JP3833816B2 - 電気音響変換器用振動板およびその製造方法 - Google Patents

電気音響変換器用振動板およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気音響変換器用振動板(以下、本明細書では振動板という)に求められる条件は、入力信号に対してリニアリティが良いこと,逆共振現象を起しにくいこと,充分な信頼性があること,製造が容易で安価なこと,軽量であること等が挙げられる。
【0003】
又、振動板の構造は、振動板本体とエッジとを一体的に形成したフィックスドエッジ振動板,振動板本体とエッジとが別部材のフリーエッジ振動板が提案されている。
【0004】
フィックスドエッジ振動板は、振動板本体とエッジとを接着する工程が不要なため、製造工程は簡素化される。
しかし、エッジの材質が振動板本体の材質と同じ比較的剛性の高い材質となるので、上述した振動板に求められる条件を満足することが困難である。
【0005】
一方、フリーエッジ振動板は、振動板本体とエッジとを異なる材質とすることができるので、フィックスドエッジ振動板に比べて上述した振動板に求められる条件を比較的達成しやすいが、エッジを振動板本体に接着する工程が必要であり、製造工程が増加する問題点がある。
【0006】
このフリーエッジ振動板の問題点を解決するために、インジェクション成形法を用い、金型内でエッジを成形すると同時に、振動板本体とエッジとを一体化する方法が提案されている。
【0007】
しかし、従来のインジェクション成形法で製造されるエッジの材質は、すべてソリッドな構造体(例えば、各種加硫ゴム,熱可塑性エラストマー等)であるので、成形時にエッジが収縮することにより生じる残留応力の緩和がうまく行われず、エッジに大きな変形を起す問題点がある。
【0008】
この問題点を解決するために、図10に示すような手法が提案されている。
即ち、先ず、(a)図に示すように、予め成形した振動板本体1を合わせ金型の一方の金型2にセットし、次に、(b)図に示すように、主成分のゴムに発泡剤を混合したエッジ基材3を一方の金型2にセットする。
【0009】
そして、(c)図に示すように、合わせ金型の一方の金型2と他方の金型4とを加熱すると、エッジ基材3が溶融発泡し、エッジ5が形成されると共に、振動板本体1とエッジ5とが一体化し、(d)図に示すように振動板本体1の外周縁部にエッジ5が一体的に形成された振動板6が形成される。
【0010】
この手法を用いてエッジ5を形成することにより、音響特性に優れ、変形の少ない優れた振動板を実現できる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、エッジの材質として発泡剤を混合したゴムを用い、振動板本体の外周縁部にエッジを一体的に形成する手法にも、以下のような問題点がある。
【0012】
(1) 振動板本体の材質によっては、振動板本体とエッジとの接着強度が低下する。
(2) 接着剤を用いて振動板本体とエッジとを接着する旧来のフリーエッジ振動板では、振動板本体とエッジとの間に接着剤が介在し、この接着剤によりある程度の内部損失が得られ、逆共振現象を防止したり、振動板本体とエッジとの貼付ずれにより共振を分散するという効果が得られる。
【0013】
しかし、エッジの材質として発泡剤を混合したゴムを用い、振動板本体の外周縁部にエッジを一体的に形成する手法で製造された振動板では、図10(d)に示すように、振動板本体1とエッジ5との間に介在するものがなく、振動板本体1とエッジ5とが直に接しており、又、寸法安定性にも優れているので、逆共振現象が生じやすい。
【0014】
(3) 金型形状が複雑となるためエッジと金型との離型性が悪く、金型のメンテナンスがしずらく、生産効率が低下する。
例えば、図10(d)において、他方の金型4の面4aには溶融したエッジ基材3が当接するが、アンダーカット面となっており、他方の金型4を抜く際に、面4aとエッジ5との離型性が悪く、面4aに汚れが溜まりやすくなる。
【0015】
更に、この面4aの汚れは洗浄しにくく、メンテナンスがしずらい。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、第1の目的は、振動板本体とエッジとの接着強度が向上する電気音響変換器用振動板およびその製造方法を提供することにある。
【0016】
第2の目的は、逆共振現象が発生しにくい電気音響変換器用振動板およびその製造方法を提供することにある。
第3の目的は、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する電気音響変換起用振動板およびその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する請求項1記載の発明は、振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板であって、前記振動板本体の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、前記エッジの内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成したことを特徴とする電気音響変換器用振動板である。
【0018】
振動板本体の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、この振動板の外周部と重なるエッジの内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成することにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0019】
又、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが重なる部分の剛性は、振動板本体の外周縁部近傍の剛性と、エッジの内周縁部近傍の剛性との中間的な剛性となり、逆共振現象が発生しにくい。
