JP3823816B2 - 半導体ウエハの研磨方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に化学的機械的研磨(CMP)による半導体ウエハの研磨方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
半導体装置の製造工程の一つとして半導体ウエハ(以下ウエハと略すこともある)の平坦化を行う工程がある。
平坦化するための加工手段としては化学的機械的研磨(CMP)がある。これは、砥粒としての固体微粒子と研磨性を向上するための各種添加剤を含む研磨液を用い、吸着ヘッドに保持したウエハを、定盤上に貼り付けた発泡ポリウレタン等からなる研磨パッドに押しつけながら研磨を行うものである。
また、固体微粒子を研磨パッドに固定し、上記研磨液において、固体微粒子を除いたものを用いた固定砥粒タイプの研磨方法もある。
【0003】
いずれにしてもこれらの研磨は、固体微粒子の機械的な作用、並びに研磨液に含まれた各種添加物または上記固体微粒子自体と被研磨物表面との化学的な作用で進行する。上記機械的な作用と化学的な作用を適度に調整することで、高い平坦化精度が得られたり、パターン付きのウエハにおいて構成材料間の高い研磨選択性が得られる。
【0004】
上記添加物の作用としては以下のように多岐にわたるものがある。
(1)ウエハ表面へ吸着、またはウエハ表面と反応することによって、固体微粒子による機械的研磨を調整する。
つまり、例えば、上記添加物が、ウエハ表面へ吸着、またはウエハ表面と反応することによって、固体微粒子による機械研磨を抑制するものである場合、ウエハの被研磨表面を研磨パッドに押しつける圧力が高い領域では、上記添加物の上記抑制作用が小さいので、これを利用して、突起部等の研磨圧力の高い部分を選択的に研磨して平坦化を進める。
(2)異種材料を用いたパターンを有するウエハを研磨する場合は、上記添加物が特定の材料表面に選択的に吸着、または特定の材料表面と選択的に反応することにより固体微粒子による機械的研磨を調整し、研磨の選択性を向上する。
(3)金属の研磨において、金属表面に酸化物または水酸化物層や金属キレート層等を形成し、固体微粒子による機械的研磨を調整する。
【0005】
上記添加物により固体微粒子による機械的研磨を調整する方法は、それぞれの目的において効果を有するものであるが、付随する種々の問題点がある。
まず、 研磨速度の安定性に関するものである。
つまり、上記添加物の、ウエハ表面への吸着またはウエハ表面との反応が、例えば固体微粒子による機械的研磨中の摩擦熱や化学的な発熱等により研磨液の温度やpHが変化することにより影響されたり、各種不純物や微量成分の濃度が変化することにより影響されたりするために、 研磨速度が変動してしまうのである。
上記変動は、多数枚のウエハの研磨中に起こり研磨の再現性を損なう結果となったり、一枚のウエハ研磨中の 研磨速度の変動として現れたりする他、ウエハ面内の研磨不均一性として現れる場合もある。
また、異種材料の研磨選択性を得ようとする場合においては、再現性のある選択性が得られないという不具合が生じることとなる。
【0006】
以上のような多くの要因が関与するため、通常の研磨方法においては 研磨速度の安定化は困難なものとなっている。
そのために、これまでにも各種の検討がなされている。
特開平9‐150361号公報には、研磨中に研磨圧力を変化させてスループットと仕上げ面の精度を両立させようとする技術が開示されている。
また、特開2001‐189294号公報にも研磨中に研磨圧力を変化させる方法が開示され、研磨の進行に伴って変化するウエハの表面の状態を考慮して最適な研磨圧力を加えるというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、固体微粒子による機械研磨が主体となる状況では、上記公報において開示された方法によってある程度は研磨を制御することはできるが、研磨液に含まれる添加物の化学的な作用が大きい状況においては、研磨を制御することは困難である。
そのため、同一のウエハ表面の研磨において、同一の研磨条件で研磨を行っても、研磨の再現性が得られなかったり、ウエハ面内で研磨のばらつきを生じてしまうという課題があった。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ウエハ、パッド、研磨液等研磨条件によらず、容易に 研磨速度を安定化させ、また、ウエハ面内の研磨均一性を向上することができる半導体ウエハの研磨方法を得ることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る第1の半導体ウエハの研磨方法は、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に、固体微粒子を含有する研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す方法である。
