JPH10284769A - 磁気抵抗効果多層膜 - Google Patents

磁気抵抗効果多層膜

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JPH10284769A
JPH10284769A JP9092566A JP9256697A JPH10284769A JP H10284769 A JPH10284769 A JP H10284769A JP 9092566 A JP9092566 A JP 9092566A JP 9256697 A JP9256697 A JP 9256697A JP H10284769 A JPH10284769 A JP H10284769A
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英治 梅津
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直也 長谷川
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    • H01F10/324Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer
    • H01F10/3268Exchange coupling of magnetic film pairs via a very thin non-magnetic spacer, e.g. by exchange with conduction electrons of the spacer the exchange coupling being asymmetric, e.g. by use of additional pinning, by using antiferromagnetic or ferromagnetic coupling interface, i.e. so-called spin-valve [SV] structure, e.g. NiFe/Cu/NiFe/FeMn

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 本発明は、フリー強磁性層に縦バイアスを印
加するための層をフリー強磁性層に積層する形に設け、
フリー強磁性層に縦バイアスを印加するための層とフリ
ー強磁性層との境界部分への不要元素混入のおそれをな
くして縦バイアスによる効果を充分に得ることができる
とともに、線形応答性に優れ、バルクハウゼンノイズを
抑制した磁気抵抗効果型センサを提供することを目的と
する。 【解決手段】 本発明は、磁化反転がピン止めされたピ
ン止め強磁性層32と磁化反転が自由にされたフリー強
磁性層34を非磁性層33を介し積層してなる磁気抵抗
効果多層膜であり、前記フリー強磁性層34の上面また
は下面に軟磁性層37が積層され、前記軟磁性層37の
上面または下面に反強磁性層38が少なくとも一層積層
されてなることを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、磁気ヘッド、位置
センサ、回転センサ等に適用される磁気抵抗効果素子を
構成する磁気抵抗効果多層膜に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、磁気抵抗効果型読み取りヘッド
(MRヘッド)として、異方性磁気抵抗効果現象を用い
たAMR(Anisotropic Magnetoresistance)ヘッド
と、伝導電子のスピン依存散乱現象を用いたGMR(Gi
ant Magnetoresistance:巨大磁気抵抗効果)ヘッドと
が知られており、GMRヘッドの1つの具体例として、
低外部磁界で高磁気抵抗効果を示すスピンバルブ(Spin
-Valve)ヘッドが米国特許第5159513号明細書に
示されている。
【0003】図4は従来知られているスピンバルブ構造
の一例を示すもので、この例の構造は、フリー強磁性層
1と非磁性中間層2とピン止め強磁性層3と反強磁性層
4を基板上に積層し、この積層体の両側に積層体を挟む
ようにCo-Pt等からなる磁石層5、5を設け、その
