JP3837103B2 - 電気炉の温度制御方法および電気炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子部品焼成用電気炉において、炉室の温度をより精密にかつ外乱などによる炉室温度の乱れなく制御するための温度制御方法およびそれらを具備する電気炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子部品焼成用電気炉において、電子部品をセットした炉室を精密に温度制御する場合、上下・左右・前後などをセラミックス板等の耐熱性部材で炉室と隔離し、上下ヒータ室及び炉室をそれぞれ個別に温度制御を行っている。
【0003】
電子部品焼成用電気炉室がこのように分離されているのは、精密な温度制御を行う目的の他、焼成用電子部品(処理物)からガスが発生する場合があり、ガスによるヒータへの悪影響を及ばないようにするためにも有効な手段である。
【0004】
以下、図2および図3により、従来の電子部品焼成用電気炉の温度制御方法を説明する。
【0005】
図2は、従来の電気炉の炉室温度を制御する方法を説明するためのフロー図である。
【0006】
電気炉21は、セラミック板等の耐熱性部材により、上ヒータ室22、炉室23および下ヒータ室24に分離されている。上ヒータ室22には上ヒータ室制御用熱電対25と上ヒータ室制御用ヒータ28が、下ヒータ室24には下ヒータ室制御用熱電対27と下ヒータ室制御用ヒータ29が設けられている。上ヒータ室制御用熱電対25は上ヒータ室制御用温度調節計30と接続され、この上ヒータ室制御用温度調節計30の出力信号は、上ヒータ室制御用SCR33に送られ、上ヒータ室制御用ヒータ28が制御される。同様に、下ヒータ室制御用熱電対27は下ヒータ室制御用温度調節計31と接続され、この下ヒータ室制御用温度調節計31の出力信号は、下ヒータ室制御用SCR32に送られ、下ヒータ室制御用ヒータ29が制御される。また、上ヒータ室22、炉室23および下ヒータ室24の温度は、温度記録計34に記録される。
【0007】
図2に示した電気炉21の温度を制御するためには、上ヒータ室制御用温度調節計30および下ヒータ制御用温度調節計31に希望する温度を入力し、その信号がそれぞれ上ヒータ室制御用SCR33と下ヒータ室制御用SCR32を経て、上ヒータ室制御用ヒータ28と下ヒータ室制御用ヒータ29に電気が供給され、上下ヒータ室22,24の温度を調節し、炉室23温度を調節するものである。
【0008】
炉室23に取付けられた熱電対26は、温度記録計34に接続されている。この熱電対26は、炉室23の温度を記録するのみであり、炉室23温度を制御するためのものではない。したがって、炉室23へのガス投入や、処理物の移動などの外乱により、炉室23温度は変動する。
【0009】
例えば、図2に示した電気炉21において、炉室23温度を1000℃に設定したい場合、この温度制御方法では炉室23の熱電対26が制御用ではないため、上下ヒータ室22,24の温度を経験により、例えば1050℃程度に設定し、炉室23温度が1000℃に近づくように上下ヒータ制御用温度調節計30,31をそれぞれ微調節する必要がある。図2に示した従来方法は、高精度な温度制御を求められる処理物には不向きな制御方法である。
【0010】
その他の従来の制御方法を図3にフロー図として示す。図2と同一の構成要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0011】
図3の従来例が図2の従来例と異なる点を以下に列挙する。
【0012】
炉室21には、炉室温度制御用熱電対39を設け、炉室温度制御用温度調節計37により上下ヒータ室制御用ヒータ28,29を上下ヒータ室制御用SCR33,32を介して電気を供給し、制御するものである。上下ヒータ室制御用SCR33,32に供給される電力は、それぞれ出力調整ボリューム35,36により調節される。
【0013】
また、上下ヒータ室22,24に設置される熱電対38,40は、加熱防止用熱電対であり、上下ヒータ室22,24の温度を監視するものであり、危険温度以上になると温度記録計34からの信号により、警報が発せられるように設定されている。しかし、熱電対38,40は制御するためのものではないため、希望する温度に設定することはできない。
【0014】
図2の従来方法に比べ、炉室21の温度制御の制度は高くなる。例えば、炉室21内の温度を1000℃に設定したい場合、炉室21内は1000℃に設定される。しかし、上下ヒータ室22,23の温度はそれぞれ上ヒータ室制御用SCR33と下ヒータ室制御用SCR32の出力調整用ボリューム35,36で決定されるため、上下ヒータ室22,24の温度を同じ温度に設定したくても非常に困難であった。
