JP3826515B2 - 内燃機関の触媒劣化診断装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の触媒劣化診断装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
気筒内の混合気の空燃比が非常に大きいために混合気の空燃比が理論空燃比であるときよりも多量の酸素が排気ガス中に含まれている状態(以下、リーン状態)において、炭化水素(以下、HC)を触媒表面に吸着してHCの活性種を生成し、このHCの活性種とNOX とを反応させることにより内燃機関から排出された窒素酸化物(以下、NOX )を浄化するNOX 選択還元触媒(以下、NOX 触媒)が公知である。通常、リーン状態の排気ガス中にHCは殆ど含まれていないため、NOX 触媒には浄化用のHCが供給される。
【0003】
ところで、NOX 触媒を使用しているうちに例えばNOX 触媒に供給した浄化用HCが触媒表面に付着してNOX 触媒が劣化する。劣化したNOX 触媒ではNOX 浄化作用が行われない。このため、NOX 触媒が劣化しているか否かをNOX 触媒の使用中に診断する必要がある。例えば、特開平7−54641号では、NOX 触媒に流入する排気ガス中のNOX 濃度とNOX 触媒から流出する排気ガス中のNOX 濃度との比からNOX 触媒におけるNOX 浄化率を算出し、この算出されたNOX 浄化率が機関負荷に応じて変化する浄化率判定値より小さくなったときにNOX 触媒が劣化していると診断している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、一般的にNOX 触媒におけるNOX 浄化率はその触媒温度に応じて変化する。したがって特開平7−54641号に開示されているようにNOX 浄化率を触媒温度に直接は関係のない機関負荷に応じて変化する浄化率判定値と比較しても、正確にNOX 触媒の劣化を診断することはできない。したがって本発明の目的は触媒の劣化を正確に診断することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために一番目の発明によれば、排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、触媒が劣化していると診断されたときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備する。
【0006】
上記課題を解決するために二番目の発明によれば、排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、前記触媒が劣化していると診断され且つ該触媒の温度が該触媒が排気ガスを浄化することができる温度範囲内にあるときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備する。
【0007】
上記課題を解決するために三番目の発明によれば、排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、前記触媒が劣化していると診断され且つ該触媒の温度が該触媒が排気ガスを浄化することができる温度範囲内にあって排気ガスを浄化するのに還元剤を消費せずに燃焼させてしまう温度以下にあるときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備する。
【0011】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の実施形態の内燃機関の構成を示す図である。図1において、1は機関本体、♯1、♯2、♯3および♯4はそれぞれ機関本体1内に形成された第一気筒、第二気筒、第三気筒および第四気筒、2a、2b、2cおよび2dはそれぞれ対応する気筒♯1〜♯4内に機関駆動用燃料および排気ガス浄化用燃料を供給するための第一燃料噴射弁、第二燃料噴射弁、第三燃料噴射弁および第四燃料噴射弁、3はインテークマニホルド4を介して機関本体1に接続された吸気通路である。インテークマニホルド4には各気筒♯1〜♯4に導入される吸入空気量を算出するために吸入空気圧を検出するための吸気圧センサ5が取り付けられる。