【0020】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明の前記振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことを特徴とする電気音響変換器用振動板である。
【0021】
振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことにより、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0022】
請求項3記載の発明は、振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板であって、前記振動板本体の外周縁部に、外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を設け、前記エッジの内周縁部に、内周縁部近傍の厚さと略同じ厚さで、前記第1の段部と係合する第2の段部を設けたことを特徴とする電気音響変換器用振動板である。
【0023】
振動板本体の外周縁部に、外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を設け、前記エッジの内周縁部に、内周縁部近傍の厚さと略同じ厚さで、前記第1の段部と係合する第2の段部を設けたことにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0024】
又、振動板本体の第1の段部と、エッジの第2の段部とが係合することで、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0025】
請求項4記載の発明は、振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板の製造方法であって、外周縁部の厚さが外周縁部近傍の厚さより薄い振動板本体を形成し、該振動板本体と、主成分のゴムに発泡剤を混合した基材とを合わせ型の一方の金型に配置し、前記合わせ型の他方の金型を用いて型締めした後、前記合わせ型を加熱し、内周縁部の厚さが内周縁部近傍の厚さより薄いエッジを成形すると同時に、前記振動板の外周縁部に前記エッジの内周縁部を一体化することを特徴とする電気音響変換器用振動板の製造方法である。
【0026】
振動板本体の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、この振動板の外周部と重なるエッジの内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成することにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0027】
又、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが重なる部分の剛性は、振動板本体の外周縁部近傍の剛性と、エッジの内周縁部近傍の剛性との中間的な剛性となり、逆共振現象が発生しにくい。
【0028】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の発明の前記振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことを特徴とする電気音響変換器用振動板の製造方法である。
【0029】
振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことにより、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0030】
請求項6記載の発明は、振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板の製造方法であって、外周縁部に外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を有する振動板本体を形成し、該振動板本体と、主成分のゴムに発泡剤を混合した基材とを合わせ型の一方の金型に配置し、前記合わせ型の他方の金型を用いて型締めした後、前記合わせ型を加熱し、内周部に前記第1の段部と係合し、厚さが内周部近傍と略同じ厚さの第2の段部を有するエッジを成形すると同時に、前記振動板の外周縁部に前記エッジの内周縁部を一体化することを特徴とする電気音響変換器用振動板の製造方法である。
【0031】
振動板本体の外周縁部に、外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を設け、前記エッジの内周縁部に、内周縁部近傍の厚さと略同じ厚さで、前記第1の段部と係合する第2の段部を設けたことにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0032】
又、振動板本体の第1の段部と、エッジの第2の段部とが係合することで、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0033】
尚、請求項1乃至6のいずれかに記載の発明において、エッジの主成分であるゴムの例としては、加硫ゴム又は熱可塑性エラストマーがある。
ここで、加硫ゴムとしては、スチレン-ブタジエンゴム,ニトリル-ブタジエンゴム,エチレン-プロピレン-タ-ポリマーゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴム,イソブチレン-イソプレンゴム,エチレン-プロピレンゴム,シリコーンゴムからなる群から選ばれたものがある。
【0034】
