JP7343655B2 - インクジェット捺染用インク、該インクを用いた印刷物の製造方法および画像固着物品 - Google Patents
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Description
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
本発明のインクジェット捺染用インクは、顔料、樹脂エマルション粒子、オキサゾリン基含有化合物および水性媒体を含むインクジェット捺染用インクであって、前記樹脂エマルション粒子の平均粒子径が150nm以上であり、前記樹脂エマルション粒子の含有量が前記インクジェット捺染用インク100質量%に対し10~20質量%であり、前記オキサゾリン基含有化合物の含有量が前記樹脂エマルション粒子100質量%に対し0.5~10質量%であることを特徴とする。
本発明のインクは、顔料を含む。顔料としては、有機顔料および無機顔料が挙げられ、これらは、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。また、必要に応じて、それらと体質顔料を併用することもできる。
色相は特に限定されず、イエロー、マゼンタ、シアン、ブルー、レッド、オレンジ、グリーン等の有彩色顔料をいずれも用いることができ、具体例としては、C.I.ピグメント・イエロー、C.I.ピグメント・レッド、C.I.ピグメント・オレンジ、C.I.ピグメント・バイオレット、C.I.ピグメント・ブルー、C.I.ピグメント・グリーンなどの品番製品が挙げられる。ポリプロピレン布帛を対象とする場合は、ポリプロピレンの熱分解を促進しないよう、有機顔料としては金属を含まない顔料を用いることが好ましい。具体的にはピグメント・ブルー16等を選択することができる。
無機顔料のうち、白色顔料としては、二酸化チタン、三酸化アンチモン、亜鉛華等の酸化亜鉛、リトポン、鉛白、炭酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ケイ酸アルミニウムが好ましい。中でも屈折率が高く隠ぺい性に優れる観点から二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンの中でも、結晶構造がルチルである二酸化チタンが好ましい。
着色顔料としては、上記の有機顔料、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、酸化クロムグリーン、カーボンブラック、黄鉛、モリブデン赤、フェロシアン化第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛等が好ましい。
白色顔料の場合、平均粒子径は、隠蔽性により優れる観点から、100~500nmが好ましく、下限については、より好ましくは150nm以上であり,さらに好ましくは200nm以上であり、上限については、より好ましくは450nm以下であり、さらに好ましくは400nm以下である。
着色顔料の場合、平均粒子径は、特に発色性の観点から20~200nmが好ましく、下限については、より好ましくは40nm以上であり、さらに好ましくは50nm以上であり、上限については、より好ましくは150nm以下であり、さらに好ましくは100nm以下である。
本発明のインクに含まれる樹脂エマルション粒子について説明する。
上記樹脂エマルション粒子は、特に限定されないが、水性エマルション由来の樹脂粒子が好ましい。
上記樹脂エマルション粒子の平均粒子径は、150nm以上である。平均粒子径を150nm以上とすることにより、インクの粘度を適正な範囲に保ちながら、樹脂エマルション粒子を高濃度に配合し易くなる。上記平均粒子径は、より好ましくは180nm以上、さらに好ましくは200nm超、さらにより好ましくは210nm以上である。一方、上限は特に限定されないが、好ましくは350nm以下であり、より好ましくは330nm以下であり、さらに好ましくは300nm以下である。
なお、本明細書において、樹脂エマルション粒子の平均粒子径は、動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社製、品番:FPAR-1000)を用いて測定したときのキュムラント法で得られた値である。
1/Tg=Σ(Wm/Tgm)/100
式中、Tgはガラス転移温度、Wmは樹脂成分を構成する単量体成分における単量体mの含有率(質量%)、Tgmは単量体mの単独重合体のガラス転移温度(絶対温度:K)を示す。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー〔東ソー(株)製、品番:HLC-8120GPC、カラム:TSKgel G-5000HXLとTSKgel GMHXL-Lとを直列に使用〕を用いて測定された重量平均分子量(ポリスチレン換算)を意味する。
