JP3831514B2 - 磁気抵抗効果膜および磁気抵抗効果型ヘッド - Google Patents
磁気抵抗効果膜および磁気抵抗効果型ヘッド Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気記録媒体等の磁界強度を信号として読み取るための磁気抵抗効果膜のうち、特に小さな磁場変化を大きな電気抵抗変化信号として読み取ることのできる磁気抵抗効果膜および、それを用いた磁気抵抗効果型ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気センサの高感度化や磁気記録における高密度化が進められており、これに伴い磁気抵抗変化を用いた磁気抵抗効果型磁気センサ(以下、MRセンサという)や、磁気抵抗効果型磁気ヘッド(以下、MRヘッドという)の開発が盛んに進められている。MRセンサおよびMRヘッドはいずれも、磁性材料を用いた読み取りセンサ部の抵抗変化により、外部磁界信号を読み出すものである。このようなMRセンサおよびMRヘッドは、信号読み取りに際して、記録媒体との相対速度が再生出力に依存しないことから、MRセンサでは高感度が、MRヘッドでは高密度磁気記録の信号読み出し時においても、高い出力が得られるという特徴がある。
【0003】
しかしながら、従来用いられているNi80Fe20(パーマロイ)やNiCo等の磁性体を利用したMRセンサでは、抵抗変化率であるΔR/Rの値がせいぜい1〜3%くらいと小さく、数GBPSI(Giga Bits Per Square Inches)以上の超高密度記録の読み出し用MRヘッド材料としては感度が不足する。
【0004】
ところで、金属の原子径オーダーの厚さの薄膜が周期的に積層された構造をもつ人工格子は、バルク状の金属とは異なった特性を示すために、近年注目されてきている。このような人工格子の1種として、基板上に強磁性金属薄膜と非磁性金属薄膜とを交互に積層した磁性多層膜があり、これまで、鉄−クロム型、コバルト−銅型等の磁性多層膜が知られている。しかし、この人工格子膜では最大抵抗変化の起きる外部磁場(作動磁界強度)が数十kOeと大きく、このままでは実用性がない。
【0005】
そこで、このような事情から、スピンバルブという新しい構造が提案されている。これは、非磁性金属層を介してNiFe層が2層形成されており、一方のNiFe層に隣接してFeMn層が配置されている構成をもつ。
【0006】
ここでは、FeMn層と隣接しているNiFe層とが直接交換結合力で結合しているために、このNiFe層の磁気スピンは数10〜数100Oeの磁場強度まで、その向きを固着される。一方のNiFe層のスピンは外部磁場によって自由にその向きを変え得る。その結果、NiFe層の保磁力程度という、小さな磁場範囲で2〜5%の磁気抵抗変化率(MR変化率)が実現される。
【0007】
スピンバルブにおいては、2つの磁性層におけるスピンの相対角度の差異を実現させることにより、従来の異方性磁気抵抗(AMR)効果とは異なるおおきなMR変化を実現している。これは一方の磁性層と反強磁性との直接交換結合力による磁性層スピンのピンニングにより実現されている。この交換結合がスピンバルブの本質であるといえる。
【0008】
しかしながら、スピンバルブの実用化についは、以下に述べるようなさまざまな問題がある。磁性層をピンニングしている交換結合の強さを、そのシフトする一方向異方性磁場Huaの大きさで表す。また、その温度安定性としてHuaが消失する温度をブロッキング温度Tb とする。従来より一般に用いられているFeMn層やその他の反強磁性層での交換結合では以下の問題がある。
【0009】
1)ブロッキング温度Tb が150〜170℃と低い。バルクの状態と比較して、ブロッキング温度Tb が低く、本来のピンニング効果を十分に発揮する良好な薄膜が得られていない。
【0010】
2)ブロッキング温度Tb の分散が生じていることが問題である。すなわち、薄膜であるが故に、FeMn層内の膜面は、さまざまな結晶粒から構成されており、個々の結晶粒は独自のブロッキング温度Tb を持っている。つまり、すべての結晶粒がすべて同一のブロッキング温度Tb を持っていれば問題はないのであるが、実際は、低めのブロッキング温度Tb を有する結晶粒や、高めのブロッキング温度Tb を有する結晶粒などさまざまである。その結果、応用上の動作温度領域である80〜120℃において、強磁性層のスピンを反転させてしまう弱い交換結合をもった結晶粒が一部存在することがある(低めのブロッキング温度Tb を有する結晶粒の存在が原因)。すると、ピン止めされている強磁性層のスピン方向が全体として傾いてしまい、出力電圧が低下してしまうことがある。従って、できるだけすべての結晶粒がすべて均一で、高いブロッキング温度Tb を持つような良質の反強磁性薄膜の提供が望まれる。
【0011】
このような課題を解決すべく、本出願人らはすでに特願平8−357608号や、特願平9−219121号において、好適例としてRux My Mnz (MはRh,Pt,Pd,Au,Ag,Reから選ばれた少なくとも1種)からなる反強磁性薄膜を提案している。
【0012】
ところで、反強磁性薄膜に接して積層形成される保護膜の材質としては、Taが一般的であり、時として、CuやHfが用いられることもある。すなわち、先行技術の代表例として、以下のものが挙げられる。
【0013】
(1)Jounal of Magnetism and Magnetic Materials,
93(1991)101 (Dieny, IBM)
Si/Ta(50Å)/NiFe(60 Å)/Cu(25 Å)/NiFe(40 Å)/FeMn(50 Å)/Cu(50 Å)
という積層膜構造についての情報が開示されている。ここでの反強磁性層はFeMnであり、保護層材料は、50Å厚さのCuである。
【0014】
(2)Japan Jounal of Applied Physics,
33(1994)1327 (Nakatani, Hitachi)
Si/Hf(50Å)/NiFeCo( 50Å)/Cu(20 Å)/NiFeCo(50 Å)/FeMn(100Å)/Hf(50 Å) という積層膜構造についての情報が開示されている。ここでの反強磁性層はFeMnであり、保護層材料は、50Å厚さのHfである。
【0015】
(3)特開平9−147325
glass/Ta(100Å)/NiFe( 50Å)/PtMn(200Å)/Ta(100Å) という積層膜構造についての情報が開示されている。ここでの反強磁性層はPtMnであり、保護層材料は、100 Å厚さのTaである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来からある保護層材料を、上記本願発明らが提案した反強磁性薄膜に採用しただけでは、きわめて要求の厳しい耐熱試験をクリアできないことが実験的にわかってきた。すなわち、
(1)製造プロセスにおける不可避の熱処理工程(例えば、250℃、3時間の熱処理操作)を通過すると磁気抵抗効果膜のMR変化率が約30%ほど低下してしまう。その結果、スピンバルブヘッドとして完成した後に、十分な出力が確保できないおそれがある。
【0017】
(2)120〜140℃における温度保持において、ピン止めされた強磁性層が回転してしまうおそれがある。すなわち、ヘッドの動作温度が120〜140℃となる高回転型ディスクにスピンバルブヘッドを組み込んだ場合、出力が時間とともに減少して、ついにはディスク中の記録情報が読み出せなくなるおそれがある。
【0018】
