JP3823117B2 - 試料寸法測長方法及び走査電子顕微鏡 - Google Patents
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Description
本発明は、走査型電子顕微鏡を用いてパターンの寸法を測長する方法、及び走査電子顕微鏡に関り、特に電子線を照射することによって形状が変化する試料を測定の対象とする測長方法、及び走査電子顕微鏡に関する。
背景技術
半導体素子や薄膜磁気ヘッドなど、表面の微細加工により製作される機能素子製品の製造・検査工程では、加工されたパターン幅の測定(以下「測長」と呼ぶ)および外観検査に、走査型電子顕微鏡が広く用いられている。
走査電子顕微鏡は、電子源から放出され、磁場あるいは電場と電子線の相互作用を利用した収束レンズおよび対物レンズにより細く絞られた電子線を、偏向器を用いて試料上で一次元あるいは二次元的に走査し、電子線照射によって試料から発生する二次信号(二次電子や反射電子,電磁波)を光電効果等を利用した検出器により検出し、その検出信号を電子線の走査と同期した輝度信号等の可視化可能な信号に変換・処理することで試料像を形成する装置である。
走査電子顕微鏡では、観察・測長する試料表面の形状と高い精度で対応した試料像を得られるように努力が払われており、こうして得た試料像から、試料表面の任意の2点間の距離を演算する。この演算は一般に「測長」と呼ばれ、かかる演算機能を持つ走査電子顕微鏡は「測長電子顕微鏡」と呼ばれている。
このような走査電子顕微鏡では、当然のことながら観察する試料表面に数百エレクトロンボルトの到達エネルギーをもつ電子線を照射することになる。
一方、近年、半導体の表面の微細加工は一層の微細化が進み、フォトリソグラフィーの感光材料として、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光に反応するフォトレジスト(以下「ArFレジスト」と呼ぶ)が使われ始めている。ArFレーザ光は波長が160nmと短いため、ArFレジストはより微細な回路パターンの露光に適しているとされている。
発明の開示
しかし、最近の検討の結果、電子線照射に対して大変脆弱で、形成されたパターンを走査電子顕微鏡で観察あるいは測長すると、収束電子線の走査により基材のアクリル樹脂等が縮合反応をおこし体積が減少(以下「シュリンク」と呼ぶ)して、回路パターンの形状が変化してしまうことが知られるようになってきた。一方、半導体素子ではその設計性能を実現するために、回路パターンの形状・寸法を厳しく管理することが必要であり、そのため、検査工程では微細な寸法を測長できる測長電子顕微鏡が使われている。
測長のための電子線照射において、シュリンクが発生すると、シュリンクする前の寸法が判らないという問題がある。さらに、連続して同一個所を測定するとき、電子線照射を繰り返すことで線幅が変化することから、測定の都度測定値がばらついてしまい、測定精度が上がらないといった問題がある。
測長電子顕微鏡に代わって微細な寸法を所望の精度で測長できる装置はなく、測長によりパターンがシュリンクすることで正確な寸法値が判らず、ArFレジストを使用した半導体素子製造の大きな障害となっている。
特開平11−237230号公報には、繰り返し測定値または測定回数から近似曲線を演算し、測定開始時点および任意の測定回数時の寸法を推定し、コンタミネーションやチャージアップ現象による影響を低減することが開示されているが、測定回数を最小限に抑えてArFレジストのシュリンクを最小にすることが考慮されておらず、また、半導体工場などで行っている自動測定をすることが考慮されていなかった。
本発明の目的は、ArFレジストのような電子線照射によってシュリンクを起こすパターンの測長を行うのに好適な寸法値の測定方法、及び装置を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明では、電子線照射によってシュリンクするパターン寸法を測長し、当該測長値とシュリンクの経過を示す近似関数(近似曲線)を用いて、シュリンクする前の寸法値を推定する。
この近似曲線(以下「SCC(Shrink Characteristic−Curve)曲線」と呼ぶ)の例として、発明者が行った実験データを第1図に示す。
レジスト材料や表面形状が同じで、ラインの幅が異なるパターンAとパターンBを繰り返し測長したときのプロット101と102に対して、それぞれSCC曲線103と104がフィッティングされている。
まず、パターンAのみに着目すると、加速電圧800Vで照射された電子線によって、パターンがシュリンクし、測長寸法が測長回数を重ねるごとに小さくなっているのがわかる。
