JP3838378B2 - 積層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は積層体に関する。詳しくは、レインコート、ジャンパー、ゴルフウェアー等の雨水を防ぎ、かつむれないように通気性を保った衣料材料として用いて好適な積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
通気性を有し、水滴を通さない材料として、ポリオレフィン樹脂に無機充填剤等を添加し、フィルム状に成形し、延伸して微小な亀裂を生ぜしめ、通気性を持たせたり、ポリオレフィン樹脂に溶剤で抽出可能な物質を混入してフィルム状に成形し、後で溶剤処理して多孔フィルムとしたものが用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにして得た通気性を有し、水滴を通さないフィルムは、レインコート、ジャンパー、ゴルフウェアー等の用途が考えられるが、これらの衣料品とするためには衣服の形に縫製やヒートシール等により作り上げる必要がある。このため、フィルムには縫製やヒートシールに堪える強度が要求されるが、ポリオレフィンからなる薄膜は単独ではこの要求を満さない。特に、この通気性・防水フィルムを糸で縫製すると縫製部分に水が染み込むことがあるので、ヒートシールで衣服等に組立得る素材が求められている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、ヒートシールによる接合が容易で衣服としての強度も満足し、かつ通気性、防水性を満足する積層体を提供するべく鋭意検討を重ねた結果、特殊の積層体とすることにより問題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
本発明の要旨は、透気度が30〜3,000秒/100ml、透湿度が500〜20,000gH2O/日・m3 、耐水圧が500mmH2O以上、平均孔径が0.01〜50μの微孔を有し、空隙率が10〜70%で、厚さが10〜200μであるポリオレフィン系多孔フィルムと、ポリオレフィン系不織布と、ポリオレフィン系割繊維不織布とを、順次積層し、該割繊維不織布側に加熱ロールを接触させ、該多孔性フィルム側を冷却ロールとして押圧する熱融着により一体化してなる通気性積層体、及び該通気性積層体を所定形状に裁断後、ヒートシール接合して成る通気性防水衣料に存する。
【0006】
本発明で用いられる多孔性フィルムは通気性防水フィルムである。通気性防水フィルムとは空気、水蒸気等の気体に対して透過性を有し、且つ水滴(液体)に対し非透過性を有するフィルムで、上記性能を有するものであれば広い範囲から選ばれるが、好ましくは透気度30〜3,000秒/100ml、透湿度500〜20,000gH2O/日・m2 、耐水圧500mmH2O以上、平均孔径が0.01〜50μ、空隙率が10〜70%、厚さが10〜200μの性能のフィルムが良い。
【0007】
ここで、透気度はJIS−P−8117に規定する方法、透湿度はJIS−Z−0208条件B(温度:40℃)に規定する方法、また、耐水圧はJIS−L−1092A法により測定される値、平均孔径は水銀圧入法を用いたポロシメーターで測定した値、空隙率はフィルム重量と体積を測定し、原料の密度を考慮して計算によって求めた値である。透湿度が小さすぎると被覆内環境が過湿になり易く衣類等とした場合に不快感があり、又、耐水圧が小さいと、降雨の場合雨水が洩れ易くなり、雨具等の用途に適さない。
【0008】
フィルム厚に関しても特に制限はないが、実用上10〜00μが好ましい。フィルム材質についても特に規定されるものではないが、通常、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂製フィルムが好適に使用される。かかるフィルムは次記の方法で製造することができる。ポリオレフィン樹脂(A)はエチレンもしくはプロピレンのホモポリマー又はエチレンもしくはプロピレンと他のコモノマー(炭素数4以上の二重結合を分子内に1個以上有する化合物)とのコポリマーからなり、密度(ρ)0.930g/cm3 以下、メルトインデックス(MI)2g/10分以下のポリオレフィン系熱可塑性樹脂が好ましい。たとえば低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、密度0.910g/cm 3 以下の超低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン−メタアクリル酸エステルもしくはこれらの混合物等いずれでも良いが、好ましくは密度0.91−0.95g/cm3 の線状低密度ポリエチレン50−100重量部と密度0.91g/cm3 未満のエチレン−α−オレフィン共重合体50−0重量部とからなるρ0.930g/cm3 以下、MI2以下のポリオレフィン系熱可塑性樹脂である。
