JP3833033B2 - 耐食性に優れるプレコート鋼板 - Google Patents

耐食性に優れるプレコート鋼板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は耐食性に優れるプレコート鋼板に係わり、特に亜鉛系めっき鋼板を原板とする耐食性にすぐれるプレコート鋼板、また耐食性にすぐれるとともに耐指紋性、成形加工性に優れたプレコート鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
家電用、建材用、自動車用などに、従来の加工後塗装されていたポスト塗装製品に代わって、着色した有機皮膜を被覆したプレコート鋼板が使用されるようになっている。この鋼板は、特に、下地に亜鉛系のめっき皮膜を有し、その上に有機皮膜を被覆したもので、美感を有しながら、加工性を有し、かつ耐食性が良好であるという特性を有している。
【0003】
例えば、特開平08−168723号公報には、皮膜の構造を規定することによって加工性と耐汚染性、硬度として優れたプレコート鋼板を得る技術が開示されている。また特開平03−100180号公報には特定のクロメート処理液を用いることで端面耐食性を改善したプレコート鋼板が開示されている。
【0004】
また、例えば特開平3−39485号公報には、亜鉛系めっき鋼板の上にクロメート皮膜処理を行い、水性樹脂にシリカとガラス転移温度が40℃以上のワックスを分散した樹脂塗料をドライ膜厚で0.3〜3g/m2 被覆したものが開示されている。また、特開平3−28380号公報には、電気亜鉛系めっき鋼板の上にクロメート皮膜処理を行い、カルボキシル化したポリエチレン樹脂とテフロン潤滑剤からなる塗料をドライ膜厚で0.5〜4g/m2 被覆したものが開示されている。
これらのプレコート鋼板は、めっき、クロメート、有機皮膜の複合効果によって耐食性と共に、加工性、溶接性、塗料密着性を有し、加工後塗装を省略して、生産性や品質改良を目的とするものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このようなプレコート鋼板においても、耐食性付与には主としてクロメート系の防錆処理が行われている。クロメート処理は、水溶性の6価のクロムで処理すると、3価クロムの難溶性皮膜を形成してバリヤ効果を有するとともに、皮膜に傷が発生すると6価クロムが溶出してバリヤを補修する性質があり、従って、耐食性に優れている特徴を有するので、特に亜鉛系めっき鋼板の防錆用途では今日まで耐食性付与皮膜としては専らクロメート処理が行われている。
【0006】
しかしながら、クロメート処理から溶出する可能性のある6価クロムの毒性問題から最近ではノンクロム防錆処理に対する要望が高まっている。
そこで、本発明では、このような要望に答え、耐食性に優れたプレコート鋼板、あるいは耐食性に優れ、加工性、潤滑性、耐指紋性などを有するプレコート鋼板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を、鋼板上に、固形分として樹脂100重量部と少なくともバナジウム酸化合物0.1〜100重量部を含み、該バナジウム酸化合物はバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム及びバナジウム酸カリウムから選ばれ、かつ任意にチオカルボニル基含有化合物0.1〜3000重量部、りん酸化合物0.01〜300重量部(PO4として)および微粒シリカ1〜2000重量部のうち少なくとも1種をさらに含有する皮膜層を下地処理層として有し、さらにその上に着色された皮膜層を上層として有することを特徴とするプレコート鋼板によって、達成する。
【0008】
また、本発明によれば、前記下地処理層と前記着色された皮膜層の間に防錆顔料を含む皮膜層を下塗り層として有するプレコート鋼板も提供される。さらに、前記下地処理層の上に防錆顔料を添加した皮膜層を上層として有するプレコート鋼板も提供される。
このプレコート鋼板は、従来のクロメート処理したプレコート鋼板に劣らない耐食性を有し、かつクロムを用いない、あるいはクロムの量を減らすことができる利点を有する。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプレコート鋼板の防錆処理は主として亜鉛めっき鋼板の防錆処理を目的として開発されたが、本発明を適用できる鋼板は亜鉛めっき鋼板や亜鉛合金めっき鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板等に限定されず、冷延鋼板、熱延鋼板、各種めっき鋼板、ステンレスなどのいずれにも好適に適用できる。
【0010】
この鋼板には、下地処理前に、湯洗、アルカリ脱脂などの通常の処理を行うことができる。
本発明のプレコート鋼板は、下地処理層にバナジウム化合物を含むことを特徴としている。