電子線が照射される前の寸法(以下「シュリンクゼロ寸法」と呼ぶ)は、近似曲線のゼロ切片、すなわち測長回数が0回に相当するときの寸法によって、推定できることがわかる。
本発明は、上記SCC曲線を用いて、シュリンク前のパターンの寸法値を測定するための手法を提供するものであり、具体的な内容は、発明を実施するための最良の形態の欄の記載から理解することができる。
発明を実施するための最良の形態
第6図は本発明の一実施例である走査電子顕微鏡の構成を示す図である。陰極1と第一陽極2の間には、制御演算装置30(制御プロセッサ)で制御される高電圧制御電源21により電圧が印加され、所定のエミッション電流が陰極1から引き出される。陰極1と第二陽極3の間には制御演算装置30で制御される高電圧制御電源21により加速電圧が印加されるため、陰極1から放出された一次電子線4は加速されて後段のレンズ系に進行する。一次電子線4は、集束レンズ制御電源22で制御された収束レンズ5で収束され、絞り板8で一次電子線4の不要な領域が除去される。
その後、対物レンズ制御電源23で制御された対物レンズ7により試料9に微小スポットとして収束され、偏向コイル11で試料上を二次元的に走査される。偏向コイル11の走査信号は、観察倍率に応じて偏向コイル制御電源24により制御される。また、試料9は二次元的に移動可能な試料ステージ41上に固定されている。試料ステージ41はステージ制御部25により移動が制御される。
一次電子線4の照射によって試料9から発生した二次電子10は二次電子検出器12により検出され、描画装置28は検出された二次信号を可視信号に変換して別の平面上に適宜配列するように制御を行うことで、試料像表示装置26に試料の表面形状に対応した画像を試料像として表示する。
入力装置27はオペレータと制御演算装置30のインターフェースを行うもので、オペレータはこの入力装置27を介して上述の各ユニットの制御を行う他に、測定点の指定や寸法測定の指令を行う。なお、制御演算装置30には図示しない記憶装置が設けられており、得られた測長値や、後述する測長シーケンス等を記憶できるようになっている。
二次電子検出器12で検出された信号は、信号アンプ13で増幅された後、描画装置28内の画像メモリに蓄積されるようになっている。なお、本実施例装置は二次電子検出器12を備えているが、これに限られることはなく、反射電子を検出する反射電子検出器や光,電磁波,X線を検出する検出器を二次電子検出器に替えて、或いは一緒に備えることも可能である。
画像メモリのメモリ位置に対応したアドレス信号は、制御演算装置30内、或いは別に設置されたコンピュータ内で生成され、アナログ変換された後に、偏向コイル11に供給される。X方向のアドレス信号は、例えば画像メモリが512×512画素(pixel)の場合、0から512を繰り返すデジタル信号であり、Y方向のアドレス信号は、X方向のアドレス信号が0から512に到達したときにプラス1される0から512の繰り返しのデジタル信号である。これがアナログ信号に変換される。
画像メモリのアドレスと電子線を走査するための偏向信号のアドレスが対応しているので、画像メモリには走査コイルによる電子線の偏向領域の二次元像が記録される。なお、画像メモリ内の信号は、読み出しクロックで同期された読み出しアドレス生成回路で時系列に順次読み出すことができる。アドレスに対応して読み出された信号はアナログ変換され、試料像表示装置26の輝度変調信号となる。
画像メモリには、S/N比改善のため画像(画像データ)を重ねて(合成して)記憶する機能が備えられている。例えば8回の二次元走査で得られた画像を重ねて記憶することで、1枚の完成した像を形成する。即ち、1回もしくはそれ以上のX−Y走査単位で形成された画像を合成して最終的な画像を形成する。1枚の完成した像を形成するための画像数(フレーム積算数)は任意に設定可能であり、二次電子発生効率等の条件を鑑みて適正な値が設定される。また複数枚数積算して形成した画像を更に複数枚重ねることで、最終的に取得したい画像を形成することもできる。所望の画像数が記憶された時点、或いはその後に一次電子線のブランキングを実行し、画像メモリへの情報入力を中断するようにしても良い。
本実施例の以下の説明では、1回の測長を行うために、所定枚数の画像(例えば8枚)の画像を積算して、そこから測長を行うための情報(例えばラインプロファイル)を抽出している。即ち、複数回の測長を行うために、8枚×測長回数の画像を取得する。なお、本実施例の説明では、画像形成に基づく測長を行う例について、説明するが、これに限られることはなく、例えば電子線を一次元的に走査し、当該走査個所から放出される二次電子等の検出に基づいてラインプロファイルを形成することも可能である。
