JP2010018774A - 水性インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 - Google Patents

水性インク組成物、インクセット、及び画像形成方法 Download PDF

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Abstract

【課題】従来にない良好な保存安定性と画像定着性とを有する水性インク組成物を提供する。
【解決手段】水性インク組成物に、着色剤を含む水不溶性着色粒子と、平均粒子径が15nm〜80nmである自己分散ポリエステルと、水性媒体とを含有させる。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インク組成物、インクセット、及び画像形成方法に関する。
インクジェット記録方法は、インクジェットヘッドに形成された多数のノズルからそれぞれインク滴を打滴することによって記録を行うものであり、記録動作時の騒音が低く、ランニングコストが安く、多種多様な記録媒体に対して高品位な画像を記録できることなどから幅広く利用されている。
ところで、インクジェット用インクでは、黒色インクにカーボンブラック顔料が使用されているが、カラーインクにおいては水溶性染料が中心的であり、耐候性(耐光性、耐オゾン性、耐水性)の改良が求められている。特に、印刷分野への応用を考えた場合、耐候性の改善は特に重要である。顔料は、その高い結晶性に起因して本質的に堅牢性が高く、耐光性、耐水性は染料に比べて格段に優れている。しかしながら、ノズル部の目詰まり等による吐出性、凝集沈降などの保存安定性や、さらに粒子が記録媒体表面に留まるために耐擦性や光沢性といった印字物の定着性が悪くなるなど、課題が残されている。
このような現状において本発明の課題は、インクジェット用インクの吐出性、定着性、保存安定性を改良させることである。
吐出性向上、インク保存安定性向上技術として、顔料と、特定のジオール誘導体と特定の界面活性剤、自己乳化型水分散性ポリエステル樹脂を含有することを特徴とする水性インク組成物が開示されている(例えば、特許文献1参照)。かかる水性インク組成物においては、ポリエステル樹脂粒子が親水性基を表面に有することにより、界面活性剤無しで水中に乳化分散しているので、分散安定性に優れているとされている。また造膜性が高いため、紙への顔料粒子の固着性に優れ、耐擦過性が良好であるとされている。
また、ポリエステル樹脂を有機溶剤に溶解し、攪拌下、系中に水を添加することにより、転相、自己乳化させることを特徴とするポリエステル樹脂水分散体の製造方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。該製造方法は、(1)水の添加速度、(2)ポリエステル樹脂が結晶融点を有しない非晶性であること、ならびに(3)ポリエステル樹脂溶解時の溶剤が、有機良溶剤と有機貧溶剤の混合溶剤であることを特徴としている。この製造方法によれば、粒度分布の狭い水分散体を得ることができ、保存安定性が良好であり、更には塗工適性が良好な実用性の高いポリエステル樹脂水分散体が得られるとされている。
さらに、ポリマー粒子分散物(ラテックス)の製造方法として、α,β−不飽和カルボン酸を含む疎水性ビニル系単量体混合物を有機溶媒中で重合し、得られた重合体含有溶液から有機溶媒を除去し、次いで水及び塩基性物質を添加することによって得られるビニル系の水性乳化重合体の存在下に、乳化重合してエマルションとする方法が知られている(例えば、特許文献3参照)。
特開2006−241286号公報 特開2007−277495号公報 特開2006−249282号公報
しかしながら、特許文献1には、自己乳化型水分散性ポリエステル樹脂に関しての製造方法に関する記載が何らなされておらず、市販の自己乳化型水分散性ポリエステル樹脂を用いているに過ぎない。そのため、特許文献1の段落番号[0038]でも触れられているように、吐出性に影響を与えるインク粘度やインク保存安定性の観点から、ポリエステル樹脂の添加量の上限値が低くなり、ポリエステル樹脂の添加による十分な効果の発現が期待できない場合があった。
また、特許文献2に記載の製造方法では、転相乳化時に使用される混合溶剤における有機貧溶剤の割合を25質量%以下と低くする必要がある。そのため有機貧溶剤を使用することによって発現する効果が薄く、分散安定性の高い水分散体を製造するのは困難な場合があった。また、特許文献2の段落番号[0042]に記載されているように、ポリエステル粒子の粒子径の下限は60nm、好ましくは下限80nm程度(更に、実施例では90nm〜350nm)であり、そのため十分な保存安定性を得ることができないという問題点があった。
また特許文献3に記載の製造法で得られるエマルションをインクジェットインクに適用した場合、樹脂粒子のTgが低く、画像の耐ブロッキング性が十分であるとは言えない場合があった。さらに、該特許文献に記載の方法によって製造されたカルボキシル基含有共重合体では、得られる複合化ポリマーエマルションの安定性が低い場合があり、吐出性やインク安定性の点でインクジェットインクへの適用は困難であった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、従来にない良好な保存安定性と画像定着性とを有する水性インク組成物及びインクセットを提供すると共に、該水性インク組成物又は該インクセットを用いた画像記録方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 着色剤を含む水不溶性着色粒子と、平均粒子径が15nm〜80nmである自己分散ポリエステルと、水性媒体と、を含む水性インク組成物。
<2> 前記自己分散ポリエステルは、固体粒子状態で前記水性媒体中に分散している、前記<1>に記載の水性インク組成物。
<3> 前記自己分散ポリエステルは、前記自己分散ポリエステルを溶解する有機良溶剤と、含有率が30質量%以上70質量%以下の前記自己分散ポリエステルを溶解しない有機貧溶剤と、を含む混合溶剤に、前記自己分散ポリエステルを溶解して溶液を得る工程と、前記溶液に、攪拌下、水を添加することにより、前記自己分散ポリエステルを自己分散させる工程と、を含む製造方法で製造された自己分散ポリエステル分散物である、前記<1>または<2>に記載の水性インク組成物。
<4> 前記自己分散ポリエステルは、ビニルポリマーと複合した複合粒子として含まれている前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
<5> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の水性インク組成物の少なくとも1種を含むインクセット。
<6> 前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の水性インク組成物、または前記<5>に記載のインクセットを用いて、被記録媒体上に、前記水性インク組成物を付与するインク付与工程を含む画像形成方法。
本発明によれば、従来にない良好な保存安定性と画像定着性とを有する水性インク組成物及びインクセットを提供すると共に、該水性インク組成物又は該インクセットを用いた画像記録方法を提供することができる。
自己分散ポリエステル分散物の走査透過電子顕微鏡写真である。
<水性インク組成物>
本発明の水性インク組成物は、着色剤を含む水不溶性着色粒子の少なくとも1種と、平均粒子径が15nm〜80nmである自己分散ポリエステルの少なくとも1種と、水性媒体と、を含有する。特定の平均粒子径を有する自己分散ポリエステルを含有することで、インク組成物の保存安定性に優れ、形成された画像の定着性が向上する。さらに本発明の水性インク組成物は、例えば、インクジェット方式の画像記録方法に適用する場合には、優れた吐出安定性を示すことができる。
本発明の水性インク組成物は、単色の画像形成のみならず、フルカラーの画像形成に用いることができる。フルカラー画像を形成するために、マゼンタ色調インク、シアン色調インク、及びイエロー色調インクを用いることができ、また、色調を整えるために、更にブラック色調インクを用いてもよい。また、イエロー、マゼンタ、シアン色調インク以外のレッド、グリーン、ブルー、白色インクやいわゆる印刷分野における特色インク(例えば無色)等を用いることができる。
[自己分散ポリエステル]
本発明における自己分散ポリエステルは、平均粒子径が15nm〜80nmであることを特徴とする。ここでいう自己分散ポリエステルの平均粒子径とは、自己分散ポリエステルを水分散物とした状態で、動的光散乱法を用いて測定した平均粒子径を意味し、マイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)を用いて測定した体積平均粒子径である。
前記自己分散ポリエステルは水性媒体における分散状態が安定である。そのため、前記自己分散ポリエステルを含む水性インク組成物は、従来にない安定な吐出性と良好な定着性とを有する。
本発明の自己分散ポリエステルは、水分散物とした時の平均粒子径が15nm〜80nmであるが、15nm〜70nmであることが好ましく、15nm〜60nmであることがより好ましい。
15nm未満の平均粒子径では製造適性が低下する。また、水への溶解性成分量が増加して水分散体の粘度が高くなり、吐出性の観点から水性インク組成物に適さない。
一方、平均粒子径が80nmを超える場合には、ポリマー粒子同士の融着やミクロンサイズの粗大粒子数が増加し、安定な分散状態を維持することが困難になる。そのような場合、例えば、水性インク組成物に含有させた場合にインク保存安定性が悪化し、吐出安定性が著しく悪化するなどの弊害が生じる。
また、本発明における自己分散ポリエステル分散物の粒子径分布については特に制限はなく、広い粒子径分布であっても、狭い粒子径分布であってもよい。また、単一ピークの粒子径分布であっても、複数ピークの粒子径分布であってもよい。本発明においては、保存安定性と吐出安定性の観点から、単一ピークの粒子径分布であることが好ましく、単一ピークの狭い粒子径分布であることがより好ましい。
