JP3830602B2 - プリペイドカード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプリペイドカードに関し、特に、暗証コードをプリペイドカード上に記載して販売する場合に、流通過程における暗証コードの秘密性を保持するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
通信網やコンピュータネットワークの普及とともに、わが国においても第三次産業の占める割合が急速に伸びてきており、様々な業者による様々なサービスの提供が行われるようになってきている。このようなサービス業者は、物品の販売ではなく、特定のサービスの提供により対価を得ているため、物品を販売する一般の業者とは異なる形態により、顧客からの料金回収を行っていることが多い。たとえば、顧客の銀行口座から、利用したサービスに相当する対価を自動的に引き落とす方法や、信販会社に対してクレジット契約を予め締結しておき、信販会社を介して利用料金を決済する方法などは、ごく一般的な料金回収の形態であり、電気料金、ガス料金、水道料金などの公共サービスや、種々の情報提供サービスなどにおける料金決済の手法として広く利用されている。一方、プリペイドカードの販売という形式により、将来提供されるべきサービスに対して、料金回収を先に行ってしまう方法もかなり普及している方法であり、電話料金や運賃の回収に広く利用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述した銀行口座からの自動引き落としや、信販会社を介した決済という方法は、非常に堅実な方法ではあるが、事前の手続きが面倒で、また、サービスの利用開始までに時間がかかるという問題がある。したがって、公共料金など利用が不可欠なサービスについては、有効な料金回収方法であるとしても、顧客にとって恣意的なサービスについての料金回収方法としては、必ずしも適切ではない。利用料金の支払いのための手続きが面倒であったり、実際に利用が可能になるまでに何日も待たされたりすれば、顧客はそのサービスの利用に躊躇せざるを得なくなる。
【0004】
これに対して、プリペイドカードを用いた料金回収方法は、非常に手軽な方法であり、サービスによっては非常に有効な方法である。すなわち、通常の物品を購入するのと同じ形態で、サービスに対する対価の支払いを行うことができ、かつ、プリペイドカードを購入した時点からそのサービスを利用できるようになる。このような利便性から、ここ数年、プリペイドカードの利用が急速に拡大したが、その半面、プリペイドカードの偽造や変造という問題が生じるに至っている。すなわち、一般的なプリペイドカードは、磁気的に残存対価を記録する方式を採っているため、この磁気的な記録の改竄という方法による不正利用が蔓延する結果となっている。このように、従来の磁気記録を利用したプリペイドカードは、安全性の面で問題が生じている。
【0005】
不正利用防止の面では、ICカード、特にCPU内蔵型のICカードが注目を集めつつあり、高度な暗証照合システムを利用することにより、かなりの安全性が確保できるようになってきている。しかしながら、現在、一般に普及している磁気カードの代わりにICカードを利用するには、コストの面で大きな障害があり、比較的少額のプリペイドカードとしては実用の目途が立っていない。
【0006】
そこで本発明は、低コストで安全性の高いプリペイドカードを実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
(1) 本発明の第1の態様は、カード状の基体と、この基体上に形成された印刷層と、この印刷層上に形成された透明なフィルム層と、によってプリペイドカードを構成し、
このカード主面の一部に暗証領域を定義し、印刷層の暗証領域内の部分によって所定の暗証コードを表示するようにし、
フィルム層上の暗証領域部分に、暗証コードを隠蔽する機能をもち、かつ、引っ掻くことにより剥離除去可能なスクラッチ層を形成するようにし、
暗証領域内における「暗証コードの文字の輪郭線内部の領域」からなる文字部と、暗証領域内における「暗証コードの文字の輪郭線外部の領域」からなる背景部と、について、それぞれの明度値Vを2≦V≦9に設定し、かつ、文字部の明度値と背景部の明度値との差ΔVを1以下に設定するようにしたものである。