またフレーム積算数を8に設定した場合に、9枚目の画像が入力される場合には、1枚目の画像は消去され、結果として8枚の画像が残るようなシーケンスを設けても良いし、9枚目の画像が入力されるときに画像メモリに記憶された積算画像に7/8を掛け、これに9枚目の画像を加算するような重み加算平均を行うことも可能である。
また本発明実施例装置は、検出された二次電子或いは反射電子等に基づいて、ラインプロファイルを形成する機能を備えている。ラインプロファイルは一次電子線を一次元、或いは二次元走査したときの電子検出量、或いは試料像の輝度情報等に基づいて形成されるものであり、得られたラインプロファイルは、例えば半導体ウエハ上に形成されたパターンの寸法測定等に用いられる。
パターンの寸法測定は、試料像表示装置26に試料像とともに2本の垂直または水平カーソル線を表示させ、入力装置27を介してその2本のカーソルをパターンの2箇所のエッジへ設置し、試料像の像倍率と2本のカーソルの距離の情報をもとに制御演算装置30でパターンの寸法値として測定値を算出する。
なお、第6図の説明は制御プロセッサ部が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられた制御プロセッサで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次電子検出器12で検出される検出信号を制御プロセッサに伝達したり、制御プロセッサから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、画像メモリを有し走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。
更に、本実施例装置は、例えば半導体ウエハ上の複数点を観察する際の条件(測定個所,走査電子顕微鏡の光学条件等)を予めレシピとして記憶しておき、そのレシピの内容に従って、測定や観察を行う機能を備えている。
また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、画像メモリを有し走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。即ち、以下に説明する本発明実施例は画像プロセッサを備えた走査電子顕微鏡等の荷電粒子線装置に採用可能なプログラムの発明としても成立するものである。
(実施例)
本実施例では、電子線照射によってシュリンクするパターン寸法を測長し、当該測長値とシュリンクの経過を示す近似関数(近似曲線)を用いて、シュリンクする前の寸法値を推定する技術について、顕在化する問題点を解決するための具体例について詳述する。
まず1点目の問題は、シュリンク量がパターンごとに異なることによって生じることである。実際の測長においては、生産効率向上のため、測長のスループットを確保せねばならず、なるべく少ない測長回数でシュリンクゼロ寸法を求めなければならない。よって、第1図のように、シュリンクゼロ寸法を求めるのに測長回数を20回も必要とするやり方は、生産ラインにおける測長には得策できない。
そこで、1回目の測長値に一定の値を加えてシュリンクゼロ値を推定するやり方が考えられるが、実際には誤差が大きすぎて実行不可能である。例えば、第1図のパターンAのシュリンクゼロ値105と1回目の測長値のずれは3.9nmであり、パターンBでは6.5nmである。二つのパターンで差異が2.6nmも生じており、これは、誤差を約1nm以下に抑えなければならない、寸法が100nm以下のプロセスにとっては大きすぎる値である。
このような状況においては、パターンごとに個別にSCCをフィッティングして、シュリンクゼロ値を求めなければならず、そのためには多くの測長回数が必要となる。しかしながら、測長回数を増やすほど誤差は小さくなる傾向にあるものの、同時にスループットは低下してしまう。言い換えれば、誤差とスループットとはトレードオフの関係にある。そこで、充分な誤差を得るためには、最低何回の測長回数が必要となるかを、定量的に求めなければならないという問題がある。
この問題に対し、本実施例では、生産ラインで生産管理のために測長するシーケンス(以降「ルーチン測長」と呼ぶ)より前に、レジスト材料,露光条件,パターンの形状,パターンのウエハ内の位置,隣り合う別のパターンとの距離、などが異なるパターンごとに、キャリブレーションのためのシーケンス(以降「キャリブレーション測長」と呼ぶ)を設けることを提案する。
即ち、同じ種類のパターンに対して、同じSCC曲線を用いることによって、同じ種類のパターンであるが故に、同等の傾向を示すSCC曲線に基づいて、シュリンクゼロ値(即ち、パターン減少前の寸法)を算出することができ、パターン種類の変化によらず、正確な寸法測定が可能になる。
