JP3824697B2 - 往復動用密封装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば各種装置の往復動軸の軸封部に用いられるオイルシール等の往復動用密封装置に関し、特にシールリップへ反密封対象流体側から圧力が加わるのを防止する背圧リップを備えた構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の往復動用密封装置(以下単に密封装置という)としては、例えば図3に示すようなものがあり、図4に示すエンジン機構等の往復動軸の軸封部に用いられるもので、この密封装置100は、いわゆるバルブステムシールである。
【0003】
密封装置100は、往復動軸としてのステム101の外周面を摺動自在に密封接触するシールリップ102と、このシールリップ102へ反密封対象流体側から圧力が加わるのを防止すべく圧力(背圧)を受ける、ステム101の外周面に摺動自在な背圧リップ103とを有する環状のシール本体104を備えたものである。
【0004】
また、半径方向内方に延びる内向きフランジ部105Aを有する補強環105を備えており、その補強環105の内向きフランジ部105Aの内径端部にシール本体104を取付けている。
【0005】
そして、この密封装置100は、シール本体104の反密封対象流体側にステム101が往復動自在に挿入される軸孔106Aを有するガイド部材106の外周に、補強環105をゴム状弾性体107を介して嵌合することで取付けられる。
【0006】
シールリップ102は断面楔状で、その外周部にステム101に対して緊迫力を付与するためのスプリング108を設けている。
【0007】
そして、ステム101の外周面側にガイド部材105を設けていることから、そのステム101とガイド部材106の軸孔106Aの摺動部にて焼き付けを起こすことがある。その焼き付け防止のためには、適度の油を供給する必要がある。
【0008】
そのため、シールリップ102の密封対象流体である油側の面とステム101の外周面との油面角αと反油側の面とステム101の外周面との反油面角βとを設定して上記摺動部への油の漏れ量をコントロールして適度の油を供給するようにしている。
【0009】
また、シール本体104に背圧リップ103を設けているのは、最近のエンジンの高性能化等に伴い、背圧が高くなってきており、その対策として設けている。即ち、油の漏れ量をコントロールするシールリップ102に直接背圧が加わらないように背圧を遮断しているのである。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術の場合には、背圧リップ103に圧力Pが加わると(図3(b)中矢印参照)、図3(b)に示すように相手側のステム101に抱き付き、摺動抵抗の増加をもたらし、しいてはステム101の摺動による背圧リップ103の挙動が大きくなり、その挙動がシールリップ102へも影響し、シールリップ102の性能である漏れ量コントロールが不安定となる。
【0011】
本発明は上記した従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、シールリップの性能の向上を図り得る往復動用密封装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、往復動軸の外周面を摺動自在に密封接触するシールリップと、該シールリップへ反密封対象流体側から圧力が加わるのを防止すべく圧力を受ける、前記往復動軸の外周面に摺動自在な背圧リップと、を備えたバルブステムシール用の往復動用密封装置において、前記背圧リップは反密封対象流体側に延びる断面略板状であり、かつ当該背圧リップが加圧されたときに前記往復動軸の外周面に当接する前記背圧リップの内周面の軸方向全体にベタ当たり防止部を設けたことを特徴とする。
【0013】
また、前記ベタ当たり防止部は並行突起であることが好ましい。
【0014】
さらに、前記並行突起は平行突起であることが好適である。
【0015】
上記構成の往復動用密封装置にあっては、背圧リップの往復動軸の外周面との摺動面に、往復動軸の外周面に対するベタ当たり防止部を設けたことから、摺動抵抗の低減を図ることができる。
