JP3822794B2 - 誘導電動機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、騒音を低減するようにした誘導電動機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図5は、誘導電動機の一般的な構成を示す断面図である。図5において、フレーム1に保持された固定子2の固定子コイル3に交流電力が供給されると、固定子鉄心4に回転磁界が発生する。この回転磁界により回転子5の回転子導体6に誘導電流が誘起される。そして、誘導電流と回転磁界とにより回転子5が固着された回転軸7が回転して駆動力が出力される。
運転中は固定子コイル3及び回転子導体6を流れる電流による銅損と、回転磁界により固定子鉄心4及び回転子鉄心8に発生する鉄損とにより、各部の温度が上昇する。このため、回転軸7に固着されたファン9の回転により、ファン9の周りの空気を遠心力で排気口10から排出する。これによって生ずる負圧により吸気口11から冷却風が吸入され、固定子2と回転子5との間の空隙12及び回転子5に設けられた通気孔13を矢印14のように通過して排気口10から排出することにより冷却が行われる。なお、15は回転子鉄心8の円周に沿って配置された短絡環で、各回転子導体6間を短絡している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来の誘導電動機は以上のように構成されているので、複数の回転子導体6が風を切る音が発生する。例えば、回転子導体6が46個のとき回転子5が3,000rpm(50rps)で回転している場合、回転子導体6が風を切る周波数50×46=2,300Hzの音が発生する。その他に、ファン9が風を切る音も発生する。
このように、冷却風で冷却するときに空気が有するエネルギーの大部分が音のエネルギーに変換されて外部に発散されるので、騒音が耳障りであるという問題点があった。
この発明は以上のような問題点を解消するためになされたもので、冷却風により発生する騒音を低減することができる誘導電動機を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明に係わる誘導電動機は、固定子と対向した回転子を回転自在とし、吸気口から冷却風を吸入して固定子と回転子との間の空隙及び回転子に設けられた通気孔を通し、排気口から排出して固定子及び回転子を冷却するようにした誘導電動機において、排気口側に冷却風を案内するように多孔質材料からなる吸音材を配置し、吸音材の冷却風が当接する面とは反対側の面に所定の空気層を有する空気室を設け、空気室に繊維状物質からなる充填材を充填したものである
【0005】
【発明の実施の形態】
施例1.
図1は実施例1の構成を示す断面図である。図1において、16はフレーム、17はフレーム16に保持された固定子で、以下の18,19により構成されている。18は積層された固定子鉄心で、後述の回転軸24の軸方向に複数のスロット(図示せず)が形成されている。19は固定子コイルで、固定子鉄心18のスロット(図示せず)内に配置されている。20はフレーム16の一端側に固着されたブラケットで、冷却風の入口20aが形成されている。21はフレーム16の他端側に固着されたブラケットで、冷却風の出口21aが形成されている。22はブラケット20に保持された軸受、23はブラケット21に支持された軸受、24は各軸受22,23に回転自在に支持された回転軸、25は回転軸24に固着されて冷却風が流通可能な通気孔25aが形成された回転子で、以下の26〜30により構成されている。26は積層された回転子鉄心で、回転軸24の軸方向に複数のスロット(図示せず)が形成されている。27は回転子導体で、回転子鉄心26のスロット(図示せず)内に配置されている。28は各回転子導体27間を短絡した短絡環、29,30は回転軸24に嵌合された取付具で、回転子鉄心26を保持している。
【0006】
31は固定子17と回転子25との間に形成された空隙で、冷却風が流通可能である。32はブラケット21側で回転軸24に固着されたファンで、回転子25と共に回転されて遠心力により周りの空気を出口21aから排出する。33は吸気口33aが形成されたカバーで、吸気口33aと入口20aとを連通させている。34は吸気口33aに配置された防塵用の金網である。35は排気口35aが形成されたカバーで、排気口35aと出口21aとを連通させている。36は排気口35aに接続されて冷却風の流路36aを形成した多孔質材料からなる吸音材で、例えばアルミニウムと樹脂とを結合した素材を焼結して樹脂を蒸発させて多孔質を形成したものである。
図2は吸音材36の板厚が1.6mmで、空気層を50mm(特性1)及び100mm(特性2)にしたときの音の周波数に対する残響室法吸音率を示したものである。37は冷却風が当接する流路36aの面とは反対側の面に形成された空気室で、所定の空気層になるようにカバー35で覆われている。38は排気口35aに配置された防塵用の金網、39は冷却風の流れを示す矢印である。
【0007】
