JP2004095587A - 磁気検出素子 - Google Patents

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Masaji Saito
斎藤 正路
Yosuke Ide
井出 洋介
Naoya Hasegawa
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Abstract

【課題】ΔR・Aの大きなデュアルスピンバルブ型の磁気検出素子を提供する。
【解決手段】人工フェリ構造のフリー磁性層26の第1フリー磁性層53の膜厚t1及び第2フリー磁性層55の膜厚t2をスピン拡散長(Spin diffusion length)より大きくすることにより、磁気検出素子内を伝導電子のスピンが同一性を保って移動している間の電気抵抗を低減させることができ、これによって、磁気検出素子の最小抵抗値と最大抵抗値の差、すなわち、磁気抵抗変化を大きくすることができる。従って、単位面積当たりの磁気抵抗変化ΔR・Aの大きなCPP型デュアルスピンバルブ磁気検出素子を提供できる。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、CPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子に係り、特に単位面積当たりの抵抗変化(ΔR・A)の向上を効果的に図ることが可能な磁気検出素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来の磁気検出素子を示す断面図である。
【0003】
このスピンバルブ型磁気検出素子は、下から、反強磁性層2、固定磁性層3、非磁性材料層4、第1フリー磁性層5a、非磁性中間層5b、第2フリー磁性層5cからなるシンセティックフェリ型のフリー磁性層5、非磁性材料層6、固定磁性層7、反強磁性層8から構成された多層膜9、多層膜9の下と上に形成された電極層1及び電極層10と、フリー磁性層5の両側部に形成されたハードバイアス層11,11及びハードバイアス層11,11の上下に形成された絶縁層12,12並びに絶縁層13,13からなっている。
【0004】
反強磁性層2、8はPtMn、固定磁性層3、7、及びフリー磁性層5の第1フリー磁性層5a、第2フリー磁性層5cはCoFe、フリー磁性層5の非磁性中間層5bはRu、非磁性材料層4、6はCu、ハードバイアス層11はCoPtなどの硬磁性材料、絶縁層12、13はアルミナ、電極層1、10はCrなどの導電性材料によって形成されている。
【0005】
図10に示す磁気検出素子は、フリー磁性層5の上下のそれぞれに非磁性材料層4、固定磁性層3、及び非磁性材料層6、固定磁性層7が形成されているデュアルスピンバルブ型磁気検出素子と呼ばれるものであり、ハードディスクなどの記録媒体からの記録磁界を検出するものである。
【0006】
なお、図10に示される磁気検出素子は、多層膜9の各層の膜面と垂直方向に電流が流れるCPP(current perpendicular to theplane)型の磁気検出素子である。
【0007】
固定磁性層3の磁化方向は図示Y方向に固定され、固定磁性層7の磁化方向は図示Y方向と反平行方向に固定されている。例えば、第2フリー磁性層5cの磁気的膜厚(飽和磁化Ms×膜厚t)が第1フリー磁性層5aの磁気的膜厚よりも大きいとき、外部磁界が印加されていない状態の第2フリー磁性層5cの磁化方向は、ハードバイアス層11,11からの縦バイアス磁界によってトラック幅方向(図示X方向)に向けられて単磁区化し、第1フリー磁性層5aの磁化方向はトラック幅方向に反平行な方向に向けられる。フリー磁性層5全体の磁化方向は、磁気的膜厚の大きい第2フリー磁性層5cの磁化方向になる。外部磁界が印加されると第1フリー磁性層5aと第2フリー磁性層5cの磁化が人工フェリ状態を維持したまま回転し、多層膜9の電気抵抗が変化する。この電気抵抗の変化を電圧変化または電流変化として取り出すことにより外部磁界を検出する。
【0008】
磁性材料に電流を流すと、この磁性材料中では、メジャーリティの伝導電子に対する比抵抗とマイノリティの伝導電子に対する比抵抗が異なる値になる。
【0009】
磁性材料を構成する磁性原子は、主に3d軌道または4f軌道の電子の軌道磁気モーメント及びスピン磁気モーメントによって、その磁気モーメントが規定される。磁性原子の3d軌道または4f軌道に存在する電子は、基本的にアップスピンとダウンスピンの数が異なっている。この3d軌道または4f軌道に存在するアップスピンの電子とダウンスピンの電子のうち数が多い方の電子のスピンをメジャーリティスピンといい、少ない方の電子のスピンをマイノリティスピンという。
【0010】
一方、磁性材料を流れる電流中には、アップスピンの伝導電子とダウンスピンの伝導電子がほぼ同数含まれている。アップスピンの伝導電子とダウンスピンの伝導電子のうち、磁性材料のメジャーリティスピンと同じスピンを有する方をメジャーリティの伝導電子といい、磁性材料のマイノリティスピンと同じスピンを有する方をマイノリティの伝導電子という。
【0011】
ここでρ↓をマイノリティの伝導電子に対する磁性材料の比抵抗値とし、ρ↑をメジャーリティの伝導電子に対する比抵抗値とすると以下に示す関係式によって、磁性材料に固有の値βを定義できる。
【0012】
ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)
すなわち、磁性材料のβの値が正(β>0)のとき、ρ↓>ρ↑となり、磁性材料中を流れやすいのはメジャーリティの伝導電子の方になる。一方、磁性材料のβの値が負(β<0)のとき、ρ↓<ρ↑となり、磁性材料中を流れやすいのはマイノリティの伝導電子の方になる。
【0013】
また、磁性材料からなる磁性層に非磁性材料からなる非磁性層が積層されると、磁性層と非磁性層の界面に界面抵抗が発生する。
【0014】
この界面抵抗も、メジャーリティの伝導電子に対する値とマイノリティの伝導電子に対する値が異なる。
【0015】
r↓をマイノリティの伝導電子に対する界面抵抗値とし、r↑を伝導電子のうちメジャーリティの伝導電子に対する界面抵抗値とすると以下に示す関係式によって、磁性材料と非磁性材料の組み合わせに固有の値γを定義できる。
【0016】
r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)
すなわち、γの値が正(γ>0)のとき、r↓>r↑となり、界面を流れやすいのはメジャーリティの伝導電子の方になる。一方、γの値が負(γ<0)のとき、r↓<r↑となり、界面を流れやすいのはマイノリティの伝導電子の方になる。
【0017】
図10に示される磁気検出素子は、固定磁性層2、第1フリー磁性層5a、第2フリー磁性層5c、固定磁性層7がすべて同じ組成の磁性材料CoFeによって形成されている。CoFeのβは正の値を示す。すなわち、固定磁性層2、第1フリー磁性層5a、第2フリー磁性層5c、及び固定磁性層8中を流れやすいのはメジャーリティの伝導電子である。
【0018】
また、非磁性材料層4及び非磁性材料層6は両方ともCuによって形成されている。このとき、非磁性材料層4と固定磁性層3の界面のγの値、非磁性材料層4と第1フリー磁性層5aの界面のγの値、非磁性材料層6と第2フリー磁性層5cの界面のγの値、非磁性材料層6と固定磁性層7の界面のγの値は、全て正の値を示す。
【0019】
非磁性中間層5bはRuによって形成されている。このとき、第1フリー磁性層5aと非磁性中間層5bの界面のγの値と第2フリー磁性層5cと非磁性中間層5bの界面のγの値は、両方とも負の値を示す。
【0020】
各磁性層とβとγの値の関係を図11にまとめる。図11には、図10に示された磁気検出素子の磁気抵抗効果に関係ある層を模式的に示している。固定磁性層3、第1フリー磁性層5a、第2フリー磁性層5c、及び固定磁性層7に記された矢印はそれぞれの磁性層の磁化方向を示している。ここで、磁化が図示右方向(Y方向)を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはアップスピンであり、磁化が図示左方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはダウンスピンであるとする。なお、第1フリー磁性層5aと第2フリー磁性層5cの磁化は、磁気検出素子の抵抗値が最も低くなるときの方向を向いている。
【0021】
【発明が解決しようとする課題】
磁気検出素子の抵抗変化ΔRを大きくするためには、フリー磁性層5の磁化方向が図11に示される方向を向いているときに、全ての磁性層においてアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、また、全ての磁性層と非磁性材料からなる層(非磁性材料層4、6及び非磁性中間層5b)との界面における、アップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さいことが好ましい(または、全ての磁性層においてダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、また、全ての磁性層と非磁性材料からなる層(非磁性材料層4、6及び非磁性中間層5b)との界面における、ダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さいことが好ましい)。
【0022】
しかし、図11をみると、メジャーリティスピンがアップスピンでありβ>0である固定磁性層3及び第1フリー磁性層5aは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値が小さくなっているが、メジャーリティスピンがダウンスピンであり、β>0である第2フリー磁性層5c及び固定磁性層7はアップスピンの伝導電子に対する抵抗値が大きくなっている。
【0023】
また、非磁性材料層4と固定磁性層3の界面、非磁性材料層4と第1フリー磁性層5aの界面、第2フリー磁性層5cと非磁性中間層5bの界面における、アップスピンの伝導電子に対する界面抵抗は、ダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗よりも小さくなっている。しかし、第1フリー磁性層5aと非磁性中間層5bの界面、非磁性材料層6と第2フリー磁性層5cの界面、非磁性材料層6と固定磁性層7の界面におけるアップスピンの伝導電子に対する界面抵抗は、ダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗よりも大きくなっている。
【0024】
このように、従来の磁気検出素子は、伝導電子の流れ方の制御の効率が低いものであった。
【0025】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、低抵抗状態における伝導電子の流れやすさと高抵抗状態における伝導電子の流れやすさの差を大きくすることによって、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる磁気検出素子を提供することを目的としている。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明は、フリー磁性層の下に下部非磁性材料層、下部固定磁性層、及び下部反強磁性層が積層され、前記フリー磁性層の上に上部非磁性材料層、上部固定磁性層、及び上部反強磁性層が積層されている多層膜を有し、前記多層膜の各層の膜面と垂直方向に電流が流れる磁気検出素子において、
前記フリー磁性層は、第1フリー磁性層の上に第2フリー磁性層が、非磁性中間層を介して積層されたものであり、
前記第1フリー磁性層の膜厚は前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ前記第2フリー磁性層の膜厚は前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きいことを特徴とするものである。
【0027】
導電性材料の中を電流が流れるとき、伝導電子はある距離だけ進むとスピンの向きが変化する。導電性材料の中を伝導電子がスピンを変えずに進む距離をスピン拡散長(Spin Diffusion Length)という。スピン拡散長は導電性材料によって特有の値を示す。
【0028】
本発明のように、前記第1フリー磁性層の膜厚は前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ前記第2フリー磁性層の膜厚は前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっていると、磁気抵抗効果に関与する伝導電子が例えばアップスピンの伝導電子のとき、このアップスピンの伝導電子がスピンの方向の同一性を保持したまま流れることができるのは、前記下部固定磁性層から第1フリー磁性層までの間、第2フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内だけになる。
