可能である。
【0042】
また、現像用水溶液には、必要に応じて、アルコールなどのような有機溶媒を極微量加えたり、界面活面剤を加えることもできる。有機溶媒としては、ベンジルアルコール、2−フェノキシエタノール、2−ブトキシエタノール、n−プロピルアルコール等が挙げられる。また界面活性剤としては、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ラウリルサルフェートナトリウム塩等のアニオン界面活性剤などが挙げられる。
しかし、有機溶媒等を含有すると、作業時の毒性、臭気等の衛生上の問題、火炎、ガス爆発等の安全性の問題、泡の発生等の作業性の問題、廃液による公害等の問題、コストの問題等が発生するため、実質上有機溶媒を含まないものが好ましい。ここでいう「実質上有機溶媒を含まない」とは、前述の環境衛生、安全性、作業性等の点からみて不都合を生じる程度までは有機溶媒を含有しない意であり、その占める割合は2重量%以下、好ましくは0%である。
【0043】
本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は、特開昭54−8002号、同55−115045号、特開昭59−58431号の各公報に記載されている方法で製版処理することができる。すなわち、現像処理後、水洗してから不感脂化処理、またはそのまま不感脂化処理、または酸を含む水溶液での処理、または酸を含む水溶液で処理後不感脂化処理を施してもよい。
また、上記のような製版処理は、特開平2−7054号、同2−32357号に記載されているような自動現像機で行なうことが好ましい。なお、製版工程の最終工程で所望により塗布される不感脂化ガムとしては、特公昭62−16834号、同62−25118号、同63−52600号、特開昭62−7595号、同62−11693号、同62−83194号の各公報に記載されているものが好ましい。
【0044】
上記のように、画像露光、現像処理、必要に応じてその他の製版処理をして得られた平版印刷版は、一般に、印刷機にかけ、湿し水処理して、印刷に供される。
湿し水処理に用いられる湿し水としては、イソプロピルアルコールをはじめとする有機溶媒、水溶性樹脂、界面活性剤、無機の酸、塩、アルカリなどから選ばれた化合物を水に溶解させた水溶液が用いられる。これらは、従来から印刷作業で使用されているものであり、本発明の感光組成物を用いて得られた平版印刷版を使用する場合、特別の湿し水に変更する必要はない。湿し水組成物としては、例えば特開平2−258390号公報、特開平3−63187号公報、特開平4−161386号公報、特開平4−220398号公報、特開平4−235096号公報、特開平4−351593号公報、特開平5−116476号公報、特開平5−112085号公報、特開平7−125472号公報、特開平8−112980号公報、特開平8−132752号公報、特開平8−324151号公報、特開平8−337073号公報記載の組成物を挙げることができる。また珪酸のアルカリ金属塩やリン酸のアルカリ金属塩を使用したアルカリ性の湿し水を使用することも可能である。使用する湿し水のpHとしては、2〜12の間で使用されることが好ましく、特に好ましくは3〜11の間である。
【0045】
本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版においては、画像露光後、必要に応じて、現像処理工程を経ることなくそのまま印刷機にかけ、上記湿し水処理に際して現像を行うことができる。すなわち、湿し水処理は、印刷機を回転させながら平版印刷版に上記のような湿し水を供給することである。なお、この際、印刷版上にあらかじめインキが供給されていてもよい。本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は、画像露光後、かかる湿し水処理において、未露光部の感光層を除去して現像することができる。
上記のようにすれば、従来の現像処理工程を省略することにより製版工程を短縮することができ、印刷のコスト低減に有効である。また、このようにする場合であっても、印刷に用いる印刷インキとしては、特別なものを要せず、通常の印刷インキを用いることができる。
【0046】
【実施例】
以下、本発明について実施例により更に詳細に説明する。ただし、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。なお「%」は他に指定がない限り重量%を示す。
実施例1
(印刷版作成例1)
厚さ0.24mmの1S材のアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのパミストンの水性懸濁液を用いてその表面を砂目立した後、よく水で洗浄した。これを10%水酸化ナトリウム水溶液に70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%硝酸で中和洗浄後、VA =12.7V、VC =9.1Vの正弦波交番波形電流を用い、1%硝酸水溶液中で170クーロン/dm2 の陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続き30%の硫酸水溶液中に浸漬し、55℃で2分間デスマットした後、7%硫酸水溶液中で酸化アルミニウムの被覆量が1.8g/m2になるように陽極酸化処理を行った。その後70℃のケイ酸ナトリウムの3%水溶液に1分間浸漬処理し、水洗乾燥することにより表面を親水化処理したアルミ板を得た。
