JP3818001B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、インクジェットプリンター等のインクジェット記録装置に使用するインクジェット記録用インクに係り、特に、このインクジェット記録用インクに添加させる親水性樹脂を改良し、このインクジェット記録用インクをインクジェット記録装置のインク吐出ヘッドから紙等の記録媒体上に吐出して画像を形成する場合において、このインクジェット記録用インクがインク吐出ヘッドから安定して吐出されるようにした点に特徴を有するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、インクジェットプリンター等のインクジェット記録装置に使用されるインクとしては、油性のインクの他に、取り扱いの容易性や安全性等の面から水性のインクが広く用いられていた。
【0003】
ここで、水性のインクとしては、着色剤に染料を用い、この染料を水性媒体中に溶解させたものや、着色剤にカーボンブラック等の顔料を用い、この顔料を水性媒体中に分散させたものが一般に使用されている。
【0004】
ここで、このような水性のインクにおいては、記録媒体に対するインクの定着性や水性媒体中における顔料の分散安定性等を向上させるため、従来より、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル等の樹脂に親水性のポリエチレングリコール等を共重合させた親水性樹脂を添加することが行われている。
【0005】
しかし、上記のような親水性樹脂をインクジェット記録用インクに添加させると、この親水性樹脂が凝集してインク吐出ヘッドに目詰まりしたり、インクジェット記録用インクの粘度が上昇して、インクの吐出性が悪くなる等の問題があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、インクジェット記録用インクにおける上記のような問題を解決することを課題とするものであり、このインクジェット記録用インクをインクジェット記録装置のインク吐出ヘッドから紙等の記録媒体上に吐出して画像を形成する場合において、このインクジェット記録用インクの定着性等を向上させると共に、このインクジェット記録用インクがインク吐出ヘッドから安定して吐出されるようにすることを課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明におけるインクジェット記録用インクにおいては、上記のような課題を解決するため、少なくとも色材と水とを有するインクジェット記録用インクにおいて、前記の化1に示す一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1種の両性イオン基を有する高分子化合物を含有させるようにしたのである。
【0008】
ここで、前記の一般式(1)〜(3)中におけるn、m、k、lの数が小さすぎると、このインクジェット記録用インクにおける定着性等を十分に向上させることができなくなる一方、これらの数が大きくなり過ぎると、このインクジェット記録用インクが凝集しやすくなるため、前記のように、nは2以上8以下の整数、mは1以上5以下の整数、k,lは0以上の整数(k,lが共に0の場合を除く。)であり、k+l+m≦8の関係を満たすようにしている。
【0009】
そして、この発明におけるインクジェット記録用インクのように、前記の化1に示す一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1種の両性イオン基を有する高分子化合物を含有させると、この両性イオン基を有する高分子化合物により、このインクジェット記録用インクの記録媒体に対する定着性が向上すると共に、このインクジェット記録用インクが凝集するのが抑制され、このインクジェット記録用インクをインク吐出ヘッドから安定して吐出できるようになる。
【0010】
また、この発明におけるインクジェット記録用インクにおいて、前記の一般式(1)〜(3)に示される両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたっては、その原料として、請求項2に示すように4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物や、請求項3に示すように4級化可能なアミノ基を有するポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルから選択される少なくとも1種の樹脂組成物を用いることができ、また請求項4に示すように、両性イオン基を有する第1のラジカル重合物と第2のラジカル重合物とをグラフトさせて得ることもできる。なお、上記の4級化可能なアミノ基とは、活性水素を有していないアミノ基であって重合には関与せず、かつカルボニル基やスルホニル基と直接に結合していないアミノ基であり、後述するハロゲン化カルボン酸やラクトン類と反応して4級化するものをいう。
【0011】
ここで、請求項2に示す4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたっては、例えば、下記の化2及び化3に示すような4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーの1種又は2種以上を水又は有機溶媒に溶解させ、ラジカル重合開始剤によりラジカル重合させるようにする。
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
また、上記のような4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーの一種又は二種以上と、4級化可能なアミノ基を有しないラジカル重合性モノマーの一種又は二種以上とを任意の割合で共重合させるようにしてもよい。
【0015】
ここで、上記のように4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーの一種又は二種以上と、4級化可能なアミノ基を有しないラジカル重合性モノマーの一種又は二種以上とを共重合させるにあたり、共重合体における各モノマーの繰り返し単位のシーケンスは目的に応じて調整することができ、これによりインクの物性やインク画像の耐性等が変化する。
【0016】
そして、上記の各モノマーによって得られる高分子化合物の平均化された特性を有する共重合体を得たい場合には、各モノマーのランダム共重合体を得るようにし、また各モノマーによって得られる高分子化合物のそれぞれの特性を有する共重合体を得る場合には、各モノマーのブロック共重合体を得るようにする。
【0017】
例えば、疎水性及びガラス転移温度の比較的高いスチレンと4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーとの共重合体の場合、ランダム共重合体においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーだけで構成される高分子化合物よりも疎水性及びガラス転移温度が高い共重合体が得られ、またブロック共重合体においては、ポリスチレンによる疎水性の部分と4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーの重合体による親水性の部分とがそれぞれ分離されて存在し、いわゆる界面活性剤のような物性が得られると共に、ガラス転移温度も別々に観測されるようになると考えられる。
【0018】
ここで、上記の4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーと共重合させる4級化可能なアミノ基を有しないラジカル重合性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸ナトリウム、メタクリル酸、メタクリル酸ナトリウム、アクリル酸アミド、メタクリル酸アミド、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、アクリロイルモルフォリン、メタクリロイルモルフォリン、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、スチレン、4−ビニルフェノール、4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウム、ビニルアセテート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、無水マレイン酸、ビニル安息香酸、N−ブチルマレイミド等を用いることができる。
【0019】
