JP3833773B2 - 凹溝付き空調ダクト - Google Patents
凹溝付き空調ダクトInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インストルメントパネルに設けられた空調用吹出口に通じる空調用ダクトに関し、特に、ワイヤリングハーネスを凹溝に一体的に取着できるようにした凹溝付き空調ダクトに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車などの車両で、インストルメントパネルの裏面側に配されるワイヤリングハーネスは、図10のようにハーネスにクリップをビニルテープ等で巻いて取り付け、該クリップをインストルメントパネルやボディに差し込んでこれらに係止していた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかるに、こうした方法はクリップを多く必要とし、また、クリップをビニルテープで巻いて取り付けるために工数が嵩んでいた。
更に、電線の束となった該ワイヤリングハーネスの適切な位置にクリップを取り付け、所定のインストルメントパネルやボディに差し込んで係止させるのであるが、これが結構難しかった。ワイヤリングハーネスの配設経路は三次元的にくねっており、これに対応してクリップ位置を定めなければならず、現場合わせ要素もあったりして配設が困難で、ワイヤリングハーネスを捩ってクリップ部分を無理に差し込まねばならないことがあった。そして、捩って無理に取り付けるには力を要し、また、その取付け部分はストレスがかかり、振動で外れる虞れがあった。
【0004】
本発明は、上記問題点を解決するもので、クリップなしで、しかも、ワイヤリングハーネスを無理に捩ることもなく、ワイヤリングハーネスを取着できるようにした凹溝付き空調ダクトを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成すべく、請求項1記載の発明の要旨は、インストルメントパネルの裏面側に配され、同方向に並設する二つのダクトと両ダクト間に形成される凹溝とがブロー成形で一体に造られ、且つ該凹溝を二つのダクトの底面から延設された板部と両ダクトの側壁とで形成すると共に、両側壁の上端から凹溝に張出す突片を適宜設け、断面視で、該突片と前記凹溝で囲まれた空間にワイヤリングハーネスが配設されるようにして、前記凹溝にワイヤリングハーネスを嵌入し得るようにしたことを特徴とする凹溝付き空調ダクトにある。
請求項1の発明のごとく、同方向に並設する二つのダクト間に凹溝を形成し、該凹溝にワイヤリングハーネスを嵌入できるようにすると、捩ったりせずに無理なくワイヤリングハーネスをインストルメントパネルへ取着できる。そして、凹溝付き空調ダクトがブロー成形で一体に造られると、凹溝等を有する複雑形状にあっても、製造が極く簡単で低コストで製作できる。突片が設けられると、凹溝内にワイヤリングハーネスを嵌入したら、突片がストッパの役目を果たし、ワイヤリングハーネスが抜け出なくなる。
ところで、近年、空調ダクトは、各吹出口からの空調状態を個別に設定できるよう、ダクトを分ける検討が始っている。本発明は、各吹出口へ通じる二つの空調ダクト間に凹溝を形成し、ここにワイヤリングハーネスを嵌め込んで保持させるものである。
【0007】
請求項2に係る発明の凹溝付き空調ダクトは、請求項1で、突片が板部に向って下方傾斜して張出すことを特徴とする。
請求項2の発明のごとく、突片が板部に向って下方傾斜していると、溝部へのワイヤリングハーネスの嵌入が容易になる。そして、このような複雑形状にあっても、ブロー成形品で一体に造ると、コスト低減に役立つ。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る凹溝付き空調ダクトの実施形態について詳述する。図1〜図9は本発明の凹溝付き空調ダクト(以下、単に「空調ダクト」という。)の一形態を示したもので、図1は空調ダクトの全体斜視図、図2は図1のA−A線に沿う断面図、図3は図1のD−D線に沿う断面図、図4は図1のC−C線に沿う断面図、図5,図6は図2に対応する別態様の断面図、図7は図3に対応する別態様の断面図、図8は図2の突片が形成される前段階にあるブロー成形品の要部斜視図、図9は図8から不要部分がカットされ突片を形成した状態にある斜視図を示す。
【0009】