なお、第6図に示す本実施例装置の制御演算装置30内に設けられた記憶装置に、パターン種類毎のSCCを記憶し、入力装置によって選択されたパターンの種類情報に基づいて、自動的にSCCが選択されるようなシーケンスを組んでも良い。
また、SCC曲線だけではなく、パターンの種類毎に適正な測長回数を記憶しておき、パターン種類の選択により、自動的に測長回数を設定するようなシーケンスを組んでも良い。
ルーチン測長においては、SCCを測長値にフィッティングするための数学的な操作を行うが、それと同じ操作をキャリブレーション測長においても行い、そのときのフィッティング誤差を最小にするSCC関数を決定する。
このSCC関数を、後のルーチン測長でも使用することによって、フィッティング誤差を最小限に抑えることが可能になる。さらに、キャリブレーション測長の回数を減らして、さらなるスループットの向上を目指すため、外部のデータベースからネットワークなどを介した通信によって、SCC関数を供給するようなシステム及び事業形態を構築することもできる。
次に2番目の問題は、シュリンク量を抑えるために、測長回数を減らそうとするときに生じる。測長したパターンがあまりにもシュリンクしてしまうと、そのパターンがデバイス中で機能しなくなり、生産の歩留まりを低下させてしまうことになる。そこで、シュリンク量をできる限り抑えつつ、測長を実行する必要がある。しかしながら、シュリンク量を少なくしようとすると、シュリンクゼロ値の誤差が大きくなる問題が生じてしまう。
その例を、第2図のグラフを用いて説明する。一般の測長では、加速電圧が800V程度で行われているが、これを300V程度に抑えると、シュリンク量が抑えられるものの、測長値のばらつきが大きくなる。第2図において、1つめの測長値のみフィッティングしたSCC201と、5つの測長値にフィッティングしたSCC202とでは、シュリンクゼロ値において1.1nmの違いが生じている。すなわち、フィッティングする測長値の数が、シュリンクゼロ値を結果的に変動させていることになり、これもまた誤差の原因になってしまう。
そこで、シュリンクゼロ値を収束させるためには、測長回数を増やして、より多くのデータにフィッティングさせるのが好ましいが、そうするとスループットが低下し、かつシュリンク量が増えてしまう。ゆえに、シュリンクゼロ値の誤差は、スループット向上及びシュリンク量抑制に対してトレードオフの関係にあることがわかった。特に、シュリンク量を減らすために加速電圧を低くしている場合には、測定値のばらつきが大きくなるので、その関係はより顕著になる。シュリンクゼロ値を生産管理に用いるためには、シュリンクゼロ値の誤差を測長回数ごとに定量的に予測し、誤差と測長回数とのバランスがうまくとれる条件を探さなければならないという問題が生じることがわかった。
この問題を解決するために、シュリンクゼロ値の誤差が、測長回数に対してどのように変化するかを、以下に説明するような数学的方法によって定量的に求め、誤差とシュリンク量の制約下において最も少ない測長回数を選択する。このような操作を、SCC関数が決定された後に実施する。
これにより、ルーチン測長における誤差やシュリンク量を許容値以下に抑え、かつ最少の測長回数で測長できるので、スループットを最大にすることが可能となる。
以下に上記本発明の実施例の処理フローを、図面を交えて説明する。
第3図に本発明の一実施例として、ある監視パターンの測長シーケンス全体のフローを示す。ArFプロセス用のあるレジスト材料が塗布されており、露光条件,パターンの形状,ウエハ内におけるパターンの位置、などが同じウエハを、大量に測長しなければならない場合を例にあげて説明する。
それらウエハのうち一つのウエハをキャリブレーション用ウエハとし、それを用いてキャリブレーション測長を実施する。
例えば、後のルーチン測長において、全てのウエハにわたってある共通のパターン(以降「監視パターン」と呼ぶ)を測長して、生産管理を行うものとする。その場合、キャリブレーション測長301ではその監視パターンだけでなく、それとシュリンクの挙動が同様であると考えられるパターンを測長する。
例えば、通常大量生産に供されるウエハには、同形のデバイスが複数個所に多数作りこまれている。よって、監視パターンを含んでいるデバイスと同形のデバイスを24ヶ選択すると、それらの中に監視パターンと同形のパターンが24ヶ選択される。これらをキャリブレーション測長にて測長し、そのデータから監視パターンのシュリンク挙動を表すSCC関数を決定する。
そして、そのSCC関数を使い、測長回数ごとのシュリンクゼロ値の誤差を、後に示す計算方法によって定量的に求める。その結果を操作者に提示し、誤差とシュリンク量が許容値以下になるような測長回数を選択する。そして、選択された測長回数とSCC関数を含んだキャリブレーションデータが、キャリブレーションデータベース304へ送られて記録される。このような作業を、別な形状の監視パターンに対しても行い、各種の監視パターンごとにキャリブレーションデータを蓄積する。
