JP3823742B2 - スフィンゴミエリン類縁体とその製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、リン脂質加水分解酵素であるスフィンゴミエリナーゼの触媒部位に作用し、基質に対して拮抗的に阻害する物質として期待される新規スフィンゴミエリン類縁体とその製法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
リン脂質加水分解酵素であるスフィンゴミエリナーゼは、スフィンゴミエリンのリン酸エステル部を加水分解する酵素であり、この働きによりスフィンゴミエリンはセラミドとホスホコリンに分解される。代謝産物であるセラミドは細胞分化やアポトーシス誘導時の情報伝達因子として機能し、セラミドから代謝されたスフィンゴシンはプロテインキナーゼCの酵素活性を阻害することが明らかになっている。
またスフィンゴミエリンなどのスフィンゴ脂質がセカンドメッセンジャーとして、増殖・分化・アポトーシスなどの細胞機能において重要な役割を果たしていると考えられていることから、スフィンゴミエリナーゼの重要性が注目されその作用機構の解明が望まれている。
【0003】
スフィンゴミエリナーゼはいまだ数多くの種類の中でごく一部の1次構造が解明された程度であり、その高次構造や加水分解機構など詳しいことは明らかにされていないが、スフィンゴミエリナーゼ阻害剤となりうる物質の開発が望まれ、そしてそれが安価で大量合成されることも望まれている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは下記式(1)で示される新規スフィンゴミエリン類縁体の合成に成功した。
【0005】
また、γ−ブチロラクトンから得られる下記式(2)で表される化合物を原料に用いて、本発明のスフィンゴミエリン類縁体(1)が効率よく合成できることを見出した。
【0006】
光学活性な化合物を合成する際、操作が簡便で収率がよく、しかも光学純度が高く保持されることが肝要である。このような要望に合致する製造法として、化学変換しやすいキラル中間体を合成し、この化合物を経て目的物を製造するという手法がある。この方法で重要な点は、このキラル中間体が操作の点で取り扱い易いうえに、安価でかつ大量に入手可能な物質のことである。本発明に係る化合物は光学異性体として存在する場合が多く、本発明方法はこれらの要望を満たした方法でもある。
【0007】
即ち、本発明は、特にリン脂質加水分解酵素であるスフィンゴミエリナーゼの触媒部位に作用し、基質に対拮抗的に阻害する物質として期待されるスフィンゴミエリン類縁体およびその製造法、特に効率的製造法を提供することにある。
本発明は下記一般式(1)
【化12】
(式中、R1およびR2は同一または異なって、不飽和結合を有することもある炭素数が1〜20のアルキル基、アリール基、またはアリール基置換炭素数1〜6のアルキル基を意味する。)
で表されるスフィンゴミエリン類縁体に関する。
【0008】
上記R1で示される基のうち、炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基、アリル基、1−ペンタデセニル基等が挙げられ、好ましい基はヘプチル基、1−ペンタデセニル基である。上記R1で示される基のうち、アリール基の具体例としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基が挙げられ、好ましい基はフェニル基である。
【0009】
上記R1で示される基のうち、アリール基置換炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、ベンジル基、1−フェネチル基等であり、好ましい基はベンジル基である。
上記R2で示される基のうち、炭素数1〜20のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基、アリル基、1−ペンタデセニル基等が挙げられ、好ましい基はヘプチル基、ヘプタデシル基である。
【0010】
上記R2で示される基のうち、アリール基の具体例としては、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基が挙げられ、好ましい基はフェニル基である。
【0011】
上記R2で示される基のうち、アリール基置換炭素数1〜6のアルキル基の具体例としては、ベンジル基、1−フェネチル基等であり、好ましい基はベンジル基である。
【0012】
一般式(1)で示される本発明の化合物のうち好ましい化合物は
R1が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基、アリル基、1−ペンタデセニル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基、ベンジル基、1−フェネチル基で、
R2が、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基、ウンデシル基、ヘプタデシル基、アリル基、1−ペンタデセニル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、4−エトキシフェニル基である化合物である。
【0013】
特に好ましい化合物は、R1がヘプチル基、1−ペンタデセニル基、フェニル基、ベンジル基であり、R2がペンチル基、ヘプチル基、ヘプタデシル基である化合物である。
本発明はまた、上記一般式(1)の化合物の製造法に関する。
【0014】