【0029】
従って、前記下部固定磁性層から第1フリー磁性層までの間、及び第2フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0030】
また、本発明では、前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、かつ前記第2フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号が同じものであることが好ましい。
【0031】
ただし、βは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する比抵抗値である)。
【0032】
本発明のように、前記第1フリー磁性層、前記第2フリー磁性層、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層(以下これらをまとめて呼ぶときは単に磁性層と呼ぶ)それぞれを形成する磁性材料のβを規定すると、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層の磁化が、互いに反平行になる方向に固定されているデュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、全ての磁性層においてアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるか、または全ての磁性層においてダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0033】
または、前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記上部固定磁性層のβと異なっているか、または、前記第2フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記下部固定磁性層のβと異なっている組み合わせでもよい。
【0034】
本発明のように、各磁性層を形成する磁性材料のβを規定すると、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層の磁化が、互いに平行になる方向に固定されているデュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、全ての磁性層においてアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるか、または全ての磁性層においてダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0035】
さらに、本発明では、前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は前記上部非磁性材料層と前記上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第2フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しいことが好ましい。
【0036】
ただし、γは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する界面抵抗値である)。
【0037】
本発明のように、γを規定すると、デュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面、又は前記上部非磁性材料層と前記上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第2フリー磁性層の界面における、アップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さくなるか、または、前記界面における,ダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0038】
また、本発明は、フリー磁性層の下に下部非磁性材料層、下部固定磁性層、及び下部反強磁性層が積層され、前記フリー磁性層の上に上部非磁性材料層、上部固定磁性層、及び上部反強磁性層が積層されている多層膜を有し、前記多層膜の各層の膜面と垂直方向に電流が流れる磁気検出素子において、
前記フリー磁性層は、第1フリー磁性層、非磁性中間層、第2フリー磁性層、非磁性中間層、及び第3フリー磁性層順に積層されたものであり、
前記第1フリー磁性層の膜厚は前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きく、かつ前記第3フリー磁性層の膜厚は前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きいことを特徴とするものである。
【0039】
本発明のように、前記第1フリー磁性層の膜厚が前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ前記第3フリー磁性層の膜厚は前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっていると、磁気抵抗効果に関与する伝導電子が例えばアップスピンの伝導電子のとき、このアップスピンの伝導電子がスピンの方向の同一性を保持したまま流れることができるのは、前記下部固定磁性層から第1フリー磁性層までの間、第2フリー磁性層内、第3フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内だけになる。
【0040】
従って、前記下部固定磁性層から第1フリー磁性層までの間、第2フリー磁性層内、第3フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0041】
本発明では、前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、かつ前記第3フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであることが好ましい。
【0042】
本発明のように、前記第1フリー磁性層、前記第3フリー磁性層、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層(以下これらをまとめて呼ぶときは単に磁性層と呼ぶ)それぞれを形成する磁性材料のβを規定すると、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層の磁化が、互いに平行になる方向に固定されている3層人工フェリフリー型のデュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、全ての磁性層においてアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるか、または全ての磁性層においてダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0043】
または、前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記上部固定磁性層のβと異なっているか、または、前記第3フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記下部固定磁性層のβと異なっている組み合わせでもよい。
【0044】
本発明のように、各磁性層を形成する磁性材料のβを規定すると、前記下部固定磁性層及び前記上部固定磁性層の磁化が、互いに反平行になる方向に固定されている3層人工フェリ型のデュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、全ての磁性層においてアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるか、または全ての磁性層においてダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0045】
また、前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は前記上部非磁性材料層と上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第3フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は2つの非磁性中間層と第2フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しいことが好ましい。
【0046】
ただし、γは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する界面抵抗値である)。
【0047】
本発明のようにγを規定すると、デュアルスピンバルブ型磁気検出素子において、抵抗値が最も低くなるようにフリー磁性層の磁化が変化したときに、前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面、又は前記上部非磁性材料層と上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第3フリー磁性層の界面における、アップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さくなるか、または、前記界面における,ダウンスピンの伝導電子に対する界面抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する界面抵抗値よりも小さくなり、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0048】
なお、上記のようにγを規定するためには、前記非磁性材料層の上面と磁性層の界面におけるγの正負の符号と、前記非磁性材料層の下面と磁性層の界面におけるγの正負の符号を異ならせることが必要になる場合があるが、本発明では、前記非磁性材料層を、種類の異なる非磁性材料からなる2層構造とすることによってそのような問題を解決できる。
【0049】
なお、本発明では、前記下部固定磁性層及び上部固定磁性層は、2層の磁性層が非磁性中間層を介して積層されたものであることが好ましい。
【0050】
【発明の実施の形態】
図1は本発明における第1実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0051】
図1に示す磁気検出素子は、いわゆるデュアル型のスピンバルブ型薄膜素子である。
【0052】
第1の電極層20の中央上面には、下から下地層21、シード層22、下部反強磁性層23、磁性層50と52とその間に形成されたRuなどの非磁性中間層51からなる3層フェリ構造の下部固定磁性層24、下部非磁性材料層25及びフリー磁性層26が形成されている。フリー磁性層26は、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55とその間に形成された非磁性中間層54からなる3層フェリ構造である。さらにフリー磁性層26の上面に上部非磁性材料層27、磁性層60と62とその間に形成されたRuなどの非磁性中間層61からなる3層フェリ構造の上部固定磁性層28、上部反強磁性層29、及び第2の電極層30が順次積層されている。
【0053】
第1の電極層20は、例えばα−Ta、Au、Cr、Cu(銅)やW(タングステン)などで形成されている。下地層21は、Ta,Hf,Nb,Zr,Ti,Mo,Wのうち少なくとも1種以上で形成されることが好ましい。下地層21は50Å以下程度の膜厚で形成される。ただし、この下地層21は形成されていなくても良い。
【0054】
シード層22は、主として面心立方晶から成り、次に説明する下部反強磁性層23との界面と平行な方向に(111)面が優先配向されている。シード層22は、Cr、NiFe合金、あるいはNi−Fe−Y合金(ただしYは、Cr,Rh,Ta,Hf,Nb,Zr,Tiから選ばれる少なくとも1種以上)で形成されることが好ましい。これらの材質で形成されたシード層22はTa等で形成された下地層21上に形成されることにより下部反強磁性層23との界面と平行な方向に(111)面が優先配向しやすくなる。シード層22は、例えば30Å程度で形成される。
【0055】
なお本発明における磁気検出素子は各層の膜面と垂直方向にセンス電流が流れるCPP型であるため、シード層22にも適切にセンス電流が流れる必要性がある。よってシード層22は比抵抗の高い材質でないことが好ましい。すなわちCPP型ではシード層22はNiFe合金などの比抵抗の低い材質で形成されることが好ましい。ただし、シード層22は形成されなくても良い。