【0009】
線状低密度ポリエチレンは、エチレンと他のα−オレフィンとの共重合体であり、例えばエチレンと、その4〜17重量%程度、好ましくは5〜15重量%程度の1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテン等の他のα−オレフィンとを、中低圧法高密度ポリエチレン製造に用いられるチーグラー型触媒又はフィリップス型触媒を用いて共重合することにより製造される。
【0010】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体としては、通常、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体であって、その密度が0.91g/cm3 未満のものが好ましく、より好ましくは0.85〜0.90g/cm3 のものである。エチレンと共重合させる炭素数3以上のα−オレフィンとしてはプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン等が挙げられ、これらと共に1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、エチリデンノルボルネン等の非共役ジエンを使用することもできる。
【0011】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体は、チーグラー型触媒、中でもオキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム等のバナジウム化合物と有機アルミニウム化合物とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより製造することができ、共重合体中のエチレン含有量が40〜90モル%の範囲であり、α−オレフィンの含有量が10〜60モル%の範囲であるのが望ましい。
【0012】
上記エチレン−α−オレフィン共重合体の市販品としては例えば、CdF Chimie E.P.社のNORSOFLEX(FW1600,FW1900,MW1920,SMW2440,LW2220,LW2500,LW2550);日本ユニカー社のフレックスレジン(DFDA1137,DFDA1138,DEFD1210,DEFD9042);三井石油化学社のタフマー(A4085,A4090,P0180,P0480)、日本合成ゴム社のJSR−EP(EP02P,EP07P,EP57P)などが挙げられる。
【0013】
単独もしくは混合物であるポリオレフィン樹脂(A)の密度(ρ)は0.930g/cm3 より大きいと、可塑剤とラジカル発生剤の相乗効果が小さく引裂強度が向上しない。
またMIは2g/10分より大きいと、フィルムの引裂強度が低下し、また成形安定性が低下する。
【0014】
本発明方法においてメルトインデックス(MI)とはJIS−K−6760の引用規格であるJIS−K−7210の表1の条件4に準拠して測定した値である。
なお、ポリオレフィン樹脂には、常法に従い、熱安定剤、紫外線安定剤、顔料、帯電防止剤、蛍光剤等を添加しても差支えない。
【0015】
次に成分(B)の充填剤としては、無機及び有機の充填剤が用いられる。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、アスベスト粉、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライト、珪酸白土等が使用され、特に炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、珪藻土、硫酸バリウム等が好適である。
【0016】