【0008】
(2) 本発明の第2の態様は、上述の第1の態様に係るプリペイドカードにおいて、
文字部の彩度値と背景部の彩度値との差ΔCを2≦ΔC≦6に設定したものである。
【0009】
(3) 本発明の第3の態様は、上述の第1または第2の態様に係るプリペイドカードにおいて、
文字部の色相と背景部の色相とが補色の関係にあるように設定し、かつ、それぞれの色相のレベルを10以内に設定したものである。
【0010】
(4) 本発明の第4の態様は、上述の第1〜第3の態様に係るプリペイドカードにおいて、
カード主面の暗証領域とは別な一部に管理領域を定義し、印刷層の管理領域内の部分によって、個々のカードを識別するための管理番号を表示するようにしたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
§1. 本発明に係るプリペイドカードの概要
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプリペイドカード100のおもて面を示す平面図、図2は、このプリペイドカード100の裏面を示す平面図である。このプリペイドカードは、何らかのサービス提供業者がユーザ(購入者)に対して、何らかのサービス利用権を与えるためのカードであり、ユーザはこのカードを購入することによって、カードの代金に相当するサービスを利用することができるようになる。具体的には、たとえば、国際電話の通話サービス、インターネットへの接続サービス、パソコン通信を介してのデータ提供サービスなどのサービス提供業者が、このようなプリペイドカードをユーザ相手に販売することになる。
【0013】
図1に示すように、このプリペイドカード100のおもて面には、絵柄の画像が表示されており、このおもて面は、このプリペイドカード100に単なるデザイン上の付加価値を与える機能しかもたない。これに対して、図2に示すように、このプリペイドカード100の裏面には、暗証領域11、管理領域12、説明領域13という特殊な領域が形成されており、それ以外の部分が絵柄領域14となっている。暗証領域11には、後述するように、サービス業者の提供する暗証コードが表示されているが、図2に示す状態では、この暗証領域11上にスクラッチ層Mが形成されており、暗証コードは隠蔽された状態になっている。一方、管理領域12には、サービス業者がこのプリペイドカードを識別するための管理番号(この例では、個々のプリペイドカードごとにユニークなシリアル番号)が表示されており、説明領域13には、このプリペイドカードを利用する上での説明文が表示されている。管理領域12および説明領域13の表示内容は秘密にする必要がないので、特に隠蔽のための加工は施されていない。残りの絵柄領域14には、おもて面と同様に、デザイン上の付加価値を与えるための絵柄が表示されている。
【0014】
暗証領域11上に形成されているスクラッチ層Mは、引っ掻くことにより剥離除去可能であり、このプリペイドカード100の購入者が、爪の先やコインなどを用いて、このスクラッチ層Mを剥離除去すると、図3に示すように、暗証領域11に暗証コードが表示された状態になる。このプリペイドカード100の本質的な機能は、正当な購入者に対してのみ、この暗証コードを提示することにある。別言すれば、このプリペイドカード100には、残存対価を記録するための磁気記録層などは一切形成されておらず、正当な購入者に対して暗証コードを伝達した時点で、このカードの本質的な役割は完了する。このように、プリペイドカードを対価の記録手段として用いるのではなく、暗証コードを伝達するための媒体として用いている点が、本発明の特徴のひとつである。
【0015】
暗証領域11に表示されている暗証コードは、このカードを購入したユーザがサービスを利用するときに、正当な権限を有するユーザであることを示すパスワードとしての機能を果たすことになる。要するに、機能的な観点からは、このプリペイドカードの販売行為は、実質的に、暗証コードの販売行為と等価になる。ユーザは、形式的には、物理的に実体のあるプリペイドカードを購入したことになるが、実質的には、物理的実体のない暗証コードを購入したことになる。
