JP4064071B2 - 糞尿堆積物用又は工事現場の盛土用の被覆材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は透湿性シートに関する。更に詳しくは、工事現場の盛土や乳牛、肉牛、羊、山羊、馬、豚などの家畜が排泄する糞尿を、乾燥・発酵させる目的で使用される被覆材等に応用される透湿性シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
透湿性シートは各種用途において利用されているが、近年、土壌や糞尿堆積物の表面の被覆材として利用されつつある。例えば、特開平10ー203884号では、多孔質布、または、多孔質ポリオレフィンフィルムと多孔質布との積層体よりなる、家畜の糞尿堆積物の表面を被覆してこの糞尿堆積物を乾燥・発酵させるための糞尿堆積物被覆材が提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように主に屋外で長期間使用される場合、適度の透湿性、透気性を有しつつ、且つ、より耐候性に優れたシート部材が要求される。そこで、本発明の目的は、耐候性に優れた透湿性シートを提供することにある。例えば、野外のパドックなどに堆積した家畜の糞尿の堆積物を被覆し、雨水が流入するのを防止し糞尿堆積物の発酵を効率的に促進させることができ、高い耐候性をもった被覆材を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、透湿性シートにカーボンブラック等の遮光性顔料を適量含有させたものであれば、かかる課題を解決できることを見い出し、本発明に達した。即ち、本発明の要旨は、透湿度が300g/m2.24hr以上であり、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を含有し、且つ、遮光性顔料を配合して表面の色差L*値が70以下よりなる、ポリオレフィン系樹樹、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びジエン系樹脂から選ばれた多孔質熱可塑性樹脂フィルムの透湿性シートを糞尿堆積物又は工事現場の盛土の表面被覆に供せられる家畜の糞尿堆積物用又は工事現場の盛土用の被覆材に存する。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に係る透湿性シートは、その構成上の特徴から区分すると、多孔質熱可塑性樹脂フィルム単独、多孔質布単独、及び多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布との積層体のいずれかである。いずれの場合も、透湿性シート全体の透湿度は300g/m2・24hr以上、好ましくは2000〜10000g/m2・24hrである。特に、糞尿堆積物被覆材に使用する場合は、1000g/m2・24hr以上であることが望ましい。透湿性シートを糞尿堆積物被覆材に使用する場合、透湿度が1000g/m2・24hr未満であると、該シートを糞尿堆積物の被覆用に使用した際に、糞尿堆積物から蒸発した水蒸気を十分に通さず、透湿の機能を十分に発揮しないので好ましくない。なお、透湿度の上限は20000g/m2・24hr程度で、この値を超えると、糞尿から蒸発した水蒸気は十分に通すが、雨水なども透過し易くなるので好ましくない。
【0006】
また、本発明に係る透湿性シートは、その構成部材である、多孔質熱可塑性樹脂フィルム及び多孔質布のうち少なくとも一つの部材の表面の色差L*値が70以下、好ましくは50以下のものである。通常はシート片面の全表面が色差L*値が70以下であるが、部分的に70を超える部分が存在してもよい。例えば、線状や格子状や水玉のような模様などの部分で色差L*値が70を超える部分があってもよい。但し、色差L*値が70を超える部分は、全表面の40%以下であることが好ましい。尚、本発明でいう色差L*値(−)は、JIS K−7105準拠したもので、下式で示されるものである。
L*値=116(Y/Y0)1/3−16
【0007】
次に、本発明の透湿性シートの構成材料となる多孔質熱可塑性樹脂フィルムについて説明する。
【0008】
原料熱可塑性樹脂(a)
原料となる熱可塑性樹脂(a)は、透湿度が300g/m2・24hr以上の物性を発現するものであれば特に限定するものではない。例えば、本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリー4メチルペンテン等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸メチル等のポリアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリブタジエン等に代表されるジエン系樹脂等が挙げられる。