第3図におけるルーチン測長302では、個々の監視パターンを測長するにあたり、必要なキャリブレーションデータがキャリブレーションデータベースから読み込まれ、それを用いてシュリンクゼロ寸法が求められる。
すでにキャリブレーション測長301において、シュリンクゼロ値の誤差が許容値以下になることが確かめられているので、これと同様の操作を行っているルーチン測長302においても、誤差と測長回数が許容値以下になる。よって、スループットが最大であり、かつシュリンク量が最小となる条件でルーチン測長302を実行することが可能となる。
ところで、キャリブレーションデータは、上記のキャリブレーション測長301以外のリソースからも供給できるようにする。例えば、第3図に示すようにネットワーク通信305を介して、他の装置のデータベース306に蓄積されたキャリブレーションデータを参照できるようにする。このようにすると、生産ラインにおいてキャリブレーション測長を複数の装置で手分けして行えるので、個別の装置で独立してデータを蓄積するよりも、工程がより少なくでき、生産効率を向上させる効果が得られる。
また、キャリブレーションデータを配信する事業形態を成立させ、データの蓄積を専門に行う装置から得られたデータを、配信元データベース307に蓄積し、そこから必要に応じて、キャリブレーションデータをネットワーク305を介して配信できるようにする。このようにすると、事業形態において供出された費用を用いて、より多くのデータの蓄積が可能となり、結果として各生産ラインにおけるキャリブレーション測長の工程がより削減されて、生産効率を向上できる効果が得られる。以下、第3図における各フローの詳細を説明する。
第4図,第3図におけるキャリブレーション測長の詳細を示す。キャリブレーション測長の準備401においては、キャリブレーションウエハを装置内の測定位置に搬送するなどの前準備を行う。
次に、測長レシピ読み込み402ルーチンを実行する。測長レシピには、キャリブレーション測長を行う際に必要な情報が含まれている。測長するパターンは、監視パターン及びそれとシュリンク挙動が同様なパターンが選択されていて、それぞれのパターンのウエハ上における位置,測長時の加速電圧や倍率,測定回数などの測定条件が含まれている。これらの情報は、操作者があらかじめ設定しておいてもよいし、あるいは測長するウエハや監視パターンの種類から自動的に決定されるようにしても良い。
次に、SCC関数計算403ルーチンを実行する。ここでは、まず測長レシピにしたがって、各パターンの測長が行われる。ここで説明するための例として、このルーチンにて測長されるパターンの数をk個とし、各パターンに1〜k番までの番号を付ける。各パターンに対して測長をN回行う。k=12,N=20とする。k番のパターンを測長して得たN個のデータにおいて、最初からn番目のデータを、Dk(n)とする。また、このルーチンにて計算により決定されるSCC関数をF(n)とする。
Dk(1),Dk(2),…,Dk(20)のデータに対して、ak・F(1),ak・F(2),…,ak・F(N)、のそれぞれの値が最も近づくように、akとSCC関数F(n)をフィッティングする。ここで、akはk番のパターンに固有の相似係数である。
以下、akおよびF(n)の決定方法を、k=1番のパターンのデータを例にあげて説明する。フィッティングの精度は、下記で定義される分散R12の値により評価できる。
フィッティングの精度が最も高くなるときは、上のR12が最小になるときであり、そのときには∂/∂α1R12=0である。これを、数式(1)にあてはめると、
これによって、フィッティング精度を最も高くするa1を決定する。
同様にして、番号1〜kの各パターンに対するakは、以下の式で決定する。
このとき、R1,R2,…,Rkの平均値Sは、
である。Sが最小になるようにすれば、全てのパターンに共通で、かつフィッティング精度を最も高くするF(n)を決定できる。
このF(n)は、言わば各測定回数において、複数個所の測定値との差異が、所定値以下となる値である。つまり各測定回数1〜nにおいて、k個の測長値との分散の度合いが所定値以下となるような値である。以上のような手法によれば、各測長個所における平均的なSCC曲線を形成することができ、シュリンク量計算の精度を向上させることが可能になる。
ここで、F(n)は、例えば、
を使用する。Sが最小になるように、パラメータα,β,γをそれぞれ微小量ずつ変化させることによって、F(n)を決定する。このステップでは複数回の測長値に沿うように、SCC曲線を変化させている。このようなステップによれば、実際の測長結果により近い、高精度なSCC曲線を作成することが可能になる。
