JP3828394B2 - 運行管理システムおよびプログラム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の運行状態を管理するために利用する。本発明は、トラック、バス、タクシー、その他多数の業務用車両の運行状態を一元的に管理するために開発された装置であるが、業務用に限らず一般車両の運行管理にも広く利用することができる。
【0002】
【従来の技術】
従来から自動車の運行状況を自動的に記録する装置として、タコグラフが広く知られている。タコグラフは時系列的に走行速度が記録される装置であり、この記録を調べることにより、自動車が走行していた時刻、停車していた時刻がわかる他に、渋滞中の時刻、高速道路走行中の時刻等の運行データを収集することができる。
【0003】
昨今では、単に走行速度を記録するだけではなく、車載された各種センサを用いて様々な運行データを収集することができるようになった。特に、このような運行管理システムを用いて燃費を改善しようという取り組みが行われるようになった。
【0004】
すなわち、同じ性能を有し、同じルートを走行する複数の車両の間で生じる燃費の差は、主に運転者の運転方法に依るところが大きい。そこで、運転者に、現在の運行状況下における燃費の情報を通知するとともに、さらに燃費を改善するためのアドバイスまでも行おうという取り組みがあり、例えば、特開平10−69555号公報では、運転者が急加速または急減速を行った時刻情報を通知することにより、この運転者に急加速または急減速を行わないように促すことができる運行管理システムが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従来の運行管理システムにおける燃費改善のための運転者へのアドバイスとしては、単に、急加速、急減速の低減を促す程度であるが、運転者の運転方法に依存して燃費を悪化させる要因は他にも考えられる。
【0006】
例えば、マニュアル・トランスミッション車を運転者が加速させるときに、アクセルを踏み込んで加速を行いながらシフトアップ操作を行うが、このときに、アクセルの踏み込み度合が過剰であると、シフトアップ操作の度にエンジン回転速度が過回転となり、燃費が劣化する要因となる。
【0007】
あるいは、高速道路走行中に、前車との車間距離が適正でないと、前車に追いつき、近づき過ぎてあわてて減速し、再び加速してまた前車に追いつくという運転が繰り返されることになり、この間、無駄な加速および無駄な減速が繰り返されることになる。本明細書では、このような運転を波状運転と呼ぶ。このような波状運転は、危険であるばかりでなく、燃費を劣化させる要因となる。また、車間距離の確保は一般道においても、安全運転のための大きなポイントであり、省燃費への効果も大きい。
【0008】
このような燃費劣化の要因となり得る様々な運転方法を改善するためのアドバイスを行える運行管理システムは知られていない。また、特開平10−69555号公報にて開示された従来技術では、急加速または急減速の発生時刻を運転者に通知するとしているが、急加速または急減速の明確な定義が示されていない。また、急加速または急減速を定義するためのパラメータは、一般道路走行中と高速道路走行中とでは自ずから異なるはずであり、さらに、トラックの場合には、荷物積載時と空車時とではやはり前記パラメータは異なるはずである。しかし、従来技術では、状況に応じてパラメータを変化させるという技術は開示されていない。
【0009】
本発明は、このような背景に行われたものであって、運転者への燃費改善および安全性向上のための運転方法に関するアドバイスを木目細かく行うことができる運行管理システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の第一の観点は、車両に、車速およびエンジン回転速度を含む車両の運行データを検出する手段と、この検出する手段により検出された前記運行データを記憶する記録媒体とを含む車載装置を備え、事業所に、この記録媒体の記録内容を読み取る手段と、この読み取る手段により記録媒体から読み取られた前記検出する手段により検出された前記運行データに基づき経済運転状況を分析する手段と、この分析する手段による分析結果を出力する手段とを含む事業所装置を備えた運行管理システムである。
【0011】
ここで、本発明の特徴とするところは、前記分析する手段は、車両の波状運転の回数を計数する第一計数手段と、シフト操作に伴い車両のエンジン回転速度が過回転となった回数を計数する第二計数手段と、自車両と他車両との車間距離が不適正となった時間を計数する第三計数手段とを備え、前記出力する手段は、前記第一、第二、第三計数手段の計数結果をそれぞれ表示する手段を備えたところにある。
【0012】