本発明の空調ダクトは、ブロー成形品であり、インストルメントパネルの裏面側に配され、ほぼセンターに位置するヘッダー部1から分岐して、インストルメントパネルに設けられる中央吹出口V1 と左右吹出口V4 ,V5 と窓ガラスに向けた吹出口V2 ,V3 等へと通じる各ダクト2,2,…を形成する(図1)。各吹出口V1 〜V5 の空調条件を個別に設定できるよう、各ダクト2はヘッダー部1から個々独立したものとなっている。
【0010】
そして、上記空調ダクトは、左右いずれも、二つのダクト2,2(ここでは、ヒーターダクトとサイドデフダクト)が所定間隔を保って同方向に走り、凹溝3が形成されるようにしている。該凹溝3は両ダクト2の底面22から延設された板部4と両ダクト2の側壁21とで形成されているが、該板部4もブロー成形で一体的に造られる。凹溝3はワイヤリングハーネス9を嵌入し得る幅Wと深さLを有する(図3)。
【0011】
また、上記凹溝3を形成する両ダクト側壁21の上端には、適宜、突片51が設けられている。突片51は図2に示すように凹溝3の板部4に向って下方傾斜して張出し、対向する両突片間距離Sはワイヤリングハーネス9の太さdより小さく設定される。該距離Sがワイヤリングハーネス9の太さより小さくても、合成樹脂品は一定の弾撥性を備えるので、ワイヤリングハーネス9を凹溝3へ押し込めば、突片51が弾性変形しながらワイヤリングハーネスの凹溝への嵌入を可能とする。そして、ワイヤリングハーネス9が一旦嵌入されると、両突片間距離Sが小さく、突片51が戻り構造になって、ワイヤリングハーネス9は抜け出せなくなる。
突片51は下方傾斜させることなく図5のように水平に張り出してもよいが、図2のごとく、突片51を下方傾斜させると、更に、これがガイドとなって、ワイヤリングハーネス9の凹溝3への嵌込みが円滑に進むのでより好ましくなる。突片51も、板部4と同様、ブロー成形でダクト2と一緒に一体成形される。
【0012】
突片51は、具体的には次のようにして造られる。まず、図8のようなブロー成形品を製造する。二つのダクト2を所定間隔を保って同方向に走らせて凹溝3を形成するが、突片51を設けようとする箇所では、板部4が突片形成箇所の手前部分でスロープ61をつくって上昇させる。そして、スロープ61を両ダクト2の上端に到達させた後は下り傾斜部62とする。突片部分を設けるべく、ダクト側壁21の上端から板部4に向って下方傾斜する下り傾斜部5を形成するが、これに対応する下り傾斜部62とする。更に、該下り傾斜部62が突片51の最下端レベルまで下った地点で水平に転じさせて、フラット面63ができるブロー成形品をまずもって造る。
ここで、図8のB−B線に沿う断面図を見ると、あたかも板部4がフラット面63まで上がった状態になっている。
【0013】
ブロー成形では、成形品形状したキャビティをもつ二つ割りのブロー金型でパリソンを挟んで、その後、パリソン内に空気を吹込んで膨らませ、型面にパリソンを押しつけダクト部分を形成するが、この段階の空調ダクト(成形品)は、まだ図8のような形状にある。板部4やスロープ61,下り傾斜部5,62,フラット面63は、ブロー金型同士が圧着した部分で、連続的につながる板状体になっている。
【0014】
しかる後、突片51を残して、他のスロープ61,下り傾斜部5,62,フラット面63の除去部分をプレス等で打抜くのである。図9はこうして出来上った製品状態を示す。符号7はプレスカット跡で、スロープ61の極く一部分を残すことがあるが、ワイヤリングハーネス9が嵌入できれば支障はない。
こうして、適宜位置に突片51が設けられ、図2,図3のごとく、断面視で、突片51と凹溝3とで囲まれた空間にワイヤリングハーネス9が配設されるようにしている。図1では、左右のそれぞれの凹溝3の一ヶ所しか突片51が設けられていないが、突片51の数は適宜増やすことができる。
【0015】
本実施形態ではスロープ等の除去部分をパンチングプレスに依って除去したが、これに限らず、例えば、ブロー成形段階で除去部分を薄肉形成して、この部分を後からナイフで取除くとか、或いは、ブロー金型の喰い切りにその切除をさせてもよい。
【0016】
ところで、突片51が形成される領域では、板部4が盛り上がってスロープ61,下り傾斜部62,フラット面63に変化するため、板部4はなく、二つのダクト2,2間は開口Oとなる(図9)。しかし、開口Oは一部分にとどまり、スロープ端まで板部4がきているので、嵌入されたワイヤリングハーネス9を突片51と板部4とダクト側壁21,21で十分保持できる構成にある。
【0017】