本発明はこのような実状のものに創案されたものであって、その目的は、熱安定性に優れ、MR変化率の劣化が少ない磁気抵抗効果膜、および当該磁気抵抗効果膜を備えてなる磁気抵抗効果型ヘッドを提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は、非磁性金属層と、非磁性金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接する面と反対側の面)に形成された反強磁性層と、反強磁性層の上(強磁性層と接する面と反対側の面)に形成された保護層とを有する多層膜を備えてなるスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜であって、前記反強磁性層が、Mx Mn100-x (MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた少なくとも1種であり、15≦x≦58(xの単位は原子%))からなり、前記保護層がRh、Ru、Zr、Tiから選ばれた少なくとも1種からなるように構成される。
【0020】
また、本発明は、磁気抵抗効果膜と、導体膜と、電極部とを含む磁気抵抗効果型ヘッドであって、前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果膜と導通しており、前記磁気抵抗効果膜は、非磁性金属層と、非磁性金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接する面と反対側の面)に形成された反強磁性層と、反強磁性層の上(強磁性層と接する面と反対側の面)に形成された保護層とを有する多層膜を備えてなるスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜であり、前記反強磁性層が、Mx Mn100-x (MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた少なくとも1種であり、15≦x≦58(xの単位は原子%))からなり、前記保護層がRh、Ru、Zr、Tiから選ばれた少なくとも1種からなるように構成される。
【0021】
好ましい態様として、前記反強磁性層は、Mx Mn100-x (MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた少なくとも1種であり、15≦x≦58(xの単位は原子%))からなり、前記保護層がRh、Ruから選ばれた少なくとも1種からなるように構成される。
【0022】
好ましい態様として、前記反強磁性層は、Rux My Mnz (MはRh,Pt,Pd,Au,Ag,Re,Ni,Irから選ばれた少なくとも1種であり、1≦x≦30,1≦y≦30,69≦z≦90,10≦x+y≦31(x,y,およびzの単位は原子%))からなり、前記保護層がRh、Ruから選ばれた少なくとも1種からなるように構成される。
【0023】
好ましい態様として、前記反強磁性層は、Mx Mn100-x (MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた1種であり、15≦x≦58(xの単位は原子%))からなり、前記保護層がTi、Zrから選ばれた少なくとも1種からなるように構成される。
【0024】
好ましい態様として、前記保護層の厚さ(t)は、1nm≦t≦5nmの範囲にあるように構成される。
【0025】
前記反強磁性層中には不純物としての酸素を含有し、その酸素濃度が1〜2000原子ppmであるように構成される。
【0026】
前記反強磁性層中には、さらに、不純物としての炭素、硫黄、塩素を含み、反強磁性層中に含有される炭素濃度が1〜2000原子ppm、硫黄濃度が1〜1000原子ppm、塩素濃度が1〜2000原子ppmであるように構成される。
【0027】
好ましい態様として、前記反強磁性層は、到達圧力2×10-9Torr以下に排気された真空成膜装置内で、酸素含有量600ppm以下のターゲットを用いて、成膜時に導入されるスパッタガス中の不純物濃度の総和を100ppb以下、かつスパッタガス中のH2 O濃度が40ppb以下でのスパッタガス雰囲気中、スパッタ法にて成膜されてなるように構成される。
【0028】
好ましい態様として、前記磁気抵抗効果膜は、基板側から、軟磁性層、非磁性金属層、強磁性層、反強磁性層、保護層を順次備える多層膜構造を備えてなるように構成される。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的実施の形態について詳細に説明する。本明細書中、濃度を示す単位であるppmおよびppbはすべて、原子ppmおよび原子ppbを示す。
【0030】
図1は、本発明の磁気抵抗効果膜3の好適な一例を示す断面図である。この実施の態様において、磁気抵抗効果膜3は、巨大磁気抵抗効果を示すスピンバルブ膜としての磁性多層膜1を備えている。
【0031】
図1に示されるように、磁性多層膜1は、非磁性金属層30と、この非磁性金属層30の一方の面に形成された強磁性層40と、非磁性金属層30の他方の面に形成された軟磁性層20と、強磁性層40の磁化の向きをピン止めするために強磁性層40の上(ここで言う『上』とは、非磁性金属層30と接する面と反対側の面を意味する)に形成された反強磁性層50を有する積層体構造をなしている。
【0032】
これらの積層体は、図1に示されるように、通常、基板5の上に形成され、これらが基板5側から、下地層7を介して、軟磁性層20、非磁性金属層30、強磁性層40、反強磁性層50の順に積層されている。この反強磁性層50の上には、図示のごとく、さらに保護層80が形成される。
【0033】
この実施の態様における磁性多層膜1(スピンバルブ膜)では、外部から加わる信号磁界の向きに応じて非磁性金属層30を介して、その両側に隣接して形成された軟磁性層20と強磁性層40との互いの磁化の向きが実質的に異なることが必要である。その理由は、本発明の原理が、非磁性金属層30を介して形成された軟磁性層20と強磁性層40の磁化の向きがズレているとき、伝導電子がスピンに依存した散乱を受け、抵抗が増え、磁化の向きが互いに逆向きに向いたとき、最大の抵抗を示すことにあるからである。すなわち、本発明では、図2に示されるように外部からの信号磁場がプラス(記録媒体90の記録面93から向かって上向き(符号92で表される)であるとき、隣合った磁性層の磁化の方向が互いに逆向きの成分が生じ、抵抗が増大するのである。
【0034】
ここで、本発明の磁気抵抗効果膜に用いられる(スピンバルブ)磁性多層膜における、磁気記録媒体からの外部信号磁場と、軟磁性層20と強磁性層40の互いの磁化の方向、及び電気抵抗の変化の関係を説明する。
【0035】
今、本発明の理解を容易にするために、図1に示されるごとく、1つの非磁性金属層30を介して1組の軟磁性層20と強磁性層40とが存在する最もシンプルな磁性多層膜の場合について、図2を参照しつつ説明する。
【0036】
図2に示されるように、強磁性層40は後に述べる方法によって媒体面に向かって下向き方向にその磁化をピン止めされている(符号41)。もう一方の軟磁性層20は、非磁性金属層30を介して形成されているので、その磁化方向は外部からの信号磁界によって向きを変える(符号21)。このとき、軟磁性層20と強磁性層40の磁化の相対角度は、磁気記録媒体90からの信号磁界の向きによって大きく変化する。その結果、磁性層内に流れる伝導電子が散乱される度合いが変化し、電気抵抗が大きく変化する。
【0037】
これによってパーマロイの異方性磁気抵抗効果とはメカニズムが本質的に異なる大きなMR(Magneto-Resistance) 効果が得られる。これは特にGMR(Giant-Magneto-Resistance) 効果と呼ばれる。
【0038】
軟磁性層20,強磁性層40と、ピン止め効果を示す反強磁性層50の磁化の向きが外部磁場に対して相対的に変化する。それらの磁化の向きの変化が磁化曲線とMR曲線とに対応させて図3に示される。ここでは、反強磁性層50により、強磁性層40の磁化は全てマイナス方向(記録媒体90の記録面から向かって下向き)に固定されている。外部信号磁場がマイナスの時は軟磁性層20の磁化もマイナス方向を向く。いま、説明を簡単にするために軟磁性層20,強磁性層40の保磁力を0に近い値とする。信号磁場HがH<0の領域(I)では、まだ軟磁性層20および強磁性層40両磁性層の磁化方向は一方向を向いている。
