JP3818228B2 - ホスファゼン化合物、その製造方法及び用途 - Google Patents

ホスファゼン化合物、その製造方法及び用途 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホスファゼン化合物、その製造方法及び用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
プラスチックスは、その優れた成形加工性、機械的特性、外観等の特徴から、電器・電子製品、OA機器、事務機器及び通信機器等の用途に使用されている。これらの用途では、内部部品の発熱発火等の問題から樹脂の難燃化が必要とされている。
【0003】
熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂に難燃性を付与するためには、樹脂成形前に難燃剤、難燃助剤等を添加する方法が一般的である。難燃剤としては、無機水酸化物、有機リン化合物、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等が、また、難燃助剤としては、Sb23、Sb25等が知られている。これらの中で難燃効果の優れた難燃剤は、有機ハロゲン化合物、ハロゲン含有有機リン化合物等のハロゲン含有化合物である。しかしながら、これらハロゲン含有化合物は、樹脂成形時に熱分解してハロゲン化水素を発生し、金型の腐食並びに樹脂の劣化及び着色を惹起する。また、火災等により樹脂が燃焼する際にはハロゲン化水素等の生物に対する有害ガス、煙等を発生するという問題点を有している。
【0004】
これら問題の解決のため、また、環境の保全を目的としたハロゲン及びアンチモンフリーでの難燃性の達成のために、近年、ハロゲン系難燃剤に代わって樹脂系材料の難燃性能向上のために水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の無機水酸化物、有機リン化合物等のハロゲンフリー系難燃剤が提案されている。しかしながら、これらハロゲンフリー系難燃剤は、難燃性を向上させるために添加量を多くしなければならず、それ故、樹脂のガラス転移温度(耐熱性)を低下させたり、樹脂の熱膨張率が大きくなる等の問題を有していた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハロゲンフリー系難燃剤として有用な新規ホスファゼン化合物を提供することを課題とする。
【0006】
本発明は、上記ホスファゼン化合物の製造方法を提供することを課題とする。
【0007】
本発明は、上記ホスファゼン化合物が配合された難燃性樹脂組成物及びその成形体を提供することを課題とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、オキサジン環を有するホスファゼン化合物が、所望のハロゲンフリー系難燃剤となり得ることを見い出した。本発明は、斯かる知見に基づき完成されたものである。
1.本発明は、ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及びジヒドロ−3−置換−1,3−ナフトオキサジン環基からなる群より選ばれた少なくとも1種のオキサジン環基を有するホスファゼン化合物である。
2.本発明は、ホスファゼン化合物が、一般式(1)
【0009】
【化8】
Figure 0003818228
【0010】
〔式中mは3〜25の整数を示す。R1
【0011】
【化9】
Figure 0003818228
【0012】
置換基を有しもしくは有しないフェニル基、置換基を有しもしくは有しないナフチル基又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のR1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。但し、2m個のR1のうち、少なくとも1つは
【0013】
【化10】
Figure 0003818228
【0014】
を示すものとする。Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。R2はフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示す。フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。〕
で表される環状フェノキシホスファゼン及び一般式(2)
【0015】
【化11】
Figure 0003818228
【0016】
〔式中X1は基−N=P(XR13又は基−N=P(X)XR1を示し、Y1は基−P(XR14又は基−P(X)(XR12を示す。nは3〜10000の整数を示す。R1及びXは前記に同じ。但し、2n個のR1のうち、少なくとも1つは
【0017】
【化12】
Figure 0003818228
【0018】
を示すものとする。R2は前記に同じ。〕
で表される直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種である上記1に記載のホスファゼン化合物である。
3.本発明は、ヒドロキシフェニル基及びヒドロキシナフチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種を有するホスファゼン化合物、アミン化合物及びホルムアルデヒドを反応させることにより、上記1に記載のホスファゼン化合物を製造する方法である。
4.本発明は、一般式(3)
【0019】
【化13】
Figure 0003818228
【0020】
〔式中mは3〜25の整数を示す。R3はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、フェニル基、ナフチル基又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のR3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。但し、2m個のR3のうち、少なくとも1つはヒドロキシフェニル基又はヒドロキシナフチル基を示すものとする。Xは前記に同じ。〕
で表される環状フェノキシホスファゼン及び一般式(4)
【0021】
【化14】
Figure 0003818228
【0022】
〔式中X2は基−N=P(XR33又は基−N=P(X)XR3を示し、Y2は基−P(XR34又は基−P(X)(XR32を示す。nは3〜10000の整数を示す。R3及びXは前記に同じ。但し、2n個のR3のうち、少なくとも1つはヒドロキシフェニル基又はヒドロキシナフチル基を示すものとする。〕
で表される直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であるホスファゼン化合物、一般式(5)
2−NH2 (5)
〔式中R2は前記に同じ。〕
で表されるアミン化合物及びホルムアルデヒドを反応させることにより、上記2に記載のホスファゼン化合物を製造する方法である。
5.本発明は、上記1又は2に記載のホスファゼン化合物からなる難燃剤である。
6.本発明は、(a)上記1又は2に記載のホスファゼン化合物及び(b)ガラス転移温度が50℃以上である芳香環を有する高分子化合物を含有する組成物であって、(a)成分と(b)成分との和100重量部を基準として(a)成分が0.1〜90重量部、(b)成分が99.9〜10重量部である難燃性樹脂組成物である。
7.本発明は、(a)成分と(b)成分との和100重量部を基準として(a)成分が1〜80重量部、(b)成分が99〜20重量部である上記6に記載の難燃性樹脂組成物である。
8.本発明は、芳香環を有する高分子化合物が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種である上記6又は7に記載の難燃性樹脂組成物。
9.本発明は、上記6〜8のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形して得ることのできる成形体である。
【0023】
【発明の実施の形態】
ホスファゼン化合物
本発明のホスファゼン化合物は、分子内にオキサジン環基を有していることを特徴とする。
【0024】
オキサジン環基としては、例えばジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基、ジヒドロ−3−置換−1,3−ナフトオキサジン環基等が挙げられる。
【0025】
ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基としては、具体的には一般式(6)
【0026】
【化15】
Figure 0003818228
【0027】
〔式中、R2は前記に同じ。〕
で表される基等が挙げられる。
【0028】
ジヒドロ−3−置換−1,3−ナフトオキサジン環基としては、具体的には一般式(7)
【0029】
【化16】
Figure 0003818228
【0030】
〔式中、R2は前記に同じ。〕
で表される基、一般式(8)
【0031】
【化17】
Figure 0003818228
【0032】
〔式中、R2は前記に同じ。〕
で表される基、一般式(9)
【0033】
【化18】
Figure 0003818228
【0034】
〔式中、R2は前記に同じ。〕
で表される基等が挙げられる。
【0035】
一般式(1)及び一般式(2)において、R1で示されるフェニル基及びナフチル基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えばメチル基、エチル基等のC1-4アルキル基が挙げられ、これらは1個又は2個置換しているのがよい。
【0036】
一般式(2)における末端基X1及びY1は反応条件等により変化し、通常の反応条件で、例えば非水の系で温和な反応を行った場合には、X1が−N=P(XR13、Y1が−P(XR14の構造となり、水分もしくはアルカリ金属水酸化物が反応系内に存在するような反応条件で又は転移反応が生じるような過酷な反応条件で反応を行った場合には、X1が−N=P(XR13、Y1が−P(XR14の構造の他に、X1が−N=P(X)XR1、Y1が−P(X)(XR12の構造のものが混在する状態となる。ここでR1及びXは前記と同じものである。
【0037】
上記一般式(1)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、mが3〜15であり、R1が、
【0038】
【化19】
Figure 0003818228
【0039】
置換基を有しもしくは有しないフェニル基又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を示し、Xが酸素原子又は硫黄原子を示し、R2がフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示すものが好ましい。
【0040】
上記一般式(1)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、mが3〜8であり、R1が、
【0041】
【化20】
Figure 0003818228
【0042】
置換基を有しないフェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、Xが酸素原子を示し、R2がフェニル基を示すものがより好ましい。
【0043】
