JP3831078B2 - 光モジュールの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体発光素子又は半導体受光素子とレンズを樹脂ハウジングによって調芯保持する光モジュールの製造方法に関し、更に詳しく述べると、レンズをインサート形成により抱持した一次成形ピースを、更にインサート成形して最終ハウジング形状に二次成形する2段階インサート成形法による光モジュールの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
光モジュールは、光半導体素子(例えば半導体レーザ等の半導体発光素子あるいはフォトダイオード等の半導体受光素子)とレンズとを調芯保持した部品であり、光通信等の分野において使用されている。例えば、データ通信を行うコンピュータシステムでは、半導体発光素子のモジュールと半導体受光素子のモジュールがボード上で対となって設置されている。このような光モジュールは、光半導体素子と、レンズと、前記光半導体素子やレンズを保持すると共に接続相手の光プラグのフェルールを嵌合保持するハウジングとから構成されており、光プラグ接続時に光半導体素子とフェルールの光ファイバとがレンズを介して光学的に結合する構造となっている。ハウジングは、一般的に、光半導体素子やレンズを保持するホルダ部と、光プラグのフェルールを嵌合保持するレセプタクル部とを別部材として作製し、両者を調芯固定する構造が採用されている。
【0003】
光モジュールに組み込むレンズとしては、球レンズ又は屈折率分布型ロッドレンズが一般的である。勿論、それ以外の種々の形状のレンズを使用することもある。それらの中でも球レンズは、機械加工のみによって高精度の製品を容易に製造できるため安価であり、またレンズに方向性が全く無いためにレンズ実装の際の方位調整が不要であり組み立て易いという利点もあって多用されている。レンズをホルダ部に固定する方法としては、ホルダ部の凹部(レンズ装着部)にレンズを落とし込んで位置決めした後、該レンズの周囲に樹脂接着剤を塗布して熱硬化させる接着法、あるいはレンズ外径よりも若干大きめの低融点ガラスリング成形体をレンズの外周に挿入し加熱溶融させる溶着法などが採用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
接着法は、狭い領域に液状の樹脂接着剤を流し込む必要があるため、熱硬化前のハンドリングに難がある。また通常、ホルダ部は金属材料からなるが、そのホルダ部との熱膨張係数差により、レンズ接着面の熱割れが生じる恐れがある。
【0005】
他方、ガラス溶着法は、高温高湿放置時における失透(白濁)や固着強度の低下、コストアップなどの問題がある。溶着法に用いる低融点ガラスリング成形体は、低融点ガラスの粉末を圧粉成形したものであるから、所定の位置に落とし込む際に微細な破片や粉末が飛散し、それがレンズ表面に付着することが生じる。レンズを固着するためにそのまま加熱溶融処理を行うと、付着していたガラス破片や粉末が溶融し、また低融点ガラス自体の回り込みなどによって、レンズ表面に局部的な低融点ガラスの被膜ができる。低融点ガラスは、特に湿気に弱く、時間が経過するにつれて失透が生じることが多く、失透部分が生じると光量低下が生じる。また湿気によってガラス溜まりの表面に微細なクラックが入り脆くなるため、レンズの固着強度が低下し、甚だしい場合にはレンズの脱落が生じる恐れもある。こうのような問題を解消するには、別の防湿対策を必要とする他、低融点ガラスリング成形体が高価であることとも相俟て、どうしてもコストアップとなる。
【0006】
本発明の目的は、樹脂接着剤や融着ガラスを用いることなく、レンズをハウジングに固定でき、しかも耐候性に優れ、信頼性が高く、安価に製作できる光モジュールの製造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、光半導体素子と、レンズと、該レンズを内蔵する樹脂ハウジングとからなり、内蔵したレンズと前記光半導体素子とが同軸上に位置するように光半導体素子を樹脂ハウジングに装着して光モジュールを製造する方法である。ここで本発明は、樹脂によりレンズをインサート成形して該レンズを抱持する一次成形ピースを作製し、次いで樹脂を用いてその一次成形ピースを更にインサート成形して光半導体素子の装着部を有する最終ハウジング形状となるように二次成形することにより、レンズを内蔵する樹脂ハウジングを二段階成形する光モジュールの製造方法であり、この点に特徴がある。