これにより、車両の高速時の無駄な加速または無駄な減速の繰り返しの他に、シフトアップ操作に伴うエンジン回転速度の過回転および車間距離の不適正についても運転者に通知を行い、改善を促すことができる。したがって、運転者への燃費改善および安全性向上のための運転方法に関するアドバイスを木目細かく行うことができる。
【0013】
前記表示する手段は、一人の運転者についてその始業時から終業時までの時間にわたり前記第一、第二、第三計数手段の計数結果を一枚の紙面にグラフ形式で印刷表示する印刷表示手段を含むことが望ましい。これにより、運行管理者および運転者は燃費改善および安全性向上のための問題点を自ら見出すことができる。
【0014】
さらに、前記印刷表示手段は、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について時間軸上に表示された車速およびエンジン回転速度を併せて印刷表示する手段を含むことが望ましい。これにより、運転者は、前記第一、第二、第三計数手段の計数結果と当該始業時から就業時までの時間について時間軸上に表示された車速およびエンジン回転速度とを参照することにより、本日の業務全般についての燃費改善および安全性向上のための反省点を検討することができる。
【0015】
さらに、前記印刷表示する手段は、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について、単位燃料当たりの走行距離、アイドリング時間およびそのアイドリング時間中の消費燃料、および渋滞走行時間(所定速度以下の走行時間)を併せて印刷表示する手段を含むことが望ましい。これにより、運転者は本日の燃費に関する実績を的確に把握して燃費改善のための指標を得ることができる。
【0016】
このように印刷された帳票は、運転者に燃費改善および安全性向上の資料として通知されるとともに、運転者の業務評価記録として利用することができる。
【0017】
さらに詳しくは、前記表示する手段として、前記第一計数手段は、前記検出する手段により検出された時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量を計算する手段と、この計算する手段の計算結果と前記時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量の基準値A1またはA2とをそれぞれ比較する手段と、この比較する手段の比較結果を参照し前記計算する手段の計算結果が前記基準値を超えたことを示すときには車両の波状運転と見なすべき無駄な加速または無駄な減速と判定する手段と、この判定する手段の判定結果を参照しその無駄な加速または無駄な減速の状態が高速走行区間において単位時間間隔T1において1回でもあればT1を波状運転時間として計数する手段を備えることが望ましい。
【0018】
波状運転度合(%)=[(波状運転と見なされた単位時間間隔T1の合計値)/(高速区間の走行時間の合計値)]×100
としてグラフデータ表示する手段を備えることが望ましい。
【0019】
さらに、前記時間間隔Dt、前記基準値A1およびA2、前記単位時間間隔T1を含むパラメータの一部または全部を車速およびまたは積載荷重に応じて変化させる手段を備えることが望ましい。
【0020】
これにより、波状運転の定義をパラメータを変化させることによって適宜変更させることができる。例えば、空車時に設定された基準値A1およびA2と比較して、荷物積載時では、基準値A1およびA2を空車時よりも小さく設定したり、車速に応じて基準値A1およびA2を変化させることにより、それぞれの道路事情あるいは運用形態に沿った定義を行うことができる。また、空車であるか荷物を積載しているかは、軸重計その他のセンサによって検出することができる。
【0021】
前記第二計数手段は、前記検出する手段により検出された前記エンジン回転速度を観測する手段と、この観測する手段の観測結果を参照しエンジン回転速度のオーバー基準値Nuを超える極大値Npを特定する手段と、この特定する手段により極大値Npが特定された時刻から後の所定時間内の前記観測する手段の観測結果を参照しエンジン回転速度の極小値Npnを特定する手段と、前記極大値Npと前記極小値Npnとの差DNが段差基準値Nd以上である状況が発生した回数を計数する手段とを備えることが望ましい。
【0022】
これにより、シフト操作に伴い発生するエンジンの過回転を検出し、その発生回数を計数することができる。
【0023】
前記オーバー基準値Nuのパラメータは車速およびまたは積載荷重に応じて変化させる手段を備えることが望ましい。
【0024】
