WO2024075648A1

WO2024075648A1 - バルブステムシール用密封装置

Info

Publication number: WO2024075648A1
Application number: PCT/JP2023/035637
Authority: WO
Inventors: 昌道稀代; 佳奈宮川
Original assignee: Nok株式会社
Priority date: 2022-10-04
Filing date: 2023-09-29
Publication date: 2024-04-11

Abstract

オイル漏れ量のばらつきを抑制し、オイル漏れ量を安定化させる。　バルブステム（２）と、バルブステム（２）の軸（Ｘ）方向における移動をガイドするバルブステムガイド（３）との間をシールするバルブステムシール用密封装置（１）であって、バルブステムガイド（３）の端部に取り付けられる環状の金属環（５）と、金属環（５）と一体に固定されてバルブステム（２）の外周面と摺動自在に接触するシール体（７）とを備え、シール体（７）は、バルブステム（２）の外周面に摺動自在に接触するシールリップ（７２１，７２２）と、シールリップ（７２１，７２２）よりもバルブステムガイド（３）側においてバルブステム（２）の外周面と摺動自在に接触する背圧リップ（７２５）と、背圧リップ（７２５）とシールリップ（７２１，７２２）との間にバルブステム（２）の外周面と摺動自在に接触する背圧補助リップ（７２６）とを有する。

Description

バルブステムシール用密封装置

　本発明は、バルブステムシール用密封装置に関する。

　従来、自動車エンジンのエンジンバルブには、吸排気バルブのバルブステムを軸方向へ移動自在に支持するバルブステムガイドの摺動面に補給されるエンジンオイルの量を調整すると共に、排気ガス等をシールするためにバルブステムシール用密封装置が用いられている。

　このバルブステムシール用密封装置は、内燃機関の動作中、バルブステムガイドとバルブステムとの間に適量のオイルを導くように、オイル漏れを意図的に生じさせてその漏れ量を制御するためのシールである。

　バルブステムシール用密封装置において、オイルの漏れ量が少なすぎるとバルブステムガイドとバルブステムとの間に焼きつきが発生し、オイルの漏れ量が多過ぎると燃焼室内にオイルが過剰に導入されて白煙発生などの不都合が生じるため、オイル漏れ量を制御することは非常に重要である。

　図７（Ａ）および（Ｂ）に示すように、バルブステムシール用密封装置１００は、バルブステムガイド１２０の外周側に設けられる円筒状かつ金属製の補強環１３０と、その補強環１３０の一端側に加硫接着等により取り付けられ、バルブステム１１０の外周面と摺動するゴム等の弾性体により形成されるシールリップ１４０とを備えている。

　このようなバルブステムシール用密封装置１００では、バルブステム１１０の外周面にシールリップ１４０が接触して摺動することによりオイル室側Оのオイルをシールしている。また、これに加えて、ポート圧負荷時の背圧（太白抜矢印）がかかった場合のオイル漏れ量を安定化、および、シールリップ１４０とバルブステム１１０の外周面とが摺動する際のリップ開弁対策のために、シールリップ１４０のポート側Ｐにバルブステム１１０の外周面と接触して摺動する背圧リップ１５０が設けられている（例えば、特許文献１を参照。）。

特開２０１６－１９４３４３号公報

　このような構成のバルブステムシール用密封装置１００においては、図８（Ｂ）に示すように、ポート圧負荷時に背圧ＰＲＳがかかると、背圧ＰＲＳがかからない場合（Ａ）に比べて、背圧リップ１５０のバルブステム１１０に対する軸接触力（面圧）が大きくなる。このような場合、使用条件、リップからのオイル漏れ量等の設定条件によっては、バルブステム１１０がオイル室側Оへ移動する閉弁時において、背圧リップ１５０のオイルの掻き出しによるオイル漏れ量が増加してしまうことが懸念されている。

　本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、オイル漏れ量のばらつきを抑制し、オイル漏れ量を安定化させることができるバルブステムシール用密封装置を提供することにある。

　本発明は、バルブステムと、当該バルブステムの軸方向における移動をガイドするバルブステムガイドとの間の隙間をシールするバルブステムシール用密封装置であって、前記バルブステムガイドの端部に取り付けられる環状の金属環と、前記金属環と一体に固定されて前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触するシール体と、を備え、前記シール体は、前記バルブステムの外周面に摺動自在に接触するシールリップと、前記シールリップよりもバルブステムガイド側において前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触する背圧リップと、前記背圧リップと前記シールリップとの間に前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触する背圧補助リップと、を有する。