一般式(1)で表される環状フェノキシホスファゼン化合物の具体例を示すと、例えば、2−[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,4,6,6−ペンタフェノキシシクロトリホスファゼン、2,2−ジ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,4,6,6−テトラフェノキシシクロトリホスファゼン、2,4−ジ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,6,6−テトラフェノキシシクロトリホスファゼン、2,2,4−トリ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6,6−トリフェノキシシクロトリホスファゼン、2,4,6−トリ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,6−トリフェノキシシクロトリホスファゼン、2,2,4,6−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6−ジフェノキシシクロトリホスファゼン、2,2,4,4−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−6,6−ジフェノキシシクロトリホスファゼン、2,2,4,4,6−ペンタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−6−フェノキシシクロトリホスファゼン及び2,2,4,4,6,6−ヘキサ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−シクロトリホスファゼンで表されるジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロトリホスファゼン化合物、2−[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,4,6,6, 8,8−へプタフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2−ジ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,4,6,6, 8,8−ヘキサフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,4−ジ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,6,6, 8,8−ヘキサフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,6−ジ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,4,6, 8,8−ヘキサフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4−トリ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6,6, 8,8−ペンタフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,6−トリ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,4,6, 8,8−ペンタフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,4,6−トリ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,6, 8,8−ペンタフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,4−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−6,6,8,8−テトラフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,6−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6,8,8−テトラフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,8−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6,6,8−テトラフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,4,6,8−テトラ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−2,4,6,8−テトラフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,4,6−ペンタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−6,8,8−トリフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,6,8−ペンタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,6,8−トリフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,6,6−ペンタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,8,8−トリフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,4,6,6−ヘキサ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−8,8−ジフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,4,6,8−ヘキサ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−6,8−ジフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,6,6,8−ヘキサ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−4,8−ジフェノキシシクロテトラホスファゼン、2,2,4,4,6,6, 8−ペプタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−8−フェノキシシクロテトラホスファゼン、及び2,2,4,4,6,6, 8, 8−オクタ[6’−(ジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンオキシ)]−シクロテトラホスファゼンで表されるジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロテトラホスファゼン化合物、上記と同じように6’−(ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジンオキシ)基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロペンタホスファゼン化合物、上記と同じように6’−(ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジンオキシ)基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロヘキサホスファゼン化合物、上記と同じように6’−(ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジンオキシ)基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロヘプタホスファゼン化合物、上記と同じように6’−(ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジンオキシ)基及び/又はフェノキシ基が混合置換したシクロオクタホスファゼン化合物等の環状ホスファゼン化合物を挙げることができる。
【0044】
本発明のホスファゼン化合物は、上記ホスファゼン化合物のフェノキシ基をトリルオキシ基、キシリルオキシ基、エチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基等で置換したホスファゼン化合物を包含する。
【0045】
本発明のホスファゼン化合物は、上記ホスファゼン化合物のジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ベンゾオキサジンを一般式(7)、一般式(8)又は一般式(9)のジヒドロ−3’−フェニル−1’,3’−ナフトキサジンで置換したホスファゼン化合物を包含する。
【0046】
本発明のホスファゼン化合物は、上記環状ホスファゼン化合物を開環して鎖状にしたホスファゼン化合物を包含する。
【0047】
上記一般式(2)で表される直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、nが3〜1000であり、R1が、
【0048】
【化21】
Figure 0003818228
【0049】
置換基を有しもしくは有しないフェニル基又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を示し、Xが酸素原子又は硫黄原子を示し、R2がフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示すものが好ましい。
【0050】
上記一般式(2)で表される直鎖状フェノキシホスファゼン化合物の中でも、nが3〜100であり、R1が、
【0051】
【化22】
Figure 0003818228
【0052】
置換基を有しないフェニル基又は炭素数1〜6のアルキル基を示し、Xが酸素原子を示し、R2がフェニル基を示すものがより好ましい。
【0053】
上記一般式(2)で表される本発明の直鎖状ホスファゼン化合物の具体例を示すと、例えば、6’−(ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジンオキシ)基及びフェノキシ基が混合置換し且つ前記シクロホスファゼンと同じ繰り返し数([P=N]単位数)を有する直鎖状ホスファゼン化合物、これらの2種以上の混合物等を挙げることができる。
【0054】
特に好ましいホスファゼン化合物は、ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及びフェノキシ基が混合置換したシクロトリホスファゼン化合物、ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及びフェノキシ基が混合置換したシクロテトラホスファゼン化合物、これらの混合物等の、ジヒドロ−3−置換−1,3−ベンゾオキサジン環基及びフェノキシ基が混合置換したシクロホスファゼン化合物である。
【0055】
ホスファゼン化合物の製造方法
本発明のホスファゼン化合物は、例えば、ヒドロキシフェニル基及びヒドロキシナフチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種を有するホスファゼン化合物、アミン化合物及びホルムアルデヒドを反応させることにより製造される。
【0056】
製造原料として用いられるホスファゼン化合物を具体的に示すと、例えば、一般式(3)
【0057】
【化23】
Figure 0003818228
【0058】
〔式中m及びR3は前記に同じ。〕
で表される環状フェノキシホスファゼン、一般式(4)
【0059】
【化24】
Figure 0003818228
【0060】
〔式中X2、Y2、R3及びXは前記に同じ。〕
で表される直鎖状フェノキシホスファゼン等を挙げることができる。
【0061】
製造原料として用いられるホスファゼン化合物は、ヒドロキシフェニル基及びヒドロキシナフチル基からなる群より選ばれた少なくとも1種の基を1〜4個有しているのが好ましい。