たとえば、酢酸ビニル重合体、塩化ビニル重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・塩素化エチレン・スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル(共)重合体、(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・(メタ)アクリル酸・スチレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル・(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸エステル・ウレタン共重合体、アクリロニトリル・(メタ)アクリル酸エステル・スチレン共重合体等があげられる。
(メタ)アクリル酸としては、アクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
スチレン、tert-メチルスチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、2-スチリル
エチルトリメトキシシランなどが挙げられる。スチレン系単量体は、ベンゼン環にメチル基、tert-ブチル基などのアルキル基、ニトロ基、ニトリル基、アルコキシル基、アシル基、スルホン基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子などの官能基が存在していてもよい。スチレン系単量体のなかでは、耐水性を高める観点から、スチレンが好ましい。
上記スチレン系単量体としては、多官能スチレン系単量体を用いることもできる。多官能スチレン系単量体としてはジビニルベンゼンが好ましく挙げられる。
本発明のインクは、オキサゾリン基含有化合物を含む。
本発明においてオキサゾリン基含有化合物は、オキサゾリン基を分子中に2個以上有する化合物を意味する。上記オキサゾリン基含有化合物としては、例えば、2,2’-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-メチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-トリメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-テトラメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-ヘキサメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-オクタメチレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-エチレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、2,2’-p-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(2-オキサゾリン)、2,2’-m-フェニレン-ビス(4,4’-ジメチル-2-オキサゾリン)、ビス(2-オキサゾリニルシクロヘキサン)スルフィド、ビス(2-オキサゾリニルノルボルナン)スルフィド、オキサゾリン基含有ポリマーなどが挙げられるが、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのオキサゾリン基含有化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
本発明のインクは水性媒体を含む。本発明において水性媒体は水を含む溶媒を意味する。水性媒体における水の含有量は10~100質量%であることが好ましい。より好ましくは25質量%以上であり、さらに好ましくは60質量%以上であり、特に好ましくは90質量%以上である。残部は有機溶剤であることが好ましい。
本発明のインクにおける樹脂エマルション粒子の含有量は、インク100質量%あたり、10~20質量%である。インクジェット捺染時に低温で処理された画像の摩擦堅牢性や、印刷時のインクの吐出安定性の向上の観点から上記範囲が好ましい。好ましくは10.5質量%以上であり、18質量%以下である。
本発明のインクにおける顔料の含有量は、特に制限されないが、インク100質量%あたり、1~20質量であることが好ましい。1質量%未満では発色性や隠蔽性が不足するといった虞があり、20質量%を超えると風合いが低下するといった虞がある。より好ましくは2質量%以上であり、18質量%以下である。
本発明のインクにおける水性媒体の含有量は、本発明のインク100質量%に対し、55~89質量%であることが好ましく、より好ましくは70~85質量%である。
本発明のインクにおける、顔料、樹脂エマルション粒子およびオキサゾリン基含有化合物の合計含有量100質量%に対する顔料の含有量は、形成または印刷された画像の隠蔽性あるいは着色性を向上させる観点から、好ましくは10~80質量%であり、より好ましくは15~75質量%である。