下地処理層は特に水性樹脂をベースとした皮膜層である。ここで、水性樹脂としては、水溶性樹脂のほか、本来水不溶性でありながらエマルジョンやサスペンジョンのように不溶性樹脂が水中に微分散された状態になり得るもの(水分散性樹脂)を含めていう。このような水性樹脂として使用できる樹脂としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、アクリルオレフィン樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、アルキド系樹脂、フェノール系樹脂、その他の加熱硬化型の樹脂などを例示でき、架橋可能な樹脂であることがより好ましい。特に好ましい樹脂は、アクリルオレフィン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、および両者の混合樹脂である。これらの水性樹脂の2種類以上を混合して、あるいは共重合して使用してもよい。また、これらに架橋剤としてメラミン樹脂などのアミノ樹脂、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート樹脂などを加えてもよい。
【0011】
バナジウム酸化合物は、クロム酸化合物と同様の防錆作用を奏することを見出した。バナジウム酸化合物は、クロム酸化合物と同様に、塗布時に鋼板(特に亜鉛)の表面に不動態皮膜を形成して防錆効果を奏する。さらに、鋼板(特に亜鉛)の表面に腐食部位が発生する場合にも、皮膜中に存在するバナジウム酸イオンが腐食部位に作用して腐食反応を抑制する効果も有すると考えられる。
【0012】
下地処理層に用いるバナジウム酸化合物としては、例えば、バナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム、バナジウム酸カリウムなどを用いることができる。
バナジウム酸化合物の量は、樹脂(固形分)100重量部に対して、0.1〜100重量部の範囲内がよい。これより少ないと防錆効果が十分でなく、これより多くても防錆効果は飽和して不経済になる。
【0013】
本発明の下地処理層は、防錆効果を発揮する添加剤として、バナジウム酸化合物のほか、さらにチオカルボニル基含有化合物、りん酸化合物、微粒シリカの1種以上を含有することができる。
チオカルボニル基含有化合物は、硫化物であって、金属表面に吸着し易く、また酸化力も優れているので、金属表面を不動態化して、防錆効果を奏する。特に、チオカルボニル基含有化合物におけるチオール基のイオンは、鋼板表面(特に亜鉛表面)の活性なサイトに吸着されて防錆効果を発揮すると考えられる。
【0014】
また、チオカルボニル基含有化合物は、樹脂皮膜の架橋促進剤として作用し、樹脂皮膜のミクロポアを少なくして、水や塩素イオンなどの有害イオンを効率よく遮断する効果も有し、これも防錆効果に寄与すると考えられる。
本発明においてチオカルボニル基含有化合物とは、チオカルボニル基(式1)
【0015】
【化1】
Figure 0003833033
を有する化合物をいう。代表的には、
【0016】
【化2】
Figure 0003833033
で表されるチオ尿素およびその誘導体、例えば、メチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素、エチルチオ尿素、ジエチルチオ尿素、ジフェニルチオ尿素、チオペンタール、チオカルバジド、チオカルバゾン類、チオシアヌル酸類、チオヒダントイン、2−チオウラミル、3−チオウラゾールなど;
【0017】
【化3】
Figure 0003833033
で表されるチオアミド化合物、例えば、チオホルムアミド、チオアセトアミド、チオプロピオンアミド、チオベンズアミド、チオカルボスチリル、チオサッカリンなど;
【0018】
【化4】
Figure 0003833033
で表されるチオアルデヒド化合物、例えば、チオホルムアルデヒド、チオアセトアルデヒドなど;
【0019】
【化5】
Figure 0003833033
で表されるカルボチオ酸類、例えば、チオ酢酸、チオ安息香酸、ジチオ酢酸など;
【0020】
【化6】
Figure 0003833033
で表されるチオ炭酸類;その他の式1の構造を有する化合物、例えば、チオクマゾン、チオクモチアゾン、チオニンブルーJ、チオピロン、チオピリン、チオベンゾフェノンなどが、例示される。
【0021】
チオカルボニル基含有化合物の含有量は、樹脂100重量部に対して、0.1〜3000重量部、さらに好ましくはチオカルボニル基含有化合物の含有量は0.5〜30重量部がよい。チオカルボニル基含有化合物の含有量がこれより少ないと防錆効果の向上がなく、これより多いと上塗り塗膜の密着性に劣ることがあり、また経済的でない。
【0022】
本発明の下地処理層は、バナジウム酸化合物あるいはチオカルボニル基含有化合物と共にりん酸化合物を含むことにより、その防錆効果が著しく向上する。バナジウム酸化合物あるいはチオカルボニル基含有化合物は鋼板表面(特に亜鉛表面)の活性なサイトに吸着されて防錆効果を発揮するが、鋼板(特に亜鉛)の不活性な面にりん酸が作用して活性な表面を形成し、そこにバナジウム酸化合物あるいはチオカルボニル基含有化合物が吸着されるので、鋼板(特に亜鉛)の表面全体に防錆効果が発揮され、防錆効果が向上するものと考えられる。また、りん酸化合物も樹脂皮膜の架橋促進剤として作用し、樹脂皮膜のミクロポアを少なくして、水や塩素イオンなどの有害イオンを効率よく遮断する効果も有し、これも防錆効果に寄与すると考えられる。
