JP4891025B2 - 分散樹脂、分散体及びインクジェット用顔料インク - Google Patents

分散樹脂、分散体及びインクジェット用顔料インク Download PDF

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Description

本発明は、保存安定性の高い微粒子分散体の作製を可能とする分散樹脂、及び、インクジェットノズルからの吐出安定性、保存安定性に優れ、且つ、光沢紙に印字した際に光沢性の高い印字物を与える上記分散樹脂を用いたインクジェット用顔料インクに関する。
溶液に溶解しない粒子(単に粒子と言う)を溶液中で安定した分散状態に保持させて分散体(分散液とも呼ぶ)とするために、分散剤が用いられている。分散剤は、粒子表面に物理吸着し、溶液と粒子間の界面張力を低下させる働きがあり、このことによって分散体の分散状態の安定化が図られる。分散媒に水や水溶性溶剤を用いる場合、分散剤には、分子内に疎水性官能基、親水性官能基を含む各種界面活性剤や、疎水性単量体と親水性単量体とを共重合させてなる分散樹脂等が用いられてきた。特に、各種単量体を共重合させてなる分散樹脂は、共重合体の形成原料として用いる単量体によって種々の特性を付与させることができることから、各種粒子の分散剤として好適に用いられてきた。従来の分散樹脂は、必ず両末端を有する直鎖状の重合体や、分岐構造を有していたとしても必ず末端を有する重合体からなるものである。
分散樹脂によって分散した粒子の用途のひとつとして、顔料を含有するインクジェット記録に用いられるインクが挙げられる。従来、水を主成分とし、水に溶解する染料を色材として用いた水性インクが一般的であったが、近年、記録物の耐候性や耐水性を向上させるため、色材に顔料を用いた水性顔料インクの開発が進んでいる(特許文献1参照)。顔料を用いたインクでは、顔料を記録メディア表面に付着させて印字を行うため、表面が平滑である光沢紙に印字した場合、顔料粒径が大きくなるにつれて、印字面の表面平滑性が失われ、光沢性が失われることが指摘されている。その中で、印字物の光沢性の向上等、印字品位の向上を図るため、インク中に分散されている顔料微粒子は、100nm程度からそれ以下の粒子径で分散されるようになってきている。
特開2001−81369号公報
このような微粒子は、粒子の体積に対する表面積の比率が大きくなるので、微粒子と溶液の界面が非常に活性化され、微粒子の分散状態は不安定になる。特に、熱エネルギーを利用してインクジェットヘッドからインクを吐出して記録する方式においては、下記のような問題がある。即ち、インクが吐出される際、電気熱変換体付近は瞬間的に非常に大きな熱エネルギーが発生するため、インクの物性が急激に変化し、顔料微粒子の分散状態が非常に不安定になりやすい。その結果、凝集物が析出し、ノズル付近を塞いだり、電気熱変換体上に堆積してコゲを形成したりして、インクジェットヘッドからのインクの吐出安定性が損なわれやすい。
従って、本発明の目的は、インクとした場合に、その印字物が光沢性の高いものとなり、特に粒子径の細かな微粒子の分散剤として好適で、極めて高い保存安定性を有する微粒子分散体を形成可能な分散樹脂を提供することにある。又、本発明の目的は、高光沢な高画質の画像を形成することができ、吐出安定性に優れるインクジェット記録用顔料インクを提供することである。
上記の目的は、下記の本願発明によって達成される。即ち、本発明は、構造中に、環状構造を形成する重合体である環状構造セグメントを有する分散樹脂であって、前記環状構造セグメントは、α−シクロデキストリンを有する環状構造セグメント、又は少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られる環状構造セグメントであり、前記環状構造セグメントの数平均分子量が300以上30000以下であり、前記環状構造セグメントが、少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られる環状構造セグメントである場合には、前記分散樹脂における前記非イオン系親水性官能基を有する単量体の構成比率が、10質量%以上50質量%以下であるとともに、前記非イオン系親水性官能基を有する単量体が、(メタ)アクリルアミド、水酸基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、及びエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つのビニル化合物であることを特徴とする分散樹脂である。かかる分散樹脂を用いれば、100nm以下の粒子径を有する微粒子を用いた場合であっても、非常に安定した分散状態を保つことが可能となる。
更に、本発明の別の実施形態は、粒子と、前記粒子を分散する分散樹脂とを含む分散体であって、前記粒子が顔料粒子であり、前記分散樹脂が上記の分散樹脂であることを特徴とする分散体である。又、本発明の別の実施形態は、顔料、分散樹脂、水及び水溶性有機溶剤を含むインクジェット用顔料インクにおいて、該分散樹脂が、上記の分散樹脂であることを特徴とするインクジェット用顔料インクである。
本発明によれば、粒子径の小さい微粒子においても分散安定性を高めることが可能で、微粒子分散体の保存安定性を向上させることができる分散樹脂が提供される。又、かかる分散樹脂を顔料粒子の分散剤として用いることで、極めて高い吐出安定性や保存安定性を有すし、光沢性の高い印字物を与えるインクジェット用顔料インクが提供される。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。先ず、本発明の分散樹脂が、微粒子に対して高い分散機能を発揮できる理由について述べる。先述したように、粒子を微粒子化すると、粒子表面が活性化されて分散状態が不安定化する。このため、例えば、インクジェットヘッドからの吐出時におけるインク物性の急激な変化に対して、顔料粒子の分散状態が不安定化する。従って、特に微粒子の分散剤は、微粒子に非常に大きな分散安定性を付与できるものであることが要求される。粒子表面の活性化を低下させ、溶媒(溶液)中に安定に分散させるためには、次のことを要する。粒子表面は一般に疎水性であるので、分散樹脂中の疎水性官能基を、粒子表面に物理的に吸着させ、一方、親溶媒性の官能基を溶媒中に配向させることで、粒子と溶媒界面の親和性を高めることが要求される。従って、このような分散剤には通常、疎水性官能基を有する単量体と親水性官能基を有する単量体との共重合体が用いられる。