【0009】
これらの樹脂のうち、安価な点に注目するポリオレフィン樹脂が好ましい。ポリオレフィン樹脂として特に好ましくは、線状低密度ポリエチレンと分岐状低密度ポリエチレンの混合物である。線状低密度ポリエチレンは、炭素数が3〜8の分子骨格であるα−オレフィンとエチレンとの共重合体であり、密度が0.910〜0.940g/cm3、メルトインデックスが0.5〜5g/10分のものが好ましい。密度が0.910g/cm3未満になると均一延伸性が低下し、0.940g/cm3を超えると延伸フィルムの柔軟性が損なわれる。また、メルトインデックスが0.5g/10分未満になるとフィルムを押し出すときに異常流動により厚みが均一なフィルムを得ることが難しくなり、5g/10分を超えると均一延伸性が悪化する。
【0010】
分岐状低密度ポリエチレンは、エチレンを公知の高圧法で重合させることによって得られるもので、メルトインデックスが0.1〜4g/10分、密度が0.915〜0.925g/cm3のものが好ましい。メルトインデックスが0.1g/10分未満になると前者の線状低密度ポリエチレンと混ざり合いが悪くなり、4g/10分を超えると均一厚みのフィルムが得られなくなる。また、密度が0.925g/cm3を超えると均一厚みのフィルムが得られなくなる。
【0011】
充填剤 ( b )
熱可塑性樹脂(a)に配合する充填剤(b)は、無機充填剤および有機充填剤のいずれでもよく、これらを2種類以上混合して使用してもよい。無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリン、シリカ、珪藻土、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、水酸化アルミニウム、酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミナ、マイカ、アスベスト粉、ガラス粉、シラスバルーン、ゼオライト、珪酸白土などが挙げられる。中でも、炭酸カルシウム、タルク、クレー、シリカ、珪藻土、硫酸バリウムなどが好適である。
【0012】
有機充填剤としては、木粉、パルプ粉などのセルロース系粉末が挙げられる。これらは単独または混合して用いられる。充填剤の平均粒径としては、30μm以下のものが好ましく、中でも0.7〜10μmが好ましい。粒径が大き過ぎると延伸物の孔の緻密性が悪くなり、また、粒径が小さ過ぎると樹脂へ分散性が悪く、成形性も劣る。上記の充填剤(b)は、樹脂(a)への分散性、更には樹脂(a)の延伸性の観点から、表面処理剤によって表面処理されていることが好ましい。表面処理剤としては、脂肪酸またはその金属塩などが挙げられる。
【0013】
遮光性顔料 ( c )
本発明において最も大きな特徴とするところは、熱可塑性樹脂(a)に遮光性顔料(c)を配合することである。これにより、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの表面を、色差L*値が70以下、好ましくは50以下に調整することができる。かかる遮光性顔料としてはカーボンブラックや群青などがあげられる。例えば、黒色顔料としてはカーボンブラックや炭素粉末や黒鉛粉末などがあげられる。中でもカーボンブラックが最も好ましい。カーボンブラックは、その製法によって特に限定されるものではなく、天然ガス、アセチレン、アントラセン、ナフタリン、コールタール、芳香族系石油留分などを不完全燃焼させて得られた、黒色炭素粉末を指し、一般にチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラックなどと言われているものが使用できる。粒子径も特に限定するものではない。
熱可塑性樹脂(a)に遮光性顔料を添加する際、それ自体を直接に配合することもできるが、分散性を良くする観点から流動性の良い熱可塑性樹脂とあらかじめ混練した遮光性顔料のマスターバッチを使うことが好ましい。マスターバッチ中の遮光性顔料の含有量は、通常10〜60重量%、好ましくは20〜50重量%程度で使用される。
【0014】
延伸助剤(d)
熱可塑性樹脂(a)には、上記成分の他にさらに必要に応じ、延伸助剤(d)を添加することができる。延伸助剤(d)としては、特定のエステル化合物、アミド化合物、側鎖を有する炭化水素重合体、シリコーンオイル、鉱油、ワックス類等を単独、或いは、2種類以上を混合して用いられる。その使用量は、熱可塑性樹脂(a)と充填剤(b)の合計量100重量部に対て、通常0.5〜10重量部である。この添加により、延伸性が向上し均一なフィルムを得ることができるので好ましい。
【0015】