【0023】
りん酸化合物としては、りん酸イオンを含めばよいが、例えば、リン酸、ポリリン酸、リン酸アンモニウム、リン酸ナトリウム、リン酸カリウム、各種リン酸エステルなどを使用することができる。
下地処理層におけるりん酸化合物の量は、固形分として水性樹脂100重量部に対して、りん酸イオンとして0.01〜300重量部、さらに好ましくは0.5〜10重量部範囲内が好ましい。りん酸化合物が0.01重量部未満では防錆効果が十分に発揮されず、一方300重量部を越えるとかえって防錆効果が低下したり、コーティング溶液の状態で樹脂がゲル化したりして不具合があることがある。
【0024】
また、下地処理層に微粒シリカを添加しても、防錆作用(耐食性)が促進される。しかも耐食性に加えて、乾燥性、耐擦傷性、塗膜密着性も改良できる。
本発明において微粒シリカとは、微細な粒径をもつために水中に分散させた場合に安定に水分散状態を維持でき半永久的に沈降が認められないような特性を有するシリカを総称していうものである。上記微粒シリカとしては、ナトリウムなどの不純物が少なく、弱アルカリ系のものであれば、特に限定されない。例えば、「スノーテックスN」、「スノーテックスNS」、「スノーテックスNXS」(日産化学工業社製)、「アデライトAT−20N」(旭電化工業社製)などの市販のシリカゾル、または市販のアエロジル(粉末シリカ、デグサ社製)などを用いることができる。シリカの粒径は小さいほど耐食性は良くなる。
【0025】
バナジウム酸化合物を微粒シリカと併用すると、バナジウム酸化合物が微粒シリカの表面に吸着して、相乗的に防錆効果が奏せられる。この意味で、微粒シリカがアンモニウム吸着型や酸化アルミニウム被覆型の場合には、吸着し易いので防錆効果が向上して好適である。
微粒シリカの含有量は、固形分換算で樹脂100重量部に対して、1〜2000重量部さらに好ましくは10〜400重量部であることが好ましい。1重量部未満では添加の効果が少なく、2000重量部以上では耐食性向上の効果が飽和して不経済であるほか、皮膜が硬くなりすぎ皮膜割れ、剥離などが発生して耐食性が低下することもある。
【0026】
下地処理層に用いる防錆剤の組合せとしては、▲1▼バナジウム酸化合物と微粒シリカ、▲2▼バナジウム酸化合物とチオカルボニル基含有化合物、▲3▼バナジウム酸化合物とチオカルボニル基含有化合物と微粒シリカ、▲4▼バナジウム酸化合物とチオカルボニル基含有化合物と微粒シリカとりん酸化合物などの組合せが好ましいが、これらに限定されない。
【0027】
さらに、本発明の下地処理層には、他の成分が含まれていてもよい。例えば、含量、界面活性剤などを挙げることができる。また、水性樹脂とシリカ粒子、顔料との親和性を向上させ、更に水性樹脂と亜鉛または鉄のりん酸化物層との密着性などの向上させるためにシランカップリング剤もしくはその加水分解縮合物またはそれらの両方を配合してもよい。ここでの「シランカップリング剤の加水分解縮合物」とは、シランカップリング剤を原料とし、加水分解重合させたシランカップリング剤のオリゴマーのことをいう。
そのような他の成分の顔料としては、例えば、酸化チタン(TiO2 )、酸化亜鉛(ZnO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、炭化カルシウム(CaCO3 )、硫酸バリウム(BaSO4 )、アルミナ(Al2 3 )、カオリンクレー、カーボンブラック、酸化鉄(Fe2 3 、Fe3 4 )などの無機顔料や、有機顔料などの各種着色顔料などを用いることができる。
【0028】
本発明で使用できる上記のシランカップリング剤としては特に制限はないが、好ましいものとしては、例えば以下のものを挙げることができる:ビニルメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N′−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−〔2−(ビニルベンジルアミノ)エチル〕−3−アミノプロピルトリメトキシシラン。
【0029】
特に好ましいシランカップリング剤は、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N−(1,3−ジメチルブチリデン)−3−(トリエトキシシリル)−1−プロパンアミン、N,N′−ビス〔3−(トリメトキシシリル)プロピル〕エチレンジアミンである。これらシランカップリング剤は1種類を単独で使用してもよいし、または2種類以上を併用してもよい。
【0030】
本発明では、上記シラン化合物は、樹脂100重量部に対して0.1〜100重量部含有しているのが望ましい。シラン化合物の含有量が0.1重量部未満になるとシラン化合物の添加効果が認められず、耐食性、上塗り塗装密着性向上効果が不足し、100重量部を越えると薬液としての貯蔵安定性が低下し、好ましくない。