【0039】
外部磁場を上げてHが軟磁性層20の保磁力を超えると軟磁性層の磁化方向は信号磁場の方向に回転し、軟磁性層20および強磁性層40のそれぞれの磁化の向きが反平行となるのにつれて磁化と電気抵抗が増加をする。そして一定値となる(領域(II)の状態)。このとき反強磁性層50により、あるピン止め磁場Huaが働いている。信号磁場がこのHuaを越えると強磁性層40の磁化も信号磁場の方向に回転し、領域(III)で軟磁性層20および強磁性層40のそれぞれの磁化方向は、一方向に揃って向く。このとき、磁化はある一定値に、MR曲線は0となる。
【0040】
逆に信号磁場Hが減少するときは、今までと同様に、軟磁性層20および強磁性層40の磁化反転に伴い、領域(III)から(II)、(I)と順次変化する。ここで領域(II)のはじめの部分で、伝導電子がスピンに依存した散乱を受け、抵抗は大きくなる。領域(II)のうち、強磁性層40はピン止めされているためほとんど磁化反転はしないが、軟磁性層20は直線的にその磁化を増加させるため、軟磁性層20の磁化変化に対応し、スピンに依存した散乱を受ける伝導電子の割合が徐々に大きくなる。すなわち、軟磁性層20に例えばHcの小さなNi0.8 Fe0.2 を選び、適当な一方向異方性磁場Hkを付与することにより、Hk付近以下の数Oe〜数10Oeの範囲の小外部磁場で抵抗変化が直線的、かつ大きな抵抗変化率を示す磁性多層膜が得られる。
【0041】
以下、上述してきた磁気抵抗効果膜3の各構成について詳細に説明する。この磁気抵抗効果膜における第一の特徴点は、反強磁性層50を構成する材質と、この反強磁性層50の上に直接成膜される前記保護層80を構成する材質との組み合わせにある。
【0042】
すなわち、本発明における反強磁性層50は、マンガン(Mn)を必須としMx Mn100-x で表わされる。ここで、MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた少なくとも1種である。xは、15≦x≦58の範囲の値をとり、xの単位は原子%である。
【0043】
このような反強磁性層50の材質の中でも特に、マンガン(Mn)およびルテニウム(Ru)を必須とし、Rux My Mnz で表わされる反強磁性層50の材質が好適に用いられる。ここで、MはRh,Pt,Pd,Au,Ag,Re,Irから選ばれた少なくとも1種であり、1≦x≦30,1≦y≦30,69≦z≦90,10≦x+y≦31(x,y,およびzの単位は原子%)の範囲をとる。Rux My Mnz におけるMは、上記の元素から選ばれた一種類をとることが一般的であり、この場合、反強磁性層50は3成分から構成されるが、特殊な場合として4成分系以上とすることもできる。
【0044】
このような反強磁性層50の上に保護層80が直接形成される。保護層80は、通常、成膜プロセスの過程での磁性多層膜表面の酸化を防止し、その上部に形成される電極材料とのぬれ性や、密着強度の向上という目的のために形成される。本発明において、保護層80は、Rh、Ru、Zr、Tiの少なくとも1種から構成される。保護層80を構成する各元素は100%ピュアなものが好ましいが、70wt%以上含む合金であっても本発明の効果は発現可能であり、例えば単に、『保護層80がRh』と言った場合でも、Rhを70wt%以上含む合金までが本発明の権利範囲に含まれる。保護層80は、好ましくはRh、Ruの少なくとも1種、さらに好ましくは、Rhである。Rhは特に、酸化防止および拡散防止のための保護膜として優れた効果を示し、反強磁性層50の構成元素であるMnとの関係において、さらにはRu、Mnとの関係において相互拡散の影響が極めて少ない。
【0045】
本発明の範囲を外れる反強磁性層50材質と保護層80材質の組み合わせでは、反強磁性層50材質と保護層80材質との相互拡散が大きくなり、反強磁性層50の組成がずれて十分なピン止め効果が得られなくなり、交換結合のエネルギーJkが劣化する。また、上記の相互拡散に誘発されて強磁性層40の飽和磁化Ms の値も減少する。
【0046】
保護層80の厚さ(t)は、好ましくは1nm≦t≦5nmの範囲、より好ましくは、2nm≦t≦4nmに設定される。この値が1nm未満となると保護膜としての本来の機能を果たさなくなってしまうという不都合が生じる。またこの値が5nmを超えると、本願発明において選定された材質、特に、Rh、Ruは、従来のTaなど比べて、比抵抗が小さいために膜厚が厚いとセンス電流の分流効果が発生してMR特性が小さくなってしまうという不都合が生じる。
【0047】
本発明における、反強磁性層50および保護層80の特に好適な組み合わせの具体例を以下に示す。
【0048】
(1)反強磁性層50…RuRhMn 保護層80…Rh
(2)反強磁性層50…RuPtMn 保護層80…Rh
(3)反強磁性層50…RuReMn 保護層80…Ru
(4)反強磁性層50…RuAuMn 保護層80…Rh
(5)反強磁性層50…RuFeMn 保護層80…Rh
(6)反強磁性層50…RhMn 保護層80…Rh
(7)反強磁性層50…PtMn 保護層80…Rh
(8)反強磁性層50…RtRhMn 保護層80…Rh
(9)反強磁性層50…RtCrMn 保護層80…Rh/Ru (積層体)
(10)反強磁性層50…RtAuMn 保護層80…Rh/Ru (積層体)
本発明において、反強磁性層50中に含有される酸素濃度は、1〜2000原子ppm、好ましくは1〜1000原子ppm、さらに好ましくは1〜600原子ppmに規制される。この値が2000原子ppmを超えると、反強磁性層50と強磁性層40との交換結合のエネルギーJkの大きな値が得られなくなるという不都合が生じる。さらには、ブロッキング温度Tb の分散が大きくなり、ピンニング効果に優れる良好な薄膜が得られない。酸素濃度の下限値は、限りなくゼロい近いことが望ましいが、現実的にゼロとすることは不可能に近く、一応の限界の目安として1原子ppmと規定している。
【0049】
なお、本発明における特性評価項目の一つである、上記反強磁性層と強磁性層との交換結合のエネルギーJk は、Jk =Ms ・Hua・dで定義される。Ms は強磁性層の飽和磁化、Huaは交換結合によるシフト磁場、dは強磁性層の層厚を表す。ピンニングされる強磁性層に同じ材料と同じ層厚を用いた場合、Jk の値が大きいほどシフトする磁場Huaが大きくなり、MRヘッドとしての動作が安定であるということになる。10Gbit/inch2 を越えるような記録密度のMRヘッドとして用いるためには、このJk の値は、0.08erg/cm2 程度以上が必要である。この値が0.08erg/cm2 未満となるとシフト磁場が小さくなってしまい、強磁性層40に対するスピンの安定したピンニング効果が失われスピンバルブとしての安定した動作を示さないことがある。
【0050】
本発明において、前記反強磁性層50中には、さらに、不純物としての炭素、硫黄、塩素を含み、反強磁性層50中に含有される炭素濃度が1〜2000原子ppm、硫黄濃度が1〜1000原子ppm、塩素濃度が1〜2000原子ppmであるように構成される。これらの不純物濃度の範囲の上限を超えると、反強磁性層と強磁性層との交換結合のエネルギーJkの大きな値が得られなくなるという不都合が生じる。さらには、ブロッキング温度Tb の分散が大きくなり、ピンニング効果に優れる良好な薄膜が得られない。これらの不純物濃度の下限値は、限りなくゼロい近いことが望ましいが、現実的にゼロとすることは不可能に近く、一応の限界の目安として1原子ppmと規定している。
【0051】
反強磁性層50の厚さは、5〜100nm、好ましくは5〜80nm、より好ましくは5〜50nm、更に好ましくは5〜30nmの範囲とするのがよい。反強磁性層50の厚さが、5nmより薄くなると交換結合磁界Huaやブロッキング温度Tbが急激に小さくなってしまう。逆に厚い分は余り問題がないが、あまり厚すぎるとMRヘッドとしてのギャップ長(シールド−シールド間の長さ)が大きくなってしまい、超高密度磁気記録に適さなくなってしまう。従って、100nmより小さいほうがよい。