本発明の化合物(1)の製造法につき以下に詳細に説明する。
その製造行程は以下のスキーム1で示される。
【化13】
スキーム1
(上記式中、R3は炭素数が1〜6のアルキル基を意味し、R4はアミノ保護基を意味し、そしてR5は炭素数3〜10の環状アルキル基、炭素数1〜10の非環状アルキル基、アリール基、またはアラルキル基を意味し、そしてR1およびR2は前記に同じ。)
【0015】
一般式(2)で表される化合物にメチルホスホン酸ジエステルのアニオンを反応させ、ついでアミノ基を保護することにより一般式(3)で表される化合物が得られる。
メチルホスホン酸ジエステルの例としては、メチルホスホン酸ジメチルエステル、メチルホスホン酸ジエチルエステル等が挙げられる。
【0016】
メチルホスホン酸ジエステルのアニオンを発生させる際、使用する塩基としては水素化ナトリウム、水素化カリウム等のアルカリもしくはアルカリ土類金属水素化物、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム等のアルキルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウム2,2,6,6−テトラメチルピペリジド等のリチウムアミド、ナトリウムヘキサメチルジシラジド、カリウムヘキサメチルジシラジド、リチウムヘキサメチルジシラジド等のアルカリ金属ジシラジドが挙げられるが、好ましくはリチウムジイソプロピルアミドである。塩基の使用量は基質に対して1〜2当量である。使用する溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の非プロトン性極性溶媒、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、ならびにこれらの混合溶媒等が挙げられる。反応温度は−100℃から溶媒の還流温度までで、好ましくは−78℃から室温である。
【0017】
アミノ基の保護基としては公知のアミノ基の保護基はいずれも使用できるが、好ましくはアシル型保護基としてホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ピバロイル等の置換または非置換の炭素数1〜6のアルキルカルボニル、置換および非置換ベンゾイル等、ウレタン型保護基として置換および非置換ベンジルオキシカルボニル、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル、シクロアルカノオキシカルボニル等、その他の置換基として、例えばp−トルエンスルホニル等の置換または非置換アリールスルホニル、例えばトリチル等の置換または非置換フェニル置換炭素数1〜6のアルキル基が挙げられる。
これらにおける置換基としてはハロゲン原子、ニトロ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の基を挙げることができる。
【0018】
特に好ましいのはベンジルオキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のウレタン型保護基である。
一般式(3)で表される化合物をR5OH(式中、R5は前記に同じ。)で表されるアルコール存在下、塩基で開環すると一般式(4)で表される化合物が得られる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、アリルアルコール、プロパノール等の炭素数1〜6のアルコール、ベンジルアルコール、クロロベンジルアルコール、ニトロベンジルアルコール等の置換および非置換ベンジルアルコールが挙げられる。これらにおける置換基としてはハロゲン原子、ニトリ基、ヒドロキシ基、シアノ基等の基を挙げることができる。好ましいのは除去が容易であるベンジルアルコールである。
【0019】
溶媒としては、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水媒体、並びにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0020】
使用する塩基としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、好ましくは炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩である。塩基の使用量は、基質に対して1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。
【0021】
得られた一般式(4)で表される化合物のアミノ基の脱保護、続いてアミド化することにより一般式(5)で表される化合物が得られる。アミノ基の脱保護は常法により行うことができる。
アミド化において、用いられる試薬としては、アセチルクロリド、プロピオニルクロリド、ブチリルクロリド、バレリルクロリド、カプロイルクロリド、ベンゾイルクロリド等の炭素数1〜20の環状または非環状アシルクロリドが挙げられる。
【0022】
溶媒としては、例えばヘキサン、ベンゼン、トルエン等の炭化水素系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、アセトニトリル等のニトリル系溶媒、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系溶媒、水媒体、並びにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0023】