【0016】
これにより、往復動軸の摺動時の背圧リップの挙動を抑えることができ、しいてはシールリップの安定となる。このことから、シールリップの性能の向上、例えば往復動軸が挿入されているガイド部材と往復動軸との摺動部の焼き付け防止としての油の漏れ量コントロールの安定化を図ることができる。
【0017】
また、ベタ当たり防止部を摺動面の周方向に設けた並行突起とすることで、低摩擦化を図ることができ、より摺動抵抗の低減化を図ることができ、上記したようにシールリップの性能の向上を図ることができる。
【0018】
さらに、並行突起を平行突起とすることで、安定して低摩擦化を図ることができると共に、上記した背圧リップの挙動をより抑えることができる。これにより、さらにシールリップの性能の向上を図ることができる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。本発明の一実施の形態に係る往復動用密封装置(以下単に密封装置という)を示す図1において、1は密封装置全体を示しており、例えばこの実施の形態では従来と同様、図2に示すようなエンジン機構等の往復動軸の軸封部に用いられる、いわゆるバルブステムシールの構成となっている。
【0020】
密封装置1は、往復動軸としてのステム2を有し、そのステム2が往復動自在に挿入される軸孔3を有するガイド部材4の外周に、補強環5を介して取付けられる。
【0021】
この密封装置1は、補強環5にステム2の外周面に摺動自在に密封接触するシールリップ6と、このシールリップ6へ反密封対象流体側から圧力が加わるのを防止すべく圧力(背圧)を受ける、ステム2の外周面に摺動自在な背圧リップ7とを有する環状のシール本体8を備えたものである。
【0022】
補強環5は、ガイド部材4の外周に取付け可能な長さを有する金属製の筒状部材で、その先端は半径方向内方(ステム2側)に延びる内向きフランジ部51を有している。
【0023】
その内向きフランジ部51の内径端部に環状のシール本体8を一体的に焼き付け固定してある。
【0024】
シール本体8は、ゴム状弾性体製で、補強環5の内向きフランジ部51の内径端部から軸方向密封対象流体としての油O側に延びる断面楔状のシールリップ6と、内向きフランジ部51から軸方向反油O側に延びる断面略板状の背圧リップ7とを有している。
【0025】
また、補強環5の内向きフランジ部51の油O側端面にはシールリップ6の腰部と連続してゴム状弾性体81を、反油O側端面には背圧リップ7の腰部と連続してゴム状弾性体82を、さらにこのゴム状弾性体82と連続して補強環5の筒状部52の内周面にもゴム状弾性体83を一体的に焼き付け固定してある。
【0026】
一方、ガイド部材4は、筒状部材で、その図中上側端面は平面で、その上部外周面は上側端面に向って縮径となるテーパ状となっており、このテーパ面より図中下側の外周面に補強環5はゴム状弾性体83を介して嵌合される。
【0027】
上記シールリップ6の外周部には、ステム2に対して緊迫力を付与するためのスプリング9を設けている。
【0028】
そして、シールリップ6の反油O側にステム2とガイド部材4の軸孔3との間から圧力P(背圧)受ける、ステム2の外周面に摺動自在な背圧リップ7を設けてある。
【0029】
この背圧リップ7のステム2の摺動面に、背圧リップ7が加圧されたときにステム2の外周面にベタ当たりするのを防止するベタ当たり防止部としての平行突起10を全周的に設けている。
【0030】
そして、上記構成の密封装置1は、ステム2の外周面側に設けられているガイド部材4に取付けられているが、そのステム2とガイド部材4の軸孔3との摺動部にて焼き付けを起こすことがある。そこで、その焼き付け防止のためには、シールリップ6を介して適度の油を供給する必要がある。
【0031】
そのため、図1(b)に示すようにシールリップ6の油O側の面とステム2の外周面との油面角αと反油O側の面とステム2の外周面との反油面角βとを設定して上記摺動部への油の漏れ量をコントロールして適度の油Oを供給するようにしている。
【0032】
そこで、このように油漏れ量をコントロールするシールリップ6に直接背圧がかからないように背圧を遮断する上記した背圧リップ7を設けているのである。
【0033】