【0052】
強磁性層40は、Fe,Ni,Co,Mn,Cr,Dy,Er,Nd,Tb,Tm,Ce,Gd等やこれらの元素を含む合金や化合物から構成されるが、特に、(Coz Ni1-z )w Fe1-w (ただし、重量で0.4≦z≦1.0、0.5≦w≦1.0である)で表される組成で構成することが好ましい。これらの組成範囲を外れると、大きな電気抵抗の変化が得られなくなるという不都合が生じる。
【0053】
このような強磁性層40の厚さは、1.6〜10nm、より好ましくは、2〜6nmとされる。この値が、1.6nm未満となると、磁性層としての特性が失われる。この一方で、この値が10nmを超えると、前記反強磁性層50からのピン止め力が小さくなり、この強磁性層のスピンのピン止め効果が十分に得られなくなる。
【0054】
このような強磁性層40は上述のごとく反強磁性層50と直接接しているため、両者に直接層間相互作用が働き、強磁性層40の磁化回転が阻止される。一方、後に詳述する軟磁性層20は、外部からの信号磁場により、自由にその磁化を回転させることができる。その結果、軟磁性層20と強磁性層40との両者の磁化に相対的な角度が生み出され、この磁化の向きの違いに起因した大きなMR効果が得られる。
【0055】
軟磁性層20は、軟磁性特性を示すFe,Ni,Co等やこれらの元素を含む合金や化合物から構成されるが、保磁力Hcの小さな磁性層を用いた方がMR曲線の立ち上がりが急峻となり、好ましい結果が得られる。軟磁性層20を下記に示すような2層構造にすることは、特に好ましい態様である。すなわち、非磁性金属層30側からCo(コバルト)単体あるいはCoを80重量%以上含む合金より構成された第1の軟磁性層と、(Nix Fe1-x )y Co1-y (ただし、重量で0.7≦x≦0.9、0.5≦y≦1.0)で表わされる組成である第2の軟磁性層との2層積層体として構成する。このような構成とすることにより、Coリッチな第1の軟磁性層が拡散ブロッキング層として働き、第2の軟磁性層側から非磁性金属層30側へとNiの拡散を防止することができる。また、Coリッチな第1の軟磁性層は電子の散乱能力を増大させるため、MR変化率が向上するという効果も発現する。なお、第2の軟磁性層は、ソフト磁性を維持させるために上記組成範囲内で形成される。
【0056】
このような軟磁性層20の厚さは、2〜15nm、好ましくは、3〜15nm、さらに好ましくは、5〜15nmとされる。この値が、2nm未満となると、良好な軟磁性層としての特性が得られない。この一方で、この値が15nmを超えると、多層膜全体の厚さが厚くなり、磁性多層膜全体の抵抗が大きくなり、MR効果が減少してしまう。なお、軟磁性層20を上記のように2層積層体とした場合には、Coリッチの第1の軟磁性層の厚さを、0.4nm以上確保すればよい。
【0057】
このような軟磁性層20と前記強磁性層40との間に介在される非磁性金属層30は、効率的に電子を導くために、伝導性のある金属が望ましい。より具体的には、Au、Ag、およびCuの中から選ばれた少なくとも1種、またはこれらの少なくとも1種以上を60wt%以上含む合金等が挙げられる。
【0058】
このような非磁性金属層30の厚さは、1.5〜4nmであることが好ましい。この値が1.5nm以下になると、このものを介して配置されている軟磁性層20と強磁性層40とが交換結合してしまい、軟磁性層20と強磁性層40とのスピンがそれぞれ独立に機能しなくなってしまうという不都合が生じる。この値が4nmを超えると、上下に位置する軟磁性層20と強磁性層40の界面で散乱される電子の割合が減少してしまい、MR変化率の減少が起こってしまうという不都合が生じる。
【0059】
基板5は、ガラス、ケイ素、MgO、GaAs、フェライト、アルティック、CaTiO3 等の材料により形成される。厚さは、通常、0.5〜10mm程度とされる。
【0060】
各層の材質及び層厚を上記のように規定し、さらに、少なくとも軟磁性層20の成膜時に、後述する膜面内の一方向に外部磁場を印加して、異方性磁界Hkを2〜20Oe、より好ましくは2〜16Oe、特に2〜10Oe付与することが好ましい。
【0061】
軟磁性層の異方性磁界Hkが2Oe未満となると、保磁力と同程度となってしまい、0磁場を中心とした直線的なMR変化曲線が実質的に得られなくなるため、MR素子としての特性が劣化する。また20Oeより大きいと、この膜をMRヘッド等に適用した場合、出力が低下しやすく、かつ分解能が低下する。ここでこれらのHkは、外部磁場として成膜時に10〜300Oeの磁場を印加することで得られる。外部磁場が10Oe以下ではHkを誘起するのに十分ではないし、また、300Oeを越えても効果は変わらないが、磁場発生のためのコイルが大きくなってしまい、費用もかさんで非効率的である。
【0062】
上述してきた磁性多層膜1をそれぞれ繰り返し積層したものを、磁気抵抗効果膜とすることもできる。磁性多層膜の繰り返し積層回数nに特に制限はなく、目的とする磁気抵抗変化率等に応じて適宜選択すればよい。昨今の磁気記録の超高密度化に対応するためには、磁性多層膜の全層厚が薄いほど良い。しかし薄くなると通常、MR効果は同時に小さくなってしまうが、本発明に用いられる磁性多層膜は、繰り返し積層回数nが1の場合でも十分実用に耐えうる多層膜を得ることができる。また、積層数を増加するに従って、抵抗変化率も増加するが、生産性が悪くなり、さらにnが大きすぎると素子全体の抵抗が低くなりすぎて実用上の不便が生じることから、通常、nを10以下とするのが好ましい。nの好ましい範囲は1〜5である。
【0063】
前記磁性多層膜1の各層の成膜は、スパッタ法にて行なわれる。磁性多層膜1の成膜、特に、反強磁性層50の成膜に際して、真空成膜装置内の到達圧力は2×10-9Torr以下、好ましくは8×10-10 Torr以下、さらに好ましくは2×10-10 Torr以下に設定される。到達圧力とは、成膜開始前の成膜装置内の圧力として定義され、成膜時の圧力とは異なる。
【0064】
この到達圧力の値が2×10-9Torrを超えると、本発明の所望の特性を備える反強磁性層50が形成できない。
【0065】
到達圧力2×10-9Torr以下という範囲は、膜質の向上という観点から、従来より提案されていない範囲のものである。到達圧力2×10-9Torr以下の条件を達成するためには、一般には行なわれていないスパッタ装置の構成が必要となる。すなわち、真空シール部分をすべて金属ガスケットとすること、装置を全てステンレスもしくはAlで形成すること、装置の組み上げ時に真空中高温でガス出しすること、および排気動作の中で真空槽全体を高温にベーキングして残留ガス、H2 O分を徹底的に強制排気すること、および2×10-9Torr以下での動作が可能な特殊な排気ポンプを使用することが必要である。
【0066】
また、スパッタ法で用いられるターゲットに含有される酸素濃度は、反強磁性層50の形成の場合、1〜600ppm、好ましくは1〜500ppm、より好ましくは1〜300ppmに設定される。ターゲットに含有される酸素濃度が上記の限界範囲を超えると、本発明の所望の特性を備える反強磁性層50を形成することが困難になる。ここで、ターゲットに含有される酸素濃度とは、ターゲットの一部を用いて燃焼させ生成したCO2 ガス量を用いて分析される。さらに、スパッタ時に導入されるスパッタガス中の不純物(例えば、H2 O、CO2 、He等)の濃度の合計は、0.1〜100ppb、好ましくは、0.1〜50ppb、さらに好ましくは0.1〜10ppb、またさらに好ましくは0.1〜5ppbに設定される。スパッタガス中の不純物濃度が100ppbを超えると、本発明の所望の特性を備える反強磁性層50が形成できない。特に、スパッタガス中のH2 O不純物濃度は、膜質に影響を及ぼしやすく40ppb以下、好ましくは10ppb以下、さらに好ましくは5ppb以下に設定する必要がある。