以上のようにして得られたアルミニウム板に次に示す感光液(I)をホイラーを用いて塗布し、乾燥重量1.0g/m2になるように80℃で2分間乾燥した。
【0047】
上記のようにして得られた感光性平版印刷版の上に、ステップウェッジ(濃度段差0.15、最高濃度15段)および網点ネガフィルムを重ね、米国ヌアーク社製プリンターFT26V2UPNS(光源;2KWメタルハライドランプ)で200カウント露光した。このようにして得られた印刷版を〔A−1〕とする。また〔A−1〕の板を、25℃の水道水に20秒間浸漬し、脱脂綿にて軽くこすった後、下記不感脂化液で不感脂化処理し、平版印刷版を得た。このようにして得られた印刷版を〔A−2〕とする。
不感脂化液
・アラビアガム 5g
・白色デキストリン 30g
・エチレングリコール 10g
・リン酸 3g
・水 952g
【0048】
実施例2
(印刷版作成例2)
実施例1のようにして得られたアルミニウム板にまず次に示す中間層液(I)をホイラーを用いて塗布し、乾燥重量0.02g/m2になるように80℃で30秒間乾燥した。
次に下記感光液(II)をホイラーを用いて塗布し、乾燥重量2.0g/m2になるように80℃で2分間乾燥した。
【0049】
【化10】
【0050】
上記のようにして得られた感光性平版印刷版の上に、ステップウェッジ(濃度段差0.15、最高濃度15段)および網点ネガフィルムを重ね、米国ヌアーク社製プリンターFT26V2UPNS(光源;2KWメタルハライドランプ)で200カウント露光した。このようにして得られた印刷版を〔B−1〕とする。また〔B−1〕の板を、実施例1と同様に処理し平版印刷版を得た。このようにして得られた印刷版を〔B−2〕とする。
【0051】
実施例3
(印刷版作成例3)
実施例1のようにして得られたアルミニウム板に下記感光液(III)をホイラーを用いて塗布し、乾燥重量1.5g/m2になるように80℃で2分間乾燥した。
上記のようにして得られた感光性平版印刷版の上に、ステップウェッジ(濃度段差0.15、最高濃度15段)および網点ネガフィルムを重ね、米国ヌアーク社製プリンターFT26V2UPNS(光源;2KWメタルハライドランプ)で200カウント露光した。このようにして得られた印刷版を〔C−1〕とする。また〔C−1〕の板を、下記の現像液(I)に25℃で20秒間浸漬し、脱脂綿にて軽くこすった後、水洗し、上記の不感脂化液で不感脂化処理し、平版印刷版を得た。このようにして得られた印刷版を〔C−2〕とする。
現像液(I)
・炭酸カリウム 14g
・炭酸水素カリウム 9g
・エチレンジアミンテトラ酢酸のナトリウム塩 4g
・水 973g
なお、上記現像液(I)のpHを測定したところ9.6であった。
【0052】
比較例1
(比較用印刷版作成例)
実施例3の感光液(III)において、N−〔6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル〕−2,3−ジメチルマレイミド/メタクリル酸のナトリウム塩=60/40(モル比)の共重合体の代わりに、N−〔6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル〕−2,3−ジメチルマレイミド/メタクリル酸=60/40(モル比)の共重合体(Mw=25000)を使用した他は実施例3と同様にして平版印刷版〔D−1〕および〔D−2〕を得た。
【0053】
実施例4、比較例2
(現像性評価)
実施例1〜3および比較例1で得られた平版印刷版〔A−2〕、〔B−2〕、〔C−2〕および〔D−2〕の現像後の未露光部の現像性を観察した。その結果を表1に示す。
【0054】
【表1】
【0055】
なお表1で、「現像性」は、現像後に未露光部の感光層の残存が認められないものを現像性良好とし、残存したものを残存ありとした。
【0056】
実施例5
(現像性評価)
実施例1で得られた印刷版〔A−1〕を25℃の種々の現像液に20秒間浸漬し、脱脂綿にて軽くこすった後水洗し、上記の不感脂化液で不感脂化処理した。このようにして得られた印刷版の現像後の未露光部の現像性を観察した。
現像液として使用した液の組成およびpHと、そのときの現像性の結果を表2に示す。
【0057】
【表2】
【0058】
表1および表2に示されるように、本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は水をはじめとするpH3〜11の水溶液で現像することができる。
【0059】
実施例6
(印刷実験)