【0010】
本発明に係る第2の半導体ウエハの研磨方法は、固体微粒子を表面に含有する研磨パッドを、半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に研磨液を供給しながら、上記半導体ウエの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
一般に、半導体ウエハの研磨に用いられる化学的機械的研磨(CMP)は、半導体ウエハの被研磨面に研磨パッドを圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に、固体微粒子を含有する研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて上記固体微粒子により研磨する方法で、本実施の形態においては、特に上記研磨液が、固体微粒子の他に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着する第2の物質の内の少なくとも一種を含有したもので、上記第1、第2の物質により固体微粒子による機械研磨を制御する。上記第1、第2の物質は、それぞれ上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応したり、上記半導体ウエハ被研磨面に吸着することにより、上記固体微粒子による研磨に影響を与え、例えば上記固体微粒子による研磨を促進したり抑制する。
【0017】
また、別のCMPとしては、上記CMPにおいて、研磨パッドの表面に固体微粒子を固定したものを用い、研磨液には固体微粒子を除いたものを用いて、同様に第1、第2の物質により、上記固体微粒子による機械研磨を制御するものもある。
【0018】
本発明の実施の形態の半導体ウエハの研磨方法は、上記CMPにおいて、特に、半導体ウエハの研磨途中で、固体微粒子による機械研磨を中断することを特徴とする。
以下、半導体ウエハの研磨の途中で固体微粒子による機械研磨の中断による作用効果を説明する。
CMPによる半導体ウエハの研磨中においては、固体微粒子による機械的研磨と上記第1、第2の物質による上記反応または吸着が同時に行われているが、上記第1の物質との化学反応により変化した表面の層(表面変化層)の厚さや密度、または第2の物質がウエハ表面に吸着した吸着量が、固体微粒子による機械的研磨の速度に影響を与えている。
一方で、固体微粒子の機械的研磨によって、吸着層や表面変化層が除去されることで新しいウエハ表面が露出し、第1の物質による表面変化層の形成や第2の物質の吸着を加速する効果がある。
一定速度で研磨が進行している場合においては、上記表面変化層や吸着量の厚さや密度が一定の値を維持しているが、上記のように、研磨は動的平衡の上に進行しているため、動的平衡状態を乱す何らかの要因があった場合、大きな 研磨速度の変動が起きてしまう可能性がある。
【0019】
例えば、第1、第2の物質による半導体ウエハの表面変化層または吸着層が、固体微粒子による機械的 研磨速度の抑制の働きを有している場合、何らかの要因で表面変化層や吸着層の減少が起こったときには、表面変化層または吸着層の形成が損なわれた領域では 研磨速度の増大を招き、このことによってさらに表面変化層または吸着層の減少を招いて、ますます 研磨速度の変動が大きくなってしまう。
一定条件で研磨を行っていても、動的平衡の平衡値は必ずしも一つの値に収束することはなく、初期値のばらつきや、何らかの擾乱によって変動してしまうことになる。このことが、 研磨速度の変動やウエハ面内の不均一性の発生原因となっている場合が多い。
【0020】
上記動的平衡のずれによる 研磨速度の変動や面内不均一性の抑制は、上記第1、第2の物質による上記反応または吸着を、研磨中、安定に保つことにより実現できることを見いだした。
つまり、研磨の途中に固体微粒子による機械的研磨、即ち上記表面変化層または吸着層の除去を停止させ、第1、第2の物質による表面変化層または吸着層の形成のみを進行させるというものである。この固体微粒子による機械的研磨を中断している間に、それまでの研磨中にばらついていた動的平衡状態を、一定の状態に収束させることができるので、研磨中の 研磨速度の安定化、面内不均一性解消が可能となる。
【0021】
上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応する第1の物質と、半導体ウエハ被研磨面に吸着する第2の物質において、第1の物質による表面変化層の形成速度と第2の物質の吸着層の形成速度は、固体微粒子による機械的除去がない場合、即ち、本発明における研磨を中断している状態では、例えばESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)等を用いて測定した表面変化層の形成量や表面の接触角から測定した表面状態の変化量から知ることができ、上記表面変化層の形成速度または吸着層の形成速度が、長くても数秒程度の短時間で、ほぼ飽和に達するものであることが分かった。