【0012】
また、本実施形態の内燃機関はクランク角を検出するクランク角センサ6を具備する。クランク角センサ6により検出されたクランク角に基づいて機関回転数が算出される。さらに本実施形態の内燃機関はアクセルペダル(図示せず)の踏込量を検出するアクセル踏込量センサ19を具備する。各燃料噴射弁2a〜2dはこれら燃料噴射弁2a〜2dに共通の燃料分配手段、すなわちコモンレール30に接続される。コモンレール30はポンプPを介して燃料タンク31に接続される。コモンレール30内にはポンプPにより予め定められた圧力に加圧された燃料が蓄積される。また、コモンレール30にはコモンレール30内の燃料の圧力を検出するための圧力検出手段として燃圧センサ32が取り付けられる。
【0013】
第一気筒♯1、第二気筒♯2、第三気筒♯3および第四気筒♯4にはそれぞれ対応して第一排気枝管7a、第二排気枝管7b、第三排気枝管7cおよび第四排気枝管7dが接続される。第一排気枝管7aと第二排気枝管7bと第四排気枝管7dとは機関本体1の下流側の上流側合流部8において合流せしめられ、集合管9に接続される。集合管9と第三排気枝管7cとは上流側合流部8のさらに下流側の下流側合流部10において互いに略平行な方向に排気ガスを排出するように合流せしめられる。このように排気系を構成することにより、集合管9から排出された排気ガスが第三排気ガス7c内に流入することが抑制される。また、第三排気枝管7cから排出された排気ガスが集合管9内に流入することが抑制される。なお、本明細書において『上流』および『下流』とは排気ガスの流れに沿って用いる。
【0014】
本実施形態の内燃機関は吸入される空気量を増大するために吸入空気を過給する過給機11を具備する。過給機11はインテークマニホルド4の上流側の吸気通路3内に配置された吸気側タービンホイール11aと、下流側合流部10の下流側の排気通路20内に配置された排気側タービンホイール11bとを具備する。本実施形態では各気筒から排出された排気ガスが合流する位置に排気側タービンホイール11bが配置されているため、排気側タービンホイール11bを通過する排気ガス量が多く、過給機11の過給効果を最大限に維持することができる。また、下流側合流部10が排気側タービンホイール11bの近傍に位置し、且つ、排気側タービンホイール11bの慣性回転運動により排気ガスが下流側への排出されるため、集合管9から排出された排気ガスが第三排気ガス7c内に流入することがさらに抑制され、また、第三排気枝管7cから排出された排気ガスが集合管9内に流入することがさらに抑制される。
【0015】
吸気側タービンホイール11aと排気側タービンホイール11bとは一つのシャフト11cにより互いに連結される。排気側タービンホイール11bはこの排気側タービンホイール11bの回転面と平行な方向から排気ガスを受けて回転せしめられ、回転面に対して垂直な方向へ向けて排気ガスを排出する。一方、吸気側タービンホイール11aは排気側タービンホイール11bの回転に伴い回転せしめられ、この吸気側タービンホイール11aの回転面に対して垂直な方向から空気を引き込み、回転面と平行な方向へ向けて吸入空気を送りだす。
【0016】
排気側タービンホイール11bの下流側の排気通路20には内燃機関から排出される窒素酸化物(以下、NOX )を浄化するための排気浄化触媒12が配置される。本実施形態の排気浄化触媒12は、気筒内の混合気の空燃比が非常に大きいために混合気の空燃比が理論空燃比であるときよりも多量の酸素が排気ガス中に含まれている状態(以下、リーン状態)において、還元剤として炭化水素(以下、HC)を触媒表面に吸着してHCの活性種を生成し、このHCの活性種とNOX とを反応させることによりNOX を浄化するNOX 選択還元触媒(以下、NOX 触媒)である。
【0017】
NOX 触媒12はその触媒温度に応じてNOX 浄化率が変化する(図8参照)。すなわち触媒温度が下限温度T1を越えると徐々にNOX 浄化率が上昇し、最適温度TmにおいてNOX 浄化率が最も高くなり、最適温度Tmを越えると徐々にNOX 浄化率が低下し、上限温度T2を越えるとNOX 触媒12において浄化作用が行われなくなる。このようにNOX 触媒12は浄化作用を行うことができる適正温度範囲を有する。