【0056】
下部反強磁性層23及び上部反強磁性層29は、元素X(ただしXは、Pt,Pd,Ir,Rh,Ru,Osのうち1種または2種以上の元素である)とMnとを含有する反強磁性材料で形成されることが好ましい。あるいは下部反強磁性層23及び上部反強磁性層29は、元素Xと元素X′(ただし元素X′は、Ne,Ar,Kr,Xe,Be,B,C,N,Mg,Al,Si,P,Ti,V,Cr,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Ga,Ge,Zr,Nb,Mo,Ag,Cd,Sn,Hf,Ta,W,Re,Au,Pb、及び希土類元素のうち1種または2種以上の元素である)とMnを含有する反強磁性材料により形成されることが好ましい。
【0057】
これらの反強磁性材料は、耐食性に優れしかもブロッキング温度も高く次に説明する下部固定磁性層24または上部固定磁性層28との界面で大きな交換異方性磁界を発生し得る。また下部反強磁性層23及び上部反強磁性層29は80Å以上で300Å以下,例えば200Åの膜厚で形成されることが好ましい。
【0058】
この実施形態では下部固定磁性層24及び上部固定磁性層28は3層のフェリ構造で形成されている。
【0059】
下部固定磁性層24を構成する符号50及び52の層は磁性層である。磁性層50、52間には非磁性材料によって形成された非磁性中間層51が介在している。同様に、上部固定磁性層28の磁性層60及び62の間には、非磁性材料によって形成された非磁性中間層51が介在している。下部固定磁性層24、上部固定磁性層28の材料については後述する。
【0060】
下部反強磁性層23と磁性層50の間及び上部反強磁性層29と磁性層62の間には、交換異方性磁界が発生している。
【0061】
例えば磁性層50の磁化がハイト方向(図示Y方向)に固定された場合、もう一方の磁性層52はRKKY相互作用により、ハイト方向と逆方向に磁化され固定される。また、磁性層62の磁化がハイト方向と逆方向に固定された場合、もう一方の磁性層60はRKKY相互作用により、ハイト方向に磁化され固定される。
【0062】
この構成により下部固定磁性層24及び上部固定磁性層28の磁化を安定した状態にでき、また下部固定磁性層24及び上部固定磁性層28の磁化方向を強固に固定できる。
【0063】
なお、磁性層50、52及び磁性層60、62の膜厚はそれぞれ10〜70Å程度で形成される。また非磁性中間層51及び非磁性中間層61の膜厚は3Å〜10Å程度で形成される。
【0064】
なお下部固定磁性層24、上部固定磁性層28はフェリ構造ではなく単層膜あるいは磁性層のみからなる積層膜で形成されていても良い。
【0065】
下部非磁性材料層25及び上部非磁性材料層27は電気抵抗の低い導電性材料によって形成される。下部非磁性材料層25及び上部非磁性材料層27は例えば25Å程度の膜厚で形成される。下部非磁性材料層25及び上部非磁性材料層27の材料については後述する。
【0066】
フリー磁性層26は、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55とその間に形成された非磁性中間層54からなる3層フェリ構造である。
【0067】
第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55は磁性材料からなり、非磁性中間層54は非磁性材料からなる。トラック幅方向(図示X方向)に磁化されているハードバイアス層33,33からの縦バイアス磁界によって、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55のうち、磁気的膜厚(単位面積当たりの磁気モーメント;飽和磁束密度Ms×膜厚t)の大きい方の磁化が図示X方向に揃えられ、他方の磁化は図示X方向と反平行方向を向く。
【0068】
例えば、図1では、第2フリー磁性層55の磁気的膜厚の方が、第1フリー磁性層53の磁気的膜厚より大きくなっているので、 第2フリー磁性層55の磁化が図示X方向にそろえられる。そして、RKKY相互作用によって、第1フリー磁性層53の磁化方向が図示X方向と反平行方向に向けられる。
【0069】
フリー磁性層26の合計の磁気的膜厚は、第1フリー磁性層53の磁気的膜厚と第2フリー磁性層55の磁気的膜厚の差になる。従って、本実施の形態のような人工フェリ型のフリー磁性層26であれば、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55を安定して成膜できる膜厚で形成しても、フリー磁性層26の実質的な磁気的膜厚を減少させることができ、磁気検出素子の磁界検出感度を向上させることができる。
【0070】
第1フリー磁性層53、第2フリー磁性層55、非磁性中間層54の材料及び膜厚については後述する。
【0071】
多層膜T1のトラック幅方向の両側領域の第1の電極層20上には、絶縁層31,31が形成されている。絶縁層31,31は例えばAl、SiOなど一般的な絶縁材料で形成される。
【0072】
絶縁層31,31の上面31a,31aは、フリー磁性層26の下面26aよりも図示下側(図示Z方向とは逆方向)に形成されていることが好ましい。
【0073】
絶縁層31,31の上には、バイアス下地層32,32が形成されている。またバイアス下地層32,32の上にはハードバイアス層33,33が形成されている。ハードバイアス層33,33は、フリー磁性層26の両側端面26b,26bに対向する位置に形成される。ハードバイアス層33,33は、トラック幅方向(図示X方向)に磁化されている。
【0074】
バイアス下地層32,32はハードバイアス層33,33の特性(保磁力Hc、角形比S)を向上させるために設けられたものである。
【0075】
本発明では、バイアス下地層32,32は、結晶構造が体心立方構造(bcc構造)の金属膜で形成されることが好ましい。なおこのときバイアス下地層32,32の結晶配向は(100)面が優先配向するのが好ましい。
【0076】
またハードバイアス層33,33は、CoPt合金やCoPtCr合金などで形成される。これら合金の結晶構造は、稠密六方構造(hcp)単相あるいは面心立方構造(fcc)と稠密六方構造(hcp)の混相となっている。
【0077】
ここで上記の金属膜で形成されたバイアス下地層32,32とハードバイアス層33,33を構成するCoPt系合金のhcp構造の界面での原子配列が近くなるために、CoPt系合金はfcc構造を形成しづらくhcp構造で形成されやすくなる。このときhcp構造のc軸はCoPt系合金とバイアス下地層の境界面内に優先配向される。hcp構造はfcc構造に比べてc軸方向に大きな磁気異方性を生じるため、ハードバイアス層33,33に磁界を与えたときの保磁力Hcは大きくなる。さらにhcpのc軸はCoPt系合金とバイアス下地層との境界面内で優先配向となっているため、残留磁化が増大し、残留磁化/飽和磁束密度で求められる角形比Sは大きくなる。その結果、ハードバイアス層33,33の特性を向上させることができ、ハードバイアス層33,33から発生するバイアス磁界を増大させることができる。結晶構造が体心立方構造(bcc構造)の金属膜は、Cr,W,Mo,V,Mn,Nb,Taのいずれか1種または2種以上の元素で形成されることが好ましい。
【0078】
また、バイアス下地層32はハードバイアス層33,33の下側にのみ形成されていることが好ましいが、フリー磁性層26の両側端面26b,26bとハードバイアス層33,33間にも若干介在してもよい。フリー磁性層26の両側端面26b,26bとハードバイアス層33,33間に形成されるバイアス下地層32,32のトラック幅方向(図示X方向)における膜厚は1nm以下であることが好ましい。
【0079】
これによりハードバイアス層33,33とフリー磁性層26とを磁気的に連続体にでき、フリー磁性層26の端部が反磁界の影響を受けるバックリング現象などの問題も発生せず、フリー磁性層26の磁区制御を容易にできる。
【0080】
図1の磁気検出素子は、ハードバイアス層33,33によって、フリー磁性層26の第1フリー磁性層53及び第2フリー磁性層55が単磁区化されるものであるが、本実施の形態のように第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55の磁化方向が互いに反平行方向を向くものであるときは、ハードバイアス層33,33の内側端面33a,33aが、第1フリー磁性層53及び第2フリー磁性層55のいずれか一方の端部とのみ対向していることが好ましい。図1では、ハードバイアス層33,33の内側端面33a,33aが第2フリー磁性層55の端部55a,55aにのみ対向している。これによって、ハードバイアス層33,33から供給されるトラック幅方向(図示X方向)の縦バイアス磁界は第2フリー磁性層55にのみ直接作用し、トラック幅方向と反平行方向の磁化を有する第1フリー磁性層53の磁化に乱れが生じることを抑制または防止できる。
【0081】
また図1に示すように、ハードバイアス層33,33の上には絶縁層34,34が形成されている。絶縁層34,34は、AlやSiOなどの一般的な絶縁材料で形成される。なおこの実施形態では、絶縁層34,34の上面と上部反強磁性層29の上面とが連続面となっている。
【0082】
絶縁層34,34及び上部反強磁性層29の上には、第2の電極層30が形成されている。
【0083】
この実施形態では、第2の電極層30から第1の電極層20に向けてセンス電流が流れるが、第1の電極層20から第2の電極層30に向けてセンス電流が流れても良い。従ってセンス電流は、磁気検出素子の各層を膜面と垂直方向に流れ、このようなセンス電流の流れ方向はCPP型と呼ばれる。
【0084】
上部固定磁性層28、上部非磁性材料層27、フリー磁性層26、下部非磁性材料層25及び下部固定磁性層24に検出電流(センス電流)が与えられ、走行方向がZ方向であるハードディスクなどの記録媒体からの洩れ磁界がY方向に与えられると、フリー磁性層26の磁化が図示X方向からY方向へ向けて変化する。第1フリー磁性層53の磁化方向と下部固定磁性層24の磁性層52の磁化方向の関係、及び第2フリー磁性層55と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向の関係で電気抵抗が変化し(これを磁気抵抗効果という)、この電気抵抗値の変化に基づく電圧変化または電流変化により、記録媒体からの洩れ磁界が検出される。
【0085】
図1に示される磁気検出素子は、下地層21、シード層22、下部反強磁性層23、下部固定磁性層24、下部非磁性材料層25、フリー磁性層26、上部非磁性材料層27、上部固定磁性層28、上部反強磁性層29からなる多層膜T1のトラック幅方向(図示X方向)の両側端面S1,S1が連続した傾斜面となっている。
【0086】
図1に示された磁気検出素子の特徴部分について説明する。
本実施の形態の磁気検出素子では、第1フリー磁性層53の膜厚t1は第1フリー磁性層53を形成している磁性材料のスピン拡散長(SpinDiffusion Length)より大きく、かつ第2フリー磁性層55の膜厚t2は第2フリー磁性層55を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっている。
【0087】
磁性材料を含む導電性材料の中を電流が流れるとき、伝導電子はある距離だけ進むとスピンの向きが変化する。導電性材料の中を伝導電子がスピンを変えずに進む距離をスピン拡散長(Spin Diffusion Length)という。スピン拡散長は導電性材料によって特有の値を示す。
【0088】
例えば、Co90Fe10のスピン拡散長は150Å、Ni80Fe20のスピン拡散長は120Å、Ni97Crのスピン拡散長は50Å、Fe95Crのスピン拡散長は90Å、Fe80Cr20のスピン拡散長は40Å、Cuのスピン拡散長は1000Å、Crのスピン拡散長は100Åである。
【0089】
第1フリー磁性層53の膜厚t1が第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ第2フリー磁性層55の膜厚t2が第2フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっていると、磁気抵抗効果に関与する伝導電子が例えばアップスピンの伝導電子のとき、このアップスピンの伝導電子がスピンの方向の同一性を保持したまま流れることができるのは、下部固定磁性層24から第1フリー磁性層53までの間、第2フリー磁性層55から上部固定磁性層28までの間のそれぞれの区間内だけになる。
【0090】
従って、下部固定磁性層24から第1フリー磁性層53までの間、第2フリー磁性層55から上部固定磁性層28までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0091】