実施例1〜3で得られた印刷版〔A−1〕〜〔C−2〕をハイデルベルグSOR−M印刷機にとりつけ、湿し水として下記湿し水(I)を用い、印刷機を回転させながら湿し水を供給することにより湿し水処理を行い、インキとして東洋インキ(株)のハイプラスMZシアンインキを用いて印刷した。
湿し水(I)
・イソプロピルアルコール 100g
・EU−3(富士写真フィルム(株)製エッチ液) 10g
・水 890g
このとき、500枚印刷時点での汚れ性、およびその後印刷を続けていったときの耐刷性を確認した。その結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
なお表3で、「汚れ」は、印刷時に本来無地の部分にインキが付着することを表す。また「耐刷性」は、印刷物に本来インキが付着する部分がかすれたりインキがつかなくなったり、あるいは本来無地の部分にインキが付着したりした場合に刷了とする。従って、枚数が多いほど耐刷性が良好であることを表す。
表3に示されるように、特に印刷版〔A−1〕、〔B−1〕および〔C−1〕の結果から明らかなように、本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は現像処理をすることなく印刷機にとりつけても、湿し水処理により良好に現像され、良好な印刷物を得ることができる。
【0062】
比較例3
(印刷実験)
比較例1で得られた印刷版〔D−1〕および〔D−2〕をハイデルベルグSOR−M印刷機にとりつけ実施例6と同様に印刷を行ったが、非画像部に汚れが発生し満足な印刷物を得ることはできなかった。
【0063】
実施例7、比較例4
(印刷版作成例および印刷実験)
実施例1に記載した感光性平版印刷版の上にステップウェッジ(濃度段差0.15、最高濃度15段)を置き、富士写真フイルム(株)製PSライトで1mの距離から1分間画像露光した。この画像露光の際、光を照射する前に真空引きを1分間行った場合と全く行わなかった場合との2種類を作成した(実施例7)。WO96/34316号公報中の実施例12の感光性平版印刷版を作成し、上記と同様に画像露光を行った。この場合にも、真空引きを行った場合と全く行わなかった場合の2種類を作成した(比較例4)。
以上のようにして得られた印刷版を、実施例6に記載したのと同様の方法で印刷を行い、500枚印刷したときのステップウェッジの段数を読み取った。その結果を表4に示す。
【0064】
【表4】
【0065】
なお、表4で「ステップウェッジの最高段数」とは、印刷物のステップウェッジでインキがのっている最も数値の大きい部分をステップウェッジの最高段数とし、この数値が2つ大きいと感度が2倍になっていることを意味する。
表4に示されるように、本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は、真空引きの影響を受けることがない。
【0066】
【発明の効果】
本発明の感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は、pH3〜11の中性領域の水または水溶液で現像することができる。また、画像露光後、現像処理工程を経ることなくそのまま印刷機にかけ、湿し水処理に際して現像を行うこともでき、従来の現像処理工程を省略して製版工程の短縮を計ることもできる。
Claims (4)
- マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基を側鎖に有する光架橋性ポリマー、増感剤および下記アルカリ性化合物(I)を含有する感光性組成物。
アルカリ性化合物(I):
一般式XOH、X2CO3 、XHCO3 、NR3R4R5 、Y(OH)2 およびYCO3 で表される化合物から選ばれた1種類ないし2種類以上の化合物〔式中、Xはアルカリ金属またはNR6R7R8R9 を表し、Yはアルカリ土類金属を表し、R3 からR9 はそれぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。〕。 - マレイミド基およびアルカリ水溶液で解離し得る酸基が塩を形成している基を側鎖に有する光架橋性ポリマーおよび増感剤を含有する感光性組成物であって、該塩がアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩またはNR6R7R8R9 (R6 からR9 は、それぞれ水素原子または置換されていてもよいアルキル基を表す。)で表わされるアンモニウム塩であることを特徴とする感光性組成物。
- 請求項2に記載の感光性組成物からなる感光層を親水性表面を有する支持体上に設けた感光性平版印刷版を、画像露光した後、pH3〜11の水または水溶液で未露光部の感光層を除去して現像を行うことを特徴とする平版印刷版の製造方法。
- 現像が、画像露光後の感光性平版印刷版を印刷機に取り付けた後、湿し水処理と同時に行われる請求項2に記載の感光性組成物からなる感光層を親水性表面を有する支持体上に設けた平版印刷版の製造方法。
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