JP3832217B2 - 入力軸組立ユニットのディスク振れ測定方法 - Google Patents

入力軸組立ユニットのディスク振れ測定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば自動車等の変速機構として用いるトロイダル型無段変速機に組み込む入力軸組立ユニットにおけるディスクの振れを測定する測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の変速機構として、いわゆるCVTと呼ばれる無段変速機が実用化されている。そしてこのような無段変速機の一例としてトロイダル形無段変速機が開発されている。
【0003】
図3には、ダブルキャビティ式ハーフトロイダル形無段変速機10の構成を示してある。このトロイダル形無段変速機10は、第1のキャビティ11aを構成する第1の入力ディスク12aおよび出力ディスク13aと、第2のキャビティ11bを構成する第2の入力ディスク12bおよび出力ディスク13bを備えている。
【0004】
第1の入出力ディスク12a,13a間には一対のパワーローラ15が設けられている。パワーローラ15の外周面は、各ディスク12a,13aのトラクション面14に接している。第2の入出力ディスク12b,13bの間にも一対のパワーローラ15が設けられ、そのトラクション面14に接している。
【0005】
これらのパワーローラ15は、パワーローラ軸受16によって、トラニオン17に回転自在に取付けられている。トラニオン17は、それぞれトラニオン軸18を中心として揺動自在となっている。
【0006】
各ディスク12a,13aのトラクション面14はトラニオン軸18を中心とする円弧を、トラニオン軸18と直角な軸を中心に回転して得られる凹面形状となっている。
【0007】
第1の入力ディスク12aは、入力軸20に第1のボールスプライン21によって回り止めがなされた状態で、その入力軸20の軸線方向に相対移動可能に取付けられている。
【0008】
第2の入力ディスク12bは、入力軸20に第2のボールスプライン22によって回り止めがなされた状態で、その入力軸20の軸線方向に相対移動可能に取付けられている。したがって入力ディスク12a,12bは入力軸20と一体に回転する。この入力軸20は、エンジン等の駆動源によって回転する駆動軸25に、ベアリング26を介して相対回転可能に連結されている。
【0009】
出力ディスク13a,13bは、入力ディスク12a,12bの間に設けられている。第1の出力ディスク13aは第1の入力ディスク12aに対向し、第2の出力ディスク13bは第2の入力ディスク12bに対向している。
【0010】
これら出力ディスク13a,13bは、入力軸20にベアリング30,31を介して相対回転自在に支持されている。出力ディスク13a,13bは、連結部材32によって連結され、互いに同期して回転する。連結部材32には出力ギヤ33が設けられている。出力ギヤ33は出力軸(図示せず)と連動して回転する。
【0011】
第1の入力ディスク12aの背面側には、押圧機構として機能するローディングカム機構40が設けられている。このローディングカム機構40は、カムディスク41およびローラ42を備えている。
【0012】
カムディスク41は、入力軸20に対して、スラストベアリング43を介して回動自在に支持されている。カムディスク41と入力ディスク12aとの相互対向部にはそれぞれカム面44,45が形成され、カム面44,45間にローラ42が挟み込まれている。
【0013】
これらのローラ42がカム面44,45間に挟まれた状態で駆動軸25が回転すると、カムディスク41が回転することにより、第1の入力ディスク12aが第1の出力ディスク13aに向って押圧されるとともに、第1の入力ディスク12aがカムディスク41と一体的に回転する。
【0014】
また、カムディスク41が受ける反力がスラストベアリング43を介して入力軸20に加わるため、第2の入力ディスク12bが第2の出力ディスク13bに向って押圧される。
【0015】
このようにして駆動軸25からカムディスク41に伝達されたエンジンの回転力は入力ディスク12a,12bを回転させ、入力ディスク12a,12bの回転がパワーローラ15を介して出力ディスク13a,13bに伝わることにより、出力ギヤ33が回転する。
【0016】
入力軸20の一端側の端部には、その外周側にフランジ状に広がるつば部50が形成され、このつば部50の近傍に第1のボールスプライン21を構成する第1のスプライン溝51が形成されている。
【0017】
第1の入力ディスク12aには、スプライン溝51と対応する位置にスプライン溝52が形成されている。これらスプライン溝51,52間に、入力ディスク12aと入力軸20とを回転方向に固定するための部材として機能するボール53が収容されている。したがって入力ディスク12aは、入力軸20に対して回転方向に固定され、かつ軸線方向に移動可能となっている。