上に電極層6、6を設けて構成されている。また、図4
に示す従来構造においてピン止め強磁性層3の磁化方向
を図4のZ方向に固定させるためには、比較的大きなバ
イアス磁界が必要であり、このバイアス磁界は大きけれ
ば大きいほど良いことになる。図4のZ方向の反磁界に
打ち勝ち、磁気媒体からの磁束により磁化方向が揺れな
いためには、少なくとも100 Oeのバイアス磁界が
必要である。このバイアス磁界を得るために図4に示す
従来構造にあっては、ピン止め強磁性層3に反強磁性層
4を接触させて設けることにより生じる交換異方性磁界
を利用している。
【0004】図4に示す構造であると、フリー強磁性層
1には磁石層5、5によって膜面に対して平行(図4の
X方向:トラック方向)の縦バイアスを印加し単磁区化
した状態でトラック方向に磁化を向けさせるとともに、
ピン止め強磁性層3の磁化方向を図4中のZ方向、即
ち、フリー強磁性層1の磁化方向と直交する方向にバイ
アスを印加して単磁区化した状態で図中Z方向に向けさ
せておく必要がある。前記の縦バイアス印加の目的はフ
リー強磁性層1が多数の磁区を形成することによって生
じるバルクハウゼンノイズを抑制すること、即ち、磁気
媒体からこの磁束に対してノイズの少ないスムーズな抵
抗変化にするためである。また、磁気媒体からの磁束
(図4のZ方向)により、前記ピン止め強磁性層3の磁
化方向は変化してはならず、フリー強磁性層1の方向が
ピン止め強磁性層3の磁化方向に対して90±θ゜の範
囲で変化することにより磁気抵抗効果の線形応答性が得
られる。以上のように、スピンバルブヘッドの際のピン
止め強磁性層のバイアス、フリー強磁性層の縦バイアス
に反強磁性層との接触界面で生じる交換異方性磁界を利
用することにより、線形応答性が良く、バルクハウゼン
ノイズを抑制した磁気抵抗効果型ヘッドが実現される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】図4に示すスピンバル
ブ構造において、左右の磁石層5、5によって縦バイア
スが印加されたフリー強磁性層1にあっては、磁石層
5、5に近接するトラックエンド部(図4に符号7で示
す領域)の磁化の向きが容易に変化しない不感領域とな
りやすく、磁気媒体の記録密度の向上に伴う更なる狭ト
ラック化が進められた場合に問題を生じるおそれがあっ
た。
【0006】そこで本願発明者らは先に、図5に示すよ
うに、フリー強磁性層1と非磁性中間層2とピン止め強
磁性層3と反強磁性層4からなる積層体Sをその両側か
ら挟むようにNi-Feなどからなる強磁性層8を設
け、該強磁性体8の上に反強磁性層9と電極層10を積
層した構造を提案している。この構造によれば、反強磁
性層9の一方向異方性により、強磁性層8を単磁区化す
ることで、積層体に接触している強磁性層8の延出部8
a側からフリー強磁性層1側に磁束を作用させることが
でき、これによる交換相互作用で磁気的にフリー強磁性
層1に縦バイアスを印加することができる。
【0007】しかしながら、図5に示す積層構造を製造
するには、フリー強磁性層1と非磁性中間層2とピン止
め強磁性層3と反強磁性層4を積層した後に、積層体S
とするべき部分のみにマスクを被せてその他の不要部分
をイオンミリングにより除去するフォトリソグラフィ技
術による加工を行い、トラック幅に相当する幅を有する
積層体Sを製造するので、得られた積層体Sの周縁部分
にはイオンミリング時に不要元素の再付着が起こるおそ
れが高く、強磁性層8の延出部8aと積層体Sとが接触
する部分で磁束を作用させる重要な部分に不要元素が混
入して所望の縦バイアスによる効果を得られなくなるお
それがあった。
【0008】本発明は前記事情に鑑みてなされたもの
で、フリー強磁性層に縦バイアスを印加するための層を
フリー強磁性層の側部側ではなくフリー強磁性層に積層
する形に設けることにより、フリー強磁性層に縦バイア
スを印加するための層とフリー強磁性層との境界部分へ
の不要元素混入のおそれをなくして縦バイアスによる効
果を充分に得ることができるとともに、線形応答性に優
れ、バルクハウゼンノイズを抑制した磁気抵抗効果型セ