具体的には、第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性材料のβの正負と、第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性材料のβの正負をそれぞれ独立に考えることが出来る。
【0092】
ここで、βとは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャーリティの伝導電子に対する比抵抗値である)。
【0093】
第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負と、第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の関係を図2にまとめる。
【0094】
図2には、図1に示された磁気検出素子の磁気抵抗効果に関係ある層を模式的に示している。下部固定磁性層24の磁性層52、第1フリー磁性層53、第2フリー磁性層55、及び上部固定磁性層28の磁性層60に記された矢印はそれぞれの磁性層の磁化方向を示している。ここで、磁化が図示右方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはアップスピンであり、磁化が図示左方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはダウンスピンであるとする。なお、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55の磁化は、磁気検出素子の抵抗値が最も低くなるときの方向を向いている。
【0095】
なお、図2には、下部固定磁性層24の磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層53の界面におけるγの正負の符号と、第2フリー磁性層55と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と上部固定磁性層28の磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなっていることも示されている。
【0096】
ここで、γとは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャーリティの伝導電子に対する界面抵抗値である)。すなわち、γの値が正(γ>0)のとき、r↓>r↑となり、界面を流れやすいのはメジャーリティの伝導電子の方になる。一方、γの値が負(γ<0)のとき、r↓<r↑となり、界面を流れやすいのはマイノリティの伝導電子の方になる。
【0097】
図2に示されるように、本実施の形態では、第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号を同じにし、かつ第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号を同じにしている。
【0098】
例えば、ケース1の材料の組み合わせのときは、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24を形成している磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28を形成している磁性層60から第2フリー磁性層55までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0099】
第1フリー磁性層53の膜厚及び第2フリー磁性層55の膜厚は、それぞれのスピン拡散長よりも大きいので、多層膜T1内を流れる伝導電子は、第1フリー磁性層53の膜厚及び第2フリー磁性層55の内部でスピン方向が逆転する。このため、図2のケース1のように、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなる組み合わせは、磁気抵抗が最も低い状態の一つである。
【0100】
すなわち、図2のケース1に示されたβとγの組み合わせは、低抵抗状態における伝導電子の流れやすさと高抵抗状態における伝導電子の流れやすさの差を大きくすることができ、単位面積当たりの磁気抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができるものである。しかも、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までのβとγの選択は、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までのβとγの選択に左右されず独立に行うことができ、多層膜T1を構成する各層の材料の選択の自由度が増す。
【0101】
第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号が同じで、かつ第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号が同じになる組み合わせ、及び磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層53の界面、第2フリー磁性層55と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなる他の組み合わせを、図2のケース2、3、4に示す。
【0102】
ケース2の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0103】
ケース3の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までの間も、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0104】
ケース4の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までの間も、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0105】
以下に、β>0である磁性材料を示す。
β>0:NiX合金(ただし、XはCo、Fe、Mn、Zr、Hf、Cu、Auから選ばれる1種の元素である)、CoT合金(ただし、Tは、Fe、Zr、Ta、Hfから選ばれる1種の元素である)、FeZ合金(ただし、ZはNi、Co、Rh、Pt、Ir、Be、Al、Si、Ga、Geから選ばれる1種の元素である)、またはCo−Mn−D合金(ただし、DはAl、Ga、Si、Ge、Snから選ばれる1種の元素である)。NiX合金の具体的組成として例えばNi80Fe20をあげることができる。
【0106】
次に、β<0である磁性材料を示す。
β<0:NiM合金(ただし、MはCr、Rh、Ru、Mo、Nb、Pt、Ir、Os、Re、W、Taから選ばれる1種の元素である)、CoQ合金(ただし、QはMn、Cr、Ru、Mo、Ir、Os、Re、Wから選ばれる1種の元素である)、またはFeA合金(ただし、AはMn、Cr、V、Ti、Ru、Mo、Os、Re、Wから選ばれる1種の元素である)。FeA合金の具体的組成として例えばFe90Cr10をあげることができる。
【0107】
なお、図2のケース1におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25と上部非磁性材料層27の材料を両方ともCuにすればよく、ケース2におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25と上部非磁性材料層27の材料を両方ともCrにすればよい。また、ケース3におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25をCrで、上部非磁性材料層27をCuで形成すればよく、ケース4におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25をCuで、上部非磁性材料層27をCrで形成すればよい。
【0108】
また、本実施の形態では、第1フリー磁性層53と非磁性中間層54との界面、非磁性中間層54と第2フリー磁性層55の界面のγの正負の符号は任意でよい。図2では、γの正負の符号が任意であることを(×)で表している。従って、非磁性中間層54の材料を選択するときにγの値を考慮しなくともよく、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55間のRKKY相互作用を最適にする材料を適宜選択できる。具体的には、非磁性中間層54の材料をRu、Rh、Ir、Os、Cr、Re、Cuのうち1種あるいは2種以上の合金から任意に選択できる。
【0109】
なお、図2では、下部固定磁性層24の磁性層52の磁化方向と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向は反平行方向を向いている。
【0110】
図3は本発明における第2実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0111】
図3の磁気検出素子が図1の磁気検出素子と異なる点は、上部非磁性材料層27が2層構造になっている点である。また、下部固定磁性層24の磁性層50の磁化と上部固定磁性層28の磁性層62の磁化が平行方向に固定されており、その結果、下部固定磁性層24の磁性層52と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化が平行方向を向いている。
【0112】
図3に示す磁気検出素子も、フリー磁性層26の第1フリー磁性層53の膜厚t1と第2フリー磁性層の膜厚t2が、それぞれを形成する磁性材料のスピン拡散長より大きくなっている。
【0113】
従って、下部固定磁性層24から第1フリー磁性層53までの間、第2フリー磁性層55から上部固定磁性層28までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0114】
具体的には、第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性材料のβの正負と、第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性材料のβの正負をそれぞれ独立に考えることが出来る。
【0115】
第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24を形成している磁性材料52のβの正負と、第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の関係を図4にまとめる。
【0116】
図4には、図1に示された磁気検出素子の磁気抵抗効果に関係ある層を模式的に示している。下部固定磁性層24の磁性層52、第1フリー磁性層53、第2フリー磁性層55、及び上部固定磁性層28の磁性層60に記された矢印はそれぞれの磁性層の磁化方向を示している。ここで、磁化が図示右方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはアップスピンであり、磁化が図示左方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはダウンスピンであるとする。なお、第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55の磁化は、磁気検出素子の抵抗値が最も低くなるときの方向を向いている。
【0117】
なお、図4には、下部固定磁性層24の磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層53の界面におけるγの正負の符号と、第2フリー磁性層55と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と上部固定磁性層28の磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなっていることも示されている。
【0118】
図4では、第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24の磁性層52を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものである。また、第2フリー磁性層55を形成している磁性材料のβの正負の符号は上部固定磁性層28の磁性層60のβと異なっている。
【0119】
例えば、ケース1の材料の組み合わせのときは、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24を形成している磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28を形成している磁性層60から第2フリー磁性層55までの間も、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0120】