本発明のインクには、本発明の目的が阻害されない範囲内で、上述した必須成分(顔料、樹脂エマルション粒子、水性媒体)以外の他の成分が含まれていてもよい。例えば、界面活性剤、分散剤、レベリング剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、増粘剤、湿潤剤、可塑剤、安定剤、消泡剤、染料、酸化防止剤、架橋促進剤、PH調整剤、防腐剤などの添加剤が適量で含まれていてもよい。上記レベリング剤としては、たとえば、アセチレングリコール系、シリコーン系、フッ素系の界面活性剤等を用いることが好ましく、中でもポリエーテル変性シリコーン化合物が好ましい。
本発明のインクの製造方法は、特に限定されない。たとえば、顔料、樹脂エマルション粒子、オキサゾリン基含有化合物および水性媒体を混合することにより、製造することができるが、好ましい製造例を示す。
本発明のインクジェット捺染用インクを用いた印刷物(捺染物)は、種々の方法で製造できるが、これらの製造方法の中でも、好ましい製造方法について説明する。該製造方法とは、本発明のインクジェット捺染用インクを、インクジェットプリンターを用いて、布帛に付着させ画像を形成する画像形成工程を含む、前記布帛に前記画像が印刷された印刷物の製造方法である。なお、該製造方法を、本発明の印刷物の製造方法とも称する。また、本発明のインクジェット捺染用インクを用いた転写捺染法も採用することができる。転写捺染法としては従来公知の方法を採用することができる。転写捺染法としては、たとえば、インクジェットプリンターにより本発明のインクジェット捺染用インクを転写紙基材上に吐出して、必要により乾燥することにより、画像を形成した転写紙を製造する転写紙製造工程と、前記転写紙製造工程によって製造された前記転写紙を布帛に重ね合わせて、加熱および/または加圧することにより前記転写紙上に形成された画像を前記布帛に転写する転写工程と、前記転写工程によって画像が転写された後の前記布帛から前記転写紙を剥離する剥離工程と、を含む方法があげられる。
本発明のインクジェット捺染用インクを用いた、本発明の印刷物の製造方法、及び上記転写捺染法により、加熱温度が低温であっても、印刷された画像の摩擦堅牢性に優れた捺染物(布帛に画像が形成された印刷物)を省エネルギーで環境に優しく製造することが可能となる。
摩擦堅牢性に優れる捺染物を短時間で得るためには、上述したように加熱する温度が90℃以上であることが好ましい。しかし、上記加熱処理工程において加熱する温度は、上記した範囲に限定されず、たとえば、常温付近の温度、たとえば15~25℃であってもよい。このような温度であっても、長時間、加熱することにより、印刷された画像の摩擦堅牢性を向上することができる。加熱時間の短縮の観点から、30℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましく、90℃以上がさらに好ましい。
ここで、常温とは、たとえば15~25℃であり、室温とは、室内の実際の温度であるが、通常、15~25℃程度と考えられる。
なお、本明細書において、印刷とは、インクジェット捺染用インクを、インクジェットプリンターを用いて、布帛に付着させ画像を形成する画像形成工程を含んでいれば良く、本発明のインクジェット捺染用インクを用いた、本発明の印刷物の製造方法、及び上記転写捺染法等により印刷された画像は、室温超の温度での加熱処理をされていても良く、室温超の温度での加熱処理をされていなくてもよい。
本発明はさらに画像印刷物品を提供する。本発明が提供する画像印刷物品とは、本発明のインクジェット捺染用インクからなる画像が布帛の一部または全部に印刷されてなる画像印刷物品であって、顔料と樹脂とを含み、前記樹脂がカルボキシ基を有するアクリル-スチレン系重合体(A)とオキサゾリン基含有化合物(B)との反応生成物(C)を含む。上記印刷画像では、樹脂をバインダーとして顔料が分散含有されてなることが好ましい。また、上記インクジェット捺染用インクは、カルボキシ基を有するアクリル-スチレン系重合体(A)を含むことが好ましい。
上記反応生成物(C)は、室温超の温度で加熱しなくても、常温乾燥であっても生成する。そして、温度が高い程に反応が進む。室温超の温度で加熱した方が、上記反応生成物(C)の生成速度は速いが、常温乾燥でも時間と共に少量ずつ生成が進むと考えられる。
ここで、「顔料と樹脂とを含む画像が布帛の一部または全部に固着してなる」とは、好ましくは、顔料と樹脂とを含む画像が摩擦堅牢性に優れるように付着していることを指す。
上記樹脂は、カルボキシ基を有するアクリルースチレン系重合体(A)とオキサゾリン基含有化合物(B)との反応生成物(C)を含む。カルボキシ基を有するアクリルースチレン系重合体(A)について説明する。カルボキシ基を有するアクリルースチレン系重合体(A)を重合体(A)とも称する。
上記顔料は、本発明のインクを構成する顔料と好ましい形態も含め、同様であり、上述の説明を準用することができる。よって説明は省略する。
上記印刷画像、及び固着画像は、上記樹脂と上記顔料を含む。
上記印刷画像、及び固着画像における樹脂および顔料の合計含有量は、画像100質量%に対する割合で80~100質量%であることが好ましい。より好ましくは90~100質量%であり、さらに好ましくは95~100質量%以上である。
