JP3837820B2 - 二色性色素、該色素を含む液晶組成物及び液晶素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な青色系のトリスアゾ系二色性色素及びこれを含む液晶組成物ならびにそれを用いた液晶素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、液晶素子としてはツイストネマチック(TN)型表示モード、スーパーツイストネマチック(STN)型表示モード等の他に各種の表示モードが提案されている。このうち液晶に色素を溶解して用いるゲストホスト(GH)型表示方式は、広い視野角等の特徴のために表示パネルとして広く用いられている。
【0003】
このGHモードに用いられる二色性色素には、
1)二色性
2)溶解性
3)耐光性
4)着色力
が優れていることが要求される。
他方、市場ニーズが大きいブラックの液晶組成物を構成する上で必要な青色系の二色性アゾ色素については、従来、末端にニトロ基、シアノ基あるいはチアゾール環などを有する色素が知られていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら従来の色素は、最近の薄膜トランジスターなどを用いたアクティブマトリクス駆動による液晶表示素子などに用いられているフッ素系液晶に対する、溶解性などの親和性が充分でないという問題点があり、また良好な表示コントラストを得るための二色性も充分でないという問題点があった。特に、従来のニトロ基、シアノ基あるいはチアゾール環を有するアゾ色素は耐光性や溶解性に大きな難点があり、またアルキル基を有する色素では浅色の色相になりやすく、青色などの深色の色相にはなりにくいという難点を有していた。更に、アゾ色素分子において色相を深色化するためにはメトキシ基等がアゾ色素分子の側方に置換していることが有効であるが、これらの側方の置換基は色素の二色性を低下させる傾向があった。
本発明は、上記の特性を兼ね備えた二色性色素、好ましくはオーダーパラメーター(S値)が0.80以上(二色性比13.0以上)の青色二色性色素及び該色素を含む液晶組成物並びにそれを用いた液晶素子を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題に鑑み、鋭意検討した結果、メトキシ基を特定の位置に置換した一般式で示されるトリスアゾ系色素が深色の色相を有し且つ、高い二色性及び、溶解性に優れた青色系色素であることを見いだし、本発明に到達した。
すなわち、本発明の要旨は、下記一般式[I]
【0006】
【化2】
【0007】
(式中、Aは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシアルキル基、フルオロアルキル基、又はアルコキシ基を表し、B1 およびB2 は各々独立にフエニレン基又はシクロヘキシレン基を表し、R1 は水素原子、又はメチル基を表し、R2 はアルキル基、アルコキシアルキル基、又はアルコキシ基を表し、R3 とR4 は互いに連結して脂肪族環、芳香族環又は含窒素芳香族環を表し、R5 及びR6 は各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基を表し、R5 とR6 の少なくとも一方がメトキシ基を表し、nは0又は1の数を表す。)
で表されるトリスアゾ系二色性色素、及び該色素を含む液晶組成物並びに液晶素子を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の前式(I)で示されるトリスアゾ系二色性色素は、公知のジアゾ化カップリング反応により得られる。
前示一般式[I]に於けるAの具体例としては、水素原子;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メチル基、ブチル基、ヘキシル基、ノニル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基;エトキシメチル基、ブトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基等の炭素数2〜11の直鎖状または分岐状のアルコキシアルキル基;トリフルオロメチル基、パーフルオロエチル基等の炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のフルオロアルキル基;メトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。特に炭素数3〜8のアルキル,アルコキシまたはアルコキシアルキル基が好ましい。
【0009】
B1 およびB2 の具体例としては1,4−フエニレン基およびトランス−1,4−シクロヘキシレン基が挙げられる。
R1 としては、水素原子又はメチル基が挙げられる。
