JP3823351B2 - セラミックグリーンシートおよびパターン形成されたセラミックグリーンシートの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、焼成セラミックス基板などの形成に好適に用いられるセラミックグリーンシートおよびセラミックグリーンシート上にパターンを形成する方法に関するものである。セラミックグリーンシートとは、半導体素子を搭載し、かつそれらを相互に配線した高密度実装などに好適に用いられる焼成セラミックス基板、特に多層セラミックス基板に好適に用いられるセラミックスで作製したグリーンシートであり、さらに、セラミックス多層基板の表層および内層用電極の微細な回路パターン形成に有効なグリーンシートのことである。
【0002】
【従来の技術】
多層セラミックス基板は、主としてグリーンシート積層法によって作製されている。グリーンシート積層法は、ビアホール加工を済ませたグリーンシートに導体を印刷し、積層して熱圧着後、焼成して多層基板とする方法である。
【0003】
従来のセラミックグリーンシートは、特開平1−232797号公報や特開平2−141458号公報に記載のごとく、通常、セラミックス粉末、有機バインダー、可塑剤、溶媒および必要に応じて分散剤などを配合してスラリーとした後、ドクターブレード法などによってグリーンシートを形成している。得られたグリーンシートはカッターあるいは打抜き型によって所望の形状に加工した後、さらにビアホールやスルーホール(以下ビアホールで代表して説明する)を設けるためグリーンシートにパンチ・ダイによる金型やレーザでの穴あけ加工を行なう。つづいて、グリーンシートに通常のスクリーン印刷によってビアホール内に導電ペーストを充填する方法が採られている。
【0004】
また、特開昭63−64953号公報および特開平2−204356号公報には、セラミックス原料、紫外線硬化型液状化合物および光重合開始剤を含有する組成物に紫外線を照射して硬化させたセラミックグリーンシートやガラスセラミックグリーンシートにビスアジド化合物を含む感光性グリーンシートが提案されている。
【0005】
一方、グリーンシート上に導体パターンを形成するには、従来から導電ペーストを用いたスクリーン印刷法が用いられてきたが、この方法では、ライン幅(線幅)/ラインスペース(線間隔)=100μm/100μm以下の微細パターンの形成は困難である。そこで、特開昭63−265979号公報、特開平5−67405号公報および特開平5−204151号公報に記載のようにフォトリソグラフィ(写真製版技術)法を利用して微細な導体パターン形成ができる感光性導電ペーストが提案されている。このペーストをグリーンシート表面に全面塗布した後、フォトマスクを用いて露光、さらに現像によって未露光部を除去し、パターンを形成する。この感光性導電ペーストは、100μm以下の微細パターンを形成するのに適しているが、従来のグリーンシートに用いる場合には、グリーンシートの耐薬品性や耐溶解性が劣るために導電ペーストに含有する有機溶媒とグリーンシート中のポリマーバインダーとが反応し、現像時に未露光部の除去が非常に難しいという問題があった。
【0006】
また、感光性グリーンシートに用いる場合には、シートとペースト中に含まれるポリマーバインダーが同種であるために反応が生じない利点があるものの、露光、現像によるビアの形成、ビアへの導体埋め込みを行った後に、再び露光、現像を経てパターン形成するため、工程が極めて多く煩雑になって、ハンドリング上問題であること、コスト的に不利であることから、感光性導電ペーストを用いるメリットが小さいという問題点が生じている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明の目的は、感光性グリーンシート上に感光性ペーストを用いて、フォトリソグラフィ法により良好なパターン形成ができるセラミックグリーンシートおよびセラミックグリーンシート上に微細パターンを形成する方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
かかる本発明の目的は、以下の工程を含むことを特徴とするセラミックグリーンシート上にパターンを形成する方法によって達成される。
【0009】
(1)セラミック粉末および感光性樹脂組成物を含むシート組成物を支持体に塗布、乾燥し、セラミックグリーンシートを作製する工程、
(2)マスクパターンによって紫外線照射による露光および現像によって、直径が30μmから100μm、中心間距離が85μmから500μmの範囲にあるビアパターンを形成する工程、
(3)導体粉末、官能基を有する感光性樹脂組成物、酸化銅粉末を含む感光性導電ペーストをシート表面に塗布し、同時に前記形状のビアへの導体埋込を行う工程、
(4)マスクパターンにより露光、現像してラインスペースが15μmから500μm、ライン高さが10μmから50μmの範囲であるラインパターンを形成する工程。
【0010】
すなわち、本発明はセラミックスで作製したグリーンシート自体に感光性を付与せしめることが重要であり、感光性を付与したグリーンシートに紫外線を照射して光硬化させた後、グリーンシート上に感光性ペーストによりパターンを形成できるものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の(1) 工程において使用されるシートスラリー組成物について説明する。シートスラリー組成物は、セラミックス粉末、光硬化性樹脂組成物および紫外線吸光剤を含有する。
【0012】
本発明において使用されるセラミックス粉末としては特に限定されず、低温あるいは高温焼成用などの公知のセラミック絶縁原料がいずれも適用できる。通常、低温用は850〜1000℃、高温用は1400〜1650℃で焼結できるセラミックス絶縁原料である。
【0013】
本発明において使用されるセラミックス粉末としては、セラミックス粉末単独、ガラス−セラミックス複合系、結晶化ガラスなどがあげられる。
【0014】
セラミックス粉末単独で用いる場合の例としては、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)、マグネシア(MgO)、ベリリア(BeO)、ムライト(3Al2O3・2SiO2),コーディエライト(5SiO2・2Al2O3・2MgO)、スピネル(MgO・Al2O3)、フォルステライト(2MgO・SiO2 )、アノーサイト(CaO・Al2O3・2SiO2)、セルジアン(BaO・Al2O3・2SiO2)、シリカ(SiO2)、窒化アルミ(AlN)などの粉末あるいは低温焼成用セラミックス粉末があげられる。これらのセラミックス粉末の純度は90重量%以上のものが好ましく用いられる。
【0015】