さらに、4級化に対して不活性なアミノ基を有するラジカル重合性モノマーをラジカル重合させた後、このラジカル重合物中における4級化に対して不活性なアミノ基の一部又は全部を4級化可能なアミノ基に変化させるようにしたり、また4級化可能なアミノ基を有しないラジカル重合物に対して、4級化可能なアミノ基を有するシラン系やチタン系等の表面改質剤を反応させたり、NH3 を用いたプラズマ処理を行う等により、このラジカル重合物に4級化可能なアミノ基を導入させるようにしてもよい。
【0020】
また、請求項3に示す4級化可能なアミノ基を有するポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルを得るにあたっては、重縮合用モノマーに、例えば、下記の化4及び化5に示すような4級化可能なアミノ基を有するジアミン類、ジオール類及びアミノアルコール類を用い、一般的に知られているように、ポリウレタンの場合にはジイソシアネートとジオール類とを、ポリウレアの場合にはジイソシアネートとジアミン類とを、ポリアミドの場合にはジカルボン酸やジカルボン酸ジハロゲン化物とジアミン類とを、ポリエステルの場合にはジカルボン酸やジカルボン酸ジハロゲン化物とジオール類とを反応させて合成することができる。
【0021】
【化4】
【0022】
【化5】
【0023】
また、上記のような4級化可能なアミノ基を有するジアミン類、ジオール類及びアミノアルコール類を2種以上用いるようにしたり、4級化可能なアミノ基を有しない他のジアミン類、ジオール類及びアミノアルコール類を合わせて用いることも可能である。
【0024】
また、上記の4級化可能なアミノ基を有するポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルの水溶性をさらに向上させるためには、ポリエチレングリコールやポリエチレングリコールジアミンを共重合させることが好ましい。
【0025】
ここで、上記のジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、ナフタレン−1,4−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、3,3’−ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、キシリレン−1,4−ジイソシアネート、キシリレン−1,3−ジイソシアネート、4,4’−ジフェニルプロパンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルヘキサフルオロプロパンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン−1,2−ジイソシアネート、ブチレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,2−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,4−ジイソシアネート、シクロヘキシレン−1,3−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネートや、上記のイソシアネート類の二量体(ウレトンジオン)や、上記のイソシアネート類をジオール類やジアミン類の両末端に付加させたアダクト体のジイソシアネート類を用いることができる。
【0026】
また、上記のジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、マレイン酸、マロン酸、アジピン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸等を用いることができ、またジカルボン酸ジハロゲン化物としては、これらのジカルボン酸のハロゲン化物を用いることができ、さらにテトラカルボン酸二無水物をジアミン類やジオール類と反応させて、ポリアミドやポリエステルを合成することもできる。
【0027】
ここで、テトラカルボン酸二無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、1,2,4,5−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物等を用いることができる。
【0028】
また、上記の4級化可能なアミノ基を有しないジアミン類としては、例えば、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、1,8−ジアミノナフタレン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、エチレンジアミン、1,3−プロピレンジアミン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、ピペラジン、3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ビス(3−アミノプロピル)エーテル、1,4−ビス(3−アミノプロポキシ)ブタン、1,2−ビス(3−アミノプロポキシ)エタン、ビス[2−(3−アミノプロポキシ)エチル]エーテル、ポリエチレングリコールジアミン等を用いることができる。
【0029】
また、上記の4級化可能なアミノ基を有しないジオール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラメチレンジオール、ポリテトラメチレンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、レゾルシノール、ビスフェノールA、4,4’−ビフェノール、1,3−ジメチロールベンゼン、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−ジメチロールシクロヘキサン、2,2−ジメチロールプロピオン酸等を用いることができる。
【0030】
また、上記の4級化可能なアミノ基を有しないアミノアルコール類としては、例えば、アミノエタノール、4−アミノブタノール、2−アミノプロパノール、2−ヒドロキシメチルアニリン、m−アミノフェノール、4−メチルアミノブタノール、2−ピペリジンエタノール、4−ピペリジンエタノール等を用いることができる。
【0031】
そして、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたっては、上記のような4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物や、4級化可能なアミノ基を有するポリウレタン,ポリウレア,ポリアミド,ポリエステルにおける4級化可能なアミノ基を4級化させるようにする。なお、モノマーの段階で4級化可能なアミノ基を4級化させることも可能である。
【0032】
ここで、上記のラジカル重合物やポリウレタン,ポリウレア,ポリアミド,ポリエステル及びこれらのモノマーにおける4級化可能なアミノ基を4級化させるにあたっては、これらに対してハロゲン化カルボン酸やラクトン類を反応させるようにする。
【0033】
そして、ハロゲン化カルボン酸を反応させて4級化可能なアミノ基を4級化させるにあたっては、例えば、水又は水と有機溶媒との混合溶媒中において塩基の存在下において反応させるようにし、またラクトン類を反応させて4級化可能なアミノ基を4級化させるにあたっては、例えば、有機溶媒中において反応させるようにする。
【0034】
また、上記のハロゲン化カルボン酸としては、例えば、下記の化6に示すようなハロゲン化カルボン酸を、上記のラクトン類としては、例えば、下記の化7に示すようなラクトン類を用いることができる。
【0035】
【化6】
【0036】
【化7】
【0037】
また、請求項4に示すように、両性イオン基を有する第1のラジカル重合物と第2のラジカル重合物とがグラフトされて、前記の化1に示す一般式(1)〜(3)で示される少なくとも一種の両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたっては、以下に示すような方法を用いることができる。
【0038】
第1の方法としては、前記の化2及び化3に示す4級化可能なアミノ基を有するビニルモノマーと上記の化6又は化7に示すハロゲン化カルボン酸又はラクトン類とを反応させて得られる両性イオン基を有するビニルモノマーを用い、下記の化8に示すように、−OH,−NH2 等の活性水素を有する官能基Yと−SH等のラジカル重合連鎖移動剤として機能する官能基とを有する化合物、例えば、メルカプトエタノール、メルカプトエチルアミン等のY−R−SH(式中、Rは2価の有機基である。)を用いて、上記の両性イオン基を有するビニルモノマーをラジカル重合させ、末端に活性水素を有する官能基Yが結合された両性イオン基を有する第1のラジカル重合物を得るようにする。
【0039】
【化8】
【0040】
