JP7243872B2 - インク - Google Patents
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Description
前記繊維製品は、通常、印刷工程や使用の過程で印刷面同士や印刷面と他の物品等とが接触する場合や、洗濯液とともに洗濯される場合がある。
しかし、従来技術では、前記接触が繰り返されると、経時的に印刷面の剥がれや擦れが生じ、外観不良を引き起こす場合があった。
上記擦れ等の課題は、被記録媒体として普通紙やコート紙を用いた場合にも生じうる。例えばプリンターの内部で印刷面と搬送ロールとが接触した場合に、印刷面に擦れが生じ、印刷物の外観不良を引き起こす場合があった。
また、前記普通紙やコート紙、繊維製品等に鮮明で高発色な画像等を形成するためには、インク中に含まれる顔料の濃度を増やす方法が挙げられる。
しかし、顔料濃度の高いインクは、インクジェット印刷法で吐出する際に、吐出ノズルの詰まりやインクの吐出方向の異常を引き起こしやすいという課題があった。
前記分散物(X)の分散粒子径は、20nm~1000nmの範囲であることが好ましく、200nm~600nmの範囲であることがより好ましく、240nm~500nmの範囲であることが、インクの粘度上昇に起因したインクの吐出安定性の低下を防止し、かつ、とりわけサーマル方式のインクジェット印刷ヘッドのコゲーション(インクに含まれる成分がヘッド内の加熱部品に吸着しインク吐出の推進力となるはずの気泡の発生を阻害する現象)を防止するうえで特に好ましい。なお、前記体積平均粒子径は、動的光散乱法で測定した値を指す。
前記重合体(A)及び重合体(B)を含む前記分散物(X)は、いわゆるバインダ樹脂としての役割を有する。バインダ樹脂は、一般に、印刷物の耐擦過性の向上を目的として使用される。前記バインダ樹脂としては、従来5nm~20nm程度の体積平均粒子径を有するものが使用される。しかし、体積平均粒子径が上記のように非常に小さいバインダ樹脂は、インクの動的粘度を増加させやすく、その結果、インクの吐出安定性を低下させる場合がある。インクの動的粘度を増加させにくく、インクの良好な吐出安定性を維持するために、バインダ樹脂として比較的粒子径が大きいエマルジョン状態の樹脂を使用する方法が挙げらる。しかし、エマルジョン樹脂は、通常、乳化剤を用いる乳化重合法で製造されるため、乳化剤を含む。その乳化剤が、前記したコゲーションを引き起こす原因となる場合があった。
本発明では、前記重合体(A)によって重合体(B)が水(C)に分散されたインクを使用することによって、前記分散物(X)の分散粒子径を従来よりも大きく制御することで、インクの良好な吐出安定性を維持でき、かつ、耐擦過性に優れた印刷物を製造することができる。また、本発明のインクは、前記したとおり乳化剤の使用量を低減できるため、サーマル方式のインクジェット印刷方式に適用した場合であってもコゲーションを引き起こしにくいという効果を有する。
本発明のインクは、前記したとおり乳化剤の使用を排除するものではない。しかし、前記乳化剤の含有量は、優れた耐擦過性と吐出安定性とを両立し、かつ、コゲーションの発生を抑制するうえで、本発明のインクの全量に対して、0~1質量%の範囲であることが好ましく、0~0.5質量%の範囲であることがより好ましく、0~0.01質量%の範囲であることがより好ましく、0質量%であることが特に好ましい。
また、前記重合体(A)に前記一般式(1)で示される構造単位を導入するためのビニル単量体としては、例えばスチレンスルホン酸、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩等を使用することができる。前記スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩としては、スチレンスルホン酸ナトリウム塩やスチレンスルホン酸リチウム塩などを使用できる。この中でも特にスチレンスルホン酸ナトリウム塩を使用することが、耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
前記重合体(A)に前記一般式(1)で示される構造単位を導入するために使用する前記ビニル単量体は、前記重合体(A)の製造に使用する単量体の全量に対して1質量%~90質量%の範囲で使用することが好ましく、40質量%~90質量%の範囲で使用することが、より一層優れた耐擦過性と発色性を両立した印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
、前記重合体(A)の製造に使用可能なその他の単量体としては、例えばリン原子を有する単量体を使用することができる。
前記リン原子を有する単量体としては、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート(例えば、共栄社化学製の「ライトエステルP-1M」、「ライトアクリレートP-1A」等)、ビス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル(例えば、ローディア日華社製の「Sipomer PAM100」や「Sipomer PAM4000」等)、ポリエチレングリコールモノアクリレートのリン酸エステル(例えば、ローディア日華社製の「SipomerPAM5000」等)、ポリプロピレングリコールモノメタクリレートのリン酸エステル(例えば、ローディア日華社製の「Sipomer PAM200」等)、ポリプロピレングリコールモノアクリレートのリン酸エステル(例えば、ローディア日華社製の「Sipomer PAM300」等)等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレートのリン酸エステル、リン酸メチレン(メタ)アクリレート、リン酸トリメチレン(メタ)アクリレート、リン酸プロピレン(メタ)アクリレート、リン酸テトラメチレン(メタ)アクリレート等のリン酸アルキレン(メタ)アクリレート等を使用することができる。