【0016】
いま、このプリペイドカード100が、インターネットへの接続サービスを行うサービス業者によって発行されたものであるとしよう。この場合、このカード100を購入したユーザが、インターネットへの接続サービスを受けるには、まず、このプリペイドカード100の発行業者へ電話回線を用いてアクセスし、続いて、暗証領域11に表示されている暗証コードを入力すればよい。発行業者のコンピュータに、個々の暗証コードを登録しておけば、ユーザの入力した暗証コードが正しいものであるか否かを認識することができる。暗証コードが正しいものであった場合には、プリペイドカードの価格に相当する時間だけ、インターネットへの接続サービスが提供されることになる。なお、不正利用者が、デタラメな暗証コードを入力した場合に、そのデタラメな暗証コードが偶然にも正しい暗証コードと一致してしまう確率を限り無く零に近付けるために、暗証領域11に表示する暗証コードはある程度の桁数をもったコードを用いるようにし、数字だけでなく、数字とアルファベットの組み合わせにしておくのが好ましい。
【0017】
このような形態のプリペイドカードを用いれば、口座振替のような手続きは一切不要であり、購入者はカード購入後に直ちにサービスを利用できるようになるというプリペイドカード固有の利点を生かしつつ、偽造による被害発生を有効に抑えることが可能になる。もちろん、複写機などを利用すればカード自体の偽造は可能ではあるが、カード自体に残存価値が記録されているわけではないので、自己の利用のために偽造する意味は全くない。また、大量の偽造カードを不特定多数の者に販売することによって不当な利益を得るような行為は、偽造カードを正規の販売ルートにのせることが困難であることから、実質的には起こり難い行為である。また、カード自体には、磁気記録層すら設けられていないので、製造原価は非常に安価になる。
【0018】
ただ、このような暗証コード自体を記録したプリペイドカードを販売するにあたっての問題は、流通過程において、正規の購入者以外の者によって暗証コードが知られてしまう危険性があるという問題である。プリペイドカードの販売という形態をとる以上、発行元のサービス業者から正規の購入者にまでカードが流通する過程で、様々な仲介業者の手を経ることになるのは避けられない。この流通過程において、カードに記録された暗証コードが不正に知られてしまうと、この不正知得者によってサービスの利用が可能になる。したがって、正規の購入者がサービスの利用を開始した時点において、既にサービス業者側のコンピュータに登録されている当該購入者の残存対価が零になっているような事態も生じ得る。
【0019】
そこで、本発明では、暗証領域11上にスクラッチ層Mを形成して暗証コードを隠蔽するようにし、流通過程において暗証コードが不正に知得されないようにしている。スクラッチ層Mは、一度剥離すると元には戻らない性質を有するため、購入者は、スクラッチ層Mにより隠蔽されているプリペイドカードであれば、これを安心して購入することが可能になる。
【0020】
なお、個々のプリペイドカードの管理領域12には、それぞれユニークな管理番号が表示されているが、この管理番号は、カードの発行元であるサービス業者が、個々のカードを識別して管理するために用いるものである。サービス業者は、コンピュータ内に、この管理番号と暗証コードとを対にしたファイルを保存しておくようにすると、個々のカードごとの管理を適切に行うことができる。
【0021】
また、説明領域13には、このプリペイドカードの利用方法が記述されている。たとえば、上述したように、インターネットへの接続サービスを受けることができるプリペイドカードの場合であれば、インターネットへの接続を行うための手順やアクセスすべき電話番号などを説明領域13に表示しておけばよい。このプリペイドカード100を購入したユーザは、暗証領域11に表示された暗証コードを確認した後に、このプリペイドカード100を廃棄してしまってもかまわない。しかしながら、通常は、暗証コードを記録したメモとしてこのプリペイドカード100を保管しておき、サービスを利用するたびに、このプリペイドカード100を取り出して暗証コードを確認するという利用形態が一般的であり、説明領域13に利用方法の説明文を表示しておくことは、利用上の便宜を図る上で大きな意味がある。