【0031】
鋼板に下地処理層を形成するには、水中に上記の成分を含む下地処理剤(コーティング剤)を作成し、鋼板に塗布し、塗膜を加熱、乾燥する。架橋型、硬化型の樹脂はこの加熱により架橋、硬化させる。塗膜の加熱、乾燥は、下地処理剤を塗布した鋼板を熱風や誘導加熱等で加熱して乾燥させるほか、加熱した鋼板に下地処理剤を塗布して乾燥させてもよい。加熱温度としては、50〜250℃がよい。50℃未満では水分の蒸発速度が遅く十分な成膜性が得られないので、防錆力が不足する。一方250℃を越えると、水性樹脂の熱分解などが生じるので、SST性、耐水性が低下し、また外観も黄変する問題がある。70〜160℃がより好ましい。熱風乾燥では1秒〜5分間の乾燥時間が好ましい。
【0032】
下地処理層の膜厚(乾燥)は、0.05μm 以上が好適である。0.05μm 未満では、防錆力や密着力が不足する。着色皮膜層と下地処理層の間に防錆顔料を添加した皮膜層(後述)を設けない場合には、耐食性確保の観点から、下地処理層の乾燥膜厚は3μm以上、さらに好ましくは5μm以上であると良い。一方膜厚が厚すぎると、下地処理層としては不経済であり、塗装にも不都合である。そこで、膜厚の上限としては10μm以下がよい。
【0033】
下地処理層の塗布方法は、特に限定されず、一般に使用されるエアナイフ、カーテンコート、ロールコート、エアースプレー、エアーレススプレー、浸漬などが採用できる。
下地処理層の乾燥、焼付けは熱風炉、誘導加熱炉、近赤外線炉など公知の方法あるいはこれらを組み合わせた方法で行えばよい。また使用する水性樹脂の種類によっては、紫外線や電子線などのエネルギー線によって硬化させることもできる。あるいはこれらの強制乾燥を用いずに、自然乾燥してもよいし、或いは鋼板をあらかじめ予熱しておいて、その鋼板に塗布後自然乾燥してもよい。
【0034】
本発明のプレコート鋼板は、下地処理した鋼板の上に、着色した皮膜層を有することを特徴としている。この着色皮膜層は、鋼板に意匠性を付与し、この上にさらに塗装を施さなくても使用できる被覆鋼板を得るためには必須の層である。この皮膜層は、着色のために必要な顔料や染料等を含む。顔料としては、有機系、無機系、両者の複合系にかかわらず公知のものを使用することができ、チタン白、亜鉛華、アルミナ白、亜鉛黄、シアニンブルー、等のシアニン系顔料、カーボンブラック、鉄黒、べんがら、黄色酸化鉄、モリブデートオレンジ、ハンサイエロー、ピラゾロンオレンジ、アゾ系顔料、紺青、縮合多環系顔料、等が例示できる。この他に、金属片・粉末、パール顔料、マイカ顔料、樹脂ビーズ等、意匠性や導電性等の機能性を付与するための添加物を加えても良い。
【0035】
染料としても、アゾ染料、アントラキノン染料、インジゴイド染料、硫化染料、フタロシアニン染料、ジフェニルメタンおよびトリフェニルメタン染料、その他ニトロ染料、アクリジン染料等、公知のものが用いられる。
被覆層のバインダーとしては、有機系、無機系のバインダーが使用できる。有機系の樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、フッ素系樹脂、ブチラール樹脂、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂等である。これらの混合物や共重合物も使用できる。また、これらに、イソシアネート樹脂、アミノ樹脂、シランあるいはチタンカップリング剤等を架橋剤や補助成分として併用することができる。本発明による被覆鋼板は、成形加工された後、このまま使用されることを前提としているので、この着色層は、折り曲げやプレス成形に際して割れや剥離が無いことを求められる。このような観点からは、ポリエステル樹脂をメラミン樹脂で架橋する樹脂系、ポリエステル樹脂をウレタン樹脂(イソシアネート、イソシアネート樹脂)で架橋する樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フッ素樹脂系(溶剤可溶型、アクリル樹脂との分散混合型)が望ましい。樹脂は水系、溶剤系、粉体系、無溶剤系のどのような形態でも良い。
【0036】
また、着色に直接関わらない顔料や添加物成分、たとえば硫酸バリウム、炭化カルシウム、カオリンクレー等の顔料、消泡剤、レベリング剤、分散補助剤等の添加剤等、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、エステル系、パラフィン系、フッ素系などの有機ワックス成分、二硫化モリブデン等の無機ワックス成分等、塗料粘度を下げるための希釈剤、溶剤、水等を加えることができる。
【0037】
樹脂中の着色成分の量は特に限定されず、必要な色や隠蔽力によって決定すればよい。たとえば、黒に着色するためにカーボンブラックを配合する場合には、固形分換算の顔料重量濃度で1〜5%入れれば十分であり、たとえば白に着色するためにチタン白を配合する場合には、固形分換算の顔料重量濃度で30〜55%程度が必要である。
【0038】