R2 の具体例としてはメチル基、ブチル基、ヘキシル基、ノニル基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルキル基;エトキシメチル基、ブトキシメチル基、エトキシエチル基、ブトキシエチル基等炭素数2〜11の直鎖状または分岐状のアルコキシアルキル基;メトキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基等の炭素数1〜10の直鎖状又は分岐状のアルコキシ基が挙げられる。
【0010】
R3 とR4 は互いに連結してテトラリン環の一部などの脂肪族環、ナフタリン環の一部などの芳香族環またはキノリン環の一部などの含窒素芳香族環を形成する。特にナフタリン環が好ましい。
R5 及びR6 としてはそれぞれ水素原子、メチル基、メトキシ基が挙げられる。但しR5 及びR6 の少なくとも一方がメトキシ基である。R5 及びR6 がともにメトキシ基の場合は、フエニレン基に対して2,5−位あるいは3,6−位に結合したものが、特に好ましい。
【0011】
本発明の二色性色素の混合量は、液晶化合物又は液晶混合物に対して、通常0.05〜15重量%、好ましくは0.05〜5重量%である。
本発明の液晶組成物に使用される液晶化合物の例としては、下記表−1に示すものが挙げられる。
【0012】
【表1】
【0013】
(式中、V及びWは、各々独立にアルキル基、アルコキシ基、アルコキシアルキル基、アルキルフェニル基、アルコキシアルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、アルキルシクロヘキシル基、アルコキシアルキルシクロヘキシル基、アルキルシクロヘキシルフェニル基、シアノフェニル基、シアノ基、ハロゲン原子、フルオロメチル基、フルオロメトキシ基、アルキルフェニルアルキル基、アルコキシフェニルアルキル基、アルキルシクロヘキシルアルキル基、アルコキシアルコキシシクロヘキシルアルキル基、アルコキシフェニルアルキル基又はアルキルシクロヘキシルフェニルアルキル基を表し、これらのアルキル鎖及びアルコキシ鎖中に、光学活性中心を有してもよい。Yは水素原子、ハロゲン原子又はシアノ基を表し、又V及びW中のフェニル基又はフェノキシ基は、シアノ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子でさらに置換されてもよい。又、上記各構造式中のフェニル基は、1個から4個のフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子、シアノ基でさらに置換されていてもよい。)
【0014】
最近、従来のシアノ基を含有した液晶化合物のかわりに、−F、−CF3 、−OCF3 などのフッ素原子又はフッ素原子含有基などの置換基を有するいわゆるフッ素系液晶化合物が、TFT・LCD(薄膜トランジスタ方式液晶ディスプレイ)等好適に用いられているが、本発明の二色性色素はこれらのフッ素系液晶化合物に対しても相溶性が優れるものである。
【0015】
また、本発明の液晶組成物はコレステリルノナノエートなどの、液晶相を示しても示さなくてもよい光学活性化合物を含有してもよく、また紫外線吸収剤、酸化防止剤などの各種の添加剤を含有してもよい。
このようにして得られた液晶組成物を、少なくとも一方が透明な電極付き2枚の基板の間に挟持することにより、ゲストホスト効果を応用した液晶素子[松本正一、角田市良“液晶の最新技術”工業調査会、34(1983);J.L.Fergason、SID85Digest,68(1983)等参照]などを構成することができる。
【0016】
透明な電極の基板としては、通常ガラス板或いはアクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂等の各種合成樹脂板が挙げられ、その基板上に電極層が形成される。透明電極層としては、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ等の金属酸化物から成るものが通常使用される。透明電極層の液晶に接する表面は必要に応じて配向処理を施す。該配向処理の方法としては、例えばオクタデシルジメチル[3−(トリメトキシシリル)プロピル]アンモニウムクロライド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等を塗布して垂直配向する方法、ポリイミドを塗布して平行配向する方法、綿布、脱脂綿等でラビングして平行配向にする方法、SiOxを斜めの角度から蒸着して平行配向する方法等が適宜用いられる。
基板は互いに配向処理面が対抗するようにしてスペーサー等を介して一体化し、2枚の基板間にその間隔が1〜50μm、好ましくは1〜15μmとなるように空間を設けた素子(セル)を形成し、この空間の中に液晶を封入する。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例により、具体的に説明する。
本発明はその要旨を越えない限り実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