【0015】
したがって、図3に示した従来の制御方法は、炉室内の上下温度差を自由に制御するためには不向きであった。
【0016】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、上下ヒータ室と炉室がセラミックス板等の耐熱性部材で完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い炉室の温度を調節する構造の電気炉において、炉室の温度をより精密にかつ外乱などによる炉室温度の乱れなく制御するための、また複雑なパラメータの入力を行わずに温度設定の行える温度制御方法および電気炉を提供することを課題としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題は、以下要旨の本発明により解決される。
(1) 上下ヒータ室と炉室が耐熱性部材で完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い、炉室の温度を調節する構造の電気炉において、上下ヒータ室および炉室にそれぞれ制御用の熱電対を設け、さらに上ヒータ室、炉室および下ヒータ室の温度が入力され上下ヒータ室のヒータを制御する制御用回路を設け、該制御用回路により炉室の設定温度を基準に上下ヒータ室のヒータを制御して、炉室の温度を制御することを特徴とする電気炉の温度制御方法。
(2) 温度制御のための設定パラメータが、炉室設定温度、上下のヒータ室の温度差、設定値までの昇温速度、上下ヒータ室の過熱温度であることを特徴とする(1)に記載の電気炉の温度制御方法。
(3) 上下ヒータ室と炉室が耐熱性部材で完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い、炉室の温度を調節する構造の電気炉において、上下ヒータ室および炉室にそれぞれ制御用の熱電対を設け、さらに上ヒータ室、炉室および下ヒータ室の温度が入力され上下ヒータ室のヒータを制御する制御用回路を設け、該制御用回路により炉室の設定温度を基準に上下ヒータ室のヒータを制御して、炉室の温度を制御することを特徴とする電気炉。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施形態を図面により説明する。図1は、本発明の制御方法を説明するためのフロー図である。
【0019】
本発明の電気炉1は、図1に示すように上ヒータ室2および下ヒータ室4と炉室3がセラミックスの板などの耐熱部材で完全に仕切られている。上ヒータ室2には上ヒータ室制御用熱電対5と上ヒータ室制御用ヒータ8が、下ヒータ室4には下ヒータ室制御用熱電対7と下ヒータ室制御用ヒータ9が設けられている。炉室3にも、炉室制御用熱電対6が設けられている。これらの各制御用熱電対5,6,7は、制御用回路が内蔵された炉室制御用温度調節計15に接続されている。
【0020】
炉室制御用温度調節計13では、不図示のタッチパネルやパソコンから温度制御のためのパラメータが入力される。
【0021】
制御用のパラメータとしては、「炉室設定温度(例えば1000℃)」、「上下ヒータ室の温度差(例えば0℃)」、「上ヒータ室の警報発生温度(例えば1100℃」、「下ヒータ室の警報発生温度(例えば1000℃)」、「設定温度までの昇温速度」等を挙げることができる。なお、炉室制御用温度調節計15には、従来の温度調節計と同様な機能(例えばPID演算など)を設けてもよい。
【0022】
炉室制御用温度調節計13に内蔵された制御回路により、それぞれ上ヒータ室制御用ヒータ8、下ヒータ室制御用ヒータ9に電力を供給する上ヒータ室制御用SCR10、下ヒータ室制御用SCR11に個別に信号が送られ、それぞれ制御され炉室3の温度が適正に制御される。
【0023】
制御回路では、入力された「炉室設定温度」および「昇温温度」に基づいて演算され、上ヒータ室制御用SCR10、下ヒータ室制御用SCR11に信号が送られ、それぞれ上ヒータ室制御用ヒータ8と下ヒータ室制御用ヒータ9に電流が流れ、各ヒータが加熱される。
【0024】
炉室設定温度に到達すると、炉室制御用熱電対6により、炉室制御用温度調節計13に内蔵された回路により、上ヒータ室制御用SCR10、下ヒータ室制御用SCR11に信号が送られ、それぞれ上ヒータ室制御用ヒータ8と下ヒータ室制御用ヒータ9への電流が遮断され、炉室3の温度が設定温度を超えないように調節される。
【0025】