ンサを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するために、磁化反転がピン止めされたピン止め強磁性
層と磁化反転が自由にされたフリー強磁性層を非磁性層
を介し積層してなる磁気抵抗効果多層膜であり、前記フ
リー強磁性層の上面または下面に軟磁性層が積層され、
前記軟磁性層の上面または下面に反強磁性層が少なくと
も一層積層されてなることを特徴とする。次に本発明に
おいては、磁化反転がピント止めされたピン止め強磁性
層と磁化反転が自由にされたフリー強磁性層を非磁性層
を介し積層してなる磁気抵抗効果多層膜であり、前記フ
リー強磁性層に対し強磁性結合して該フリー強磁性層の
保磁力を下げる軟磁性層をフリー強磁性層の上面または
下面に積層し、前記軟磁性層の上面または下面に該軟磁
性層を単磁区化する反強磁性層を少なくとも一層積層
し、前記フリー強磁性層の磁化の反転に応じた電気抵抗
を測定して使用するものであることを特徴とする。更に
本発明において、前記軟磁性層が、bccFeを主成分
とする結晶相とTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W
のうちの1種又は2種以上の元素からなる元素M'との
炭化物、窒化物からなる結晶相からなり、平均結晶粒径
が30nm以下の微細結晶粒が主体とされてなることを
特徴とする。
【0010】本発明構造において、前記軟磁性層が、b
ccFeを主成分とする平均結晶粒径30nm以下の結
晶粒を主体とする結晶相と、Oと、Ti、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、W、希土類元素のうちの1種又は2種
以上の元素からなる元素Mとの化合物からなる非晶質相
からなることを特徴とする。前記反強磁性層が、Cr-
Al系合金、Cr-Ga系合金、Cr-In系合金、Ni
Oの1種からなることが好ましい。また、前記軟磁性層
の厚さが100〜300Å、フリー強磁性層の厚さが8
0〜90Å、前記反強磁性層とフリー強磁性層の合計層
厚が200〜400Åとされてなることが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】以下図面を参照して本発明の一形
態について説明する。図1は本発明に係る磁気抵抗効果
多層膜の一形態を示すものであり、図示略の磁気ヘッド
等を構成する基板の上に形成されたピン止め用強磁性層
31上に、ピン止め強磁性層32と非磁性層33とフリ
ー強磁性層34が順次積層されて例えば断面台形状の積
層体35が形成され、、フリー強磁性層34の両端部側
に、トラック幅TWに相当する間隔を相互の間にあけて
積層体35をその両側から挟む電極層36、36が設け
られている。また、電極層36、36とフリー強磁性層
34とを覆って軟磁性層37が積層され、軟磁性層37
上に軟磁性層37を覆って反強磁性層38が積層されて
いる。なお、この形態の構造においては、ピン止め用強
磁性層31とピン止め強磁性層32と非磁性層33とフ
リー強磁性層34と軟磁性層37と反強磁性層38とに
よってスピンバルブ型の磁気抵抗効果多層膜T1が構成
されている。
【0012】前記ピン止め用強磁性層31は、その上に
形成されるピン止め強磁性層32に磁気的交換結合力を
作用させて強磁性層32の保磁力を増大させ、磁化の向
きをピン止めするためのものであり、このピン止め用強
磁性層31は、反強磁性体、特に酸化物反強磁性体から
構成されることが好ましく、1つの具体例としては、α
-Fe23から形成される。このα-Fe23からなるピ
ン止め用強磁性層31であるならば、α-Fe23自体
のモーリン点が高く、ブロッキング温度が高いので、線
形応答性に優れた上で温度変化に強く、バルクハウゼン
ノイズを確実に抑制できる磁気抵抗効果多層膜を提供で
きる。なお、α-Fe23の他にPt-Mn、Ir-M
n、Fe-Mn、NiO等も使用することができる。前
記強磁性層32、34は、いずれも強磁性体の薄膜から
なるが、具体的にはNi-Fe合金、Co-Fe合金、N
i-Co合金、Co、Ni-Fe-Co合金などからな
る。また、強磁性層32をCo層から、強磁性層34を