又、熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系,ポリオレフィン系,ポリウレタン系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリブタジエン系,エチレン-酢酸ビニル系,ポリ塩化ビニル系からなる群から選ばれたものがある。
【0035】
更に、発泡剤としては、熱分解によるガス発生形のものがあり、発泡したエッジの比重は、0.07〜1.2の範囲が好ましい。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
1.請求項1,2,4,5記載の発明に対応する第1の実施の形態例
図1は本発明の第1の実施の形態例の振動板の断面図で、(a)図は全体の断面図、(b)図は(a)図のA部分の拡大図である。
【0037】
(a)図において、振動板10は、振動板本体12と、振動板本体12の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、振動板本体12の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジ14とからなっている。
【0038】
そして、(b)図に示すように、振動板本体12の外周縁部の裏面側には第1の段部16が、エッジ14の内周縁部の表面側には、振動板本体12の第1の段部16に係合する第2の段部18が形成されている。
【0039】
振動板本体12の外周縁部に形成された第1の段部16の厚さT′は、外周縁部近傍の厚さTより薄くなるように形成されている。
又、エッジ14の内周縁部に形成された第2の段部18の厚さt′は、内周縁部近傍の厚さtより薄くなるように形成されている。
【0040】
更に、振動板12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とが重なる部分の厚さ(T′+t′)は、エッジ14の他の部分の厚さ(t)と略同じになるように設定されている。
【0041】
次に、上記構成の振動板10の製造方法を図2および図3を用いて説明する。▲1▼ 振動板本体の製造(図2参照)
(1) 木材繊維100%のパルプを所定の形状に抄き上げて、振動板本体素材12′を得る((a)図参照)。
【0042】
(2) 振動板本体素材12′を金型21,22を用いて、約100秒間加熱(200℃)圧縮して乾燥し(図(b)参照)、(c)図に示すように、第1の段部16が形成された振動板本体素材12″を得る。
【0043】
(3) 振動板本体素材12″の中央部分12a″および外周部分12b″を除去し、外周縁部に第1の段部16が形成された振動板本体12とする(図(d)参照)。
【0044】
尚、(2)と(3)との間で、金型21,22を用いて、約5秒間再加熱(200℃)再圧縮してもよい。
▲2▼ 振動板本体とエッジとの一体成形(図3参照)
(1) 合わせ型の一方の金型31に、外周縁部に第1の段部16が形成された第1の振動板本体12をセットする((a)図参照)。
【0045】
(2) 合わせ型の一方の金型31に主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジ基材33をセットする((b)図参照)。
このエッジ基材33の主成分であるゴムの例としては、加硫ゴム又は熱可塑性エラストマーがある。
【0046】
ここで、加硫ゴムとしては、スチレン-ブタジエンゴム,ニトリル-ブタジエンゴム,エチレン-プロピレン-タ-ポリマーゴム,イソプレンゴム,クロロプレンゴム,イソブチレン-イソプレンゴム,エチレン-プロピレンゴム,シリコーンゴムからなる群から選ばれたものがある。
【0047】
又、熱可塑性エラストマーとしては、ポリスチレン系,ポリオレフィン系,ポリウレタン系,ポリエステル系,ポリアミド系,ポリブタジエン系,エチレン-酢酸ビニル系,ポリ塩化ビニル系からなる群から選ばれたものがある。
【0048】
更に、発泡剤としては、熱分解によるガス発生形のものがあり、発泡したエッジの比重は、0.07〜1.2の範囲が好ましい。
(3) 合わせ型の他方の金型35を用いて型締めした後、合わせ型37を加熱する。すると、エッジ基材33の粘度が低下すると共に、発泡し、一方の金型31と他方の金型35との間に形成された空間に内周縁部に第2の段部18が形成されたエッジ14が形成される。この時、エッジ基材33が有する自己接着力によりエッジ14の内周縁部と、振動板本体12の外周縁部とは接着され、一体化する((c)図参照)。
【0049】
尚、本実施の形態例では、一方の金型31と、他方の金型35とからなる合わせ型37を用いて一体的に形成された振動板本体12とエッジ14とは、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とが重なる部分の厚さ(T′+t′)がエッジ14の他の部分の厚さ(t)と略同じとなるように形成されている。
【0050】
上述した構成の振動板10および振動板10の製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 図4(b)に示すように、従来の振動板では、振動板本体1の外周縁部の裏面とエッジ5の内周縁部の表面が当接し、接着されている。
【0051】
一方、本実施の形態例では、図4(a)に示すように、振動板本体12の外周縁部の裏面側に第1の段部16を設けて、振動板本体12の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄くし、又、振動板本体12の外周縁部と重なるエッジ14の内周縁部の表面側に第2の段部18を設けて、エッジ14の内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄くすることにより、振動板本体12の外周縁部裏面とエッジ14の外周縁部表面のみならず、振動板本体12の端面がエッジ14に、又、エッジ14の端面が振動板本体12にそれぞれ当接している。
【0052】
