以下、本発明に係る排気ガス浄化装置を具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。図1は、本発明に係る排気ガス浄化装置を適用した内燃機関10の構成の一例を示している。内燃機関10は、ディーゼルエンジンである。ここで、内燃機関10は、高効率で耐久性にも優れているが、粒子状物質(PM)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等の有害物質を、排気ガスと一緒に排出してしまうものである。
図1に示すように、内燃機関10の排気通路(排気ガス通路)12には、排気ガス浄化装置40が設けられている。排気ガス浄化装置40は、上流側排気ガス浄化装置41と、上流側排気ガス浄化装置41の下流側に配置される下流側排気ガス浄化装置45とから構成されている。上流側排気ガス浄化装置41の内部には、上流側から、第1酸化触媒(DOC:Diesel Oxidation Catalyst)42、粒子状物質除去フィルタ(DPF:Diesel Particulate Filter)43が設けられている。
第1酸化触媒42は、セラミック製の円柱状等に形成されたセル状筒体からなり、その軸方向には多数の貫通孔が形成され、内面に白金(Pt)等の貴金属がコーティングされている。そして、第1酸化触媒42は、所定の温度下で多数の貫通孔に排気ガスを通すことにより、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)、炭化水素(HC)等を酸化して除去する。
粒子状物質除去フィルタ(以下、「DPF」という。)43は、セラミックス材料等からなる多孔質な部材によって円柱状等に形成され、軸方向に多数の小孔が設けられたハニカム構造のセル状筒体をなし、各小孔は、隣同士で交互に異なる端部が目封じ部材によって閉塞されている。そして、DPF43は、上流側から各小孔に流入する排気ガスを多孔質材料に通すことで粒子状物質(PM)を捕集し、排気ガスのみを隣の小孔を通じて下流側へと流出させる。
第1酸化触媒42の上流側(上流側排気ガス浄化装置41の上流側)には、燃料添加弁28と、排気温度検出装置36A(例えば、排気温度センサ)と、が設けられている。燃料添加弁28は、微粒子が堆積したDPF43を再生する際(粒子状物質を燃焼焼却する際)に、第1酸化触媒42内で排気ガスと反応させて排気ガスの温度を上昇させるための燃料を噴射する。また、第1酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側には、排気温度検出装置36B(例えば、排気温度センサ)が設けられている。
DPF43の下流側には、排気温度検出装置36C(例えば、排気温度センサ)が設けられている。また、上流側排気ガス浄化装置41内における、第1酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧(圧力差)を検出する差圧センサ35が設けられている。
また、上流側排気ガス浄化装置41の下流側に配置される下流側排気ガス浄化装置45は、上流側から、尿素水添加弁(還元剤添加弁)61、選択還元触媒(SCR:Selective Catalytic Reduction)46、第2酸化触媒47が設けられている。選択還元触媒(以下、「SCR」という。)46は、DPF43の下流側に排気管12Aを介して連結されている。尿素水添加弁61は、排気管12AのDPF43の下流側、且つ、SCR46の上流側に配置されて、所定時間(例えば、200ミリ秒~400ミリ秒である。)毎に、SCR46に向けて排気ガス中に尿素水(還元剤溶液)を添加(噴霧)する。また、排気管12Aには、尿素水添加弁61の上流側に、NOxセンサ37Aが設けられている。
第2酸化触媒47は、SCR46の下流側に、排気管12Bを介して連結されている。排気管12Bには、SCR46の下流側に、排気温度検出装置(触媒温度検出装置)36D(例えば、排気温度センサ)が設けられている。また、排気管12Bには、排気温度検出装置36Dの下流側に、NOxセンサ37Bが設けられている。各NOxセンサ37A、37Bは、排気ガス中のNOx濃度に応じた検出信号を出力する。