有機充填剤としては、木粉、パルプ粉等のセルロース系粉末等が使用される。
これらは単独で又は混合して用いられる。
充填剤の平均粒径としては、30μm以下のものが好ましく、10μm以下のものが更に好ましく、0.8〜5μmのものが最も好ましい。
粒径が大きすぎると延伸物の気孔の緻密性が悪くなり、又粒径が小さすぎると、樹脂への分散性が悪く、成形性も劣る。
【0017】
充填剤の表面処理は、樹脂への分散性、更には延伸性の点で、実施されている事が好ましく、脂肪酸又はその金属塩での処理が好ましい結果を与える。
成分(C)の炭化水素化合物としては、常圧での沸点が200℃以上、かつ融点が100℃以下のものが用いられる。
例えば、液状またはワックス状の炭化水素重合体や、ジペンタエリスリトールのエステル化物を用いるのが良い。
【0018】
液状またはワックス状の炭化水素重合体としては、液状ポリブタジエン、液状ポリブテン、液状ポリイソプレン及びそれらの誘導体が挙げられる。
なかでもカルボキシル基あるいは水酸基末端液状ポリブタジエンが用いられ、水酸基末端液状ポリブタジエンの誘導体、例えば末端がイソシアネート変性、無水マレイン酸変性、エポキシ基変性等の液状物も用いられる。
【0019】
更には液状ポリブタジエンを水素添加した液状のポリブタジエン水添物、水酸基末端液状ポリブタジエンを水素添加したポリヒドロキシ飽和炭化水素が用いられる。該ポリヒドロキシ飽和炭化水素は、1分子当たり少なくとも1.5個の水酸基を有する主鎖が飽和したまたは大部分飽和した炭化水素重合体である。これらの数平均分子量は400〜20,000、さらには500〜10,000が好ましい。
【0020】
またカルボキシル基末端液状ポリブタジエンの水添物を用いてもよい。
エポキシ基含有有機化合物も用いられ、例えばエポキシ化アマニ油、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油、エポキシ樹脂、好ましくは硬化剤を含まない液状エポキシ樹脂等のエポキシ系可塑剤が挙げられる。
更に液状又はワックス状の炭化水素重合体あるいはエポキシ基含有有機化合物は、1〜100重量部、好ましくは1〜70重量部である。エポキシ基含有有機化合物は、これを単独で用いるより、炭化水素系重量体との併用とする方が好ましい。
【0021】
液状またはワックス状の炭化水素重合体又はエポキシ基含有有機化合物を配合する際にはポリオレフィン樹脂100重量部に対して100重量部を越えるとポリオレフィン樹脂の持つ特性が薄れ満足な混練性、フィルムの成形性および延伸性を確保することが出来ない。
第三成分としては、他にジペンタエリスリトールの全又は部分エステル化物等も好適に用いられる。ジペンタエリスリトールのエステル化物は、ジペンタエリスリトールとカルボン酸の部分エステルであるのが好ましい。代表的カルボン酸としては炭素数1〜30の脂肪族モノまたはジカルボン酸および炭素数7〜16の芳香族モノまたはジカルボン酸が挙げられる。成形性、延伸性の点から特に脂肪族モノカルボン酸が好ましい。
【0022】
これらの例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、イソカプロン酸、2−エチルブタン酸、エナント酸、カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、エイコサン酸、ベヘン酸、セロチン酸、メリシン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族カルボン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。ジペンタエリスリトールの単分子部分エステルの場合は上記モノカルボン酸を単独又は混合して使用できる。また、ジカルボン酸を使用する場合はジペンタエリスリトール1モルに対し0.5モル以下が好ましく、残った水酸基は相当するモル数のモノカルボン酸を使用して部分エステルとする。
【0023】
また、該ジペンタエリスリトールの部分エステル1分子当りの残存OH基数の割合としては3%から70%の間がよく、3〜50%の間が特に好ましい。3%未満では延伸性及び印刷性の改良効果が不十分であり、70%を越えるとフィルムの製膜性が低下する。