上記のエステル化合物としてはアルコールとカルボン酸からなる構造のモノもしくはポリエステルであればいかなるものでもよく、ヒドロキシル基及びカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、エステル基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的には、ステアリルステアレート、ソルビタントリステアレート、エポキシ大豆油、精製ひまし油、硬化ひまし油、脱水ひまし油、エポキシ大豆油、極度硬化油、トリメリット酸トリオクチル、エチレングリコールジオクタノエート、ペンタエリスリトールテトラオクタノエート等が挙げられる。
【0016】
アミド化合物としては、アミンとカルボン酸からなる構造のモノもしくはポリアミド化合物であればいかなるものでもよく、アミノ基及びカルボニル基末端を分子内に残した化合物でも、アミド基の形で封鎖された化合物でもよい。具体的にはステアリン酸アミド,ベヘニン酸アミド,ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド,トリメチレンビスオクチル酸アミド,ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド,トリオクタトリメリット酸アミド、ジステアリル尿素,ブチレンビスステアリン酸アミド、キシリレンビスステアリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、ジステアリルフタル酸アミド、ジステアリルオクタデカ二酸アミド、イプシロンカプロラクタム等及びそれらの誘導体が挙げられる。
【0017】
側鎖を有する炭化水素重合体としては、ポリα−オレフィン類で、炭素数4以上の側鎖を有するオリゴマー類が好ましいが、エチレン−プロピレンの共重合体、例えば三井化学社製の商品名ルーカントやそのマレイン酸誘導体、イソブチレンの重合体、例えば出光石油化学社製の商品名ポリブテンHV-100、又はブタジエン、イソプレンのオリゴマー及びその水添物、1ーヘキセンの重合物、ポリスチレンの重合物及びこれらから誘導される誘導体,ヒドロキシポリブタジエンやその水添物、例えば,末端ヒドロキシポリブタジエン水添物(三菱化学社製、商品名ポリテールHA)等が挙げられる。
シリコーン油としては、例えばポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン等が挙げられる。鉱油としては、流動パラフィン、パラフィンワックス等が挙げられる。
【0018】
ヒンダードアミン系光安定剤 ( e )
熱可塑性樹脂(a)には、上記成分の他にさらに必要に応じ、ヒンダードアミン系光安定剤(e)を添加することができる。ヒンダードアミン系光安定剤(e)としては、SanoI LS-770、同LS-2626、同LS-765(商品名、いずれも三共社製)、Tinuvin144、同622、同622LD、同770、同120(商品名、いずれもチバカイギ-社製)、Chimasorb 944FL、同944LD、同119FL(商品名、いずれもチバガイギー社製)、アデカスタブ LA-57、同LA-77、同LA-62、同LA-67、同LA-63、同LA-68、同LA-82、同LA-87(商品名、いずれも旭電化社製)、SumisorbTM-061(商品名、住友化学工業社製)、Cyasorb UV-3346(商品名、ACC社製),、 Goodlite UV-3034(商品名、グッドリッチ社製)などが挙げられる。中でも、Tinuvin 622,同622LD(コハク酸ジメチル−1-(2−ヒドロキシエチル)一4−ヒドロキシ−2,2,6,6-テトラメチルピペリジン縮重合物)、Chimasorb 944FL、同944LD(ポリ[ [6-(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル],[(2,2,6,6−テトラメチル−4-ピペリジル)イミノ] ヘキサメチレン [(2,2,6,6−テトラメチルー4ーピペリジル)イミノ] ])が好適である。
【0019】
紫外線吸収剤(f)
熱可塑性樹脂(a)には、上記成分の他に、さらに必要に応じ、紫外線吸収剤(f)を添加することができる。紫外線吸収剤(f)としては、通常、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系またはベンゾエート系紫外線吸収剤が使用される。