そして、下記の化9に示すように、上記のようにして得た末端に活性水素を有する官能基Yが結合された両性イオン基を有する第1のラジカル重合物と、上記の官能基Yと反応して結合する−COCl,−COOPh,−NCO,酸無水物基等の官能基Xを有する第2のラジカル重合物とを反応させて、両性イオン基を有する第1のラジカル重合物が第2のラジカル重合物にグラフトされた高分子化合物を得るようにする。なお、下記の化9中において、Zは上記の官能基Xと官能基Yとが反応して新たに形成される結合であり、例えば、−COO−,−NHCOO−,−NHCOONH−,−NHCOS−,−COS−,−CONH−等である。
【0041】
【化9】
【0042】
また、第2の方法としては、下記の化10に示すように、上記の−OH,−NH2 等の活性水素を有する官能基Yと−SH等のラジカル重合連鎖移動剤として機能する官能基とを有する化合物であるY−R−SHを用い、この化合物を−COCl,−COOPh,−NCO,酸無水物基等の官能基Xを有する第2のラジカル重合物に反応させて、この第2のラジカル重合物に−SH等のラジカル重合連鎖移動剤として機能する官能基を結合させる。
【0043】
【化10】
【0044】
そして、下記の化11に示すように、−SH等のラジカル重合連鎖移動剤として機能する官能基が結合された第2のラジカル重合物に対して、上記の両性イオン基を有するビニルモノマーをラジカル重合させて、両性イオン基を有する第1のラジカル重合物が第2のラジカル重合物にグラフトされた高分子化合物を得るようにする。
【0045】
【化11】
【0046】
ここで、上記の第1及び第2の方法において、活性水素を有する官能基Yと反応して結合する官能基Xを持つ第2のラジカル重合物は、上記の官能基Xを有するビニルモノマーを一種又は二種以上、或いは官能基Xを有するビニルモノマーと他のビニルモノマーとを重合させて得ることができる。
【0047】
そして、上記の官能基Xを有するビニルモノマーとしては、例えば、アクリル酸、アクリル酸クロリド、メタクリル酸、メタクリル酸クロリド、アクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸(4−ニトロフェニル)エステル、4−ビニルベンゼンスルホン酸クロリド、4−ビニルフェニルイソシアネート、4−ビニルベンジルイソシアネート、メタクロイルオキシエチルイソシアネート、無水マレイン酸、イタコン酸又は4−(メタクロイルアミノ)フタル酸無水物等を用いることができ、また疎水性を調節するために、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸ドデシル等のメタクリル酸エステル類やアクリル酸エステル類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、4−プロピルオキシスチレン、4−ヘキシルオキシスチレン等の芳香族ビニル;メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類等の疎水性モノマーを用いることができる。
【0048】
また、−OH,−NH2 等の活性水素を有する官能基Yと−SH等のラジカル重合連鎖移動剤として機能する官能基とを有する化合物としては、上記のメルカプトエタノール、メルカプトエチルアミンの他に、例えば、メルカプトプロパノール、メルカプトフェノール、メルカプトプロピルアミン、メルカプトベンジルアミン、メルカプト酢酸やメルカプトプロピオン酸等のメルカプト化合物や、ジチオカーバメート類やトリフェニルメチルアゾベンゼン類やテトラフェニルエタン類等の活性水素を有する官能基Yが導入された連鎖移動剤が挙げられる。
【0049】
なお、上記の第1及び第2の方法においては、前記の化2及び化3に示す4級化可能なアミノ基を有するビニルモノマーと上記の化6又は化7に示すハロゲン化カルボン酸又はラクトン類とを反応させた両性イオン基を有するビニルモノマーを用いるようにしたが、前記の化2及び化3に示す4級化可能なアミノ基を有するビニルモノマーを重合させた後、前記の化6又は化7に示すハロゲン化カルボン酸又はラクトン類を反応させて両性イオン化させることも可能である。
【0050】
また、この発明におけるインクジェット記録用インクにおいては、上記のような両性イオン基を有する高分子化合物の他に、水性媒体中に適当な色材を添加させると共に、インクの特性を向上させるため、例えば、水可溶性樹脂、防カビ剤、防腐剤、PH調整剤、キレート剤、酸素吸収剤、防錆剤、消光剤等を加えることができる。
【0051】
ここで、上記の水性媒体としては、水を単独で使用する他、水と水性の有機溶媒との混合溶媒を用いることができる。
【0052】
そして、上記の水性の有機溶媒としては、インクの乾燥性を高めて、記録媒体へのインクの定着を速めるため、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の脂肪族アルコール等を、好ましくは、炭素数1〜3の脂肪族アルコールを加えるようにする。
【0053】
また、インクにおける保湿性を向上させたり、その粘度等を調整するために、エチレングリコール,プロピレングリコール,ブチレングリコール,ヘキシレングリコール等のモノアルキレングリコール、ジエチレングリコール,ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコール、トリエチレングリコール等のトリアルキレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類を加えるようにしたり、またインク中において色材が析出するのを防止するため、尿素、アミド、環式アミド、アルカノールアミン等の両親媒性物質を添加することもできる。
【0054】
さらに、吸湿性や水への溶解度の高い臭化リチウム,臭化ナトリウム,塩化ナトリウム等の無機塩類や、酢酸ナトリウム,トルエンスルホン酸ナトリウム,フタル酸ナトリウム,酢酸アンモニウム,酢酸トリエタノールアミン塩等の有機塩を添加させることもできる。
【0055】
また、上記の水性媒体中に添加させる色材としては、従来より一般に使用されている公知の酸性染料,直接染料,反応性染料等の水溶性染料、油溶性染料、顔料を用いることができる。
【0056】
そして、上記の染料としては、例えば、C.I.アシッドイエロー17,23,42,44,79,142;C.I.アシッドレッド1,8,13,14,18,26,27,35,37,42,52,87,89,92,97,106,111,114,115,186,249,254,289;C.I.アシッドブルー9,29,45,92,249;C.I.アシッドブラック1,2,7,24,26,94;C.I.ダイレクトイエロー1,12,24,26,33,44,50,86,120,142,144;C.I.ダイレクトレッド1,4,9,13,17,20,28,31,39,80,81,89,225,227;C.I.ダイレクトブルー1,2,6,15,22,25,71,76,79,86,87,98,163,165,199,202;C.I.ダイレクトブラック19,22,32,38,51,56,71,74,75,77,168,171;C.I.ベーシックイエロー1,2,11,13,14,15,19,21,23,24,28,29,32,36,40,41,45,49,53,63,64,65,67,70,73,77,87,91;C.I.ベーシックレッド2,12,13,14,15,18,22,23,24,27,35,36,38,39,46,49,51,52,68,70,73,78,82,102,104,109,112;C.I.ベーシックブルー1,3,5,7,9,21,22,26,35,41,45,54,62,65,66,67,69,75,77,89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,141,155;C.I.ベーシックブラック2,8;C.I.リアクティブイエロー1,5,11,13,14,20,21,22,25,40,47,51,55,65,67;C.I.リアクティブレッド1,14,17,25,26,32,37,44,46,55,66,74,79,96,97;C.I.リアクティブブルー1,2,7,14,15,23,32,35,38,41,63,80,95;C.I.リアクティブブラック3,4,7,11,12,17等を使用することができる。
【0057】
また、上記の顔料としては、アゾ系,フタロシアニン系,アントラキノン系,キナクリドン系,ジオキサジン系,インジゴ系,チオインジゴ系,ペリレン系,アニリンブラック,アゾメチン系,ロータミンBレーキ系,カーボンブラック,表面修飾によって水分散性が高められたカーボンブラック等を使用することができ、具体的には、C.I.ピグメントイエロー1,2,3,13,16,83,93,95,151,154,180;C.I.ピグメントレッド5,7,12,48,57,112,122;C.I.ピグメントブルー1,2,3,15:3,16等が用いられる。