【0022】
§2. 本発明に係るプリペイドカードの構造
続いて、本発明に係るプリペイドカードの好ましい構造を図4の側断面図に基づいて説明する。この図4に示す側断面図は、図2に示すプリペイドカード100を、切断線4−4に沿って切断した断面を示しており、図の上方がカードの裏面、図の下方がカードのおもて面に相当する。ここで、カード状の基体111は、このプリペイドカードのベースとなる素材層であり、ここに示す例では、厚み100μmの発泡ポリエステル樹脂(発泡度20%:東洋紡績株式会社製:商品名「クリスパー」を使用)を用いている。この他、炭酸カルシウム入り発泡ポリプロピレン樹脂(たとえば、王子油化合成紙株式会社製:商品名「ユポ」)や、白色ポリエステル樹脂(たとえば、東レ株式会社製:商品名「ルミラー」)などを基体111として用いることもできる。基体111の上面および下面には、それぞれ印刷層112および113が形成されている。印刷層112は、図3に示すようなカード裏面の表示要素を印刷した層であり、印刷層112の暗証領域11内の部分によって暗証コードが表示されることになり、印刷層112の管理領域12内の部分によって管理番号が表示されることになり、印刷層112の説明領域13内の部分によって説明文が表示されることになり、印刷層112の絵柄領域14内の部分によって絵柄が表示されることになる。一方、印刷層113は、図1に示すようなカードのおもて面の絵柄を印刷した層である。なお、後述するように、この実施形態のプリペイドカードでは、電子写真式印刷機を用いた印刷が行われており、各印刷層112,113は、この例ではほぼ20μm程度の厚みをもったトナー粒子層(トナー粒子の平均粒径:7μm)によって構成されている。
【0023】
更に、印刷層112を保護するための保護層として、フィルム層121が形成され、印刷層113を保護するための保護層として、フィルム層131が形成されている。ただ、この実施形態では、印刷層112とフィルム層121との間に、両者を接着する機能を果たす接着層122が介挿され、印刷層113とフィルム層131との間に、両者を接着する機能を果たす接着層132が介挿されている。フィルム層121,接着層122,フィルム層131,接着層132はいずれも透明な素材からなり、このプリペイドカード100を外面から観察したときに、印刷層112,113の印刷内容を目視できるようになっている。この実施形態では、フィルム層121およびフィルム層131として、厚み80μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用いており、接着層122,132として、ヒートシール材(三井デュポンポリケミカル株式会社製:商品名「サーリン」:材料名「アイオノマー」)を用いている。
【0024】
なお、PETフィルムのかわりに、ポリエステルフィルム、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル樹脂、アセテートプロピオネート樹脂なども使用できるが、実用上は、スクラッチ層Mを形成するためのスクラッチインキに含まれている溶剤に対して耐溶剤性のある材料を用いた方が、スクラッチ層Mを剥離しやすくなるので好ましい。この点では、PETフィルムやポリカーボネート樹脂が適している。また、ヒートシール材としては、エチレン酢酸ビニルアセテート(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などを用いてもよい。
【0025】
上述の構造体は、実際には、図5に示すような3枚のシート110,120,130をラミネート加工させることによって得られる。第1のシート110は、カード状の基体111の両面に印刷層112,113を形成してなるものであり、実際には、後述するように、厚み100μmの発泡ポリエステル樹脂からなる基体111の両面に、電子写真式印刷機を用いて印刷を行うことにより得られる。また、第2のシート120および第3のシート130は、いずれも熱により硬化接着する性質をもった材料が片面に塗布されている透明なフィルムから構成されている。具体的には、厚み80μmのPETフィルム121,131の片面に、上述したヒートシール材(熱により硬化接着する性質をもつ)を塗布して接着層122,132を構成したものである。印刷により、第1のシート110が得られたら、これを図5に示すように、第2のシート120および第3のシート130によって挟み込み、熱ローラで両面から圧着するラミネート加工を行うと、ラミネート構造体150が得られることになる。