着色皮膜層は、ロールコーター、カーテンコーター、静電塗装、スプレー塗装、浸漬塗装等の公知の方法で下地処理層の上に塗装され、その後、熱風、誘導加熱、近赤外線、遠赤外線等の加熱によって乾燥、硬化される。着色皮膜層の樹脂が電子線や紫外線などの放射線によって硬化するタイプのものであれば、電子線照射、紫外線照射によって硬化される。これらの併用であってもよい。着色皮膜層の種類に応じた乾燥、硬化方式を選択することができる。乾燥、焼付け板温も、皮膜層の種類に応じて決定される。一般的な塗装鋼板の連続生産ラインにおいては、この板温は150〜250℃である。
【0039】
着色皮膜層の膜厚は特に限定されないが、均一な着色外観を得るためには、5μm以上の乾燥膜厚があることが望ましい。さらに望ましくは8μm以上が良い。膜厚の上限はないが、塗装鋼板の製造ラインで連続的にコイルで塗装する場合には、1回の塗装で乾燥膜厚が50μm程度であることが多い。この上限は主に「ワキ」と呼ばれる塗膜中の揮発分が塗膜中から系外に揮発する際に、塗膜の粘度が上がりすぎている場合に起こる欠陥の発生によって支配されることが多い。切り板に断続的に塗装しながら製造する場合には、焼付けを緩やかな条件で行うことが可能であり、この上限乾燥膜厚は200μm程度まで上がる。また、スプレー塗装などで1枚毎に処理する場合には、更にこの上限膜厚は上がる。
【0040】
本発明のプレコート鋼板は、下地処理層と着色皮膜層の間に、必要に応じて、さらに、防錆顔料を添加した皮膜層を下塗り層として有することができる。あるいは、下地処理層の上に、着色皮膜層なしに、防錆顔料を添加した皮膜層を上層として有することができる。
この下塗り層は、主に耐食性の向上を目的とする層であるが、その他に成形加工性、耐薬品性などの特性も考慮して設計される。また、上層は、典型的には、潤滑性、耐指紋性、耐擦傷性、成形加工性などの付与を目的とする層であることができる。
下地処理層の上層の下塗り層に防錆顔料が含まれることで、下地処理層との相乗効果で耐食性が顕著に向上する。
【0041】
本発明の下地処理層がノンクロムなので、この下塗り層または上層の防錆顔料もノンクロムであることが好ましいが、それに限定されるわけではない。
この下塗り層または上層のベースは、水系、溶剤系、粉体などのいずれの形態のものでもよいし、接着剤層であってもよい。また、有機皮膜、無機系皮膜、あるいは両者の複合物でもよい。
水系樹脂としては、下地処理層の水性樹脂と同様のものを使用することができるが、例えば、ポリアクリル系、ポリオレフィン系、ポリウレタン系、ポリエポキシ系、ポリエステル系、ポリブチラール系、ポリアミド系、ポリアミノ系およびこれらの共重合体や混合物を挙げることができる。
【0042】
溶剤系、粉体系の皮膜を形成する樹脂は下地処理層あるいは着色皮膜層と同様のものであることができる。
無機系皮膜として、リチウムシリケート、水ガラス、無機樹脂、無機有機複合型樹脂などでもよい。このプレコート鋼板はほとんどの場合、成形加工して使用されるので、この加工の際に塗膜の割れや剥離がないことが求められる。この点からはポリエステル樹脂をメラミン樹脂で架橋する樹脂系、ポリエステル樹脂をウレタン樹脂(イソシアネート、イソシアネート樹脂)で架橋する樹脂系、塩化ビニル樹脂系、フッ素樹脂系(溶剤可溶型、アクリル樹脂との分散混合型など)が望ましい。
【0043】
下塗り層および上層に含有される防錆顔料は、本発明では固形防錆剤の意味であり、着色剤の意味ではない。例えば、▲1▼りん酸亜鉛、りん酸鉄、りん酸アルミニウムなどのりん酸亜鉛系、▲2▼モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウムなどのモリブデン酸系、▲3▼酸化バナジウムなどのバナジウム系、▲4▼ストロンチウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムクロメート、カリウムクロメート、バリウムクロメートなどのクロム系、▲5▼水分散シリカ、ヒュームシリカなどの微粒シリカ、▲6▼その他として微粒酸化チタン、亜燐酸塩、カルシウムシリケートなど、を挙げることができる。
【0044】
特に、一次平均粒子径が100nm以下の微粒シリカが好適である。
また、下地処理に用いた防錆剤も、下塗り層における防錆顔料あるいは追加の防錆剤として用いることができる。
このような防錆顔料の量は、皮膜の固形物基準に1〜40重量%がよい。これより少ないと耐食性の改良が十分でなく、40重量%を越えると加工性が低下して、皮膜が脆くなって成形時に欠落が生ずる。
【0045】
下塗り層の厚さは、0.05〜60μm の範囲内がよい。これ以下では耐食性のほか下塗り層を設ける目的特性が十分に得られず、また厚すぎるとコストが高くなる。
下塗り層の形成は、下地処理や着色皮膜層と同様に行うことができるが、加熱温度は皮膜に応じて適当に選択する。
【0046】
なお下地処理層、防錆顔料を含む下塗り層、着色皮膜層は1層ずつ塗装→乾燥・硬化をくり返して形成するのが普通であるが、各層を乾燥せずに塗装をくり返し、3層をまとめて、あるいは2層をまとめて乾燥・硬化しても良い。また必要に応じて各層を複数層形成しても良い。