【0008】
また本発明は、光半導体素子と、レンズと、該レンズを内蔵し光半導体素子の装着部を有すると共に接続相手の光プラグのフェルールを嵌合保持するレセプタクルボアを有する樹脂ハウジングとからなり、光プラグ接続時に光半導体素子とフェルールの光ファイバとがレンズによって光学的に結合するように光半導体素子を樹脂ハウジングに装着して光モジュールを製造する方法である。ここで本発明は、樹脂によりレンズをインサート成形して該レンズを抱持する一次成形ピースを作製し、次いで樹脂を用いてその一次成形ピースを更にインサート成形して光半導体素子の装着部及びレセプタクルボアを有する最終ハウジング形状となるように二次成形することにより、レンズを内蔵する樹脂ハウジングを二段階成形する光モジュールの製造方法であり、この点に特徴がある。
【0009】
光モジュールにおいては、中に組み込むレンズが非常に小さい上、そのレンズを金型内で細いコアピンによって保持する必要がある。そのため先ず比較的小さな空洞部を有する一次金型を用い、該一次金型内で短いコアピンを用いてレンズを保持し、レンズ回りの小さなピースを成形する。成形した一次成形ピースは、レンズを抱持しており、ある程度の大きさとなるので、それを二次金型内で保持するのに太いコアピンが使用可能となる。そのためコアピンの保持剛性を高めることができる。また二次成形時の成形品の肉厚を全体にわたってほぼ均一とするような設計が可能となるため、部分的な「ヒケ」(成形時の収縮による窪み)が発生しなくなる。これによって良好な樹脂ハウジングの一体成形品が得られることになる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においてインサートするレンズの形状は問わないが、前述したように特に球レンズは、安価で且つ金型内で保持する上で方向性がないため都合がよい。勿論、屈折率分布型ロッドレンズなども使用可能である。いずれにしても成形後にレンズが脱落しないような樹脂形状に成形する。但し、使用するレンズは、射出成形時の温度及び圧力で変質・変形しない材質とすることは言うまでもなく、一般にはガラス材料の製品を用いる。
【0011】
一次成形と二次成形とに用いる樹脂材料は、それぞれ異なる樹脂でもよいが、同一樹脂を用いるのがよい。線膨張係数などの特性が一致し、完全に一体化できるからである。その樹脂材料としては、光ファイバのフェルールとの嵌合部を−20〜+75℃程度の温度範囲で5/1000mm程度の公差に抑える必要があるために、線膨張係数が小さい(具体的には、2×10-5/℃程度)材質が望ましい。しかし、使用温度条件などによっては、線膨張係数が7×10-5/℃程度までの樹脂なら使用可能である。このような樹脂は、エンジニアリングプラスチックと呼ばれる範疇のものであり、例えば液晶ポリマー(LCP)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルイミド、ポリフェニルサルファイド(PPS)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミドなどであり、線膨張係数が大きすぎる場合には、ガラスフィラーあるいはガラスビーズなどを適量混入するのが有効である。ガラスビーズは、平均粒径を30μm程度以下とすることが望ましい。その場合、粒径が小さいほうが好ましいが、コストが高くなる。特に、平均粒径2〜20μm程度のガラスビーズを均一に分散させた液晶ポリマーを用いた場合は好結果が得られている。
【0012】
本発明において樹脂ハウジングに装着する光半導体素子は、例えば半導体レーザや発光ダイオードなどの半導体発光素子、あるいはフォトダイオードやプリアンプ内蔵型フォトダイオードなどの半導体受光素子である。
【0013】
【実施例】