尿素水添加弁61は、供給管62、尿素水ポンプ63を介して尿素水タンク(還元剤タンク)65に連結される。尿素水ポンプ63は、制御装置(ECU)50からの駆動信号により回転駆動される電動ポンプであり、正逆いずれの方向にも回転が可能となっている。尿素水ポンプ63の正回転により尿素水タンク65内の尿素水(還元剤溶液)67の吸い上げが行われ、尿素水67が供給管62を介して尿素水添加弁61に供給される。また、尿素水ポンプ63の逆回転により供給管62内の尿素水67が吸い戻され、尿素水タンク65内に流入される。尚、供給管62には、供給管62内の尿素水67の圧力を検出する水圧センサを設けてもよい。
尿素水タンク65内には、尿素水タンク65内に貯留されている尿素水67の残量(水位)を検出するレベルゲージ(残量検出装置)68が設けられている。レベルゲージ(残量検出装置)68は、尿素水タンク65内の尿素水67が満タン(例えば、13リットルである。)から減少した残量に応じた信号を制御装置(ECU)50に出力する。また、尿素水タンク65内には、尿素水タンク65内に貯留されている尿素水67の濃度を検出する濃度センサ69が設けられている。濃度センサ(濃度検出装置)69は、尿素水タンク65内の尿素水67の濃度に応じた信号を制御装置(ECU)50に出力する。
SCR46は、尿素水添加弁61により添加された尿素水(還元剤溶液)を用いて窒素酸化物(NOx)を無害化する触媒である。具体的には、尿素水添加弁61から添加(噴射)された尿素水は、排気ガスの排気熱によって加水分解され、その際、下記式(1)に示す反応によりアンモニア(NH3)が生成される。
(NH2)2CO+H2O→2NH3+CO2 ・・・(1)
そして、SCR46を排気ガスが通過する際に、SCR46に吸着したアンモニアによって排気ガス中の窒素酸化物(NOx)が選択的に還元浄化される。その際、下記式(2)~式(4)に示すような還元反応が行われることによって、NOxが還元浄化される。
4NO+4NH3+O2→4N2+6H2O ・・・(2)
6NO2+8NH3→7N2+12H2O ・・・(3)
NO+NO2+2NH3→2N2+3H2O ・・・(4)
上記式(2)~式(4)に示すアンモニアによるNOxの還元浄化が行われる際、アンモニアがNOxと反応しきれずに余剰となると、その余剰アンモニアがSCR46の下流側の排気管12Bを介して第2酸化触媒47に流入する。かかる場合に、第2酸化触媒47は、流入した余剰アンモニアを酸化して除去する。
燃料添加弁28、尿素水添加弁61、尿素水ポンプ63は、制御装置(ECU:Electronic Control Unit)50からの制御信号にて駆動される。制御装置50は、CPU、RAM、ROM、タイマ、EEPROM等を備えた公知のものである。CPUは、ROMに記憶された各種プログラムやマップに基づいて、種々の演算処理を実行する。また、RAMは、CPUでの演算結果や各検出装置から入力されたデータ等を一時的に記憶し、EEPROMは、例えば、内燃機関10の停止時にその保存すべきデータ等を記憶する。
また、EEPROMには、尿素水添加弁61によって添加(噴射)した尿素水を積算した積算添加量等を記憶する積算添加量記憶部501と、後述のように、学習した尿素水添加弁61から添加される実尿素水添加量、SCR46の劣化度合いであるSCR浄化率、尿素水添加弁61の劣化度合い等の学習値を記憶する学習値記憶部502と、が設けられている。
また、排気温度検出装置36Aは、第1酸化触媒42の上流側の排気管内の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36Bは、第1酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側を流れる排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36Cは、DPF43の下流側、且つ、SCR46の上流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。また、排気温度検出装置36Dは、SCR46の下流側、且つ、第2酸化触媒47の上流側の排気ガスの温度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