【0058】
ここで、上記のような色材を水性媒体中に添加させる量については、その量があまり少ないと、インクに十分な色彩が付与されない一方、その量が多くなりすぎると、色材の溶解,分散が十分に行えなくなるため、一般に、インクジェット記録用インク中に色材を0.1〜20重量%の範囲で加えるようにする。
【0059】
また、このインクジェット記録用インクの定着性を向上させたり、顔料の分散性を高めることを目的として水可溶性樹脂を添加することができる。
【0060】
ここで、上記の水可溶性樹脂としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース,カルボキシメチルセルロース,ビスコース等のセルロース誘導体、アルギン酸,アラビアゴム,トラガントゴム,リグニンスルホン酸,ゼラチン等の天然高分子類、りん酸でん粉,カルボキシメチルでん粉塩等のでん粉誘導体、ポリアクリル酸,ポリメタクリル酸,ポリビニル硫酸,ポリビニルスルホン酸,縮合ナフタレンスルホン酸,エチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−アクリル酸共重合体,スチレン−メタクリル酸共重合体,アクリル酸エステル−アクリル酸共重合体,アクリル酸エステル−メタクリル酸共重合体,スチレン−マレイン酸共重合体,スチレン−マレイン酸エステル共重合体,スチレン−イタコン酸共重合体,イタコン酸エステル−イタコン酸共重合体,ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体,ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体,ビニルナフタレン−イタコン酸共重合体,フェノール樹脂,ポリアミド樹脂,ポリイミド樹脂,ポリアミック酸樹脂,エポキシ樹脂,ポリエステル樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリウレタン−ウレア樹脂,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ポリオキシエチレンアルキルアミン,ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル,ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドン,ポリアルキレンカチオン,フタル化ゼラチン,両性イオン基を有する高分子等の合成樹脂を用いることができる。
【0061】
【実施例】
以下、この発明の実施例に係るインクジェット記録用インクについて具体的に説明すると共に、この実施例に係るインクジェット記録用インクが優れた吐出安定性を有することを比較例を挙げて明らかにする。
【0062】
(実施例1)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたり、ラジカル重合性モノマーに4級化可能なアミノ基を有するN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製)を用いた。
【0063】
そして、このラジカル重合性モノマー78.1g(0.5mol)をジオキサン250mlに溶解させ、これにラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.656g(0.004mol)を加え、窒素雰囲気下において、70〜90℃に加熱し4時間攪拌して反応させ、得られた反応生成物をヘキサン1800mlとアセトン200mlとの混合溶媒を用いて2回再沈殿させて精製した。
【0064】
次いで、この反応生成物を真空オーブン内において80℃で4時間乾燥させ、4級化可能なアミノ基を有する淡黄色固体からなるポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)62.4gを得た。
【0065】
ここで、上記の淡黄色固体からなるポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を水に溶解させて、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)の10重量%水溶液を調製し、BLアダプターを使用したBL型粘度計を用いて60rpm,25℃の条件下でこの水溶液の粘度を測定すると6.5cpであった。
【0066】
また、上記のようにして得たポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)に2NのHCl溶液を過剰に加えてアミノ基との反応を完結させた後、残存したHClを0.1NのNaOH溶液を用いて逆適定を行った結果、4級化可能なアミノ基の含有率は5.91mmol/gであった。
【0067】
次いで、上記のようにして得たポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)8.46g(4級化可能なアミノ基0.05mol)と、水酸化ナトリウム2.0g(0.05mol)とを蒸留水72.43gに溶解させ、これらを攪拌しながら、これにハロゲン化カルボン酸として、3−ブロモプロパン酸を7.65g(0.05mol)を加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌させて下記の化12に示すように反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を得た。
【0068】
【化12】
【0069】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を11.25g、カーボンブラック濃度が15.4重量%になったカーボンブラッック水分散液(CAB−O−JET 300:CABOT社製)を32.47g、グリセリンを5.3g、イソプロピルアルコールを2g、NaHCO3 を0.2g、防黴剤であるプロキセルを0.3g、蒸留水を48.48gの割合で混合して、実施例1のインクジェット記録用インクを調製した。
【0070】
(実施例2)
この実施例においては、インクジェット記録用インクを調製するにあたり、上記の実施例1において作製した両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液と蒸留水との量を変更し、上記の両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を25g、カーボンブラック濃度が15.4重量%になったカーボンブラック水分散液を32.47g、グリセリンを5.3g、イソプロピルアルコールを2g、NaHCO3 を0.2g、プロキセルを0.3g、蒸留水を34.73gの割合で混合して、実施例2のインクジェット記録用インクを調製した。
【0071】
(実施例3〜8)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例1と同じポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を用いる一方、このラジカル重合物と反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例1の場合と変更し、実施例3においては4−ブロモブタン酸を、実施例4においては6−ブロモヘキサン酸を、実施例5においては8−ブロモオクタン酸を、実施例6においては2−ブロモプロパン酸を、実施例7においては2−ブロモブタン酸を、実施例8においては2−ブロモヘキサン酸を使用し、それ以外については、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例3〜8の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0072】
(比較例1,2)
これらの比較例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例1と同じポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を用いる一方、このラジカル重合物と反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例1の場合と変更し、比較例1においては11−ブロモウンデカン酸を、比較例2においては2−ブロモオクタン酸を使用し、それ以外については、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例1,2の各インクジェット記録用インクを調製した。なお、比較例1において得られた両性イオン基を有する高分子化合物は、前記の一般式(1)におけるnが10であり、また比較例2において得られた両性イオン基を有する高分子化合物は、前記の一般式(2)におけるmが6であった。