　前記背圧補助リップは、周方向において一定の間隔で等配に複数設けられている、ことが好ましい。

　前記背圧補助リップは、その一部に接触面を有さない、ことが好ましい。

　前記背圧補助リップは、全周にわたって接触面を有している、ことが好ましい。

　本発明によれば、オイル漏れ量のばらつきを抑制し、オイル漏れ量を安定化させることができるバルブステムシール用密封装置を実現することができる。

本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置の装着状態を示す断面図（Ａ）、および、バルブステムシール用密封装置の構成を示す半断面図（Ｂ）である。本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置の構成を示す斜視断面図である。本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置において背圧が付与されていない場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ａ）、および、背圧が付与されている場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ｂ）を示す断面図である。本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置のポート圧に対する背圧リップの軸接触力を示すグラフである。本発明の第２の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置の構成を示す断面図（Ａ）、および、バルブステムシール用密封装置の構成を示す半断面図（Ｂ）である。本発明の他の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置における背圧補助リップの構成を示す断面図である。従来のバルブステムシール用密封装置の装着状態を示す断面図（Ａ）、および、従来のバルブステムシール用密封装置の構成を示す半断面図（Ｂ）である。従来のバルブステムシール用密封装置において背圧が付与されていない場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ａ）、および、背圧が付与されている場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ｂ）を示す断面図である。

＜第１の実施の形態＞
　以下、本発明の一例である第１の実施の形態について図面を参照しながら説明する。図１は、本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置１の装着状態を示す断面図（Ａ）、および、バルブステムシール用密封装置１の構成を示す半断面図（Ｂ）である。図２は、本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置の構成を示す斜視断面図である。図３は、本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置において背圧が付与されていない場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ａ）、および、背圧が付与されている場合の背圧リップの軸接触力（面圧）分布（Ｂ）を示す断面図である。図４は、本発明の第１の実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置のポート圧に対する背圧リップの軸接触力を示すグラフである。

　なお、本発明の第１の実施の形態の説明において、説明の便宜上、軸Ｘに沿った軸方向において矢印ａ方向をオイル室側Ｏとし、軸Ｘに沿った軸方向において矢印ｂ方向をポート側Ｐとする。

　図１（Ａ）および（Ｂ）に示すように、本実施の形態にかかるバルブステムシール用密封装置１は、例えば自動車用エンジンのシリンダヘッドに設けられた排気系のバルブに用いられるものである。ただし、バルブステムシール用密封装置１は、これに限るものではなく、吸気系のバルブに用いられるようにしてもよい。

　バルブステムシール用密封装置１は、バルブステム２を軸方向に往復動可能に支持するバルブステムガイド３に装着され、バルブステム２とバルブステムガイド３との摺動面に補給されるオイル室側Ｏのエンジンオイルの漏れ量を調整すると共に、ポート側Ｐから排出される排気ガス等をシールしている。

　バルブステムシール用密封装置１は、両端が開口する環状に形成されており、軸Ｘ方向の一端側に先端開口部１１、軸方向の他端側に根元開口部１３をそれぞれ有している。先端開口部１１は、バルブステムシール用密封装置１がバルブステムガイド３に装着されたとき、オイル室側Оと対向する開口部分である。根元開口部１３は、バルブステムシール用密封装置１がバルブステムガイド３に最初に差し込まれる開口部分である。

　バルブステムシール用密封装置１は、金属環５を備え、この金属環５にゴム状の弾性体からなるシール体７が一体に固定されている。金属環５とシール体７は、加硫接着によって一体に固定されている。

　金属環５は、バルブステムガイド３の軸Ｘ方向における一端側（オイル室側О）の端部を外側から覆う金属製の環状部材である。金属環５は、軸Ｘ方向に沿って所定の長さを有する円筒状の部分（以下、これを「円筒部」という。）５１と、円筒部５１の軸Ｘ方向における一端側（オイル室側О）の端部からバルブステム２の外周面に向かって延びる円環状の部分（以下、これを「円環部」という。）５２と、を有している。

　円筒部５１は、バルブステムガイド３の外径よりも大きな内径を有している。また、円筒部５１の軸Ｘ方向における他端側（ポート側Ｐ）の端部は上述した根元開口部１３を構成している。