上記印刷画像、及び固着画像における樹脂の含有量は、画像100質量%に対する割合で20~95質量%であることが好ましい。より好ましくは25~90質量%であり、さらに好ましくは30~85質量%である。
上記固着画像は布帛の一部または全部に固着していればよい。
上記印刷画像、及び固着画像の膜厚は、特に限定されないが、0.1~1000μmであることが好ましく、より好ましくは0.3~500μmであり、さらに好ましくは0.5~100μmである。上記膜厚は、たとえば、レーザー顕微鏡等により観察し計測した値を採用することができる。
本発明の画像印刷物品、及び画像固着物品における布帛の定義、用いることができる具体的な材料は、「画像が印刷された布帛の製造方法」において説明したものと同様であり、準用することができる。好ましい形態も同様である。すなわち、綿、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維をそれぞれ含む布帛が好ましく、綿を主成分として含む布帛、ポリエステル繊維を主成分として含む布帛、ポリプロピレン繊維を主成分として含む布帛がより好ましい。
本発明の画像印刷物品では、印刷時の加熱処理工程における温度が低温であっても、摩擦堅牢性に優れる。加熱処理工程の好ましい態様は、上記本発明の印刷物の製造方法のところで記載したのと同様である。
また、本発明の画像固着物品は、摩擦堅牢性に優れる。
ここで、「摩擦堅牢性に優れる」とは、好ましくは、JIS L0849の規定の方法に従い、II型試験機で綿3-1号の添付白布を使用し、荷重200g、100往復の乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験を行い、変退色グレースケールを用いて評価した場合に、乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験が共に3-4級以上の評価となることを表す。
各測定方法、評価方法は以下のとおりである。
樹脂エマルション粒子の平均粒子径は、樹脂エマルションを動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社製、品番:FPAR-1000)を用いて測定したときのキュムラント法で得られた値を採用した。
顔料の平均粒子径は、顔料分散体を動的光散乱法による粒度分布測定器(大塚電子株式会社製、品番:FPAR-1000)を用いて測定したときのキュムラント法で得られた値を採用した。
各実施例、各比較例で得られた各インクを、E型粘度計のTPE-100(東機産業製)で、ローターR24、0.8度、25℃にて測定した。
各実施例、各比較例で得られた各インクを、密閉容器に封入したインクを50℃の恒温槽内中で30日間保存し、下記評価基準に従い評価した。
◎:保存前後での粘度変化率5%未満。
〇:保存前後での粘度変化率5~10%。
△:保存前後での粘度変化率11~20%。
×:保存によりゲル化。
マスターマインド社製テキスタイルプリンタMMP-TX13に各実施例、各比較例で得られた各インクを導入し、PETフィルムに、ノズルチェック印刷(全180ノズルを順に吐出させて罫線を印字)して、飛び散り(曲がり)、ドット抜けを目視にて評価した。更にヘッドをキャップして1週間静置した後、再度ノズルチェック印刷して飛び散り(曲がり)、ドット抜けを目視にて評価した。△印と×印と評価されたインクでは、吐出安定性が不十分であった。
◎:飛び散り(曲がり)、ドット抜けが、初期および1週間後が共に全くない。
〇:飛び散り(曲がり)、ドット抜けが、初期および1週間後の多い方が1個以上2個以内。
△:飛び散り(曲がり)、ドット抜けが、初期および1週間後の多い方が3個以上4個以内。
×:飛び散り(曲がり)、ドット抜けが、初期および1週間後の多い方が5個以上。
各実施例、各比較例で得られた各画像が印刷された布帛を、JIS L0849の規定の方法に従い、II型試験機で綿3-1号の添付白布を使用し、荷重200g、100往復の乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験を行い、変退色グレースケールを用いて評価した。なお白インクの実施例7については、綿布帛(Hanes社製綿100%黒色Tシャツ)に印刷した布帛で評価した。△印と×印と評価された画像が印刷された布帛では、摩擦堅牢性が不十分であった。
◎:乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験が共に4-5級以上。
〇:乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験が共に3-4級~4級。
△:乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験が共に2-3級~3級。
×:乾燥摩擦試験および湿潤摩擦試験のいずれかが2級以下。