本発明において自己分散ポリエステルとは、界面活性剤の不存在下、ポリエステル自身の官能基(特に酸性基又はその塩)によって、水性媒体中で分散状態となりうるポリエステル樹脂をいう。ここで分散状態とは、水性媒体中にポリエステル樹脂が液体状態で分散された乳化状態(エマルション)、及び、水性媒体中にポリエステル樹脂が固体状態で分散された分散状態(サスペンション)の両方の状態を含むものである。
本発明の水性インク組成物に含有される自己分散ポリエステルは、インク定着性の観点から、ポリエステル樹脂が固体状態で分散された分散状態となりうる自己分散ポリエステル(水不溶性粒子)であることが好ましい。
本発明の自己分散ポリエステルにおける乳化又は分散状態とは、自己分散ポリエステル樹脂30gを70gの有機溶剤(後述)に溶解した溶液、該水不溶性ポリマーの塩生成基を100%中和できる中和剤、及び水200gを混合、攪拌(装置:攪拌羽根付き攪拌装置、回転数200rpm、30分間、25℃)した後、該混合液から該有機溶剤を除去した後でも、乳化又は分散状態が、25℃で、少なくとも1週間安定に存在することを目視で確認することができる状態をいう。
本発明における自己分散ポリエステル分散物は、自己分散ポリエステルを溶剤中に溶解して自己分散ポリエステル溶液を得る工程と、前記自己分散ポリエステル溶液に界面活性剤を添加せずに、該溶液をそのまま水中に投入、または、該溶液に水を投入し、自己分散ポリエステルが有する塩生成基を中和した状態で、攪拌、混合する工程と、前記溶剤を除去する工程とを含む、自己分散ポリエステル分散物の製造方法で、乳化又は分散状態となることが好ましい。
このような製造方法により、平均粒子径が15〜80nmの範囲であって、分散安定性の良好な自己分散ポリエステル分散物を得ることができる。
本発明における水分散体を作製する過程において、ポリエステル樹脂を溶解する際に用いる溶剤としては、n−ブタノール、イソプロピルアルコール、ジアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール、メチルエチルケトン、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,3−オキソラン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、などを用いることができる。特にこれらの中でも、沸点が100℃以下であるメチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、イソプロピルアルコールが好ましい。これらを用いることで後工程の溶剤除去工程において、系内に残存する溶剤を短時間で低減することができる。本発明において、上記溶剤は2種以上併用することが好ましい。
また、本発明における自己分散ポリエステル分散物は、自己分散ポリエステル樹脂を、自己分散ポリエステル樹脂を溶解する有機良溶剤と溶解しない有機貧溶剤との混合溶剤に溶解して溶液を得る工程と、該溶液に、攪拌下、水を添加する分散工程とを含む自己分散ポリエステル分散物の製造方法によって得られることが好ましく、前記混合溶剤中に含まれる有機貧溶剤の含有量が30質量%以上70質量%以下であることがより好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明における自己分散ポリエステル分散物の製造方法においては、前記分散工程の後に、混合溶剤を除去する溶剤除去工程を更に含むことが好ましい。
前記溶剤除去工程は、前記混合溶剤の少なくとも一部を除去することができれば、通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
有機貧溶剤の含有量が70質量%以下であることで、混合溶剤から樹脂が析出することを抑制することができる。また有機貧溶剤量が30質量%以上であると、油相から水相への転相の際の溶液の急激な極性変化を抑制することができる。これにより、樹脂の親水基同士の会合や疎水基同士の相互作用等による樹脂の析出や粒子同士の融着を抑制することができ、より安定な微粒子形成が可能になる。すなわち、混合溶剤中の有機貧溶剤の含有量が30質量%以上70質量%以下であると、油相から水相への転相がスムーズに行われ、より分散安定性の高い自己分散ポリエステル分散物を作製することができる。また、平均粒子径が15nm〜80nmの範囲の分散物を、より容易に調製することができる。
本発明において、自己分散ポリエステルを溶解する有機良溶剤とは、本発明における自己分散ポリエステル樹脂の溶解度が10質量%以上である水溶性の有機溶剤を意味する。また自己分散ポリエステルを溶解しない有機貧溶剤とは、本発明における自己分散ポリエステル樹脂の溶解度が10質量%未満である水溶性の有機溶剤を意味する。
本発明における有機良溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン系溶剤、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド系溶剤等を挙げることができ、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、沸点が100℃以下のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
尚、有機良溶剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明における有機貧溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、n−ブタノール、t-ブタノール、ジアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール等のアルコール系溶剤を挙げることができる。中でも、沸点が100℃以下のアルコール系溶剤であることが好ましい。
尚、有機貧溶剤は1種単独でも、2種以上を組合せて用いてもよい。
本発明における自己分散ポリエステル樹脂を溶解する混合溶剤としては、自己分散ポリエステル分散物の、平均粒子径と分散安定性の観点から、有機貧溶剤が含有率30〜70質量%のアルコール系溶剤であって、有機良溶剤が含有率70〜30質量%のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、有機貧溶剤が含有率30〜60質量%の沸点100℃以下のアルコール系溶剤であって、有機良溶剤が含有率70〜40質量%の沸点100℃以下のケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤から選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明における自己分散ポリエステル分散物を作製する過程においては、ポリエステル樹脂を中和する中和剤が用いられることが好ましい。中和剤は、自己分散ポリエステル樹脂の解離性基の一部又は全部を中和することで、自己分散ポリエステルが水性媒体中で安定した乳化又は分散状態を形成するために用いられる。
用いられる中和剤としては、例えば自己分散ポリエステル樹脂が酸性基を有する場合、有機アミン化合物、アンモニア、アルカリ金属の水酸化物等の塩基性化合物が挙げられる。有機アミン化合物の例としては、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチル−エタノールアミン、N,N−ジエチル−エタノールアミン、2−ジメチルアミノ−2−メチル−1−プロパノール、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等が挙げられる。アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。中でも、本発明の自己分散ポリマー粒子の水中への分散安定化の観点から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、トリエチルアミン、トリエタノールアミンが好ましい。
これらの中和剤(好ましくは、塩基性化合物)は、解離性基100モル%に対して、30〜150モル%使用することが好ましく、40〜120モル%であることがより好ましい。30モル%以上とすることで、水中での粒子の分散を安定化する効果が発現し、150モル%以下とすることで、樹脂の親水基同士の会合を抑制し、インク組成物とした時の適正なインク粘度が実現でき、吐出性がより良好になる。
本発明における自己分散ポリエステル分散物を作製する過程において、攪拌方法に特に制限は無く、一般に用いられる混合攪拌装置や、必要に応じて超音波分散機や高圧ホモジナイザー等の分散機を用いることができる。
本発明に用いられる自己分散ポリエステル樹脂としては、ポリカルボン酸成分と、ポリオール成分とを含むポリエステル原料を縮重合して得られるポリエステル樹脂を特に制限なく使用することができる。
ポリカルボン酸成分として、例えば2価のカルボン酸化合物を挙げることができる。2価のカルボン酸化合物として、例えば芳香族ジカルボン酸としてはテレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。また脂肪族カルボン酸としては、コハク酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデセニル無水コハク酸、ドデカンジカルボン酸、アゼライン酸等が挙げられる。脂環族ポリカルボン酸としては、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ダイマー酸等の脂環族ジカルボン酸が挙げられる。これらは1種または2種以上任意に使用できる。
また、上記ポリオール成分としては、例えば2価の脂肪族グリコールとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、トリエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、2−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、2−メチル−3−メチル−1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールなどが挙げられる。また、2価の芳香族構造を含むグリコールとしてビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物、p−キシレン−α,α’−ジオール、m−キシレン−α,α’−ジオールなどが挙げられる。