ガラス−セラミックス複合系の例としては、例えばSiO2,Al2O3,CaO,B2O3および必要に応じてMgOおよびTiO2などを含むガラス組成粉末と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディエライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれる少なくとも一種の無機フィラー粉末との原料混合物があげられる。より好ましくはセラミックス粉末が酸化物換算表記で
SiO2 30〜70重量%
Al2O3 5〜25重量%
CaO 5〜25重量%
MgO 0〜10重量%
B2O3 3〜50重量%
TiO2 0〜15重量%
の組成範囲で、総量が95重量%以上となるガラス組成粉末40〜60重量%と、アルミナ、ジルコニア、マグネシア、ベリリア、ムライト、コーディエライト、スピネル、フォルステライト、アノーサイト、セルジアン、シリカおよび窒化アルミの群から選ばれる少なくとも一種の無機フィラー粉末60〜40重量%との原料混合物である。すなわち、SiO2、Al2O3、CaO、MgO、B2O3、TiO2の組成範囲は、ガラス組成粉末中の割合であり、これらの成分がガラス粉末中で総量95重量%以上であることが好ましい。
【0016】
ガラス−セラミックス複合系の具体例としては、SiO2−B2O3系ガラス、PbO−SiO2−Al2O3−B2O3系ガラス、CaO−SiO2−Al2O3−B2O3系ガラスなどに、Al2O3,石英(SiO2),ZrO2,コーディエライトなどのセラミックス成分を加えたものがあげられる。
【0017】
結晶化ガラスの具体例としては、MgO−Al2O3−SiO2系やLi2O−Al2O3−SiO2系の結晶化ガラスなどが使用される。結晶化ガラスはたとえばMgO−Al2O3−SiO2にB2O3と核形成物質を加えて、900〜1000℃で焼成し、コーディエライト結晶を析出させ高強度化を図ったものやLi2O−Al2O3−SiO2にB2O3と核形成物質を加え、スポジュメンを析出させ、同じく高強度化を図ったものも使用される。
【0018】
上記において使用するセラミックス粉末の粒子径および比表面積は、作製しようとするグリーンシートの厚みや焼成後の収縮率を考慮して選ばれるが、粒子径は0.2〜6μm、比表面積が1〜30m2 /gを同時に満たすことが好ましい。
【0019】
より好ましい範囲は粒子径は0.5〜4μm、比表面積が2〜15m2 /gを同時に満たすことである。該範囲にあると紫外線露光時において光が十分透過し、上下の孔径差のない均一なビアホールが得られる。粉末粒子径が0.2μm未満の場合、または比表面積が30m2 /gを超える場合は粉末が細かくなりすぎて露光時において光が散乱されて未露光部分を硬化するようになる。このため現像時に真円度のあるビアホールが得られなくなる。また焼成後の収縮率が大きくなり高精度のグリーンシートが得られない。粉末の形状としては、球状であることが好ましく、粒度分布が鋭いと紫外線露光時に散乱の影響を低くできるので好ましい。
【0020】
本発明のセラミックグリーンシートの形成に用いられる光硬化性樹脂としては、従来から公知の光硬化性樹脂を適用することができる。これらの光硬化性樹脂からなる感光層は活性な光線を照射することにより不溶化する層である。光硬化性物質の例としては、
(1) 1分子に不飽和基などを1つ以上有する官能性のモノマーやオリゴマーを適当なポリマーバインダーと混合したもの。
【0021】
(2) 芳香族ジアゾ化合物、芳香族アジド化合物、有機ハロゲン化合物などの感光性化合物を適当なポリマーバインダーと混合したもの。
【0022】
(3) 既存の高分子に感光性の基をペンダントさせることにより得られる感光性高分子あるいはそれを改質したもの。
【0023】
(4) ジアゾ系アミンとホルムアルデヒドとの縮合物などいわゆるジアゾ樹脂といわれるもの。
【0024】
などが挙げられる。
【0025】
好ましい光硬化性樹脂組成物は、側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤を含有するものであり、該アクリル系共重合体は、不飽和カルボン酸とエチレン性不飽和化合物とを共重合させて形成したアクリル系共重合体にエチレン性不飽和基を側鎖または分子末端に付加させることによって製造することができる。特に好ましいのは、側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するものである。
【0026】
不飽和カルボン酸の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、これらの酸無水物などがあげられる。一方、エチレン性不飽和化合物の具体的な例としては、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、sec−ブチルアクリレート、sec−ブチルメタクリレート、イソ−ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、tert−ブチルアクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−ペンチルアクリレート、n−ペンチルメタクリレート、スチレン、p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどがあげられるが、これらに限定されない。これらのアクリル系主鎖ポリマーの主重合成分として前記のエチレン性不飽和化合物の中から少なくともメタクリル酸メチルを含むことによって熱分解性の良好な共重合体を得ることができる。
【0027】
側鎖または分子末端のエチレン不飽和基としてはビニル基、アリル基、アクリル基、メタクリル基などがあげられる。このような側鎖をアクリル系共重合体に付加させる方法としては、アクリル系共重合体中のカルボキシル基にグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物やアクリル酸クロライド化合物を付加反応させて作る方法がある。
【0028】
グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、エチルアクリル酸グリシジル、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテルなどがあげられる。また、アクリル酸クロライド化合物としては、アクリル酸クロライド、メタアクリル酸クロライド、アリルクロライドなどが挙げられる。これらのエチレン性不飽和化合物あるいはアクリル酸クロライド化合物の付加量としては、アクリル系共重合体中のカルボキシル基に対して0.05〜1モル当量が好ましく、さらに好ましくは0.1〜0.8モル当量である。エチレン性不飽和化合物の付加量が0.05当量未満では感光特性が不良となりパターンの形成が困難になる。付加量が1モル当量より大きい場合は、未露光部の現像液溶解性が低下したり、塗布膜の硬度が低くなる。