これにより、シフト操作に伴う車両のエンジン回転速度の過回転の定義をパラメータを変化させることによって適宜変更することができる。例えば、高速道路の荷物積載時に設定されたオーバー基準値Nuと比較して、一般道路の空車時では、オーバー基準値Nuを小さく設定することにより、それぞれの道路事情あるいは運用形態に沿った定義を行うことができる。
【0025】
なお、高速道路か一般道路かで定義を変更すると説明したが、例えば、車両の平均速度によって変更することにすれば、車速センサにより自動的にパラメータを変更して定義を変更することができる。この場合では、高速道路での渋滞中でも定義を変更することができる。また、空車であるか荷物を積載しているかは、軸重計その他のセンサによって検出することができる。
【0026】
前記第三計数手段は、車間距離検出装置から刻々と得られる車間距離が基準車間距離M1以下であった時間を積算して車速V1に対応させて計数する手段を備えることが望ましい。
【0027】
車間距離危険度合(%)=[(基準車間距離M1以下であった時間累計)/(基準車速V1以上の車速での走行時間累計)]×100
としてグラフデータ表示する手段を備えることが望ましい。M1、V1はパラメータでM1は車速別に、V1は運転管理の目的に応じて設定する。
【0028】
これにより前車との車間距離が不適正であることに起因する無駄な加速と無駄な減速とが繰り返し行われている状態であることと安全性が低い状態であることを判定することができる。
【0029】
本発明の第二の観点はプログラムであって、情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、運行管理システムにおける車載装置に相応する機能として、車速およびエンジン回転速度を含む車両の運行データを検出する機能と、この検出する機能により検出された前記運行データを記録媒体に記憶させる機能とを実現させ、運行管理システムにおける事業所装置に相応する機能として、前記記録媒体の記録内容を読み取る機能と、この読み取る機能により前記記録媒体から読み取られた前記検出する機能により検出された前記運行データに基づき経済運転状況を分析する機能と、この分析する機能による分析結果を出力する機能とを実現させるプログラムである。
【0030】
ここで、本発明の特徴とするところは、前記分析する機能として、車両の波状運転の回数を計数する第一計数機能と、シフト操作に伴い車両のエンジン回転速度が過回転となった回数を計数する第二計数機能と、自車両と他車両との車間距離が不適正となった時間を計数する第三計数機能とを実現させ、前記出力する機能として、前記第一、第二、第三計数機能の計数結果をそれぞれ表示する機能を実現させるところにある。
【0031】
前記表示する機能として、前記第一計数機能は、前記検出する機能により検出された時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量を計算する機能と、この計算する機能の計算結果と前記時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量の基準値A1またはA2とをそれぞれ比較する機能と、この比較する機能の比較結果を参照し前記計算する機能の計算結果が前記基準値を超えたことを示すときには車両の波状運転と見なすべき無駄な加速または無駄な減速と判定する機能と、この判定する機能の判定結果を参照しその無駄な加速または無駄な減速の状態が高速走行区間においての単位時間間隔T1において1回あればT1を波状運転時間として計数する機能とを実現させることが望ましい。
【0032】
前記第二計数機能として、前記検出する機能により検出された前記エンジン回転速度を観測する機能と、この観測する機能の観測結果を参照しエンジン回転速度のオーバー基準値Nuを超える極大値Npを特定する機能と、この特定する機能により極大値Npが特定された時刻から後の所定時間内の前記観測する機能の観測結果を参照しエンジン回転速度の極小値Npnを特定する機能と、前記極大値Npと前記極小値Npnとの差DNが段差基準値Nd以上である状況が発生した回数を計数する機能とを実現させることが望ましい。
【0033】
前記第三計数機能として、車間距離検出装置から刻々と得られる車間距離が基準車間距離M1以下であった時間を積算して車速V1に対応させて計数する機能を実現させることが望ましい。
【0034】
前記基準値A1およびA2、前記オーバー基準値Nuを含むパラメータの一部または全部を車速およびまたは積載荷重に応じて変化させる機能を実現させることが望ましい。
【0035】
前記基準車間距離M1は車速別に、基準速度V1は運行管理の目的に応じて設定することが望ましい。
【0036】
本発明のプログラムは、前記情報処理装置が読取可能な記録媒体に記録されることにより、前記情報処理装置は、この記録媒体を用いて本発明のプログラムをインストールすることができる。あるいは、本発明のプログラムを保持するサーバからネットワークを介して直接前記情報処理装置に本発明のプログラムをインストールすることもできる。