また、2価の脂環族グリコールとしては、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノール−A、ダイマージオールなどが挙げられる。
また、本発明の効果を損なわない範囲で、3価以上の、多価カルボン酸化合物やポリオール化合物を併用しても良い。3価以上のカルボン酸、その酸無水物又はその低級アルキルエステルとしては、例えば1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸等、又はこれらの酸の無水物もしくは低級アルキルエステル等が挙げられる。
また3価以上のポリオール化合物としては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が挙げられる。
本発明に用いられるポリエステル樹脂は、前記ポリエステル原料に含まれる原料モノマーを縮重合して得られるものであり、重合の方法としては、特に限定されることなく公知の方法が用いられる。
またポリエステル樹脂の縮重合を行う場合、重合触媒を用いても良い。重合触媒としては、例えば、錫化合物(ジブチル錫オキシドなど)、チタン化合物(テトラ−n−ブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート、チタンオキシアセチルアセトネートなど)、アンチモン化合物(トリブトキシアンチモン、三酸化アンチモンなど)、ゲルマニウム化合物(テトラ−n−ブトキシゲルマニウム、酸化ゲルマニウムなど)、亜鉛化合物(酢酸亜鉛など)などを挙げることができる。上記重合触媒は1種単独でも、又は2種以上を組合せて使用してもよい。
本発明に用いるポリエステル樹脂は水分散する際に水への親和力を高めるために親水性基を有することが必要である。前記親水性基としてはイオン性基等の極性基であることが好ましい。極性基としてはカルボキシル基、スルホニル基の塩が一般的であるが、本発明では粒度分布を狭くするという観点からカルボキシル基の塩を用いることが好ましい。
ポリエステル樹脂へのカルボキシル基の導入方法としては、樹脂を重合した後に常圧、窒素雰囲気下、無水トリメリット酸、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、無水コハク酸、1,8−ナフタル酸無水物、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸無水物、シクロヘキサン−1,2,3,4−テトラカルボン酸−3,4−無水物、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロ−3−フラニル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸無水物、ナフタレン1,8:4,5−テトラカルボン酸二無水物などから1種または2種以上を選択し、重縮合終了後に前記した酸無水物を添加する方法や樹脂を高分子量化する前のオリゴマー状態のものにこれらの酸無水物を投入し、次いで減圧下の重縮合により高分子量化することで、樹脂にカルボキシル基を導入する方法などがある。これらのうち、前者の方法が目標とする酸価が得られやすく好ましい。
本発明における自己分散ポリエステル樹脂は、酸性のイオン性基を有することが好ましい。その場合、自己分散ポリエステル樹脂の酸価(KOHmg/g)は、自己分散性、及び水性インク組成物を構成した場合の定着性の観点から、3以上70未満であることが好ましく、4以上65未満であることが好ましく、5以上60未満であることが好ましい。酸価が3以上であることにより、粒子をより安定に分散することができる。また、酸価が70未満であることにより、水への溶解性成分を少なくして親水基同士の融着を抑えることができる。
本発明における自己分散ポリエステル樹脂の重量平均分子量は、2000以上10万未満であることが好ましく、3000以上8万未満であることがさらに好ましい。重量平均分子量を2000以上とすることで水への溶解性成分を抑制して親水基同士の融着を抑えることができる。また、重量平均分子量を10万未満とすることで、自己分散安定性を高めることができる。
本発明における自己分散性ポリエステル分散物は、1種単独のポリエステル樹脂から構成されていても、2種以上のポリエステル樹脂の混合物から構成されていてもよい。
また、本発明における水性インク組成物における自己分散ポリエステルの含有量としては、画像の光沢性などの観点から、水性インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
[複合粒子]
本発明における自己分散ポリエステルは、ビニルポリマーと複合した複合粒子として水性インク組成物に含まれていることもまた好ましい。複合粒子として含まれることにより、インク組成物を用いて形成される画像の定着性がより効果的に向上し、良好な耐ブロッキング性を有する画像を形成することができる。
(ビニルポリマー)
本発明において複合粒子を構成するビニルポリマーとしては特に制限はなく、公知のビニルポリマーをもちいることができる。ビニルポリマー及びビニルポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−181549号公報及び特開2002−88294号公報に記載されているものを挙げることができる。また、解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する連鎖移動剤や重合開始剤、イニファーターを用いたビニルモノマーのラジカル重合や、開始剤或いは停止剤のどちらかに解離性基(あるいは解離性基に誘導できる置換基)を有する化合物を用いたイオン重合によって高分子鎖の末端に解離性基を導入したビニルポリマーも使用できる。
また複合粒子に含まれるビニルポリマーは、1種単独であっても、構造、共重合比、分子量などが異なる2種以上の混合物であってもよい。
本発明におけるビニルポリマーは、インク組成物を用いて形成された画像の定着性と耐ブロキング性の観点から、水不溶性のビニルポリマーであることが好ましい。
また本発明におけるビニルポリマーは、定着性と耐ブロッキング性の観点から、環状脂肪族基を有するアクリル系モノマーに由来する構成単位の少なくとも1種を含むことが好ましい。
本発明において環状脂肪族基を有するアクリル系モノマー(以下、脂環式(メタ)アクリレート」ということがある)とは、(メタ)アクリル酸に由来する構造部位と、アルコールに由来する構造部位とを含み、アルコールに由来する構造部位に、無置換または置換された環状脂肪族基を少なくとも1つ含む構造を有しているものである。尚、前記環状脂肪族基は、アルコールに由来する構造部位そのものであっても、連結基を介してアルコールに由来する構造部位に結合していてもよい。
尚、「(メタ)アクリレート」とは、メタクリレートまたはアクリレートを意味する。
環状脂肪族基としては、環状の非芳香族炭化水素基を含むものであれば特に限定はなく、単環式炭化水素基、2環式炭化水素基、3環式以上の多環式炭化水素基が挙げられる。
環状脂肪族基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基や、シクロアルケニル基、ビシクロヘキシル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、アダマンチル基、デカヒドロナフタレニル基、ペルヒドロフルオレニル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカニル基、およびビシクロ[4.3.0]ノナン等を挙げることができる。
前記環状脂肪族基は、更に置換基を有してもよい。該置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、水酸基、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、アルキルまたはアリールカルボニル基、およびシアノ基等が挙げられる。
また環状脂肪族基は、さらに縮合環を形成していてもよい。
本発明における環状脂肪族基としては、粘度や溶解性の観点から、環状脂肪族基部分の炭素数が5〜20であることが好ましい。
環状脂肪族基とアルコールに由来する構造部位とを結合する連結基としては、炭素数1から20までの、アルキル基、アルケニル基、アルキレン基、アラルキル基、アルコキシ基、モノまたはオリゴエチレングルコール基、モノまたはオリゴプロピレングリコール基などが好適なものとして挙げられる。
本発明における脂環式(メタ)アクリレートの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
単環式(メタ)アクリレートとしては、シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロブチル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘプチル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロノニル(メタ)アクリレート、シクロデシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル基の炭素数が3〜10のシクロアルキル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
2環式(メタ)アクリレートとしては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
3環式(メタ)アクリレートとしては、アダマンチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらは、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