【0073】
(比較例3)
この比較例においては、上記の実施例1において得られた4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物であるポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)をハロゲン化カルボン酸と反応させずに、このポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)の水溶液を用い、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、比較例3のインクジェット記録用インクを調製した。
【0074】
次に、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の各インクジェット記録用インクをそれぞれ0.65μmのメンブランフィルタで加圧濾過した後、これらの各インクジェット記録用インクをそれぞれ市販のインクジェットプリンター(エプソン社製:MJ−510C)用のインクカートリッジに入れて、上記のインクジェットプリンターに装着し、1時間の連続印字を行った後、このインクジェットプリンターの電源を切り、30日後に再び1時間の連続印字を行い、30日後の印字時における印字画像の欠けを調べ、これらの各インクジェット記録用インクにおけるノズルからの吐出安定性を評価した。
【0075】
ここで、各インクジェット記録用インクの吐出安定性の評価においては、30日後においても初期の印字画像と変わらず印字画像に欠けが見当たらない場合を◎、30日後の印字による印字画像における欠けが殆ど目立たない場合を○、30日後の印字による印字画像において欠けが生じるが、ノズルのクリーニングを繰り返すことにより印字画像における欠けが殆ど目立たなくなる程度に回復する場合を△、ノズルのクリーニングを繰り返しても30日後の印字による印字画像欠けが生じて回復しない場合を×として下記の表1に示した。
【0076】
【表1】
【0077】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例1〜8に示す各インクジェット記録用インクは、前記の化1に示す条件を満たしていない両性イオン基を有する高分子化合物が含有された比較例1,2のインクジェット記録用インクや、ラジカル重合物における4級化可能なアミノ基を4級化させないで両性イオン化させなかった高分子化合物が含有された比較例3のインクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0078】
(実施例9)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたり、ラジカル重合性モノマーとして上記の実施例1と同じN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製)を用い、このラジカル重合性モノマー78.1g(0.5mol)をジオキサン250mlに溶解させ、これにラジカル重合開始剤のアゾビスイソブチロニトリル0.656g(0.004mol)と、連鎖移動剤である2−メルカプトエタノール1.954g(0.025mol)とを加え、窒素雰囲気下において、70〜90℃に加熱し4時間攪拌して反応させ、得られた反応生成物をヘキサン2000mlを用いて2回再沈殿させて精製した。
【0079】
次いで、この反応生成物を真空オーブン内において80℃で4時間乾燥させ、4級化可能なアミノ基を有する淡黄色固体からなるポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)58.77gを得た。
【0080】
ここで、この淡黄色固体からなるポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を水に溶解させて、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)の10重量%水溶液を調製し、BLアダプターを使用したBL型粘度計を用いて60rpm,25℃の条件下でこの水溶液の粘度を測定すると2.5cpであった。
【0081】
また、上記のようにして得たポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)に2NのHCl溶液を過剰に加えてアミノ基との反応を完結させた後、残存したHClを0.1NのNaOH溶液を用いて逆適定を行った結果、4級化可能なアミノ基の含有率は5.984mmol/gであった。
【0082】
次いで、上記のようにして得たポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)8.36g(4級化可能なアミノ基0.05mol)と、水酸化ナトリウム2.0g(0.05mol)とを蒸留水72.43gに溶解させ、これらを攪拌しながら、これにハロゲン化カルボン酸として、3−ブロモプロパン酸を7.65g(0.05mol)を加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌させて反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を得た。
【0083】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例9のインクジェット記録用インクを調製した。
【0084】
(実施例10〜19)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例9と同じポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を用いる一方、このラジカル重合物と反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例9の場合と変更し、実施例10においては4−ブロモブタン酸0.05molを、実施例11においては6−ブロモヘキサン酸0.05molを、実施例12においては8−ブロモオクタン酸0.05molを、実施例13においては3−ブロモプロパン酸0.04molと8−ブロモオクタン酸0.01molとを、実施例14においては4−ブロモブタン酸0.03molと6−ブロモヘキサン酸0.02molとを、実施例15においては2−ブロモプロパン酸0.05molを、実施例16においては2−ブロモブタン酸0.05molを、実施例17においては2−ブロモヘキサン酸0.05molを、実施例18においては2−ブロモプロパン酸0.025molと2−ブロモヘキサン酸0.025molとを、実施例19においては3−ブロモプロパン酸0.025molと2−ブロモプロパン酸0.025molとを使用し、それ以外については、上記の実施例9の場合と同様にして、実施例10〜19の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0085】
次いで、上記のように調製した実施例9〜19の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表2に示した。
【0086】
【表2】
【0087】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例9〜19に示す各インクジェット記録用インクも、前記の比較例1〜3の各インクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0088】
(実施例20)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたり、ラジカル重合性モノマーとして、上記のN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製)と、N,N−ジメチルアクリルアミドとを用い、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを31.24g(0.2mol)、N,N−ジメチルアクリルアミドを29.74g(0.3mol)使用するようにし、それ以外は、上記の実施例9の場合と同様にして、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として淡黄色固体からなるN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミドとの共重合物を51.5g得た。
【0089】