ジペンタエリスリトールのエステル化物の配合割合は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、1〜30重量部が好ましく、3〜20重量部が更に好ましい。
【0024】
配合量が多すぎると満足すべき混練性が得られず、フィルムの成形性、延伸性を確保できない。
特に、分子内にエステル結合もしくはアミド結合を有する分子量100以上、かつ常圧での沸点が200℃以上かつ融点が100℃以下の化合物である。例えば、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ジオクチルフタレート、トリオクチルトリメリテート等が好ましい。
【0025】
より好ましくは、分子量350以上、かつ常圧での沸点が250℃以上、融点が50℃以下で炭素数6以上のカルボン酸と炭素数5以上のアルコールとからなるエステル化合物、更に好ましくは、分子量350以上、かつ常圧での沸点が250℃以上、融点が30℃以下で、芳香族カルボン酸と炭素数6以上のアルコールとからなるエステル化合物、例えば、DOP、トリオクチルトリメリテート、DIDP等である。
【0026】
融点は100℃より高いとラジカル発生剤での変性による引裂強度向上の効果が少なく、また沸点が200℃未満では、成形加工時の発煙、発泡により成形・延伸性が低下する。
また分子量が小さいと、フィルムから可塑剤のブリーディングが早く好ましくない。
【0027】
次に、必要に応じ本発明に使用される成分(D)のラジカル発生剤としては、半減期1分となる分解温度が130〜300℃の範囲のものが好ましく、例えばジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシン、α,α′−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジベンゾイルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド等の過酸化物が挙げられる。
【0028】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して充填剤(B)100〜400重量部、炭化水素化合物(C)1〜100重量部、及び必要に応じラジカル発生剤(D)0.0001〜0.1重量部の範囲で用いる。
充填剤(B)の割合が100重量部に満たないと、延伸したフィルムに気孔が充分形成されず、多孔化度合が低くなる。また、充填剤の割合が400重量部を超えると混練性、分散性、フィルム又はシート成形性が劣り、更に延伸物の表面強度が低下する。
【0029】
本発明において、特に好ましい配合割合は、ポリオレフィン樹脂(A)100重量部に対して充填剤(B)120〜300重量部である。
炭化水素化合物(C)は1重量部よりも少ないと、引裂強度向上の効果が無く、100重量部より多いと、混練性、分散性が悪化し、フィルム成形性の低下、延伸性を確保できない。好ましくは5重量部以上50重量部以下である。
【0030】
ラジカル発生剤(D)は0.0001〜0.1重量部の範囲から選ばれ、この範囲よりも少ない場合は炭化水素化合物との相乗効果による引裂強度の向上は得られず、またこの範囲よりも多い場合はメルトインデックスが低くなり過ぎて、フィルム成形時に膜切れが起りやすく、かつフィルム表面に肌荒れが生起するので好ましくない。
【0031】
本発明においては、ポリオレフィン樹脂(A)、充填剤(B)、可塑剤(C)、及びラジカル発生剤(D)を、通常は、例えば次のI又はIIの方法により前記の量比で混合し、次いで混練してペレット化した後、Tダイ成形やインフレーション成形して未延伸フィルムとする。
方法I:ポリオレフィン樹脂、充填剤、可塑剤及び、ラジカル発生剤を混合し、押出機、バンバリーミキサー等の混練機を用いて混練した後、ペレット化し、このペレットを用いてTダイ成形やインフレーション成形する。
方法II:ポリオレフィン樹脂に、多量のラジカル発生剤0.5〜1%(5000〜10000ppm程度)を配合し、ラジカル発生剤がポリオレフィンと殆ど反応しない温度で、しかもポリオレフィンの融点以上の温度において溶融混練してペレット状としたマスターバッチを予め調整し、このマスターバッチを、ポリオレフィン樹脂、充填剤及び可塑剤と混合し、混練した後ペレット化し、このペレットを用いてTダイ成形やインフレーション成形する。