また、前記その他の単量体としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチラート、バーサチック酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、アミルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル等のビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリル等のビニル系ニトリル類;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルアニソール、α-ハロスチレン、ビニルナフタリン、ジビニルスチレン等の芳香族環を有するビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有ビニル系単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有ビニル系単量体;N-メチロール(メタ)アクリルアミド、N-イソプロポキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等のメチロールアミド基又はそのアルコキシ化物含有ビニル系単量体;(メタ)アクリルアミド、N-モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニル系単量体等を単独または2種以上組み合わせ使用することができる。
前記重合体(A)は、例えば前記したビニル単量体の混合物を、水(C)や必要に応じて重合開始剤や連鎖移動剤の存在下へ、一括して供給または分割して供給しラジカル重合することによって製造することができる。
前記重合開始剤としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等の過酸化物、過酸化水素、前記過酸化物と還元剤とを組み合わせたレドックス重合開始剤、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩等のアゾ系開始剤等を使用することができる。前記還元剤としては、アスコルビン酸、エリソルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、ホルムアルデヒドスルホキシラートの金属塩、チオ硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウムを使用することができる。
なかでも、前記重合開始剤としては、前記過硫酸アンモニウムを使用することが、重合体(A)の生産効率を向上するうえで好ましい。
前記連鎖移動剤としては、例えば、チオリンゴ酸、チオグリセリン等を単独または2種以上を組み合わせ使用することができ、チオリンゴ酸を使用することが、分散安定性に優れ、かつ、発色性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
前記重合体(A)の製造は、通常、温度30℃~100℃の範囲で1時間~40時間の範囲で行うことが好ましい。前記重合体(A)の製造は、前記ビニル単量体の重合をすみやかに行うために、窒素ガス等の不活性ガスの存在下で行うことが好ましい。
前記重合体(A)は、前記単量体の重合後、必要に応じて中和剤として塩基性化合物と混合されることによって中和されてもよい。
前記塩基性化合物としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属化合物;水酸化カルシウム、炭酸カルシウム等のアルカリ土類金属化合物;アンモニア;モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノプロピルアミン、ジメチルプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の有機アミン類等を単独または2種以上組み合わせ使用することができ、アンモニア、アンモニア水を使用することが、分散安定性に優れ、かつ、発色性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
以上の方法によって、前記重合体(A)が水(C)に溶解または分散した組成物を製造することができる。
前記方法で得られた重合体(A)としては、1000~20000の重量平均分子量を有するものを使用することが好ましく、3000~15000のものを使用することが、より一層優れた耐擦過性と発色性を両立した印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
次に、本発明のインクを構成する重合体(B)を説明する。
前記重合体(B)としては、前記重合体(B)の全量に対して、下記一般式(2)で示される構造単位を50質量%以上有するものを使用する。これにより、本発明のインクを用いて得られた印刷物に優れた耐擦過性を付与することができる。とりわけ、本発明のインクを用い布帛に印刷して得られた印刷物の耐洗濯性を向上することができる。
前記重合体(B)としては、前記重合体(B)の全量に対して下記一般式(2)で示される構造を50質量%~90質量%の範囲で使用することが好ましく、60質量%~80質量%の範囲で使用することがより好ましく、60質量%~75質量%の範囲で使用することが、より一層優れた耐洗濯性と耐擦過性とを備えた印刷物を得るうえで好ましい。