【0018】
入力軸20の他端側にはねじ部60が形成され、このねじ部60にローディングナット61が螺合されている。ねじ部60の近傍には、第2のボールスプライン22を構成する第2のスプライン溝62が形成されている。第2の入力ディスク12bには、第2のスプライン溝62と対応する位置にスプライン溝63が形成されている。これらスプライン溝62,63間にはボール64が収容され、入力ディスク12bと入力軸20とが回転方向に固定され、かつ入力ディスク12bが入力軸20の軸線方向に移動可能となっている。
【0019】
入力ディスク12bは、皿ばね等の弾性部材65によって、カムディスク41の配置方向に弾性的に付勢されている。弾性部材65はローディングナット61によって固定されている。
【0020】
このようなトロイダル形無段変速機の組立にあたり、特開平11−210853号公報に開示されているように、その組立作業の容易化、能率化等を図る目的で、図4に示すように、入力軸20にローディングカム機構40および第1の入力ディスク12を予め組み付けて入力軸組立ユニットAとして組み立て、この入力軸組立ユニットAを無段変速機の所要部分に組み込んで無段変速機を完成させる方式が提案されている。
【0021】
この場合、入力軸20にローディングカム機構40および入力ディスク12aを組み付けて入力軸組立ユニットAとした状態のもとで、その組立寸法の管理として、入力軸20に対する入力ディスク12aの回転時の振れについて測定する必要がある。
【0022】
【発明が解決しようとする課題】
入力ディスク12aの振れの測定にあたっては、測定用架台を用いて入力軸組立ユニットAを水平に支持し、入力ディスク12aのトラクション面14の所定の一点に測定器としてのダイヤルゲージの接触子を接触させ、この状態で入力軸組立ユニットAを緩やかにその軸回り方向に回転させて入力ディスク12aの振れをダイヤルゲージで読み取る方法が考えられる。
【0023】
ところがこの場合、入力ディスク12aがボールスプライン21を介して入力軸20の軸方向に移動可能となっているから、その回転に応じて入力ディスク12aが軸方向に移動して正確な振れを測定することが困難となる。
【0024】
また、入力軸組立ユニットAを垂直に立て、この状態で入力軸組立ユニットAを回転させて入力ディスク12aの振れを測定することが考えられる。この場合には、入力ディスク12aの軸方向の移動がその自重により抑えられる。
【0025】
ところが、入力ディスク12aと入力軸20との間のボールスプライン21の部分には僅かであるがいわゆるガタあり、入力軸組立ユニットAを垂直に立てて回転させた場合、そのガタの大きさが入力ディスク12aの周方向の各点で逐次変動し、このガタの変動で入力ディスク12aの振れを正確に測定することができなくなる。
【0026】
この発明はこのような点に着目してなされたもので、その目的とするところは、入力軸組立ユニットにおける入力ディスクの振れを安定して正確に測定することができる測定方法を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
この発明はこのような目的を達成するために、入力軸の一端側の端部にローディングカム機構および入力ディスクを予め組み付けてなるトロイダル形無段変速機用の入力軸組立ユニットにおけるその入力ディスクの回転時の振れを測定する方法であって、入力軸組立ユニットを水平に対して所定の角度で傾斜する状態に支持し、この入力軸組立ユニットの入力ディスクのトラクション面で、かつ入力軸の上側となる位置に、測定器の接触子を接触させ、この状態で入力ディスクを入力軸と一体に回転させて入力ディスクの振れを前記測定器で測定するようにしたものである。
【0028】
入力軸組立ユニットの傾斜の角度は、例えば5〜10°程度とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の一実施形態について図1および図2を参照して説明する。
【0030】
図1に示す1は測定用架台であり、この測定用架台1の上面は水平に対しαの角度で傾斜している。αは例えば5〜10°である。
【0031】
架台1の上面の一端部および他端部からはそれぞれ支持壁2,3が起立しており、これら支持壁2,3の上部にそれぞれセンター押え4,5が設けられている。これらセンター押え4,5は水平に対してαの角度で傾斜する同一軸線上に配置するように設けられている。
【0032】
そしてこれらセンター押え4,5を介して入力軸組立ユニットAの一端部および他端部を係止し、この入力軸組立ユニットAが水平に対してαの角度で傾斜するように支持する。この際、入力軸組立ユニットAは入力ディスク12aがその傾斜の下方側となるように支持する。
【0033】