第1フリー磁性層53の膜厚及び第2フリー磁性層55の膜厚は、それぞれのスピン拡散長よりも大きいので、多層膜T1内を流れる伝導電子は、第1フリー磁性層53の膜厚及び第2フリー磁性層55の内部でスピン方向が逆転する。このため、図4のケース1のように、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までの区間はアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までの区間もアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなる組み合わせは、磁気抵抗が最も低い状態の一つである。
【0121】
すなわち、図4のケース1に示されたβとγの組み合わせは、低抵抗状態における伝導電子の流れやすさと高抵抗状態における伝導電子の流れやすさの差を大きくすることができ、単位面積当たりの磁気抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができるものである。しかも、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までのβとγの選択は、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までのβとγの選択に左右されず独立に行うことができ、多層膜T2を構成する各層の材料の選択の自由度が増す。
【0122】
第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24の磁性層52を形成している磁性材料のβの正負の符号が同じものであって、第2フリー磁性層55を形成している磁性材料のβの正負の符号が上部固定磁性層28の磁性層60のβと異なっており、磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層53の界面、第2フリー磁性層55と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなる他の組み合わせを、図4のケース2、3、4に示す。
【0123】
ケース2の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までの間も、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0124】
ケース3の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0125】
ケース4の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層53から下部固定磁性層24の磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第2フリー磁性層55までの間も、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層54、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0126】
β>0である磁性材料の具体例として上記したNiX合金、CoT合金、FeZ合金、またはCo−Mn−D合金を挙げることが出来る。また、β<0である磁性材料としては、上記したNiM合金、CoQ合金、またはFeA合金を挙げることが出来る。
【0127】
なお、図4のケース1におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25の材料をCuにし、上部非磁性材料層27をCrからなる第1層72とCuからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース2の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCrにし、上部非磁性材料層27をCuからなる第1層72とCrからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース3の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCrにし、上部非磁性材料層27をCrからなる第1層72とCuからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース4の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCuにし、上部非磁性材料層27をCuからなる第1層72とCrからなる第2層73の積層構造にすればよい。
【0128】
以上、図4では、第1フリー磁性層53及び下部固定磁性層24の磁性層52を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであって、第2フリー磁性層55を形成している磁性材料のβの正負の符号が上部固定磁性層28の磁性層60のβと異なっている組み合わせを示した。
【0129】
ただし、本発明では、第2フリー磁性層55及び上部固定磁性層28の磁性層60のβは正負の符号が同じものであり、第1フリー磁性層53を形成している磁性層のβの正負の符号は下部固定磁性層24の磁性層52と異なっている組み合わせも含まれる。このときも、当然、磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層53の界面、第2フリー磁性層55と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなることが好ましい。
【0130】
なお、図4では、下部固定磁性層24の磁性層52の磁化方向と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向は平行方向を向いている。
【0131】
図5は本発明における第3実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0132】
図5に示された磁気検出素子は図1に示された磁気検出素子に類似しており、フリー磁性層26に縦バイアスを与える方式が、図1に示された磁気検出素子と異なっている。
【0133】
なお、図1と同じ符号で示される層は、特に説明がない限り図1と同じ材料及び膜厚で形成された同一の層である。
【0134】
図5に示される磁気検出素子では、フリー磁性層26の両側領域にハードバイアス層が形成されず、かわりに上部反強磁性層29上に、中間層81を介してインスタックバイアス層82が形成されている。下地層21からインスタックバイアス層82まで重ねられた各層によって多層膜T3が形成されている。
【0135】
このインスタックバイアス層82はCoPtなどの硬磁性材料によって形成され、図示X方向と反平行方向に着磁されている。なお、インスタックバイアス層82と中間層81の間に、Crからなる下地層が形成されてもよい。中間層81の材料はTa、W、Mo、Cr、Cuなどの非磁性導伝性材料である。
【0136】
この実施形態では、インスタックバイアス層82の両側端部からフリー磁性層26に向けて縦バイアス磁界(静磁界)が供給され(矢印Mで示す)、フリー磁性層26の第2フリー磁性層55の磁化が図示X方向に向けられている。
【0137】
また、第2フリー磁性層55の単位面積当たりの磁気モーメントが、第1フリー磁性層53の単位面積当たりの磁気モーメントより大きくなり、第2フリー磁性層55の磁化がインスタックバイアス層82から与えられる縦バイアス磁界と同じ方向を向いている状態を安定化させている。
【0138】
図5に示されるインスタックバイアス層80が設けられた磁気検出素子は、フリー磁性層26が強固に磁化されることがなくフリー磁性層26の磁区制御を適正化でき、フリー磁性層26の外部磁界に対する磁化変動を良好にすることが可能である。また多層膜T3の両側端面S3,S3の両側領域にはアルミナまたはSiOからななる絶縁層83,83のみが形成されている。したがってセンス電流の分流ロスを低減させることが可能である。
【0139】
なお、図5に示される磁気検出素子は、上部反強磁性層29上にのみインスタックバイアス層82を形成しているが、下部反強磁性層23の下にインスタックバイアス層を設けてもよいし、上部反強磁性層29上と下部反強磁性層23の下の両方にインスタックバイアス層を設けてもよい。
【0140】
ただし、フリー磁性層26の第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55の磁化方向を反平行にさせるために、上部反強磁性層29の上または下部反強磁性層23の下のどちらか一方にのみインスタックバイアス層を設けることが好ましい。その上で、フリー磁性層26の第1フリー磁性層53と第2フリー磁性層55のうち、インスタックバイアス層に近い方の膜厚を厚くすることがより好ましい。
【0141】
図6は本発明における第3実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0142】
図6に示された磁気検出素子は図5に示された磁気検出素子に類似しており、フリー磁性層84が3層の人工フェリ構造である点で図7に示された磁気検出素子と異なっている。また、下部固定磁性層24の磁性層50の磁化と上部固定磁性層28の磁性層62の磁化が平行方向に固定されており、その結果、下部固定磁性層24の磁性層52と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化が平行方向を向いている。
【0143】
フリー磁性層84は、第1フリー磁性層85、非磁性中間層86、第2フリー磁性層87、非磁性中間層88、第3フリー磁性層89からなっている。第1フリー磁性層85と第2フリー磁性層87の磁化方向は、非磁性中間層86を介したRKKY相互作用によって互いに反平行方向になっている。同様に、第2フリー磁性層87と第3フリー磁性層89の磁化方向も、非磁性中間層88を介したRKKY相互作用によって互いに反平行方向になっている。
【0144】
フリー磁性層84を3層の人工フェリ構造にすると、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89の磁化方向を互いに反平行方向に固定するスピンフロップ磁界が、図1ないし図5に示された2層の人工フェリ構造のフリー磁性層26に比べて2倍以上になる。従って、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89の磁化方向の反平行状態が縦バイアス磁界によって崩されることを防止でき、フリー磁性層全体の単磁区構造が安定化し、バルクハウゼンノイズを著しく低減できる。
【0145】
本実施の形態の磁気検出素子では、第1フリー磁性層85の膜厚t10は第1フリー磁性層85を形成している磁性材料のスピン拡散長(SpinDiffusion Length)より大きく、かつ第3フリー磁性層89の膜厚t11は第2フリー磁性層87を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっている。
【0146】
第1フリー磁性層85の膜厚t10が第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ第3フリー磁性層89の膜厚t11が第3フリー磁性層89を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくなっていると、磁気抵抗効果に関与する伝導電子が例えばアップスピンの伝導電子のとき、このアップスピンの伝導電子がスピンの方向の同一性を保持したまま流れることができるのは、下部固定磁性層24の磁性層52から第1フリー磁性層85までの間と第3フリー磁性層89から上部固定磁性層28の磁性層60までの間のそれぞれの区間内だけになる。
【0147】
従って、第1フリー磁性層85と第3フリー磁性層89の磁性材料のβの正負をそれぞれ独立に考えることができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0148】
ここで、βとは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャーリティの伝導電子に対する比抵抗値である)。
【0149】
第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負と、第2フリー磁性層87のβの正負、第3フリー磁性層89及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の関係を図7にまとめる。