次に動作について説明する。図1において、固定子コイル19に交流電力が供給されると固定子鉄心18に回転磁界が発生する。そして、回転子導体27に誘起された誘導電流と回転磁界とにより回転子25が回転して駆動力が出力される。このときファン32が回転子25と共に回転してファン32の周りの空気を遠心力により出口21aを介して排気口35aから排出する。これによってファン32側が負圧になるので、吸入口33aから冷却風が吸入される。そして、冷却風は矢印39のように固定子17と回転子25との空隙31及び回転子25の通気孔25aを流れて、吸音材36に案内されながら排気口35aから排出される。短絡導体27及びファン32が回転することにより、冷却風を切るときに回転数に応じて種々の周波数の空気音(空力音)が発生する。この場合、発生した音の量を100としたとき吸入口33aと排気口35aとから発散される音の量の比率は、実験の結果により20対80であることが分かった。そこで、少なくとも排気口35a側から発散される音の量を低減することにより、効率よく騒音の低排気口35a側から発散される音の量を低減することにより、効率よく騒音の低減を行うことができる。
【0008】
短絡導体27及びファン32の回転により発生して排気口35a側へ発散する空気音は、吸音材36で形成された流路36aを通過するときに吸音材36に吸音される。そして、空気室37に入射した音波はランダムな方向にベクトルとして乱反射するので、ランダム周波数と振幅を有する音波ベクトルのうち、逆位相の音波ベクトル同士が空気層内で打ち消し合う。
以上のように、排気口35a側に冷却風を案内するように多孔質材料からなる吸音材36を配置し、吸音材36の冷却風が当接する面とは反対側の面に所定の空気層を有する空気室37を設けることにより、空気室37に入射した音波がランダムな方向にベクトルとして乱反射するので、ランダム周波数と振幅を有する音波ベクトルのうち、逆位相の音波ベクトル同士が空気層内で打ち消し合うため、音のエネルギーが効率よく吸収されて冷却風の流れに起因する騒音を低減することができる。
施例1において、吸音材36はアルミニウムで構成した多孔質材料について説明したが、特許第2815542号公報に記載されたプラスチック粒子、セラミック、発泡金属等を材料に使用しても同様の効果を期待することができる。
さらに、実施例1において、吸音材36を排気口35a側に配置したものについて説明したが、吸気口33a側にも配置することにより吸音効果を向上させることができる。
【0009】
実施の形態
図3は実施の形態の構成を示す断面図である。図3において、16〜39は実施例1のものと同様のものである。40は空気室37に充填された繊維状(綿状)物質からなる充填材で、ガラス、鉱物、又は石油化学物質である。
次に動作について説明する。図3において、空気音が空気室37に入射されるまでは実施の形態1と同様である。空気室37に入射した音波は空気層内の充填材40で乱反射がさらに増大するので、図4の特性3に示すように音波の周波数の広い範囲で吸音率が高くなるため、より効率よく騒音を低減させることができる。
以上のように、吸音材36の冷却風が当接する面とは反対側の面に所定の空気層を有する空気室37を設け、空気室37に繊維状物質からなる充填材40を充填したことにより、空気室37に入射した音波が空気層内の充填材40で、さらに乱反射が増大するので、図4の特性3に示すように音波の周波数の広い範囲で吸音率が高くなるため、より効率よく騒音を低減させることができる
施の形態において、音波の周波数の広い範囲で吸音材36の吸音率が高いので、車両用誘導電動機のようにインバータにより速度制御されるものに適用することにより、効果を発揮させることができる。
【0010】
【発明の効果】
この発明によれば、吸音材36の冷却風が当接する面とは反対側の面に所定の空気層を有する空気室37を設け、空気室に繊維状物質からなる充填材を充填したことにより、空気室に入射した音波が空気層内の充填材で、さらに乱反射が増大して音波の周波数の広い範囲で吸音率が高くなるため、より効率よく騒音を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例1の構成を示す断面図である。
【図2】 図1の吸音材の周波数に対する残響室法吸音率を示した説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態の構成を示す断面図である。
【図4】 図3の吸音材の周波数に対する残響室法吸音率を示した説明図である。
【図5】 従来の誘導電動機の一般的な構成を示す断面図である。
【符号の説明】
17 固定子、25 回転子、25a 通気孔、31 空隙、33a 吸気口、
35a 排気口、36 吸音材、37 空気室、40 充填材。

Claims (1)

  1. 固定子と対向した回転子を回転自在とし、吸気口から冷却風を吸入して上記固定子と上記回転子との間の空隙及び上記回転子に設けられた通気孔を通し、排気口から排出して上記固定子及び上記回転子を冷却するようにした誘導電動機において、上記排気口側に上記冷却風を案内するように多孔質材料からなる吸音材を配置し、上記吸音材の上記冷却風が当接する面とは反対側の面に所定の空気層を有する空気室を設け、上記空気室に繊維状物質からなる充填材を充填したことを特徴とする誘導電動機
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