【0037】
これにより、コンピュータ装置等の情報処理装置により、運転者への燃費改善のための運転方法に関するアドバイスを木目細かく行うことができる運行管理システムを実現することができる。
【0038】
【発明の実施の形態】
本発明実施例の運行管理システムを図1ないし図9を参照して説明する。図1は本発明実施例の運行管理システムにおける車載装置のブロック構成図である。図2は本発明実施例の運行管理システムにおける事業所装置のブロック構成図である。図3は本発明実施例の運行管理システムにおける出力帳票を説明するための図である。図4は基準値以上の加速を検出するロジックを説明するための図であり、横軸に時間をとり、縦軸に車速をとる。図5は基準値以上の減速を検出するロジックを説明するための図であり、横軸に時間をとり、縦軸に車速をとる。図6は波状運転時間を検出するロジックを説明するための図であり、横軸に時間をとり、縦軸に車速をとる。図7および図8はシフトアップ操作におけるエンジン過回転を検出するロジックを説明するための図であり、横軸に時間をとり、縦軸にエンジン回転速度をとる。図9は車間距離不適正時間の検出手順を示すフローチャートである。図10はパラメータ変更手順を示すフローチャートである。図11はパラメータの設定基準の一例を示す図である。
【0039】
本発明は、図1に示すように、車両に、車速およびエンジン回転速度を含む車両の運行データを各種センサ2およびECU(Electronic Control Unit)3および車間距離検出装置12により検出する運行データ検出部1と、この運行データ検出部1により検出された前記運行データを記憶するICカード5とを含む車載装置を備え、図2に示すように、事業所に、このICカード5の記録内容を読み取るICカード読取部6と、このICカード読取部6によりICカード5から読み取られた運行データ検出部1により検出された前記運行データに基づき経済運転状況を分析するデータ分析部7と、このデータ分析部7による分析結果を出力するデータ出力部8とを含む事業所装置を備えた運行管理システムである。
【0040】
ここで、本発明の特徴とするところは、データ分析部7は、車両の波状運転時間を計数する波状運転時間計数部9と、シフト操作に伴い車両のエンジン回転速度が過回転となった回数を計数する過回転回数計数部10と、自車両と他車両との車間距離が不適正となった時間を車速に対応させて計数する車間距離不適正運転時間計数部11とを備え、データ出力部8は、図3に示すように、波状運転時間計数部9、過回転回数計数部10、車間距離不適正運転時間計数部11の計数結果をそれぞれ帳票として表示するところにある。
【0041】
すなわち、図3(5)〜(7)に示すように、データ出力部8は、一人の運転者についてその始業時から終業時までの時間にわたり波状運転時間計数部9、過回転回数計数部10、車間距離不適正運転時間計数部11の計数結果を一枚の紙面にグラフ形式で印刷表示する。さらに、図3(1)に示すように、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について時間軸上に表示された車速およびエンジン回転速度を併せて印刷表示する。さらに、図3(2)〜(4)に示すように、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について、単位燃料当たりの走行距離である運行燃費(2)、アイドリング時間およびそのアイドリング時間中の消費燃料(4)、および渋滞走行時間(所定速度以下の走行時間)(3)を併せて印刷表示する。
【0042】
さらに詳しくは、データ出力部8は、波状運転時間計数部9により計数された
波状運転度合(%)=[(波状運転と見なされた単位時間間隔T1の合計値)/(高速運転時間の合計値)]×100
としてグラフデータ表示する。図3(5)の例では、200分の高速運転時間に対して波状運転として見なされる時間は60分である。この場合の波状運転度合は30%であり、この度合をグラフとして表示する。
【0043】
また、過回転回数計数部10の計数結果をNsとするときに、1時間当り(/h)のエンジン回転速度過回転回数を評価基準値Nmと対比させて
Ns/h/Nm×100
としてグラフデータ表示する。図3(6)の例では、1時間に3回のエンジンの過回転(3回/h)が計数されており、評価基準値Nmを1時間当り15回のエンジン過回転(15回/h)としている。この場合のシフトアップ操作時エンジン過回転度合は20%であり、この度合をグラフとして表示する。
【0044】
車間距離不適正運転時間計数部11の計数結果の基準車速V1以上での走行時間トータル当りの車間距離危険度合(%)を