　円環部５２は、その中央に開口端５２ｈを有し、その開口端５２ｈの内径は、バルブステム２の外径よりも大きい。すなわち金属環５においては、円環部５２の開口端５２ｈとバルブステム２の外周面とが接触することのない程度の隙間が存在している。

　シール体７は、シール嵌合部７１、シール本体部７２、および、シール嵌合部７１とシール本体部７２とを繋ぐシール接続部７３を有している。シール嵌合部７１は、軸Ｘ方向に沿って所定の長さを有し、金属環５の内周面に固定された円筒状部分であり、バルブステムガイド３の外周面に対して嵌合固定されている。シール嵌合部７１は、金属環５の円筒部５１の他端側（ポート側Ｐ）の端部から突出することのない程度の長さを有している。

　シール接続部７３は、シール嵌合部７１の軸Ｘ方向における一端側（オイル室側О）の端部から金属環５の円環部５２を全体的に覆うようにバルブステム２の外周面に向かって延び、その内側の端部がシール本体部７２と一体に結同された円環状部分である。シール接続部７３は、金属環５の円環部５２と一体に固定されている。

　シール本体部７２は、金属環５の円環部５２の開口端５２ｈを覆うように一体に固定された全体として円筒状の部分であり、バルブステム２の外周面に摺動自在に接触するように設けられている。

　シール本体部７２は、その外周面に環状の凹部７２ｒが形成されており、その凹部７２ｒにガータスプリング９が取り付けられている。ガータスプリング９は、その緊迫力によってバルブステム２に対するシール本体部７２の軸接触力（面圧）を高めている。

　シール本体部７２は、金属環５の円環部５２の開口端５２ｈの近傍である中央付近から略くの字状（Ｌ字状）に屈曲しており、その中央付近よりもオイル室側О寄りの円錐台状面７２ａ（破線で示す）と、その中央付近よりもポート側Ｐ寄りの円錐台状面７２ｂ（破線で示す）とを有している。

　シール本体部７２は、その円錐台状面７２ａに対して、バルブステム２の外周面に摺動自在に接触するメインリップ７２１およびサブリップ７２２を有している。メインリップ７２１およびサブリップ７２２は、中央付近からオイル室側Оへ向かってサブリップ７２２、メインリップ７２１の順番に連続して設けられている。

　ここで、メインリップ７２１は、周方向において連続した無端円状に設けられている。サブリップ７２２は、周方向において所定の間隔ごとに複数個設けられている。ただし、これに限らず、サブリップ７２２についても、周方向において連続した無端円状に設けられていたり、周方向において不等間隔に複数配置されていてもよい。これらのメインリップ７２１およびサブリップ７２２は、ガータスプリング９の存在によってバルブステム２の外周面に押し付ける緊迫力が付与されている。

　メインリップ７２１は、軸Ｘ方向においてサブリップ７２２よりも一端側（オイル室側О）に配置されており、先端開口部１１と隣接している。メインリップ７２１は、バルブステム２の外周面に向かって次第に縮径する円錐環状の部分であり、バルブステム２の外周面と接触するリップ先端部を有している。メインリップ７２１の内径は、バルブステム２の外径よりも小径であり、バルブステム２に対して所定の締め代を有している。

　サブリップ７２２は、軸Ｘ方向においてメインリップ７２１よりも他端側（ポート側Ｐ）に当該メインリップ７２１と隣接して配置されており、メインリップ７２１と同様に、バルブステム２の外周面に向かって次第に縮径する楔状の部分である。

　サブリップ７２２においても、バルブステム２の外周面と接触するリップ先端部を有している。サブリップ７２２の内径は、バルブステム２の外径よりも小径であり、バルブステム２に対して所定の締め代を有している。

　この場合、メインリップ７１２の円錐台状面７２ａからの突出量よりも、サブリップ７２２の円錐台状面７２ａからの突出量の方が僅かに大きく設定されているが、円錐台状面７２ａがオイル室側Оに向かって縮径しているため、メインリップ７２１のバルブステム２に対する締め代はサブリップ７２２のバルブステム２に対する締め代よりも大きく設定されている。

　すなわちシール本体部７２は、オイル室側Ｏと近い位置に形成したメインリップ７２１に加えて、当該メインリップ７２１と隣接しメインリップ７２１よりもポート側Ｐ寄りの位置に形成したサブリップ７２２を有していることにより、メインリップ７２１がバルブステム２の外周面にベタ当たりすることを防止している。