これらのうち、複合粒子の分散安定性、定着性と耐ブロッキング性の観点から、2環式(メタ)アクリレート、または3環式以上の多環式(メタ)アクリレートを少なくとも1種であることが好ましく、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、およびジシクロペンタニル(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
本発明におけるビニルポリマーの分子量としては、吐出性と定着性の観点から、重量平均分子量で3000〜200万であり、好ましくは5000〜100万であり、より好ましくは1万〜100万である。
以下に、ビニルポリマーの具体例として、例示化合物C−01〜C−08を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、括弧内は共重合成分の質量比を表す。
・C−01:イソボルニルメタクリレート 重合体(100)
・C−02:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート ポリマー(40/60)
・C−03:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ベンジルメタクリレート ポリマー(30/65/5)
・C−04:メチルメタクリレート/ジシクロペンタニルメタクリレート/メタクリル酸 ポリマー(40/50/10)
・C−05:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート ポリマー(20/80)
・C−06:スチレン/ブチルアクリレート/アクリル酸 ポリマー(68/27/5)
・C−07:メチルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸 ポリマー(60/30/10)
・C−08:ベンジルメタクリレート/エチルアクリレート/メタクリル酸/ジメチルアミノエチルメタクリレート ポリマー(60/30/4/6)
前記複合粒子中の自己分散ポリエステルとビニルポリマーの含有比としては特に制限はないが、分散安定性と耐ブロッキング性の観点から、ビニルポリマーに対する自己分散ポリエステルの含有比(自己分散ポリエステル/ビニルポリマー)が、1/20〜5/1であることが好ましく、1/10〜2/1であることがより好ましい。
また本発明における複合粒子は、本発明の効果を損なわない範囲でビニルポリマー以外のポリマーをさらに含んでいてもよい。例えば、縮合系ポリマー(エポキシ樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、セルロース、ポリエーテル、ポリウレア、ポリイミド、ポリカーボネート等)を含むことができる。縮合系ポリマーと縮合系ポリマーを構成するモノマーの好適な例としては、特開2001−247787号公報に記載されているものを挙げることができる。
本発明における複合粒子の製造方法には特に制限はないが、前記自己分散ポリエステルの存在下で、ビニルポリマーを構成するモノマーの乳化重合を行う工程を含む製造方法であることが好ましい。
かかる複合粒子の製造方法においては、自己分散ポリエステルは、例えば、乳化剤成分として機能する。自己分散ポリエステルは、ビニルポリマーを構成することができる後述のエチレン性不飽和モノマーを含有する被乳化成分を液滴としたミセルを形成し、さらにラジカル重合開始剤をミセルに取り込んだ状態で重合を開始させることができる。つまり、自己分散ポリエステルは、水に不溶もしくは難溶のエチレン性不飽和モノマーに、水中における重合の場を提供することができるものである。
乳化重合には通常行なわれる方法を特に制限なく適用することができる。例えば、水性媒体(例えば、水など)にモノマー、重合開始剤、自己分散ポリエステル、および、必要に応じて水溶性重合連鎖移動剤などを加えて調製した乳化物を重合させることで行うことができる。
前記重合開始剤は、特に制限されるものではなく、無機過硫酸塩(例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなど)、アゾ系開始剤(例えば2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]など)、有機過酸化物(例えばペルオキシピバル酸−t−ブチル、t−ブチルヒドロペルオキシドなど)等を用いることができる。これらは単独でまたは2種以上を組合わせて使用することができる。
これらのうち、複合粒子の安定性の観点から、アゾ系開始剤、有機過酸化物を用いることが好ましい。
本発明における重合開始剤の使用量としては、全モノマーに対して、通常0.01〜2質量%であり、好ましくは0.2〜1質量%である。
また、水溶性重合連鎖移動剤としては、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドなどのジスルフィド類、四塩化炭素、四臭化炭素などのハロゲン化誘導体、2−エチルヘキシルチオグリコレート、α−メチルスチレンダイマーおよび水溶性連鎖移動剤としてのホスフィン酸ソーダが挙げられ、これらの1種または2種以上を使用することができる。
複合粒子の形成においては、乳化剤として自己分散ポリエステルを用いるが、自己分散ポリエステル以外の乳化剤を併用してもよい。併用できる乳化剤としては通常用いられる乳化剤を用いることができる。
本発明における乳化剤としての自己分散ポリエステルの使用量としては、複合粒子の凝集性の観点から、全モノマーに対して、2〜300質量%であることが好ましく、5〜100質量%であることがより好ましい。自己分散ポリエステルの使用量が2質量%以上であることにより、モノマーの乳化をより効率的に行うことができる。また、300質量%以下であることにより、得られる複合粒子の定着性をより良好にすることができる。
本発明における複合粒子は、分散安定性の観点から、体積平均粒径が15nm〜90nmであることが好ましく、15nm〜80nmであることがより好ましい。また複合粒子の粒径分布については特に制限はなく、広い粒子径分布であっても、狭い粒子径分布であってもよい。また、単一ピークの粒子径分布であっても、複数ピークの粒子径分布であってもよい。本発明においては、保存安定性と吐出安定性の観点から、単一ピークの粒子径分布であることが好ましく、単一ピークの狭い粒子径分布であることがより好ましい。
本発明における水性インク組成物中の複合粒子の含有量としては、画像の光沢性などの観点から、水性インク組成物に対して、1〜30質量%であることが好ましく、5〜15質量%であることがより好ましい。
[水不溶性着色粒子]
本発明における水不溶性着色粒子は、着色剤の少なくとも1種を含む。着色剤としては、公知の染料、顔料等を特に制限なく用いることができる。中でも、インク着色性の観点から、水に殆ど不溶であるか、又は難溶である着色剤であることが好ましい。具体的には例えば、各種顔料、分散染料、油溶性染料、J会合体を形成する色素等を挙げることができ、顔料であることがより好ましい。
本発明においては、水不溶性の顔料自体または分散剤で表面処理された顔料自体を水不溶性着色粒子とすることができる。
本発明における顔料としては、その種類に特に制限はなく、従来公知の有機及び無機顔料を用いることができる。例えば、アゾレーキ、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、ジケトピロロピロール顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化鉄系、カーボンブラック系等の無機顔料が挙げられる。また、カラーインデックスに記載されていない顔料であっても水相に分散可能であれば、いずれも使用できる。更に、上記顔料を界面活性剤や高分子分散剤等で表面処理したものや、グラフトカーボン等も勿論使用可能である。上記顔料のうち、特に、アゾ顔料、フタロシアニン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、カーボンブラック系顔料を用いることが好ましい。
本発明に用いられる有機顔料の具体的な例を以下に示す。
オレンジ又はイエロー用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ31、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー94、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等が挙げられる。
マゼンタまたはレッド用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド139、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド222C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。
グリーンまたはシアン用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントグリーン7、米国特許4311775記載のシロキサン架橋アルミニウムフタロシアニン等が挙げられる。
ブラック用の有機顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントブラック6、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。
−分散剤−
本発明における着色剤が顔料である場合、分散剤によって水系溶媒に分散されていることが好ましい。分散剤としては、ポリマー分散剤でも低分子の界面活性剤型分散剤でもよい。また、ポリマー分散剤としては水溶性の分散剤でも非水溶性の分散剤の何れでもよい。
前記低分子の界面活性剤型分散剤(以下、「低分子分散剤」ということがある)は、インクを低粘度に保ちつつ、有機顔料を水溶媒に安定に分散させる目的で添加することができる。ここでいう低分子分散剤は、分子量2000以下の低分子分散剤である。また、低分子分散剤の分子量は、100〜2000が好ましく、200〜2000がより好ましい。