【0029】
これらの光硬化性樹脂組成物中には、非感光性ポリマーを含有してもよい。非感光性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体、メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などがあげられる。
【0030】
光反応性化合物は光反応性を有する炭素−炭素不飽和結合を含有する化合物で、その具体的な例としてアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、ブトキシトリエチレングリコ−ルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリセロールアクリレート、グリシジルアクリレート、ヘプタデカフロロデシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、イソデキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシエチレングリコールアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、オクタフロロペンチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、ステアリルアクリレート、トリフロロエチルアクリレート、アリル化シクロヘキシルジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,3−ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、グリセロールジアクリレート、メトキシかシクロヘキシルジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、トリグリセロールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよび上記のアクリレートをメタクリレートに変えたもの、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1−ビニル−2−ピロリドンなどが挙げられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0031】
側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体は、光反応性化合物に対して、通常重量比で0.1〜10倍量、好ましくは0.5〜5倍量用いる。該アクリル系共重合体の量が少なすぎると、スラリーの粘度が小さくなり、スラリー中での分散の均一性が低下するおそれがある。一方、アクリル系共重合体の量が多すぎれば、未露光部の現像液への溶解性が不良となる。
【0032】
こうして得られた側鎖にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル重合体の酸価は50〜180が好ましく、より好ましくは70〜140である。さらに好ましくは80〜120の範囲である。酸価が50未満であるとエチレン性不飽和基の量が増加し、感光性を有するカルボキシル基の割合が低下するので現像許容幅が狭い上、ビアホールエッジの切れが悪くなる。また、酸価が180を超えると未露光部の現像液に対する溶解性が低下するようになるので、現像液濃度を高くしなければならなくなり、露光部まで剥離しやすくなって、高精度のビアホールが得られにくくなる。またグリーンシートの硬度も低下する。また、上記の好ましい酸価を有するポリマーにおいて、ポリマーの分子量分布が狭いほど現像特性が向上し、微細なビアホールが得られるので好ましい。
【0033】
これらの光硬化性樹脂は、ポリマーバインダーとして作用するものであるが、ポリマーバインダー成分として非感光性ポリマーを含有することが好ましい。ポリマーバインダー成分として、非感光性ポリマーを含有すると、露光前のグリーンシートの引張強度や伸び率を高くすることができる。引張強度を高くすることによってグリーンシートの厚みを50μm以下に薄くすることができる。
【0034】
具体的な非感光性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル重合体、アクリル酸エステル−メチルスチレン重合体、ブチルメタクリレート樹脂などが挙げられる。
【0035】
また、このような非感光性ポリマーの溶媒としては、アルコール、トルエン、アセトン、メチルエチルケトン、ブタノール、メチルイソブチルケトン、イソホロン、イソプロピルアルコールなどが用いられる。
【0036】
光重合開始剤としての具体的な例として、ベンゾフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、4,4−ビス(ジメチルアミン)ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4−メチルジフェニルケトン、ジベンジルケトン、フルオレノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニル−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、p−t−ブチルジクロロアセトフェノン、チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ジエチルチオキサントン、ベンジル、ベンジルジメチルケタノール、ベンジル−メトキシエチルアセタール、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエ−テル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−アミルアントラキノン、β−クロルアントラキノン、アントロン、ベンズアントロン、ジベンゾスベロン、メチレンアントロン、4−アジドベンザルアセトフェノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)シクロヘキサノン、2,6−ビス(p−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン、2−フェニル−1,2−ブタジオン−2−(o−メトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−プロパンジオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1,3−ジフェニル−プロパントリオン−2−(o−エトキシカルボニル)オキシム、1−フェニル−3−エトキシ−プロパントリオン−2−(o−ベンゾイル)オキシム、ミヒラ−ケトン、2−メチル−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ナフタレンスルホニルクロライド、キノリンスルホニルクロライド、N−フェニルチオアクリドン、4,4−アゾビスイソブチロニトリル、ジフェニルジスルフィド、ベンズチアゾールジスルフィド、トリフェニルホルフィン、カンファーキノン、四臭素化炭素、トリブロモフェニルスルホン、過酸化ベンゾイン及びエオシン、メチレンブルーなどの光還元性の色素とアスコルビン酸、トリエタノールアミンなどの還元剤の組合せなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。
【0037】
光重合開始剤は、側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の和に対し、5〜30重量%の範囲で添加され、より好ましくは2〜25重量%である。光重合開始剤の量が少なすぎると、光感度が不良となり光硬化が不充分となる。また光重合開始剤の量が多すぎれば、感光性樹脂組成物の表面層だけで光硬化が進み、均質な光硬化膜が得られなくなる。
【0038】
このような感光性樹脂組成物の組成としては、次の範囲で選択するのが好ましい。
【0039】
(a)側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体 ;40〜90重量%
(b)光反応性化合物 ;60〜10重量%
(c)光重合開始剤 ;(a)、(b)の和に対して5〜30重量%
上記においてより好ましくは、(a)および(b)成分の組成をそれぞれ50〜80重量%、50〜20重量%の範囲に選択するのがよい。この範囲にあると紫外線露光時において、光硬化の機能が十分発揮され、後の現像時における耐薬品性や耐溶解性が向上するので好ましい。また上記において(b)成分の光反応性化合物が60重量%を超えると特に、窒素ガスの中性雰囲気や水素ガス雰囲気中で感光性樹脂組成物であるバインダーを蒸発させる場合に、脱バインダー性が低下するため絶縁抵抗や強度の低下などの問題を生ずる。10重量%未満では、感度が低下するので光硬化させるのに露光量が多く必要になる問題がある。
【0040】
感光性樹脂組成物中には、必要に応じて安定化剤、増感剤、可塑剤、消泡剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤などを添加することもできる。
【0041】
増感剤は、感度を向上させるために添加される。増感剤の具体例として、2、4−ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2,3−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)シクロペンタノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミニベンザル)シクロヘキサノン、2,6−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、ミヒラーケトン、4,4、−ビス(ジエチルアミノ)−ベンゾフェノン、4,4−ビス(ジメチルアミノ)カルコン、4,4−ビス(ジエチルアミノ)カルコン、p−ジメチルアミノシンナミリデンインダノン、p−ジメチルアミノベンジリデンインダノン、2−(p−ジメチルアミノフェニルビニレン)−イソナフトチアゾール、1,3−ビス(4−ジメチルアミノベンザル)アセトン、1,3−カルボニル−ビス(4−ジエチルアミノベンザル)アセトン、3,3−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、N−フェニル−N−エチルエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、N−トリルジエタノールアミン、N−フェニルエタノールアミン、ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジエチルアミノ安息香酸イソアミル、3−フェニル−5−ベンゾイルチオ−テトラゾーラゾール、1−フェニル−5−エトキシカルボニルチオ−テトラゾールなどがあげられる。本発明ではこれらを1種または2種以上使用することができる。なお、増感剤の中には光重合開始剤としても使用できるものがある。増感剤を本発明の感光性樹脂組成物に添加する場合、その添加量は側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光反応性化合物の和に対して通常0.1〜30重量%、より好ましくは0.5〜15重量%である。増感剤の量が少なすぎれば光感度を向上させる効果が発揮されず、増感剤の量が多すぎれば露光部の残存率が小さくなりすぎるおそれがある。
【0042】
可塑剤の具体的な例としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ポリエチレングリコール、グリセリンなどがあげられる。
【0043】
このような感光性樹脂組成物は、側鎖または分子末端にカルボキシル基とエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光重合開始剤を光反応性化合物に溶解させることによって製造することができる。側鎖または分子末端にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体と光重合開始剤が光反応性化合物に溶解しない場合あるいは溶液の粘度を調整したい場合には該アクリル系共重合体、光重合開始剤および光反応性化合物の混合溶液が溶解可能である有機溶媒や水などの溶媒を加えてもよい。このとき使用される溶媒は該アクリル系共重合体、光重合開始剤および光反応性化合物の混合物を溶解しうるものであればよい。たとえばメチルセルソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルエチルケトン、ジオキサン、アセトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、イソブチルアルコール、イソプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、γ−ブチロラクトンなどやこれらのうちの1種以上を含有する有機溶媒混合物が用いられる。
【0044】