　具体的には、メインリップ７２１に続いてサブリップ７２２がバルブステム２の外周面に接触すると、メインリップ７２１がバルブステム２の外周面に押し付けられる軸接触力（面圧）をサブリップ７２２が抑制することになる。これにより、シール本体部７２は、メインリップ７２１およびサブリップ７２２を介してオイル室側Ｏのオイルをポート側Ｐへ適度に漏らすことを可能としている。

　なお、オイル室側Ｏのオイルをポート側Ｐへ適度に漏らすことが可能であれば、メインリップ７２１の締め代がサブリップ７２２の締め代よりも大きい必要は必ずしもなく、メインリップ７２１の締め代がサブリップ７２２の締め代と同じであったり、逆にメインリップ７２１の締め代がサブリップ７２２の締め代より小さくてもよい。

　またシール本体部７２は、その円錐台状面７２ｂに対して、バルブステム２の外周面に摺動自在に接触する背圧リップ７２５および背圧補助リップ７２６を有している。背圧リップ７２５および背圧補助リップ７２６は、中央付近からポート側Ｐへ向かって背圧補助リップ７２６、背圧リップ７２５の順番に連続して設けられている。

　背圧リップ７２５は、ポート側Ｐ寄りの端部からバルブステム２の外周面に向かって斜め下方へ突出しており、バルブステム２の外周面と接触するリップ先端部を有している。背圧リップ７２５は、バルブステムガイド３とバルブステム２との間の隙間を通じて燃焼室内からの背圧ＰＲＳがメインリップ７２１およびサブリップ７２２に及んで開弁したり、過剰に変形することを防止している。

　さらにシール本体部７２は、背圧リップ７２５とサブリップ７２２との間であって、かつ、円錐台状面７２ｂにおける金属環５の開口端５２ｈ近傍に対して、背圧リップ７２５と隣接するように設けられた背圧補助リップ７２６を有している。背圧補助リップ７２６は、バルブステム２の外周面に向かって楔状に突出した部分であり、バルブステム２の外周面と接触するリップ先端部７２６ａを有している。

　背圧リップ７２５の内径は、バルブステム２の外径よりも小径であり、バルブステム２に対して所定の締め代を有している。また、背圧補助リップ７２６の内径は、バルブステム２の外径よりも小径であり、バルブステム２に対して所定の締め代を有している。

　この場合、背圧リップ７２５の円錐台状面７２ｂからの突出量よりも、背圧補助リップ７２６の円錐台状面７２ｂからの突出量の方が僅かに大きく設定されているが、円錐台状面７２ｂがポート側Ｐに向かって縮径しているため、背圧リップ７２５のバルブステム２に対する締め代は背圧補助リップ７２６のバルブステム２に対する締め代よりも大きく設定されている。

　なお、背圧補助リップ７２６は、周方向において等間隔に複数配置されている。ただし、これに限らず、背圧補助リップ７２６が周方向において不等間隔に複数配置されていてもよい。

　具体的には、背圧補助リップ７２６は、背圧リップ７２５に続いて背圧補助リップ７２６がバルブステム２の外周面に接触すると、ポート側Ｐから図３（Ｂ）の太白抜矢印のような背圧ＰＲＳ（排気ポートからの排気ガスによる圧力）を受けた場合に、背圧補助リップ７２６に背圧ＰＲＳの圧力が分散される。

　これにより、背圧リップ７２５に対する圧力が減少することになるので、背圧リップ７２５が当該バルブステム２の外周面に抱き着くように変形する、すなわち背圧リップ７２５がバルブステム２の外周面に押し付けられる軸接触力（面圧）を低減することができる。

　図３（Ａ）および（Ｂ）から分かるように、背圧ＰＲＳが無い場合（Ａ）と比べて、背圧ＰＲＳがある場合（Ｂ）であっても、背圧補助リップ７２６がバルブステム２の外周面に接触しているため、背圧補助リップ７２６に圧力が分散され、かくして背圧リップ７２５の軸接触力（面圧）の増加が少なくなる。

　これにより、バルブステム２がオイル室側Оへ移動する閉弁時に、メインリップ７２１およびサブリップ７２２を介してオイル室側Ｏのオイルがポート側Ｐへ漏れるオイル漏れ量に対し背圧リップ７２５によりポート側Ｐへ掻き出してしまう量を低減し、オイル漏れ量が増大してしまうことを抑制することができる。