しかしながら、実際の研磨中は、固体粒子による吸着層や表面変化層の除去が並行して進行しているため、上記飽和量に達するより遙かに少ない状態でCMPを行っていたことが推定される。
【0022】
そこで、本実施の形態においては、研磨中に、固体粒子による吸着層や表面変化層の除去を、0.1秒程度中断することにより、吸着層や表面変化層のばらついていた動的平衡状態を是正でき、さらに再度研磨が開始された状態で上記動的平衡状態を保つことができることを確認した。
以上のことから、本発明の実施の形態のウエハの研磨方法における、固体微粒子による機械的研磨を停止させるタイミングは、研磨条件や研磨液の種類に依存するものの、上記のような定量評価の結果からある程度の範囲に絞られる。
固体微粒子による機械的研磨を中断する時間は、0.1秒以上でかつ固体微粒子による機械的研磨を連続して行う時間の1/3以下であることが好ましく、0.3秒以上でかつ固体微粒子による機械的研磨を連続して行う時間の1/10以下がさらに望ましい。
固体微粒子による機械的研磨の中断時間が短すぎる場合には、上記第1、第2の物質の反応または吸着が十分に進行しない可能性がある。長すぎる場合には、研磨時間が不必要に長くなり好ましくない。
【0023】
また、固体微粒子による機械的研磨を連続して行う時間は、実研磨所要時間(研磨中、実際に機械的研磨が行われている時間で、中断時間は含まない)の1/3以下であることが好ましく、1/5以下がさらに好ましい。この時間が長すぎれば、 研磨速度を安定化する効果が発揮されにくい。
【0024】
以上述べた「研磨を中断する時間」は、研磨速度を安定化するために有効な条件であるが、目的をウエハ面内の不均一性の抑制、ウエハ間の 研磨速度のばらつきを抑制するという点に絞った場合には、研磨の初期の、即ちウエハ最表面層または表面の汚染層のみを除去する段階において、固体微粒子による機械的研磨の中断を行えばよい。
この場合のウエハ最表面層または汚染層とは、特に限定したものではなく、数nm以下の厚さの、ウエハ最表面部分が内部と異なった組成となっている状態や、ウエハ表面にウエハを構成する物質以外のものが吸着したものを指す。
上記ウエハ最表面層または汚染層が存在する場合には、研磨中にウエハの面内の研磨速度にムラを生じることがあるので、研磨の初期段階の、ウエハ最表面層または汚染層のみを除去する段階で、固体微粒子による機械的研磨の中断を行うことで、均一性が得られ下層部の研磨を均一に行うことが可能になる。
この場合には、上記実研磨所要時間には関係なく、まず、好ましくは0.5秒〜10秒間、さらに好ましくは、0.8秒〜6秒間の研磨を行い、続いて固体微粒子による機械的研磨の中断を、好ましくは0.1秒〜10秒間、さらに好ましくは0.3秒〜6秒間行う。
【0025】
上記研磨と研磨の中断を複数回繰り返してもよいが、いずれも時間が短すぎる場合には、十分な効果が得られず、長すぎれば研磨時間が長くなるという問題がある。
また、一定間隔で上記研磨と研磨の中断を繰り返すことにより、研磨の平均速度を一定にできるので、研磨工程の管理が容易になる。
【0026】
本発明の実施の形態に係わる、固体微粒子による機械的研磨を中断し、第1、第2の物質による反応または吸着による表面変化層や吸着の形成を進行させる方法としては、ウエハの被研磨面をパッドに押しつける圧力をゼロにするという方法やウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制するという方法や、これらを同時に行う方法がある。
いずれの方法も固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させる方法である。このとき研磨液は除去されていないため第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続する。
【0027】
ウエハの被研磨面をパッドに押しつける圧力を0g/cm2とする方法において、パッドとウエハ表面が密着している場合には、吸着または反応が起こりにくくなるときもあるが、パッドの多孔性が維持されている限り問題はない。
【0029】
ウエハ表面とパッドの相互の移動を抑制する方法において、相対速度を完全に0とする必要はなく、十分に低速にできればよい。
望ましくは上記機械的研磨を中断する前の、ウエハ表面とパッドの相対速度の40%以下、さらに望ましくは15%以下になればよい。この範囲の相対速度であれば、固体微粒子による機械的研磨の影響を、上記第1、第2の物質の作用効果を得られるほどに十分に小さくすることができる。