また着色皮膜層が防錆顔料を含んでいても良いし、防錆顔料を含む下塗り層が着色のための成分を含んでいても良い。
【0047】
上層に、潤滑性、耐指紋性、耐擦傷性、成形加工性などの特性を付与するために、必要に応じて、皮膜に工夫をし、また添加剤を添加することができる。たとえばワックスを添加するなどである。
上層の厚さは、限定するわけではないが、0.3〜10μm の範囲内がよい。これ以下では耐食性のほか上層を設ける目的特性が十分に得られず、また厚すぎるとコストが高くなる。
【0048】
上層の形成は、下地処理と同様に行うことができるが、加熱温度は皮膜に応じて適当に選択する。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例をもって説明する。
【0050】
(例1)
亜鉛めっき付着量が片面当たり20g/m2 で両面がめっきされた厚み0.6mmの電気亜鉛めっき鋼板と、亜鉛めっき付着量が片面当たり60g/m2 で両面がめっきされた厚み0.6mmの溶融亜鉛めっき鋼板とを、FC−364S(日本パーカライジング製)の2%重量濃度溶液で60℃10秒間脱脂し、水洗後、乾燥した。次いで、表1に示す組成の表面処理剤をロールコーターで塗布し、熱風乾燥炉で乾燥した。乾燥時に到達板温は150℃とした。なお、乾燥時の到達板温を70℃,220℃として表1と同様の評価をしたが、いずれも到達板温が150℃と同じ結果となった。
【0051】
ついで、日本ペイント製P641プライマー塗料(ポリエステル樹脂系、表1中にはポリエステルと記載)、日本ペイント製P108プライマー塗料(エポキシ樹脂系、表1中にはエポキシと記載)、日本ペイント製P304塗料(ウレタン樹脂系、表1中にはウレタンと記載)の防錆顔料を、表1に記載の防錆顔料に変更したもの(表1中でプライマー防錆顔料なしとなっているものは、防錆顔料を抜いてその分チタン白を添加したもの)をロールコーターで乾燥後付着量が表1に記載の値となるように塗布後、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉で到達板温が220℃となるように硬化乾燥した。
【0052】
ついで、日本ペイント製FLC200HQ(ポリエステル樹脂系、色は白)を乾燥後付着量が表1に記載の値となるようにロールコーターで塗布後、熱風を吹き込んだ誘導加熱炉で到達板温が230℃となるように硬化乾燥した。
なお、各硬化乾燥過程のあとには、板を水冷した。
このようにして作成した塗装鋼板について以下の評価を行った。
1.塗膜密着性
塗装後の板を、塗装面に1mm角の基盤目をカッターナイフで入れ、塗装面が凸となるようにエリクセン試験機で7mm押し出した後に、テープ剥離試験を行った。基盤目の入れ方、エリクセンの押し出し方法、テープ剥離の方法はJISK5400の8.2、及び8.5に準拠した。また、テープ剥離後の評価は8.5に記載の評価の例の図によって行った。評点10点のときに○、6点以上10点未満のときに△、6点未満のときに×と評価した。さらに、塗装鋼板を沸騰水にJISK5400の8.20の方法で浸漬した後、取り出して24時間放置後に上述の方法で基盤目エリクセン、テープ剥離試験を行った。評点は上述の方法でつけた。
2.塗膜の折り曲げ加工部密着性
塗装後の板を、180度折り曲げ加工し、加工部の塗膜を10倍ルーペで観察し、塗膜の割れの有無を調べた。また、加工部に粘着テープを張り付け、これを勢い良く剥離したときの、塗膜の残存状態を目視で観察した。折り曲げ加工は20℃で、密着曲げ(0T)と、厚み0.6mmのスペーサーを1枚挟む(1T)2つの方法で行った。塗膜の割れのないときを○、塗膜に若干の割れのあるときを△、塗膜に目視でも明確な割れのあるときを×とした。またテープで剥離した部分の加工部塗膜が、全く剥離せずに残存している(密着性が良い)場合を○、一部剥離している場合を△、ほぼ全面にわたって剥離が認められる場合を×と評価した。
3.耐食性
塗装後の板をJIS K5400の9.1項の方法で試験した。試験時間は電気亜鉛めっき鋼板(EG)の場合には120時間、溶融亜鉛めっき鋼板(GI)の場合には240時間とした。クロスカット部の塗膜のクロスカット片側の最大膨れ幅が1mm未満の場合に○、1mm以上3mm未満の場合に△、3mm以上の場合に×と評価した。また、平板をそのまま塩水噴霧試験機に入れ、上記と同じ試験時間後に端面(上バリ部)からの塗膜膨れ幅を観察した。端面からの膨れ幅が3mm以内の場合に○、3mm以上5mm未満の場合に△、5mm以上の場合に×と評価した。
【0053】
評価結果を表1に示した。本発明によるプレコート鋼板の塗膜密着性、折り曲げ加工性、折り曲げ加工部密着性、耐食性はNo.43〜45(比較例)のクロメート前処理したプレコート鋼板と同等か優れている。一方、No.36〜42(比較例)においてはいずれかの性能が劣っている。No.37は、下地処理なしのため、全ての性能が確保できていない。No.39ではV系防錆剤量が少なく耐食性や塗膜密着性に劣る。No.40では下地の付着量が少なく、耐食性や密着性に劣る。No.41は、リン酸アンモニウム量が多すぎ、処理浴がゲル化して処理できなかった。No.42はV系防錆剤を添加していないため、密着性や耐食性に劣る。No.43〜45はクロムを含む下地処理を用いており、毒性問題がある。