【0032】
上記I又はIIに示す方法に従って、ポリオレフィン樹脂をラジカル発生剤と共に加熱下(好ましくはラジカル発生剤の半減期が10分となる温度以上の温度で)混練処理すると、ラジカル発生剤による架橋反応が生起しポリオレフィンが分子間カップリングして高分子量成分が増加し、かつメルトインデックスの低下した変性ポリマーが得られる。この変性ポリマーは、変性前のポリマーに比べてインフレーション成形を用いた場合には横方向の配向がかかり易く、このようにして得られたフィルムは、これを延伸処理した場合に、引張り強度及び衝撃強度が著しく向上する。
【0033】
ポリオレフィン樹脂、可塑剤、ラジカル発生剤及び充填剤を混合するには、ドラム、タンブラー型混合機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等が使用されるが、ヘンシェルミキサーのような高速攪拌型の混合機が望ましく、ポリエチレンは通常10〜150メッシュ、特に20〜60メッシュのパウダーの形態で供給するのが好ましい。得られた混合物の混練は、例えばスクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、二軸型混練機等の周知の混練装置を用いて実施される。
【0034】
本発明においては、上記で得た混合物からTダイ法またはインフレーション法により未延伸フィルムを成形し、次いでこの未延伸フィルムを延伸処理する。
インフレーション成形の場合は、ブローアップ比(BUR)を2〜8で成形する。
好ましくは、ブローアップ比3〜6、フロストラインの高さをダイの環状スリットの直径の2〜50倍にする。さらに好ましくはフロストラインの高さをダイの環状スリットの直径の5〜20倍の範囲の条件下で行なわれる。ブローアップ比が上記範囲よりも低いとフィルムの引張り強度及び衝撃強度が低下し、上記範囲よりも高いとバブルの成形安定性が低下するので好ましくない。また、フロストラインの高さが上記範囲よりも低いとフィルムの引張り強度が低下し、上記範囲よりも高いとバブルの成形安定性が低下するので好ましくない。
【0035】
Tダイ法またはインフレーション法により成形された未延伸フィルムは、次いで少なくとも一軸方向、好ましくは縦方向(フィルムの引き取り方向)に一軸延伸される。一軸延伸には通常ロール延伸法が採用されるが、チューブラー延伸法で一軸方向(引き取り方向)を強調させた形であってもよい。また、延伸処理は一段でも二段以上の多段でも差支えない。
【0036】
延伸処理は樹脂組成物の融点より100℃低い温度から融点より20℃低い温度の範囲、特に樹脂組成物の融点より90℃低い温度から融点より50℃低い温度の範囲で実施するのが好ましく、この範囲より低い温度ではフィルムに延伸斑が発生し、またこの範囲より高い温度ではフィルムの多孔性が低下する傾向がある。
【0037】
延伸倍率は1.2〜8倍であることが必要であり、この範囲未満では延伸フィルムの多孔化及び引張り強度が不充分である。また延伸倍率が8倍を超えると、フィルムは縦方向への過度の分子配向を有するものとなり、フィルムの面強度が低下して好ましくない。なお、一軸延伸後に熱処理すればフィルムの寸法精度を安定化することができ、また公知のコロナ処理、フレーム処理等の表面処理を施すこともできる。
【0038】
本発明の積層体は、上述の方法によって得られた柔軟性に富む多孔フィルムに2種の不織布を熱溶着により貼り合せる。不織布はポリオレフィン系不織布とポリオレフィン系割繊維不織布とを用いる。ポリオレフィン系不織布は、その目付が5〜50g/m2 のものが用いられ、ポリオレフィン系割繊維不織布は、その目付が5〜20g/m2 のものが用いられる。
【0039】
ポリオレフィン系不織布としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等を用いた上記の目付の不織布であれば良いが、衣料品とする際のヒートシールによる組立の際ヒートシール部分が弱くなるのを防ぐため、芯材としてポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等を用いてその周囲をポリオレフィン樹脂で被覆した繊維を用いた不織布が好適である。このポリエステルの芯材はヒートシールに際して溶融せずに形状を保持することによって、ヒートシール強度の低下を防ぐものと考えられる。