Ni-Fe合金層から、あるいはCo層とNi-Fe合金
層の積層構造から構成することもできる。なお、Co層
とNi-Fe合金層との2層構造とする場合は、非磁性
層33側に薄いCo層を配置する構造とすることもでき
る。
【0013】これは、非磁性層33を強磁性層32、3
4で挟む構造の巨大磁気抵抗効果発生機構にあっては、
CoとCuの界面で伝導電子のスピン依存散乱の効果が
大きいこと、および、強磁性層32、34を同種の材料
から構成する方が、異種の材料から構成するよりも、伝
導電子のスピン依存散乱以外の因子が生じる可能性が低
く、より高い磁気抵抗効果を得られることに起因してい
る。このようなことから、強磁性層32をCoから構成
した場合は、強磁性層34の非磁性層33側を所定の厚
さでCo層に置換した構造が好ましい。また、Co層を
特に区別して設けなくとも、強磁性層34の非磁性層3
3側にCoをより多く含ませた合金状態とし、反対側に
向かうにつれて徐々にCo濃度が薄くなるような濃度勾
配層としても良い。
【0014】前記非磁性層33は、Cu、Cr、Au、
Agなどに代表される非磁性体からなり、20〜40Å
の厚さに形成されている。ここで非磁性膜33の厚さが
20Åより薄いと、強磁性層32と強磁性層34との間
で磁気的結合が起こりやすくなる。また、非磁性層33
が40Åより厚いと磁気抵抗効果を生じる要因である非
磁性層33と強磁性層32、34の界面で散乱される伝
導電子の率が低下し、電流の分流効果により磁気抵抗効
果が低減されてしまうので好ましくない。
【0015】前記軟磁性層37は、例えば以下に説明す
る軟磁性合金の膜から構成され、好ましくは厚さ100
〜300Å程度に形成される。なお、ここで用いられる
軟磁性層37は、軟磁気特性に優れ、飽和磁束密度が高
いとともに、比抵抗の大きなものを用いることが好まし
い。
【0016】組成例1 組成式としてFeabcで示され、Mは希土類元素
(周期表の3A族に属するSc、Y、あるいはLa、C
e、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Td、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Luなどのランタノイ
ド)のうち少なくとも一種の元素またはそれらの混合物
を表し、組成比a、b、cは、好ましくは原子%で、5
0≦a≦70、5≦b≦30、10≦c≦30、a+b
+c=100なる関係を満足することを特徴とする軟磁
性合金を適用することができる。なお、この組成の軟磁
性合金ならば、先に本発明者らが特開平06−3167
48号明細書で開示した如く比抵抗として400〜10
00μΩ・cm程度の高比抵抗を示すので本願発明の目的
達成のために使用することができる。
【0017】組成例2 組成式としてFedM’efで示され、M’は、Ti、
Zr、Hf、V、Nb、Ta、Wの群から選ばれた少な
くとも一種の元素またはそれらの混合物を表し、組成比
d、e、fは好ましくは原子%で、45≦d≦70、5
≦e≦30、10≦f≦40、d+e+f=100なる
関係を満足することを特徴とする軟磁性合金を適用する
ことができる。なお、この組成の軟磁性合金ならば、先
に本発明者らが特開平06−316748号明細書で開
示した如く比抵抗として、400〜2.0×105μΩ・
cm程度の高比抵抗を示すので本願発明の目的達成のため
に使用することができる。
【0018】組成例3 組成式として、T100-a-b-c-d−Xa−Mb−Zc−Qd
示され、TはFeとCoのいずれか又は両方、XはSi
とAlのいずれか又は両方、M’はTi、Zr、Hf、
V、Nb、Ta、Mo、Wの金属元素群から選ばれる少
なくとも1種の元素、ZはCとNのいずれか又は両方、
QはCr、Re、Ru、Rh、Ni、Pd、Pt、Au
の金属元素群から選ばれる少なくとも1種の元素を表わ
す。また、前記の組成において、下記の組成比(原子
%)を満足することが好ましい。0≦a≦25、1≦b
≦7、0.5≦c≦10、0≦d≦10。この例の組成
であるならば、1Tを越える高い飽和磁束密度を示すの
で本願発明の目的達成のために使用することができる。