ここで、上記のようにして得たN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミドとの共重合物に2NのHCl溶液を過剰に加えてアミノ基との反応を完結させた後、残存したHClを0.1NのNaOH溶液を用いて逆適定を行った結果、4級化可能なアミノ基の含有率は3.0mmol/gであり、また上記の共重合物におけるN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミドとのモル組成比が0.36:0.64であることがわかった。
【0090】
次いで、上記のようにして得たN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミドとの共重合物5.73g(4級化可能なアミノ基0.0172mol)と、水酸化ナトリウム0.0172molとを蒸留水72.43gに溶解させ、これらを攪拌しながら、これにハロゲン化カルボン酸として、4−ブロモブタン酸を0.0172molを加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌させて反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を得た。
【0091】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例20のインクジェット記録用インクを調製した。
【0092】
(実施例21〜25)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例20と同じN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドとN,N−ジメチルアクリルアミドとの共重合物を用いる一方、この共重合物と反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例20の場合と変更し、実施例21においては6−ブロモヘキサン酸0.0172molを、実施例22においては2−ブロモプロパン酸0.0172molを、実施例23においては3−ブロモブタン酸0.0172molを、実施例24においては3−ブロモプロパン酸0.0086molと2−ブロモプロパン酸0.0086molとを、実施例25においては2−ブロモプロパン酸0.0086molと8−ブロモオクタン酸0.0086molとを使用し、それ以外については、上記の実施例20の場合と同様にして、実施例21〜25の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0093】
次いで、上記のように調製した実施例20〜25の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表3に示した。
【0094】
【表3】
【0095】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例20〜25に示す各インクジェット記録用インクも、前記の比較例1〜3の各インクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0096】
(実施例26)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたり、ラジカル重合性モノマーとして、上記のN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド(興人社製)と、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製:PME−200)とを用い、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドを17.03g(0.1mol)、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートを110.4g(0.4mol)使用するようにし、それ以外は、上記の実施例1の場合と同様にして、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として粘性液体からなるN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとの共重合物を90g得た。
【0097】
ここで、上記のようにして得たN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとの共重合物に2NのHCl溶液を過剰に加えてアミノ基との反応を完結させた後、残存したHClを0.1NのNaOH溶液を用いて逆適定を行った結果、4級化可能なアミノ基の含有率は0.56621mmol/gであり、また上記の共重合物におけるN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとのモル組成比が0.147:0.853であることがわかった。
【0098】
そして、上記のようにして得たN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとの共重合物17.66g(4級化可能なアミノ基0.010mol)と、水酸化ナトリウム0.01molとを蒸留水72.43gに溶解させ、これらを攪拌しながら、これにハロゲン化カルボン酸として、4−ブロモブタン酸を0.01mol加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌させて反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を得た。
【0099】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例26のインクジェット記録用インクを調製した。
【0100】
(実施例27〜31)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例26と同じN,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミドとメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートとの共重合物を用いる一方、この共重合物と反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例26の場合と変更し、実施例27においては6−ブロモヘキサン酸0.01molを、実施例28においては2−ブロモプロパン酸0.01molを、実施例29においては2−ブロモブタン酸0.01molを、実施例30においては3−ブロモプロパン酸0.005molと2−ブロモプロパン酸0.005molとを、実施例31においては2−ブロモプロパン酸0.005molと8−ブロモオクタン酸0.005molとを使用し、それ以外については、上記の実施例26の場合と同様にして、実施例27〜31の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0101】
次いで、上記のように調製した実施例26〜31の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表4に示した。
【0102】
【表4】
【0103】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例26〜31に示す各インクジェット記録用インクも、前記の比較例1〜3の各インクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0104】
(実施例32)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有する樹脂組成物を得るにあたり、ジアミン成分として1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジンを2.00g(0.01mol)、重量平均分子量Mwが1000のポリエチレングリコールジアミン(広栄化学工業社製:PEGPA−1000)を20g(0.02mol)、ジイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネートを6.54g(0.0294mol)用い、これらを66.6gのジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す。)に加え、これを50〜60℃に加熱し7時間撹拌して反応させ、得られた反応生成物をアセトン1800mlを用いて2回再沈殿させて精製した。
【0105】
そして、この反応生成物を85℃で2.5時間真空乾燥させて、4級化可能なアミノ基を有するゴム状固体になったポリウレアを13.3g得た。
【0106】