前記重合体(B)としては、例えばアクリル重合体(b)、ポリウレタン、ポリエステル等の様々な重合体を使用することができる。なかでも、前記重合体(B)としては、アクリル重合体(b)を使用することが好まい。
前記アクリル重合体(b)としては、(メタ)アクリル単量体やその他ビニル単量体の重合物を使用することができる。
前記(メタ)アクリル単量体としては、前記一般式(2)で示される構造単位を重合体(B)に導入するうえで、エチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
前記(メタ)アクリル単量体としては、前記エチル(メタ)アクリレートの他に、必要に応じてその他のビニル単量体を使用することができ、例えばメチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するビニル単量体を使用することができる。
前記アクリル重合体(b)は、前記エチル(メタ)アクリレートを含むビニル単量体の混合物を重合させることによって製造することができる。
一方、本発明のインクは、前記重合体(A)によって前記重合体(B)が水(C)中に分散されたものである。したがって、前記重合体(B)の製造は、前記重合体(A)の存在下で行うことが、分散安定性に優れ、かつ、耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえで好ましい。
前記重合体(B)の製造方法としては、具体的には、前記重合体(A)が水(C)に溶解または分散した組成物中に、前記アクリル重合体(b)を構成する(メタ)アクリル単量体等を一括または分割して供給し重合させる方法が挙げられる。
以上の方法によれば、前記重合体(A)によって前記重合体(B)が水(C)中に分散された組成物を得ることができ、かかる組成物を本発明のインクに使用することができる。
また、本発明のインクは、前記インクの全量に対して、前記重合体(A)及び前記重合体(B)を合計0.1質量%~30質量%の範囲で含むことが好ましく、0.1質量%~20質量%であることさらに好ましく、0.5質量%~10質量%であることが、より一層耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえで特に好ましい。
前記方法で得られた本発明のインクは、前記重合体(A)と前記重合体(B)との質量比が[重合体(A)/重合体(B)]が1/100~30/100の範囲であることが好ましく、1/100~20/100であることが、より一層耐擦過性に優れた印刷物を製造可能なインクを得るうえでより好ましい。
前記水(C)としては、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透膜処理水、蒸留水等の純水、または超純水を用いることができる。また、前記水としては、紫外線照射または過酸化水素添加等によって滅菌された水を用いることが、本発明のインクを長期間保存する場合に、カビまたはバクテリアの発生を防止することができるため好適である。
しかし本発明のインクであれば、コート紙や普通紙に両面印刷する場合であっても耐擦過性に優れるため傷がつきにくく、また、普通紙に印刷した際の発色性の低下を効果的に防止することが可能である。
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、温度計、滴下漏斗を備えた反応容器に脱イオン水138質量部を仕込み、窒素を吹き込みながら80℃に昇温した。
なお、前記体積平均粒子径は、マイクロトラック・ベル(株)社製NANOTRAC WAVE IIを用いて算出した。はじめに、前記分散体を、イオン交換水で1000倍に希釈した。次に、希釈液の約4mlをセルにいれ、マイクロトラック・ベル(株)社製NANOTRAC WAVE IIを用い、25℃環境下で、レーザー光の散乱光を検出することにより、体積平均粒子径(MV)を測定した。前記体積平均粒子径を3回測定し平均値(整数)を算出した。平均値の一桁目を切り捨てた値を、体積平均粒子径の値(単位:nm)とした。
メタクリル酸の使用量を4.51質量部から1.03質量部に変更し、エチルアクリレートの使用量を65質量部から68質量部に変更し、メチルメタクリレートの使用量を5質量部から12質量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量を30質量部から20質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の方法で、重合体(A-2)によって重合体(B-2)が水中に分散した不揮発分40質量%の分散体(II-2)を得た。前記分散体(II-2)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、320nmであった。
メタクリル酸の使用量を4.51質量部から1.03質量部に変更し、エチルアクリレートの使用量を65質量部から71質量部に変更し、メチルメタクリレートの使用量を5質量部から19質量部に変更し、2-ヒドロキシエチルメタクリレートの使用量を30質量部から10質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の方法で、重合体(A-3)によって前記重合体(B-3)が水中に分散した不揮発分40質量%の分散体(II-3)を得た。前記分散体(II-3)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、290nmであった。
メタクリル酸の使用量を4.51質量部から1.03質量部に変更しアンモニア水の代わりに、水酸化カリウム水溶液を用いてpHを7に調整したこと以外は、合成例1と同様の方法で、重合体(A-4)によって重合体(B-4)が水中に分散した不揮発分40質量%の分散体(II-4)を得た。前記分散体(II-4)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、440nmであった。
エチルアクリレートの使用量を65質量部から40質量部に変更し、メチルメタクリレートの使用量を5質量部から30質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の方法で、重合体(A-5)によって重合体(B-5)が水中に分散した不揮発分40質量%の分散体(II-5)を得た。前記分散体(II-5)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、390nmであった。
メタクリル酸の使用量を4.51質量部から1.03質量部に変更し、エチルアクリレートの使用量を65質量部から47質量部に変更し、メチルメタクリレートの使用量を5質量部から23質量部に変更したこと以外は、合成例1と同様の方法で、重合体(A-6)によって重合体(B-6)が水中に分散した不揮発分40質量%の分散体(II-6)を得た。前記分散体(II-6)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、350nmであった。
温度計、撹拌装置、還流冷却管及び窒素導入管を備えた4ッ口フラスコに、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(平均分子量1000)250.0質量部、水素添加4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(H12MDI)181.7質量部を入れ、十分に撹拌させたのち100℃で2時間反応させた。その後50℃まで冷却し、2,2―ジメチロールプロピオン酸(DMPA)59.3質量部、メチルエチルケトン(MEK)122.8質量部およびジブチルスズジラウリレート0.18質量部を加え、75℃で15時間反応させた。反応後50℃以下に冷却し、MEK204.6質量部を加え1時間撹拌させるとともに、40℃以下まで冷却しウレタン重合体(A-7)のMEK溶液を得た。得られたウレタン重合体(A-7)のMEK溶液に25質量%水酸化カリウム水溶液94.4質量部を加え、30分撹拌させることにより酸基を中和させた。次いで強撹拌下でイオン交換水を徐々に添加し、ウレタンを乳化させたのち、減圧蒸留によりMEKを留去し、不揮発分40質量%、酸価50 mgKOH/gの重合体(A-7)の分散体(II-7)を得た。前記分散体(II-7)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、15nmであった。
H12MDIの使用量を181.7質量部から111.0質量部に変更し、DMPAの使用量を59.3質量部から23.2質量部に変更し、25質量%水酸化カリウム水溶液の使用量を94.4質量部から36.8質量部に変更したこと以外は、[合成例7]と同様の方法で、不揮発分40質量%、酸価25 mgKOH/gの重合体(A-8)の分散体(II-8)を得た。前記分散体(II-8)に含まれる分散物の体積平均粒子径は、5nmであった。
顔料分散樹脂としてジョンクリル JONCRYL PDX-6137A(BASF社製、スチレンアクリル樹脂水溶液、重量平均分子量16,000、酸価220~250、ガラス転移点100℃、pH7.8、不揮発分約29質量%)500質量部と、マゼンタ顔料(FASTOGEN Super Magenta RY、DIC(株)製)5000質量部とを、容量50Lのプラネタリーミキサー((株)井上製作所製)に仕込み、ジャケットを加温した。
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-2)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM2を得た。
[実施例3]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-3)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM3を得た。
[実施例4]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-4)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM4を得た。
[比較例1]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-5)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM11を得た。
[比較例2]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-6)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM12を得た。
[比較例3]
前記分散体(II-1)の代わりにDIC株式会社製HYDRAN WLS-210を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM13を得た。
[比較例4]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-7)を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM14を得た。
[比較例5]