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2-(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアソール、2-[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α-ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(3-t−ブチル-5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2-(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、 2-(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'−ヒドロキン−5-t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0020】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2−ヒドロキシ−4-n−オクトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、p-t−ブチルフェニルサリシレート−2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2-(2−ヒドロキシ−3,5−ジ-t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール などが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジ−t−ブチルフェニル−3,5−ジ−t-ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどが遂げられる。中でも、2-ヒドロキシ−4-n−オクトキシベンゾフェノンが好適である。
【0021】
その他の添加物
本発明の多孔質熱可塑性樹脂フィルムの構成成分は、上記(a)〜(f)を主成分とするが、必要に応じて、一般に樹脂組成物用として用いられている各種の添加物、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、中和剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、スリップ剤、可塑剤等を配合してもよい。
【0022】
原料樹脂組成物の製造
原料樹脂組成物を製造するには、熱可塑性樹脂(a)100重量部に対して、充填剤(b)は25〜400重量部、好ましくは40〜300重量部、遮光性顔料(c)は0.1〜20重量部、好ましくは1〜10重量部配合する。延伸助剤(d)は任意成分であるが、使用する場合は、前記したように、熱可塑性樹脂(a)と充填剤(b)の合計量100重量部に対して、通常0.1〜10重量部である。
充填剤(b)の割合が25重量部未満であると、延伸したフィルムに気孔が充分形成されず、多孔化度合いが低くなり、また充填剤(b)の割合が400重量部を超えると混練性、分散性、フィルムの成形性が劣り、更に延伸物の表面強度が低下するので好ましくない。尚、フィルムを延伸して気孔を形成させる場合は、上記したように充填剤(b)を配合することが不可欠であるが、後記するように、フィルムに機械的手法で微細孔を形成させる場合は、充填剤(b)は使用しなくてもよい。
遮光性顔料(c)の使用量が0.1重量部未満では着色が充分ではなく、所定の色差L * 値を得ることができない。一方20重量部を超えると経済的に不利である上にフィルム強度も低下するので好ましくない。
【0023】
ヒンダードアミン系光安定剤(e)と紫外線吸収剤(f)は、添加する場合は、通常それぞれ0.1〜10重量部使用される。ヒンダードアミン系光安定剤(e)と紫外線吸収剤(f)の添加量が0.1重量部末満であると、製品の被覆材を長期使用する際に耐候性が不十分となり、また、10重量部を超えると、フィルム成形後のブリーディングが過多となり好ましくなく、併せて耐久性の向上効果も少ない。なお、ヒンダードアミン系光安定剤(e)と紫外線吸収剤(f)の使用割合は、用途においては単独でも良いが、通常1〜50:50〜1、好ましくは1〜10:10〜1である。
【0024】
熱可塑性樹脂、充填剤、遮光性顔料、各種の添加剤類などを混合するには、ドラム、タンブラー型混合機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどが使用されるが、ヘンシェルミキサーの様な高速攪拌型の混合機が望ましい。得られた混合物の混練は、例えばスクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサー、二軸型混練機などの周知の混練装置を用いることができる。
【0025】
熱可塑性樹脂フィルムの製造
熱可塑性樹脂フィルムは、様々な方法で作成することができる。その製法としては、フィルムに機械的に微細孔を開ける方法、熱可塑性樹脂と可塑剤との混練物からフィルムを製造した後に可塑剤を抽出する方法、熱可塑性樹脂フィルムの製膜後に延伸を繰り返して結晶界面から剥離させる方法、熱可塑性樹脂に充填剤を混ぜ製膜後に延伸する方法などが挙げられる。本発明の場合、特にその製法を限定するものではないが、充填剤(b)を使用し、製膜後に少なくともー軸方向に延伸する方法が好ましい。