(M1以上の累積時間)/(V1以上の累積時間)
の比としてグラフデータ表示する。図3(7)の例では、350分中280分が計数されている。この場合の車間距離不適正運転度合は80%であり、この度合をグラフとして表示する。
【0045】
次に、各計数部における計算手順を説明する。波状運転時間計数部9は、図4および図5に示すように、運行データ検出部1により検出された時間間隔Dtにわたる車速の増加量DVまたは減少量DVを計算し、この計算結果と時間間隔Dtにわたる車速の増加量DVまたは減少量DVの基準値A1またはA2とをそれぞれ比較し、この比較結果を参照し前記計算結果が前記基準値を超えたことを示すときには車両の波状運転の一定基準以上の無駄な加速または無駄な減速と判定する。すなわち、時間間隔Dtにおける前回を車速vn+1とし、今回の車速をvnとすると、
DV=vn+1−vn>0
であり、
|DV|>A1
であれば、基準値以上の無駄な加速と判定され、また、
DV=vn+1−vn<0
であり、
|DV|>A2
であれば、基準値以上の無駄な減速と判定される。さらに、この判定結果を図6に示すように、その基準以上の無駄な加減速が高速走行区間において単位時間間隔T1に1回でも発生していればT1を波状運転が発生した時間として計数する。
【0046】
シフトアップ操作を行うと、図7に示すように、短時間にエンジン回転速度の急激な増減が繰り返される。過回転回数計数部10は、これを観測してシフトアップ操作時のエンジン回転速度の過回転を検出する。すなわち、運行データ検出部1により検出されたエンジン回転速度を観測し、図8に示すように、この観測結果を参照しエンジン回転速度のオーバー基準値Nuを超える極大値Npを特定し、極大値Npが特定された時刻から後の所定時間内の観測結果を参照しエンジン回転速度の極小値Npnを特定し、極大値Npと極小値Npnとの差DNが段差基準値Nd以上である状況が発生した回数を計数する。実際には、図8に示すように、極大値Npが特定された後の所定時間内の観測の結果、値Np+1とNp+2とが観測された場合に、この二つの値Np+1とNp+2とを比較して小さい方の値Np+1を極小値Npnとする。
【0047】
車間距離不適正運転時間計数部11は、図9に示すように、運行データ検出部1により検出された車速データと車間距離データとから単位時間毎に車速に応じた基準車間距離M1を算出し(S1、S2)、車間距離データと前記M1とを比較して車間距離データがM1より小さければ不適正と見なし(S3)、当該単位時間を不適正車間距離時間として積算値を計数する(S4)。すなわち、高速道路等で車両が複数の前車を追い越しつつ先を急ぐ運転を行う場合には、車両は、無駄な加速を続けて車間距離が不適正になる距離まで前車と接近し、今度は無駄な減速をして車間距離を保つかあるいは離そうとする。さらに車両は追い越し車線等に進路変更して加速し、今度は別の前車に追いつき、また、ここで減速して進路変更するといったことを繰り返すことになる。このような無駄な加減速の発生を観測することにより車間距離不適正時間を検出する。
【0048】
また、データ分析部7は、図10に示すように、基準値A1およびA2、基準値Nuを含むパラメータの一部または全部を車速およびまたは積載荷重に応じて変化させる。
【0049】
すなわち、車速データに基づき平均速度を演算し(S11)、その結果、分析対象となる走行区間が高速走行区間であるか否かを判定し(S12)、高速走行区間であると判定され、そのときの荷物積載状態が空車ならば(S13)、車両はスピードを出し易く、最も加速性が高い状態であることがわかるので、クラス#1として、波状運転を検出するための基準値A1およびA2を“大”として設定する。また、加速性が高いことからシフトアップ操作に伴うエンジン回転速度の増加は、さほど大きくないことが予想されるので、オーバー基準値Nuを“中”として設定する(S14)。高速走行区間であっても(S12)、荷物積載していれば(S13)、車両は空車時と比較して加速性が低くなるので、クラス#2として、波状運転を検出するための基準値A1およびA2は“小”として設定する。また、高速走行中であり加速性が低いことからシフトアップ操作に伴うエンジン回転速度の増加は、きわめて大きくなることが予想されるので、オーバー基準値Nuを“特大”として設定する(S15)。また、高速走行区間ではなく(S12)、空車でなければ(S16)、車両は、はじめからスピードを出しておらず、また、加速性も低い状態であることがわかるので、クラス#3として、波状運転を検出するための基準値A1およびA2は“中”として設定する。また、加速性が低いことからシフトアップ操作に伴うエンジン回転速度の増加は、大きくなることが予想されるが高速走行区間と比較すると車速が低い状態なのでオーバー基準値Nuを高速走行区間の“特大”と比較して多少小さ目の“大”に設定する(S17)。また、高速走行区間でなくとも(S12)、空車であれば(S16)、車両は荷物積載時と比較して加速性が高くなるので、クラス#4として、波状運転を検出するための基準値A1およびA2を“特大”として設定する。また、加速性が高いことからシフトアップ操作に伴うエンジン回転速度の増加は小さいと予想されるのでオーバー基準値Nuは“小”として設定する(S18)。このようにして、車両の走行状態に合わせたパラメータ設定を行うことができるので、車両の走行状態に合わせたデータ分析を行うことができる。