図1は本発明に係る光モジュールの製造方法の一実施例を示す工程説明図であり、図2はその方法によって製造した光モジュールの全体説明図である。この例で光モジュールは、図2に示すように、光半導体素子10と、球レンズ12と、樹脂ハウジング14とからなる。樹脂ハウジング14は、前記球レンズ12を内蔵し、光半導体素子装着部16を有すると共に、接続相手の光プラグのフェルール(図示せず)を嵌合保持するレセプタクルボア(空洞部)18を有する構造である。光プラグ接続時に、光半導体素子10とフェルールの光ファイバとが球レンズ12によって光学的に結合するように、前記光半導体素子10を樹脂ハウジング14に装着して光モジュールを製造する。
【0014】
図1に示すように、先ず、樹脂により球レンズ12をインサート成形して、該球レンズ12を抱持する一次成形ピース20を作製する。ここで組み込む球レンズ12は、例えば直径2mm程度の微小な球体である。その球レンズ12を、一次金型内で直径0.6mm程度の細い2本のコアピンで挾んで保持し、その状態で樹脂を高圧で該一次金型内に射出する。その際、横型の射出成形機では、微小な球レンズ12を正しい位置で確実に保持することが困難なため、縦型の射出成形機を用いる。一次成形ピース20は、球レンズ12を抱持し、次の工程を行い易いような大きさとすればよく、小さなピースでよい。従って、球レンズ12を保持するコアピンの長さがを短くできるため、該コアピンが細径であるにもかかわらず保持剛性を高めることができる。
【0015】
一次成形ピース20は、球レンズ12の少なくとも半分以上が一次成形の樹脂部分22中に埋設されるようにして、該球レンズ12が一次成形ピース20から脱落しないようにする。ここでは球レンズ12の約85%程度が樹脂部分22中に埋設されるような状態として、周囲の樹脂によって瞳径を制限しレンズ周辺の不要光の透過を防止している。球レンズ12は一部が樹脂部分22から突出するように露出し、その反対側には、光ビームの通路となる小口径の貫通穴24とやや大口径の該貫通穴26を連続するように形成してある。
【0016】
次に同一樹脂を用いて、その一次成形ピース20を更にインサート成形することで、光半導体素子の装着部16及びレセプタクルボア18を有する最終ハウジング形状となるように二次成形する。二次成形した樹脂部分を符号28で示す。一次成形ピース20を二次金型内で複数のコアピンで挾んで保持し、その状態で樹脂を高圧で該二次金型内に射出する。その際、レセプタクルボア18は、5/1000mm程度の精度が必要であが、縦型成形機では高剛性が得にくく、そのような高精度の達成が難しいため、二次成形には横型成形機を使用する。
【0017】
二次成形では、インサートする一次成形ピース20がある程度大きいために、ハンドリングが容易となるし、該一次成形ピース20を保持するコアピンを太くできるので保持剛性を高めることができ、横型成形機でも十分成形できる。また二次成形した樹脂部分28の肉厚が全体にわたってほぼ均一となるような設計が可能となるため、部分的な「ヒケ」(成形時の収縮による窪み)が発生しなくなる。具体的には、肉厚の最大値と最小値との比が2:1程度以内となるようにするのがよい。逆に言うと、そのように二次成形する樹脂部分の肉厚が全体にわたってほぼ均一となるように、一次成形ピース20の形状(特に外側形状)を設計することになる。
【0018】
一次成形と二次成形とは、同一の樹脂を使用するのが望ましい。例えば、平均粒径約20μmのガラスビーズを50重量%程度分散させた低異方性グレード液晶ポリマーが好適である。液晶ポリマー自体は線膨張係数の異方性が大きい(射出時の流動方向では線膨張係数はほぼゼロ、それと直交する方向では線膨張係数は8×10-5/℃程度)が、ガラスビーズを適量分散させることで異方性を低減できる(射出時の流動方向及びそれと直交する方向とも2×10-5/℃程度)からである。これによって、光モジュールの実際の使用温度範囲(−20〜+75℃)でレセプタクルボアの内径2.5mmφに対して内径変動率を5/1000mmに抑えることができる。
【0019】
このようにして球レンズ12をインサート成形した樹脂ハウジング14に、図2に示すように光半導体素子10を装着する。ここで光半導体素子10は、素子本体が気密パッケージ内に収容された構造である。そのベース部分30が樹脂ハウジング14の端部14aに当接するように気密パッケージ部分を樹脂ハウジング14の装着部16に挿入して位置決めし、ベース部分30の周囲を樹脂接着剤32などで固定する。
【0020】