【0062】
アミン化合物としては、例えば、一般式(5)
2−NH2 (5)
〔式中R2は前記に同じ。〕
で表されるアミン化合物等が挙げられる。
【0063】
アミン化合物の具体例としては、アニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン、メチルアミン、シクロヘキシルアミン等のモノアミン、p−フェニレンジアミン等のジアミン、トリアミノナフタレン、トリアミノアントラセン等のトリアミン等を例示できる。
【0064】
アミン化合物としては、モノアミンが好ましく、その中でも難燃性向上の観点からアニリン、o−トルイジン、m−トルイジン、p−トルイジン等の芳香族モノアミンが特に好ましい。
【0065】
原料ホスファゼン化合物、アミン化合物及びホルムアルデヒドの反応は、これらを混合し、この混合物を加熱することにより行われ、斯くして本発明のホスファゼン化合物を得ることができる。
【0066】
本発明のホスファゼン化合物を収率よく製造するためには、有機溶媒中でアミン化合物とホルムアルデヒドとを反応させてアミン化合物とホルムアルデヒドとの錯体を製造し(第一工程)、次いでこの錯体を原料ホスファゼン化合物と反応させる(第二工程)のがよい。
【0067】
第一工程では、有機溶媒中でアミン化合物とホルムアルデヒドとを、例えば0〜20℃程度の低温で0.1〜5時間反応させる。有機溶媒としては、通常、エタノール等のアルコール類、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、ジエチレングリコール等のグリコール類、又はこれらの混合溶媒等が用いられる。アミン化合物のアミノ基中の水素原子のモル数に対して、ホルムアルデヒドのアルデヒド基のモル数が、通常0.8〜1.2倍モル程度、好ましくは0.9〜1.1倍モル程度、より好ましくは等モル程度となるように、アミン化合物及びホルムアルデヒドを使用するのがよい。
【0068】
第一工程終了後、反応生成物を単離することなく、反応混合物に原料ホスファゼン化合物を添加して第二工程の反応を行う。この反応は、通常30℃以上の温度で、好ましくは還流下(第一工程で使用される有機溶媒と副生する水との共沸温度)で行われ、一般に1〜10時間程度で終了する。
【0069】
上記反応終了後、抽出、再結晶等の公知の単離手段及び精製手段により、目的とする本発明ホスファゼン化合物を製造することができる。
【0070】
原料ホスファゼン化合物は、例えば、環状又は鎖状ホスホニトリルジハライドに、メトキシフェノールアルカリ金属塩及び/又はメトキシナフトールアルカリ金属塩を反応させ(A工程)、次いでフェニル環上及び/又はナフチル環上のメトキシ基を脱メチル化する(B工程)ことにより製造できる。
【0071】
A工程において、メトキシフェノールアルカリ金属塩及び/又はメトキシナフトールアルカリ金属塩を反応させる際に、これら金属塩と共に、フェノールのアルカリ金属塩、ナフトールのアルカリ金属塩及び炭素数1〜10の直鎖又は分岐鎖状のアルコールのアルカリ金属塩から選ばれる1種又は2種以上を同時に反応させることができる。
【0072】
環状又は鎖状ホスホニトリルジハライドは公知の化合物であり、例えば、INORGANIC POLYMER(James E.Mark、Harry R.Allcock及びRobert West著、1992年刊、Prentice−Hall,Inc.社)、PHOSPHORUS−NITROGEN COMPOUNDS(H.R.ALLCOCK著、1972年刊、ACADEMIC PRESS社)、「91−1無機高分子研究会 主題=ホスファゼンの新潮流」発表予稿集(主催:日本高分子学会無機高分子研究会、日時:平成3年5月21日(火)10:00〜16:45、東京理科大学理窓会館3F会議室)、特開昭57−87427号公報、特公昭58−19604号公報、特公昭61−1363号公報、その他多数の文献に記載されている。環状ホスホニトリルジハライドの[P=N]単位数は通常3〜25である。また、鎖状ホスホニトリルジハライドの[P=N]単位数は通常3〜10000である。
【0073】
環状又は鎖状ホスホニトリルジハライドと上記各種アルカリ金属塩(好ましくはナトリウム塩又はカリウム塩)との反応(A工程)は、例えば、特開平3−163090号公報、A.Medici, G.Fantin, P.Pedrini, H.Gleria, F.Minto, Macromolecules, 1992, 25, 2569-2574 等に記載の方法に従って行われる。A工程で用いられる溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル等が挙げられる。A工程の反応は、室温程度の温度下で1〜20時間、次いで溶媒の還流温度で1〜3時間で完了する。
【0074】
引続くメトキシ基の脱メチル化反応、即ち、メトキシ基を水酸基に導く反応(B工程)も、例えば、上記文献、即ち、特開平3−163090号公報、A.Medici, G.Fantin, P.Pedrini, H.Gleria, F.Minto, Macromolecules, 1992, 25, 2569-2574 等に記載の方法に従い、脱メチル化処理すべき化合物に、三臭化ホウ素又はピリジンハロゲン化水素塩を作用させることにより行われる。ピリジンハロゲン化水素塩としては、例えば、ピリジン塩酸塩、ピリジン臭化水素塩等を挙げることができる。三臭化ホウ素及びピリジンハロゲン化水素塩の使用量は、通常メトキシ基1モルに対して1〜20倍モルとすればよい。B工程の反応は、ピリジンハロゲン化水素塩を使用する場合は通常還流温度下に行われ、三臭化ホウ素を使用する場合は通常0℃〜室温下で行われる。B工程の反応は、通常1〜5時間程度で終了する。
【0075】
このようにして得られる原料ホスファゼン化合物は、公知の分離精製手段に従い、反応混合物中から容易に単離できる。
【0076】
難燃剤
本発明のホスファゼン化合物は、優れた耐熱性、難燃性等を有することから樹脂材料の難燃剤として好適である。特に本発明のホスファゼン化合物を芳香環を有する高分子化合物に配合した組成物において、優れた耐熱性、難燃性を発現する。
【0077】
本発明難燃剤には、本発明ホスファゼン化合物が5〜100重量%含有しているのが好ましく、50〜100重量%含有しているのがより好ましい。
【0078】
本発明ホスファゼン化合物は、例えば、上記一般式(1)で表される環状フェノキシホスファゼンの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよく、また、上記一般式(2)で表される直鎖状フェノキシホスファゼンの1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合してもよい。或いは、本発明ホスファゼン化合物は、上記一般式(1)で表される環状フェノキシホスファゼン及び上記一般式(2)で表される直鎖状フェノキシホスファゼンの混合物であってもよい。
【0079】
本発明難燃剤には、本発明ホスファゼン化合物以外に、公知の難燃剤が含まれていてもよい。このような難燃剤としては、例えば、本発明ホスファゼン化合物以外のホスファゼン化合物、リン酸エステル、リン酸メラミン等が挙げられる。これらの中で、好ましい難燃剤は、本発明ホスファゼン化合物との相溶性が良好なフェノール性水酸基を有するホスファゼン化合物である。
【0080】
難燃性樹脂組成物
本発明の難燃性樹脂組成物は、(a)成分として本発明ホスファゼン化合物を、(b)成分としてガラス転移温度が50℃以上である芳香環を有する高分子化合物を含有する。
【0081】
(a)の本発明ホスファゼン化合物を(b)のガラス転移温度が50℃以上である芳香環を有する高分子化合物に添加することにより、高分子化合物が本来有している物性(例えば、ガラス転移温度、熱膨張率等の熱的特性等)を殆ど低下させることなく、難燃性能を向上し得ることを、本発明者らは見い出した。
【0082】
本発明の(b)成分として用いられる芳香環を有する高分子化合物は、ガラス転移温度が50℃以上であることが必要であり、ガラス転移温度が80℃以上であることが好ましい。より好ましい化合物は、ガラス転移温度が80℃以上で、かつ高分子化合物の主鎖骨格が芳香環を有する高分子化合物である。
【0083】
ガラス転移温度が50℃未満であると、芳香環を有する高分子化合物の熱分解挙動及び本発明ホスファゼン化合物の熱分解挙動が、著しく異なり難燃効果が乏しくなる。
【0084】
(b)成分の高分子化合物は、数平均分子量が200以上である有機化合物である。また、本発明のホスファゼン化合物との相溶性から、(b)成分の高分子化合物は、数平均分子量1000〜100000であるのが好ましい。数平均分子量は、公知の方法、例えば、末端基定量法、粘度法、ゲル・パーミエッション・クロマトグラフィを用いる方法等によって測定することができる。
【0085】
本発明の(b)成分として用いられるガラス転移温度が50℃以上であり芳香環を有する高分子化合物の具体例として、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテルスルフィド、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0086】
ガラス転移温度が80℃以上で、かつ高分子化合物の主鎖骨格が芳香環を有する高分子化合物は、芳香族ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリフェニレンエーテルスルフィド、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等である。
【0087】
これらの中で、ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂がより好ましい。
【0088】
本発明では(b)成分として、上記高分子化合物を1種単独で又は2種以上を混合して使用することができる。
【0089】
本発明ホスファゼン化合物は、加熱することで、(b)成分が本来有するガラス転移温度、熱膨張性能等に悪影響を与えることなく難燃性能を付与することができる。加熱温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは190〜280℃である。
【0090】
(a)成分及び(b)成分の配合割合は、両者の和100重量部を基準として(a)成分が0.1〜90重量部、(b)成分が99.9〜10重量部であり、好ましくは(a)成分が2〜80重量部、(b)成分が98〜20重量部であり、より好ましくは(a)成分が2〜70重量部、(b)成分が98〜30重量部であり、最も好ましくは(a)成分が5〜50重量部、(b)成分が95〜50重量部の範囲である。
【0091】
(a)成分が少なすぎると、難燃性能の向上が期待できない。(a)成分を一定量以上より多く配合しても、難燃性能のより一層の向上が認められず、経済性の観点から好ましくない。
【0092】
上記の(a)成分及び(b)成分を混合する方法としては、例えば、2成分を溶媒中に均一に溶解又は分散させる溶液混合法、押出し機等により加熱して行う溶融ブレンド法等が挙げられる。操作性及び経済性の観点から、溶融ブレンド法が好ましい。
【0093】
溶液混合法に用いられる溶媒としては、例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハロゲン系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。本発明では、これら溶媒を、1種単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0094】