次に、上記のようにして得たポリウレア2.0g(4級化可能なアミノ基0.0140mol)を21.16gの蒸留水中に加え、これにハロゲン化カルボン酸として、3−ブロモプロパン酸を2.14g(0.0140mol)、水酸化ナトリウムを0.0140mol加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌して反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を得た。
【0107】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物を主とする固形分が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例32のインクジェット記録用インクを調製した。
【0108】
(実施例33〜37)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有する樹脂組成物として、上記の実施例32と同じ4級化可能なアミノ基を有するポリウレアを用いる一方、このポリウレアと反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例32の場合と変更し、実施例33においては4−ブロモブタン酸0.014molを、実施例34においては6−ブロモヘキサン酸0.014molを、実施例35においては2−ブロモプロパン酸0.014molを、実施例36においては2−ブロモブタン酸0.014molを、実施例37においては3−ブロモプロパン酸0.007molと2−ブロモプロパン酸0.007molとを使用し、それ以外については、上記の実施例32の場合と同様にして、実施例33〜37の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0109】
(比較例4,5)
これらの比較例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有する樹脂組成物として、上記の実施例32と同じ4級化可能なアミノ基を有するポリウレアを用いる一方、このポリウレアと反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例32の場合と変更し、比較例4においては11−ブロモウンデカン酸を、比較例5においては2−ブロモオクタン酸を使用し、それ以外については、上記の実施例32の場合と同様にして、比較例4,5の各インクジェット記録用インクを調製した。なお、比較例4において得られた両性イオン基を有する高分子化合物は、前記の一般式(1)におけるnが10であり、また比較例5において得られた両性イオン基を有する高分子化合物は、前記の一般式(2)におけるmが6であった。
【0110】
次いで、上記のように調製した実施例32〜37及び比較例4,5の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表5に示した。
【0111】
【表5】
【0112】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例32〜38に示す各インクジェット記録用インクは、前記の化1に示す条件を満たしていない両性イオン基を有する高分子化合物が含有された比較例4,5のインクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0113】
(実施例38)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有する樹脂組成物を得るにあたり、ジアミン成分として、重量平均分子量Mwが1000のポリエチレングリコールジアミン(広栄化学工業社製:PEGPA−1000)を40g(0.04mol)、メチルイミノビスプロピルアミンを5.8g(0.04mol)、ジイソシアネート成分としてイソホロンジイソシアネートを17.42g(0.0784mol)用い、これらを108gのDMFに加え、これを50〜60℃に加熱し、4時間撹拌して反応させ、得られた反応生成物をアセトン1800mlを用いて2回再沈殿させて精製した。
【0114】
そして、この反応生成物を80℃で4時間真空乾燥させて、4級化可能なアミノ基を有するゴム状固体になったポリウレアを47.9g得た。
【0115】
次に、上記のようにして得たポリウレア3.77g(4級化可能なアミノ基0.024mol)を21.16gの蒸留水中に加え、これにハロゲン化カルボン酸として、3−ブロモプロパン酸を0.024mol、水酸化ナトリウムを0.024mol加え、これを40〜50℃に加熱し4時間攪拌して反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を得た。
【0116】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例38のインクジェット記録用インクを調製した。
【0117】
(実施例39〜41)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有する樹脂組成物として、上記の実施例38と同じ4級化可能なアミノ基を有するポリウレアを用いる一方、このポリウレアと反応させるハロゲン化カルボン酸を上記の実施例38の場合と変更し、実施例39においては4−ブロモブタン酸0.024molを、実施例40においては6−ブロモヘキサン酸0.024molを、実施例41においては2−ブロモプロパン酸0.024molを使用し、それ以外については、上記の実施例38の場合と同様にして、実施例39〜41の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0118】
次いで、上記のように調製した実施例38〜41の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表6に示した。
【0119】
【表6】
【0120】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例38〜41に示す各インクジェット記録用インクは、前記の化1に示す条件を満たしていない両性イオン基を有する高分子化合物が含有された比較例4,5のインクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0121】
(実施例42)
この実施例においては、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を得るにあたり、ラジカル重合性モノマーに、上記の実施例1の場合と同じ4級化可能なアミノ基を有するN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミドを用いて、ポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を得た。
【0122】
そして、上記のようにして得たポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)における4級化可能なアミノ基を4級化させるにあたり、ラクトン類としてβ−プロピオラクトンを用い、このβ−プロピオラクトンと上記のポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)とを有機溶媒中において、下記の化13に示すように反応させ、両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を得た。
【0123】
【化13】
【0124】
そして、上記の両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例42のインクジェット記録用インクを調製した。
【0125】
(実施例43〜46)
これらの実施例においては、両性イオン基を有する高分子化合物を得るにあたり、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物として、上記の実施例42と同じ4級化可能なアミノ基を有するポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)を用いる一方、このポリ(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)と反応させるラクトン類を上記の実施例42の場合と変更し、実施例43においてはα−メチル−γ−ブチロラクトンを、実施例44においてはβ−ブチロラクトンを、実施例45においてはγ−カプロラクトンを、実施例46においてはδ−オクタノラクトンを用い、それ以外については、上記の実施例42の場合と同様にして、実施例43〜46の各インクジェット記録用インクを調製した。