【0040】
ポリオレフィン系割繊維不織布とはポリエチレン等のポリオレフィン樹脂からなる延伸フィルムに細かな割れ目を入れて割繊維としたものを用い、この割繊維を縦横に積層して熱融着により不織布としたもので、上記したポリオレフィン系不織布とは構造的に異なる。このポリオレフィン系割繊維不織布は、引裂強度に極めて優れると云う特徴を有する。
【0041】
このような多孔フィルムと不織布及び割繊維不織布とは熱融着により積層される。空隙の多い不織布を多孔フィルムと割繊維不織布との間に介在させ全面で溶着しても、多孔フィルムの透気度は大幅には変わらない。熱接着温度や圧力が高すぎると多孔性フィルムの開孔が潰れてしまうので注意を要する。熱融着は多孔フィルムと不織布と割繊維不織布とを重ね合せ、割繊維不織布側に加熱ロールを接触させ、多孔フィルム側を冷却ロールとし、押圧することにより簡単に行ない得る。積層体としての透気度等の物性は前記したポリオレフィン系多孔フィルムの物性の範囲にあるのが良い。
【0042】
上述した構成の積層体によると、多孔フィルムと不織布と割繊維不織布とを貼り合せている接着部が極めて微細であることや、また多孔フィルムの厚さなどを要因として多孔フィルムの表面が非常に平滑となり、その結果当該表面への印刷も極めて鮮明にでき、しかも全体として風合は著しく向上し且つ通気性を損うことはない。
【0043】
かかる、積層体は、ヒートシールによってもヒートシール部分の強度が低下することがなく、該積層体を用いたレインコート、ジャンパー、ゴルフウエアー等の衣料品は通気性を有するのでむれることがなく、ヒートシールにより作れるので縫製部分から水が染み込むようなこともない優れたものとなる。
【0044】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に制約されるものではない。
【0045】
実施例1、比較例1,2
(1)線状低密度ポリエチレン{メルトインデックス(MI):1.0g/10分、流動比:19、密度:0.921g/cm3 、共重合成分:1−ブテン、共重合量:10重量%、融点:120℃}を40メッシュのパウダーに粉砕したものを80重量部とエチレン−プロピレン共重合体(EPR,日本合成ゴム社製EP07P)を同じく40メッシュのパウダーに粉砕したものを20重量部とをヘンシェルミキサー中で攪拌混合し、次いでこれに可塑剤としてジオクチルフタレート4重量部とラジカル発生剤2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3−ヘキシンを0.03重量部攪拌しながら添加混合する。
【0046】
更に炭酸カルシウム(平均粒径1.2μm、脂肪酸処理)を200重量部添加し、攪拌混合した。
かくして得られた混合物を、二軸混練機DSM−65(Double Screw Mixer,日本製鋼所(株)製)を用いて混練し、造粒した。
これを40mmφ押出機によりインフレーション成形し、厚さ100μmのフィルムに製膜した。押出条件は下記のとおり。
【0047】
【表1】
シリンダー温度:170−190−210−230℃
ヘッド、ダイス温度:200℃
ダイス直径:100mm
引取速度:8m/min
ブローアップ比:3
フロストライン高さ:700mm
折り径:471mm
【0048】
かくして得られたフィルムを引取方向にスリットしたものをロール延伸機により一軸延伸を行った。
延伸条件は下記のとおりとした。
【0049】
【表2】
延伸温度:60℃
延伸速度:11.0m/min
延伸後のフィルム厚み:65μm
得られたフィルムの物性評価は下記のとおり。
【0050】
【表3】
透気度 500秒/100ml、
透湿度 7000 g 2 /m2/24Hr、
耐水圧 2000mm H2O以上、
平均孔径 0.7μ
空隙率 40%、
引裂強度 60g/1枚、
成形性 ◎、
柔軟性 ◎、
延伸性 ◎
【0051】
物性評価は下記によって行なった。
1)透湿度:ASTM E26−66(E)に準する。
2)引裂強度:JIS P 8116に準じ、フィルムの引取方向を測定し、1枚当りの強度をgで求める。
3)成形性:目視により次の基準により判定した。
◎:バブル安定,ダイライン無し
○: 〃 ,ダイライン有
△:フィルム幅変動
×:成形不可