【0026】
最後に、本発明の特徴となるスクラッチ層Mを形成する。このスクラッチ層Mは、暗証領域11に表示された暗証コードを隠蔽するためのものであるから、図4に示すように、暗証領域11を覆うような位置に形成すれば十分である。また、この例では、暗証コードは印刷層112側にのみ表示されているので、フィルム層121の上面に形成すれば十分である。スクラッチ層Mとしては、暗証コードを十分に隠蔽する機能をもち、かつ、引っ掻くことにより剥離除去可能な材料であれば、どのような材料を用いてもかまわない。この例では、帝国インキ製造株式会社製:商品名「セリコールRUBインキ・シルバー」を材料として用い、スクリーン印刷の技法を用いて、暗証領域11部分にスクラッチ層Mを形成している。
【0027】
このように、本発明では、印刷層112の上に直接スクラッチ層Mを形成することを避け、図4に示すように、印刷層112の上面に透明なフィルム層121を形成し、このフィルム層121の上面にスクラッチ層Mを形成するようにしている。これは、フィルム層121を挟んでスクラッチ層Mを形成しておけば、スクラッチ層Mを引っ掻いて剥がす作業が容易になるとともに、この剥がす作業を行う際に、誤って暗証コードが印刷されている印刷層112まで剥がされてしまうミスを防ぐことができるというメリットが得られるためである。
【0028】
§3. 本発明に係るプリペイドカードの製造方法
続いて、本発明に係るプリペイドカードの製造に適した具体的な方法を説明する。図5に示すように、このプリペイドカードは、3枚のシート110,120,130をラミネート加工したラミネート構造体150によって構成されるが、はじめに、第1のシート110を得るための具体的な方法を述べる。第1のシート110は、カード状の基体111の両面に印刷を行い、印刷層112,113を形成することによって得られる。
【0029】
このような両面印刷を行うための印刷機の基本構成を図6に示す。この例では、基体111は、巻物状の原反115として用意される。より具体的には、基体111は発泡ポリエステル樹脂の長尺状のシートからなり、巻物状の原反115は、この長尺状のシートの原反になる。巻物状の原反115から引き出された基体111は、ローラ21を経て、複数の感光性ドラム31,32,33,34,41,42,43,44の間を通り、ローラ22,23を経て、定着部51,52へと送られ、更に、ローラ24を経て、カッター60へと導かれる。ここで、感光性ドラム31,32,33,34は、長尺状の基体111のおもて面に、それぞれY色、M色,C色,K色の印刷を行うためのドラムであり、感光性ドラム41,42,43,44は、長尺状の基体111の裏面に、それぞれY色、M色,C色,K色の印刷を行うためのドラムである。これらのドラムの間を通ることにより、長尺状の基体111の両面に所定の印刷が行われ、印刷層112,113が形成されることになる。定着部51,52は、熱を加えることにより、この印刷層112,113を長尺状の基体111上に定着させる機能を果たす。こうして、カッター60へと送られる時点では、既に長尺状の基体111上には、定着済みの印刷層112,113が形成されており、第1のシート110が形成されていることになる。
【0030】
8組の感光性ドラムからなる印刷機は、いわゆる電子写真式印刷機である。すなわち、ビットマップデータに基づいて感光性ドラム上に電荷分布による潜像を形成し、この潜像に基づくトナーパターンを媒体上に転写する機能をもった印刷機であり、一般の複写機やレーザプリンタのエンジンとして広く利用されている。図7に、感光性ドラム30を用いた潜像の転写原理を示す。図6に示す各感光性ドラムは、いずれも図7に示す感光性ドラム30と同様の原理で、潜像を長尺状の基体111へと転写する機能を果たす。
【0031】