【0019】組成例4 組成式として、T100-e-f-b-c-d−Sie−Alf−Mb
c−Qd、但し、TはFeとCoのいずれか又は両方、
MはTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Mo、Wの金
属元素群から選ばれる少なくとも1種の元素、ZはCと
Nのいずれか又は両方、QはCr、Re、Ru、Rh、
Ni、Pd、Pt、Auの金属元素群から選ばれる少な
くとも1種の元素を表わす。また、下記の組成比(原子
%)を満足することが好ましい。8≦e≦15、0.5
≦f≦10、1≦b≦7、0.5≦c≦10、0≦d≦
10。この例の組成であるならば、1Tを越える高い飽
和磁束密度を示すので本願発明の目的達成のために使用
することができる。
【0020】次に、前記反強磁性層38は、ピン止め用
強磁性層31とは異なる反強磁性体、例えば、Cr-A
l、PtMn、NiO等からなることが好ましいが、中
でも高比抵抗のCr-Alが最も好ましい。
【0021】前記の構造においては、フリー強磁性層3
4上に軟磁性層37を設けているので、フリー強磁性層
34と軟磁性層37を強磁性結合させることができ、こ
れによりフリー強磁性層34の保磁力を下げることがで
きる。更に、軟磁性層37上に反強磁性層38を設ける
ことで、軟磁性層37を単磁区化することができるとと
もに、単磁区化した軟磁性層37によりフリー強磁性層
34にバイアスを印加することができる。また、ピン止
め強磁性層32の全面に密着させたピン止め用強磁性層
31により、ピン止め強磁性層32の磁化の向きをピン
止めして図1の紙面に垂直なb方向に磁化の向きを揃え
ることができる。以上のことから、フリー強磁性層34
の磁化の向きを図1の矢印a方向に向け、ピン止め強磁
性層32の磁化の向きを矢印b方向に向けることで両者
をほぼ90゜で直交させて揃えることができる。
【0022】図1に示す構造において定常電流は、磁気
抵抗効果多層膜T1に与えられる。図1に示す構造であ
るならば、ピン止め強磁性層32の磁化の向きがピン止
めされ、フリー強磁性層34の磁化の方向がトラック幅
TWに相当する領域において自由にされる結果、強磁性
層32と34の間に保磁力差が生じ、これに起因して巨
大磁気抵抗効果が得られる。即ち、磁化の回転が自由に
されたフリー強磁性層34の中央部のトラック幅TWに
相当する部分に、磁気記録媒体からの漏れ磁界などのよ
うな外部磁界が作用すると、フリー強磁性層34の磁化
の向きが容易に回転するので、回転に伴って磁気抵抗効
果多層膜T1に抵抗変化が生じ、この抵抗変化を測定す
ることで磁気記録媒体の磁気情報を読み取ることができ
る。また、この抵抗変化の際にフリー強磁性層34は単
磁区化された軟磁性層37に接していて、しかも縦バイ
アスが印加されているので、バルクハウゼンノイズを生
じることなく、良好な線形応答性で抵抗変化が得られ
る。
【0023】また、図1に示す構造において、ピン止め
用強磁性層31をα-Fe23から構成すると、α-Fe
23は元々酸化物であり、従来のスピンバルブ構造にお
いて用いられているFeMnに比べて耐食性に優れ、し
かもネール温度が高いので、温度変動に強い特徴があ
る。なお、図1に示す素子構造においてピン止め用強磁
性層31をα-Fe23から構成できると記載したが、
ピン止め用強磁性層31の構成材料はピン止め強磁性層
32に磁気的交換結合力を作用させて保磁力を高くする
ようなものであれば良いので、他の反強磁性体、酸化物
反強磁性体あるいは高保磁力磁性体等から構成しても良
いのは勿論である。
【0024】次に、図1に示す構造の磁気抵抗効果多層
膜T1を得るには、例えばAl23-TiC(アルチッ
ク)などの非磁性のセラミックス基板を高周波マグネト
ロンスパッタ装置あるいはイオンビームスパッタ装置の
チャンバ内に設置し、チャンバ内をArガスなどの不活
性ガス雰囲気としてから順次必要な層を成膜することに
より作成することができる。成膜に必要なターゲット
は、例えばα-Fe23ターゲット、Ni-Fe合金ター
ゲット、Cuターゲットなどである。
【0025】図1に示す断面構造の磁気抵抗効果多層膜
を製造するには、Arガス圧3mTorr以下などの減圧雰