【0026】
例えば、各原料を含む組成物を溶融・混練してべレット化した後、Tダイ法あるいはインフレーション法により成形して未延伸フィルムとする。このとき、可能であればペレット化せず直接製膜する方が好ましい。前記方法で調整した樹脂組成物からインフレーション成形法やTダイ成形法により、通常は厚さ20〜400μmの未延伸フィルムを製造し、次いで、これらの未延伸フィルムを延伸処理する方法により製造することができる。インフレーション成形法においては、通常、ブローアップ比(BUR)を1.2〜8の範囲とすることが好ましい。
【0027】
インフレーション成形法により製造した未延伸フィルムは、次いで、少なくとも縦方向(フィルムの引き取り方向)に一軸延伸される。未延伸フィルムを延伸する際には、公知方法である、ロール延伸法、チューブラ-延伸法などが用いられる。また、延伸するには1段延伸方式でも2段以上の多段延伸方式であってもよい。また、Tダイ成形法により製造された未延伸フィルムにおいても、少なくとも縦一軸延伸を行い、要すれば、横方向(シートの引き取り方向と直角の方向)に延伸する。
【0028】
未延伸フィルムを延伸する際の温度条件は、原料樹脂の種類、添加剤等の種類、量、フィルムの厚さなどにより変るが、通常使用する熱可塑性樹脂の融点の5℃以下の範囲で選ばれ、延伸倍率は縦・横それぞれ1.2〜8倍の範囲で選ばれる。なお、延伸工程終了後に熱処理すると、得られたフィルムの寸法精度を安定化することができる。このようにして得られるフィルムは、厚さが通常100μm以下、好ましくは30〜90μmである。
【0029】
次に、多孔質布について説明する。多孔質布は、透湿度が300g/m 2 ・24hr以上であれば良く、例えばスプリットヤーンから作製された割布、不織布、織布または網状物などであって、目付が10〜500g/m2程度のものが好適である。中でも、不織布が特に好ましい。これらの原料としては、ポリオレフイン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、レーヨンなどが用いられ、通常これら樹脂成分には、その耐候性、耐光性、耐久性などを向上させるために、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、着色剤などの各種の樹脂添加剤を配合するのが好ましい。また、強度をあげるために、上記の多孔質布を2種以上組み合わせても良いし、フラットヤーンと組み合わせても良い。上記の各種の樹脂添加剤としては、多孔質熱可塑性樹脂フィルムの製造に用いられた物と同様の物が使用できる。
【0030】
不織布は、製織、編組によらず繊維を布状(シート状)にしたものをいい、繊維シートの製法別に、乾式法、湿式法、スパンボンド法などに分けられる。乾式法は、長さが1〜10cmの繊維を用い、紡績用カードなどで繊維を薄いシート状にし、ニードルパンチ(針をさして繊維をからめる)、ステッチボンド(糸で縫いつける)、接着(接着剤、熱溶着繊維混用など)などで接合するもので、かさ高性、弾力性に富むものが得られる。
【0031】
湿式法は、長さが数mmの短い繊維を水中に分散させて、合成樹脂の繊維をバインダーとして、抄紙機を利用してシート状にするもので、化学繊維紙ともいわれるように紙状を呈している。スパンボンド法は、化学繊維を紡糸しながら、繊維を直接シート状に引き取って不織布を製造する方法で、乾式法によった不織布と同様、かさ高で柔らかい上、強度にも優れている。不織布は、これらのうちいづれの方法によって製造されたものでもよい。不織布は、単位あたりの重量が通常10〜500g/m2、好ましくは20〜300g/m2の範囲から選ばれる。
【0032】
不繊布製造用の原料樹脂への紫外線吸収剤の配合量は、原料樹脂100重量部に対して0.01〜5重量部、ヒンダードアミン系光安定剤は0.01〜5重量部の範囲とするのが好ましい。基体樹脂への配合は、短い繊維を製造する前に配合し混紡するのが好ましい。本発明の多孔質布を作製するにあたり、不織布等にカーボンブラック等の遮光性顔料を含有させることも可能である。例えば、遮光性黒色顔料としてカーボンブラックを用いた場合、その種類は特に規定は無いが、粒径が大きすぎると発色性が落ちたり不織布が効率良く製造されないので、好ましくは粒径50μm以下のものが好ましい。また、カーボンブラックをあらかじめ混練したマスターバッチを使用してもよい。
【0033】