前記低分子分散剤は、親水性基と疎水性基とを含む構造を有している。また、親水性基と疎水性基は、それぞれ独立に1分子に1以上含まれていればよく、また、複数種類の親水性基、疎水性基を有していてもよい。また、親水性基と疎水性基を連結するための連結基も適宜有することができる。
親水性基としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、あるいはこれらを組み合わせたベタイン型等を挙げることができる。
アニオン性基は、マイナスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、リン酸基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基、硫酸基、スルホン酸基、スルフィン酸基またはカルボン酸基であることが好ましく、リン酸基またはカルボン酸基であることがより好ましく、カルボン酸基であることがさらに好ましい。
カチオン性基は、プラスの電荷を有するものであれば特に制限はないが、有機のカチオン性置換基であることが好ましく、窒素またはリンを含むカチオン性基であることがより好ましく、窒素を含むカチオン性基であることが更に好ましい。中でも、ピリジニウムカチオン又はアンモニウムカチオンであることが特に好ましい。
ノニオン性基は、マイナスまたはプラスの電荷を有しないものであれば特に制限はない。例えば、ポリアルキレンオキシド、ポリグリセリン、糖ユニットの一部等が挙げられる。
本発明においては、顔料の分散安定性と凝集性の観点から、親水性基がアニオン性基であることが好ましい。
また、低分子分散剤がアニオン性の親水性基を有する場合、酸性の処理液と接触させて凝集反応を促進させる観点から、そのpKaは3以上であることが好ましい。本発明における低分子分散剤のpKaはテトラヒドロフラン:水=3:2(V/V)溶液に低分子分散剤1mmol/Lに溶解した液を酸あるいはアルカリ水溶液で滴定し、滴定曲線より実験的に求めた値のことである。
理論上、低分子分散剤のpKaが3以上であれば、pH3程度の処理液と接したときに、アニオン性基の50%以上が非解離状態になる。したがって、低分子分散剤の水溶性が著しく低下し、凝集反応が起こる。すなわち、凝集反応性が向上する。この観点から、低分子分散剤が、アニオン性基としてカルボン酸基を有していることが好ましい。
一方、疎水性基は、炭化水素系、フッ化炭素系、シリコーン系等のいずれの構造を有するものであってもよいが、特に、炭化水素系であることが好ましい。また、これらの疎水性基は、直鎖状構造又は分岐状構造のいずれであってもよい。また疎水性基は、1本鎖状構造、又は2本以上の鎖状構造でもよく、2本鎖状以上の構造である場合は、複数種類の疎水性基を有していてもよい。
また、疎水性基は、炭素数2〜24の炭化水素基が好ましく、炭素数4〜24の炭化水素基がより好ましく、炭素数6〜20の炭化水素基がさらに好ましい。
本発明におけるポリマー分散剤のうち水溶性分散剤としては、親水性高分子化合物を用いることができる。例えば、天然の親水性高分子化合物では、アラビアガム、トラガンガム、グアーガム、カラヤガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクトン、ペクチン、クインスシードデンプン等の植物性高分子、アルギン酸、カラギーナン、寒天等の海藻系高分子、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン等の動物系高分子、キサンテンガム、デキストラン等の微生物系高分子などが挙げられる。
また、天然物を原料として化学修飾した親水性高分子化合物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素系高分子、デンプングリコール酸ナトリウム、デンプンリン酸エステルナトリウム等のデンプン系高分子、アルギン酸プロピレングリコールエステル等の海藻系高分子などが挙げられる。
また、合成系の水溶性高分子化合物としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルメチルエーテル等のビニル系高分子、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、β−ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物のアルカリ金属塩、四級アンモニウムやアミノ基等のカチオン性官能基の塩を側鎖に有する高分子化合物等が挙げられる。
これらの中でも、顔料の分散安定性の観点から、カルボキシル基を含む高分子化合物が好ましく、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂等のアクリル系樹脂、水溶性スチレンマレイン酸樹脂、水溶性ビニルナフタレンアクリル樹脂、水溶性ビニルナフタレンマレイン酸樹脂等のようなカルボキシル基を含む高分子化合物が特に好ましい。
ポリマー分散剤のうち非水溶性分散剤としては、疎水性部と親水性部の両方を有するポリマーを用いることができる。例えば、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体等が挙げられる。
本発明におけるポリマー分散剤の重量平均分子量としては、3,000〜200,000が好ましく、より好ましくは5,000〜100,000、更に好ましくは5,000〜80,000、特に好ましくは10,000〜60,000である。
また、顔料と分散剤との混合質量比(顔料:分散剤)としては、1:0.06〜1:3の範囲が好ましく、1:0.125〜1:2の範囲がより好ましく、更に好ましくは1:0.125〜1:1.5である。
本発明において着色剤として染料を用いる場合には、染料を水不溶性の担体に保持したものを水不溶性着色粒子として用いることができる。染料としては公知の染料を特に制限なく用いることができ、例えば、特開2001−115066号公報、特開2001−335714号公報、特開2002−249677号公報等に記載の染料を本発明においても好適に用いることができる。また、担体としては、水に不溶または水に難溶であれば特に制限なく、無機材料、有機材料及びこれらの複合材料を用いることができる。具体的には、特開2001−181549号公報、特開2007−169418号公報等に記載の担体を本発明においても好適に用いることができる。
染料を保持した担体(水不溶性着色粒子)は、分散剤を用いて水系分散物として用いることができる。分散剤としては上述した分散剤を好適に用いることができる。
本発明における水不溶性着色粒子は、画像の耐光性や品質などの観点から、顔料と分散剤と含むことが好ましく、有機顔料とポリマー分散剤とを含むことがより好ましく、有機顔料とカルボキシル基を含むポリマー分散剤とを含むことが特に好ましい。
本発明において、水不溶性着色粒子の平均粒径としては、10〜200nmが好ましく、10〜150nmがより好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。平均粒径が200nm以下であることで色再現性が良好になり、インクジェット方式の場合には打滴特性が良好になる。また、平均粒径が10nm以上であることで、耐光性が良好になる。
また、水不溶性着色粒子の粒径分布に関しては、特に制限は無く、広い粒径分布又は単分散性の粒径分布のいずれであってもよい。また、単分散性の粒径分布を持つ水不溶性着色粒子を、2種以上混合して使用してもよい。
尚、水不溶性着色粒子の平均粒径及び粒径分布は、例えば、光散乱法を用いて測定することができる。
本発明において、上記水不溶性着色粒子は1種単独で、また2種以上を組合せて使用してもよい。
また、水不溶性着色粒子の含有量としては、画像濃度の観点から、水性インク組成物に対して、1〜25質量%であることが好ましく、2〜20質量%がより好ましく、5〜20質量%がさらに好ましく、5〜15質量%が特に好ましい。
さらに、本発明の水性インク組成物における水不溶性着色粒子と自己分散ポリエステルの含有比率(水不溶性着色粒子/自己分散ポリエステル)としては、画像の定着性、耐擦過性などの観点から、1/0.5〜1/10であることが好ましく、1/1〜1/4であることがより好ましい。
−水溶性有機溶剤−
本発明の水性インク組成物は、水性媒体を含む。前記水性媒体は少なくとも水を含み、水溶性有機溶剤を更に含むことができる。前記水溶性有機溶剤は乾燥防止剤、浸透促進剤として含有することができる。
乾燥防止剤は、特に、本発明の水性インク組成物をインクジェット方式による画像記録方法に適用する場合、インク噴射口におけるインクの乾燥によって発生し得るノズルの目詰まりを効果的に防止することができる。
乾燥防止剤は、水より蒸気圧の低い水溶性有機溶剤であることが好ましい。乾燥防止剤の具体的な例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、トリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、N−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能化合物、尿素誘導体等が挙げられる。中でも、乾燥防止剤としては、グリセリン、ジエチレングリコール等の多価アルコールが好ましい。また、上記の乾燥防止剤は単独で用いても、2種以上併用しても良い。これらの乾燥防止剤は、インク中に、10〜50質量%含有されることが好ましい。
また、浸透促進剤は、インクを記録媒体(印刷用紙)により良く浸透させる目的で、好適に使用される。浸透促進剤の具体的な例としては、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ジ(トリ)エチレングリコールモノブチルエーテル、1,2−ヘキサンジオール等のアルコール類やラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウムやノニオン性界面活性剤等を好適に用いることができる。これらの浸透促進剤は、インク組成物中に、5〜30質量%含有されることで、充分な効果を発揮する。また、浸透促進剤は、印字の滲み、紙抜け(プリントスルー)を起こさない添加量の範囲内で、使用されることが好ましい。