相対速度の変化方法は、ベルト状のパッドが移動するものであれば、パッドの移動にあわせてウエハを移動させたり、ベルトの回転を停止させたり反転させたりする方法があり、これらの動きにあわせてウエハの移動を変化させる。
円盤状の定盤が回転する方式のものであれば、定盤の回転速度を変化させる方法、ウエハを定盤に対して移動したり、ウエハの回転速度を調整したり反転することで、パッドとウエハの相対速度を調整する方法がある。
【0030】
本発明の実施の形態に係わる固体微粒子としては、アルミナ、シリカ、酸化セリウム、ジルコニア、マンガン酸化物の他、各種金属、金属の酸化物、窒化物、炭化物、ホウ化物および炭素等の少なくとも一種の微粉末でもよい。
固体微粒子の一次粒子の粒径は5nm〜1.0μmが望ましく、より望ましくは7nm〜0.5μmである。
最適な粒径は、粒子の種類、粒子の凝集状態に依存するものの、粒子が大きすぎる場合には、表面に研磨傷を発生しやすく好ましくない。粒子が小さい場合には、凝集させることにより良好な研磨特性が得られることが多いが、一次粒子の粒径が5nm未満になると、本発明の効果を発現するに十分な研磨効率が得られない。この固体微粒子は研磨液中に含まれていても良く、研磨パッドに含まれていてもよい。
【0031】
本発明の実施の形態に係わる第1の物質とは、ウエハ表面と反応して表面部分を溶解したり、表面に反応による生成物質からなる層を形成して、固体微粒子による研磨作用や他成分によるエッチング反応等を抑制したり促進したりするものをいう。
上記第1の物質としては、過酸化水素(H2O2)、硝酸第二鉄(Fe(NO3)3)、過ヨウ素酸カリウム(KIO3)、ペルオキソ硝酸塩、ペルオキソ炭酸塩、ペルオキソチタン酸またはペルオキソチタン酸塩等の酸化性物質で、ウエハ表面に酸化膜を形成したり溶解したりする物質がある。
また、シランカップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、チタニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等のカップリング剤で、表面に存在する水酸基等の官能基と反応したり表面で皮膜を形成する物質がある。
また、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸、有機酸またはアンモニア類、炭酸塩類、水酸化物等のアルカリなどのように、研磨液のpHを調整することで表面を溶解させたり変質させたりする物質がある。
さらに、ベンゾトリアゾール、o‐トリルトリアゾール、m‐トリルトリアゾール、p‐トリルトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、1‐ヒドロキシベンゾトリアゾール、ニトロベンゾトリアゾール、ジヒドロキシプロピルベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール誘導体のように、金属表面と反応する物質や、エチレンジアミン四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、ニトリロ三酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、マレイン酸、フマル酸、乳酸、酢酸、ギ酸、シュウ酸、アジピン酸、グルタル酸、グルコール酸、安息香酸、サリチル酸のように、金属イオンに配位してウエハ表面の表面層の硬さや厚さに影響を与える物質がある。
【0032】
本発明の実施の形態に係わる第2の物質とは、研磨液に可溶な物質であり、ウエハ表面に吸着したり、ウエハ表面上に薄膜を形成することによって、固体微粒子とウエハ表面間の接触を妨げたり、摩擦力を低減したりすることにより、固体微粒子による研磨作用や他成分によるエッチング反応等を抑制したり促進したりするものをいう。
上記第2の物質としては、非イオン性、陽イオン性または陰イオン性の低分子や高分子の界面活性剤がある。
また、チオール、スルフィド、チオカルボン酸、チオケトン、チオアルデヒド等の硫黄を含む極性基や、複素環、アミン、イミン、アミド、ニトリル、イミド、ヒドラジド、アミジン等の窒素を含む極性基や、エーテル、カルボン酸、ケトン、アルデヒド、エステル、フェノール等の酸素を含む極性基を有する有機化合物または無機化合物がある。
【0033】
本実施の形態の半導体ウエハの研磨方法においても、スクラッチの抑制、終点検出等のため1枚のウエハの研磨中に研磨速度を変化させることは可能である。この場合には、研磨中にパッドとウエハの相対速度、研磨圧を変化させることとなるが、これらの変化をさせつつ、上記の固体微粒子による機械的研磨の中断させる。
【0034】
【実施例】
実施例1.