アミド化に際して使用される塩基としては炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属炭酸塩、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属水酸化物である。塩基の使用量は、基質に対して1〜3当量、好ましくは1〜1.5当量である。
【0024】
得られた一般式(5)で表される化合物のリン酸エステル部分を加水分解、ついで塩基の存在下コリン化することにより一般式(6)で表される化合物が得られる。
加水分解に用いられる試薬としてはトリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、トリメチルシリルアイオダイド等のトリアルキルシリルハライドが挙げられる。
コリン化する試薬としてはコリンクロリド−トリクロロアセトニトリルが挙げられる。
【0025】
使用する塩基としてはトリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、ピリジン、ピコリン、ルチジン、コリジン、4−N,N−ジメチルアミノピリジン等の3級アミンが挙げられる。
【0026】
得られた一般式(6)で表される化合物の水酸基の保護基を脱離させることにより一般式(1)で表されるスフィンゴミエリン類縁体が得られる。
保護基の脱離方法はアルコキシ基により異なるが、除去が容易なR5がベンジル基の場合、水素雰囲気下、溶媒中で接触還元により、行うことができる。
使用する溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、2−プロパノール等のアルコール系溶媒、水媒体、並びにこれらの混合溶媒等が挙げられる。
【0027】
使用する触媒としては、この種の接触還元反応に使用される触媒ならばなんら限定されないが、特にパラジウム、白金等の金属系触媒がよく、収率および経済性の点でパラジウムが好ましい。更にパラジウムの含量が5〜10重量%程度のパラジウム−炭素が優れている。触媒の使用量は基質に対して0.5〜50重量%の範囲が適当である。反応は通常室温、常圧で行う。
なお、原料である一般式(2)で表される化合物は公知であり、下記反応式で示される如く、γ−ブチロラクトンを原料にして、(2a)の化合物を得、これにアンモニアを作用させ(2b)の化合物を得、ついでこれをホフマン転位反応に付し式(2)で表されるオキサゾリン化合物を得ることができる。
【化14】
(式中、R1は前掲と同じ。)
【0028】
以下に実施例を示すが、これに限定されるものではない。
【0029】
【実施例】
実施例1
N-Bocリン酸エステル体(7)の合成
メチルホスホン酸ジメチルエステル(0.20mL,2.39mmol)のTHF(2.39mL)溶液を−78℃に冷却し、1.6M n−ブチルリチウム(1.50mL,2.39mmol)をゆっくり滴下した。30分間攪拌後(4S)−(2−ブロモメチル)−(3R)−ヘプチルオキサゾリジノン (233mg, 0.80mmol)のTHF(1.59mL)溶液を−78℃で滴下した。その後、1時間攪拌した後、反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて減圧濃縮した。残渣にクロロホルムを加えて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮することによりリン酸エステル体を得た。これを精製することなく、DMF(3.99mL)に溶解し、0℃に冷却後、ジ-t-ブチルジカーボネート(521mg, 2.39mmol)、4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)(49 mg,0.40mmol)、及びトリエチルアミン(0.167 mL,1.20mmol)を順に加えて90分間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加えて減圧濃縮した。残渣にクロロホルムを加えて抽出し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、N-Bocリン酸エステル体(7) (213mg,2段階収率61.2%)を得た。
【化15】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz) δ4.47 (m, 1H), 4.21 (q, J = 7.6 Hz, 1H), 3.75 (s, 3H), 3.72 (3H, S), 1.63 - 1.92 (m, 9H), 1.55 (s, 9H), 1.24 1.45 (m, 9H), 0.89 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 13C NMR (CDCl3, 100 MHz)δ 152.0, 149.5, 83.8, 57.6, 52.3, 31.6, 29.2, 29.0, 28.5, 27.9, 25.8, 23.8, 22.5, 18.93, 18.88, 14.0;
IR (NaCl neat): 2930, 1858, 1740, 1717, 1248, 1036 cm-1;
[α] D 23.0 +15.24 (c = 0.592, CHCl3);
FAB HRMS m/z calcd for C15H31NO5P (M+ + H (CH3)3COCO-) 336.1940, found 336.1978.