差圧センサ35は、第1酸化触媒42の下流側、且つ、DPF43の上流側の排気圧力(排気管内圧力に相当)と、DPF43の下流側の排気管内圧力と、の差圧に応じた検出信号を制御装置50に出力する。NOxセンサ37Aは、尿素水添加弁61よりも上流側の排気ガスのNOx濃度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。NOxセンサ37Bは、SCR46の下流側、且つ、第2酸化触媒47の上流側の排気ガスのNOx濃度に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
制御装置50には、吸気通路11に設けられた吸入空気流量検出装置31(例えば、エアフローメーター)の検出信号、アクセル開度検出装置33の検出信号、回転検出装置34の検出信号、のそれぞれが入力されている。また、制御装置50には、上述した各排気温度検出装置36A、36B、36C、36Dの検出信号、差圧センサ35の検出信号、各NOxセンサ37A、37Bの検出信号、レベルゲージ68、濃度センサ69の検出信号が入力されている。
そして、制御装置50は、これらの入力された検出信号に基づいて内燃機関10の運転状態を検出することができる。また、制御装置50は、検出した内燃機関10の運転状態や、アクセル開度検出装置33からの検出信号に基づいた運転者からの要求に応じて、各インジェクタ14A~14Dから内燃機関10のシリンダ内に噴射する燃料量や、燃料添加弁28から添加(噴射)する未燃燃料量、尿素水添加弁61から添加(噴射)する尿素水添加量を制御する制御信号を出力する。
そして、制御装置50(流量関連量検出装置に相当する。)は、各インジェクタ14A~14Dから噴射した毎秒当たりの燃料消費量(g/s)を所定時間(例えば、約10msec~100msec)毎に算出して、RAMに時系列的に記憶する。また、制御装置50(差圧検出装置に相当する。)は、差圧センサ35から入力された検出信号から差圧(圧力差)を所定時間(例えば、約10msec~100msec)毎に算出して、RAMに時系列的に記憶する。
燃料添加弁28から排気ガス中に噴射された燃料は、第1酸化触媒42によって排気ガス中に残った酸素との酸化反応が生じて燃焼し、その発熱により排気ガス温度が上昇する。この高温になった排気ガスによりDPF43の床温が上昇して、所定温度以上(例えば、590℃以上)になると、DPF43内に堆積した粒子状物質(PM)が燃焼焼却される。このような状態を所定の時間、維持することによってDPF43内に堆積した粒子状物質(PM)を燃焼させて除去し、排気ガス中の粒子状物質(PM)を捕集するというDPF43の捕集機能を回復(再生)させることができる。
吸入空気流量検出装置31(例えば、吸気流量センサ)は、内燃機関10の吸気通路11に設けられて内燃機関10が吸入した空気の流量に応じた検出信号を制御装置50に出力する。アクセル開度検出装置33(例えば、アクセル開度センサ)は、運転者が操作するアクセルの開度(すなわち、運転者の要求負荷)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。回転検出装置34(例えば、回転センサ)は、例えば、内燃機関10のクランクシャフトの回転数(すなわち、エンジン回転数)に応じた検出信号を制御装置50に出力する。
また、図1に示す例では、制御装置50は、後述のように、SCR46の劣化度合いが使用可能な最大劣化度合い以上になった際に点灯するSCR警告ランプ15の点灯/消灯が可能である。SCR警告ランプ15は、例えば、車両のインスツルメントパネル内に設けられている。
次に、上記のように構成された内燃機関10において、制御装置50が実行する処理であって、尿素水添加弁61が添加(噴射)する尿素水(還元剤溶液)の添加量を補正する添加量補正処理の一例について図2乃至図7に基づいて説明する。尚、制御装置50は、内燃機関10の運転中に、所定時間間隔(例えば、数10msec~数100msec間隔)にて、図2のフローチャートに示される処理手順を繰り返し実行する。