よって、従来の振動板に比べて、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体12とエッジ14との接着強度が増加する。
【0053】
(2) 図4(b)に示すように、従来の振動板では、振動板本体1内周縁部とエッジ5の外周縁部とが重なる部分で、剛性が急激に変化する。
一方、図4(a)に示すように、本実施の形態例では、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部重なる部分の剛性は、振動板本体12の外周縁部近傍の剛性と、エッジ14の内周縁部近傍の剛性との中間的な剛性となり、逆共振現象が発生しにくい。
【0054】
(3) 振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とが重なる部分の厚さをエッジ14の他の部分の厚さと略同じとしたことにより、合わせ型37の金型31,35のエッジ14を形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジ14と金型31,35との離型性が良く、金型31,35のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する
尚、本発明は上記実施の形態例に限定するものではない。
【0055】
例えば、図5(a)に示すように、振動板本体12の外周縁部に、実施の形態例と逆の面側、即ち、表面側に第1の段部41を設けて、振動板本体12の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、又、エッジ14の内周縁部に実施の形態例と逆の面側、即ち、裏面側に第2の段部43を設けて、エッジ14の内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成し、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とを重ね合わせてもよい。
【0056】
図5(b)に示すように、振動板本体12の外周縁部の厚さを階段状に減少させ、エッジ14の内周縁部の厚さをステップ状に減少させ、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とを重ね合わせてもよい。
【0057】
図5(c)に示すように、振動板本体12の外周縁部の厚さを波線状に減少させ、エッジ14の内周縁部の厚さを波線状状に減少させ、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とを重ね合わせてもよい。
【0058】
図5(d)に示すように、振動板本体12の外周縁部の厚さを漸次的に減少させ、エッジ14の内周縁部の厚さを漸次的に減少させ、振動板本体12の外周縁部とエッジ14の内周縁部とを重ね合わせてもよい。
【0059】
図5(e)に示すように、振動板本体12の外周縁部の表面側に第1の段部45を、裏面側に第2の段部47を形成し、振動板本体12の外周側端面に凸部49を設けると共に、エッジ14の内周側端面に振動板本体12の凸部49が係合する凹部51を形成してもよい。
【0060】
2. 請求項3,6記載の発明に対応する第2の実施の形態例
次に、図6を用いて、第2の実施の形態例を説明する。
【0061】
(a)図において、振動板本体12の外周縁部には、裏面側へ突出し、外周縁部近傍の厚さと略同じの第1の段部61が形成され、エッジ14の内周縁部には、表面側へ突出し、内周縁部近傍の厚さと略同じで、振動板本体12の第1の段部61に係合する第2の段部63が形成されている。
【0062】
このような形状の振動板は、合わせ型の一方の金型65および他方の金型67を用いて製造され、製造方法は第1の実施の形態例と同様であるので、説明は省略する。
【0063】
上記構成の振動板および振動板の製造方法によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1) 第1の実施の形態例と同様に、振動板本体12とエッジ14との接触面積が振動板本体12とエッジ14との接着強度が増加する。
【0064】
(2) 振動板本体12の第1の段部61と、エッジ14の第2の段部63とが係合することで、金型65,67のエッジ14を形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジ14と金型65,67との離型性が良く、金型65,67のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0065】
尚、本発明は、上記実施の形態例に限定するものではない。例えば、図6(b)に示すように、振動板本体12の外周縁部に、表面側へ突出し、外周縁部近傍の厚さと略同じの第1の段部71を形成し、エッジ14の内周縁部に、裏面側へ突出し、内周縁部近傍の厚さと略同じで、振動板本体12の第1の段部71に係合する第2の段部73を形成しても、上述の構成の振動板および振動板の製造方法と同様な効果を得ることができる。
【0066】
【実施例】
本願発明者は、本発明の効果を確認するために、以下のような実験を行った。実験1. 振動板とエッジとの接着強度
従来の製造方法と、第1の実施の形態例の製造方法とで、径160mmの振動板をそれぞれ5枚づつ製造し、図7に示すように、90°分割で15mm幅の試料を切り出した。
【0067】
従って、従来の振動板の試料数が20、本発明の振動板の試料数が20となる。
これらすべての試料の引っ張り強度を調査した。
尚、使用した引張試験機は、STOROGRAPH R(東洋精機製)であり、引っ張り速度を50mm/minとした。
【0068】
この結果を示す図8から解るように、振動板とエッジとの接着強度が向上していることが確認できた。
実験.2 周波数音圧特性
実験1.で製造した従来の振動板と本発明の振動板の周波数音圧特性を調べた。本発明の振動板の方が、従来の振動板に比べて、特性がなだらかで、逆共振現象が発生していないことが確認された。