本発明の難燃性樹脂組成物には、その用途に応じて所望の性能を付与する目的で、本来の性質を損なわない範囲の量の充填剤、その他の添加剤を配合することができる。充填剤としては、例えば、カーボンブラック、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、タルク、雲母、ガラスビーズ、ガラス中空球、珪酸カルシウム等の珪酸塩等を挙げることができる。これら充填剤は繊維状であっても粉末状であってもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、可塑剤、顔料、染料、着色剤、ゴム等が挙げられる。
【0095】
また難燃性能向上の目的で、塩素系、臭素系、リン系、金属水酸化物、有機金属化合物等の難燃剤、Sb23、Sb25、NaSbO3・1/4H2O等の難燃助剤、ポリテトラフルオロエチレン等のドリッピング防止剤等を配合することができる。更に、アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等の架橋性のモノマー;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・ポリプロピレン共重合体、ナイロン4、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂;トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート等の架橋剤を配合することができる。
【0096】
本発明の難燃剤及び本発明の難燃性樹脂組成物における(a)成分は、赤外吸収スペクトル法、高分解能固体核磁気共鳴スペクトル法、熱分解ガスクロマトグラフィー等の方法を用いて樹脂組成を解析することができる。
【0097】
難燃性樹脂成形体
本発明の難燃性樹脂組成物は、その用途に応じて所望形状に成形することができる。成形には、公知の方法、例えば、本発明樹脂組成物を上記溶液混合法で用いられる溶媒に溶解させ、所望形状に成形するキャスト法、本発明樹脂組成物を加熱溶融し、所望形状に成形する加熱溶融法、上記キャスト法及び加熱溶融法を組み合わせる方法等を適用できる。上記キャスト法及び加熱溶融法を組み合わせる場合、例えばキャスト法で作成された難燃性樹脂組成物のフィルムを数〜数十枚積層し、加熱溶融法、例えばプレス成形機で加熱溶融し、シートを得ることができる。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた難燃性能を有し、ハロゲンフリー系難燃剤として有用な新規ホスファゼン化合物を提供することができる。
【0099】
本発明のホスファゼン化合物は、樹脂と混合した場合に、樹脂が本来有している優れた耐熱性、熱膨張率等の熱的特性を殆ど低下させることなく、難燃性能を向上させることができる。
【0100】
本発明のホスファゼン化合物及び該化合物が配合された難燃性樹脂組成物は、特に樹脂が芳香環を有する樹脂である場合に、優れた耐熱性、難燃性を備えている。従って、本発明のホスファゼン化合物及び難燃性樹脂組成物は、電気産業、電子産業、建築産業、宇宙・航空機産業等の分野において重要なハロゲンフリー系難燃剤及び耐熱材料、誘電材料、絶縁材料、構造材料等の各種材料として利用することができる。
【0101】
【実施例】
以下に実施例を挙げ、本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。以下において、単に「%」とあるのは「重量%」を、「Ph」とあるのは「フェニル基」を意味する。また以下の実施例において、各種物性測定は以下の方法で行った。
【0102】
(1) ホスファゼン化合物の同定
ホスファゼン化合物を重クロロホルム又は重ジメチルスルホキシドに溶解し、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリンモリブデン酸バナジウム吸光光度法によるリン含有率測定の結果から、ホスファゼン化合物を同定した。
【0103】
(2) 難燃性
UL−94V規格 (Test for Flammability of Plastic Materials for Parts in Device and Appliances UL94, Fourth Edition) に基づき、厚さ1/16インチ、長さ5インチ、幅0.5インチの試験片を作製し、難燃性の評価試験を実施した。
【0104】
(3) 熱膨張特性、ガラス転移温度
圧縮成形により得られた成形体を7mm角に切り出し、厚さ方向の熱膨張率を熱膨張測定装置SSC−5200(セイコー電子工業(株)製)を用いて昇温速度20℃/分の速さで測定し、また得られた熱膨張曲線の傾きからガラス転移温度を測定した。ここでいう熱膨張率は、30℃から100℃に試料の温度を上昇させたときの試料厚みの増加率を温度の変化分である70℃(100℃−30℃)で割った数値である。
【0105】
実施例に用いた芳香環を有する高分子化合物としては次のものを用いた。
・ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンS−2000N)、ガラス転移温度:150℃
・ABS樹脂(三井化学(株)製のサンタックUT−61)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(ジャパンエポキシレジン(株)製のエピコート828)、ガラス転移温度(硬化後):150℃
また、ドリッピング防止剤として、ポリテトラフルオロエチレン(旭硝子(株)製のG−307)を用いた。
【0106】
合成例1(ジクロロホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた10リットルのフラスコに、塩化アンモニウム365g(6.8モル)、五塩化リン1290g(6.2モル)及び酸化亜鉛5g(0.06モル)を量り取り、クロロベンゼン5000mlを加えて混合し、分散液を得た。この分散液を120分間還流(132℃)し、反応を完結した。
【0107】
次いで、この反応液を吸引濾過して未反応の塩化アンモニウムを除去し、1.3〜2.7hPaの減圧下及び30〜40℃の温度下で濾液からクロロベンゼン約3.5リットルを留去した。
【0108】
得られた無色透明のクロロベンゼン溶液(2347g)について、31P−NMR測定及びガスクロマトグラフィーによる濃度分析を行った。その結果、この溶液が30%ジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液であり、その組成が3量体:59%、4量体:15%、5量体及び6量体:10%、7量体:3%及び8量体以上:13%であることを確認した。収率98.0%(五塩化リン基準)。
【0109】
また、上記ジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液を1.3〜2.7hPaの減圧下及び30〜40℃の温度下で更に濃縮した後、クロロベンゼンにて再結晶することにより、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン及びオクタクロロシクロテトラホスファゼンの混合物405gを結晶として得た。このものの組成は3量体:76%、4量体:24%であった。
【0110】
また、結晶を濾別した際に得られる濾液は、鎖状成分が豊富なジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液475g(濃度63%、3量体:36%、4量体:3%、5量体及び6量体:24%、7量体:7%及び8量体以上:30%)であった。
【0111】
更に、ヘキサクロロシクロトリホスファゼン及びオクタクロロシクロテトラホスファゼンの混合物をn−ヘキサンを用いて3回再結晶することにより、純度99.9%のヘキサクロロシクロトリホスファゼン250gを得た。
【0112】
また、このようにして得られるヘキサクロロシクロトリホスファゼンをアルゴンガス雰囲気下、250℃で8時間加熱して、重量平均分子量約10000のジクロロホスファゼンポリマー75gを得た。
【0113】
合成例2(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた10リットルのフラスコに、p−メトキシフェノール(1871g,15.07モル)を入れ、テトラヒドロフラン(THF)(6リットル)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に金属ナトリウム(315g,13.7グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、p−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0114】
また、上記と同様にして、10リットルのフラスコに、フェノール(1702g,18.08モル)を入れ、THF(6リットル)を加えて溶解した。この溶液に金属ナトリウム(378g,16.4グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、ナトリウムフェノラートのTHF溶液を得た。
【0115】
別途、20リットルのフラスコに、合成例1で得られた30%ジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液(5292g,13.70モル)を入れ、そこへ、まず上記で調製したp−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で3時間撹拌した。
【0116】
反応液を一旦冷却後、反応液に上記で調製したナトリウムフェノラートのTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で10時間撹拌した。
【0117】
反応終了後、反応液を濾過し、濃縮した後、濃縮液をクロロベンゼン(10リットル)に溶解した。この溶液を、5%水酸化ナトリウム水溶液で3回、5%塩酸で1回洗浄し、7%重曹水を用いて中和後、水洗を2回行った。その後、クロロベンゼンを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(3447g)。
【0118】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、該油状物が式
[N=P(OPh)0.97(OC64−p−OCH31.03n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、96.0%であった。
【0119】
合成例3(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
フェノールの代わりにp−エチルフェノール(2,209g,18.08モル)を用いて、p−エチルフェノールのナトリウム塩を調製した他は合成例2と同様の操作を行い、褐色油状物を得た(3,928g)。
【0120】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この油状物が式
[N=P(OC64−p−C250.99(OC64−p−OCH31.01n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、97.1%であった。
【0121】
合成例4(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
p−メトキシフェノールの代わりにo−メトキシフェノール(1871g,15.07モル)を用いて、o−メトキシフェノールのナトリウム塩を調製した他は合成例2と同様の操作を行い、褐色油状物を得た(3501g)。
【0122】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この油状物が式
[N=P(OPh)0.97(OC64−o−OCH31.03n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、97.5%であった。