【0126】
次いで、上記のように調製した実施例42〜46の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表7に示した。
【0127】
【表7】
【0128】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たした両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例42〜46に示す各インクジェット記録用インクにおいても、前記の化1に示す条件を満たしていない両性イオン基を有する高分子化合物が含有された比較例1,2のインクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0129】
(実施例47)
この実施例においては、先ずN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド(興人社製:DMAPAA)151.4g(0.969mol)をアセトン200mlに溶解させ、これを氷浴で0℃に冷却し、これを攪拌しながら0〜10℃の温度でβ−プロピオラクトン(和光純薬工業社製)69.83g(0.969mol)をアセトン80mlに溶解させた溶液を1時間かけて滴下した。
【0130】
そして、これを約10℃で24時間放置すると白色の沈殿物が生成し、この沈殿物を濾取し、アセトンで洗浄した後、60℃で4時間真空乾燥させ、両性イオン基を含有する白色のビニルモノマーを202g得た。
【0131】
また、スチレンと無水マレイン酸とを1:1のモル比で共重合させたスチレン−無水マレイン酸共重合体(藤井義通商社製:SMA1000P)10g(酸無水物基0.0495mol)をアセトン500mlに溶解させ、これに2−メルカプトエチルアミン7.72g(0.1mol)の水溶液を30ml加え、室温で48時間反応させた後、この溶液を希塩酸中に投入して中和させ、白色の沈殿物を得、この沈殿物を濾取し水洗した後、この沈殿物をアセトンに溶解させ、再度水で沈殿させた後、この沈殿物を濾取し、65℃で4時間真空乾燥させてメルカプト基を有するラジカル重合体4.44gを得た。なお、このメルカプト基を有するラジカル重合体においては、0.1NのNaOH溶液による中和滴定によって、導入されたメルカプト基の割合が3.37mmol/gであることが分かった。
【0132】
そして、蒸留水194.02gに、上記のメルカプト基を有するラジカル重合体2.849g(メルカプト基0.0096mol)と水酸化ナトリウム0.384g(0.0096mol)とを加え、これに上記の両性イオン基を含有するビニルモノマーを45.656g(0.20mol)加えて溶解させ、窒素気流中において78℃に加熱し、撹拌しながらアゾ系のラジカル重合開始剤であるVA−044(和光純薬工業製)を0.0004mol加え、これを攪拌しながら74〜83℃の温度で4時間加熱し、両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された無色透明な粘性の水溶液を得た。
【0133】
そして、100ml容器内に、上記の両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を12.5g、カーボンブラック(Degussa AG製:Printex70)を2.5g、蒸留水を35g投入すると共に、直径2mmのガラスビーズを25gを入れて密封し、これをペイントコンディショナーを用いて1時間振とうさせて顔料分散水溶液を得た。
【0134】
次いで、この顔料分散水溶液を60.0g、グリセリンを5.3g、イソプロピルアルコールを2.0g、NaHCO3 を0.2g、防黴剤であるプロキセルを0.3g、蒸留水を32.2gの割合で混合して、実施例47のインクジェット記録用インクを調製した。
【0135】
(実施例48)
この実施例においては、蒸留水352mlと、N,N−ジメチルアクリルアミド91.9g(0.927mol)と、過硫酸カリウム7.5g(28mmol)と、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル5.6g(33mmol)とを反応容器内に入れ、これらを撹拌しながら反応容器内を減圧して乾燥したアルゴンで置換させ、この操作を5回繰り返して、水溶液中における溶存酸素を除いた。
【0136】
そして、上記の水溶液を65℃に加熱し、これに亜硫酸水素ナトリウムを2.9g(28mmol)を加え、この温度で10時間撹拌して、高分子の末端に4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが導入されたポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)の水溶液を得た。
【0137】
次いで、別の反応容器内に、上記のポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)の水溶液230gと、上記の実施例47において用いたのと同じ両性イオン基を含有するビニルモノマー75.35g(0.33mol)と、蒸留水302mlとを加えて混合し、アルゴン雰囲気下において65℃で10時間反応させ、両性イオン基を有するブロック共重合体からなる高分子化合物が20重量%含有された水溶液を得た。
【0138】
そして、上記のようにして得た両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例1の場合と同様にして、実施例48のインクジェット記録用インクを調製した。
【0139】
(実施例49)
この実施例においては、上記の実施例48と同様にして得た両性イオン基を有するブロック共重合体からなる高分子化合物が20重量%含有された水溶液を用い、上記の実施例2の場合と同様にして、実施例49のインクジェット記録用インクを調製した。
【0140】
(比較例6)
この比較例においては、上記の実施例47において用いた両性イオン基を有する高分子化合物が20重量%含有された水溶液に代えて、市販の顔料分散剤(ジョンソンポリマー社製:Joncryl63)を用い、それ以外は、上記の実施例47と同様にして顔料分散水溶液を得た。
【0141】
そして、この顔料分散水溶液を60.0g、グリセリンを5.3g、イソプロピルアルコールを2.0g、NaHCO3 を0.2g、防黴剤であるプロキセルを0.3g、蒸留水を32.2gの割合で混合して、比較例6のインクジェット記録用インクを調製した。
【0142】
次いで、上記のようにして調製した実施例47〜49及び比較例6の各インクジェット記録用インクについても、上記の実施例1〜8及び比較例1〜3の場合と同様にして、ノズルからの吐出安定性を評価し、その結果を下記の表8に示した。
【0143】
【表8】
【0144】
この結果から明らかなように、前記の化1に示す条件を満たす両性イオン基を有する高分子化合物を含有させた実施例47〜49の各インクジェット記録用インクは、このような両性イオン基を有する高分子化合物に代えて市販の顔料分散剤を用いた比較例4のインクジェット記録用インクに比べて吐出安定性が向上していた。
【0145】
【発明の効果】
以上詳述したように、この発明におけるインクジェット記録用インクにおいては、少なくとも色材と水とを有するインクジェット記録用インクに、前記の化1に示す一般式(1)〜(3)で示される少なくとも1種の両性イオン基を有する高分子化合物を含有させるようにしたため、この両性イオン基を有する高分子化合物により、このインクジェット記録用インクの記録媒体に対する定着性が向上すると共に、このインクジェット記録用インクが凝集するのが抑制され、このインクジェット記録用インクをインク吐出ヘッドから安定して吐出できるようになった。
Claims (4)
- 請求項1に記載したインクジェット記録用インクにおいて、上記の両性イオン基を有する高分子化合物の原料に、4級化可能なアミノ基を有するラジカル重合物を用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 請求項1に記載したインクジェット記録用インクにおいて、上記の両性イオン基を有する高分子化合物の原料に、4級化可能なアミノ基を有するポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステルから選択される少なくとも1種の樹脂組成物を用いたことを特徴とするインクジェット記録用インク。
- 請求項1に記載したインクジェット記録用インクにおいて、上記の両性イオン基を有する高分子化合物は、両性イオン基を有する第1のラジカル重合物が、第2のラジカル重合物にグラフトされてなることを特徴とするインクジェット記録用インク。
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