上記構成の密封装置にあっては、背圧リップ7のステム2の外周面との摺動面に平行突起10を設けたので、背圧(圧力P)が加わっても(図1(b)中矢印参照)、図1(b)に示すようにベタ当たりすることがなく、また突起は平行に設けられていることから、安定して低摩擦化を図ることができる。
【0034】
これにより、ステム2の摺動時の背圧リップ7の挙動を抑えることができ、しいてはシールリップ6の安定となり、ガイド部材4とステム2との摺動部の焼き付け防止としての油の漏れ量コントロールの安定化を図ることができる。即ち、シールリップ6の性能の向上を図ることができる。
【0035】
尚、上記実施の形態ではベタ当たり防止部を平行突起としたが、低摩擦化を図ることができれば、背圧リップ7の摺動面の周方向に平行でなく、単に並行、また不連続の突起としても良い。
【0036】
要は、背圧リップの摺動面にベタ当たりを防止できる部分を設けてあれば良い。
【0037】
尚、上記実施の形態では、補強環5をゴム状弾性体83を介して嵌合するゴム嵌合を例にとって説明したが、ガイド部材4に直接嵌合するいわゆる金属嵌合であっても同様に適用することができる。
【0038】
また、ガイド部材4に嵌合するタイプのものでなく、その他の部材に取付けられるタイプのものであっても良い。
【0039】
そして、上記実施の形態で示した構成部分の形状・材質・数は一例に過ぎず、仕様等により適宜変更されるものである。
【0040】
【発明の効果】
本発明は、以上の構成及び作用を有するもので、背圧リップの往復動軸の外周面との摺動面に、往復動軸の外周面に対するベタ当たり防止部を設けたので、摺動抵抗の低減を図ることができる。
【0041】
これにより、往復動軸の摺動時の背圧リップの挙動を抑えることができ、しいてはシールリップの安定となる。このことから、シールリップの性能の向上、例えば往復動軸が挿入されているガイド部材と往復動軸との摺動部の焼き付け防止としての油の漏れ量コントロールの安定化を図ることができる。
【0042】
また、ベタ当たり防止部を並行突起とすることで、低摩擦化を図ることができ、より摺動抵抗の低減化を図ることができ、上記したようにシールリップの性能の向上を図ることができる。
【0043】
さらに、並行突起を平行突起とすることで、安定して低摩擦化を図ることができると共に、上記した背圧リップの挙動をより抑えることができる。これにより、さらにシールリップの性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1(a)は本発明の一実施の形態に係る往復動用密封装置の半断面図であり、同図(b)は同図(a)の要部拡大図である。
【図2】図2は図1の密封装置の取付け状態を示す断面図である。
【図3】図3(a)は従来の往復動用密封装置の半断面図であり、同図(b)は同図(a)の要部拡大図である。
【図4】図4は図3の密封装置の取付け状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 往復動用密封装置
2 ステム(往復動軸)
3 軸孔
4 ガイド部材
5 補強環
51 内向きフランジ部
52 筒状部
6 シールリップ
7 背圧リップ
8 シール本体
81,82,83 ゴム状弾性体
9 スプリング
10 平行突起(並行突起;ベタ当たり防止部)

Claims (3)

  1. 往復動軸の外周面を摺動自在に密封接触するシールリップと、該シールリップへ反密封対象流体側から圧力が加わるのを防止すべく圧力を受ける、前記往復動軸の外周面に摺動自在な背圧リップと、を備えたバルブステムシール用の往復動用密封装置において、
    前記背圧リップは反密封対象流体側に延びる断面略板状であり、かつ当該背圧リップが加圧されたときに前記往復動軸の外周面に当接する前記背圧リップの内周面の軸方向全体にベタ当たり防止部を設けたことを特徴とする往復動用密封装置。
  2. 前記ベタ当たり防止部は並行突起であることを特徴とする請求項1に記載の往復動用密封装置。
  3. 前記並行突起は平行突起であることを特徴とする請求項2に記載の往復動用密封装置。
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