【0123】
合成例5(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた10リットルのフラスコに、p−メトキシフェノール(1250g,10.0モル)を入れ、THF(5リットル)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に金属ナトリウム(210g,9.1グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、p−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0124】
また、上記と同様にして、10リットルのフラスコに、フェノール(2,080g,22.1モル)を入れ、THF(6リットル)を加えて溶解した。この溶液に金属ナトリウム(462g,20.1グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、ナトリウムフェノラートのTHF溶液を得た。
【0125】
別途、20リットルのフラスコに、合成例1で得られたヘキサクロロシクロトリホスファゼンの20%クロロベンゼン溶液(7,938g,13.70モル)を入れ、この溶液に、まず上記で調製したp−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で5時間撹拌した。
【0126】
反応液を一旦冷却後、反応液に上記で調製したナトリウムフェノラートのTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で20時間撹拌した。
【0127】
反応終了後、反応液を合成例2と同様に後処理して、褐色油状物を得た(3378g)。
【0128】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、該油状物が式
[N=P(OPh)1.32(OC64−p−OCH30.683
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は、98.0%であった。
【0129】
合成例6(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた200mlのフラスコに、p−メトキシベンゼンチオール(51.4g,0.37モル)を入れ、THF(75ml)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に金属ナトリウム(7.7g,0.33グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、p−メトキシベンゼンチオールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0130】
また、上記と同様にして、300mlのフラスコに、チオフェノール(88.9g,0.81モル)を添加し、THF(100ml)を加えて溶解した。この溶液に金属ナトリウム(16.9g,0.73グラム原子)を50℃以下で添加し、添加終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、チオフェノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0131】
別途、1リットルのフラスコに、合成例1で得られたヘキサクロロシクロトリホスファゼンの20%クロロベンゼン溶液(290g,0.50モル)を入れ、この溶液に、まず上記で調製したp−メトキシベンゼンチオールナトリウム塩のTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で5時間撹拌した。
【0132】
反応液を一旦冷却後、反応液に上記で調製したチオフェノールナトリウム塩のTHF溶液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(70℃)で20時間撹拌した。
【0133】
反応終了後、反応液を合成例2と同様に後処理し、褐色油状物を得た(135g)。
【0134】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、該油状物が式
[N=P(SPh)1.32(SC64−p−OCH30.683
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は、95.3%であった。
【0135】
合成例7(メトキシ基を有するホスファゼンの合成)
ディーンスタークトラップ付き還流冷却器、滴下ロート、温度計及び撹拌機を備えた10リットルのフラスコに、7−メトキシ−2−ナフトール(1916g,11.00モル)を入れ、クロロベンゼン(5リットル)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に48%水酸化ナトリウム水溶液(833g,NaOHとして10.000モル)を2時間かけて滴下し、滴下終了後1時間かけて132℃まで昇温した。この間、水酸化ナトリウム水溶液中の水及び反応により生成する水はクロロベンゼンとの共沸物としてディーンスタークトラップを利用して系外へ除き、クロロベンゼンは系内へ戻した。その後、反応液を還流下4時間撹拌して系内の水を十分に取り除き、7−メトキシ−2−ナフトールのナトリウム塩のクロロベンゼン分散液を得た。
【0136】
また、上記と同様にして、5リットルのフラスコに、フェノール(1139g,12.10モル)を入れ、クロロベンゼン(3リットル)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に48%水酸化ナトリウム水溶液(917g,NaOHとして11.00モル)を2時間かけて滴下し、滴下終了後1時間かけて132℃まで昇温した。この間、水酸化ナトリウム水溶液中の水及び反応により生成する水はクロロベンゼンとの共沸物としてディーンスタークトラップを利用して系外へ除き、クロロベンゼンは系内へ戻した。その後、反応液を還流下4時間撹拌して系内の水を十分に取り除き、ナトリウムフェノラートのクロロベンゼン分散液を得た。
【0137】
別途、20リットルのフラスコに、合成例1で得られたヘキサクロロシクロトリホスファゼンの20%クロロベンゼン溶液(5794g,10.00モル)を入れ、該溶液に、まず上記で調製した7−メトキシ−2−ナフトールのナトリウム塩のクロロベンゼン分散液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(132℃)で3時間撹拌した。
【0138】
反応液を一旦冷却後、反応液に上記で調製したナトリウムフェノラートのクロロベンゼン分散液を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温後溶媒還流下(132℃)で24時間撹拌した。
【0139】
反応終了後、反応液を5%水酸化ナトリウム水溶液で3回、5%塩酸で1回洗浄し、7%重曹水を用いて中和後、水洗を2回行った。その後、クロロベンゼンを減圧下留去し、褐色油状物を得た(2,134g)。
【0140】
この油状物について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、該油状物が式
[N=P(OPh)1.02(OC106OCH30.983
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は、68.9%であった。
【0141】
合成例8(アルキル基を有するホスファゼン化合物の合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた10リットルのフラスコにp−メトキシフェノール1871g(15.07モル)を量り取り、THF(6リットル)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に金属ナトリウム315g(13.7グラム原子)を50℃以下で投入し、投入終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、p−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0142】
また、上記と同様に2リットルのフラスコに、1−プロパノール302g(5.02モル)を量り取り、THF(1リットル)を加えて溶解した。そこへ金属ナトリウム105g(4.6グラム原子)を50℃以下で投入し、投入終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で24時間撹拌して、プロパノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0143】
また、上記と同様の10リットルのフラスコに、フェノール1040g(11.06モル)を量り取り、THF(3.5リットル)を加えて溶解した。そこへ金属ナトリウム231g(10.1グラム原子)を50℃以下で投入し、投入終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、ナトリウムフェノラートのTHF溶液を得た。
【0144】
別途、20リットルのフラスコに、合成例1の30%ジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液5292g(13.70モル)を量り取り、更に30℃以下に保ちながら上記のp−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液をゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温して溶媒還流下(70℃)で3時間撹拌した。この反応液を一旦冷却し、30℃以下に保ちながら上記のプロパノールナトリウム塩のTHF溶液をゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温して溶媒還流下(70℃)で1時間撹拌した。この反応液を一旦冷却し、30℃以下に保ちながら上記のナトリウムフェノラートのTHF溶液をゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温して溶媒還流下(70℃)で10時間撹拌した。
【0145】
反応終了後、濾過、濃縮を行い、クロロベンゼン10リットルに再溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液で3回、5%塩酸で1回洗浄し、7%重曹水を用いて中和後、水洗を2回行った。その後、クロロベンゼンを減圧下留去し、褐色油状物3400gを得た。
【0146】
1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定の結果から、該褐色油状物が式
[N=P(OPh)0.67(OCH2CH2CH3)0.33(OC64−p−OCH3)1.00]n
(3量体:59%、4量体:15%、5量体及び6量体:10%、7量体:3%及び8量体以上:13%の混合物、nの平均は約4.2)
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率99.3%。
【0147】
合成例9(鎖状ホスファゼン化合物の合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた3リットルのフラスコにp−メトキシフェノール441g(3.55モル)を量り取り、THF(1.5リットル)を加えて均一になるまで撹拌した。そこへ金属ナトリウム74g(3.2グラム原子)を50℃以下で投入し、投入終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、p−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液を得た。