　また、背圧補助リップ７２６は、バルブステム２の開弁時に背圧リップ７２５を通過したオイル（油膜）を閉弁時にそのまま戻すことができるようにリップ先端部７２６ａのＲ面取り半径を出来る限り大きくした弧状のリップ先端部７２６ａを有している。すなわち、背圧補助リップ７２６のリップ先端部７２６ａは、オイル室側Ｏとポート側Ｐとの間で接触面圧勾配が同じになるように設定されている。なお、リップ先端部７２６ａの形状としては点接触に近いなだらかな弧状であったり、バルブステム２の外周面と面接触する平坦な形状であってもよい。

　このように背圧補助リップ７２６のリップ先端部７２６ａのＲ面取り半径が出来る限り大きく設定されたことにより、当該リップ先端部７２６ａによる閉弁時のオイルの掻き出し量が増加することを抑制している。

　すなわち、バルブステム２の開弁時であっても、背圧補助リップ７２６がバルブステム２の外周面に接触することにより背圧リップ７２５の面圧が大きく増大することがないため、背圧リップ７２５を通過したオイルを閉弁時にそのまま戻すことができる。なお、背圧補助リップ７２６のリップ先端部７２６ａはオイル室側Ｏのオイルをポート側Ｐへ適度に漏らすオイル漏れ量には寄与しない形状となっている。

　なお、背圧補助リップ７２６は、バルブステム２の外周面に接触する背圧リップ７２５のリップ先端部で発生する軸接触力（面圧）や、背圧ＰＲＳによるオイル漏れ量の変動量に応じて任意の個数を設けることが可能である。さらに、背圧補助リップ７２６は、周方向の長さが個々に異なっていてもよい。

　この場合、シール本体部７２において背圧補助リップ７２６が存在する部分では背圧リップ７２５の軸接触力（面圧）が小さくなるのに対し、背圧補助リップ７２６が存在しない部分では、背圧リップ７２５の軸接触力（面圧）が大きくなる。

　このため、シール本体部７２では、背圧補助リップ７２６をどのような長さにするか、どのような間隔で何個設けるかに応じて、背圧リップ７２５によりオイルが掻き落とされるオイル漏れ量を任意に調整することができる。

　以上の構成において、バルブステムシール用密封装置１は、シール本体部７２の内周面である円錐台状面７２ｂに対して、背圧リップ７２５に加えて背圧補助リップ７２６を隣接して設け、その背圧補助リップ７２６のリップ先端部７２６ａをバルブステム２の外周面と接触させるようにした。

　これにより、図４に示すように、白丸で示す背圧補助リップ７２６ありのバルブステムシール用密封装置１は、背圧補助リップ７２６を設けなかった場合（黒丸で示す背圧補助リップなし）と比較して、背圧リップ７２５のリップ先端部で発生する軸接触力（面圧）を低減することができる。この場合、実験によれば、背圧リップ７２５のリップ先端部で発生する軸接触力（面圧）は、背圧ＰＲＳが大きくなるに連れて約９パーセントから１１パーセントも低下している。

　このようにバルブステムシール用密封装置１において背圧補助リップ７２６を設けなかった場合、背圧補助リップ７２６を設けた場合と比較すると、ポート圧負荷時のように背圧ＰＲＳが大きくなるに連れて、背圧リップ７２５のバルブステム２の外周面に対する軸接触力（面圧）が非常に大きくなる。

　そうすると、バルブステム２の開弁時に背圧リップ７２５から漏れたオイルがバルブステム２の閉弁時に背圧リップ７２５により掻き落とされてしまってオイルがオイル室側Оに戻り切らず、オイル室側Ｏのオイルの量が少なくなってしまう。

　しかしながらバルブステムシール用密封装置１のように、背圧リップ７２５に加えて、当該背圧リップ７２５と隣接するように背圧補助リップ７２６を設けたことにより、背圧リップ７２５のリップ先端部で発生する軸接触力（面圧）が背圧補助リップ７２６を設けなかった場合に比べて全体的に低減されるので、閉弁時において背圧リップ７２５によりオイルが掻き落とされるオイル漏れ量のばらつきが減ってオイル漏れ量を安定化させることができる。

　また、バルブステムシール用密封装置１の背圧補助リップ７２６は、オイル漏れ量の変動量に応じて周方向に一定の間隔で等配に複数設けられているため、ポート圧負荷時のオイル漏れ量を安定化させることができる。