また、水溶性有機溶剤は、上記以外にも、粘度の調整に用いることができる。粘度の調整に用いることができる水溶性有機溶剤の具体的な例としては、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、グリコール誘導体(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングルコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ポリエチレンイミン、テトラメチルプロピレンジアミン)及びその他の極性溶媒(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、アセトニトリル、アセトン)が含まれる。
尚、水溶性有機溶剤は、単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
−その他の添加剤−
本発明におけるその他の添加剤としては、例えば、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、表面張力調整剤、消泡剤、粘度調整剤、分散剤、分散安定剤、防錆剤、キレート剤等の公知の添加剤が挙げられる。これらの各種添加剤は、水性インク組成物を調製後に直接添加してもよく、水性インク組成物の調製時に添加してもよい。
紫外線吸収剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。紫外線吸収剤としては、特開昭58−185677号公報、同61−190537号公報、特開平2−782号公報、同5−197075号公報、同9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、同56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、同8−53427号公報、同8−239368号公報、同10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。
褪色防止剤は、画像の保存性を向上させる目的で使用される。褪色防止剤としては、各種の有機系及び金属錯体系の褪色防止剤を使用することができる。有機の褪色防止剤としてはハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、ヘテロ環類などがあり、金属錯体としてはニッケル錯体、亜鉛錯体などがある。より具体的にはリサーチディスクロージャーNo.17643の第VIIのIないしJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を用いることができる。
防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン及びその塩等が挙げられる。これらは水性インク組成物中に0.02〜1.00質量%使用するのが好ましい。
pH調整剤としては、中和剤(有機塩基、無機アルカリ)を用いることができる。pH調整剤は水性インク組成物の保存安定性を向上させる目的で、該水性インク組成物がpH6〜10となるように添加するのが好ましく、pH7〜10となるように添加するのがより好ましい。
表面張力調整剤としては、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。
また、表面張力調整剤の添加量は、インクジェット方式で良好に打滴するために、水性インク組成物の表面張力を20〜60mN/mに調整する添加量が好ましく、20〜45mN/mに調整する添加量がより好ましく、25〜40mN/mに調整する添加量がさらに好ましい。一方、インクの付与をインクジェット方式以外の方法で行う場合には、20〜60mN/mの範囲が好ましく、30〜50mN/mの範囲がより好ましい。
水性インク組成物の表面張力は、例えば、プレート法を用いて測定することができる。
界面活性剤の具体的な例としては、炭化水素系では脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&ChemicaLs社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。
更に、特開昭59−157636号公報の第(37)〜(38)頁、リサーチディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも用いることができる。
また、特開2003−322926号、特開2004−325707号、特開2004−309806号の各公報に記載されているようなフッ素(フッ化アルキル系)系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等を用いることにより、耐擦性を良化することもできる。
また、これら表面張力調整剤は、消泡剤としても使用することができ、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、及びEDTAに代表されるキレート剤等、も使用することができる。
本発明の水性インク組成物の粘度としては、インクの付与をインクジェット方式で行う場合、打滴安定性と凝集速度の観点から、1〜30mPa・sの範囲が好ましく、1〜20mPa・sの範囲がより好ましく、2〜15mPa・sの範囲がさらに好ましく、2〜10mPa・sの範囲が特に好ましい。
また、インクの付与をインクジェット方式以外の方法で行う場合には、1〜40mPa・sの範囲が好ましく、5〜20mPa・sの範囲がより好ましい。
水性インク組成物の粘度は、例えば、ブルックフィールド粘度計を用いて測定することができる。
<インクセット>
本発明のインクセットは、前記水性インク組成物の少なくとも1種を含んで構成される。本発明のインクセットは、後述する水性インク組成物を用いる記録方法に用いられ、特にインクジェット記録方法に用いるインクセットとして好ましい。また、本発明のインクセットはこれらを一体的に若しくは独立に収容したインクカートリッジとして用いることができ、取り扱いが便利である点等からも好ましい。インクセットを含んで構成されるインクカートリッジは当技術分野において公知であり、公知の方法を適宜用いてインクカートリッジにすることができる。
<画像形成方法>
本発明の画像形成方法は、前記水性インク組成物又は前記インクセットを用いて、被記録媒体上に、前記水性インク組成物を付与するインク付与工程を含むものである。
水性インク組成物を付与する方法としては、特に制限はなく公知の方法を用いることができ、例えば、インクジェット方式、謄写方式、捺転方式等を挙げることができる。
本発明の水性インク組成物及びインクセットは、一般の筆記具用、記録計用、ペンプロッター用等に使用することができるが、インクジェット記録方法に用いることが特に好ましい。本発明のインクセット又はインクカートリッジを用いることができるインクジェット記録方法は、インク組成物を細いノズルから液滴として吐出させ、その液滴を記録媒体に付着させるいかなる記録方法も含む。本発明の水性インク組成物を用いることができるインクジェット記録方法の具体例を以下に説明する。
第一の方法は静電吸引方式とよばれる方法である。静電吸引方式は、ノズルとノズルの前方に配置された加速電極との間に強電界を印加し、ノズルから液滴状のインクを連続的に噴射させ、そのインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えることによって、インク滴を記録媒体上に向けて飛ばしてインクを記録媒体上に定着させて画像を記録する方法、又は、インク滴を偏向させずに、印刷情報信号に従ってインク滴をノズルから記録媒体上にむけて噴射させることにより画像を記録媒体上に定着させて記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの静電吸引方式による記録方法に用いることが好ましい。
第二の方法は、小型ポンプによってインク液に圧力を加えるとともに、インクジェットノズルを水晶振動子等によって機械的に振動させることによって、強制的にノズルからインク滴を噴射させる方法である。ノズルから噴射されたインク滴は、噴射されると同時に帯電され、このインク滴が偏向電極間を通過する間に印刷情報信号を偏向電極に与えてインク滴を記録媒体に向かって飛ばすことにより、記録媒体上に画像を記録する方法である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
第三の方法は、インク液に圧電素子によって圧力と印刷情報信号を同時に加え、ノズルからインク滴を記録媒体に向けて噴射させ、記録媒体上に画像を記録する方法(ピエゾ)である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
第四の方法は、印刷信号情報に従って微小電極を用いてインク液を加熱して発泡させ、この泡を膨張させることによってインク液をノズルから記録媒体に向けて噴射させて記録媒体上に画像を記録する方法(バブルジェット(登録商標))である。本発明のインクセット又はインクカートリッジはこの記録方法に用いることが好ましい。
本発明における被記録媒体としては特に制限はなく、例えば、普通紙、上質紙、塗工紙等を挙げることができる。
本発明のインクセット又はインクカートリッジは、上述した4つの方法を含むインクジェット記録方式による画像記録方法を用いて被記録媒体上に画像を記録する場合に特に好ましい。本発明の水性インク組成物またはインクセットを用いることで、従来にない吐出安定性で画像を形成することができる。
本発明の水性インク組成物またはインクセットを用いて記録された記録物は優れた画質を有し、さらに定着性に優れている。
次に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
[自己分散ポリエステル分散物の調製]
<参考例1>
テレフタル酸39.9g、ドデセニル無水コハク酸32.0g、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン68.8g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン63.2g、ジブチル錫オキシド0.68gを窒素導入管、脱水管、攪拌機を装備した1リットル容三つ口フラスコに入れ、250℃で7時間反応させた後、250℃で45Torrにて3時間減圧反応を行った。その後210℃まで降温させ、無水トリメリット酸7.3gを添加し再び3.5時間反応させポリエステル樹脂(B−a)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は35900(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算で算出、使用カラムはTSKgel SuperHZM−H、TSKgel SuperHZ4000、TSKgel SuperHZ200(東ソー社製))、酸価は18.6(mgKOH/g)であった。
次に、得られたポリエステル樹脂(B−a)30gをメチルエチルケトン(MEK)30gに完溶させ、その後イソプロピルアルコール(IPA)15gを添加した。次いで1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を9.9ml滴下して、87℃で加熱還流した。その後、攪拌しながら、水150mlを滴下して2時間加熱還流した後に有機溶剤を溜去し、固形分濃度が16.0質量%の自己分散ポリエステル(B−a)の水分散物(B−01)を得た。
<走査透過電子顕微鏡観察>
自己分散ポリエステル分散物(B−01)をメッシュ上に滴下、乾燥したものを観察試料とした。日立ハイテク社製S−5500(加速電圧30kV)で走査透過電子顕微鏡(STEM)観察を実施した。粒子サイズ測定は、観察したSTEM像からデジタイザー(KS−400)を用いて手動でN=100の粒子を抽出し、円相当径を測定した。その結果、自己分散ポリエステル分散物(B−01)の平均粒子径は26nmであった。STEM像を図1に示した。
<参考例2〜7>
参考例1の自己分散ポリエステル分散物(B−01)の合成において、自己分散過程における混合溶媒の種類及び量比(混合溶剤の総量は参考例1と同様)を表1に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして、自己分散ポリエステル分散物(B−02)〜(B−07)を得た。得られた(B−02)〜(B−07)の物性を表1に示した。
<参考例8>
特開2007−277495号公報の段落番号[0073][0080]に記載の自己分散ポリエステル分散物製造例において、[0080]中のメチルエチルケトンの添加量を92.5g、イソプロピルアルコール92.5gへと変更したこと、添加塩基を1mol/L水酸化ナトリウム水溶液29.6mlへと変更したこと、及び、添加イオン交換水量を430gへと変更したこと以外は全て同様にして、ポリエステル樹脂(B−b)を得、自己分散ポリエステル分散物(B−08)を調製した。得られた自己分散ポリエステル分散物(B−08)の物性を表1に示した。
<参考例9>
テレフタル酸39.9g、ドデセニル無水コハク酸32.0g、ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン68.8g、ポリオキシエチレン(2.0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン63.2g、ジブチル錫オキシド0.68gを窒素導入管、脱水管、攪拌機を装備した1リットル容三つ口フラスコに入れ、250℃で9時間反応させた後、250℃で6.3kPaにて3時間減圧反応を行った。その後210℃まで降温させ、無水トリメリット酸7.68gを添加し再び3.5時間反応させポリエステル樹脂(B−c)を得た。得られた樹脂の重量平均分子量は23100、酸価は21.3(mgKOH/g)であった。
次に、B−c(30g)をメチルエチルケトン(MEK)30gに完溶させ、その後イソプロピルアルコール15gを添加した。1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を11.3ml滴下して87℃で加熱還流した。その後、水150mlを滴下して2時間加熱還流した後に溶媒を溜去し、固形分18.4%、粒径26nmの自己分散ポリエステル(B−c)の水分散物(B−09)を得た。
<参考例10、11>
実施例9の自己分散ポリエステル分散物(B−09)の合成において、自己分散過程における混合溶媒の種類及び量比(混合溶剤の総量は参考例1と同様)を表1に示すように変更したこと以外は参考例9と同様にして、自己分散ポリエステル分散物(B−10)、(B−11)を得た。得られた(B−10)、(B−11)の物性を表1に示した。
<参考例12>
−複合粒子水分散物(B−12)の調製−
攪拌装置、還流冷却管を装着した1リットル三口フラスコに、樹脂分散物として上記で得られた自己分散ポリエステルの分散物(B−03)(固形分濃度20.0%)を60.0g、蒸留水12.4g、トリエチルアミン0.5gを入れ、窒素気流下70℃に加熱攪拌した。そこに、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.4g、蒸留水80gからなる水溶液を添加し、30分間攪拌した後、ビニルポリマーを構成するモノマーとしてイソボルニルメタクリレート12gからなるモノマー溶液を2時間で滴下が完了するように等速で滴下した。滴下完了後、2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩0.2g、蒸留水20gからなる水溶液を添加し、70℃で4時間攪拌した後、85℃に昇温して更に2時間攪拌を続けた。反応液を冷却し、濾過して、自己分散ポリエステル(B−a)とビニルポリマー(C−01)とを含有する複合粒子の水性分散物(B−12)を184.0g得た。得られた水性分散物の固形分濃度は13.0%、複合粒子の平均粒子径は65nm(粒子径はマイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)で測定した)、重量平均分子量(Mw)は10.1万であった。得られた複合粒子の水分散物(B−12)の物性を表2に示した。
<参考例13、14>
参考例12の複合粒子水分散物(B−12)の調製において、自己分散ポリエステル分散物の種類と添加量を下記表2に示す複合粒子の組成となるように変更し、ビニルポリマーを構成するモノマーの種類と添加量を以下に示すビニルポリマー(C−03、C−05)の組成となるようにそれぞれ変更したこと以外は参考例12と同様にして、複合粒子の水分散物(B−13)および(B−14)を得た。得られた水分散物(B−13)及び(B−14)の物性を表2に示した。
C−03:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート/ベンジルメタクリレート ビニルポリマー(30/65/5)
C−05:メチルメタクリレート/イソボルニルメタクリレート ビニルポリマー(20/80)
<比較参考例1>
特開2007−277495号公報の段落番号[0073][0080]に記載の自己分散ポリエステル分散物製造例に従って、自己分散ポリエステル分散物(BH−01)を得た。得られた(BH−01)の物性を表1に示した。
<比較参考例2〜4>
参考例1の自己分散ポリエステル分散物(B−01)の合成において、自己分散過程における混合溶媒の種類及び量比(混合溶剤の総量は参考例1と同様)を表1に示すように変更したこと以外は参考例1と同様にして、自己分散ポリエステル分散物(BH−02)〜(BH−04)を得た。得られた(BH−02)〜(BH−04)の物性を表1に示した。
<比較参考例5>
参考例1の自己分散ポリエステル分散物(B−01)の合成において、自己分散過程において添加するMEKを5g、IPAを40gへとそれぞれ変更して転相を試みたが、ポリエステル樹脂(B−a)を完全に溶解させることができず、水系への転相後も樹脂が析出したままであり、良好な分散状態の自己分散ポリエステル分散物を得ることができなかった。
<比較参考例6>
特開2006−249282号公報の段落番号[0055]の合成例1に従って、カルボキシル基含有ポリマー(DH−01)の水溶液を調製し、次いで同公報の段落番号[0061]の実施例1に従って、水不溶性ポリマー(CH−01)を含む複合粒子分散物(BH−06)を得た。複合粒子分散物BH−06の物性を表2に示す。
尚、表1、表2中の略語は以下の通りである。
MEK:メチルエチルケトン
IPA:イソプロピルアルコール
t−BuOH:t−ブチルアルコール
THF:テトラヒドロフラン
NaOH:水酸化ナトリウム
Amm:アンモニア水(2.8%溶液)
TEA:トリエチルアミン
表1、表2中、粒径は平均粒径であり、マイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)を用い、粒子透過性:透過、粒子屈折率:1.51、粒子形状:非球形、密度:1.2g/cm、溶媒:水、セル温度:18〜25℃条件において、体積平均粒子径を測定した値である。また、酸価はJIS K0070に従い測定したが、測定溶媒のみトルエン/アセトン(=1/1)混合溶媒に変更した。
また表2中の(B)/(C)は、複合粒子中におけるビニルポリマー(C)に対する、ポリエステル樹脂(B)またはアクリル系共重合体(BH−06)の含有比(質量基準)である。
<実施例1>
[水性インク組成物の調製]
《シアンインクC−1の調製》
(水不溶性着色粒子としてのシアン分散液の調液)
反応容器に、スチレン6部、ステアリルメタクリレート11部、スチレンマクロマーAS−6(東亞合成製)4部、プレンマーPP−500(日本油脂製)5部、メタクリル酸5部、2−メルカプトエタノール0.05部、メチルエチルケトン24部の混合溶液を調液した。