また、架台1にはステム7が設けられ、このステム7の上部に測定器としてのダイヤルゲージ8を取り付け、このダイヤルゲージ8の接触子9を入力ディスク12aにおけるトラクション面14の所定の部位(測定位置)に接触させる。
【0034】
ダイヤルゲージ8の接触子9は、入力軸組立ユニットAの軸方向と平行な軸線に対してβの角度でトラクション面14の所定の部位に接触させる。βは例えば45°である。
【0035】
接触子9のトラクション面14に対する接触部位は、入力軸20の上側の位置、より詳しくは、入力軸20の上側でかつ入力軸20の軸線を面内に含む垂直面上の一点である。
【0036】
このような状態のもとで、入力軸組立ユニットAをその軸回り方向に手作業で等速度にゆっくり回転させて入力ディスク12aの入力軸20の軸線に対する振れをダイヤルゲージ8により読み取る。
【0037】
ここで、入力軸組立ユニットAは水平に対して傾斜しており、このため入力ディスク12aにはその自重の分力によりつば部50の配置側に向く押力が生じ、この押力により入力ディスク12aの軸方向の移動が抑えられ、したがって入力ディスク12aは入力軸20に対し所定の位置を保って入力軸20と一体に回転する。
【0038】
また、入力ディスク12aには、自重により下側を向く垂直方向の分力が加わり、この垂直方向の分力により、入力軸組立ユニットAの回転中における入力ディスク12aと入力軸20との間のボールスプライン21の部分のガタが入力軸20の中心軸の上側では小さく、下側では大きくなる。
【0039】
すなわち、図2(a)に示すように、入力軸20の中心軸の上側では、入力ディスク12aの垂直方向の分力により、ボール53が入力軸20のスプライン溝51と入力ディスク12aのスプライン溝52とに均等的な4点(イ、ロ、ハ、ニ)で接触してガタがほとんどない状態に保持され、これに対し入力軸20の中心軸の下側では、図2(b)に示すように、入力ディスク12aのスプライン溝52とボール53との間に隙間が生じ、ボール53が入力軸12aのスプライン溝52と2点(イ、ロ)で接触する程度となって比較的大きなガタが生じる。
【0040】
そしてダイヤルゲージ8の接触子9による測定位置はそのガタのほとんどない上側の部分に対応する位置となっており、したがってボールスプライン21のガタの影響を受けない一定の条件でダイヤルゲージ8が入力ディスク12aの回転に応じるその振れを検出することになる。
【0041】
このように、入力ディスク12aの軸方向の移動が抑えられ、かつボールスプライン21のガタの影響を受けない状態で、入力ディスク12aの振れを検出することができ、したがってその検出の精度を高めて安定した正確な測定を達成することができる。
【0042】
なお、前記実施形態においてはダブルキャビティ式のハーフトロイダル型無段変速機に用いる入力軸組立ユニットを対象にして説明したが、この発明はシングルキャビティ式のハーフトロイダル無段変速機などに用いる入力軸組立ユニットを対象とする場合においても同様に適用することができることは言うまでもない。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したようにこの発明によれば、入力ディスクの軸方向の移動を抑え、かつボールスプラインのガタの影響を打ち消して入力ディスクの振れを安定して正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示す側面図。
【図2】この発明の作用を説明するための説明図。
【図3】ハーフトロイダル型無段変速機の一般的な構造を示す断面図。
【図4】その無段変速機における入力軸組立ユニットを示す断面図。
【符号の説明】
1…測定用架台
4,5…センター押え
8…ダイヤルゲージ
9…接触子
A…入力軸組立ユニット
12a…入力ディスク
14…トラクション面
20…入力軸
21…ボールスプライン
51…スプライン溝
52…スプライン溝
53…ボール
40…ローディングカム機構

Claims (2)

  1. 入力軸の一端側の端部にローディングカム機構および入力ディスクを予め組み付けてなるトロイダル形無段変速機用の入力軸組立ユニットにおけるその入力ディスクの回転時の振れを測定する方法であって、
    入力軸組立ユニットを水平に対して所定の角度で傾斜する状態に支持し、この入力軸組立ユニットの入力ディスクのトラクション面で、かつ入力軸の上側となる位置に、測定器の接触子を接触させ、この状態で入力ディスクを入力軸と一体に回転させて入力ディスクの振れを前記測定器で測定することを特徴とする入力軸組立ユニットのディスク振れ測定方法。
  2. 入力軸組立ユニットは水平に対して5〜10°の角度で傾斜させることを特徴とする請求項1に記載の入力軸組立ユニットのディスク振れ測定方法。
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