次に、誤差とシュリンク量の評価404ルーチンを実行する。前のルーチンでパターンごとに20個の測長データに対して、ak・F(n)をフィッティングしたが、このルーチンでは、より少ない測長データを使ってフィッティングした場合の誤差と、シュリンク量を求める。
k番のパターンにおいて、N個のデータを用いて決定されたシュリンクゼロ値ZkNを、
とする。Nは充分大きな値で、これ以上大きくしてもZkNの値は装置の測定精度以下の範囲に収束しているものとする。この場合、ZkNはシュリンクゼロ値の真値とみなせる。
一方、N個のデータのうち、最初からp個までのデータを用いて決定されたゼロシュリンク値Zkpを、
とする。このとき、Zkpの誤差Ekpは、
である。このように定義されたE1p,E2p,…,Ekpの平均値をM(Ekp)、標準偏差をσ(Ekp)とし、pに対してプロットしたグラフを画面に表示する。その例が405である。このグラフは、シュリンクゼロ値の誤差Ekpが、測定回数を増やすことによってどれくらい小さくなるかを示している。装置の操作者は、このグラフを見ることによって、誤差を許容レベル以下に抑えるためには、少なくとも何回測長しなければならないかを判断し、必要な測長回数を決定する。第4図のグラフでは、M(Ekp)値と、σ(Ekp)の3倍値が測長回数に対してプロットされている。ここでは、測長回数を2回にすれば、M(Ekp),3・σ(Ekp)ともに許容値であるところの1nm以下になることが示されているので、測長回数2回が、操作者により選択される。そのルーチンが406である。
第7図は、測長回数を選択する表示画面例を示す図である。この表示画面では、測長回数に対するパターンの変形量と、測長誤差(正確さ)が併せて表示されている。このような表示画面によれば、測長誤差とパターン変形量を参照しつつ、測定回数を決定することが可能となる。
また、画面左側では、パターンの種類を選択可能なウィンドウが設けられている。このウィンドウ内でパターンの種類を選択すると、パターンの種類毎の測長回数に対する測長誤差と、変形量が表示され、パターンの種類毎の測長回数の登録が可能となっている。
なお、第7図の表示例において、測長誤差の精度向上を優先し、パターン変形量があまり問題とならないような場合は、測定回数と測長誤差だけを表示するようにしても良い。また、パターン変形を抑え、測長誤差をある程度犠牲にできる場合には、測長回数とパターン変形量だけを表示するようにしても良い。
以上のような構成によれば、測長回数とシュリンクゼロ値の精度との関係が定量的に求められる。よって、精度を許容レベル以上に保ち、かつ最少の測長回数で済ませられる。言い換えれば、測長のスループットと、測長後のパターンのシュリンク量との関係を定量的に把握できるので、生産効率と歩留まりとの観点から、最も好ましい測定条件を求めることが可能になる。
また、このとき、数式6で定義されるR1,R2,…,Rkの平均値Sを405の下方に示すようにしても良い。平均値Sの値は、シュリンク量を表している曲線からの測定値のばらつきである。このばらつきからは、シュリンクの影響が差し引かれており、装置起因の測定値のばらつきを知ることができる。ここで、装置起因とは、例えば加速電圧の変動や装置の振動など、測定値の信号/ノイズ比を低下させる要因によって生ずるものである。このパラメータを示すことによる効果を説明する。
例えば、単にひとつのパターンを例えば10回程度測長し、当該10個の測長値のばらつきの3σをもって、装置起因の測定値のばらつきを管理する技術との違いを検討する。
この手法は、パターンのシュリンク量が、装置の測定値ばらつきに比べて無視できるほど小さい場合は問題がない。しかしながら、シュリンク量が測定値のばらつき幅と同程度かそれ以上になると、測長値のばらつきに含まれているシュリンク量が無視できなくなり、装置起因のばらつきの管理が困難となる。
特に、シュリンク量を小さくするために、測定の電子ビームの電流や加速電圧を下げる対策がとられるが、そうすると測定値の信号/ノイズ比が低下して、測定値のばらつきがシュリンク量と同程度になり、この問題が顕著になる場合がある。
そこで、本実施例のようにSによって装置起因のばらつきを管理すれば、何らかの原因によって加速電圧が変動するなどにより測定値のばらつきが大きくなっていても、それをシュリンクの影響から分離して知ることができるため、装置の安定性をより高精度に管理できる効果がある。また、本方式を含んだキャリブレーション測長を定期的に実施すれば、装置の安定性を定期的にチェックできるだけでなく、F(n)の変動をモニタすることで、シュリンク状態の不安定度をモニタでき、それからレジスト塗布厚の面内分布や、レジスト露光条件などの変化を察知できるため、その結果をレジスト塗布機や露光機などへフィードバックして制御することが可能となる効果も生じる。