【0067】
なお、実際の成膜が行われている間の真空成膜装置内の運転圧力は、通常、1×10-4〜1×10-2Torrに設定される。
【0068】
本発明における磁性多層膜1の各層の成膜は、それぞれ、上記の成膜条件に従って行うことが、磁気抵抗効果膜の特性をさらに向上させるために望ましい。
【0069】
基板5としては、前述したようにガラス、ケイ素、MgO、GaAs、フェライト、アルティック、CaTiO3 等を用いることができる。成膜に際しては、前述したように軟磁性層20成膜時に、膜面内の一方向に10〜300Oeの外部磁場を印加することが好ましい。これにより、軟磁性層20に異方性磁場Hkを付与することができる。なお、外部磁場の印加方法は、軟磁性層20成膜時のみ、磁場の印加時期を容易に制御できる。例えば電磁石等を備えた装置を用いて印加し、反強磁性層50成膜時は印加しない方法であってもよい。あるいは、成膜時を通して常に一定の磁場を印加する方法であってもよい。
【0070】
また、前述したように、少なくとも軟磁性層20の成膜時に膜面内の一方向に外部磁場を印加して異方性磁場Hk誘起することで、さらに高周波特性を優れたものとすることができる。
【0071】
さらに、反強磁性層50を成膜する際には、軟磁性層20を成膜する際の印加磁場の方向と垂直方向に磁場を印加すると良い。つまり磁性多層膜の膜面内でかつ、測定電流と直角方向となる。ここで印加する磁場の大きさは10〜300Oeの範囲にあればよい。これにより、反強磁性層50により強磁性層40の磁化の方向が確実に印加磁場方向(測定電流と直角方向)に固着され、信号磁場によってその向きを容易に変えうる軟磁性層20の磁化と最も合理的に反平行状態を作り出すことができる。もっともこれは必要条件ではなく、反強磁性層を成膜する際、および軟磁性層を成膜する際に印加する磁場の方向が同じ向きであっても良い。この時は磁性多層膜の成膜後、工程中で150〜300℃、特に200℃程度の熱処理を行う際に、短冊短辺方向(軟磁性層20を成膜する際の印加磁場の方向と垂直方向)に磁場を印加しながら、温度を下げていくと良い。
【0072】
上記の実施の態様で説明した、磁性多層膜1を備える磁気抵抗効果膜3は、磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)、MRセンサ、強磁性メモリ素子、角度センサ等に応用される。
【0073】
以下、磁気抵抗効果膜3を磁気抵抗効果型ヘッドに応用した例を挙げて説明する。本発明における磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)としては、巨大磁気抵抗効果(GMR)を示す磁性多層膜を備えるスピンバルブヘッドが好適例として挙げられる。
【0074】
以下、磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)としてスピンバルブヘッドを採り挙げて説明する。
【0075】
図4に示されるように磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)150は、信号磁場を感磁するための感磁部分としての磁気抵抗効果膜200と、この磁気抵抗効果膜200の両端部200a,200aに形成された電極部100,100とを有している。そして、感磁部分としての磁気抵抗効果膜200の端部200a,200aは、その両端部全体が電極部100,100に接する状態で接続されていることが好ましい。なお、導体膜120,120は、前記電極部100,100を介して磁気抵抗効果膜200と導通している。本発明では、後の説明をわかりやすくするために、便宜上、導体膜120と電極部100とに分けているが、導体膜120と電極部100は、本来一体的に薄膜形成法により形成されている場合が多く、これらは一つ部材と考えてもよいものである。
【0076】
MRヘッドにおける感磁部分としての磁気抵抗効果膜200は、前記図1に示される磁性多層膜1を有する磁気抵抗効果膜3と実質的に同様な積層構造のものが用いられる。すなわち、磁気抵抗効果膜200は、実質的に図1に示される磁性多層膜を有する磁気抵抗効果膜3に置換され、その結果、磁気抵抗効果膜200は、非磁性金属層30と、非磁性金属層30の一方の面に形成された強磁性層40と、非磁性金属層30の他方の面に形成された軟磁性層20と、前記強磁性層40の磁化の向きをピン止めするために強磁性層40の上(非磁性金属層30と接する面と反対側の面)に形成された反強磁性層50と、この反強磁性層50の上に形成された保護層80を有している。
【0077】
ここで重要な点は、以上のようにして形成した磁気抵抗効果膜200は、いわゆるスピンバルブ型の磁気抵抗変化を示すという点である。スピンバルブ型の磁気抵抗変化とは、非磁性金属層30と、非磁性金属層30の一方の面に形成された強磁性層40と、非磁性金属層30の他方の面に形成された軟磁性層20と、前記強磁性層40の磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上に形成された反強磁性層50とを有する磁性多層膜において、外部の信号磁界が0の時に軟磁性層20とピン止めされた強磁性層40のスピンの成す角度が、鋭角方向から見てほぼ、90度に近く設定されているものをいう。実際は45〜90度の角度であることが多いが、特に好ましくは90度(磁化の直交化)に設定するのがよい。磁気抵抗効果曲線(MR曲線)が、外部磁場が0のときを中心にしてプラス、マイナスの外部磁場に対し、左右非対称となるようにするためである。
【0078】
この磁化の直交化を図るために、磁性多層膜1を反強磁性層50のブロッキング温度Tb以上で磁場中で真空熱処理を行う必要がある。この処理を直交化熱処理と呼び、この時の温度を直交化温度と呼ぶ。成膜中に印加する磁場であらかじめ直交化させておくことによっても実現可能である。しかしながら、その後のヘッド製造プロセスでうける不可避の熱によって、その直交状態が乱されてしまう。従って、好ましくはヘッド製造プロセスの最後に直交化熱処理を行うのがよい。この直交化熱処理の際、反強磁性層50の磁化方向のみ変化させることが望ましい。この直交化温度はブロッキング温度Tbよりも高く、軟磁性層20の誘導磁気異方向性が消失する温度よりも低いことが望ましい。従って、ブロッキング温度Tbが、軟磁性層20の誘導磁気異方向性が消失する温度よりも高い場合に、直交化熱処理を行うと、軟磁性層20の磁化方向が外部磁界に対して磁化容易軸方向となり、外部磁界に対する磁気抵抗効果曲線にヒステリシスを持ってしまい線形性に問題が生じる。同時に出力が低下してしまう。また、ブロッキング温度Tbが軟磁性層20の誘導磁気異方向性が消失する温度よりも低過ぎる場合には、磁気記録システム内のMRセンサ動作中、およびスピンバルブヘッド作製プロセス時に加わる温度により交換結合磁界Huaの劣化が生じ、スピンバルブ膜として機能できないという問題がある。つまり、軟磁性層20の誘導磁気異方向性が消失する温度よりも少し低い温度にブロッキング温度Tbをもつ反強磁性層50を形成し、直交化熱処理を行うことが好ましい。本発明においては、反強磁性層50の組成を上述した範囲内で適宜設定することにより、160〜400℃の範囲のブロッキング温度Tbが選定可能となる。直交化熱処理は、150〜410℃程度の範囲で行われる。特に、本発明では、反強磁性層50の組成との関係で保護層80の材質を選定しているので、例えば、210〜250℃、2時間程度の熱処理プロセスを経ても、スピンバルブ膜としての特性劣化が極めて少ない。
【0079】
図4に示されるように磁気抵抗効果型ヘッド(MRヘッド)150には、磁気抵抗効果膜200および電極部100,100を上下にはさむようにシールド層300,300が形成されるとともに、磁気抵抗効果膜200とシールド層300,300との間の部分には非磁性絶縁層400が形成される。
【0080】