囲気中において図1のZ方向に磁界を印加しながら、ス
パッタにより基板上にα-Fe23からなるピン止め用
強磁性層31を形成し、このピン止め用強磁性層31上
に、非磁性層33を挟んで2層の強磁性層32、34を
形成するとともに、フォトリソグラフィプロセスとイオ
ンミリングによりトラック幅に相当する部分を残して他
の部分を除去して積層体35とする。積層体35を形成
したならば積層体35の両側を挟むように電極層36、
36を形成し、更に積層体35の上面と電極層36の上
面を覆うように軟磁性層37と反強磁性層38を積層す
る。ここで反強磁性層38を積層する場合に例えば磁界
を印加しながら成膜する。
【0026】次いで図1の紙面垂直方向に磁界を印加し
てピン止め用強磁性層31を着磁して磁化の向きを固定
することでピン止め強磁性層32の磁化の向きをピン止
めする。以上の処理によってピン止め強磁性層32の磁
化の向きとフリー強磁性層34の磁化の向きが90゜直
交した図3に示す構造の磁気抵抗効果型センサを得るこ
とができる。
【0027】ここで積層体35を形成する場合のフォト
リソグラフィプロセスにおいて、必要な膜を積層しこの
積層膜において積層体の形成予定部分を覆うマスクを被
せてから不要部分をイオンミリングにより除去して積層
体35を形成する処理を行うが、ここで積層体35の側
部側にイオンミリング時に不要物質が混入することが考
えられる。しかし、図1に示す構造であれば、フリー強
磁性層34の上に形成する軟磁性層37と反強磁性層3
8がフリー強磁性層34に縦バイアスを印加するので、
フリー強磁性層34の側部側に設けるのは電極層36の
みで良く、積層体35の側部側の不要元素混入は磁気抵
抗効果には何ら悪影響を及ぼさない。従ってイオンミリ
ング工程を行っても縦バイアス印加機構に何ら悪影響は
及ぼさない。
【0028】次に図2は、本発明に係る磁気抵抗効果多
層膜の第2の形態を示すもので、この形態の磁気抵抗効
果多層膜T2は、断面台形状の積層体40をピン止め用
強磁性層31とピン止め強磁性層32と非磁性層33と
フリー強磁性層34と軟磁性層37’と反強磁性層3
8’とから構成し、積層体40の両側に被さるように電
極層36、36を設けた構造である。
【0029】次に図3は、本発明に係る磁気抵抗効果多
層膜の第3の形態を示すもので、この形態の磁気抵抗効
果多層膜T2は、軟磁性層37と反強磁性層38とを下
地層として基板上に形成し、その上に断面台形状になる
ようにフリー強磁性層34と非磁性層33とピン止め強
磁性層32とピン止め用強磁性層31とを積層して積層
体41を構成し、軟磁性層37上に前記積層体41の両
側に被さるように電極層36、36を設けた構造であ
る。
【0030】これらのいずれの構造においてもフリー強
磁性層34に軟磁性層37と反強磁性層38を積層して
いるので、縦バイアスを印加することができ、軟磁性層
37に反強磁性層38を密着配置しているので軟磁性層
37を単磁区化することができ、本願の目的を先の形態
の場合と同様に達成することができる。
【0031】なお、図2に示す構造であると、図1に示
す構造とは異なり、積層体40をピン止め用強磁性層3
1とピン止め強磁性層32と非磁性層33とフリー強磁
性層34と軟磁性層37’と反強磁性層38’とから構
成しているので、これらを形成するための膜を順次成膜
して積層した後でまとめてイオンミリングすることで積
層体40を形成し、電極層36、36を形成することで
製造できる。即ち、図1に示す構造の如く積層体35と
電極層36を形成後に更に軟磁性層37と反強磁性層3
8を別途積層する必要が図2に示す構造では必要ないの
で、図2に示す構造であれば図1に示す構造よりも工程
数を削減できて容易に製造できるようになる。
【0032】
【発明の効果】以上説明したように本発明は、フリー強
磁性層に軟磁性層と反強磁性層を積層させて設け、反強
磁性層から軟磁性層に磁気的交換結合を生じさせて軟磁
性層を単磁区化するとともに、反強磁性層から軟磁性層
を介してフリー強磁性層に縦バイアスを印加することが
できる。そして、軟磁性層と反強磁性層はフリー強磁性
層に積層する形で設けるので、各層を構成する膜を積層