【0150】
図7には、図6に示された磁気検出素子の磁気抵抗効果に関係ある層を模式的に示している。下部固定磁性層24の磁性層52、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89、及び上部固定磁性層28の磁性層60に記された矢印はそれぞれの磁性層の磁化方向を示している。ここで、磁化が図示右方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはアップスピンであり、磁化が図示左方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはダウンスピンであるとする。なお、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89の磁化は、磁気検出素子の抵抗値が最も低くなるときの方向を向いている。
【0151】
なお、図7には、下部固定磁性層24の磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層85の界面におけるγの正負の符号と、第3フリー磁性層89と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と上部固定磁性層28の磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなっていることも示されている。
【0152】
ここで、γとは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャーリティの伝導電子に対する界面抵抗値である)。すなわち、γの値が正(γ>0)のとき、r↓>r↑となり、界面を流れやすいのはメジャーリティの伝導電子の方になる。一方、γの値が負(γ<0)のとき、r↓<r↑となり、界面を流れやすいのはマイノリティの伝導電子の方になる。
【0153】
図7に示されるように、本実施の形態では、第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号を同じにし、かつ第3フリー磁性層89及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号を同じにしている。
【0154】
例えば、ケース1の材料の組み合わせのときは、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24を形成している磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までの間も、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0155】
第1フリー磁性層85の膜厚及び第3フリー磁性層89の膜厚は、それぞれのスピン拡散長よりも大きいので、多層膜T3内を流れる伝導電子は、第1フリー磁性層85の内部及び第3フリー磁性層89の内部でスピン方向が逆転する。このため、図7のケース1のように、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24の磁性層52までアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までの間も、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなる組み合わせは、磁気抵抗が最も低い状態の一つである。
【0156】
すなわち、図7のケース1に示されたβとγの組み合わせは、低抵抗状態における伝導電子の流れやすさと高抵抗状態における伝導電子の流れやすさの差を大きくすることができ、単位面積当たりの磁気抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができるものである。しかも、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24の磁性層52までのβとγの選択は、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までのβとγの選択に左右されず独立に行うことができ、多層膜T4を構成する各層の材料の選択の自由度が増す。
【0157】
第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号を同じにし、かつ第3フリー磁性層89及び上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号を同じにし、下部固定磁性層24の磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層85の界面、第3フリー磁性層89と上部非磁性材料層27の界面、上部非磁性材料層27と上部固定磁性層28の磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなる他の組み合わせを、図7のケース2、3、4に示す。
【0158】
ケース2の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までの間も、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0159】
ケース3の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0160】
ケース4の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0161】
以下に、β>0である磁性材料を示す。
β>0:NiX合金(ただし、XはCo、Fe、Mn、Zr、Hf、Cu、Auから選ばれる1種の元素である)、CoT合金(ただし、Tは、Fe、Zr、Ta、Hfから選ばれる1種の元素である)、FeZ合金(ただし、ZはNi、Co、Rh、Pt、Ir、Be、Al、Si、Ga、Geから選ばれる1種の元素である)、または、Co−Mn−D合金(ただし、DはAl、Ga、Si、Ge、Snから選ばれる1種の元素である)。NiX合金の具体的組成として例えばNi80Fe20をあげることができる。
【0162】
次に、β<0である磁性材料を示す。
β<0:NiM合金(ただし、MはCr、Rh、Ru、Mo、Nb、Pt、Ir、Os、Re、W、Taから選ばれる1種の元素である)、CoQ合金(ただし、QはMn、Cr、Ru、Mo、Ir、Os、Re、Wから選ばれる1種の元素である)、またはFeA合金(ただし、AはMn、Cr、V、Ti、Ru、Mo、Os、Re、Wから選ばれる1種の元素である)。FeA合金の具体的組成として例えばFe90Cr10をあげることができる。
【0163】
なお、図7のケース1におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25と上部非磁性材料層27の材料を両方ともCuにすればよく、ケース2におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25と上部非磁性材料層27の材料を両方ともCrにすればよい。また、ケース3におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25をCrで、上部非磁性材料層27をCuで形成すればよく、ケース4におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、下部非磁性材料層25をCuで、上部非磁性材料層27をCrで形成すればよい。
【0164】
また、本実施の形態では、第1フリー磁性層85と非磁性中間層86との界面、非磁性中間層88と第3フリー磁性層89の界面のγの正負の符号は任意でよい。さらに、非磁性中間層86と第2フリー磁性層87の界面、及び第2フリー磁性層87と非磁性中間層88の界面のγの正負の符号及び、第2フリー磁性層87を形成している磁性材料のβの正負の符号も任意でよい。図2では、β及びγの正負の符号が任意であることを(×)で表している。
【0165】
なお、図7では、下部固定磁性層24の磁性層52の磁化方向と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向は平行方向を向いている。
【0166】
図8は本発明における第4実施形態の磁気検出素子の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0167】
図8の磁気検出素子が図6の磁気検出素子と異なる点は、上部非磁性材料層27が2層構造になっている点である。また、下部固定磁性層24の磁性層50の磁化と上部固定磁性層28の磁性層62の磁化が反平行方向に固定されており、その結果、下部固定磁性層24の磁性層52と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化が反平行方向を向いている。
【0168】
図8に示す磁気検出素子も、フリー磁性層26の第1フリー磁性層85の膜厚t10と第3フリー磁性層89の膜厚t11が、それぞれを形成する磁性材料のスピン拡散長より大きくなっている。
【0169】
従って、下部固定磁性層24の磁性層52から第1フリー磁性層85までの間、第3フリー磁性層89から上部固定磁性層28の磁性層60までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0170】
具体的には、第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24の磁性層52のβの正負と、第3フリー磁性層89及び上部固定磁性層28の磁性層のβの正負をそれぞれ独立に考えることが出来る。
【0171】
第1フリー磁性層85、下部固定磁性層24の磁性層52のβの正負と、第2フリー磁性層87のβの正負と、第3フリー磁性層89及び上部固定磁性層28の磁性層60のβの正負の関係を図9にまとめる。
【0172】
図9には、図8に示された磁気検出素子の磁気抵抗効果に関係ある層を模式的に示している。下部固定磁性層24の磁性層52、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89、及び上部固定磁性層28の磁性層60に記された矢印はそれぞれの磁性層の磁化方向を示している。ここで、磁化が図示右方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはアップスピンであり、磁化が図示左方向を向いている磁性層の磁性に関わる電子のメジャーリティスピンはダウンスピンであるとする。なお、第1フリー磁性層85、第2フリー磁性層87、第3フリー磁性層89の磁化は、磁気検出素子の抵抗値が最も低くなるときの方向を向いている。
【0173】
なお、図9には、下部固定磁性層24の磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層85の界面におけるγの正負の符号と、第3フリー磁性層89と上部非磁性材料層27、非磁性材料層27と上部固定磁性層28の磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなっていることも示されている。
【0174】
図9に示されるように、本実施の形態では、第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号を同じにし、かつ第3フリー磁性層89と上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号を異ならせている。
【0175】
例えば、ケース1の材料の組み合わせのときは、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24を形成している磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0176】
第1フリー磁性層85の膜厚及び第3フリー磁性層89の膜厚はそれぞれのスピン拡散長よりも大きいので、多層膜T4内を流れる伝導電子は、第1フリー磁性層85の内部及び第3フリー磁性層89の内部でスピン方向が逆転する。このため、図9のケース1のように、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24の磁性層52までアップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなる組み合わせは、磁気抵抗が最も低い状態の一つである。
【0177】