ここで感磁部分としての磁気抵抗効果膜200に用いられる強磁性層40、非磁性金属層30、軟磁性層20、反強磁性層50、および保護層80は、それぞれ、前記磁性多層膜の実施例で述べたものと同様の材質、厚さのものを用いることが望ましい。
【0081】
図4に示すように、電流を流す電極部100を磁気抵抗効果膜200の積層方向にその端部200a,200a全体が接する構造とする。すると、電子は軟磁性層20と強磁性層40に挟まれた部分を中心に流れつつ、軟磁性層20と強磁性層40とのスピンの方向によって磁気散乱され、素子の抵抗が大きく変化する。したがって微小な外部磁場の変化を大きな電気抵抗の変化として検出することができるのである。
【0082】
また、本願発明のスピンバルブ膜を備えるMRヘッドは、図5に示されるようなヘッド構造とすることが特に好ましい。すなわち、感磁部分である磁気抵抗効果膜200と測定電流を流すための電極部100との間に、図示のごとく磁気抵抗効果膜200側から連結用軟磁性層520および反強磁性層800(ないしは硬磁性層800)を順次介在させる。しかも、連結用軟磁性層520および反強磁性層800(ないしは硬磁性層800)の一方端側は、磁気抵抗効果膜200の上部200a(軟磁性層に近い方向)の一部分を覆うように、かつ他方端側は図示のごとく電極部100下面101まで潜り込んで形成される。さらに、電極部100のヘッド中央側に位置する端部102は、磁気抵抗効果膜200の上部200a(軟磁性層に近い方向)の一部分を覆い、かつ、連結用軟磁性層520および反強磁性層800の上部端部520a,800aをもそれぞれ覆うように形成される。なお、連結用軟磁性層520としては、例えば、NiFe,NiFeCr,NiFeRh,NiFeRu,CoZrNb,FeAlSi,FeZrN等(厚さ10nm程度)が用いられ、反強磁性層800としては、Ru5 Rh15Mn,NiMn,FeMn,PtMn,α−Fe2 O3 等(厚さ50nm程度)が用いられ、硬磁性層800としては、CoPt,CoPtCr等(厚さ50nm程度)が用いられる。
【0083】
このような構成とすることにより、磁気抵抗効果膜200に形成される連結用軟磁性層520および反強磁性層800の両方の効果によって極めて効率的に縦バイアスを付与することができ、バルクハウゼンノイズを抑制したMRヘッド特性が得られる。また、電極部100の端部102が、前述のように磁気抵抗効果膜200を覆うように形成されていることにより、素子端部での信号磁場の低下がなく、しかも1μm以下のような狭トラック幅の形成が容易なMRヘッドが提供できる。
【0084】
これらMRヘッドを製造する場合、その製造工程の中でパターニング、平坦化等でベーキング、アニーリング、レジストキュア等の熱処理が不可避である。
【0085】
一般的に、上述の磁性多層膜を有する磁気抵抗効果膜では、構成する各層の厚さ故、耐熱性が問題となる場合が多かった。本発明による磁気抵抗効果膜(磁性多層膜)では磁場を印加し、磁性層に異方性磁場を付与することにより、製膜後、300℃以下、一般に100〜300℃、1時間程度の熱処理に十分対応できる。熱処理は通常、真空中、不活性ガス雰囲気中、大気中等で行えばよいが、特に10-7Torr以下の真空(減圧下)中で行なうことで特性劣化の極めて少ない磁気抵抗効果膜(磁性多層膜)が得られる。また、加工工程でのラッピングやポリッシングにおいてもMR特性が劣化することはほとんどない。
【0086】
なお、本発明における保護層は、反強磁性層50との位置的関係を除外して、一般の保護層として用いることも可能である。
【0087】
【実施例】
上述してきた磁気抵抗効果膜の発明、およびこれを用いた磁気抵抗効果型ヘッドの発明を以下に示す具体的実験例によりさらに詳細に説明する。
〔実験例I〕
(実施例サンプルI−1の作製)
試作サンプルとして、ガラス基板5の上に下地層7(Ta;厚さ5nm)、強磁性層40(Co;厚さ5nm)、ピン止め層としての反強磁性層50(Ru3 Rh15Mn82;厚さ10nm)、保護層80(Rh;厚さ5nm)を基板側から順次積層して、磁気抵抗効果膜のサンプル(実施例サンプルI−1)を作製した。
【0088】
このサンプルは、スパッタ法により作製し、成膜時には一定方向に誘導磁場を与えて磁場中での成膜を行った。スパッタ条件として真空成膜装置内の到達圧力を8×10-10 Torr;ターゲットの酸素含有量200〜500ppm;スパッタガス中の不純物濃度30ppb(その中で、H2 O濃度は8ppb)となるように設定した。
【0089】
このサンプルについて、250℃、2時間のアニール処理(熱処理)が、磁気抵抗効果膜の磁気特性に及ぼす影響を調べる実験を行った。すなわち、(1)成膜時(as depo ) および(2)250℃、2時間のアニール処理(熱処理)後の交換結合エネルギーJkおよび飽和磁束密度Ms の値をそれぞれ求めるとともに、アニール処理(熱処理)前後におけるこれらの変化量(%)を算出した。
【0090】
交換結合エネルギーJkは、振動試料型磁力計(VSM)用いて1KOeの磁場にて磁化曲線を描き、この磁化曲線より、交換結合磁界Huaおよび強磁性層40の飽和磁束密度Ms を求め、これらの値を用いてJkを算出した。交換結合磁界Huaは、例えば、図6に示されるような磁化曲線において、原点FからシフトしたE点(C点とD点の中間)の磁界として定義される。なお、図中、磁化曲線Aは磁化容易軸方向(成膜時に磁場を印加した方向)、磁化曲線Bは磁化困難軸方向を示している。
【0091】
(実施例サンプルI−2〜I−4の作製)
上記実施例サンプルI−1において用いた保護層80の材質を、Rhから、Ru、Zr、Tiにそれぞれ変えた。それ以外は、上記実施例サンプルI−1と同様にして、実施例サンプルI−2、実施例サンプルI−3、実施例サンプルI−4をそれぞれ作製した。
【0092】
(比較例サンプルI−1の作製)
上記実施例サンプルI−1において用いた保護層80の材質を、Rhから、Taに変えた。それ以外は、上記実施例サンプルI−1と同様にして、比較例サンプルI−1を作製した。
【0093】
(比較例サンプルI−2の作製)
上記実施例サンプルI−1において用いた保護層80の材質および膜厚を、Rh(膜厚:5nm)から、Hf(膜厚:6nm)に変えた。それ以外は、上記実施例サンプルI−1と同様にして、比較例サンプルI−2を作製した。
【0094】
(比較例サンプルI−3の作製)
上記実施例サンプルI−1において用いた保護層80の材質および膜厚を、Rh(膜厚:5nm)から、Ta(膜厚:5nm)/Rh(膜厚:5nm)の積層体に変えた。Taが直接、反強磁性層50に接している。それ以外は、上記実施例サンプルI−1と同様にして、比較例サンプルI−3を作製した。
【0095】
(比較例サンプルI−4の作製)
上記実施例サンプルI−1において用いた保護層80の材質および膜厚を、Rh(膜厚:5nm)から、Ta(膜厚:5nm)/Ru(膜厚:5nm)の積層体に変えた。Taが直接、反強磁性層50に接している。それ以外は、上記実施例サンプルI−1と同様にして、比較例サンプルI−4を作製した。
【0096】
以上のサンプルについて測定した(1)成膜時(as depo ) および(2)250℃、2時間のアニール処理(熱処理)後の交換結合エネルギーJkおよび飽和磁束密度Ms の値、並びにアニール処理(熱処理)前後の変化量(%)の算出値を下記表1にそれぞれ示す。
【0097】
【表1】
表1に示される結果より、従来のTaやHfからなる保護層では、アニール処理(熱処理)前後のMs の変化量が、32〜33%程度と極めて大きい。これに対して、本発明の保護層ではアニール処理(熱処理)前後のMs の変化量が、15〜18%程度と極めて小さく抑えられている。特に、RhやRuからなる保護層にあっては、変化量が約15%という極めて優れた効果が発現されているのがわかる。また、従来のTaやHfからなる保護層では、アニール処理(熱処理)前後のJk の変化量が、29〜31%と極めて大きい。これに対して、本発明の保護層ではアニール処理(熱処理)前後のJk の変化量が、14〜20%程度と極めて小さく抑えられている。特に、RhやRuからなる保護層にあっては、変化量が約15%という極めて優れた効果が発現されているのがわかる。