本発明の透湿性シートとして、多孔質布を単独で使用する場合は多孔質布自体に、遮光性顔料を含有させてその表面の色差L*値が70以下となるようにする必要がある。多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布との積層体を使用する場合には、通常いずれか一方の層に遮光性顔料を含有させればよい。又、必要に応じて両方の層に遮光性顔料を含有させることもできる。
【0034】
本発明の透湿性シートは、多孔質熱可塑性樹脂フィルム単独、又は多孔質布単独、又は多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布との積層体からなるものである。製品強度の面からは2層、3層など多層構造の積層体が好ましい。例えば、多孔質熱可塑性樹脂フィルム/多孔質布/多孔質熱可塑性樹脂フィルム、多孔質布/多孔質熱可塑性樹脂フィルム/多孔質布のような3層積層体が挙げられる。
多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布とを積層させるには、(i)接着剤を用いる方法、(ii)熱接着による方法、などによることができる。いずれの方法によるにしても、多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布とはそれぞれの接着面積が対向する面の5〜80%の範囲になるように接着するのが好ましい。接着面積が5%未満であると、得られる被覆材は接着部分が少ないため、使用の際に接着した部分が剥離し、接着面積が80%を越えると、接着面積が広すぎて被覆材の透湿性、柔軟性が低下するので、いずれも好ましくない。また、例えば機械的に孔を開けて透湿性シートを得る場合は、熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布とを押し出しラミ等で積層させた後から機械的に孔を開けて透湿性シートを作製することも可能である。
【0035】
多孔質熱可塑性樹脂フィルムと多孔質布とを接着させる方法は特に制限はないが、上記(i)接着剤を用いて接着するには、ホットメルト接着剤、感圧接着剤などを使用する方法が好ましい。この際に使用できるホットメルト接着剤としては、ボリアミド、ポリエステル、ポリオレフインなどの樹脂が挙げられる。(ii)熱接着による方法には、多孔質布の表面を加熱し、布層の素材が熱可塑性樹脂の場合にはこれを加熱溶融させながら、熱可塑性樹脂フィルムに押圧して接着する方法が挙げられる。いずれの接着法によるにしても、接着面は、線状、点状、格子状、ランダム状などのいずれかにするのが好ましい。
【0036】
以上のような本発明の透湿性シートの利用方法としては、例えば、従来法によって堆積された糞尿堆積物の上に被覆し、雨水が流入しない様にすればよいが、透湿性シートの表面の色差L*値が70以下の部分をもつ方の面を外側にして使用する。すなわち、(1)畜舎横に構築されたコンクリート枠に堆積された糞尿堆積物の上、(2)畜舎横のラグーンに堆積された糞尿堆積物の上、(3)広いパドックに堆積された糞尿堆積物の上などを被覆すれぱよい。なお、糞尿堆積物を均一に発酵させたり、水分の均一な乾燥を促進させるには、時々、被覆材を剥がして糞尿堆積物の切り返しを行うのが好ましい。同様に、本発明の透湿性シートは工事現場の盛土被覆材としても利用できる。
【0037】
本発明の透湿性シートを用いた糞尿堆積物被覆材は、防水性があり、透湿性が良好なので、被覆材を糞尿堆積物の被覆用に使用した際に、糞尿堆積物から蒸発した水蒸気を十分に通すが、雨水や水滴を透過しないので、糞尿堆積物から液汁が流出することがなく、地下に浸透して地下水を汚染したり、河川に流入して河川水を汚染、富栄養化するという問題も少なくすることができる。また、糞尿堆積物の発酵臭が飛散するのを防ぐことができるので、臭気公害の問題も解決することができる。被覆材で被覆された糞尿堆積物は、水蒸気や発酵によって生じたガスを被覆材の微孔から飛散させ、発酵に必要な空気などを被覆材の微孔から取入れることができ、時々の糞尿堆積物の切り返しを行うと、発酵・熟成を促進させることができる。本発明に係る糞尿堆積物被覆材によって被覆され、発酵・熟成、乾燥された糞尿堆積物は、各種野菜、果菜、根菜、果樹、花などの堆肥として施肥することができる。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は次の通りである。
・透湿度(g/m2・24hr):JIS Z−0208準拠(30 ℃、90%湿度)
・色差L*値(−):JIS K−7105準拠(日本電色工業株式会社製SZ−Σ80)
・透気度(秒/100cc):JIS Z−1096準拠
・表面性状:目視にて、孔や亀裂の有無を観察
【0039】
実施例1
炭酸カルシウム(日東粉化社製、商品名:NS#1000、平均粒径1.2μm)100重量部に対し12−ヒドロキシステアリン酸(和光純薬工業社製)2重量部を、ヘンシェルミキサーで100℃で10分処理をした。