一方、スチレン14部、ステアリルメタクリレート24部、スチレンマクロマーAS−6(東亞合成製)9部、プレンマーPP−500(日本油脂製)9部、メタクリル酸10部、2−メルカプトエタノール0.13部、メチルエチルケトン56部及び2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部からなる混合溶液を調液し、滴下ロートに入れた。
次いで、窒素雰囲気下、反応容器内の混合溶液を攪拌しながら75℃まで昇温し、滴下ロート中の混合溶液を1時間かけて徐々に滴下した。滴下終了から2時間経過後、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)1.2部をメチルエチルケトン12部に溶解した溶液を3時間かけて滴下し、更に75℃で2時間、80℃で2時間熟成させ、ポリマー分散剤溶液を得た。
得られたポリマー分散剤溶液の一部について、溶媒を除去することによって単離し、得られた固形分をテトラヒドロフランにて0.1%に希釈し、GPCにて重量平均分子量を測定した。その結果、単離された固形分は、ポリスチレン換算の重量平均分子量が25,000であった。
また、得られたポリマー分散剤溶液を固形分換算で5.0g、シアン顔料ピグメントブルー15:3(大日精化製)10.0g、メチルエチルケトン40.0g、1mol/L水酸化ナトリウム8.0g、イオン交換水82.0g、0.1mmジルコニアビーズ300gをベッセルに供給し、レディーミル分散機(アイメックス製)で1000rpm6時間分散した。得られた分散液をエバポレーターでメチルエチルケトンが十分留去できるまで減圧濃縮し、顔料濃度が10%になるまで濃縮し、水不溶性着色粒子としてのシアン分散液C1を調液した。得られたシアン分散液C1の平均粒径は77nmであった。
そして、水不溶性着色粒子としてのシアン分散液C1と、自己分散ポリエステル分散物としてB−01を用いて、下記のインク組成になるようにインクを調液した。調液後5μmフィルターで粗大粒子を除去し、水性インク組成物としてシアンインクC−1を調製した。
〈シアンインクC−1のインク組成〉
・シアン顔料(ピグメントブルー15:3)大日精化製 4 %
・ポリマー分散剤 2 %
・B−01(固形分換算) 8 %
・ジエチレングリコール(和光純薬製) 10 %
・グリセリン 20 %
・オルフィンE1010(日信化学) 1 %
・イオン交換水 合計が100%となるように添加
《シアンインクC−2〜14、C−H1〜C−H4、C−H7の調製》
シアンインクC−1における自己分散ポリエステル分散物B−01の代わりに、下記表3に示した自己分散ポリエステル分散物または複合粒子分散物(以下、単に「水分散物」ということがある)をそれぞれ用いた以外はシアンインクC−1と同様の方法で、水性インク組成物のシアンインクC−2〜14、C−H1〜H4、C−H7をそれぞれ調製した。
《シアンインクC−H5〜C−H6の調製》
シアンインクC−1における自己分散ポリエステル分散物B−01の代わりに、BH−05(市販品:バイロナール、東洋紡績株式会社製、重量平均分子量25000、酸価3未満、粒径190nm)を用いた以外はシアンインクC−1と同様にして、水性インク組成物のシアンインクC−H5を調製した。
また、シアンインクC−1の調製において、自己分散ポリエステルB−01を添加しなかった以外はシアンインクC−1と同様にして、水性インク組成物C−H6を調製した。
上記で得られたシアンインクの調液直後の物性値を、表3に示す。
尚、平均粒径の測定は、マイクロトラックUPA EX−150(日機装(株)製)にて分散液を測定に適した濃度に適宜希釈し、測定条件は全て同じにした。即ち、粒子透過性:透過、粒子屈折率:1.51、粒子形状:非球形、密度:1.2g/cm、溶媒:水、セル温度:18〜25℃条件において、体積平均粒径を測定した。また、粘度はBROOKFIELD社製DV−II+VISCOMETERにて測定し、表面張力は協和界面科学社製CBVP−Zを用いて、白金プレート法で測定した。
表3中、粘度の項は下記評価基準に従って記載した。
〜評価基準〜
○… 6.5mPa・s未満
△… 6.5mPa・s以上10mPa・s未満
×… 10mPa・s以上
[評価]
上記の如く調製した各シアンインク(以下、単に「インク」ということがある)についてインクの経時安定性試験ならびに打滴試験および画像の定着性試験を行った。インクの経時安定性試験は、インクを打滴する前、即ちインク貯留槽(あるいはカートリッジ)にインクが収納されているときの粒径や粘度の安定性についての評価であり、安定性が悪いとインクジェット装置の打滴ノズルから吐出する際に、打滴ノズルが詰まる等の問題が生じる。また、打滴試験は、吐出方向性に関する評価であり、インク粘度が高いとノズルに目詰まりが発生して方向性不良が生じる。
(インクの経時安定性試験)
インク10mLをそれぞれ15mLのガラス瓶に密閉して、(1)60℃14日間放置後、及び(2)40℃3ヶ月間放置後に、平均粒径及び粘度をそれぞれ測定した。放置前と放置後における平均粒径の変化率[(放置後の平均粒径−放置前の平均粒径)/放置前の平均粒径]及び粘度の変化率[(放置後の粘度−放置前の粘度)/放置前の粘度]をそれぞれ算出した。評価基準は、次の通りである。
〜評価基準〜
○…平均粒径の変化率、又は粘度の変化率が5%未満であった。
△…平均粒径の変化率、又は粘度の変化率が5%以上10%未満であった。
×…平均粒径の変化率、又は粘度の変化率が10%以上であった。
そして、×の評価を、使用不可と判断した。結果を表4に示した。
(打滴安定性試験)
打滴安定性試験は次のように行った。特菱両面アートN(三菱製紙)上に、リコー社製GELJETG717プリンターヘッドを用いて、解像度1200×600dpi、インク打滴量12pLになるように打滴した。連続して打適して5時間後の状態を観察することで、打滴安定性を評価した。表4に打滴安定性試験結果を示した。尚、表4の打滴安定性試験の評価基準は、次の通りである。
〜評価基準〜
○… 吐出不良がなく、方向不良もなかった。
○△…吐出不良はなかったが、方向不良が少し生じた。
△… 吐出不良が殆どなく、方向不良が少し生じた。
×… 吐出不良が多かった。
(定着性試験)
インクを、リコー社製GELJETG717のカートリッジに詰め替え、特菱両面アートN(三菱製紙)にGELJETG717でベタ画像をプリントし、プリント後プリントサンプルを室温で24時間以上乾燥させた。乾燥後に更に加熱オーブンESPEC(株)社製PDR−3KPの中で80℃1時間加熱放置し、その後、室温で12時間放置したサンプルの定着性評価を行った。結果を表4に示す。尚、表4の定着性試験の評価方法は、次の通りである。
セロハンテープ(ニチバン製)及びメンディングテープ(3M)を塗布サンプルにテープが全面くっつくように貼った後、直ちに剥がした。剥がしたテープへの色移りを下記評価基準に従って評価した。
〜評価基準〜
○… セロハンテープ及びメンディングテープ共、色移りが認められなかった。
△… セロハンテープまたはメンディングテープの少なくとも一方で僅かな色移りが認められた。
×… セロハンテープ及びメンディングテープの両方で色移りが認められた。
表3から、平均粒子径が15nm〜80nmの自己分散ポリエステル分散物、または該自己分散ポリエステルとビニルポリマーとの複合粒子を用いて調製した水性インク組成物の粘度はいずれも低く、良好なインク物性を示したことが分かる。
一方、平均粒子径が90nm〜160nmと大きい、もしくは12nmと小さい自己分散ポリエステル分散物を用いて調製した水性インク組成物の粘度は高い傾向があったことがわかる。
また、表4からわかるように、本発明の水性インク組成物は経時安定性に優れていた。一方、15nm未満または80nmを超える平均粒子径の自己分散ポリエステル分散物を含む水性インク組成物では、分散安定性が低く、またインク粘度が高かった。さらに経時で粘度や粒径が上昇する傾向にあった。
また、本発明の水性インク組成物はいずれもインク粘度が低いことから、吐出不良は起こらず打滴安定性に優れているのに対し、C−H1〜C−H7の打滴安定性は低かった。
また、ポリマー成分をインク組成物として含有する本発明のインクや比較インクC−H1〜C−H5、C−H7は定着性に優れているが、ポリマーを含まないインクC−H6の定着性は極めて悪かった。
以上より、特定の平均粒子径を有する自己分散ポリエステル分散物、または該自己分散ポリエステルとビニルポリマーの複合粒子を含有するインクを用いることで、従来にない安定な吐出性と良好な定着性を有するインク組成物を提供することができたことが分かる。

Claims (6)

  1. 着色剤を含む水不溶性着色粒子と、平均粒子径が15nm〜80nmである自己分散ポリエステルと、水性媒体と、を含む水性インク組成物。
  2. 前記自己分散ポリエステルは、固体粒子状態で前記水性媒体中に分散している、請求項1に記載の水性インク組成物。
  3. 前記自己分散ポリエステルは、
    前記自己分散ポリエステルを溶解する有機良溶剤と、含有率が30質量%以上70質量%以下の前記自己分散ポリエステルを溶解しない有機貧溶剤と、を含む混合溶剤に、前記自己分散ポリエステルを溶解して溶液を得る工程と、
    前記溶液に、攪拌下、水を添加することにより、前記自己分散ポリエステルを自己分散させる工程と、
    を含む製造方法で製造された自己分散ポリエステル分散物である、請求項1または請求項2に記載の水性インク組成物。
  4. 前記自己分散ポリエステルは、ビニルポリマーと複合した複合粒子として含まれている請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の水性インク組成物。
  5. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性インク組成物の少なくとも1種を含むインクセット。
  6. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の水性インク組成物、または請求項5に記載のインクセットを用いて、被記録媒体上に、前記水性インク組成物を付与するインク付与工程を含む画像形成方法。
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