さらに必要に応じて、有機溶媒、安定化剤、増感剤、可塑剤、消泡剤、分散剤、有機あるいは無機の沈殿防止剤を添加し、ホモジナイザなどの攪拌混合機でたとえば12〜48時間混合し、スラリーを作製する。また、スラリー中に気泡が残存するとシート成形後に欠陥となるので気泡を真空脱泡機を使用して除去することが好ましい。
【0045】
さらに、上記組成に紫外線吸光剤を添加する。紫外線吸光剤としては、350nm〜450nmの波長範囲で高い紫外線吸光度を有する有機染料を用いることが好ましい。有機染料は吸光剤として添加した場合、焼成時に蒸発するため焼成後の基板中に残存しない利点があり、アゾ系染料、アミノケトン系染料、キサンテン系染料、キノリン系染料、アントラキノン系染料などを用いるとよい。
【0046】
アゾ系染料としては、スダンブルー、スダンR、スダンII、スダンIII 、スダンIV、オイルオレンジ、オイルバイオレット、オイルイエローOBなどがあり、250〜520nmで吸収することができる染料を用いる。
【0047】
吸光剤の添加量は、セラミックス粉末に対して0.05〜2重量%が好ましい。0.05重量%以下では、吸光効果が小さく光散乱されてしまい、2重量%を超えると吸光効果が大きすぎて、紫外線の透過率が著しく低下してしまう。より好ましくは0.1〜0.7重量%である。
【0048】
スラリーの粘度はシートの形成方法によって異なるが、1000〜50000cps(センチ・ポイズ)であることが好ましく、この範囲にあるとシート厚さの制御が容易になる。
【0049】
グリーンシートの厚みは通常20〜500μmの範囲であり、好ましくは50〜300μmである。20μm以下ではシートのハンドリング性が悪く、取り扱いが難しく、また、600μmを超えると紫外線の露光に対して十分透過しない。
【0050】
露光に用いられる紫外線に光源として低圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯が好適である。これらの中でも超高圧水銀灯が好適である。光硬化の条件は、シートの厚みによって異なるが、露光量50〜5000mJ/cm2 の範囲が好ましい。この範囲にあると光硬化が十分に達成されるため耐薬品性や溶解性が向上する。セラミックス多層基板の場合は、感光性樹脂組成物層の脱バインダーが完全になされないとビアホールに埋め込んだ導体の導通が取れなくなったり、導体膜とセラミックス基板との密着不良が起こるなどの問題が生じる。
【0051】
感光性グリーンシートを用いてビアホールを形成するには、ビアパターンを有するフォトマスクを用いて紫外線を照射して露光し、露光部を光硬化させる。次に、未露光部を現像液で除去してマスク通りの微細なパターンやビアホールを得る。
【0052】
露光に用いられる紫外線の光源としては、たとえば低圧水銀灯、高圧水銀灯、ハロゲンランプ、殺菌灯などが使用できる。これらのなかでも超高圧水銀灯が好適である。露光条件は感光性樹脂の塗布膜の厚みによっても異なるが、5〜100mW/cm2 の出力の超高圧水銀灯を用いて1〜30分間露光を行なうことが好ましい。
【0053】
露光後、現像液を使用して現像を行なうが、この場合、浸漬法やスプレー法で行なう。現像液としては前記の側鎖または分子末端にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応性化合物および光重合開始剤の混合物が溶解可能である有機溶媒を使用できる。また該有機溶媒にその溶解力が失われない範囲で水を添加してもよい。またアクリル系共重合体の側鎖にカルボキシル基が存在する場合、アルカリ水溶液で現像できる。アルカリ水溶液として水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム水溶液などのような金属アルカリ水溶液を使用できるが、有機アルカリ水溶液を用いた方が焼成時にアルカリ成分を除去しやすいので好ましい。有機アルカリの具体例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキサイド、トリメチルベンジルアンモニウムヒドロキサイド、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンなどが挙げられる。アルカリ水溶液の濃度は通常0.01〜5重量%、より好ましくは0.1〜1重量%である。アルカリ濃度が低すぎれば未露光部が除去されずに、アルカリ濃度が高すぎれば、露光部の剥離を引き起こし、また腐食させるおそれがあり良くない。
【0054】
次に、グリーンシートの表面に感光性ペーストを塗布する際に、同時にビアホールに導体を埋込む。埋め込み方はビア形成したシートの支持体を剥がし、裏面を真空引きするなどして固定し、シート表面にスクリーン印刷、スピンコート、アプリケーターなどによって導電体粉末を含む感光性導体ペーストを全面塗布すると同時にビアホールを充填することにより、配線用の層間接続用の導体を形成する。
【0055】
導電体粉末としては、Cu,Au,Ag,Pd,Pt,W,Mn,Ni,Moなどが挙げられる。これらは単独、合金または混合粉末として用いることができる。
【0056】
Cu系導電体粉末としては、例えばCu(97−70)−Ag(3−30),Cu(95−60)−Ni(5−40),Cu(90−70)−Ag(5−20)−Cr(3−15)(以上()内は重量%を表す。以下同様)などの2元系あるいは3元系の混合金属粉末が用いられる。この中でCu−Ag粉末が好ましく、その中でもCuの表面を3〜30重量%のAgでコートした粉末がCuの酸化を抑えることができるので特に好ましい。
【0057】
Au,Ag,Pd,Pt系導電体粉末としては、例えばAg(30−97)−Pd(70−3),Ag(40−70)−Pd(60−10)−Pt(5−20),Ag(30−80)−Pd(60−10)−Cr(5−15),Pt(20−40)−Au(60−40)−Pd(20),Au(75−80)−Pt(25−20),Au(60−80)−Pd(40−20)、Ag(40−95)−Pt(60−5)、Pt(60−90)−Rh(40−10)などの2元系あるいは3元系の混合金属粉末が好ましく用いられる。上記の中でCrやRhを添加した物は高温特性を向上できる点で特に好ましい。
【0058】