また、精密な温度制御が必要な場合は、入力された「上下ヒータ室温度差」のパラメータに基づいて、個別に上ヒータ室制御用SCR10と下ヒータ室制御用SCR11に信号が送られ、それぞれ上下ヒータ室制御用ヒータを制御し、設定した「上下ヒータ室温度差」が保たれるように制御する。
【0026】
制御用回路で制御する方式は、特に限定されないが、例えばON−OFF制御、サイクル制御、PID制御等を挙げることができる。
【0027】
また、上ヒータ室2、炉室3、下ヒータ室4の温度は、それぞれの熱電対により測定され、温度記録計12に記録される。
【0028】
【実施例】
実施例1
進行方向に複数回路から構成されているトンネル型の炉に、本発明を採用した例をとりあげ説明する。
【0029】
例にあげるトンネル型の炉は10回路から構成されており、すべての回路において本発明を使用している。各回路のパラメータは表1のとおりである。
【0030】
【表1】
【0031】
本発明方法に従い運転を行った。各回路とも設定された昇温速度にあわせて制御を行い、上下ヒータ室2,4の温度差を0℃に保ちながら設定温度に到達した。到達した後も例えば、炉室3が1200℃設定部分において、上ヒータ室2温度1250℃、下ヒータ室4温度1250℃で安定し上下ヒータ室2,4の温度差を0℃に保ちながら制御を行った。
【0032】
しかしながら、この状態で炉室3に投入したサヤ内の温度分布測定をメジャーリングなどで行ったところ上部温度が20℃程度高い(キープ温度において)ことがわかった。これは当然熱の流れなどが関与しているためである。このトンネル型の炉の場合、温度分布保証が10℃以下であるため、保証外の結果となった。
【0033】
そこで、この温度差を補正するために、炉室3の設定が1200℃である全回路において、温度差を−20℃(上ヒータ室温度−下ヒータ室温度)に設定しなおした。結果は温度分布8℃となり保証を満足することができた。このとき上ヒータ室1240℃、下ヒータ室1260℃で安定し、上下ヒータ室2,4の温度差は20℃であった。
【0034】
このように、希望しかつ高精度な温度制御を簡単に行うことが可能になっただけでなく、単純な入力ミスも減少させることができた。
【0035】
【発明の効果】
上記のように本発明により、上下ヒータ室と炉室がセラミックスの板などで完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い炉室の温度を調節する構造の電気炉において、炉室の温度をより精密にかつ外乱などによる炉室温度の乱れなく制御することが可能となり、また複雑なパラメータの入力を行わずに温度設定が行えるため、人的ミスによる温度調節不良の発生も抑制できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の制御方法を説明するためのフロー図。
【図2】従来の制御方法を説明するためのフロー図。
【図3】従来の制御方法を説明するためのフロー図。
【符号の説明】
1 電気炉
2 上ヒータ室
3 炉室
4 下ヒータ室
5 上ヒータ室制御用熱電対
6 炉室制御用熱電対
7 下ヒータ室制御用熱電対
8 上ヒータ室制御用ヒータ
9 下ヒータ室制御用ヒータ
10 上ヒータ室制御用SCR
11 下ヒータ室制御用SCR
12 温度記録計
13 炉室制御用温度調節計
Claims (3)
- 上下ヒータ室と炉室が耐熱性部材で完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い、炉室の温度を調節する構造の電気炉において、上下ヒータ室および炉室にそれぞれ制御用の熱電対を設け、さらに上ヒータ室、炉室および下ヒータ室の温度が入力され上下ヒータ室のヒータを制御する制御用回路を設け、該制御用回路により炉室の設定温度を基準に上下ヒータ室のヒータを制御して、炉室の温度を制御することを特徴とする電気炉の温度制御方法。
- 温度制御のための設定パラメータが、炉室設定温度、上下のヒータ室の温度差、設定値までの昇温速度、上下ヒータ室の過熱温度であることを特徴とする請求項1に記載の電気炉の温度制御方法。
- 上下ヒータ室と炉室が耐熱性部材で完全に仕切られ、上下ヒータ室内のヒータがそれぞれ独立して温度制御を行い、炉室の温度を調節する構造の電気炉において、上下ヒータ室および炉室にそれぞれ制御用の熱電対を設け、さらに上ヒータ室、炉室および下ヒータ室の温度が入力され上下ヒータ室のヒータを制御する制御用回路を設け、該制御用回路により炉室の設定温度を基準に上下ヒータ室のヒータを制御して、炉室の温度を制御することを特徴とする電気炉。
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