図7において、感光性ドラム30の右方には、発光ダイオードアレイ35が設けられている。発光ダイオードアレイ35には、図の紙面に垂直な方向に多数の発光ダイオード素子が一次元に配列されており、個々の発光ダイオード素子が1画素分の潜像形成を行うことになる。すなわち、感光性ドラム30上には、発光ダイオードアレイ35の位置において、個々の発光ダイオード素子の発光強度に応じた一次元電荷分布が形成される。したがって、感光性ドラム30を図の矢印方向に回転させれば、感光性ドラム30の周面上に二次元電荷分布としての潜像が形成されることになる。一方、トナー収容器36内に蓄えられたトナー粒子Tは、ローラ37によって感光性ドラム30の周面へ接触させられる。ここで、感光性ドラム30の周面の帯電部分に接触したトナー粒子Tはそのまま付着するが、他のトナー粒子Tはトナー収容器36内に回収される。
【0032】
感光性ドラム30の周面と長尺状の基体111との接触位置の左方には、電圧印加部38が設けられており、ここで印加される電圧に基づいて感光性ドラム30上の帯電状態が解消される。これにより、感光性ドラム30の周面に付着していたトナー粒子Tが長尺状の基体111側へと転写されることになる。かくして、感光性ドラム30上の潜像が長尺状の基体111上にトナー粒子により再現されることになる。なお、感光性ドラム30の上部には、クリーナ39が設けられており、残存しているトナー粒子Tが除去される。
【0033】
この図7では、1組の感光性ドラム30を例にとって転写原理を示したが、図6に示されている8組の感光性ドラム31,32,33,34,41,42,43,44は、いずれも同じ転写原理に基づいて、各色のトナー粒子を転写する機能を有する。図1〜図3に示すプリペイドカードの場合、おもて面については同一の絵柄を印刷すればよいが、裏面については、暗証領域11に印刷すべき暗証コードおよび管理領域12に印刷すべき管理番号が、各プリペイドカードごとに異なることになる。電子写真式印刷機は、このように、1枚ごとに異なる画像を印刷するのに適している。すなわち、通常の印刷機のように、版を作成して印刷を行うわけではなく、版に相当する感光性ドラム上に印刷を行うたびに新しい潜像を形成しながら印刷を行うので、1枚ごとに異なる画像を印刷することが可能になる。そこで、暗証コードおよび管理番号の部分が各カードごとに異なるように、個々のカードごとに固有の画像データを発生させておき、この画像データを電子写真式印刷機に与えるようにすれば、目的とする印刷結果を得ることができる。
【0034】
こうして、第1のシート110が形成できたら、続いて、第2のシート120および第3のシート130を用いたラミネート加工が行われる。図8は、このようなラミネート加工を行うための装置の基本構成を示す。この例では、第2のシート120は、巻物状の原反125として用意され、第3のシート130は、巻物状の原反135として用意される。より具体的には、第2のシート120および第3のシート130は、長尺状のPETフィルムの片面に、ヒートシール材を塗布してなるシートであり、巻物状の原反125,135は、この長尺状のシートの原反になる。巻物状の原反125,135から引き出された第2のシート120および第3のシート130は、ヒートローラ71,72によって、両ローラ間に挿入された第1のシート110の両面に熱圧着され、ラミネート加工され、ラミネート構造体150が形成されることになる。すなわち、塗布されたヒートシール材が熱により硬化し、接着層として機能するようになる。こうして得られたラミネート構造体150は、カッター80によって所定箇所で切断される。
【0035】
最後に、このラミネート構造体150の所定位置に、スクリーン印刷の手法によって、スクラッチ層Mを形成する。一般に、スクラッチ層Mにふさわしい材料は、ある程度の粘性率を有し、十分な隠蔽性を確保するためには、ある程度の厚みをもった層を形成する必要がある。このような要求を満たすためには、スクリーン印刷が最も適している。
【0036】
なお、プリペイドカードのように比較的面積の小さな媒体に対して印刷を行う場合には、複数枚のカードを所定位置に配置した面付シートを構成し、この面付シート単位で印刷を行うのが効率的である。たとえば、プリペイドカードを5×6のマトリックス状に配置し、30枚のプリペイドカードで1枚の面付シートを構成するようにしておけば、図9に示すような面付シート200が得られることになる。この面付シート200上には、合計30枚のプリペイドカード100が形成されているので、最後に、金型を用いた打ち抜き装置を使って、個々のプリペイドカード100を切断する工程を行えばよい。