この後、選択された測長回数P0と、使用されたSCC関数F(n)はキャリブレーションデータベース407へ記録される。
同様な作業を、後のルーチン測長にて測定する、他の寸法形状パターンに対して実行する。その場合は、407にて判断され、401へと戻る。
以上の手順を、レジスト材料,露光条件,形状,デバイス内の位置、などが異なるパターンごとに行う。言い換えれば、この後のルーチン測長にて測定するパターンにおいて、シュリンク状態が互いに異なっていると予想される種類のパターンに対して、それぞれ実施する。
ところで、キャリブレーション測長を定期的に実施したり、プロセスの変動が予測されたときに実施したりしても良い。こうすることにより、例えば露光条件が変動することにより、SCC関数が変動してしまったとしても、それを補正することができ、精度を保つことが可能となる。
次に、ルーチン測長の詳細を、第5図を用いて説明する。まず、ルーチン測長の準備501を実行し、ウエハを装置内の測定位置に搬送するなどの前準備を行う。
次に、レシピ読み込み502ルーチンを行う。これから測長するパターンの測定条件を含んだレシピを読み込む。
次に、測長回数P0を読み込む。事前に行ったキャリブレーション測長において、これから測長するパターンに適した測長回数P0とSCC関数F(n)とが決定されている。そのP0キャリブレーションデータベース510より読み込む。データベース中のどのP0を選択するかは、例えばレシピ中に記載しておいても良いし、あるいはパターンの形状を自動的に判定して判断するようにしても良い。
そして、パターンをP0回測長する504。ここで測長されたデータを、測長した順にD(1),D(2),…,D(P0)とする。その後、SCC関数の読み込み505を実行する。測長したパターンに適したSCC関数F(n)が、キャリブレーションデータベース510より読み込まれる。
次に、シュリンクゼロ値を求める506。このルーチンでの計算詳細を説明する。数式(3)および数式(4)で行った計算と同様に、aを相似係数としたときのa・F(1),a・F(2),…,a・F(P0)、が、D(1),D(2),…,D(P0)にそれぞれ近い値になるのは、
のときである。そして、このときのシュリンクゼロ値Z(P0)は、
である。3回測長したデータに対して、F(N)をフィッティングさせた例を511に示す。
すでに、キャリブレーション測長において、今回測長したパターンとレジスト材料,露光条件,形状,デバイス内の位置、などが同等なパターンを12個測長しており、それぞれのシュリンクゼロ値が、数式(11)及び数式(12)と同じ計算方法で求められている。ゆえに、Z(P0)の誤差は、キャリブレーション測長で求められた誤差3・σ(Ekp)と同じであるとみなせる。このように、シュリンクゼロ値の真値や精度が、統計的に信頼できる値として得られるため、シュリンク前の寸法の絶対値を管理することが必要なリソグラフィープロセスの開発や、デバイスの大量生産などにおいて有効である。
この後、シュリンクゼロ値の記録507を実行し、Z(P0)は、そのパターンの測長値として記録される。精度3・σ(Ek Nf)を一緒に記録すれば、各測長値の信頼性も後に評価できる効果がある。
そして、「別なパターンを測定するか?」508を判断し、「はい」であれば、501へ戻ってこれまで説明したルーチン測長手順を別なパターンに対して実行し、「いいえ」であればルーチン測長を終了509する。
ところで、数多くの種類のレジスト材料を測長しなければならない場合には、シュリンク曲線を作成するためのキャリブレーション測長に要する時間が増えてしまい、生産効率が低下してしまう。その場合には、キャリブレーション測長を行わず、代わりにルーチン測長の中で、シュリンク曲線を作成する方法がある。
その具体的な手順を第8図を用いて説明する。キャリブレーション測長を行わずに、測長すべきパターンが形成されたウエハ上の一つ、或いは複数の部分をキャリブレーションパターンとみなして、そこを例えば20回測長する(602)。
このデータを用いてSCC関数を作成する(603)。キャリブレーションパターンは、例えば予めキャリブレーション専用に作成されたパターンであっても良い。或いは特定のチップをキャリブレーション専用に使っても良い。以降の手順はこれまで説明してきたルーチン測長の場合と同じである。
以上のような手法によれば、キャリブレーション測長を別個に実施したり、データベースを作成する必要がない、従って、どのようなウエハが測長プロセスに流れてきても、フレキシブルに対応することが可能となり、生産性の向上につながる。