【0018】
NOX 触媒12の上流端部分にはこの上流端部分の温度(以下、上流端温度)を検出する上流側温度センサ13が配置され、NOX 触媒12の下流端部分にはこの下流側部分の温度(以下、下流端温度)を検出する下流側温度センサ14が配置される。また、NOX 触媒12の上流側の排気通路20にはNOX 触媒12に流入する排気ガス中のNOX 濃度(以下、上流側NOX 濃度)を検出する上流側NOX 濃度センサ21が配置され、NOX 触媒12の下流側の排気通路20にはNOX 触媒12から流出する排気ガス中のNOX 濃度(以下、下流側NOX 濃度)を検出する下流側NOX 濃度センサ22が配置される。
【0019】
第四排気枝管7dには排気ガスを吸入空気中に導入するための排気循環管15が接続される。排気循環管15の他端はインテークマニホルド4に接続される。排気循環管15には吸入空気中への排気ガスの導入の有無を制御するための排気循環弁16が配置される。排気循環弁16は三方弁17を介して吸引ポンプ18および大気に連通される。排気循環弁16は機関運転状態に応じて開閉制御される。三方弁17により排気循環弁16と大気とが連通せしめられると排気循環弁16内に大気圧がかかり排気循環弁16は閉弁せしめられ、排気ガスは吸入空気中に導入されない。一方、三方弁17により排気循環弁16と吸引ポンプ18とが連通せしめられると排気循環弁16内に負圧がかかり排気循環弁16が開弁せしめられ、排気ガスが吸入空気中に導入される。
【0020】
気筒内におけるNOX 生成量は燃焼時の火炎伝播速度が速いほど多くなる。また、気筒内におけるNOX 生成量は燃焼時の燃焼温度が高いほど多くなる。一方、不活性ガスは燃焼時の火炎伝播速度を遅くする。したがって燃焼時の火炎伝播速度は吸入空気中の不活性ガス量が多いほど遅くなる。また、不活性ガスは燃焼時の熱を吸収する。したがって燃焼時の燃焼温度は吸入空気中の不活性ガス量が多いほど低くなる。このため、二酸化炭素や水分といった不活性ガスを含んだ排気ガスが吸入空気に導入されると、燃焼時の火炎伝播速度が遅くなり且つ燃焼時の燃焼温度が低く維持されるため、気筒内の燃焼に伴うNOX の生成が抑制される。
【0021】
図1において制御装置(ECU)40はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス41を介して相互に接続されたCPU(マイクロプロセッサ)42、ROM(リードオンリーメモリ)43、RAM(ランダムアクセスメモリ)44、B−RAM(バックアップRAM)45、入力ポート46、出力ポート47およびクロック発生器48を具備する。吸気圧センサ5、上流側温度センサ13、下流側温度センサ14、上流側NOX 濃度センサ21、下流側NOX 濃度センサ22および燃圧センサ32の出力電圧はそれぞれ対応するAD変換器49を介して入力ポート46に入力される。また、クランク角センサ6の出力電圧は直接入力ポート46に入力される。さらにアクセル踏込量センサ19の出力電圧は対応するAD変換器49を介して入力ポート46に入力される。一方、出力ポート47はそれぞれ対応する駆動回路50を介して各燃料噴射弁2a〜2dおよび三方弁17に接続される。
【0022】
次に本実施形態の内燃機関の作動について説明する。初めに各気筒♯1〜♯4の圧縮行程の予め定められたクランク角度においてコモンレール30内の燃圧が燃圧センサ32により検出される。次に各気筒♯1〜♯4の圧縮上死点の直前において予噴射が実行され、各燃料噴射弁2a〜2dから予め定められた量の燃料が噴射される。予噴射は気筒内におけるNOX 生成量の低減および気筒において生じる騒音の低減のために実行される噴射である。
【0023】
次に予噴射により供給された燃料が気筒内において着火した後の圧縮上死点付近の予め定められたクランク角度において主噴射が実行される。主噴射は機関を駆動するための燃料を供給するために実行される噴射である。主噴射により各燃料噴射弁2a〜2dから噴射すべき主噴射燃料量はアクセル踏込量センサ19により検出されたアクセルペダル踏込量に基づいて決定され、アクセルペダル踏込量が大きくなるほど主噴射により噴射すべき燃料量は多くなる。