光モジュールに光プラグを接続すると、光プラグのフェルール(図示せず)がレセプタクルボア18に嵌入する。その時、光半導体素子10が例えば半導体レーザであれば、半導体レーザからの出射光は球レンズ12で集光されてフェルールの光ファイバの端面に入射するように、光学的な軸合わせが達成される。一次成形ピース20の中央を貫通している小口径の貫通穴24は、その口径を必要最小限に設定することによって、光ファイバ結合光のみを通し、球レンズ自体の収差ななとに起因する不要光を除去する機能を果たす。光半導体素子10が例えばフォトダイオードであれば、光モジュールに光プラグを接続した時、フェルールの光ファイバからの出射光は、球レンズ12で集光されてフォトダイオードに入射するように、光学的な軸合わせが達成される。
【0021】
なお上記の実施例は、樹脂ハウジングとしてレセプタクル部も一体的に成形した例であるが、レセプタクル部を有しない構造とすることもできる。そのようなレセプタクル部の無い光モジュールをそのまま使用する場合もあるが、レセプタクル部を別に作製して接合する構成とすることも可能であり、そうするとレセプタクル部には光ファイバのフェルールの抜き差しに対する耐久性の高い材質を選定できる利点が生じる。
【0022】
【発明の効果】
本発明は上記のように、レンズをインサート形成により抱持した一次成形ピースを、更にインサート成形して最終ハウジング形状に二次成形する2段階インサート成形法による光モジュールの製造方法であるから、樹脂接着剤や融着ガラスを用いることなく、レンズを樹脂ハウジングに固定でき、しかも耐候性に優れ、信頼性が高くなり、安価に製作することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る光モジュールの製造方法の一実施例を示す工程説明図。
【図2】本発明方法によって製造した光モジュールの全体説明図。
【符号の説明】
10 光半導体素子
12 球レンズ
14 樹脂ハウジング
16 光半導体素子の装着部
18 レセプタクルボア
20 一次成形ピース
22 一次成形の樹脂部分
24,26 貫通穴
28 二次成形の樹脂部分
32 接着剤

Claims (4)

  1. 光半導体素子と、レンズと、該レンズを内蔵すると共に光半導体素子の装着部を有する樹脂ハウジングとからなり、内蔵したレンズと前記光半導体素子とが同軸上に位置するように光半導体素子を樹脂ハウジングに装着して光モジュールを製造する方法において、
    一次金型内でレンズをコアピンによって保持し、樹脂によりレンズをインサート成形して該レンズを抱持する一次成形ピースを作製し、次いで該一次成形ピースを二次金型内で前記コアピンとは異なる太いコアピンによって保持し、樹脂を用いてその一次成形ピースを更にインサート成形して光半導体素子の装着部を有する最終ハウジング形状となるように二次成形することにより、レンズを内蔵する樹脂ハウジングを二段階成形することを特徴とする光モジュールの製造方法。
  2. 光半導体素子と、レンズと、該レンズを内蔵し光半導体素子の装着部を有すると共に接続相手の光プラグのフェルールを嵌合保持するレセプタクルボアを有する樹脂ハウジングとからなり、光プラグ接続時に光半導体素子とフェルールの光ファイバとがレンズによって光学的に結合するように光半導体素子を樹脂ハウジングに装着して光モジュールを製造する方法において、
    一次金型内でレンズをコアピンにより保持し、樹脂によりレンズをインサート成形して該レンズを抱持する一次成形ピースを作製し、次いで該一次成形ピースを二次金型内で前記コアピンとは異なる太いコアピンにより保持し、樹脂を用いてその一次成形ピースを更にインサート成形して光半導体素子の装着部及びレセプタクルボアを有する最終ハウジング形状に二次成形することにより、レンズを内蔵する樹脂ハウジングを二段階成形することを特徴とする光モジュールの製造方法。
  3. 一次成形には縦型射出成形機を用い、二次成形には横型射出成形機を用いる請求項1又は2記載の光モジュールの製造方法。
  4. 一次成形及び二次成形に用いる樹脂として、平均粒径30μm以下のガラスビーズを均一に分散させた同一の液晶ポリマーを用いる請求項3記載の光モジュールの製造方法。
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