【0050】
パラメータの設定基準の一例を図11に示す。図11に示す例では、◎が“特大”、〇が“大”、△が“中”、×が“小”を表す。また、波状運転は、主に高速道路上を走行中に発生するので、その検出については、高速走行区間に限定してもよい。さらに、時間間隔Dt、単位時間間隔T1についても適宜変更することにより、検出精度および処理時間を所望する値に調整することができる。また、オーバー基準値Nuとともに段差基準値Ndを可変してもよい。
【0051】
本発明の運行管理システムは情報処理装置としてのコンピュータ装置を用いて実現することができる。すなわち、コンピュータ装置にインストールすることにより、そのコンピュータ装置に、図1に示すような運行管理システムにおける車載装置に相応する機能として、車速およびエンジン回転速度を含む車両の運行データを検出する運行データ検出部1に相応する機能と、この検出する機能により検出された前記運行データをICカード5に記憶させる運行データ収集部4に相応する機能とを実現させ、図2に示すような運行管理システムにおける事業所装置に相応する機能として、ICカード5の記録内容を読み取るICカード読取部6に相応する機能と、この読み取る機能によりICカード5から読み取られた前記検出する機能により検出された前記運行データに基づき経済運転状況を分析するデータ分析部7に相応する機能と、この分析する機能による分析結果を出力するデータ出力部8に相応する機能とを実現させるプログラムをコンピュータ装置にインストールすることによりこのコンピュータ装置を用いて本発明の運行管理システムを実現することができる。
【0052】
本発明のプログラムの特徴とするところは、データ分析部7に相応する機能として、車両の波状運転の回数を計数する波状運転時間計数部9に相応する第一計数機能と、シフト操作に伴い車両のエンジン回転速度が過回転となった回数を計数する過回転回数計数部10に相応する第二計数機能と、自車両と他車両との車間距離が不適正となった時間を計数する車間距離不適正運転時間計数部11に相応する第三計数機能とを実現させ、前記出力する機能として、図3に示すように、前記第一、第二、第三計数機能の計数結果をそれぞれ表示する機能を実現させるところにある。
【0053】
前記表示する機能として、前記第一計数機能は、前記検出する機能により検出された時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量を計算する機能と、この計算する機能の計算結果と前記時間間隔Dtにわたる車速の増加量または減少量の基準値A1またはA2とをそれぞれ比較する機能と、この比較する機能の比較結果を参照し前記計算する機能の計算結果が前記基準値を超えたことを示すときには車両の波状運転と見なすべき無駄な加速または無駄な減速と判定する機能と、この判定する機能の判定結果を参照しその無駄な加速または無駄な減速の状態が高速走行区間での単位時間間隔T1において1回でもあればT1を波状運転時間として計数する機能とを実現させる。
【0054】
前記第二計数機能として、前記検出する機能により検出された前記エンジン回転速度を観測する機能と、この観測する機能の観測結果を参照しエンジン回転速度のオーバー基準値Nuを超える極大値Npを特定する機能と、この特定する機能により極大値Npが特定された時刻から後の所定時間内の前記観測する機能の観測結果を参照しエンジン回転速度の極小値Npnを特定する機能と、前記極大値Npと前記極小値Npnとの差DNが段差基準値Nd以上である状況が発生した回数を計数する機能とを実現させる。
【0055】
前記第三計数機能として、車間距離検出装置から刻々と得られる車間距離が基準車間距離M1以下であった時間を積算して車速V1に対応させて計数する機能を実現させる。
【0056】
さらに、前記基準値A1およびA2、前記基準値Nuを含むパラメータの一部または全部を車速およびまたは積載荷重に応じて変化させる機能を実現させる。前記基準車間距離M1は車速別に、基準車速V1は運行管理の目的に応じて設定する。
【0057】