【0024】
なお、予噴射および主噴射により各燃料噴射弁2a〜2dから噴射すべき予噴射燃料量および主噴射燃料量を供給するために各燃料噴射弁2a〜2dを開弁する開弁時間はコモンレール30内の燃圧に基づいて決定され、燃圧が高いほど開弁時間は短くなる。また、各気筒における予噴射および主噴射は第一気筒♯1、第三気筒♯3、第四気筒♯4、第二気筒♯2の順で実行される。
【0025】
さらに本実施形態では第三気筒♯3において主噴射が実行された後に該主噴射とは別個に副噴射を実行し、第三燃料噴射弁2cからNOX 触媒12に燃料、すなわちHCを供給する。上述したように、NOX 触媒12に供給されたHCは触媒表面に吸着して活性種とされ、NOX を浄化する。したがってHCによりNOX を浄化するには或る時間を要する。すなわち、NOX を浄化するためにはHCおよびNOX が上記或る時間だけNOX 触媒12内に留まっている必要がある。HCおよびNOX がNOX 触媒12内に留まっている時間(以下、滞留時間)は単位時間当たりにNOX 触媒12を通過する排気ガス量(以下、通過排気ガス量)により決まり、通過排気ガス量が多いほど滞留時間は短くなる。したがって本実施形態では、NOX 触媒12に供給すべき燃料量は通過排気ガス量に基づいて算出され、通過排気ガス量が多いほどNOX 触媒12内で浄化反応可能な燃料量は少なくなると判断してNOX 触媒12に供給する燃料量を少なくする。
【0026】
なお、NOX 触媒12に供給すべき燃料量を吸気圧センサ5およびクランク角センサ6の出力から推定した機関からのNOX 排出量に基づいて算出してもよい。また、副噴射の実行時期は上流側温度センサ13の出力から推定した第三気筒♯3内の温度およびコモンレール30内の燃圧に基づいて決定され、熱分解されたHCが多く必要なほど筒内温度が高い時期に副噴射を実行し、また、燃圧が予め定められた圧力より高い時期に副噴射を実行する。さらに副噴射により第三燃料噴射弁2cから噴射すべき副噴射燃料量を供給するために第三燃料噴射弁2cを開弁する開弁時間はコモンレール30内の燃圧に基づいて決定され、燃圧が高いほど開弁時間は短くなる。
【0027】
次に図2のフローチャートを参照して本実施形態の予噴射・主噴射実行制御を説明する。なお、図2においてnは気筒番号を示し、1、3、4、2の順で変化する。まず、ステップS110において現在のクランク角度CAが第n気筒において予噴射を実行すべき予め定められた予噴射クランク角度PCApnである(CA=PCApn)か否かが判別される。ステップS110においてCA=PCApnである判別されると、ステップS112に進んで予め定められた予噴射用開弁時間tpnだけ第n気筒の燃料噴射弁を開弁し、ステップS114に進む。一方、ステップS110においてCA≠PCApnであると判別されると、CA=PCApnと判別されるまでステップS110が繰り返される。
【0028】
ステップS114では現在のクランク角度CAが第n気筒において主噴射を実行すべき予め定められた主噴射クランク角度PCAmnである(CA=PCAmn)か否かが判別される。ステップS114においてCA=PCAmnである判別されると、ステップS116に進んで予め定められた主噴射用開弁時間tmnだけ第n気筒の燃料噴射弁を開弁し、処理を終了する。一方、ステップS114においてCA≠PCAmnであると判別されると、CA=PCAmnと判別されるまでステップS114が繰り返される。
【0029】
次に図3のフローチャートを参照して本実施形態の主噴射燃料量算出制御を説明する。なお、図3においてnは気筒番号を示し、1、3、4、2の順で変化する。まず、ステップS210においてアクセル踏込量センサ19により検出されたアクセルペダル踏込量Daが読み込まれ、ステップS212に進む。
ステップS212ではステップS210で読み込まれたアクセルペダル踏込量Daに基づいて主噴射により第n気筒内に供給すべき主噴射燃料量を燃料噴射弁から噴射するのに必要な燃料噴射弁の開弁時間tmpnを算出し、ステップS214に進む。
ステップS214ではステップS212で算出した開弁時間tmpnを主噴射用開弁時間tmnにセットし、処理を終了する。