各実施例、各比較例で得られた各画像が印刷された布帛を、家庭用洗濯機で通常の洗濯(洗濯条件:通常モードでの洗濯→すすぎ→脱水→乾燥、液体洗剤アリエール(P&G製)使用)を10回実施し、変退色グレースケールを用いて、退色の度合いを評価した。
◎:4-5級~5級。
〇:3-4級~4級。
△:2-3級~3級。
×:2級以下。
各実施例、各比較例で得られた各画像が印刷された布帛を触手により評価した。
◎:画像が印刷された布帛が容易に折れ曲がり、布帛そのものの柔らかさに近いもの。
〇:画像が印刷された布帛が容易に折れ曲がるが、布帛そのものよりも若干ごわつきを感じるもの。
△:画像が印刷された布帛がごわつきを感じるもの。
×:画像が印刷された布帛が自由に折れ曲がらないほど固いもの。
[エマルション製造例1]
滴下ロート、撹拌機、窒素ガス導入管、温度計および還流冷却管を備えたフラスコ内に、脱イオン水252部を仕込んだ。滴下ロートに、脱イオン水437部、乳化剤((株)ADEKA製、商品名:アデカリアソーブSR-10)の25%水溶液80部、アクリル酸25部、2-エチルヘキシルアクリレート565部、シクロヘキシルメタクリレート50部、ヒドロキシエチルメタクリレート10部およびスチレン350部からなる滴下用プレエマルションを調製し、そのうち全単量体成分の総量の3%にあたる44部をフラスコ内に添加し、ゆるやかに窒素ガスを吹き込みながら80℃まで昇温し、5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を添加し、重合を開始した。その後、滴下用プレエマルションの残部と5%過硫酸アンモニウム水溶液30部を240分間にわたり均一にフラスコ内に滴下した。滴下終了後、フラスコの内容物を80℃で180分間維持し、25%アンモニア水および脱イオン水を添加することによってpHを8.5、固形分50%に調整し、重合を終了した。得られた反応液を室温まで冷却した後、300メッシュの金網で濾過することによりエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は35%であり、Tgは-21℃であり、このエマルションの平均粒子径は200nmであった。
エマルション製造例1における滴下用プレエマルションのうち全単量体成分の総量の0.5%にあたる7部をフラスコ内に添加するよう変更した以外はエマルション製造例1と同様にしてエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は35%であり、Tgは-21℃であり、このエマルションの平均粒子径は310nmであった。
エマルション製造例1における滴下用プレエマルションのうち全単量体成分の総量の6%にあたる87部をフラスコ内に添加するよう変更した以外はエマルション製造例1と同様にしてエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は35%であり、Tgは-21℃であり、このエマルションの平均粒子径は140nmであった。
エマルション製造例1における滴下用プレエマルションのスチレンを50部に変更し、メチルメタクリレートを新たに300部追加した以外はエマルション製造例1と同様にしてエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は5%であり、Tgは-20℃であり、このエマルションの平均粒子径は200nmであった。
エマルション製造例1における滴下用プレエマルションのシクロヘキシルメタクリレートを0部に変更し、スチレンを200部に変更した以外はエマルション製造例1と同様にしてエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は20%であり、Tgは-22℃であり、このエマルションの平均粒子径は210nmであった。
エマルション製造例1における滴下用プレエマルションの2-エチルヘキシルアクリレートを465部に変更し、シクロヘキシルメタクリレートを0部に変更し、スチレンを500部に変更した以外はエマルション製造例1と同様にしてエマルションを得た。このエマルション樹脂粒子におけるスチレンモノマー含有量は50%であり、Tgは-5℃であり、このエマルションの平均粒子径は200nmであった。
[顔料分散体製造例1]
分散剤のジョンクリル678(BASF社製)を3部、ジメチルアミノエタノールを1.3部、脱イオン水81部を70℃で撹拌し混合した。次いで、青色顔料のC.I.Pigment Blue15:3 LIONOL BLUE FG-7330(東洋インキ製)を15部、界面活性剤のオルフィンD-10PG(日信化学工業製)を0.1部、粒子径0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填し、ビーズミルを用いて分散し、孔径1μmフィルター(アドバンテック社製、MCP-1-C10S)で濾過することにより、顔料15%の青色顔料分散体を得た。平均粒子径は90nmであった。
顔料分散体製造例1における青色顔料を金属フリーのC.I.Pigment Blue16(東京化成工業製)に変更した以外は顔料分散体製造例1と同様にして顔料15%の青色顔料分散体を得た。平均粒子径は95nmであった。