【0069】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1記載の発明の電気音響変換器用振動板、および請求項4記載の電気音響変換器用振動板の製造方法によれば、振動板本体の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、この振動板の外周部と重なるエッジの内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成することにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0070】
又、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが重なる部分の剛性は、振動板本体の外周縁部近傍の剛性と、エッジの内周縁部近傍の剛性との中間的な剛性となり、逆共振現象が発生しにくい。
【0071】
請求項2記載の発明の電気音響変換器用振動板、および、請求項5記載の電気音響変換器用振動板の製造方法によれば、振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことにより、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【0072】
請求項3記載の発明の電気音響変換器用振動板、および、請求項6記載の電気音響変換器用振動板の製造方法によれば、振動板本体の外周縁部に、外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を設け、前記エッジの内周縁部に、内周縁部近傍の厚さと略同じ厚さで、前記第1の段部と係合する第2の段部を設けたことにより、振動板本体の外周縁部とエッジの内周縁部とが接触する面積が増え、振動板本体とエッジとの接着強度が増加する。
【0073】
又、振動板本体の第1の段部と、エッジの第2の段部とが係合することで、金型のエッジを形成する面にアンダーカット面がなくなり、エッジと金型との離型性が良く、金型のメンテナンスが容易で、生産効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態例の振動板の断面図で、(a)図は全体の断面図、(b)図は(a)図のA部分の拡大図である。
【図2】図1に示す振動板本体の製造方法を説明する図である。
【図3】図1に示す振動板本体とエッジとを一体成形する方法を説明する図である。
【図4】第1の実施の形態例の効果を説明する図である。
【図5】第1の実施の形態例の他の形態例を説明する図である。
【図6】第2の実施の形態例を説明する図である。
【図7】実施例の実験1で用いた試料の説明図である。
【図8】実施例の実験1の結果を示す図である。
【図9】実施例の実験2の結果を示す図である。
【図10】従来例を説明する図である。
【符号の説明】
10 振動板(電気音響変換器用振動板)
12 振動板本体
14 エッジ

Claims (6)

  1. 振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板であって、
    前記振動板本体の外周縁部の厚さを外周縁部近傍の厚さより薄く形成し、
    前記エッジの内周縁部の厚さを内周縁部近傍の厚さより薄く形成したことを特徴とする電気音響変換器用振動板。
  2. 前記振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことを特徴とする請求項1記載の電気音響変換器用振動板。
  3. 振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板であって、前記振動板本体の外周縁部に、外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を設け、
    前記エッジの内周縁部に、内周縁部近傍の厚さと略同じ厚さで、前記第1の段部と係合する第2の段部を設けたことを特徴とする電気音響変換器用振動板。
  4. 振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板の製造方法であって、
    外周縁部の厚さが外周縁部近傍の厚さより薄い振動板本体を形成し、
    該振動板本体と、主成分のゴムに発泡剤を混合した基材とを合わせ型の一方の金型に配置し、
    前記合わせ型の他方の金型を用いて型締めした後、
    前記合わせ型を加熱し、内周縁部の厚さが内周縁部近傍の厚さより薄いエッジを成形すると同時に、前記振動板の外周縁部に前記エッジの内周縁部を一体化することを特徴とする電気音響変換器用振動板の製造方法。
  5. 前記振動板本体の外周縁部と前記エッジの内周縁部とが重なる部分の厚さを前記エッジの他の部分の厚さと略同じとしたことを特徴とする請求項4記載の電気音響変換器用振動板の製造方法。
  6. 振動板本体と、該振動板本体の外周縁部に内周縁部が重なるように設けられ、前記振動板本体の材質とは異なる材質であって、主成分のゴムに発泡剤を混入した材質のエッジとからなる電気音響変換器用振動板の製造方法であって、
    外周縁部に外周縁部近傍の厚さと略同じ厚さの第1の段部を有する振動板本体を形成し、
    該振動板本体と、主成分のゴムに発泡剤を混合した基材とを合わせ型の一方の金型に配置し、
    前記合わせ型の他方の金型を用いて型締めした後、
    前記合わせ型を加熱し、内周部に前記第1の段部と係合し、厚さが内周部近傍と略同じ厚さの第2の段部を有するエッジを成形すると同時に、前記振動板の外周縁部に前記エッジの内周縁部を一体化することを特徴とする電気音響変換器用振動板の製造方法。
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