【0054】
【表1】
Figure 0003833033
【0055】
【表2】
Figure 0003833033
【0056】
【表3】
Figure 0003833033
【0057】
【表4】
Figure 0003833033
【0058】
【表5】
Figure 0003833033
【0059】
【表6】
Figure 0003833033
【0060】
(例2)
めっき付着量が片面当たり20g/m2 の板厚0.8mmの電気亜鉛めっき鋼板(EGと称する)、めっき付着量が片面当たり60g/m2 の板厚0.8mmの溶融亜鉛めっき鋼板(GIと称する)、めっき付着量が片面当たり60g/m2 の板厚0.8mmの合金化溶融亜鉛めっき鋼板(GAと称する)をFC−364S(日本パーカライジング製)の2%重量濃度溶液で60℃10秒間脱脂し、水洗後、乾燥した。次いで、表2に示す組成の下地処理層を形成するための下地処理剤をロールコーターで塗布し、熱風乾燥炉で到達板温が140℃となるように乾燥した。
【0061】
下地処理剤に使用した樹脂、シリカ、バナジウム酸化合物、チオカルボニル化合物、りん酸化合物の種類は以下の通りである。
1.樹脂種類
アクリルオレフィン系:「ハイテックS−7024」(東邦化学社製)
ウレタン系:「ボンタイターHUX−320」(旭電化社製)
エポキシ系:「ポリゾール8500」(昭和高分子社製)
2.コロイダルシリカ
ST−N:「スノーテックスN」(日産化学社製、表中ではNと表示)
ST−NS:「スノーテックスNS」(日産化学社製、表中ではNSと表示)
ST−NXS:「スノーテックスNXS」(日産化学社製、表2中ではNXSと表示)
3.バナジウム酸化合物
バナジウム酸アンモニウム
4.チオカルボニル基含有化合物
チオ尿素
5.りん酸化合物
りん酸アンモニウム
これらの浴中固形分濃度(固形分重量濃度/水の容量)を表2中に示した(単位:g/l)。また、下地処理層の付着量も示した。
【0062】
下地処理層を形成した上に、防錆顔料を添加した皮膜層(以下上層と称する。表2中では防錆顔料含有皮膜層と記載している)を形成する。形成方法は下地処理層と同様である。
上層を形成するための上層処理剤には、樹脂として下地処理剤に使用したのと同じ種類のアクリルオレフィン系樹脂を、防錆顔料としては下地処理剤に使用したものと同じ種類のシリカ(N、NS、NSX)を用いた。また、No.101(実施例)に示す下地処理剤をそのまま上層形成剤として用いた水準も作成した(表2中で、顔料種の欄に「下地」と書いてあるもの)。上層の厚みは表中に記載した。
【0063】
比較のために、めっき鋼板に還元クロム酸(でんぷんで還元率30%としたもの)/スノーテックスN=1/3(固形分重量比)で混合した塗布型クロメート処理液をロールコーターで塗布し、板温70℃で乾燥した鋼板を作成したNo.135,137(比較例)。塗布型クロメート処理の付着量は0.15g/m2 とした。また、電解により3価クロム主体の皮膜を析出させた鋼板も作成したNo.136(比較例)。この電解クロメート処理の付着量は0.05g/m2 とした。
【0064】
作成した被覆鋼板について、以下の評価を行った。
1.皮膜の密着性
平板について、JIS K 5400の8.5.2に記載の碁盤目テープ法(すきま間隔1mm)によって判定した(表中には「平面」と記載)。また、被覆鋼板をJIS K 5400の8.2に規定されるエリクセン試験機で試験される皮膜が凸部となるように7mm押し出して、押し出した部分をテープ剥離して皮膜の密着性を調べた(表中には「Er」と記載)。目視によって判定しにくい場合には、メチルバイオレットの3%アセトン溶液で皮膜を染色し、染色された部分には皮膜が存在し、染色されない部分には皮膜が存在しない、として密着性を判定した。同じ試験を、被覆鋼板を沸騰水に30分浸漬してから引き上げ、24時間放置してから行った。表2中には、沸騰水浸漬後の被覆鋼板の被覆の密着性の試験結果を示した(「2次密着性」の欄)。
○:被覆の剥離なし、△:一部の皮膜が剥離、×:皮膜が全面剥離
【0065】
2.耐指紋性
表面処理鋼板の皮膜に指紋を付着させ、指紋の見えやすさを目視で判定し、評点をつけた。評点は、○:指紋跡がほとんど見えない、△:指紋跡がみえる、×:指紋跡が目立つ、とした。
3.耐食性
平板(切断ままの鋼板の端面部と裏面部をシール)と、エリクセン7mm加工部(エリクセン試験機で7mm押し出した鋼板の端面部と裏面部をシール)について、塩水噴霧試験(JIS Z 2371に規定されるもの)を行い、発生した白錆の発生面積率(%)を目視で求めた。塩水噴霧試験は、168時間と360時間行った。表2中、360時間の欄に記載のないものは、赤錆が発生していることを示している。
4.円筒絞り試験