本発明のプログラムは、コンピュータ装置が読取可能な記録媒体に記録されることにより、コンピュータ装置は、この記録媒体を用いて本発明のプログラムをインストールすることができる。あるいは、本発明のプログラムを保持するサーバからネットワークを介して直接コンピュータ装置に本発明のプログラムをインストールすることもできる。
【0058】
これにより、コンピュータ装置により、運転者への燃費改善および安全性向上のための運転方法に関するアドバイスを木目細かく行うことができる運行管理システムを実現することができる。
【0059】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、運転者への燃費改善および安全性向上のための運転方法に関するアドバイスを木目細かく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の運行管理システムにおける車載装置のブロック構成図。
【図2】本発明実施例の運行管理システムにおける事業所装置のブロック構成図。
【図3】本発明実施例の運行管理システムにおける出力帳票を説明するための図。
【図4】加速を検出するロジックを説明するための図。
【図5】減速を検出するロジックを説明するための図。
【図6】車間距離不適正時間を検出するロジックを説明するための図。
【図7】シフトアップ操作におけるエンジン過回転を検出するロジックを説明するための図。
【図8】シフトアップ操作におけるエンジン過回転を検出するロジックを説明するための図。
【図9】車間距離不適正時間検出の手順を示すフローチャート。
【図10】パラメータ変更手順を示すフローチャート。
【図11】パラメータの設定基準の一例を示す図。
【符号の説明】
1 運行データ検出部
2 各種センサ
3 ECU
4 運行データ収集部
5 ICカード
6 ICカード読取部
7 データ分析部
8 データ出力部
9 波状運転時間計数部
10 過回転回数計数部
11 車間距離不適正運転時間計数部
12 車間距離検出装置
Claims (7)
- 車両に、車速およびエンジン回転速度を含む車両の運行データを検出する手段と、この検出する手段により検出された前記運行データを記憶する記録媒体とを含む車載装置を備え、事業所に、この記録媒体の記録内容を読み取る手段と、この読み取る手段により記録媒体から読み取られた前記検出する手段により検出された前記運行データに基づき経済運転状況を分析する手段と、この分析する手段による分析結果を出力する手段とを含む事業所装置を備えた運行管理システムにおいて、
前記分析する手段は、エンジンの回転速度が所定の基準値を越えて極大値に到達した時点から所定時間以内に前記極大値から所定の段差減速値以上低下してある極小値になった状況が発生したことをシフトアップ操作にともなうエンジンの過回転が発生したと判定する手段と、判定された過回転の回数を計数する手段とを含み、
前記判定する手段は、前記基準値を車両の積載量を検出するセンサの出力に基づいて重量が大きいときは前記基準値を小さくし、重量が軽いときは前記基準値を大きく設定する手段を含み、
前記出力する手段は、前記計数した過回転の回数を表示する手段を備えた
ことを特徴とする運行管理システム。 - 前記基準値を車両の平均速度により平均速度が大きいときは基準値を大きくし、平均速度が小さいときは前記基準値を小さく設定する請求項1記載の運行管理システム。
- 前記分析する手段は、自車両と他車両との車間距離が不適正となった回数を計数する手段を含み、
前記出力する手段は、前記車間距離が不適正となった回数をあわせて表示する手段を含む請求項1または2記載の運行管理システム。 - 請求項1記載の分析する手段を備え、前記出力する手段は、一人の運転者についてその始業時から終業時までの時間にわたり前記波状運転の計数結果、過回転の計数結果、アイドリング時間およびアイドリング時間中の消費燃料の計数結果を一枚の紙面にグラフ形式で印刷表示する印刷表示手段を含む運行管理システム。
- 前記出力する手段は、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について時間軸上に表示された車速およびエンジン回転速度をあわせて印刷表示する手段を含む請求項1ないし4のいずれか記載の運行管理システム。
- 前記出力する手段は、前記一枚の紙面に前記始業時から終業時までの時間について、単位燃料当たりの走行距離をあわせて印刷表示する手段を含む請求項1ないし5のいずれか記載の運行管理システム。
- 情報処理装置にインストールすることにより、その情報処理装置に、請求項1ないし6のいずれかに記載の運行管理システムに相応する機能を実現させることを特徴とするプログラム。
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