ポリエチレン系樹脂100重量部中、線状低密度ポリエチレン〔日本ポリケム社製、商品名:FW20G、密度:0.921g/cm3、MI:1g/10分〕84重量部(ポリエチレン系樹脂中86重量%)に対し、カーボンブラックマスターバッチ〔低密度ポリエチレン/カーボンブラック=60/40)、MI:2g/10分〕16重量部と、ジペンタエリスリトールヘキサオクタノエート[三菱化学社製、商品名D−600]2重量部,Tinuvin 622LD(ヒンダードアミン系光安定剤)2重量部、Cyasorb UV−531(紫外線吸収剤)1重量部、上記表面処理した炭酸カルシウム165重量部をタンブラーミキサーにて混合した後、タンデム型混練押出機を用いて220℃で均一に混練し、ペレット状に加工した。
【0040】
このペレットを円形ダイが装着された押出成形機を用いて、200℃において溶融製膜したあと、60℃に加熱した予熱ロールと延伸ロールとの間で3.0倍の延伸倍率で機械方向に一軸延伸し、厚さ50μmの多孔質ポリオレフイン樹脂フィルムを得た。
次に、得られた多孔質ポリオレフイン樹脂フィルムを、多孔質布としてナイロン系スパンボンド不燃布(目付け80g/m2 )を選び、この不織布上にホットメルト樹脂を千鳥状に塗布し、貼り合わせた。このようにして得られた透湿性シートについて、測定した物性を表−1に示す。
【0041】
比較例1
実施例1において、カーボンブラックマスターバッチを使用することなく、分岐状低密度ポリエチレン〔日本ポリケム社製、商品名:LF441、密度:0.919g/cm3、MI:2g/10分〕に変えた以外は同様にして、厚さ50μmの多孔質ポリオレフイン樹脂フィルムを得た。得られた樹脂フィルムを実施例1と同様のナイロン系スパンボンド不燃布と貼り合わせ、透湿性のあるシートを得た。得られた透湿性シートの物性を表−1に示す。
【0042】
パドックに高水分含有糞尿を円錐状に堆積した堆積物を実施例1および比較例1の透湿性被覆シートによって被覆し、他の一個は被覆しないで、時々切り返しを行い、3ヶ月後の堆積物の水分の変化、堆積物の大きさなどを測定した。測定結果を表−2に示す
【0043】
バーク堆肥を円錐状に堆積した堆積物を3個調整し、2個は実施例1および比較例1の透湿性シートを被覆し、他の1個は被覆しないで時々切り返しを行い、3ヶ月後の水分、電気伝導度などの肥料成分の分析を行った。結果を表−3に示す。また、透湿性シートの表面の状態(特に紫外線による劣化度)を観察した。その結果を表−3に示す。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表−2より次のことが明らかになった。
(1)透湿性シートで被覆した糞尿堆積物は、外側からの進入を防ぎ、堆積物から蒸発した水蒸気を飛散させることができるので、堆積物からの液汁の流出がなく、堆積物表面の乾燥が進み、盛り上げが可能であるので、体積面積を減らすことができた。また、実施例1では、体積物表面の乾燥が特に進んでいる。
(2)これに対して、透湿性シートで被覆しない糞尿堆積物は、降雨のない時は乾燥が進行するが、降雨時には雨水が堆積物に浸水し水分の含有率が上昇し、体積面積を減らすことができなかった。
【0048】
表−3より次のことが明らかになった。
(1)透湿性シートで被覆した糞尿堆積物は、糞尿堆積物の発酵が経時的に進行することによって塩類が増加するので、電気伝導度が非被覆堆積物よりも高い値となっている。
(2)カーボンブラックを含有している実施例1の透湿性シートの方が、表面の紫外線等による劣化が少ない。
【0049】
【発明の効果】
本発明に係る透湿性シートは、耐候性に優れ長期間の使用が可能である。また、透湿度、透気度の双方が適度の範囲にされているので、糞尿堆積物の被覆シートなどとして好適に使用することができる。同様に、本発明の透湿性シートは工事現場の盛土被覆材としても利用できる。
Claims (2)
- 透湿度が300g/m2.24hr以上であり、ヒンダードアミン系光安定剤及び紫外線吸収剤を含有し、且つ、遮光性顔料を配合して表面の色差L*値が70以下よりなる、ポリオレフィン系樹樹、ポリエステル系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、フッ素系樹脂、ポリエーテル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂及びジエン系樹脂から選ばれた多孔質熱可塑性樹脂フィルムの透湿性シートを糞尿堆積物又は工事現場の盛土の表面被覆に供せられる家畜の糞尿堆積物用又は工事現場の盛土用の被覆材。
- 遮光性顔料がカーボンブラックである請求項1に記載の家畜の糞尿堆積物用又は工事現場の盛土用の被覆材。
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