【0148】
また、上記と同様の3リットルのフラスコに、フェノール401g(4.26モル)を量り取り、THF(1.5リットル)を加えて溶解した。そこへ金属ナトリウム89g(3.9グラム原子)を50℃以下で投入し、投入終了後1時間かけて60℃まで昇温し、その後60℃〜68℃で4時間撹拌して、ナトリウムフェノラートのTHF溶液を得た。
【0149】
別途、10リットルのフラスコに、合成例1のジクロロホスファゼンポリマー75g(0.65モル)をTHF(750ml)に溶解した溶液及び鎖状成分が豊富なジクロロホスファゼンオリゴマーのクロロベンゼン溶液475g(濃度63%、3量体:36%、4量体:3%、5量体及び6量体:24%、7量体:7%及び8量体以上:30%)(2.58モル)を量り取り、更に30℃以下に保ちながら上記のp−メトキシフェノールナトリウム塩のTHF溶液をゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温して溶媒還流下(70℃)で3時間撹拌した。この反応液を一旦冷却し、30℃以下に保ちながら上記のナトリウムフェノラートのTHF溶液をゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間、更に昇温して溶媒還流下(70℃)で10時間撹拌した。
【0150】
反応終了後、濾過、濃縮を行い、クロロベンゼン5リットルに再溶解し、5%水酸化ナトリウム水溶液で3回、5%塩酸で1回洗浄し、7%重曹水を用いて中和後、水洗を2回行った。その後、クロロベンゼンを減圧下留去し、褐色油状物782gを得た。
【0151】
1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定の結果から、該褐色油状物が式
[N=P(OPh)0.98(OC64−p−OCH31.02n
(3量体:29%、4量体:2%、5量体及び6量体:19%、7量体:6%及び8量体以上:44%の混合物。8量体以上のうち46%は重量平均分子量約10,000の鎖状ジクロロホスファゼンポリマー)
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率92.5%。
【0152】
合成例10(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた20リットルのフラスコに、合成例 2で合成したホスファゼン化合物、即ち式
[N=P(OPh)0.97(OC64−p−OCH31.03n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1048g,4.00モル)を入れ、塩化メチレン(12リットル)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に、三臭化ホウ素(1290g,5.15モル)を塩化メチレンに溶解して濃度1モル/lに調製した溶液を滴下ロートに入れて、30℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後室温下4時間撹拌した。
【0153】
その後、反応液中に脱イオン水(5リットル)を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間撹拌した。
【0154】
反応終了後、反応混合分散液を濾過し、濾別した褐色固体を酢酸エチル(10リットル)に溶解した。この溶液を、水洗を3回行い、7%重曹水で中和後、更に水洗を3回行った。その後、酢酸エチルを減圧下留去し、褐色固体を得た(970g)。
【0155】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)0.95(OC64−p−OH)1.05n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、97.8%であった。
【0156】
合成例11(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
合成原料として合成例2で合成したホスファゼン化合物の代わりに合成例3で合成したホスファゼン化合物、即ち式
[N=P(OC64−p−C250.99(OC64−p−OCH31.01n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1157g,4.00モル)を用い、三臭化ホウ素(1265g,5.05モル)を用いた他は合成例10と同様に操作して、褐色固体を得た(1090g)。
【0157】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OC64−p−C251.00(OC64−p−OH)1.00n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、99.0%であった。
【0158】
合成例12(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
合成原料として合成例2で合成したホスファゼン化合物の代わりに合成例4で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)0.97(OC64−o−OCH31.03n
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1048g,4.00モル)を用い、三臭化ホウ素(1290g,5.15モル)を用いた他は合成例10と同様に操作して、褐色固体を得た(974g)。
【0159】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)0.98(OC64−o−OH)1.02n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。上記式において、nは、原料として用いたジクロロホスファゼンオリゴマーのnと同じである。即ち、3量体(n=3)59%、4量体(n=4)15%、5量体(n=5)及び6量体(n=6)10%、7量体(n=7)3%及び8量体以上(n≧8)13%の混合物であり、nの平均は約4.2であった。収率は、98.4%であった。
【0160】
合成例13(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
合成原料として合成例2で合成したホスファゼン化合物の代わりに合成例5で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)1.32(OC64−p−OCH30.683
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1006g,4.00モル)を用い、三臭化ホウ素(852g,2.72モル)を用いた他は合成例10と同様に操作して、褐色固体を得た(953g)。
【0161】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)1.33(OC64−p−OH)0.673
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は、98.5%であった。
【0162】
合成例14(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、合成例6で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(SPh)1.32(SC64−p−OCH30.683
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(70.9g,0.25モル)を入れ、塩化メチレン(1リットル)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。この溶液に、三臭化ホウ素(53.2g,0.21モル)を塩化メチレンに溶解して濃度1モル/lに調製した溶液を滴下ロートに入れ、30℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、室温下4時間撹拌した。
【0163】
その後、反応液中に脱イオン水(100ml)を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間撹拌した。
【0164】
反応終了後、反応混合分散液を濾過し、濾別した褐色固体を酢酸エチル(1リットル)に溶解した。この溶液を水洗3回行い、7%重曹水で中和後、更に水洗を3回行った。その後、酢酸エチルを減圧下留去し、褐色固体を得た(68.5g)。
【0165】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(SPh)1.32(SC64−p−OH)0.683
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は、99.9%であった。
【0166】
合成例15(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
合成原料として合成例2で合成したホスファゼン化合物の代わりに合成例7で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)1.02(OC106OCH30.983
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1,239g,4.00モル、メトキシ基はナフタリン骨格の7位に結合)を用い、三臭化ホウ素(1228g,4.90モル)を用いた他は合成例10と同様に操作して、褐色固体を得た(1011g)。
【0167】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)1.00(OC106OH)1.003
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(水酸基はナフタリン骨格の7位に結合)であることを確認した。収率は、85.0%であった。
【0168】
合成例16(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
合成原料として合成例2で合成したホスファゼン化合物の代わりに合成例8で合成したホスファゼン化合物、即ち式
[N=P(OPh)0.67(OCH2CH2CH3)0.33(OC64−p−OCH3)1.00]n
(3量体:59%、4量体:15%、5量体及び6量体:10%、7量体:3%及び8量体以上:13%の混合物。nの平均は約4.2)
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(1000g,4.00モル)を用い、三臭化ホウ素(1252g,5.00モル)を用いた他は合成例10と同様に操作して、褐色固体を得た(920g)。
【0169】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)0.67(OCH2CH2CH3)0.32(OC64−p−OH)1.01]n
(3量体:59%、4量体:15%、5量体及び6量体:10%、7量体:3%及び8量体以上:13%の混合物。nの平均は約4.2)
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率は97.3%であった。
【0170】
合成例17(ヒドロキシ基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた20リットルのフラスコに、合成例9で合成したホスファゼン化合物、即ち式
[N=P(OPh)0.98(OC64−p−OCH31.02n