【0030】
次に図4のフローチャートを参照して本実施形態の副噴射実行制御を説明する。まず、ステップS310において現在のクランク角度CAが第三気筒において副噴射を実行すべき予め定められた副噴射クランク角度CAs3である(CA=CAs3)か否かが判別される。ステップS310においてCA=CAs3である判別されると、ステップS312に進んで予め定められた副噴射用開弁時間ts3だけ第三気筒の第三燃料噴射弁2cを開弁し、処理を終了する。一方、ステップS310においてCA≠CAs3であると判別されると、CA=CAs3と判別されるまでステップS310が繰り返される。
【0031】
次に図5のフローチャートを参照して本実施形態の副噴射燃料量算出制御を説明する。まず、ステップS410において上流側温度センサ13により検出された上流側触媒温度TU、下流側温度センサ14により検出された下流側触媒温度TD、吸気圧センサ5により検出された吸入空気圧Pi、クランク角度センサ6により検出されたクランク角度CAおよび燃圧センサ32により検出されたコモンレール30内の燃圧Pcを読み込み、ステップS412に進む。
【0032】
ステップS412ではステップS410で読み込まれた吸入空気圧Piとクランク角度CAとから単位時間当たりにNOX 触媒12を通過する排気ガス量(以下、通過排気ガス量)QEを算出し、ステップS414に進む。
ステップS414ではステップS412で算出された通過排気ガス量QEとステップS410で読み込まれた燃圧Pcとに基づいて副噴射により第三気筒♯3内に供給すべき副噴射燃料量を第三燃料噴射弁2cから噴射するのに必要な燃料噴射弁の開弁時間tsp3と、ステップS410で読み込まれた上流側触媒温度TUと下流側触媒温度TDとに基づいて副噴射を実行すべきクランク角度CAsp3とを算出し、ステップS416に進む。
【0033】
ステップS416ではステップS414で算出された開弁時間tsp3に後述する触媒劣化診断制御において算出されるHC供給量補正係数Kを掛けた値を予め定められた副噴射用開弁時間ts3にセットするとともにステップS414で算出されたクランク角度CAsp3を予め定められた副噴射クランク角度CAs3にセットし、処理を終了する。
【0034】
なお、上記実施形態では主噴射と同じ燃料噴射弁から浄化用HCを供給したが、排気循環管が接続されていない排気枝管にHC供給手段を別途設けて、このHC供給手段から浄化用HCを供給してもよい。
【0035】
次に本実施形態の触媒劣化診断について説明する。本実施形態では初めに上流側温度センサ13により上流端触媒温度を検出するとともに下流側温度センサ14により下流端触媒温度を検出する。次にこれら上流端触媒温度と下流端触媒温度とを平均してNOX 触媒12の温度を代表する触媒温度代表値を算出する。このようにNOX 触媒12の触媒温度を上流端触媒温度と下流端触媒温度との平均から算出することにより、仮に一方の温度センサが極端に高い温度または低い温度を検出したときにも、NOX 触媒12を代表する触媒温度として適切な温度を算出することができる。
【0036】
さらに上流側NOX 濃度センサ21により上流側NOX 濃度を検出するとともに下流側NOX 濃度センサ22により下流側NOX 濃度を検出する。次にこれら上流側NOX 濃度と下流側NOX 濃度とからNOX 触媒におけるNOX 浄化率を算出する。
【0037】
本実施形態では次に上記触媒温度代表値に対応する標準NOX 浄化率を読み込む。標準NOX 浄化率はNOX 触媒12が劣化していないときに当該触媒温度におけるNOX 触媒12のNOX 浄化率である。上述したように、標準NOX 浄化率は触媒温度により異なり(図8参照)、マップの形でROMに予め記憶されている。この標準NOX 浄化率に1以下の浄化率補正係数を掛けて浄化率判定値を算出し、この浄化率判定値と上記算出されたNOX 浄化率とを比較し、NOX 浄化率が浄化率判定値より低いときにNOX 触媒12が劣化していると診断する。
【0038】