【0037】
以上、本発明を図示する実施形態に基づいて説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、この他にも種々の態様で実施可能である。たとえば、上述の実施形態では、暗証領域11の部分にのみスクラッチ層Mを形成したが、管理領域12の部分にも同様にスクラッチ層Mを形成するようにしてもかまわないし、説明領域13の部分にスクラッチ層Mを形成するようにしてもかまわない。また、暗証領域11に表示する暗証コードや管理領域12に表示する管理番号は必ずしも文字にする必要はなく、バーコード(二次元バーコードでもよい。また、固定バーコードでも可変バーコードでもよい。)を印字するようにしてもよい。更に、上述の実施形態では、プリペイドカード100の両面に印刷を行い、両面にフィルム層を形成しているが、いずれか一方の面にのみ印刷を行い、この一方の印刷面上にのみフィルム層を形成するようにしてもかまわない。
【0038】
最後に、暗証領域11に暗証コードを印字する際の好ましい条件について触れておく。既に述べたように、暗証領域11上に表示された暗証コードは、スクラッチ層Mによって隠蔽される。ここで、スクラッチ層Mの隠蔽力が十分であれば、暗証コードが不正な方法で読み取られることはないが、現在用いられている一般的なスクラッチインキでスクラッチ層Mを形成した場合、その隠蔽力は必ずしも完全とは言えない。たとえば、自動車の前照灯のような強烈な光を当てた場合、スクラッチ層Mの上から暗証コードが読み取られる可能性は否定できない。このような不正な読み取り行為に対処するためには、暗証領域11内の文字部(暗証コードの文字の輪郭線内部の領域)と背景部(文字の輪郭線外部の領域)との間に、所定の画像条件を設定しておくのが好ましい。
【0039】
好ましい条件のひとつは、この暗証領域11内の印刷を網点方式で行い、かつ、文字部の濃度と背景部の濃度とをほぼ等しくする、ということである。本願発明者の実験によれば、網点印刷において濃度を同じにしておくと、透過光によって暗証コードが不正に読み取られる可能性を低下させることができる。一般に、濃度値と網点面積率との関係は、マレー・デービス(Murray-Davis)の計算式などにより知られているので、この式を参照しながら、文字部と背景部との濃度がほぼ等しくなるように、各部の網点面積率を設定するようにすればよい(たとえば、Yule,"Principle of Color Reproduction",一見敏男「色彩学入門」などの文献を参照)。
【0040】
もっとも、正当なユーザがスクラッチ層Mを剥離したときに、暗証領域11に表示された暗証コードを十分に読み取ることができるような視認性も必要である。この点については、本願発明者が行った実験の結果、文字部と背景部とにおける色相H,明度V,彩度Cの関係について、次のような条件を設定するのが好ましいことが判明した。
【0041】
まず、明度Vに関しては、不正な方法による読み取りを防止する観点から、文字部と背景部とでほぼ同じ値を設定するのが好ましい。具体的には、各部の明度値Vは、2≦V≦9程度とし、かつ、文字部の明度値と背景部の明度値との差ΔVを1以下に設定するのが好ましい。また、彩度Cに関しては、正当なユーザによる視認性を確保する上から、文字部の彩度と背景部の彩度との間に、できる限り大きな差を設定するのが好ましい。実用上は、彩度差ΔCは、2≦ΔC≦6程度に設定するのが好ましい。一方、色相Hに関しては、正当なユーザによる視認性を確保する上から、文字部の色相と背景部の色相とが補色の関係にあるのが好ましい。たとえば、R−BG,YR−B,Y−PB,GY−P,G−RPなどの色対は、いずれも補色の関係にある。また、各色相のレベルは10以内であればよい。
【0042】