(3量体:29%、4量体:2%、5量体及び6量体:19%、7量体:6%及び8量体以上:44%の混合物。8量体以上のうち46%は重量平均分子量約10000の鎖状ジクロロホスファゼンポリマー)
で表されるメトキシ基を有するホスファゼン化合物(524g,2.00モル)を入れ、塩化メチレン(6リットル)を加えて均一になるまで撹拌した。そこへ三臭化ホウ素(639g,2.55モル)を塩化メチレンに溶解して濃度1モル/リットルに調製した溶液を滴下ロートに入れて、30℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後室温下4時間撹拌した。
【0171】
その後、反応液中に脱イオン水(2.5リットル)を、30℃以下に保ちながらゆっくりと滴下し、滴下後30℃以下で1時間撹拌した。反応終了後、反応混合分散液を濾過し、濾別した褐色固体を酢酸エチル(5リットル)に溶解した。この溶液を、水洗3回、7%重曹水で中和後、更に水洗を3回行った。その後、酢酸エチルを減圧下留去し、褐色固体を得た(461g)。
【0172】
この固体について、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が式
[N=P(OPh)0.99(OC64−p−OH)1.01n
(3量体:29%、4量体:2%、5量体及び6量体:19%、7量体:6%及び8量体以上:44%の混合物。8量体以上のうち46%は重量平均分子量約10000の鎖状ジクロロホスファゼンポリマー)
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。収率93.1%であった。
【0173】
実施例1(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(175.2g,2.10モル)を入れ、ジオキサン(420ml)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(97.8g,1.05モル)のジオキサン(105ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例10で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)0.95(OC64−p−OH)1.05n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(248.0g,1.00モル)のジオキサン(1,000ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下に6時間撹拌した。
【0174】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(363.6g)。この油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(330.2g)。
【0175】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0176】
【化25】
Figure 0003818228
【0177】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0178】
実施例2(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(166.8g,2.00モル)を入れ、ジオキサン(400ml)を加えて均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(93.1g,1.00モル)のジオキサン(100ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例11で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OC64−p−C251.00(OC64−p−OH)1.00n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(275.2g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0179】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(384.2g)。この油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(352.2g)。
【0180】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0181】
【化26】
Figure 0003818228
【0182】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0183】
実施例3(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(170.2g,2.04モル)を入れ、ジオキサン(408ml)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(95.0g,1.02 モル)のジオキサン(102ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例12で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)0.98(OC64−o−OH)1.02n
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(247.5g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0184】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(342.4g)。この油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(301.1g)。
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0185】
【化27】
Figure 0003818228
【0186】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0187】
実施例4(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(111.8g,1.34モル)を入れ、ジオキサン(268ml)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にシクロヘキシルアミン(66.5g,0.67モル)のジオキサン(67ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例13で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)1.33(OC64−p−OH)0.673
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(241.9g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0188】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(301.8g)。このものをジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(282.6g)。
【0189】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0190】
【化28】
Figure 0003818228
【0191】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0192】
実施例5(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた300mlのフラスコに、36%ホルマリン(11.3g,0.14モル)を量り取り、ジオキサン(27ml)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にメチルアミン(2.1g,0.07モル)のジオキサン(7ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃ 以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例14で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(SPh)1.32(SC64−p−OH)0.683
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(27.4g,0.10モル)のジオキサン(100ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0193】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に再溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(29.0g)。このものをジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(22.4g)。
【0194】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0195】
【化29】
Figure 0003818228
【0196】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0197】
実施例6(ナフトオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(166.8g,2.000モル)を量り取り、ジオキサン(400ml)を加え、均一になるまで撹拌して溶液とした。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(93.1g,1.000モル)のジオキサン(100ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例15で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)1.00(OC106OH)1.003
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(297.3g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0198】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(388.2g)。このものをジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(350.0g)。
【0199】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0200】
【化30】
Figure 0003818228
【0201】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0202】
実施例7(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(168.5g,2.02モル)を入れ、ジオキサン(404ml)を加え、均一になるまで撹拌した。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(94.1g,1.01モル)のジオキサン(101ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。