【0030】
N-Boc-O-Z-リン酸エステル体(8)の合成
N-Bocリン酸エステル体(7) (100 mg, 0.229 mmol)のTHF(1.145 mL)溶液に室温でベンジルアルコール(0.12 mL, 1.145 mmol)と炭酸セシウム(164mg, 0.504mmol)を順次加え室温で4時間攪拌した。反応混合物を0℃に冷却した後、2N塩酸水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、N-Boc-O-Z-リン酸エステル体(8)(70 mg, 56.5 %)を得た。
【化16】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz)δ7.32 7.39 (m, 5H), 5.16 (s, 2H), 4.73 (ddd, J = 4.2, 4.4, 8.5 Hz, 1H), 4.58 (d, J = 9.8 Hz, 1H), 3.79 (m, 1H), 3.73 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 1.47 - 1.85 (m, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.24 1.39 (m, 9H), 0.87 (t, J = 7.1 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz)δ: 155.6, 155.0, 135.2, 128.54, 128.47, 128.2, 80.7, 79.5, 69.6, 52.3, 51.8, 31.7, 30.6, 29.9 (JC-P = 16.4 Hz), 29.3, 29.0, 28.3, 27.7 (JC-P = 29.6 Hz), 25.3, 24.1 (JC-P = 142.4 Hz), 22.5, 18.9, 14.0;
IR (NaCl neat) 3277, 2930, 1743, 1711, 1458, 1259, 1172, 1033 cm-1;
[α] D 23.0 10.35 (c = 0.578, CHCl3);
FAB HRMS m/z calcd for C27H47NO8P (M+ + H) 544.3039, found 544.3019.
【0031】
N-アシル-O-Z-リン酸エステル体(9)の合成
N-Boc-O-Z-リン酸エステル体(8)(317 mg, 0.582 mmol)の塩化メチレン溶液(2.91 mL)を0℃に冷却した後、トリフルオロ酢酸(1.164 mL)をゆっくり加えた。3時間攪拌した後、冷却した1N水酸化ナトリウム水溶液(5 mL)とクロロホルム(5 mL)混合溶媒の中に反応混合物を加えた。そのままの温度で5分間攪拌後、カプロイルクロリド(0.16 mL, 1.164 mmol)を加え15分間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、クロロホルムで抽出した。有機層を飽和食塩水溶液で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥後、減圧濃縮を行った。残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、N-acyl-O-Z-リン酸エステル体(9) (249 mg, 78.8 %)を得た。
【化17】
1H NMR (CDCl3, 400 MHz)δ 7.32 7.39 (m, 5H), 5.71 (br d, J = 8.8 Hz, 1H), 5.16 (s, 2H), 4.72 (ddd, J = 3.7, 4.2, 7.8 Hz, 1H), 4.15 (m, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 2.13 (t, J = 7.3 Hz, 2H), 1.40 1.90 (m, 10H), 1.20 1.40 (m, 14H), 0.89 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.87 (t, J = 7.1 Hz, 3H);
13C NMR (CDCl3, 100 MHz)δ 173.1, 155.1, 135.2, 128.6, 128.5, 128.2, 80.9, 69.7, 52.3, 50.2, 36.7, 31.6, 31.3, 31.0, 29.3, 29.1, 29.0, 25.4, 25.3, 24.0 (JC-P = 139.9 Hz), 22.4, 22.3, 19.0, 14.0, 13.9;
IR (NaCl neat) 3379, 2930, 1744, 1651, 1545, 1458, 1381, 1259, 1035 cm-1;
[α] D 25.0 14.40 (c = 0.414, CHCl3);
FAB HRMS m/z calcd for C28H49NO7P (M+ + H) 542.3246, found 542.3461.