してイオンミリング等によりパターニングする場合であ
っても、軟磁性層と反強磁性層とフリー強磁性層の積層
界面に不要物質が混入するおそれはなくなり、目的どお
りの縦バイアスを印加することができる。従って前記構
造の磁気抵抗効果多層膜を磁気ヘッドに用いるならば、
磁気記録媒体からの微小な磁界に線形応答して抵抗変化
を起こし、これにより検出感度良くバルクハウゼンノイ
ズの無い状態で磁気情報の読出を行い得る磁気ヘッドを
提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る磁気抵抗効果多層膜の第1の形
態を示す断面図。
【図2】 本発明に係る磁気抵抗効果多層膜の第2の形
態を示す断面図。
【図3】 本発明に係る磁気抵抗効果多層膜の第3の形
態を示す断面図。
【図4】 従来の磁気抵抗効果型センサの第1の例を示
す断面図。
【図5】 従来の磁気抵抗効果型センサの第2の例を示
す断面図。
【符号の説明】
1、T2、T3 磁気抵抗効果多層膜 31 ピン止め用強磁性層 32 ピン止め強磁性層 33 非磁性層 34 フリー強磁性層 35 積層体 36 電極層 37、37'、47 軟磁性層 38、38'、48 反強磁性層

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 磁化反転がピン止めされたピン止め強磁
    性層と磁化反転が自由にされたフリー強磁性層を非磁性
    層を介し積層してなる磁気抵抗効果多層膜であり、前記
    フリー強磁性層の上面または下面に軟磁性層が積層さ
    れ、前記軟磁性層の上面または下面に反強磁性層が少な
    くとも一層積層されてなることを特徴とする磁気抵抗効
    果多層膜。
  2. 【請求項2】 磁化反転がピン止めされたピン止め強磁
    性層と磁化反転が自由にされたフリー強磁性層を非磁性
    層を介し積層してなる磁気抵抗効果多層膜であり、前記
    フリー強磁性層に対し強磁性結合して該フリー強磁性層
    の保磁力を下げる軟磁性層をフリー強磁性層の上面また
    は下面に積層し、前記軟磁性層の上面または下面に該軟
    磁性層を単磁区化する反強磁性層を少なくとも一層積層
    し、前記フリー強磁性層の磁化の反転に応じた電気抵抗
    を測定して使用するものであることを特徴とする磁気抵
    抗効果多層膜。
  3. 【請求項3】 前記軟磁性層が、bccFeを主成分と
    する結晶相とTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Wの
    うちの1種又は2種以上の元素からなる元素M'との炭
    化物、窒化物からなる結晶相からなり、平均結晶粒径が
    30nm以下の微細結晶粒が主体とされてなることを特
    徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果多層膜。
  4. 【請求項4】 前記軟磁性層が、bccFeを主成分と
    する平均結晶粒径30nm以下の結晶粒を主体とする結
    晶相と、Oと、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、
    W、希土類元素のうちの1種又は2種以上の元素からな
    る元素Mとの化合物からなる非晶質相からなることを特
    徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗効果多層膜。
  5. 【請求項5】 前記反強磁性層が、Cr-Al系合金、
    Cr-Ga系合金、Cr-In系合金、NiOの1種から
    なることを特徴とする請求項1または2記載の磁気抵抗
    効果多層膜。
  6. 【請求項6】 前記軟磁性層の厚さが100〜300
    Å、フリー強磁性層の厚さが80〜90Å、前記反強磁
    性層とフリー強磁性層の合計層厚が200〜400Åと
    されてなることを特徴とする請求項1または2記載の磁
    気抵抗効果多層膜。
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