W,Mo,Mn系導電性粉末としては、W,W(92−98)−TiB2 (8−2),W(92−98)−ZrB2 (2−8),W−(92−98)−TiB2 (1−7)−ZrB2 (1−7),W(95−60)−TiN(5−60),W(90−60)−TiN(5−35)−TiO2 (2−10),W(90−60)−TiN(5−35)−TiO2 (2−10)−Ni(1−10),W(99.7−97)−AlN(0.3−3),W(10−90)−Mo(90−10),W(92−98)−Al2 Y2 O3 (8−2),Mo,Mo(92−98)−TiB2 (8−2),Mo(92−98)−ZrB2 (8−2),Mo(92−8)−TiB2 (1−7)−ZrB2 (1−7),Mo−TiN,Mo(90−60)−TiN(5−35)−TiO2 (2−10),Mo(90−60)−TiN(5−35)−TiO2 (2−10)−Ni(1−10),Mo(99.7−97)−AlN(0.3−3),Mn(50−90)−Mo(10−50),Mo(60−90)−Mn(40−10)−SiO2 (0−20)、W(30−90)−Mo(30−70)−Mn(3−30)などの2元系あるいは3元系の混合金属粉末が用いられる。上記の中でTiB2 ,ZrB2 ,TiN,AlN,Ni,TiO2 を添加したものは導体膜とアルミナ基板との接着強度を向上させ、導体膜の抵抗を下げるのに効果がある点で特に好ましい。
【0059】
抵抗体粉末としては、RuO2 、RuO2 系、Al粉末およびB2 O3 を含有するガラス粉末、Al粉末、遷移金属粉末およびB2 O3 を含有するガラス粉末、In2 O3 系−ガラス粉末、RuO2 −ガラス粉末、LaB6 −ガラス粉末、SnO2 添加品−ガラス粉末、珪化物−ガラス粉末、NiOとLi2 O3 −B2 O3 −SiO2 −RO(RはMg,Ca,Sr,Baの中から選ばれる一種)などから構成されるガラス粉末などが挙げられる。、
RuO2 は、無定系および結晶系、あるいはパイロクロア化合物と称されるCdBiRu2 O7 ,BiRu2 O7 ,BaRuO5 ,LaRuO3 ,SrRuO3 ,CaRuO3 ,Ba2 RuO4 などでもよい。RuO2 系としては、RuO2 −SiO2 が使用できる。
【0060】
Al粉末およびB2 O3 を含有するガラス粉末としては、Alが4〜15重量%、B2 O3 を含有するガラス粉末が96〜85重量%があげられる。B2 O3 を含有するガラス粉末としては、B2 O3 −BaO−SiO2 −TaiO5 −Al2 O3 −CaO−MgO系などが挙げられる。これにMoSi2 ,AlSi2 ,WSi2 ,TiSi2 などの金属珪化物を含むことができる。
【0061】
Al粉末、遷移金属粉末およびB2 O3 を含有するガラス粉末としては、上記のAl粉末およびB2 O3 を含有するガラス粉末に加えて、Nb,V,W,Mo,Zr,Ti,Niなどの遷移金属粉末を含有するものである。
【0062】
In2 O3 系−ガラス粉末は、30〜80重量%のIn2 O3 系と、70〜20重量%のガラス粉末からなるものがあげられる。In2 O3 系としては、ITO(SnをIn2 O3 にドープしたもの)、In2 O3 ,SbをドープしたSnO3 +SnO2 などがあげられる。また、ガラス粉末としては、SiO2 −Al2 O3 −MgO−ZnO−B2 O3 −BaO系などである。この中では、SiO2 −B2 O3 系が低温焼結できるので好ましい。
【0063】
次に、感光性ペーストを全面塗布したセラミックグリーンシート上にパターンを形成するために、回路パターンを有するフォトマスクを用いて紫外線を照射して露光し、感光性ペーストを光硬化させる。この時、予め形成されたビアの位置を把握するため、ビアのフォトマスクとラインパターンのフォトマスクがシート上で一致するように高精度のアライメントを設けておく必要がある。
【0064】
次に、未露光部を現像液で除去してマスク通りの微細なパターンやビアホールを得る。
【0065】
露光に用いられる紫外線の光源および現像に用いる現像液は、上記感光性グリーンシートで用いた場合のものと同様である。
【0066】
上記の要領でグリーンシート表面に所定の導体、抵抗体、誘電体あるいは絶縁体パターンを印刷する。またビアホールを形成するのと同様の方法でガイド穴をあける。次に必要な枚数のシートをガイド孔を用いて積み重ね、90〜130℃の温度で50〜200kg/cm2 の圧力で接着し、多層基板からなるシートを作製する。
【0067】
次に、焼成炉にて上記のシートを焼成してビアホールに導体および導体などのパターンが形成されたセラミックス多層基板を作製する。焼成雰囲気や温度はセラミックス基板や導体の種類によって異なる。セラミックスあるいはガラス・セラミックスからなる低温焼成多層基板の場合は、800〜1100℃の温度で数時間保持して絶縁層を焼成する。アルミナや窒化アルミやムライト基板では、1450〜1600℃の温度で数時間かけて焼成する。Cu,W,Mo,W−Mo、Mn−Moなどの導体では、窒素などの中性や水素を含む還元性雰囲気で焼成する。焼成時に感光性ペーストおよびセラミックグリーンシート中に含まれる側鎖または分子末端にエチレン性不飽和基を有するアクリル系共重合体、光反応重合性化合物、非感光性樹脂バインダー、有機染料、可塑剤あるいは溶媒などの有機物の酸化、蒸発を可能にする雰囲気であればよい。そのようなものとして導体がCu,W,Mo,W−Mo,Mn−Moでは酸素を3〜100ppm含有し、残部が窒素あるいはアルゴンなどの中性ガスまたは水蒸気で制御した雰囲気中で焼成できる。焼成温度は有機バインダー完全に酸化、蒸発させる温度として300〜600℃で5分〜数時間保持した後、850〜1600℃の温度で数時間保持してからセラミックス多層基板を作製する。
【0068】
焼成後の多層基板中に残存する炭素量は250ppm以下である必要がある。そうでないと多層基板の気孔率の低下、強度低下、誘電率の増加、誘電損失の増加、リーク電流の増加あるいは絶縁抵抗の低下などの問題を生ずる。また残存炭素量は100ppm以下、より好ましくは50ppm以下である。
【0069】
【実施例】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。なお、以下の説明で濃度は特に断らない限りすべて重量%で表わす。
【0070】
<セラミックグリーンシート基板の作製>
<セラミック粒子の調製>
▲1▼アルミナ粉末;酸化アルミニウム(Al2 O3 )92%,無水珪酸(SiO2 )5%,酸化マグネシウムおよび酸化カルシウムをそれぞれ1.5%添加した混合粉末で、平均粒子径2.2μmの粒子を使用した。
【0071】
▲2▼コーディエライト粉末;比表面積3m2/gのコーディライト(Al2O3−SiO2−MgO)粉末で、平均粒子径2.0μmの球状粒子を使用した。
【0072】
▲3▼ガラス−セラミック粉末;ガラスーセラミックス粉末の組成は96%純度のアルミナ粉末50%と硼硅酸塩ガラス50%である。ガラス組成は、SiO2 ;70%,BaO;3%,Al2 O3 ;7%,B2 O3 ;18%,Na2 O;2%である。平均粒子径2.2μm,比表面積1.5m2 /gの球状粒子を使用した。
【0073】