【0098】
これは、RhやRuが極めて酸化に強く、さらに、RhやRuが、反強磁性層50中に含有されるMn合金との関係において、相互拡散に対する高いバリア効果となっているためと考察される。
【0099】
なお、上記実験例Iの各サンプルにおける、反強磁性層内に含まれる不純物濃度は、酸素濃度が200〜400ppm、炭素濃度が、80〜200ppm、硫黄濃度が80〜300ppm、塩素濃度が50〜100ppmであった。反強磁性層内に含まれる不純物濃度の測定方法は以下の手法により行った。
【0100】
反強磁性層内に含まれる不純物濃度の測定方法
本来は実際のヘッド状態として使われる層厚で評価するべきであるが、解析の限界を超えているので、実際の磁気抵抗効果膜を成膜するのと全く同じ成膜装置、および成膜条件によって厚さ1〜3μm程度の反強磁性層を形成する。この時、基板側からの影響を防ぐために、金属の適当なバッファ層を設け、また酸化を防ぐために最上層に他の金属の保護層を形成する。その後、2次イオン質量分析装置(SIMS:Secondary Ion Mass Spectroscopy )によって、定量分析を行う。
【0101】
〔実験例II〕
上記の実験結果より、最も保護層として優れた機能を有していたRhに注目し、保護層をRhとし、反強磁性層の構成組成を種々かえることにより、下記表2に示されるような種々のサンプルを作製した。サンプルの作製手法は実験例Iと実質的に同様とした。得られた各種サンプルについて、上記実験例Iと同様な評価を行った。結果を下記表2に示す。
【0102】
【表2】
表2に示される結果より、保護層をRhとした場合、Mnを含有する(40at%以上含有)反強磁性層との組み合わせで良好な結果が得られることがわかる。中でも特に、MnおよびRuを含むRuRhMn、RuPtMn、RuNiMnなどからなる反強磁性層との組み合わせで極めて良好な結果が得られる。
【0103】
〔実験例III〕
(実施例サンプルIII−1の作製)
以下の要領で実際に、スピンバルブ(SV)タイプの磁気抵抗効果型ヘッドの主要部であるスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜を作製した。すなわち、基板5(Al2 O3 付きのAlTiC)の上に、下地層7(Ta;厚さ5nm)、軟磁性層20(NiFe;厚さ9nm/Co;厚さ1nm)、非磁性金属層30(Cu;厚さ2.5nm)、強磁性層40(Co;厚さ2nm)、反強磁性層50(Ru4 Rh14Mn82;厚さ10nm)、および保護層80(Rh;厚さ5nm)を順次積層してスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜(実施例サンプルIII−1)を作製した。
【0104】
なお、反強磁性層50の不純物濃度は、酸素濃度:200〜400ppm、炭素濃度:80〜200ppm、硫黄濃度:80〜300ppm、塩素濃度:50〜100ppmであった。
【0105】
このサンプルについて、250℃、2時間のアニール処理(熱処理)が、磁気抵抗効果膜のMR変化率(MR Ratio) の値に及ぼす影響を調べる実験を行った。すなわち、(1)成膜時(as depo ) および(2)250℃、2時間のアニール処理(熱処理)後のMR変化率の値をそれぞれ求めるとともに、アニール処理(熱処理)前後におけるMR変化率の変化量(%)を算出した。
【0106】
MR変化率ΔR/Rは、0.4×6mmの大きさの測定サンプルを作成し、外部磁界を面内に電流と垂直方向になるようにかけながら、−300〜300Oeまで変化させたときの抵抗を4端子法により測定した。その抵抗からMR変化率ΔR/Rを求めた。MR変化率ΔR/Rは、最大比抵抗をρmax 、最小比抵抗をρsat とし、次式により計算した。
【0107】
ΔR/R=(ρmax −ρsat )×100/ρsat (%)。
【0108】
(実施例サンプルIII−2〜III−4の作製)
上記実施例サンプルIII−1において用いた保護層80の膜厚を、1nm、2nm、3nm、4nm、8nmにそれぞれ変えた。それ以外は、上記実施例サンプルIII−1と同様にして、実施例サンプルIII−2、実施例サンプルIII−3、実施例サンプルIII−4、実施例サンプルIII−5、実施例サンプルIII−6をそれぞれ作製した。
【0109】
(比較例サンプルIII−1〜III−4の作製)
上記実施例サンプルIII−1において用いた保護層80の材質を、RhからTaに変え、膜厚も、2nm、3nm、4nm、5nmにそれぞれ変えた。それ以外は、上記実施例サンプルIII−1と同様にして、比較例サンプルIII−1、比較例サンプルIII−2、比較例サンプルIII−3、比較例サンプルIII−4をそれぞれ作製した。
【0110】
以上のサンプルについて測定した(1)成膜時(as depo ) および(2)250℃、2時間のアニール処理(熱処理)後のMR変化率、およびアニール処理(熱処理)前後のMR変化率の変化量(%)を下記表3にそれぞれ示す。
【0111】
【表3】
表3に示される結果より、保護層の材料がRhの場合には、Ta保護層と比べて、MRの変化量が大きく改善されていることがわかる。特に5nmの層厚で比較すると、Rhの場合はMRの変化量が−8.5%、Taの場合は−25%と大きな効果が確認された。Rhの層厚については、アニール後のMR変化率が4.0%以上得られる約5nmが上限である。層厚の下限については、酸化防止の十分な機能を果たすために約1nm以上が必要である。好ましくは、2nm以上である。
【0112】
〔実験例IV〕
上記実施例サンプルI−1の作製において、スパッタ条件を種々変えて、反強磁性層中の不純物濃度(酸素、炭素、硫黄、塩素)が異なる種々のサンプルを作製し、反強磁性層中の不純物濃度が交換結合エネルギーJkに及ぼす影響を調べた。実験結果を図7〜9のグラフにそれぞれ示した。この結果より、交換結合エネルギーJkを0.1erg/cm2 以上とするためには、酸素濃度を1〜2000ppm、炭素濃度を1〜2000ppm、硫黄濃度を1〜1000ppm、塩素濃度を1〜2000ppmの範囲に抑える必要が生じることがわかる。
【0113】
このような不純物濃度の抑制は、到達圧力2×10-9Torr以下に排気された真空成膜装置内で、酸素含有量600ppm以下のターゲットを用いて、成膜時に導入されるスパッタガス中の不純物濃度の総和を100ppb以下、かつスパッタガス中のH2 O濃度が40ppb以下でのスパッタガス雰囲気中、スパッタすることにより実現可能であることが確認されている。
【0114】
〔実験例V〕
以下の要領で実際に、図5に示されるようなスピンバルブ(SV)タイプの磁気抵抗効果型ヘッドを作製した。
【0115】
まず、最初にスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜を作製した。すなわち、基板5(Al2 O3 付きのAlTiC)の上に、下地層7(Ta;厚さ5nm)、軟磁性層20(NiFe;厚さ7nm)、非磁性金属層30(Cu;厚さ2.5nm)、強磁性層40(Co;厚さ3nm)、反強磁性層50(Ru3 Rh15Mn82;厚さ10nm)、および保護層80(Rh;厚さ5nm)を順次積層して磁気抵抗効果型ヘッドを作製した。
【0116】
この磁気抵抗効果型ヘッドには、Al2 O3 ギャップ膜を介して上部シールド層と下部シールド層が形成されている。
【0117】