図2に示すように、先ず、ステップS11において、制御装置50は、内燃機関10の運転状態が安定運転状態か否かを判定する「安定運転状態判定処理」のサブ処理を実行した後、ステップS12に進む。ここで、「安定運転状態判定処理」のサブ処理について図3及び図4に基づいて説明する。図3に示すように、先ず、ステップS111において、制御装置50は、尿素水添加弁61に尿素水の添加を指示する添加指示を出力したか否かを判定する。尚、尿素水添加弁61に尿素水の添加を指示する添加指示には、尿素水の指示添加量(指示噴射量)に相当する出力信号が含まれている。
そして、尿素水添加弁61に尿素水の添加(噴射)を指示する添加指示を出力していないと判定した場合には(S111:NO)、制御装置50は、後述のステップS115に進む。一方、尿素水添加弁61に尿素水の添加を指示する添加指示を出力したと判定した場合には(S111:YES)、制御装置50は、ステップS112に進む。ステップS112において、制御装置50は、レベルゲージ68によって尿素水タンク65内の尿素水67の現在の残量を計測してRAMに記憶した後、ステップS113に進む。
ステップS113において、制御装置50は、尿素水添加弁61に指示した当該添加指示に含まれる尿素水の指示添加量(指示噴射量)と、尿素水タンク65内の尿素水67の現在の残量とを対応づけてEEPROM(残量記憶装置)に時系列的に記憶した後、ステップS114に進む。ステップS114において、制御装置50は、尿素水添加弁61に指示した今回の尿素水の指示添加量(指示噴射量)と、今回の尿素水タンク65内の尿素水67の残量及び前回の尿素水タンク65内の尿素水67の残量をEEPROMから読み出す。
そして、制御装置50は、「今回の尿素水の指示添加量(指示噴射量)」に対する、「前回の尿素水67の残量」から「今回の尿素水67の残量」を減算した「残量差ΔQ1」の比率Aを算出し、この「比率A」を尿素水添加弁61の劣化度合いY1としてEEPROMの学習値記憶部502に記憶した後、ステップS115に進む。尚、制御装置50は、「今回の尿素水の指示添加量(指示噴射量)」に対する、今回から複数回(例えば,10回~100回)分の過去までに算出した「残量差ΔQ」の平均値の比率Aを算出し、この「比率A」を尿素水添加弁61の劣化度合いY1としてEEPROMに記憶するようにしてもよい。
ステップS115において、制御装置50は、濃度センサ69によって尿素水タンク65内の尿素水67の尿素水濃度を計測してRAMに記憶した後、ステップS116に進む。ステップS116において、制御装置50は、尿素水タンク65内の尿素水67の尿素水濃度を再度RAMから読み出すと共に、ROMから尿素水の規定濃度(例えば、32.5±0.5%)を読み出して、尿素水67の尿素水濃度が規定濃度であるか否かを判定する。そして、尿素水タンク65内の尿素水67の尿素水濃度が規定濃度(例えば、32.5±0.5%)でないと判定した場合には(S116:NO)、制御装置50は、ステップS117に進む。
図4に示すように、ステップS117において、制御装置50は、安定運転フラグをEEPROMから読み出し、安定運転状態でない旨を表す「OFF」に設定して、再度EEPROMに記憶した後、ステップS118に進む。尚、安定運転フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてEEPROMに記憶される。
ステップS118において、制御装置50は、変更設定フラグをEEPROMから読み出し、実尿素水添加量の補正をしていない旨を表す「OFF」に設定して、再度EEPROMに記憶した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS12(図2参照)の処理に進む。尚、変更設定フラグは、制御装置50の起動時に、「OFF」に設定されてEEPROMに記憶される。
一方、図3に示すように、上記ステップS116において、尿素水タンク65内の尿素水67の尿素水濃度が規定濃度(例えば、32.5±0.5%)であると判定した場合には(S116:YES)、制御装置50は、ステップS119に進む。ステップS119において、制御装置50は、EEPROMに時系列的に記憶された尿素水タンク65内の尿素水67の残量のうち、最新の尿素水タンク65内の尿素水67の残量と、所定時間(例えば、5分~10分)前の尿素水タンク65内の尿素水67の残量と、をEEPROMから読み出す。