具体的な実例を述べておけば、たとえば、マンセルの表色系(JIS:Z8721,1977年)における赤色Rと、これに対して補色関係にある青緑BGとを、それぞれ文字部および背景部として用いるようにすれば、暗証コードが補色により表示されているので十分な視認性を確保することができる。ここで、彩度を上げれば、視認性を更に向上させることができる。通常、色相H,明度V,彩度Cの三要素は、「H V/C」なる形で表記されるが、この表記方法によると、たとえば、文字部を「5R 2/10」、背景部を「5BG 2/10」に設定すると、不正な読み取りを防止しつつ、正当なユーザによる十分な視認性を確保できる。なお、上述の例では、彩度Cの値が両者ともに10と同一になっているが、彩度Cの値は両者で異ならせてもかまわない。ただし、明度Vの値はほぼ同じに設定する必要がある。
【0043】
【発明の効果】
以上の通り本発明によれば、低コストで安全性の高いプリペイドカードを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係るプリペイドカード100のおもて面を示す平面図である。
【図2】図1に示すプリペイドカード100の裏面を示す平面図である。
【図3】図2に示すプリペイドカード100について、スクラッチ層Mを剥離除去した状態を示す平面図である。
【図4】図2に示すプリペイドカード100を、切断線4−4に沿って切断した断面を示す側断面図である。
【図5】図4に示すプリペイドカード100を構成するラミネート構造体の層構成を示す側断面図である。
【図6】本発明に係るプリペイドカードを作成する工程における両面印刷を行うための印刷機の基本構成を示す図である。
【図7】図6に示す印刷機における感光性ドラムによる潜像転写の原理を説明する原理図である。
【図8】本発明に係るプリペイドカードを作成する工程におけるラミネート加工を行うための装置の基本構成を示す図である。
【図9】面付けにより複数枚のプリペイドカードを作成した例を示す平面図である。
【符号の説明】
11…暗証領域
12…管理領域
13…説明領域
14…絵柄領域
21〜24…ローラ
30…感光性ドラム
31〜34…感光性ドラム
35…発光ダイオードアレイ
36…トナー収容器
37…ローラ
38…電圧印加部
39…クリーナ
41〜44…感光性ドラム
51,52…定着部
60…カッター
71,72…ヒートローラ
80…カッター
100…プリペイドカード
110…第1のシート
111…カード状の基体/長尺状の基体
112…印刷層
113…印刷層
115…巻物状の原反
120…第2のシート
121…フィルム層
122…接着層
125…巻物状の原反
130…第3のシート
131…フィルム層
132…接着層
135…巻物状の原反
150…ラミネート構造体
200…面付シート
T…トナー粒子
Claims (4)
- カード状の基体と、この基体上に形成された印刷層と、この印刷層上に形成された透明なフィルム層と、を備えたカードであって、
カード主面の一部に暗証領域が定義され、前記印刷層の前記暗証領域内の部分によって所定の暗証コードが表示されており、
前記フィルム層上の前記暗証領域部分に、前記暗証コードを隠蔽する機能をもち、かつ、引っ掻くことにより剥離除去可能なスクラッチ層が形成されており、
前記暗証領域内における「暗証コードの文字の輪郭線内部の領域」からなる文字部と、前記暗証領域内における「暗証コードの文字の輪郭線外部の領域」からなる背景部と、について、それぞれの明度値Vを2≦V≦9に設定し、かつ、文字部の明度値と背景部の明度値との差ΔVを1以下に設定したことを特徴とするプリペイドカード。 - 請求項1に記載のカードにおいて、
文字部の彩度値と背景部の彩度値との差ΔCを2≦ΔC≦6に設定したことを特徴とするプリペイドカード。 - 請求項1または2に記載のカードにおいて、
文字部の色相と背景部の色相とが補色の関係にあるように設定し、かつ、それぞれの色相のレベルを10以内に設定したことを特徴とするプリペイドカード。 - 請求項1〜3のいずれかに記載のカードにおいて、
カード主面の暗証領域とは別な一部に管理領域が定義され、前記印刷層の前記管理領域内の部分によって、個々のカードを識別するための管理番号が表示されていることを特徴とするプリペイドカード。
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