【0203】
滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例16で合成したホスファゼン化合物、即ち、式
[N=P(OPh)0.67(OCH2CH2CH3)0.32(OC64−p−OH)1.01]n
(3量体:59%、4量体:15%、5量体及び6量体:10%、7量体:3%及び8量体以上:13%の混合物。nの平均は約4.2)
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(236.5g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0204】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(350.4g)。この油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(348.4g)。
【0205】
この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った。その結果、この固体が次式
【0206】
【化31】
Figure 0003818228
【0207】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0208】
実施例8(ベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼンの合成)
還流冷却器、温度計及び撹拌機を備えた2リットルのフラスコに、36%ホルマリン(168.5g,2.02モル)を入れ、ジオキサン(404ml)を加え、均一になるまで撹拌した。フラスコを氷浴に浸し10℃以下まで冷却し、このジオキサン溶液にアニリン(94.1g,1.01モル)のジオキサン(101ml)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、温度を10℃以下に保ったまま20分間撹拌し、更に合成例17で合成したホスファゼン化合物、即ち、
式 [N=P(OPh)0.99(OC64−p−OH)1.01n
(3量体:29%、4量体:2%、5量体及び6量体:19%、7量体:6%及び8量体以上:44%の混合物。8量体以上の内46%は重量平均分子量約10000の鎖状ジクロロホスファゼンポリマー)
で表されるヒドロキシ基を有するホスファゼン化合物(247.4g,1.00モル)のジオキサン(1リットル)溶液を10℃以下でゆっくりと滴下した。滴下終了後、1時間かけて90℃まで昇温し、その後還流下6時間撹拌した。
【0209】
反応終了後、反応液を濃縮し、酢酸エチル(1リットル)に溶解し、水洗を4回行った。その後、酢酸エチルを減圧下に留去し、褐色油状物を得た(360.4g)。この油状物をジエチルエーテルを用いて再結晶し、淡黄色固体を得た(351.4g)。
【0210】
この固体について、この固体について、FT−IR、1H−NMR及び31P−NMRの測定、CHN元素分析並びにリン含有率測定を行った結果、この固体が式
【0211】
【化32】
Figure 0003818228
【0212】
で表されるベンゾオキサジン環残基を有するホスファゼン化合物であることを確認した。
【0213】
表1に、実施例1〜8における生成物のFT−IR測定、1H−NMR測定、31P−NMR測定、CHN元素分析及びリン含有率測定の結果をまとめて示す。
【0214】
【表1】
Figure 0003818228
【0215】
実施例9〜16
ポリカーボネート樹脂80重量部に対して、上記実施例1〜8で得られたジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有するホスファゼン化合物又はジヒドロ−3置換−1,3−ナフトオキサジン環を有するホスファゼン化合物20重量部を、ミキサーを用いて混合し、得られた樹脂組成物を厚さ1/16インチ及び厚さ3mmの金型中にそれぞれ入れて真空プレス中にて270℃、1時間にて成形、硬化させ、成形体を得た。これら成形体につき、熱膨張率、ガラス転移温度及び難燃性能を評価した。結果を表2に示す。
【0216】
また、ポリカーボネート樹脂75重量部及びABS樹脂25重量部に対して、上記実施例1〜8で得られたジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有するホスファゼン化合物又はジヒドロ−3置換−1,3−ナフトオキサジン環を有するホスファゼン化合物10重量部及びPTFE 0.5部を、それぞれ表2に示した配合でミキサーを用いて混合し、得られた樹脂組成物を厚さ1/16インチ及び厚さ3mmの金型中にそれぞれ入れて真空プレス中にて270℃、1時間にて成形、硬化させ、成形体を得た。これら成形体につき、熱膨張率、ガラス転移温度及び難燃性能を評価した。結果を表2に示す。
【0217】
実施例17〜24
エポキシ樹脂80重量部に対して、上記実施例1〜8で得られたジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有するホスファゼン化合物又はジヒドロ−3置換−1,3−ナフトオキサジン環を有するホスファゼン化合物20重量部及び硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール2重量部を、二本ロールを用いて混合し、得られた樹脂組成物を厚さ1/16インチ及び厚さ3mmの金型中にそれぞれ入れて真空プレス中にて240℃、1時間にて成形、硬化させ、成形体を得た。これら成形体につき、熱膨張率、ガラス転移温度及び難燃性能を評価した。結果を表2に示す。
【0218】
比較例1〜2
ジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有するホスファゼン化合物及びジヒドロ−3置換−1,3−ナフトオキサジン環を有するホスファゼン化合物を、3,4−ジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有していないホスファゼン化合物である合成例2で得られるメトキシ基含有ホスファゼン化合物に変更した以外は実施例9〜16又は実施例17〜24と同様にして樹脂組成物を得、更にこれらの実施例と同様にして成形体を作成した。
【0219】
これらの成形体は、難燃性が乏しく、熱膨張率が実施例9〜16及び実施例17〜24の成形体に比べて極めて大であった。これら成形体につき、熱膨張率、ガラス転移温度及び難燃性能を評価した。結果を表2に示す。
【0220】
比較例3〜10
ポリエチレン樹脂(旭化成工業(株)製、低密度ポリエチレン、サンテックLD)80重量部に対して、上記実施例1〜8に示すジヒドロ−3置換−1,3−ベンゾオキサジン環を有するホスファゼン化合物又はジヒドロ−3置換−1,3−ナフトオキサジン環を有するホスファゼン化合物20重量部を、プラストミルを用いて80℃で混合し、厚さ1/16インチ及び厚さ3mmの金型中にそれぞれ流しこみ真空プレス中にて成形させ、冷却の後、成形体を得た。これら成形体につき、熱膨張率、ガラス転移温度及び難燃性能を評価した。結果を表2に示す。
【0221】
【表2】
Figure 0003818228
【0222】
表2において、ポリカーボネート樹脂はPC、エポキシ樹脂はEPOXY,ポリエチレン樹脂はPEと略する。難燃性評価欄の数字(時間,sec.)は、5つの試験片を2回づつ接炎した際に着火していた時間の総和を示す。

Claims (7)

  1. 一般式(1)
    Figure 0003818228
    〔式中mは3〜25の整数を示す。R1
    Figure 0003818228
    置換基を有しもしくは有しないフェニル基、置換基を有しもしくは有しないナフチル基又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のR1は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。但し、2m個のR1のうち、少なくとも1つは
    Figure 0003818228
    を示すものとする。Xは酸素原子又は硫黄原子を示す。R2はフェニル基、メチル基又はシクロヘキシル基を示す。フェニル基には、メチル基又はアミノ基が置換していてもよい。〕
    で表される環状フェノキシホスファゼン及び一般式(2)
    Figure 0003818228
    〔式中X1は基−N=P(XR13又は基−N=P(X)XR1を示し、Y1は基−P(XR14又は基−P(X)(XR12を示す。nは3〜10000の整数を示す。R1及びXは前記に同じ。但し、2n個のR1のうち、少なくとも1つは
    Figure 0003818228
    を示すものとする。R2は前記に同じ。〕
    で表される直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれるホスファゼン化合物。
  2. 一般式(3)
    Figure 0003818228
    〔式中mは3〜25の整数を示す。R3はヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基、フェニル基、ナフチル基又は炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基を示す。2m個のR3は、同一であってもよいし、異なっていてもよい。但し、2m個のR3のうち、少なくとも1つはヒドロキシフェニル基又はヒドロキシナフチル基を示すものとする。Xは前記に同じ。〕
    で表される環状フェノキシホスファゼン及び一般式(4)
    Figure 0003818228
    〔式中X2は基−N=P(XR33又は基−N=P(X)XR3を示し、Y2は基−P(XR34又は基−P(X)(XR32を示す。nは3〜10000の整数を示す。R3及びXは前記に同じ。但し、2n個のR3のうち、少なくとも1つはヒドロキシフェニル基又はヒドロキシナフチル基を示すものとする。〕
    で表される直鎖状フェノキシホスファゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種のホスファゼン化合物、一般式(5)
    2−NH2 (5)
    〔式中R2は前記に同じ。〕
    で表されるアミン化合物及びホルムアルデヒドを反応させることにより、請求項1に記載のホスファゼン化合物を製造する方法。
  3. 請求項1に記載のホスファゼン化合物からなる難燃剤。
  4. (a)請求項1に記載のホスファゼン化合物及び(b)ガラス転移温度が50℃以上である芳香環を有する高分子化合物を含有する組成物であって、(a)成分と(b)成分との和100重量部を基準として(a)成分が0.1〜90重量部、(b)成分が99.9〜10重量部である難燃性樹脂組成物。
  5. (a)成分と(b)成分との和100重量部を基準として(a)成分が1〜80重量部、(b)成分が99〜20重量部である請求項4に記載の難燃性樹脂組成物。
  6. 芳香環を有する高分子化合物が、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート及びポリフェニレンエーテルからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項4又は5に記載の難燃性樹脂組成物。
  7. 請求項4〜請求項6のいずれかに記載の難燃性樹脂組成物を成形して得ることのできる成形体。
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