この磁気抵抗効果型ヘッドには、図5に示されるようなインダクティブヘッド部を形成した。すなわち、連結用軟磁性層520としてNiFeを厚さ10nmに形成し、この連結用軟磁性層520の上に、反強磁性層800としてRu5 Rh15Mn20を厚さ10nmに形成し、この上に、さらに、Taからなる電極部100を形成して図5に示される構成のスピンバルブ(SV)タイプの磁気抵抗効果型ヘッドを作製した。その後、10-7Torrの真空中で、測定電流方向と直角かつ面内方向に200Oeの磁界を印加しながら200℃から冷却し、強磁性層のピン止め効果を誘起した。磁気抵抗効果型ヘッドのトラック幅は1.2μmとした。このときのMR素子高さは1μm、感知電流は4mAとした。
【0118】
この磁気抵抗効果型ヘッドを用いて、印加磁場と出力電圧の関係を確認したところ、2.0mVの出力電圧が確認された。これは、通常のスピンバルブヘッドの約2倍という極めて大きな値である。
【0119】
〔実験例VI〕
図10には、本発明の磁気抵抗効果膜をヨーク型MRヘッドに応用した例が示される。ここでは、磁束を導くヨーク600、600の一部に切り欠きを設け、その間に磁気抵抗効果膜200が薄い絶縁膜400を介して形成されている。この磁気抵抗効果膜200には、ヨーク600、600で形成される磁路の方向と平行または直角方向に電流を流すための電極(図示せず)が形成されている。
〔実験例VII〕
図11には、本発明における磁気抵抗効果素子をフラックスガイド型MRヘッドに応用した1例が示される。磁気抵抗効果膜200は、高比抵抗、高透磁率なフラックスガイド層700,710と磁気的に結合して形成されている。このフラッスガイド層700,710が間接的に信号磁界を磁気抵抗効果膜200に伝導する。また、非磁性絶縁層400を介して、フラックスバックガイド層600(磁気抵抗効果膜200を通った磁束の逃げ道)が形成される。また、フラックスバックガイド層600は、非磁性絶縁層400を介して磁気抵抗効果膜200の両側に設置されても良い。このヘッドの特徴は、記録媒体に磁界検出部を、ほぼ接触に近いレベルまで接近させることができ、高い出力を得ることができることにある。
【0120】
【発明の効果】
上記の結果より本発明の効果は明らかである。すなわち、本発明は、スピンバルブ型の磁気抵抗効果膜において、反強磁性層を、Mx Mn100-x (MはRu、Rh、Re、Pt、Pd、Au、Ag、Fe、Ni、IrおよびCrから選ばれた少なくとも1種であり、15≦x≦58(xの単位は原子%))から構成し、この上に形成される保護層をRh、Ru、Zr、Tiから選ばれた少なくとも1種から構成することにより、極めて熱安定性に優れ、MR変化率の劣化が少ない磁気抵抗効果膜、および当該磁気抵抗効果膜を備えてなる磁気抵抗効果型ヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の磁気抵抗効果膜の断面図である。
【図2】図2は、本発明の作用を説明するための磁気抵抗効果膜、特に磁性多層膜の構造の模式図である。
【図3】図3は、本発明の作用を説明するための磁化曲線とMR曲線の模式図である。
【図4】図4は、本発明の磁気抵抗効果型ヘッドの一例を示す概略斜視図である。
【図5】図5は、本発明の磁気抵抗効果型ヘッドの磁気抵抗効果膜と電極部との好適な接続状態を示す概略斜視図である。
【図6】図6は、本発明のM−Hループを示す図である。
【図7】図7は、反強磁性層に含有される不純物としての酸素濃度が交換結合エネルギーJkに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図8】図8は、反強磁性層に含有される不純物としての炭素および硫黄濃度が交換結合エネルギーJkに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図9】図9は、反強磁性層に含有される不純物としての塩素濃度が交換結合エネルギーJに及ぼす影響を調べたグラフである。
【図10】図10は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)をヨーク型MRヘッドに応用した1例を示す一部省略断面図である。
【図11】図11は、本発明の磁気抵抗効果素子(磁性多層膜)をフラックスガイド型MRヘッドに応用した1例を示す一部省略断面図である。
【符号の説明】
1…磁性多層膜
3…磁気抵抗効果膜
5…基板
20…軟磁性層
30…非磁性金属層
40…強磁性層
50…反強磁性層
80…保護層
90…記録媒体
93…記録面
150…磁気抵抗効果型ヘッド
200…磁気抵抗効果膜
Claims (10)
- 非磁性金属層と、非磁性金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接する面と反対側の面)に形成された反強磁性層と、反強磁性層の上(強磁性層と接する面と反対側の面)に形成された保護層とを有する多層膜を備えてなるスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜であって、
前記反強磁性層が、Ru x Rh y Mn z 、Ru x Pt y Mn z 、またはRu x Ni y Mn z (1≦x≦30,1≦y≦30,69≦z≦90,10≦x+y≦31(x,y,およびzの単位は原子%))からなり、
前記保護層がRhからなることを特徴とする磁気抵抗効果膜。 - 前記保護層の厚さ(t)が、1nm≦t≦5nmの範囲にある請求項1に記載の磁気抵抗効果膜。
- 前記反強磁性層中には不純物としての酸素を含有し、その酸素濃度が1〜2000原子ppmである請求項1または請求項2に記載の磁気抵抗効果膜。
- 前記反強磁性層中には、さらに、不純物としての炭素、硫黄、塩素を含み、反強磁性層中に含有される炭素濃度が1〜2000原子ppm、硫黄濃度が1〜1000原子ppm、塩素濃度が1〜2000原子ppmである請求項3に記載の磁気抵抗効果膜。
- 前記磁気抵抗効果膜は、基板側から、軟磁性層、非磁性金属層、強磁性層、反強磁性層、保護層を順次備える多層膜構造を備えてなる請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の磁気抵抗効果膜。
- 磁気抵抗効果膜と、導体膜と、電極部とを含む磁気抵抗効果型ヘッドであって、
前記導体膜は、前記電極部を介して前記磁気抵抗効果膜と導通しており、
前記磁気抵抗効果膜は、非磁性金属層と、非磁性金属層の一方の面に形成された強磁性層と、非磁性金属層の他方の面に形成された軟磁性層と、前記強磁性層の磁化の向きをピン止めするために強磁性層の上(非磁性金属層と接する面と反対側の面)に形成された反強磁性層と、反強磁性層の上(強磁性層と接する面と反対側の面)に形成された保護層とを有する多層膜を備えてなるスピンバルブ型の磁気抵抗効果膜であり、
前記反強磁性層が、Ru x Rh y Mn z 、Ru x Pt y Mn z 、またはRu x Ni y Mn z (1≦x≦30,1≦y≦30,69≦z≦90,10≦x+y≦31(x,y,およびzの単位は原子%))からなり、
前記保護層がRhからなることを特徴とする磁気抵抗効果型ヘッド。 - 前記保護層の厚さ(t)が、1nm≦t≦5nmの範囲にある請求項6に記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記反強磁性層中には不純物としての酸素を含有し、その酸素濃度が1〜2000原子ppmである請求項6または請求項7に記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記反強磁性層中には、さらに、不純物としての炭素、硫黄、塩素を含み、反強磁性層中に含有される炭素濃度が1〜2000原子ppm、硫黄濃度が1〜1000原子ppm、塩素濃度が1〜2000原子ppmである請求項8に記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
- 前記磁気抵抗効果膜は、基板側から、軟磁性層、非磁性金属層、強磁性層、反強磁性層、保護層を順次備える多層膜構造を備えてなる請求項6ないし請求項9のいずれかに記載の磁気抵抗効果型ヘッド。
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