すなわち、図9のケース1に示されたβとγの組み合わせは、低抵抗状態における伝導電子の流れやすさと高抵抗状態における伝導電子の流れやすさの差を大きくすることができ、単位面積当たりの磁気抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができるものである。しかも、第1フリー磁性層85から下部固定磁性層24の磁性層52までのβとγの選択は、上部固定磁性層28の磁性層60から第3フリー磁性層89までのβとγの選択に左右されず独立に行うことができ、多層膜T5を構成する各層の材料の選択の自由度が増す。
【0178】
第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24を形成している磁性層52のβの正負の符号を同じにし、第3フリー磁性層89と上部固定磁性層28を形成している磁性層60のβの正負の符号を異ならせ、磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層85の界面、第3フリー磁性層89と上部非磁性材料層27の界面、上部非磁性材料層27と磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなる他の組み合わせを、図9のケース2、3、4に示す。
【0179】
ケース2の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までの間は、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0180】
ケース3の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までの間も、ダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値がアップスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0181】
ケース4の材料の組み合わせのとき、第1フリー磁性層85から磁性層52までは、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さく、磁性層60から第3フリー磁性層89までの間も、アップスピンの伝導電子に対する抵抗値がダウンスピンの伝導電子に対する抵抗値よりも小さくなるように、各磁性層と非磁性材料からなる層(下部非磁性材料層25、非磁性中間層86、上部非磁性材料層27)の材料が選択されている。
【0182】
β>0である磁性材料の具体例として上記したNiX合金、CoT合金、FeZ合金、、またはCo−Mn−D合金を挙げることが出来る。また、β<0である磁性材料としては、上記したNiM合金、CoQ合金、またはFeA合金を挙げることが出来る。
【0183】
なお、図9のケース1におけるγの正負の組み合わせを実現するためには、非磁性材料層25の材料をCuにし、上部非磁性材料層27をCrからなる第1層72とCuからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース2の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCrにし、上部非磁性材料層27をCuからなる第1層72とCrからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース3の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCrにし、上部非磁性材料層27をCrからなる第1層72とCuからなる第2層73の積層構造にすればよい。ケース4の場合には、下部非磁性材料層25の材料をCuにし、上部非磁性材料層27をCuからなる第1層72とCrからなる第2層73の積層構造にすればよい。
【0184】
以上、図9では、第1フリー磁性層85及び下部固定磁性層24の磁性層52を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであって、第3フリー磁性層89を形成している磁性材料のβの正負の符号が上部固定磁性層28の磁性層60のβと異なっている組み合わせを示した。
【0185】
ただし、本発明では、第3フリー磁性層89と上部固定磁性層28の磁性層60のβの正負の符号が同じものであり、第1フリー磁性層85のβの正負の符号が、下部固定磁性層24の磁性層52のβの符号と異なっている組み合わせも含まれる。このときも、磁性層52と下部非磁性材料層25との界面、下部非磁性材料層25と第1フリー磁性層85の界面、第3フリー磁性層89と上部非磁性材料層27、上部非磁性材料層27と磁性層60の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくなることが好ましい。
【0186】
また、本実施の形態では、第1フリー磁性層85と非磁性中間層86との界面、非磁性中間層88と第3フリー磁性層89の界面のγの正負の符号は任意でよい。また、非磁性中間層86と第2フリー磁性層87の界面、及び第2フリー磁性層87と非磁性中間層88の界面のγの正負の符号、第2フリー磁性層87を形成している磁性材料のβの正負の符号も任意でよい。図9では、β、γの正負の符号が任意であることを(×)で表している。
【0187】
なお、図9では、下部固定磁性層24の磁性層52の磁化方向と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向は反平行方向を向いている。
【0188】
図1に示された磁気検出素子の製造方法について説明する。
まず、第1の電極層20の中央上に、下から下地層21、シード層22、下部反強磁性層23、磁性層50、非磁性中間層51、磁性層52(下部固定磁性層24)、下部非磁性材料層25、第1フリー磁性層53、非磁性中間層54、第2フリー磁性層55(フリー磁性層26)、上部非磁性材料層27、磁性層60、非磁性中間層61、磁性層62(上部固定磁性層28)、上部反強磁性層29を真空中でベタ膜状に連続成膜して多層膜T1の積層構造を形成する。各層の材料及び膜厚は、図1に示された完成後の磁気検出素子と同じである。
【0189】
多層膜T1をハイト方向(図示Y方向)の磁場中でアニールして、下部反強磁性層23と下部固定磁性層24の磁性層50間及び上部反強磁性層29と上部固定磁性層28の磁性層62間に交換結合磁界を発生させる。
【0190】
磁場中アニールの温度は例えば270℃であり、磁界の大きさは、下部固定磁性層24または上部固定磁性層28のスピンフロップ磁界の大きさより弱い磁界、例えば8〜30(kA/m)(本実施の形態では24(kA/m)にしている)である。
【0191】
下部固定磁性層24の磁性層50と磁性層52を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層50の膜厚t4を磁性層52の膜厚t5より大きく(t4>t5)し、また、上部固定磁性層28の磁性層60と磁性層62を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層62の膜厚t7を磁性層60の膜厚t6より小さく(t7<t6)している。
【0192】
これによって、磁性層50の単位面積当たりの磁気モーメント>磁性層52の単位面積当たりの磁気モーメント、かつ磁性層62の単位面積当たりの磁気モーメント<磁性層60の単位面積当たりの磁気モーメントとする。
【0193】
上記8〜30(kA/m)の磁場中アニールによって、磁性層50及び磁性層60の磁化がハイト方向(図示Y方向)に向いている状態で固定され、非磁性中間層51または非磁性中間層61を介したRKKY相互作用によって磁性層52及び磁性層62の磁化がハイト方向と反平行方向に固定される。
【0194】
本実施の形態では、下部固定磁性層24または上部固定磁性層28の膜厚を上記の如く調節し、下部固定磁性層24または上部固定磁性層28のスピンフロップ磁界の大きさより弱い磁場中でアニールを1回行うだけで、磁性層52と磁性層60の磁化方向を反平行にすることができる。
【0195】
次に、反強磁性層29上に、磁気検出素子の光学的な素子面積と同程度かあるいはそれよりも若干小さい面積を覆うリフトオフ用のレジスト層を形成する。
【0196】
次に、前記レジスト層に覆われていない、反強磁性層29から下地層21までの多層膜T1をイオンミリングなどで除去する。これにより第1の電極層20の上面中央には、下地層21から反強磁性層29までで構成される多層膜T1が略台形状となって残される。なおイオンミリング後、多層膜T1の両側端面S1,S1にはミリングで除去された物質の一部が再付着するので、再付着物をサイドミリングで除去することが好ましい。
【0197】
次に、第1の電極層20上から多層膜T1の両側端面S1,S1上にかけて、Alなどで形成された絶縁層31,31、Crなどで形成されたバイアス下地層32,32、CoPtCrなどで形成されたハードバイアス層33,33及びAlなどで形成された絶縁層34,34をスパッタ成膜する。
【0198】
なお、絶縁層31,31から絶縁層34,34までの各層のスパッタ成膜の際におけるスパッタ粒子照射角度は基板に対しほぼ垂直方向Gとすることが好ましい。
【0199】
多層膜T1の両側領域に絶縁層31,31から絶縁層34,34までの各層を積層した後、前記レジスト層R1を除去する。
【0200】
その後、絶縁層34,34上から多層膜T1の反強磁性層29上にかけて第2の電極層30をスパッタ成膜することにより、図1に示された磁気検出素子を形成できる。
【0201】
なお、磁性層50の膜厚t4を磁性層52の膜厚t5より小さく(t4<t5)し、また、磁性層62の膜厚t7を磁性層60の膜厚t6より大きく(t7>t6)しても、1回の磁場中アニールによって、磁性層52と磁性層60の磁化方向を反平行にすることができる。
【0202】
また、下部固定磁性層24の磁性層52と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向を反平行にする他の方法として以下に示す製造方法を用いることができる。
【0203】
まず、第1の電極層20の中央上に、下から下地層21、シード層22、下部反強磁性層23、磁性層50、非磁性中間層51、磁性層52(下部固定磁性層24)、下部非磁性材料層25、第1フリー磁性層53、非磁性中間層54、第2フリー磁性層55(フリー磁性層26)、上部非磁性材料層27、磁性層60、非磁性中間層61、磁性層62(上部固定磁性層28)、及び上部反強磁性層29の一部(反強磁性が生じない厚さ、例えば50Å以下)、を真空中でベタ膜状に連続成膜し、第1の磁場中アニールを行う。
【0204】
第1の磁場中アニール後、上部反強磁性層29を反強磁性が生じる膜厚以上に厚くして、第1の磁場中アニール時の磁場の方向と反平行方向の磁場で第2の磁場中アニールをする。
【0205】
2回の磁場中アニールを行う方法であれば、下部固定磁性層24の磁性層50と磁性層52を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層50の膜厚t4を磁性層52の膜厚t5以上にし(t4≧t5)、また、上部固定磁性層28の磁性層60と磁性層62を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層62の膜厚t7を磁性層60の膜厚t6以上(t7≧t6)にしても、下部固定磁性層24の磁性層52と上部固定磁性層28の磁性層60の磁化方向を反平行にすることができる。または、磁性層50の膜厚t4を磁性層52の膜厚t5以下にし(t4≦t5)、また、磁性層62の膜厚t7を磁性層60の膜厚t6以下(t7≦t6)にした場合でも同様である。
【0206】
t4≧t5かつt7≧t6、またはt4≦t5かつt7≦t6の構成であると、下部反強磁性層23と下部固定磁性層24間の一方向性異方性磁界Hex*と上部反強磁性層29と上部固定磁性層28間の一方向性異方性磁界Hex*の大きさを同程度の値に合わせやすくなる。
【0207】
図3に示される磁気検出素子を形成するときには、下部固定磁性層24の磁性層50と磁性層52を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層50の膜厚t4を磁性層52の膜厚t5より大きくし、また、上部固定磁性層28の磁性層60と磁性層62を同じ組成の磁性材料を用いて形成し、磁性層62の膜厚t7を磁性層60の膜厚t6より大きく形成する。
【0208】
すなわち、磁性層50の単位面積当たりの磁気モーメント>磁性層52の単位面積当たりの磁気モーメント、かつ磁性層62の単位面積当たりの磁気モーメント>磁性層60の単位面積当たりの磁気モーメントにする。
【0209】
そして、例えば270℃の温度中で磁場中アニールを1回行う。磁界の大きさは、下部固定磁性層24と上部固定磁性層28の飽和磁界より大きい、例えば800kA/mの強磁場か、または下部固定磁性層24と上部固定磁性層28のスピンフロップ磁界より小さい、8〜30(kA/m)、例えば24(kA/m)の弱磁場である。
【0210】