　また、バルブステムシール用密封装置１の背圧補助リップ７２６は、リップ先端部７２６ａのＲ面取り半径を出来る限り大きくし、オイル室側Ｏとポート側Ｐとの間で接触面圧勾配が同じになるようにしたことにより、リップ先端部７２６ａによる閉弁時のオイルの掻き出しを抑制し、オイル漏れ量を安定化させることができる。

＜第２の実施の形態＞
　図１との対応部分に同一符号を付して示す図５に示すように、第２の実施の形態におけるバルブステムシール用密封装置１ｓは、第１の実施の形態におけるバルブステムシール用密封装置１と基本的な構造は共通であるが、背圧補助リップ７２６に代わり、周方向において連続した無端円状の全周面にわたって接触する背圧補助リップ７２６ｓが設けられている。

　このバルブステムシール用密封装置１ｓにおいては、オイル漏れ量に影響がない場合に全周面にわたって接触する背圧補助リップ７２６ｓを用いることができ、その効果については第１の実施の形態と同様であり、オイル漏れ量のばらつきを抑制し、オイル漏れ量の安定化を図ることができる。なお、背圧補助リップ７２６ｓに対して意図的に面圧勾配を設けるようにしてもよい。この場合、背圧補助リップ７２６ｓを介してシール機能すなわちオイル漏れ量を調整することが可能である。

＜他の実施の形態＞
　以上、本発明のバルブステムシール用密封装置１、１ｓについて、好ましい実施の形態を挙げて説明したが、本発明のバルブステムシール用密封装置１、１ｓは上記実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、上記第１および第２の実施の形態において、等配に設けられた背圧補助リップ７２６に対して円環状のサブリップ７２２を設けるようにしたり、円環状の背圧補助リップ７２６ｓに対して円環状のサブリップ７２２を設けるようにする等、あらゆる組み合わせを採用することも可能である。

　また、上述した第１の実施の形態においては、等配に配置された複数の背圧補助リップ７２６を設けるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、図６に示すような形状の背圧補助リップ７２７を等配に設けるようにしてもよい。

　この場合、背圧補助リップ７２７の一部には、欠け７２７ｋが設けられている。これにより、シール本体部７２は、欠け７２７ｋの存在しない背圧補助リップ７２７と比較して摺動抵抗の増大を抑制しながら、第１の実施の形態および第２の実施の形態と同様に、バルブステム２の閉弁時のオイルの掻き出しを抑制し、オイル漏れ量を安定化させることができる。なお、背圧補助リップ７２７においても、等配に設ける場合に限らず、背圧補助リップ７２７が周方向において不等間隔に複数配置されていてもよい。

　その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明のバルブステムシール用密封装置１、１ｓを適宜改変し、また各種構成の組み合わせを変更することができる。かかる変更によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。

　１，１ｓ，１００…バルブステムシール用密封装置、２，１１０…バルブステム、３，１２０…バルブステムガイド、５…金属環、７…シール体、９…ガータスプリング、１１…先端開口部、１３…根元開口部、５１…円筒部、５２…円環部、５２ｈ…開口端、７１…シール嵌合部、７２…シール本体部、７３…シール接続部、１３０…補強環、１４０…シールリップ、１５０…背圧リップ、７２１…メインリップ、７２２…サブリップ、７２５…背圧リップ、７２６、７２７…背圧補助リップ、７２６ａ…リップ先端部。

Claims

　バルブステムと、当該バルブステムの軸方向における移動をガイドするバルブステムガイドとの間の隙間をシールするバルブステムシール用密封装置であって、
　前記バルブステムガイドの端部に取り付けられる環状の金属環と、
　前記金属環と一体に固定されて前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触するシール体と、
　を備え、
　前記シール体は、
　前記バルブステムの外周面に摺動自在に接触するシールリップと、
　前記シールリップよりもバルブステムガイド側において前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触する背圧リップと、
　前記背圧リップと前記シールリップとの間に前記バルブステムの外周面と摺動自在に接触する背圧補助リップと、
　を有するバルブステムシール用密封装置。
　前記背圧補助リップは、周方向において一定の間隔で等配に複数設けられている、
　請求項１に記載のバルブステムシール用密封装置。
　前記背圧補助リップは、その一部に接触面を有さない
　請求項１または２に記載のバルブステムシール用密封装置。
　前記背圧補助リップは、全周にわたって接触面を有している
　請求項１または２に記載のバルブステムシール用密封装置。