下記構造式で示されるジスアゾ化合物
【0018】
【化3】
【0019】
0.1gをN−メチルピロリドン45mlに溶解後、35%塩酸0.2mlを加えて5〜10℃に冷却し、少量の水に溶解した亜硝酸ナトリウム0.06gを加えた。同温度で30分間撹拌した後、N−メチルピロリドン5mlに溶解した下記構造のカップラー
【0020】
【化4】
【0021】
0.2gを加え2時間撹拌した。室温まで昇温した後、水10mlで希釈、炭酸ナトリウム水溶液で中和、濾過、洗浄、乾燥し、カラムクロマトによる分離精製して下記構造式で示されるトリスアゾ化合物0.4gを得た。
【0022】
【化5】
【0023】
このトリスアゾ色素を商品名ZLI−4792(E.MERCK社製品)として市販されているフッ素系液晶混合物に1重量%の濃度で溶解させ、青色のゲストホスト液晶組成物を調製した。
これを、ポリイミド系樹脂を塗布、硬化、ラビング処理した透明電極付きガラス基板を対向させ、液晶が平行配向となるように構成したギャップ9μmのセルに封入した。
【0024】
この青色に着色したセルの配向方向に平行な直線偏光に対する吸光度(A//)及び配向方向に垂直な直線偏光に対する吸光度(A⊥)を測定し、その吸収ピーク(λmax :599nm)におけるオーダーパラメーター(S)を下記の式
【0025】
【数1】
S=(A//−A⊥)/(A//+2A⊥)
【0026】
から求めた結果、S=0.80であった。
【0027】
[比較例]
置換位置の異なる下記構造式
【0028】
【化6】
【0029】
で示されるトリスアゾ色素を上記実施例1と同様にして着色した液晶セルを作製し、同様にしてオーダーパラメーターを測定した結果、S=0.75(λmax :602nm)であり、二色性が劣っていた。
【0030】
[実施例2]
下記構造式のカップラー用いる他は実施例1と同様にして
【0031】
【化7】
【0032】
下記構造式で示される目的のトリスアゾ化合物を得た。
【0033】
【化8】
【0034】
これを用いて上記と同様にして青色に着色した液晶セルを作製し、実施例1と同様にしてオーダーパラメーター(S)を測定した結果、S=0.81(λmax :599nm)であった。
【0035】
[実施例3]
下記構造式のジスアゾ化合物を用いる他は実施例1と同様にして
【0036】
【化9】
【0037】
下記構造式で示される目的のトリスアゾ化合物を得た。
【0038】
【化10】
【0039】
これを用いて上記と同様にして青色に着色した液晶セルを作製し、実施例1と同様にしてオーダーパラメーター(S)を測定した結果、S=0.81(λmax :599nm)であった。
【0040】
[実施例4〜14]
同様にして得られた表−2、(No.4〜14)に示す各種のアゾ系色素を、商品名ZLI−4792(E.MERCK社製品)として市販されているフッ素系液晶に溶解し、得られた各液晶組成物を用いて実施例1〜3と同様に、青色に着色した液晶セルを作成し、オーダーパラメーター(S値)を測定した。
S値と色相を、実施例1〜3の結果と併せて下記表−2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
【表3】
【0043】
【表4】
【0044】
【表5】
【0045】
【発明の効果】
本発明の高い二色性と高い着色力を有する二色性色素を含む液晶組成物を用いコントラストなどに優れた表示素子を構成することができる。
Claims (3)
- 液晶化合物と請求項1に記載のトリスアゾ系二色性色素を含むことを特徴とする液晶組成物。
- 少なくとも一方が透明な電極付基板間に請求項2に記載の液晶組成物を挟持してなることを特徴とする液晶素子。
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JP08512797A JP3837820B2 (ja) | 1997-04-03 | 1997-04-03 | 二色性色素、該色素を含む液晶組成物及び液晶素子 |
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JPH10279945A JPH10279945A (ja) | 1998-10-20 |
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JP08512797A Expired - Lifetime JP3837820B2 (ja) | 1997-04-03 | 1997-04-03 | 二色性色素、該色素を含む液晶組成物及び液晶素子 |
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-
1997
- 1997-04-03 JP JP08512797A patent/JP3837820B2/ja not_active Expired - Lifetime
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