前記分散体(II-1)の代わりに前記分散体(II-8)を用いた以外は実施例1と同様の方法で水性インクM15を得た。
[比較例6]
前記分散体(II-1)の代わりにイオン交換水を用いたこと以外は実施例1と同様の方法で水性インクM16を得た。
実施例及び比較例で得たインクを、バーコーターNo.3を用いて、HP社製ブローシャ&フライヤ用紙(両面光沢紙)に塗布し、25℃の環境下に60秒放置し乾燥させることによって印刷物を得た。
次に、前記印刷物を学振型摩擦堅牢度試験機(大栄科学精機制作所製RT-300S)の試験片台に置き、テープで固定した。次に、HP社製ブローシャ&フライヤ用紙を貼り付けた摩擦子(荷重200g)で前記印刷物の表面を、1往復擦った。
次に、前記印刷物の印刷面をスキャン処理して画像データ化し、色の残存部のピクセル数をカウントした。画像の全領域を100ピクセルとしたときの色の残存部のピクセル数が多いほど耐擦過性が良好であると判断した。
A:残存部のピクセル数が60よりも多かった。
B:残存部のピクセル数が40以上60以下であった。
C:残存部のピクセル数が20以上40以下であった。
D: 残存部のピクセル数が20よりも少なかった。
比較例6で得たインクをインクカートリッジに充填した。次に、市販のサーマルジェット方式インクジュットプリンタを用い、前記インクをインクジェット用OHPシート(フィルムの表面にインクを吸収する層が設けれたシート)に、印字濃度100%の設定で印刷することによって印刷物を得た。25℃の環境下に1時間放置して乾燥させた後、OHPシートの未印刷部分をリファレンスとして印刷物の最大吸光度(Abs0)を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社V-660型)で測定した。
次に、実施例及び比較例1~5で得たインクをインクカートリッジに充填した。
次に、市販のサーマルジェット方式インクジェットプリンタを用い、それぞれのインクをインクジェット用OHPシート、印字濃度100%の設定で印刷することによって印刷物を得た。それぞれの印刷物を25℃の環境下に1時間放置して乾燥させた後、OHPシートの未印刷部分をリファレンスとして印刷物の最大吸光度(Abs1)を紫外可視分光光度計(日本分光株式会社V-660型)で測定した。
[最大吸光度(Abs1)/最大吸光度(Abs0)]×100から求められた値に基づいて、下記基準でインクの吐出性を評価した。
A: 上記式の値が70以上であった。
B: 上記式の値が60以上70未満であった。
C: 上記式の値が50以上60未満であった。
D: 上記式の値が50未満であった。
比較例6で得たインクをバーコーターNo.3 を用いて市販の普通紙に塗布して25℃の環境下で1時間乾燥させた後、塗布部の光学濃度(OD0)を積分球分光測色計X-Riteで測定した。
次に、実施例及び比較例1~5で得たインクをバーコーター#3 を用いて市販の普通紙に塗布して1時間乾燥させた後、それぞれの塗布部の光学濃度(OD1)を積分球分光測色計X-Riteで測定した。
[光学濃度(OD1)/光学濃度(OD0)]×100から求められた値に基づいて、下記基準で印刷物の発色性を評価した。
A: 上記式の値が90以上であった。
B: 上記式の値が85以上90未満であった。
C: 上記式の値が80以上85未満であった。
D: 上記式の値が80未満であった。
実施例及び比較例で得たインクに、5cm×5cmの正方形の綿布を浸漬し、150℃で5分間乾燥することによって、試験用サンプルを得た。
次に、前記試験用サンプルの光学濃度(OD0)を積分球分光測色計X-Riteを用いて測定した。
次に、JISL0844:2011に基づいた50℃の洗濯液に、前記試験用サンプルを30分間浸漬した後、前記洗濯液と試験用サンプルとをフードミキサーで1分間撹拌した。取り出した試験用サンプルを水で洗った後アイロンで乾燥した。。次に、前記試験用サンプルの光学濃度(OD1)を積分球分光測色計X-Riteを用いて測定した。
[光学濃度(OD1)/光学濃度(OD0)]×100から求められた値に基づいて、下記基準で印刷物の耐洗濯性を評価した。
A: 上記式の値が70以上であった。
B: 上記式の値が60以上70未満であった。
C: 上記式の値が50以上60未満であった。
D: 上記式の値が50未満であった。
Claims (10)
- さらに顔料と、顔料分散剤とを含有する請求項1に記載のインク。
- 前記重合体(A)が、カルボキシル基を有する単量体またはその酸無水物と、スチレンスルホン酸のアルカリ金属塩とを含む単量体混合物の重合体である請求項1又は2に記載のインク。
- 前記重合体(A)が、1000~20000の範囲の重量平均分子量を有するものである請求項1~3のいずれか1項に記載のインク。
- 前記重合体(A)と前記重合体(B)との質量比[重合体(A)/重合体(B)]が1/100~30/100の範囲である請求項1~4のいずれか1項に記載のインク。
- 前記重合体(A)及び前記重合体(B)が、前記インクの全量に対し、合計0.1質量%~30質量%の範囲で含まれる請求項1~5のいずれか1項に記載のインク。
- 前記重合体(A)によって前記重合体(B)が水(C)中に分散された分散物の体積平均粒子径が20nm~1000nmである請求項1~6のいずれか1項に記載のインク。
- さらに顔料と、前記顔料を前記水(C)に分散させるための顔料分散樹脂とを含有する請求項1~7のいずれか1項に記載のインク。
- インクジェット印刷方式での印刷に使用する請求項1~8のいずれか1項に記載のインク。
- 前記インクジェット印刷方式がサーマル型インクジェット印刷方式である請求項9に記載のインク。
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