そして、制御装置50は、「所定時間(例えば、5分~10分)前の尿素水タンク65内の尿素水67の残量」から「最新の尿素水タンク65内の尿素水67の残量」を減算した「尿素水消費量」を算出する。続いて、制御装置50は、この「尿素水消費量」を「所定時間(例えば、5分~10分)」で除算して、単位時間当たりの尿素水消費量、つまり、単位時間当たりの「実尿素水添加量」を算出し、RAMに記憶した後、ステップS120に進む。
ステップS120において、制御装置50は、単位時間当たりの「実尿素水添加量」をRAMから読み出し、安定運転状態における単位時間当たりの実尿素水添加量(例えば、100±5(g/時間))であるか否かを判定する。そして、安定運転状態における単位時間当たりの実尿素水添加量(例えば、100±5(g/時間))でないと判定した場合には(S120:NO)、制御装置50は、上記ステップS117以降の処理を実行する。一方、安定運転状態における単位時間当たりの実尿素水添加量(例えば、100±5(g/時間))であると判定した場合には(S120:YES)、制御装置50は、ステップS121に進む。
ステップS121において、制御装置50は、各排気温度検出装置36C、36DによってSCR46の上流側と下流側の各温度を検出し、各温度の平均値をSCR46の床温としてRAMに記憶した後、ステップS122に進む。ステップS122において、制御装置50は、SCR46の床温をRAMから読み出し、安定運転状態におけるSCR46の床温(例えば、250℃~300℃)であるか否かを判定する。
そして、安定運転状態におけるSCR46の床温(例えば、250℃~300℃)でないと判定した場合には(S122:NO)、制御装置50は、上記ステップS117以降の処理を実行する。一方、安定運転状態におけるSCR46の床温(例えば、250℃~300℃)であると判定した場合には(S122:YES)、制御装置50は、ステップS123に進む。
図4に示すように、ステップS123において、制御装置50は、吸入空気流量検出装置31から入力された検出信号から吸入空気流量GA(g/sec)を算出する。また、制御装置50は、現在から所定時間(例えば、1秒)前までに各インジェクタ14A~14Dに指示した燃料噴射量をRAMから読み出す。そして、制御装置50は、吸入空気流量GAと燃料噴射量の合計値を排気ガス流量としてRAMに記憶した後、ステップS124に進む。尚、制御装置50は、吸入空気流量検出装置31から入力された検出信号から吸入空気流量GA(g/sec)を算出し、排気ガス流量としてRAMに記憶してもよい。
ステップS124において、制御装置50は、排気ガス流量をRAMから読み出し、安定運転状態における排気ガス流量であるか否かを判定する。そして、安定運転状態における排気ガス流量(例えば、80(g/秒)~100(g/秒))でないと判定した場合には(S124:NO)、制御装置50は、上記ステップS117以降の処理を実行する。一方、安定運転状態における排気ガス流量(例えば、80(g/秒)~100(g/秒))であると判定した場合には(S124:YES)、制御装置50は、ステップS125に進む。
ステップS125において、制御装置50は、NOxセンサ37Aからの検出信号からSCR46に流入する排気ガス中の流入NOx濃度を検出し、上記ステップS123で取得した排気ガス流量を流入NOx濃度に乗算してSCR46に流入するNOx量を算出し、RAMに記憶した後、ステップS126に進む。ステップS126において、制御装置50は、SCR46に流入するNOx量をRAMから読み出し、安定運転状態におけるSCR46に流入するNOx量(例えば、50±3(g/時間))であるか否かを判定する。
そして、安定運転状態におけるSCR46に流入するNOx量(例えば、50±3(g/時間))でないと判定した場合には(S126:NO)、制御装置50は、上記ステップS117以降の処理を実行する。一方、安定運転状態におけるSCR46に流入するNOx量(例えば、50±3(g/時間))であると判定した場合には(S126:YES)、制御装置50は、ステップS127に進む。