分散剤のディスコートN-14(第一工業製薬製)を5部、プロピレングリコール6部、脱イオン水を70部、酸化チタンのCR-95(石原産業製)100部、粒子径0.5mmジルコニアビーズを体積率で50%充填し、ビーズミルを用いて分散し、顔料55%の白色顔料分散体を得た。平均粒子径は330nmであった。
[実施例1]
(インクの製造)
エマルション製造例1のエマルションを30部(エマルション粒子として15部)、顔料分散体製造例1の顔料分散体を23部(顔料として15部)、エポクロスWS-700(日本触媒製、固形分25%)を1.2部(固形分として0.3部)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル2部、トリエチレングリコール15部、界面活性剤のKF-6011(信越化学製)0.3部、及び脱イオン水を28.5部を混合し、孔径1μmフィルター(アドバンテック製、MCP-1-C10S)で濾過することにより、インク(1)を製造した。
(インクジェット法による画像形成)
上記で得られたインク(1)を、インクジェットプリンター:マスターマインド社製テキスタイルプリンタMMP-TX13に導入し、綿布帛(Hanes社製綿100%白色Tシャツ)に、青インクで1440dpi×1440dpi、印刷速度設定8、120mm×120mmのベタ印刷を行うことにより布帛に画像を形成した。画像が形成された布帛を110℃の熱風乾燥機で90秒間の加熱処理を行い、画像が印刷された布帛(1)を得た。
実施例1の(インクの製造)における、各原料の種類、仕込み量をそれぞれ、表1~3に示すように変更し、且つ合計量が100部となるよう脱イオン水の仕込み量で調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2~13にかかるインク(2)~(13)、比較例1~8にかかるインク(c1)~(c8)を製造した。なお、表1~3記載のオキサゾリン基含有化合物は、エポクロスWS-700(日本触媒製、固形分25%)、カルボジイミド基含有化合物は、カルボジライトSV-02(日清紡製ケミカル製、固形分40%)、ブロックイソシアネート化合物は、バイヒジュールBL2867(住化コベストロウレタン製、固形分38%)を使用した。
ポリエステル布帛はグンゼ製ポリエステル100%白Tシャツ、ポリプロピレン布帛はポリプロピレン100%繊維の布帛を使用した。布帛(2)~(13)および布帛(c1)~(c8)はそれぞれ、実施例1と同様にしてインクジェット法による画像形成を行った後、実施例1と同様にして、表1~3に示す加熱処理条件にて加熱処理を行って得られたものであり、画像が印刷された布帛である。
また、実施例1~13でそれぞれ得られた布帛(1)~(13)は、摩擦堅牢性に優れるものであり、印刷された画像が布帛に固着してなるものであった。
Claims (6)
- 顔料、樹脂エマルション粒子、オキサゾリン基含有化合物および水性媒体を含むインクジェット捺染用インクであって、
前記樹脂エマルション粒子が、カルボキシ基を有するアクリル-スチレン系重合体を主成分として含み、
前記樹脂エマルション粒子の平均粒子径が150nm以上であり、前記樹脂エマルション粒子の含有量が前記インクジェット捺染用インク100質量%に対し10~20質量%であり、
前記オキサゾリン基含有化合物の含有量が前記樹脂エマルション粒子100質量%に対し0.5~10質量%である
ことを特徴とするインクジェット捺染用インク。 - 前記アクリル-スチレン系重合体を形成するための単量体におけるスチレン系単量体の含有量が、(メタ)アクリル系単量体およびスチレン系単量体の合計量100質量%に対し、1~55質量%である、
請求項1に記載のインクジェット捺染用インク。 - 前記アクリル-スチレン系重合体が反応性乳化剤の存在下で乳化重合により製造されたものである、
請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インク。 - 前記オキサゾリン基含有化合物が、水溶性のオキサゾリン基含有ポリマーを含む、
請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インク。 - 請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インクを、インクジェットプリンターを用いて、布帛に付着させ画像を形成する画像形成工程を含む、前記布帛に前記画像が印刷された印刷物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載のインクジェット捺染用インクからなる印刷画像が布帛の一部または全部に印刷されてなる画像印刷物品であって、顔料と樹脂とを含み、前記樹脂がカルボキシ基を有するアクリル-スチレン系重合体(A)とオキサゾリン基含有化合物(B)との反応生成物(C)を含む、画像印刷物品。
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