4)柔軟性:手の感触で、次の基準により判定した。
◎:極めて柔らかい
○:柔らかい
△:少し硬い
×:硬い
5)延伸性
◎:切断なし、均一延伸、延伸ムラなし
○:切断なし、延伸ムラ、殆どなし
△:切断なし、延伸ムラ、ややあり
×:切断又は延伸ムラ大
【0052】
このポリエチレン製多孔フィルムと、ポリエチレン製不織布(中心にポリエチレンテレフタレート芯が入ったもの、目付20g/m2 )とポリエチレン製割繊維不織布(目付18g/m2 )とをこの順に重ね合せ、145℃の加熱ロールと90℃の冷却ロールの間に割繊維不織布が加熱ロールに接する側として、ロール間圧力10kg/cm、ラミネート速度60m/分で熱融着した。得られた積層体は透気度650秒/100ml、透湿度6500gH2O/日・m2 、耐水圧3000mmH2O、引裂強度1400gであった。ヒートシールによりジャンパー状の衣服を作成したが、充分に使用に耐えた。
比較例1
実施例1において、ポリエチレン製割繊維不織布を使用することなく、他は実施例1と同様にして積層体を製造した。得られた積層体は透気度800秒/100ml、透湿度6000gH 2 O/日・m 2 、耐水圧3000mmH 2 O、引裂強度500gであった。該積層体は引裂強度に劣り、防水衣服の加工には不適切であった。
比較例2
実施例1において、熱融着処理を、割繊維不織布側を150℃、多孔性フィルム側を120℃としたスチールカレンダーロールを用いて実施した他は、実施例1と同様にして積層体を製造した。得られた積層体は透気度20000秒/100ml以上、透湿度200gH 2 O/日・m 2 、耐水圧5000mmH 2 O以上、引裂強度1400gであった。該積層体は多孔性フィルム側に部分的な融着現象が観察され、透湿度に劣り、防水衣服の加工には不適切であった。
比較例3
実施例1において、熱融着処理を、多孔性フィルム側及び割繊維不織布側の両側とも130℃としたスチールカレンダーロールを用いて実施した他は、実施例1と同様にして積層体を製造した。得られた積層体は透気度20000秒/100ml以上、透湿度200gH 2 O/日・m 2 、耐水圧5000mmH 2 O以上、引裂強度1400gであった。該積層体は多孔性フィルム側に部分的な融着現象が観察され、透湿度に劣り、防水衣服の加工には不適切であった。
【0053】
実施例2
ポリエチレン製不織布として目付が15g/m2 のもの、ポリエチレン製割繊維不織布として目付が13g/m2 のものを用いて、多孔フィルムは実施例1と同じものを用い、加熱ロール温度を150℃としたほかは実施例1と同様にして積層体を得た。得られた積層体の透気度は700秒/100ml、透湿度6300gH 2 O/日・m2 、耐水圧3300mmH 2 O、引裂強度1200gであった。ヒートシールによりレインコート状の衣服を作成したが、充分に使用に耐えた。
【0054】
【発明の効果】
本発明の積層体は、ヒートシールによってもヒートシール部分の強度の低下することのない通気性・防水シートが得られ、雨天に着る衣料材料等として用いて大変好適な材料となる。

Claims (2)

  1. 透気度が30〜3,000秒/100ml、透湿度が500〜20,000gH2O/日・m2 、耐水圧が500mmH2O以上、平均孔径が0.01〜50μ孔を有し、空隙率が10〜70%で、厚さが10〜200μであるポリオレフィン系多孔性フィルムと、ポリオレフィン系不織布と、ポリオレフィン系割繊維不織布とを、順次積層し、該割繊維不織布側に加熱ロールを接触させ、該多孔性フィルム側を冷却ロールとして押圧する熱融着により一体化してなる通気性積層体。

  2. 透気度が30〜3,000秒/100ml、透湿度が500〜20,000gH 2 O/日・m 2 、耐水圧が500mmH 2 O以上、平均孔径が0.01〜50μmの微孔を有し、空隙率が10〜70%で、厚さが10〜200μmであるポリオレフィン系多孔性フィルムと、ポリオレフィン系不織布と、ポリオレフィン系割繊維不織布とを、順次積層し、該割繊維不織布側に加熱ロールを接触させ、該多孔性フィルム側を冷却ロールとして押圧する熱融着により一体化してなる通気性積層体を、所定形状に裁断後、ヒートシール接合して成る通気性防水衣料。
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