NOX 触媒12が劣化していると診断されたときであって触媒温度代表値が適正温度範囲内で且つ予め定められた触媒再生温度より低いときには触媒の劣化度合いに応じてNOX 触媒12に供給すべき浄化用HCの量を補正し、本実施形態では、劣化度合いが大きくなるほど、すなわちNOX 浄化率が浄化率判定値より低くなるほど供給すべき浄化用HC量を少なくする。この制御はNOX 触媒12が触媒金属のシンタリングあるいは未燃HCなどの可溶性有機物質の触媒表面への付着により劣化した場合に有効である。こうすることによりNOX 触媒12においてNOX の浄化作用に消費可能な量のHCのみがNOX 触媒12に供給される。このため、HCがNOX 触媒12において消費されずにNOX 触媒12を通過して外部に放出されてしまうことが防止される。なお、上記予め定められた触媒再生温度とはNOX 触媒12内に流入したHCがNOX との浄化反応をせずにNOX 触媒12内で燃焼する温度、すなわちHC燃焼温度に設定される。
【0039】
一方、NOX 触媒12が劣化していると診断されたときであって触媒温度代表値が予め定められた触媒再生温度より高いときにはNOX 触媒12に供給すべき浄化用HC量をNOX 触媒12が正常であるときに供給される浄化用HC量に比べて増大する。NOX 触媒12の触媒温度代表値が予め定められた触媒再生温度より高いため、NOX 触媒12内に流入したHCがNOX 触媒12内において燃焼せしめられる。このとき、例えば、NOX 触媒12に付着して劣化の原因となっているHCも燃焼せしめられるため、NOX 触媒12の劣化が回復される。すなわち、この制御はNOX 触媒12が未燃HCなどの可溶性有機物質の触媒表面への付着により劣化した場合に有効である。
【0040】
次に図6および図7のフローチャートを参照して本実施形態の触媒劣化診断制御を説明する。まず、図6のステップS510において上流側NOX 濃度センサ21により検出された上流側NOX 濃度DUと、下流側NOX 濃度センサ22により検出された下流側NOX 濃度DDとを読み込み、ステップS512に進む。ステップS512ではステップS510で読み込まれた上流側NOX 濃度DUと下流側NOX 濃度DDとに基づいてNOX 触媒12におけるNOX 浄化率Rを算出し、ステップS514に進む。
ステップS514では上流側温度センサ13により検出された上流端触媒温度TUと、下流側温度センサ14により検出された下流端触媒温度TDとを読み込み、ステップS516に進む。
ステップS516ではステップS514で読み込まれた上流端触媒温度TUと下流端触媒温度TDとに基づいてNOX 触媒12の触媒温度代表値Tを算出し、図7のステップS518に進む。
【0041】
図7のステップS518ではステップS514で算出された触媒温度代表値Tが下限温度T1以上で且つ上限温度T2以下である(T1≦T≦T2)か否かが判別される。ステップS518においてT1≦T≦T2であると判別されると、ステップS520に進んでマップから触媒温度代表値Tに対応した標準NOX 浄化率R0を読み込み、ステップS522に進む。一方、ステップS518においてT<T1またはT>T2であると判別されると、ステップS536に進む。
【0042】
ステップS522ではステップS512で算出されたNOX 浄化率がステップS520で読み込まれた標準NOX 浄化率R0に浄化率補正係数α(α<1)を掛けた浄化率判定値以下である(R≦R0×α)か否かが判別される。ステップS522においてR≦R0×αであると判別されると、ステップS524に進んで劣化警報装置が作動され、次にステップS526に進んで劣化フラグがセットされ、ステップS528に進む。一方、ステップS522においてR>R0×αであると判別されると、ステップS532に進んで劣化警報装置が停止され、次にステップS534に進んで劣化フラグがリセットされ、ステップS530に進んでNOX 浄化率に応じたHC供給量補正係数Kをマップから読み込み、処理を終了する。
【0043】
ステップS536では劣化フラグがセットされているか否かが判別される。ステップS536において劣化フラグがセットされていると判別されると、ステップS528に進む。一方、ステップS536において劣化フラグがリセットされていると判別されると、処理を終了する。
【0044】