本実施形態では、図1で紙面の上方を上側として、凹溝3を二つのダクト2の底面22から延設された板部4と両ダクト2の側壁21とで形成すると共に両側壁21の上端から凹溝3に張出す突片51を設けたが、これに代え、図6,図7のように、凹溝3を二つのダクト2の天板23から延設された板部4と両ダクト2の側壁21とで形成すると共に両側壁21の下端から凹溝3に張出す突片51を設けることも可能である。斯る場合、ワイヤリングハーネス9の嵌入方向が、図2〜図4と比べ、上下が逆になるだけで基本的構造は変らず、図1で紙面の下方を上側とすることで本発明の範囲内にあるとする。
【0018】
このように構成した空調ダクトは、ダクト2,2間の凹溝3にワイヤリングハーネス9を嵌入させるだけで、空調ダクトに無理なくワイヤリングハーネス9を取付けられるので、差し込み口にクリップを捩って無理に取付けていた従来の苦労から開放され、その取付けは頗る楽になる。勿論、クリップがなくなり、ビニルテープでクリップを巻かずに済むようになり、作業工数の削減,資材費の低減にも役立つ。更に、ワイヤリングハーネス9自身も凹溝3に沿わせる結果、ワイヤリングハーネス単独で配設するより短くなるので、コスト低減につながる。
【0019】
そして、凹溝3へのワイヤリングハーネス9の嵌込みにあっては、突片間距離がワイヤリングハーネス9の太さdより少し小さくするが、押し込めば突片51が弾性変形して、ワイヤリングハーネス9が滑るようにして凹溝3内に納まるので、その取付け作業も容易となる。突片51を板部4に向って下方傾斜させていると、ワイヤリングハーネス9の凹溝3への嵌入が一層スムーズに進み、有益となる。更に、一旦、ワイヤリングハーネスが凹溝内に納まれば、突片51がストッパになってワイヤリングハーネス9は凹溝外へ出難くなり、品質的にも優れる。運転中の振動等によっても凹溝3から外れ出ることはない。
加えて、凹溝3及び突片51のあるこうした空調ダクトをブロー成形によって簡単に造れる構造になっているので、廉価に生産できる特長もある。単純に二つのダクトを間隔をおいて並べて凹溝形成すると(例えば、実開昭58−143712号公報)、二つのダクトが別体品であるため、製造コストが高くなるばかりか、両者を配設調整する手間、更にそれらの組付け作業が厄介になり、負担ばかりが増大してメリットをさほど亨受し得ない。本発明によれば、ブロー成形で凹溝付き空調ダクトの一体品が楽に造られるので、こうした問題をことごとく解消し、極めて有益となっている。
【0020】
尚、本発明においては、前記実施例に示すものに限られず、目的,用途に応じて本発明の範囲で種々変更できる。ヘッダー1,ダクト2,凹溝3,板部4,突片5等の形状,大きさ,個数などは用途に応じて適宜選択できる。突片51は実施形態のごとく対向して設けなくてもよい。
【0021】
【発明の効果】
以上のごとく、本発明に係る凹溝付き空調ダクトは、ワイヤリングハーネスを凹溝に嵌め込むだけで、たやすくしかも確実に空調ダクトに取着できるようになり、作業性向上,品質向上等に優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の凹溝付き空調ダクトの一形態で、空調ダクトの全体斜視図を示す。
【図2】図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図1のD−D線に沿う断面図である。
【図4】図1のC−C線に沿う断面図である。
【図5】図2に対応する別態様の断面図である。
【図6】図2に対応する別態様の断面図である。
【図7】図3に対応する別態様の断面図である。
【図8】図2の突片が形成される前段階にあるブロー成形品の要部斜視図である。
【図9】図8から不要部分がカットされ突片を形成した状態にある斜視図である。
【図10】従来技術の説明図である。
【符号の説明】
2 ダクト
3 凹溝
4 板部
51 突片
9 ワイヤリングハーネス
Claims (2)
- インストルメントパネルの裏面側に配され、同方向に並設する二つのダクトと両ダクト間に形成される凹溝とがブロー成形で一体に造られ、且つ該凹溝を二つのダクトの底面から延設された板部と両ダクトの側壁とで形成すると共に、両側壁の上端から凹溝に張出す突片を適宜設け、断面視で、該突片と前記凹溝で囲まれた空間にワイヤリングハーネスが配設されるようにして、前記凹溝にワイヤリングハーネスを嵌入し得るようにしたことを特徴とする凹溝付き空調ダクト。
- 前記突片が板部に向って下方傾斜して張出す請求項1記載の凹溝付き空調ダクト
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