ステップS127において、制御装置50は、SCR46に吸着しているアンモニア(NH3)吸着量を取得した後、ステップS128に進む。具体的には、制御装置50は、先ず、尿素水添加弁61からSCR46の上流側に添加された尿素水添加量に基づいて、その尿素水から上記式(1)に示す反応により生成されたアンモニア(NH3)の量である流入NH3量QINを算出する。
また、制御装置50は、図5に示すSCR46の床温と、SCR46に吸着可能なアンモニア(NH3)の上限量である上限NH3吸着量との関係を対応づけた2次元マップM1を用いて、上記ステップS121で検出したSCR46の床温に対応する上限NH3吸着量QMAXを取得する。尚、2次元マップM1は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、ROMに予め記憶されている。
続いて、制御装置50は、流入NH3量QINが上限NH3吸着量QMAX以下であるか否かを判定する。そして、流入NH3量QINが上限NH3吸着量QMAX以下であると判定した場合には、制御装置50は、流入NH3量QINをSCR46に吸着しているアンモニア(NH3)吸着量としてRAMに記憶した後、ステップS128に進む。一方、流入NH3量QINが上限NH3吸着量QMAXよりも多いと判定した場合には、制御装置50は、上限NH3吸着量QMAXをSCR46に吸着しているアンモニア(NH3)吸着量としてRAMに記憶した後、ステップS128に進む。
尚、図5に示すように、SCR46に吸着可能なアンモニア(NH3)の上限量である上限NH3吸着量は、新品時には実線L1で示され、SCR46が劣化するに従って破線L2で示されるように、SCR46の床温に対して低下する。その結果、NOx浄化率は、SCR46が劣化するに伴って低下する。
ステップS128において、制御装置50は、SCR46に吸着しているアンモニア(NH3)吸着量をRAMから読み出し、安定運転状態におけるSCR46に吸着するアンモニア(NH3)吸着量(例えば、4.5±0.5g)であるか否かを判定する。そして、安定運転状態におけるSCR46に吸着するアンモニア(NH3)吸着量(例えば、4.5±0.5g)でないと判定した場合には(S128:NO)、制御装置50は、上記ステップS117以降の処理を実行する。一方、安定運転状態におけるSCR46に吸着するアンモニア(NH3)吸着量(例えば、4.5±0.5g)であると判定した場合には(S128:YES)、制御装置50は、ステップS129に進む。
ステップS129において、制御装置50は、安定運転フラグをEEPROMから読み出し、安定運転状態である旨を表す「ON」に設定して、再度EEPROMに記憶した後、当該サブ処理を終了して、メインフローチャートに戻り、ステップS12(図2参照)の処理に進む。
次に、図2に示すように、ステップS12において、制御装置50は、安定運転フラグをEEPROMから読み出し、安定運転フラグが「ON」に設定されているか否か、つまり、安定運転状態であるか否かを判定する。そして、安定運転フラグが「OFF」に設定されている判定した場合には(S12:NO)、制御装置50は、安定運転状態でないと判定して、当該処理を終了する。
一方、安定運転フラグが「ON」に設定されている判定した場合には(S12:YES)、制御装置50は、安定運転状態であると判定して、ステップS13に進む。ステップS13において、制御装置50は、変更設定フラグをEEPROMから読み出し、安定運転状態になってから実尿素水添加量の補正をしていない旨を表す「OFF」に設定されているか否かを判定する。そして、変更設定フラグが「ON」に設定されていると判定した場合には(S13:NO)、制御装置50は、安定運転状態になってから実尿素水添加量の補正をした後、安定運転状態が続いていると判定して、当該処理を終了する。
一方、変更設定フラグが「OFF」に設定されていると判定した場合には(S13:YES)、制御装置50は、安定運転状態になってから実尿素水添加量の補正をしていないと判定して、ステップS14に進む。ステップS14において、制御装置50は、現在のNOx浄化率を算出してRAMに記憶する。具体的には、制御装置50は、NOxセンサ37Aからの検出信号からSCR46に流入する排気ガス中の流入NOx濃度を検出する。