また、この方式を採用することにより新たに得られるメリットがある。レジストはウエハに塗布されてから時間が経過すると、そのシュリンク特性が変化してしまうことがある。これは、レジスト中の溶剤が蒸発したり、逆に大気中に微量に含まれているアンモニアなどがレジストに取り込まれ、酸性物質を中和してしまったりすることによるものである。このような状況になると、レジストのシュリンク特性が時間の経過と共に変動してしまうことになるため、別個にキャリブレーション測長を行ったとしても、そこで得られたSCC関数が、実際に測長するときのシュリンク特性と一致しなくなってしまい、誤差の原因となる。
しかしながら、この方式の採用によって、測長する寸前にシュリンク曲線が求められるので、シュリンク曲線が経時変化する問題が生じないという新たな効果を得ることができる。
以上本発明の実施例の説明では、ラインパターンのような電子線の照射によって、寸法値が減少するパターンを用いて説明しているが、測長対象パターンはそれに限られない。ラインパターン間のスペース部や、コンタクトホールパターン等は、電子線の照射によって、寸法値が増大する。即ち、対象試料は収縮するけれども、寸法値が増大する。本実施例の手法は、このようなパターンにも適用可能であり、その際には測長回数の増大に従って、寸法値が増大するような関数を作成し、これまで説明してきた処理を行うことで達成される。
以上、本発明によれば、シュリンクを起こすようなパターンであっても、シュリンク前の寸法値を正確に測長することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
第1図は、シュリンクパターンのプロットとSCCを説明する図である。第2図は、シュリンクゼロ寸法のずれの原理を示す図である。第3図は、監視パターンを測長するシーケンス全体のフローを示す図である。第4図は、キャリブレーション測長の詳細を示す図である。第5図は、ルーチン測長の詳細を示す図である。第6図は、本発明を実施するための走査電子顕微鏡の概略図を示す図である。第7図は、本実施例装置において測長回数を選択するための表示画面の例を示す図である。第8図は、ルーチン測長のなかでシュリンク曲線を作成する手順を示す図である。
Claims (7)
- 試料上に電子線を走査し当該走査個所から放出された電子の検出に基づいて、前記試料上に形成されたパターンの寸法を測長する方法において、
複数の異なる個所のパターンの寸法を複数回測長するステップと、
前記複数の測長回数の測長値データと、前記測長回数の変化に対する前記測長値の減少を示す関数との差異を示す分散値について、前記複数の測長個所における平均値を算出し、当該平均値が小さくなるように、前記関数を作成するステップと、
当該作成された関数をパターンの種類ごとに記憶するステップと、
当該記憶された関数に基づいて、前記パターンの減少前の寸法を測長するステップを有することを特徴とする試料寸法測長方法。 - 請求項1において、
前記関数を作成するための試料は、後のルーチン測長において測長されるウェハと、共通のパターンを持つキャリブレーション用ウェハであることを特徴とする試料寸法測長方法。 - 電子源と、当該電子源から放出された電子線を集束する集束レンズと、前記試料を試料上で走査する走査偏向器と、前記試料から放出された電子を検出する検出器と、当該検出器の出力に基づいて、前記試料上のパターンの寸法を測長する演算装置を備えた走査電子顕微鏡において、
前記演算装置は、前記試料の複数箇所のパターンを複数回測長したときの測長値データを記憶する記憶媒体を備え、
前記複数の測長回数の測長値データと、前記測長回数の変化に対する前記測長値の減少を示す関数との差異を示す分散値について、前記複数の測長個所における平均値を算出し、当該平均値が小さくなるように、前記関数を作成し、当該作成された関数をパターンの種類ごとに記憶し、当該記憶された関数に基づいて、前記パターンの減少前の寸法を測長することを特徴とする走査電子顕微鏡。 - 請求項3において、
前記演算装置は、前記測長個所の測長値データと、前記関数によって求められるデータ間の差異に基づいて、各測長回数間の分散を演算することを特徴とする走査電子顕微鏡。 - 請求項4において、
前記演算装置は、前記分散が最小となるような前記関数の係数を演算することを特徴とする走査電子顕微鏡。 - 請求項4において、
前記演算装置は、前記分散を、前記測長個所ごとに求め、当該分散の平均値が最小となるような前記関数を決定することを特徴とする走査電子顕微鏡。 - 請求項3において、
前記演算装置は、前記各測長値データに対し、前記関数によって演算される値が最も近づくような当該関数の係数を決定することを特徴とする走査電子顕微鏡。
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