次にこれらの粉末100部に以下のポリマーバインダー、モノマー、溶媒、光重合開始剤、可塑剤、分散剤としてポリビニルブチラール12部、トルエン、メチルエチルケトンおよびイソプロピルアルコールの混合溶媒22部、可塑剤3.1部、カチオン系分散剤1.2部を加えて十分混合した後、真空脱泡し、粘度1500cpに調整したスラリーをドクターブレード法で厚み200μmのセラミックグリーンシート基板を作製した。
【0074】
<有機成分の調製>
A.紫外線吸光剤
アゾ系染料のスダンIV。化学式 C24H20N4 O、分子量 380.45
B. ポリマーバインダー
40%のメタアクリル酸(MAA)、30%のメチルメタアクリレート(MMA)および30%のスチレン(St)からなる共重合体のカルボキシル基(MAA)に対して0.4当量(40%に相当する)のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加反応させたポリマー。酸価は95であった。
【0075】
C. モノマー(光反応性化合物)
トリメチロールプロパントリアクリレート
D. 溶媒
イソプロピルアルコール、ブチルアルコールおよびメチルエチルケトンの混合溶媒で、混合比が16:2:82のもの。
【0076】
E. 光重合開始剤
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1と2,4−ジエチルチオキサントンをポリマーとモノマーとの総和に対してそれぞれ20%添加した。
【0077】
F.光重合開始剤
2,4−ジエチルチオキサントンをポリマーとモノマーの総和に対して20%添加した。
【0078】
G.可塑剤
ジブチルフタレートをポリマーとモノマーとの総和に対して30%添加した。
【0079】
H.分散剤
カチオンまたは”フローレン”(G−700、マレイン酸部分エステル系)をセラミックス粉末に対して1.5%添加した。
【0080】
<グリーンシートの作製>
I.有機ビヒクルの調製
溶媒およびポリマーバインダーを混合し、攪拌しながら120℃まで加熱しすべてのポリマーバインダーを均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、光重合開始剤を加えて溶解させた。その後この溶液を400メッシュのフィルターを用いて濾過し、有機ビヒクルを作製した。
【0081】
J.スラリーの作製
スラリーの作製は上記の有機ビヒクルに光反応性化合物、吸光剤添加の粉末、フローレン分散剤および光重合開始剤を所定の組成となるように添加し、アトライターで12時間湿式混合して調製した。さらに真空攪拌機にて16時間脱泡してスラリーを調整した。作製したスラリーの粘度は、ブルックフィールド粘度計(型式;RVDV−II+)で回転数50rpmで測定して2000cpsであった。スラリー組成を表1に示す。
【0082】
K.グリーンシートの作製
成形は紫外線を遮断した室内でポリエステルのキャリアフィルムとブレードとのギャップを0.7mmとし、成形速度20cm/分でドクターブレード法により行った。得られたグリーンシートの厚さは110μmであった。
【0083】
L.ビア形成
上記で作製したシートを100mm角に切断した後、温度90℃にて30分間乾燥し、表面の溶媒を蒸発させた。次に径100μmのビアホールを30000個有するクロムマスクを用いて、上面から超高圧水銀灯を使用し、露光量250mJ/cm2 で紫外線露光した。次に35℃に保持したモノエタノールアミンの0.5重量%の水溶液に浸漬して現像し、その後スプレーを用いて光硬化していないビアホールを水洗浄した。
【0084】
M.ビアホール導体埋込とパターン形成
グリーンシートのビアホールにスクリーン印刷により、タングステン(アルミナ粉末を用いたとき)、銀−パラジウム合金(コーディエライト粉末を用いたとき)または銅(ガラス−セラミックス粉末を用いたとき)の厚膜ペーストを埋め込んで配線の創刊接続導体を形成すると同時にシート表面全体に塗布する。
【0085】
<導体パターン形成>
上記Mで感光性導電ペーストを全面塗布したアルミナ、コーディライトおよびガラス−セラミックスのグリーンシート上に微細パターンを形成した。感光性導電ペーストの作製およびこのペーストによるパターン形成は下記の方法によった。上記のグリーンシートのうち、アルミナグリーンシートには感光性タングステンペーストを、コーディエライトのグリーンシートには感光性銀−パラジウムペーストを、ガラス−セラミックスのグリーンシートには感光性銅ペーストをそれぞれ使用した。
【0086】
A.感光性導電ペーストの作製
1. 導電粉末
▲1▼タングステン粉末;多面体形状の平均粒子径3.5μm,比表面積0.15m2 /gを有する粉末。
【0087】
▲2▼銀−パラジウム合金粉末(パラジウム5%);球状の平均粒子径1.5μm,比表面積0.15m2 /gを有する粉末。
【0088】
▲3▼銅粉末;多面体形状の平均粒子径4.1μm、比表面積0.32m2 /gを有する粉末。
【0089】
上記の導電粉末をそれぞれペースト組成として89%添加した。
【0090】
2. ポリマー
40%のメタアクリル酸(MAA)、30%のメチルメタアクリレート(MMA)および30%のスチレン(St)からなる共重合体のカルボキシル基(MAA)に対して0.4当量(40%に相当する)のグリシジルメタアクリレート(GMA)を付加反応させたポリマー。ポリマーの酸価は100であった。ポリマーを6%添加した。
【0091】
3. モノマー
トリメチロールプロパントリアクリレートを4%添加した。
【0092】
4. ガラスフリット
酸化カルシウム(5.0)、酸化亜鉛(28.1),酸化ホウ素(25.0),二酸化ケイ素(22.8),酸化ナトリウム(8.8),酸化ジルコニウム(4.5),アルミナ(5.8)を含む組成のガラスフリットを0.7%添加した。
【0093】
5. 酸化銅粉末
粒子径0.6μmのCuO粉末を0.3%添加した。
【0094】
6. 溶媒
γ−ブチロラクトン
7. 光重合開始剤
2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパノン−1と2,4−ジエチルチオキサントンを1.8%添加した(ポリマーとモノマーとの総和に対してそれぞれ20%)。
【0095】
8. 可塑剤
ジブチルフタレート(DBP)を0.6%添加した(ポリマーの10%)。 9. 増感剤
2,4−ジエチルチオキサントンを2%添加した(光重合開始剤と同じ割合)。
【0096】
10. 光重合促進剤
p−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル(EPA)を2%添加した(光重合開始剤と同じ割合)。
【0097】
11. 有機ビヒクルの作製