また、制御装置50は、NOxセンサ37Bからの検出信号からSCR46から流出する排気ガス中の流出NOx濃度を検出する。そして、制御装置50は、下記式(5)に従ってNOx浄化率を算出し、現在のNOx浄化率(実NOx浄化率に相当する。)としてRAMに記憶した後、ステップS15に進む。従って、下記式(5)の分母と分子のそれぞれに、上記ステップS123で取得した排気ガス流量を乗算することによって、現在のNOx浄化率(実NOx浄化率に相当する。)は、SCR46に流入する排気ガス中のNOxの量に対するSCR46によって浄化されたNOxの量の割合に等しい値となる。
現在のNOx浄化率=(流入NOx濃度-流出NOx濃度)/流入NOx濃度 ・・・・・・(5)
ステップS15において、制御装置50は、SCR46の劣化度合いを表すSCR浄化率を算出してRAMに記憶する。具体的には、制御装置50は、上記ステップS121で検出したSCR46の床温と、上記ステップS123で算出した排気ガス流量と、をRAMから読み出し、図6に示すNOx浄化率マップM2を用いて、SCR46の新品時のNOx浄化率(初期NOx浄化率)を算出する。そして、制御装置50は、下記式(6)に従ってSCR浄化率を算出し、現在のSCR浄化率としてEEPROMの学習値記憶部502に記憶した後、ステップS16に進む。
SCR浄化率=(現在のNOx浄化率)/(新品時のNOx浄化率) ・・・(6)
ここで、NOx浄化率マップM2は、図6に示すように、SCR46の床温と排気ガス流量とを入力パラメータとし、SCR46の新品時のNOx浄化率を出力パラメータとするマップデータから構成されている。ここで、NOx浄化率マップM2のマップデータでは、SCR46の床温と排気ガス流量の各入力変数の離散的な値と、各入力変数の値のそれぞれに対応する新品時のNOx浄化率の出力変数の値と、の組データである。従って、SCR46の床温と排気ガス流量の値が、入力変数のいずれかに一致する場合、対応する出力変数の値を、新品時のNOx浄化率とし、一致しない場合、NOx浄化率マップM2のマップデータに含まれる複数の出力変数の補間によって得られる値を、新品時のNOx浄化率とする。
また、NOx浄化率マップM2を構成するSCR46の床温と排気ガス流量の各入力変数は、少なくとも安定運転状態における値を含んでおり、新品時のNOx浄化率の出力変数は、安定運転状態における値である。また、NOx浄化率マップM2では、入力変数のSCR46の床温が上昇するに従って、出力変数のNOx浄化率は上昇し、入力変数の排気ガス流量が多くなるに従って、出力変数のNOx浄化率は、低下している。尚、NOx浄化率マップM2は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、制御装置50のROM(初期浄化率記憶装置)に予め記憶されている。
続いて、図2に示すように、ステップS16において、制御装置50は、現在のSCR浄化率をEEPROMの学習値記憶部502から読み出し、現在のSCR浄化率が、SCR46の使用可能な最大劣化度合いに相当する保証SCR浄化率(例えば、70%である。)以下であるか否かを判定する。つまり、制御装置50は、SCR46の劣化度合いが使用可能な最大劣化度合いに達したか否かを判定する。
そして、現在のSCR浄化率が、保証SCR浄化率よりも大きいと判定した場合には(S16:NO)、制御装置50は、SCR46の劣化度合いが使用可能な最大劣化度合いに達していないと判定して、後述のステップS18に進む。一方、現在のSCR浄化率が、保証SCR浄化率以下であると判定した場合には(S16:YES)、制御装置50は、SCR46の劣化度合いが使用可能な最大劣化度合いに達したと判定して、ステップS17に進む。尚、SCR46の保証SCR浄化率は、CAE(Computer Aided Engineering)解析、又は、実験により予め取得され、ROMに予め記憶されている。
ステップS17において、制御装置50は、SCR警告ランプ15を点灯した後、ステップS18に進む。これにより、SCR46が使用可能な最大劣化度合いまで劣化している旨をユーザに報知することができる。その結果、ユーザは、SCR46の劣化を認識して、劣化したSCR46を交換することが可能となる。