研磨装置として、8インチのウエハを保持できるヘッドと直径750mmの定盤に研磨パッド{商品名:IC1400,ロデール(株)製}を貼り付けたCMP研磨実験装置を用いた。
上記研磨装置を用い、研磨液として、酸化セリウム(平均粒径0.13μm)2重量%、N‐β(アミノエチル)γ‐アミノプロピルトリメトキシシラン0.3重量%、ヒドロキシエチルセルロース0.2重量%を含む液を調整したものを用い、厚さ500μmのシリコン酸化膜を形成した8インチのウエハを評価用ウエハとして下記のようにして研磨した。
なお、研磨工程において、上記研磨液の流量を120ml/min、研磨パッドをウエハの被研磨面に押しつける荷重を250g/cm2、ウエハヘッドの回転数を70rpm、研磨パッドの回転数を70rpmとする条件を標準研磨条件とする。
【0035】
即ち、[上記標準研磨条件での研磨を5秒間行った後、上記標準研磨条件において荷重を0g/cm2にする他は上記標準研磨条件での研磨を1秒間行う]という研磨を1サイクルとして、これを4回繰り返し、最後に標準研磨条件で5秒間研磨を行った。
なお、本実施例において、3枚の上記ウエハそれぞれに、上記と同様の研磨を施して、下記評価を行い結果を表1に示す。
【0036】
表中の値は、それぞれ3枚のウエハを研磨したときの評価結果を列記している。表には、各ウエハの 研磨速度の平均とその標準偏差、各研磨されたウエハの面内の均一性を示す。
なお、 研磨速度は、ウエハ内全体に49点を配置し、各点において、機械的研磨前後の酸化膜の厚さ変化から算出したものの平均値として示した。
【0037】
比較例1.
実施例1と同様にして、3枚のウエハに対して、実施例1に示す標準研磨条件だけで25秒間研磨を施し、実施例1と同様に評価を行い結果を表1に示す。
【0038】
実施例2.
実施例1と同様にして、3枚のウエハに対して、[実施例1における標準研磨条件での研磨を5秒間行った後、上記標準研磨条件において、研磨ヘッドの回転を停止させる他は上記標準研磨条件での研磨を1秒間行う]という研磨を1サイクルとして、これを4回繰り返し、最後に標準研磨条件での研磨を5秒間施し、実施例1と同様に評価を行い結果を表1に示す。
【0039】
実施例3.
実施例1と同様にして、3枚のウエハに対して、[実施例1における標準研磨条件での研磨を2秒間行った後、上記標準研磨条件において、荷重を0g/cm2にする他は上記標準研磨条件での研磨を1秒間行う]という研磨を1サイクルとして、これを2回繰り返し、最後に標準研磨条件の研磨を21秒間施し、実施例1と同様に評価を行い結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の結果から、本発明の実施例による半導体ウエハの研磨は、比較例に比べて研磨速度が安定し、かつウエハ面内のばらつきが小さく、ウエハ内の均一性が向上していることが判る。
また、特に、実施例1、2については研磨中に「研磨の中断」を複数回施すことにより、ウエハ間の研磨速度のばらつき少なくなっている。
なお、実施例3では研磨の初期に「研磨の中断」を施しているので、表面の汚染によるウエハ面内のばらつきを抑制することができる。
【0042】
【発明の効果】
本発明の第1の半導体ウエハの研磨方法は、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に、固体微粒子を含有する研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す方法で、容易に 研磨速度を安定化させ、また、ウエハ面内の研磨均一性を向上することができるという効果がある。
【0043】
本発明の第2の半導体ウエハの研磨方法は、固体微粒子を表面に含有する研磨パッドを、半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返す方法で、容易に研磨速度を安定化させ、また、ウエハ面内の研磨均一性を向上することができるという効果がある。
Claims (2)
- 研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に、固体微粒子を含有する研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことを特徴とする半導体ウエハの研磨方法。
- 固体微粒子を表面に含有する研磨パッドを、半導体ウエハの被研磨面に圧力をかけた状態で当接し、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドの当接面に研磨液を供給しながら、上記半導体ウエハの被研磨面と研磨パッドを相対的に移動させて、上記固体微粒子により研磨する半導体ウエハの研磨方法において、上記研磨液に、上記半導体ウエハ被研磨面と化学反応して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第1の物質および上記半導体ウエハ被研磨面に吸着して上記固体微粒子による機械的研磨速度を抑制する第2の物質の内の少なくとも一種を含有した研磨液を用いた研磨を行った後、研磨パッドを半導体ウエハの被研磨面に当接した状態で、上記ウエハの被研磨面とパッドの移動の相対速度を小さくすることにより両者の相互の移動を抑制することにより、上記固体微粒子とウエハ表面の摩擦を回避させ、上記第1、第2の物質によるウエハ表面との反応や吸着は継続させるという研磨を1サイクルとして、このサイクルを繰り返すことを特徴とする半導体ウエハの研磨方法。
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