溶媒およびポリマーバインダーを混合し、攪拌しながら80℃まで加熱しすべてのポリマーバインダーを均質に溶解させた。ついで溶液を室温まで冷却し、光重合開始剤を加えて溶解させた。その後溶液を400メッシュのフィルターを通過させ、濾過した。
【0098】
12. 安定化処理
上記導電粉末のうち銅粉末に対して10%のベンゾトリアゾールを酢酸メチル、溶解した後、銅粉末が十分に浸漬できるように溶液中に12時間浸漬した。浸漬後、20〜25℃下ドラフト内で乾燥して溶媒を蒸発させてトリアゾール処理を行った銅粉末を作製した。
【0099】
13. 導電ペースト作製
上記の有機ビヒクルに導電粉末、モノマー、酸化銅粉末、可塑剤、増感剤、光重合促進剤、およびガラスフリットを所定の組成となるように添加し、3本ローラで混合・分散してペーストを作製した。
【0100】
B.印刷
上記のペーストを320メッシュのポリエステル製のスクリーンを用いて感光性樹脂組成物の光硬化層を形成済みの80mm角のグリーンシート上に50mm角の大きさにベタに印刷し、80℃で40分間保持して乾燥した。乾燥後の塗布膜の厚みはおよそ15μmであった。印刷は紫外線を遮断した室内で行った。
【0101】
C.パターン形成
上記で作製した塗布膜を10〜60μmの範囲で5μm間隔のファインパターンを形成したクロムマスクを用いて、上面から500mJ/cm2 の出力の超高圧水銀灯で紫外線露光した。次に25℃に保持したモノエタノールアミンの0.5重量%の水溶液に浸漬して現像し、その後スプレーを用いて光硬化していない未露光部を水洗浄した。
【0102】
D.積層
感光性導電ペーストにより電源回路を形成した5枚のグリーンシートをガイド孔を用いて積層し、120℃、150kg/cm2 の圧力で熱圧着し、5層からなる多層グリーンシートを作製した。
【0103】
E.焼成
グリーンシート上に印刷した塗布膜を酸素を50ppm含有する雰囲気(残部;窒素)で500℃で1時間保持してバインダーを蒸発させた後、焼結し、セラミックス基板を得た。コーディエライトおよびガラス−セラミックスのシートはそれぞれ900℃で1時間保持して行った。アルミナグリーンシートは、H2(水素)ガスとN2(窒素)ガス雰囲気中で500℃で2時間焼成を行い、脱バインダー後1600℃の温度にて1時間保持して焼結し、セラミックス基板を得た。
【0104】
F. 評価
焼成後の導体膜について解像度および比抵抗を測定した。解像度は導体膜を顕微鏡観察し、15〜50μmのラインが直線で重なりなくかつ再現性が得られるライン間隔を最も微細なライン間隔として決定した。膜厚はマイクロメータで測定した。比抵抗は4端子法で測定した。また導体膜の断線発生率を抵抗測定による導通の有無で評価した。これらの結果を表1に示す。
【0105】
実施例1では、直径(D)が50μm、中心間距離(A)が250μmのビア形成およびライン幅(L)が16μm、スペース(S)が20μm、ライン高(H)が12μmのラインパターンを同一シート上に形成した。
【0106】
実施例2では、直径(D)が80μm、中心間距離(A)が350μmのビアパターンの形成およびライン幅(L)が20μm、スペース(S)が30μm、ライン高(H)が15μmのラインパターンを同一シート上に形成した。
【0107】
実施例3では、直径(D)が100μm、中心間距離(A)が500μmのビアパターンの形成およびライン幅(L)が50μm、スペース(S)が50μm、ライン高(H)が20μmのラインパターンを同一シート上に形成した。
【0108】
実施例1、2および3で作製したパターンを図1に示す。
【0109】
このように感光性樹脂組成物を光硬化した層をセラミックグリーンシート基板上に設けたセラミックグリーンシートを用いると、感光性の導電ペーストを用いてフォトリソグラフィー法により線幅/幅間隔が15〜50μm/15〜50μmの微細パターンでかつ低抵抗の回路パターンが得られる。また、焼成後においても断線発生のない導体膜パターンが得られる。この結果、セラミックス多層基板の小形化、高密度化を一層可能にするものである。
【0110】
【表1】
【0111】
【発明の効果】
従来のセラミックグリーンシート上に感光性ペーストを用いてパターン形成する場合は、シート中の有機成分と感光性ペーストに含まれる有機溶媒とが反応し、パターン形成が困難であった。
【0112】
感光性グリーンシート上に感光性ペーストを用いてパターン形成する場合は、上記反応がなく、シート上にビア孔に導体の埋込と塗布を行い、連続してパターンを形成することにより、工程が簡略化される。
【0113】
さらにパターン形成の解像度は、ライン幅/ラインスペース=20μm/20μmの微細な導体の形成が可能となる。これらの結果、セラミックス多層基板の小形化、高密度化を一層可能にするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 グリーンシート上のラインパターンを示す図である。
Claims (5)
- 以下の(1)〜(4)の工程を有するパターン形成されたセラミックグリーンシートの製造方法。
(1)セラミック粉末および感光性樹脂組成物を含むシート組成物を支持体に塗布、乾燥し、セラミックグリーンシートを作製する工程、
(2)マスクパターンによって紫外線照射による露光および現像によって、直径が30μmから100μm、中心間距離が85μmから500μmの範囲にあるビアパターンを形成する工程、
(3)導体粉末、官能基を有する感光性樹脂組成物、酸化銅粉末を含む感光性導電ペーストをシート表面に塗布し、同時に前記形状のビアへの導体埋込を行う工程、
(4)マスクパターンにより露光、現像してラインスペースが15μmから500μm、ライン高さが10μmから50μmの範囲であるラインパターンを形成する工程。 - 請求項1の製造方法によって、作製されたセラミックグリーンシートであって、直径が30μmから100μm、中心間距離が85μmから500μmの範囲にあるビアパターンおよびライン幅が15μmから50μm、ラインスペースが15μmから50μm、ライン高さが10μmから50μの範囲であるラインパターンが同一シート上に形成されたセラミックグリーンシート。
- セラミックグリーンシートが感光性セラミックグリーンシートである請求項2記載のセラミックグリーンシート。
- セラミックグリーンシートがガラスセラミック複合系あるいは結晶化ガラスを有する請求項3記載のセラミックグリーンシート。
- ラインパターンが導体パターンである請求項2記載のセラミックグリーンシート。
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JPH09142940A (ja) | 1997-06-03 |
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