ステップS18において、制御装置50は、現在のSCR浄化率をEEPROMの学習値記憶部502から読み出す。そして、制御装置50は、図7に示すSCR46のSCR浄化率と、尿素水添加弁61から添加(噴射)する実尿素水添加量との関係を対応づけた2次元マップM3を用いて、上記ステップS15で算出した現在のSCR浄化率に対応する実尿素水添加量を取得する。そして、制御装置50は、この実尿素水添加量を、EEPROMの学習値記憶部502に尿素水添加弁61から添加(噴射)する現在の実尿素水添加量として記憶して、尿素水添加弁61から添加(噴射)する実尿素水添加量を補正した後、ステップS19に進む。
ステップS19において、制御装置50は、現在の実尿素水添加量と、尿素水添加弁61の劣化度合いY1(例えば、90%である。)と、をEEPROMの学習値記憶部502から読み出す。そして、制御装置50は、下記式(7)によって尿素水添加弁61に指示する尿素水添加量指令値を算出し、EEPROMに記憶した後、ステップS20に進む。これにより、制御装置50は、所定時間(例えば、200ミリ秒~400ミリ秒である。)毎に、尿素水添加弁61に対して補正された尿素水添加量指令値を出力し、適切な実尿素水添加量の尿素水を添加(噴射)する。
尿素水添加量指令値=(実尿素水添加量)/(劣化度合いY1) ・・・(7)
ステップS20において、制御装置50は、変更設定フラグをEEPROMから読み出し、実尿素水添加量の補正をした旨を表す「ON」に設定して、再度EEPROMに記憶した後、当該処理を終了する。
尿素水タンク65は、還元剤タンクの一例として機能する。尿素水添加弁61は、還元剤添加弁の一例として機能する。制御装置50は、実浄化率取得装置、初期浄化率記憶装置、運転状態検出装置、劣化度合い検出装置、添加量補正装置、残量記憶装置、実添加量取得装置の一例として機能する。濃度センサ69は、濃度検出装置の一例として機能する。レベルゲージ68は、残量検出装置の一例として機能する。制御装置50と、各排気温度検出装置36C、36Dは、床温検出装置の一例を構成する。制御装置50と吸入空気流量検出装置31は、排気ガス流量取得装置の一例を構成する。
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る内燃機関10では、制御装置50は、運転状態が安定運転状態になった場合に、SCR46によって浄化された現在のNOx浄化率と、SCR46の新品時におけるNOx浄化率とに基づいて、SCR46のSCR浄化率(新品時に対する劣化度合い)を算出する。そして、制御装置50は、SCR46のSCR浄化率(劣化度合い)に応じて、尿素水添加弁61によって添加する実尿素水添加量を補正する。これにより、安定運転状態になった場合に、SCR46のみの劣化度合いを精度よく検出し、適切な量の尿素水を添加(供給)することができる。その結果、SCR46への余分な尿素水の添加(供給)を抑制し、尿素水タンク65内の尿素水67の消費量の低減化を図ることができる。
また、制御装置50は、SCR46のNOx浄化率に影響する浄化率影響因子のうち、SCR46の劣化度合いを除いた複数の浄化率影響因子(尿素水濃度、実尿素水添加量、SCR46の床温、排気ガス流量、SCR46に流入するNOx量、アンモニア(NH3)の吸着量である。)が、安定運転状態の値になった場合に、SCR46のSCR浄化率(劣化度合い)を検出する。これにより、SCR46のみの劣化度合いを更に精度よく検出することができ、より適切な量の尿素水を添加(供給)することができる。
また、制御装置50は、安定運転状態になった場合に、SCR46の床温と排気ガス流量とを検出することによって、NOx浄化率マップM2を用いてSCR46の新品時のNOx浄化率を迅速に取得することができる。これにより、SCR46のみのSCR浄化率(劣化度合い)を容易に精度よく検出することができ、尿素水添加弁61によって添加する尿素水の添加量を補正して、適切な量の尿素水を迅速に添加(供給)することができる。その結果、制御装置50は、SCR46への余分な尿素水の添加(供給)を迅速に抑制し、尿素水の消費量の更なる低減化を図ることができる。
(A)前記実施形態では、尿素水タンク65内に尿素水67を貯留したが、アンモニアを還元剤として尿素水タンク65内に貯留するようにしてもよい。
(B)前記実施形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。