シワ押さえ圧1.0トン、絞り比2.2、ダイ肩R4.0mmの条件で、各被覆鋼板を円筒絞り成形した。円筒の胴下部にカッターナイフでクロスカットを入れ、テープ剥離して皮膜の密着性を調べた。また、円筒絞り成形した被覆鋼板を、沸騰水に30分浸漬してから引き上げ、24時間放置してから同じように被覆の密着性試験を行った。表2中には、沸騰水浸漬後の被覆鋼板の被覆の密着性の試験結果を示した(「円筒絞り」の欄)。
○:被覆の剥離なし、△:被覆が一部剥離、×:皮膜が全面剥離
【0066】
試験結果を表2に示した。
本発明例では、いずれも耐食性、皮膜の密着性、円筒絞り形成性が良好である。下地処理層、上層(防錆皮膜層)の厚みが増すと、耐食性が向上する(No.101〜109)。No.106のように、下地処理層を同じ皮膜を上層に形成すると、特に耐食性が良好である。シリカの種類として、Nを用いるよりも、粒径の小さいNS、更に粒径の小さいNXSと用いると耐食性は粒径が小さくなるとともに向上する(No.107、110〜112)。シリカの量は多いほうが耐食性が良い(No.107、118〜120)。チオカルボニル基含有化合物とりん酸化合物を、バナジウム酸化合物と併用すると耐食性が向上する(No.116、117、121、126)。樹脂を変更しても、本発明例によれば耐食性は大きくは変化しない(No.122、123)。めっき鋼板が、GIやGAの場合にも、本発明例では耐食性、皮膜密着性、成形性が優れている(No.125〜131)。
【0067】
No.124(本発明例)では、上層の皮膜にNの他にポリエチレン系ワックス「ケミパールWF640(三井化学社製)をアクリルオレフィン樹脂100に対して8(固形分重量部)加えているが、耐食性、成形性共に良好である。
なお、沸騰水浸漬前の皮膜密着性、円筒絞り胴部の皮膜密着性はいずれの材料でも良好であった(No.132(比較例)を除く)。
【0068】
また、耐指紋性は、処理剤のゲル化により塗布できなかったNo.132(比較例)を除いていずれも評点4点と良好であった。
No.133(比較例)は、下地処理層にバナジウム酸化合物が含まれていないため、耐食性と皮膜の密着性が悪い。No.132(比較例)はバナジウム酸化合物の含有量が過剰で、処理液が均一にならず、塗布できなかった。No.134(比較例)は、めっき種類がGIのときにも、バナジウム酸化合物が含まれないと、耐食性、密着性が劣ることを示している。
【0069】
No.135〜137(比較例)は、クロメート処理を用いた被覆鋼板であり、6価クロムの溶出問題がある。また、耐食性は良好であるが、被覆の密着性や成形性(成形後の被覆の密着性)は必ずしも十分でない。
【0070】
【表7】
Figure 0003833033
【0071】
【表8】
Figure 0003833033
【0072】
【発明の効果】
以上のように、本発明によるプレコート鋼板は、水系樹脂に6価クロムを含まないバナジン酸化合物を組み合わせた塗装下地を有することによって、従来のクロメート処理を用いたものと同等以上の塗膜密着性、耐食性が得られる。すなわち、低公害で防錆能に優れたプレコート鋼板を提供する。

Claims (3)

  1. 鋼板上に、固形分として樹脂100重量部と少なくともバナジウム酸化合物0.1〜100重量部を含み、該バナジウム酸化合物はバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム及びバナジウム酸カリウムから選ばれ、かつ任意にチオカルボニル基含有化合物0.1〜3000重量部、りん酸化合物0.01〜300重量部(PO4として)および微粒シリカ1〜2000重量部のうち少なくとも1種をさらに含有する皮膜層を下地処理層として有し、さらにその上に着色された皮膜層を上層として有することを特徴とするプレコート鋼板。
  2. 鋼板上に、固形分として樹脂100重量部と少なくともバナジウム酸化合物0.1〜100重量部を含み、該バナジウム酸化合物はバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム及びバナジウム酸カリウムから選ばれ、かつ任意にチオカルボニル基含有化合物0.1〜3000重量部、りん酸化合物0.01〜300重量部(PO4として)および微粒シリカ1〜2000重量部のうち少なくとも1種をさらに含有する皮膜層を下地処理層として有し、さらにその上に防錆顔料を含む皮膜層を下塗り層として有し、さらにその上に着色された皮膜層を上層として有することを特徴とするプレコート鋼板。
  3. 鋼板上に、固形分換算で樹脂100重量部と少なくともバナジウム酸化合物0.1〜100重量部を含み、該バナジウム酸化合物はバナジウム酸アンモニウム、バナジウム酸ナトリウム及びバナジウム酸カリウムから選ばれ、かつ任意にチオカルボニル基含有化合物0.1〜3000重量部、りん酸化合物0.01〜300重量部(PO4として)および微粒シリカ1〜2000重量部のうち少なくとも1種をさらに含有する皮膜層を下地処理層として有し、さらにその上に防錆顔料を添加した皮膜層を上層として有することを特徴とする被覆鋼板。
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