または、多層膜T2を下地層21から反強磁性層29の途中まで連続成膜した後、1回目の磁場中アニールを行い、反強磁性層29を付け足し成膜した後、2回目の磁場中アニールを行う方法を用いてもよい。
【0211】
図6及び図8に示された磁気検出素子も同様の製法によって形成できる。
なお、上述した実施の形態では、磁性層及び非磁性材料からなる層のβ、γ両方の正負をアップスピンまたはダウンスピンの伝導電子に対する比抵抗や界面抵抗の観点から最適化するように調節した。ただし、本発明には、磁性層のβのみ実施の形態に示したように調節したり、界面のγのみを調節したものも含まれる。例えば、各磁性層を実施の形態に示したβの組み合わせになる材料で形成し、各非磁性材料層はCu、各非磁性中間層はRuで形成するという形態でもよい。
【0212】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、前記第1フリー磁性層の膜厚を前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ前記第2フリー磁性層の膜厚を前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくしている(フリー磁性層が2層の人工フェリ構造のとき)。
【0213】
従って、前記下部固定磁性層から前記第1フリー磁性層までの間、及び前記第2フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
【0214】
あるいは、前記第1フリー磁性層の膜厚を前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長(Spin Diffusion Length)より大きく、かつ前記第3フリー磁性層の膜厚を前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きくしている(フリー磁性層が3層の人工フェリ構造のとき)。
【0215】
従って、前記下部固定磁性層から前記第1フリー磁性層までの間、及び前記第3フリー磁性層から上部固定磁性層までの間のそれぞれの区間内における伝導電子の流れやすさを別々に考慮することができ、単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aの大きな磁気検出素子の設計が容易になる。
さらに、本発明では、前記第1フリー磁性層、第2フリー磁性層、第3フリー磁性層、下部固定磁性層、または上部固定磁性層と、前記非磁性材料層または前記非磁性中間層の界面におけるγの正負の符号を、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しくすることにより、磁気検出素子の単位面積当たりの抵抗変化ΔR・Aを大きくすることができる。
【0216】
なお、上記のようにγを規定するためには、前記非磁性材料層の上面と磁性層の界面におけるγの正負の符号と、前記非磁性材料層の下面と磁性層の界面におけるγの正負の符号を異ならせることが必要になる場合があるが、本発明では、前記非磁性材料層を、種類の異なる非磁性材料からなる2層構造とすることによってそのような問題を解決できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における第1の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図2】本発明の磁気検出素子の磁性層のβの正負と、磁性層と非磁性材料からなる層の界面におけるγの組み合わせの例を示す様式図、
【図3】本発明における第2の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図4】本発明の磁気検出素子の磁性層のβの正負と、磁性層と非磁性材料からなる層の界面におけるγの組み合わせの例を示す様式図、
【図5】本発明における第3の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図6】本発明における第4の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図7】本発明の磁気検出素子の磁性層のβの正負と、磁性層と非磁性材料からなる層の界面におけるγの組み合わせの例を示す様式図、
【図8】本発明における第5の実施形態の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図9】本発明の磁気検出素子の磁性層のβの正負と、磁性層と非磁性材料からなる層の界面におけるγの組み合わせの例を示す様式図、
【図10】従来の磁気検出素子を記録媒体との対向面側から見た断面図、
【図11】従来の磁気検出素子の磁性層のβの正負と、磁性層と非磁性材料からなる層の界面におけるγの組み合わせを示す様式図、
【符号の説明】
20 第1の電極層
21 下地層
22 シード層
23、29 反強磁性層
24、28 固定磁性層
25、27 非磁性材料層
26、84 フリー磁性層
53 磁性層
54 非磁性中間層
55 磁性層
30 第2の電極層
31、34 絶縁層
32 バイアス下地層
33 ハードバイアス層
80、82 インスタックバイアス層
81 中間層

Claims (10)

  1. フリー磁性層の下に下部非磁性材料層、下部固定磁性層、及び下部反強磁性層が積層され、前記フリー磁性層の上に上部非磁性材料層、上部固定磁性層、及び上部反強磁性層が積層されている多層膜を有し、前記多層膜の各層の膜面と垂直方向に電流が流れる磁気検出素子において、
    前記フリー磁性層は、第1フリー磁性層の上に第2フリー磁性層が、非磁性中間層を介して積層されたものであり、
    前記第1フリー磁性層の膜厚は前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きく、かつ前記第2フリー磁性層の膜厚は前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きいことを特徴とする磁気検出素子。
  2. 前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、かつ前記第2フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものである請求項1記載の磁気検出素子。
    ただし、βは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する比抵抗値である)。
  3. 前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第2フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記上部固定磁性層のβと異なっているか、または、前記第2フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料のβは正負の符号が同じものであり、前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記下部固定磁性層のβと異なっている請求項1記載の磁気検出素子。
    ただし、βは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する比抵抗値である)。
  4. 前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は前記上部非磁性材料層と前記上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第2フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しい請求項2または3記載の磁気検出素子。
    ただし、γは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する界面抵抗値である)。
  5. フリー磁性層の下に下部非磁性材料層、下部固定磁性層、及び下部反強磁性層が積層され、前記フリー磁性層の上に上部非磁性材料層、上部固定磁性層、及び上部反強磁性層が積層されている多層膜を有し、前記多層膜の各層の膜面と垂直方向に電流が流れる磁気検出素子において、
    前記フリー磁性層は、第1フリー磁性層、非磁性中間層、第2フリー磁性層、非磁性中間層、及び第3フリー磁性層順に積層されたものであり、
    前記第1フリー磁性層の膜厚は前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きく、かつ前記第3フリー磁性層の膜厚は前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のスピン拡散長より大きいことを特徴とする磁気検出素子。
  6. 前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、かつ前記第3フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものである請求項5記載の磁気検出素子。
    ただし、βは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する比抵抗値である)。
  7. 前記第1フリー磁性層及び前記下部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、前記第3フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記上部固定磁性層のβと異なっているか、または、前記第3フリー磁性層及び前記上部固定磁性層を形成している磁性材料はβの正負の符号が同じものであり、前記第1フリー磁性層を形成している磁性材料のβの正負の符号は前記下部固定磁性層のβと異なっている請求項5記載の磁気検出素子。
    ただし、βは、ρ↓/ρ↑=(1+β)/(1−β) (−1≦β≦1)の関係式を満たす磁性材料に固有の値である(なお、ρ↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する比抵抗値であり、ρ↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する比抵抗値である)。
  8. 前記下部非磁性材料層と下部固定磁性層の界面及び前記下部非磁性材料層と第1フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は前記上部非磁性材料層と上部固定磁性層の界面及び前記上部非磁性材料層と第3フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号、又は2つの非磁性中間層と第2フリー磁性層の界面におけるγの正負の符号が、その界面に接している磁性層のβの正負の符号と等しい請求項6または7記載の磁気検出素子。
    ただし、γは、r↓/r↑=(1+γ)/(1−γ)(−1≦γ≦1)の関係式を満たす界面に固有の値である(なお、r↓は、伝導電子のうちマイノリティーの伝導電子に対する界面抵抗値であり、r↑は、伝導電子のうちメジャリティーの伝導電子に対する界面抵抗値である)。
  9. 前記非磁性材料層が、種類の異なる非磁性材料からなる2層構造を有することにより、前記非磁性材料層の上面と磁性層の界面におけるγの正負の符号と、前記非磁性材料層の下面と磁性層の界面におけるγの正負の符号が異なっている請求項4または8記載の磁気検出素子。
  10. 前記下部固定磁性層及び上部固定磁性層は、2層の磁性層が非磁性中間層を介して積層されたものである請求項1ないし9のいずれかに記載の磁気検出素子。
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JP2008010509A (ja) * 2006-06-27 2008-01-17 Fujitsu Ltd 磁気抵抗効果素子及び磁気ディスク装置
US7466525B2 (en) 2004-09-03 2008-12-16 Tdk Corporation Magnetic sensing element including laminated film composed of half-metal and NiFe alloy as free layer
US7616410B2 (en) 2005-03-02 2009-11-10 Tdk Corporation Magnetic detecting element having free layer formed of NiFe alloy and method of manufacturing the same

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