【0032】
O-Z-コリン化体(10)の合成
N-アシル-O-Z-リン酸エステル体(9) (507 mg, 0.934 mmol)の塩化メチレン(0.934 mL)溶液に室温でトリメチルシリルブロミド (1.233 mL, 9.341 mmol)の塩化メチレン(1.868 mL)溶液を滴下した。25分間攪拌した後、溶媒を減圧濃縮し、メタノール(9.34 mL)を加え1時間攪拌した。溶媒を減圧濃縮した後、コリンクロライド(1.09 g, 7.81 mmol)とピリジン(78.1 mL)を加え、60℃に昇温後、トリクロロアセトニトリル(3.367 mL, 33.583 mmol)を加え、そのままの温度で40時間攪拌した。反応混合物にクロロホルムを加え、固体をろ別した後、減圧下に溶媒を濃縮した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィーにより精製した。続いて高速液体クロマトグラフィーにより精製し、O-Z-コリン化体(10) (89 mg, 17.0 %)を得た。
【化18】
1H NMR (CD3OD, 400 MHz)δ 7.31-7.39 (m, 5H), 5.16 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 5.12 (d, J = 12.4 Hz, 1H), 4.74 (m, 1H), 4.23 (m, 2H), 4.04 (m, 1H), 3.58 (m, 2H), 3.20 (s, 9H), 2.17 (t, J = 7.1 Hz, 2H), 1.46 - 1.70 (m, 10H), 1.22 - 1.36 (m, 14H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 1H);
13C NMR (CD3OD, 100 MHz)δ 176.37, 156.61, 137.24, 129.61, 129.46, 129.16, 81.19, 70.47, 67.83 (m), 58.52 (d, Jc-p = 4.96 Hz), 54.73, 54.70, 54.66, 52.26, 37.11, 32.88, 32.51, 31.30, 30.86 (d, Jc-p = 14.88 Hz), 30.37, 30.23, 27.67 (d, Jc − p = 135.64Hz), 23.67, 23.46, 21.56 (d, Jc-p = 4.13 Hz), 14.43, 14.34;
IR (NaCl neat) 3368, 2928, 1742, 1647, 1545, 1460, 1261, 1188, 1053, 966 cm-1;
[α] D 20.5 5.059 (c = 0.937, MeOH);
FAB HRMS m/z calcd for C31H55N2O7P (M+ + H) 599.3825, found 599.3870.
【0033】
スフィンゴミエリン類縁体(11)の合成
O-Z-コリン化体(10) (80 mg, 0.133 mmol)のメタノール(2.666 mL)溶液にパラジウム−炭素(16 mg)を加え攪拌後、容器中のアルゴンを水素に置換した。1時間攪拌した後、セライトろ過により触媒をろ別し、溶媒を減圧濃縮した。残渣をアセトニトリル:水(1:9)混合溶媒に溶解し、高速液体クロマトグラフィーにより精製し、スフィンゴミエリン類縁体(11) (54 mg, 88.5 %)を得た。
【化19】
1H NMR (CD3OD, 400 MHz)δ4.24 (m, 2H), 3.74 (m, 1H), 3.60 (m, 2H), 3.44 (ddd, J = 2.4, 5.9, 7.3 Hz, 1H), 3.22 (s, 9H), 2.20 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.22 - 1.74 (m, 24H), 0.92 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H);
13C NMR (CD3OD, 100 MHz)δ176.2, 74.9, 67.88 (JC-P = 6.6 Hz), 67.86 (JC-P = 6.6 Hz), 58.6, 55.0, 54.72, 54.69, 54.65, 37.3, 34.8, 33.0, 32.7, 31.9 (JC-P = 15.7 Hz), 30.8, 30.4, 28.0 (JC-P = 135.6 Hz), 27.0, 26.9, 23.7, 23.5, 21.5, 21.4, 14.4, 14.3;
IR (NaCl neat) 3420, 2928, 1637, 1051 cm-1;
[α] D 21.0 9.122 (c = 0.353, MeOH);
FAB HRMS m/z calcd for C27H47NO8P (M+ + H) 465.3457, found 465.3456.
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る新規スフィンゴミエリン類縁体(1)はスフィンゴミエリナーゼ阻害活性を有し、医薬品、殊にスフィンゴミエリナーゼ阻害剤としての応用が期待される。また、本発明方法によれば、効率よく、あるいは高光学純度のスフィンゴミエリン類縁体(1)を製造することができる。
Claims (10)
- 式(1)において、R1およびR2は同一または異なって、不飽和結合を有することもある炭素数が10〜17のアルキル基である請求項1の化合物。
- 式(1)において、R1がヘプチル基、R2がペンチル基である請求項1の化合物。
- 式(1)において、R1が1−ペンタデセニル基、R2がヘプタデシル基である請求項1の化合物。
- 式(1)で表される化合物が光学活性である請求項1の化合物。
- 一般式(2)
で表される化合物にメチルホスホン酸ジエステルのアニオンを反応させ、ついでアミノ基を保護し、一般式(3)
で表される化合物を得、これをアルコールの存在下開環し、一般式(4)
で表される化合物を得、アミノ基を脱保護し、ついでアミド化することにより一般式(5)
で表される化合物を得、リン酸エステルの加水分解、続いてコリン化し、一般式(6)
で表される化合物を得、最後に水酸基の保護基を脱離させることを特徴とする一般式(1)
で表されるスフィンゴミエリン類縁体の製法。
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