ステップS528では触媒温度代表値Tが予め定められた触媒再生温度T3以下である(T≦T3)か否かが判別される。ステップS528においてT≦T3であると判別されると、ステップS530に進んでNOX 浄化率に応じたHC供給量補正係数Kを読み込み、処理を終了する。一方、ステップS528においてT>T3であると判別されると、ステップS538に進んでHC供給量補正係数Kに定数β(β>1)をセットし、処理を終了する。
【0045】
なお、リーン状態において排気ガス中のNOX を吸蔵しておき、排気ガス中のHC濃度がリーン状態のときよりも高くなったときに、吸蔵されていたNOX を放出してHCと反応させてNOX を浄化する触媒に本発明を適用することもできる。
【0046】
【発明の効果】
本発明によれば、触媒が劣化すると、供給すべき還元剤の量が少なくされる。触媒が劣化すると、その浄化率は低下する。ここで、本発明によれば、触媒の劣化により低下した浄化率に見合う量の還元材を供給するため、還元剤が触媒において浄化に用いられずに外部に放出されてしまうことが防止され、還元剤の無駄が省かれる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の内燃機関の構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態の予噴射・主噴射実行制御を示すフローチャートである。
【図3】本発明の実施形態の主噴射燃料量算出制御を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施形態の副噴射実行制御を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態の副噴射燃料量算出制御を示すフローチャートである。
【図6】本発明の実施形態の触媒劣化診断制御を示すフローチャートの一部である。
【図7】本発明の実施形態の触媒劣化診断制御を示すフローチャートの一部である。
【図8】NOX 触媒の触媒温度とNOX 浄化率との関係を示す図である。
【符号の説明】
1…機関本体
5…吸気圧センサ
12…NOX 触媒
13…上流側温度センサ
14…下流側温度センサ
21…上流側NOX 濃度センサ
22…下流側NOX 濃度センサ
Claims (3)
- 排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、触媒が劣化していると診断されたときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備することを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置。
- 排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、前記触媒が劣化していると診断され且つ該触媒の温度が該触媒が排気ガスを浄化することができる温度範囲内にあるときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備することを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置。
- 排気通路に配置された触媒と、該触媒に排気ガスを浄化するための還元剤を供給する還元剤供給手段とを具備し、前記触媒がその温度により異なる浄化率を有する内燃機関の触媒劣化診断装置において、前記触媒の温度を検出する触媒温度検出手段と、前記触媒における浄化率を検出する浄化率検出手段とを具備し、前記触媒温度検出手段により検出された触媒温度に対応した浄化率判定値と前記浄化率検出手段により検出された浄化率とに基づいて触媒の劣化を診断し、前記触媒が劣化していると診断され且つ該触媒の温度が該触媒が排気ガスを浄化することができる温度範囲内にあって排気ガスを浄化するのに還元剤を消費せずに燃焼させてしまう温度以下にあるときに前記還元剤供給手段により供給すべき還元剤の量を少なくする還元剤量補正手段をさらに具備することを特徴とする内燃機関の触媒劣化診断装置。
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