一方、粒子間の反発力は、分散樹脂の親溶媒性官能基によって粒子に付与される静電斥力や立体障害斥力により行われる。例えば、溶媒が水系の場合、上記したように粒子表面は一般に疎水性であるので、分散樹脂は、通常、疎水性官能基を有する単量体と、親水性官能基を有する単量体とを原料として共重合させて得た共重合体により形成される。ここで、何れか一方の単量体の割合を増やすと他方が減少することとなり、この場合には、十分な分散安定性を粒子に付与できる分散樹脂を構成することできない。
本発明者らは、上記した従来の分散樹脂の構造と、その分散機能について鋭意検討した結果、以下のことを見いだして本発明に至った。即ち、より高い分散機能を発揮させるためには、分散樹脂の構造を、環状構造セグメントを有し、且つ、該セグメントが、少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られることが有効であることを見いだした。即ち、このような構造を有する樹脂は、下記のような特徴を有するものとなる。上記セグメントが環状構造を有するため、分散剤として使用した場合に、これまでにない大きな立体障害斥力を微粒子に付与することができる。これらの結果、本発明の分散樹脂は、従来の分散樹脂では十分な分散安定性を得ることができなかった100nm以下の粒子径を有する微粒子に対しても、安定な分散状態に保つことが可能となる。
又、光沢紙表面は一般に酸性或いはカチオン性であるため、アニオン性の静電斥力で分散安定性が図られている分散体では、紙面上で強い凝集を引き起こして粗大粒子となる。このため、画像の光沢性向上を目的として顔料に、100nm以下の粒子径を有する微粒子顔料を用いたインクとしても、上記凝集のため、光沢紙上の印字面の表面平滑性を低下し、光沢性を低下させる。これに対して、本発明者らの検討によれば、微粒子を分散させるための分散樹脂の形成原料に非イオン系親水性官能基を有する単量体を用いることで、光沢紙表面で生じる上記した粒子の凝集を軽減させることができる。このため、このような構成の樹脂をインクの顔料粒子の分散剤として使用すれば、光沢紙上の印字面の表面平滑性の低下を低減でき、従来生じていた光沢紙上に形成された画像の光沢性の低下を抑制することができる。
次に、上記した優れた機能を有する本発明の分散樹脂について、説明する。本発明の分散樹脂は、環状構造セグメントを有し、該セグメントを形成している重合体が、少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体が重合されてなる構造を有することを特徴とする。尚、本発明においては、「重合」は、共重合をも包含する。
本発明で言う環状構造セグメント(即ち、環状構造を形成する重合体のセグメント)とは、該セグメントの少なくとも1つの重合末端が、重合体の一部と共有結合やイオン結合により結合して環状構造を形成しているもののことである。本発明を特徴づける環状構造セグメントは、末端を有しないセグメントのことである。即ち、その構造中に、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環及びその誘導体のような芳香族化合物や、シクロヘキサン及びその誘導体といった脂環式化合物や、ピリジン、チオフェン等のヘテロ環状化合物の類といった環状構造を有するものを含む共重合体とは、全く別のものである。本発明を特徴づける環状構造セグメントは、例えば、Macromolecules,2003,36,9264等で報じられている方法により作製することができる。以下、本発明の分散樹脂を作成する場合に使用する単量体原料等について説明する。
本発明で使用する非イオン系親水性官能基を有する単量体としては、具体的には下記に挙げるようなものが挙げられる。例えば、付加重合により重合体を形成する下記のような化合物を使用できる。
例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキルオキサイド化合物;
(メタ)アクリルアミドやその誘導体等;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等の水酸基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;
メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート;
NKエステルM90−G(製品名、新中村化学製);
ブレンマー50POEP800B(製品名、日本油脂製)等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル;
2−フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート等のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレート等である。
更に、縮重合により重合体を形成する下記のような化合物が使用できる。具体的には、例えば、ポリアミド共重合体を形成するポリアミン化合物とポリカルボン酸化合物;
ポリエステル共重合体を形成するポリアルコール化合物とポリカルボン酸化合物;
ポリウレタン共重合体を形成するポリエーテル化合物、ポリエステル化合物、ポリイソシアネート化合物;
ポリペプチド共重合体を形成する種々のアミノ酸、ポリ多糖を形成する種々の糖類等である。
本発明においては、上記に挙げたような非イオン系親水性官能基を有する単量体が、環状構造セグメント中に少なくとも含まれていればよい。特に、環状構造セグメントを形成している重合体を構成する単量体のうち、非イオン系親水性官能基を有する単量体が50質量%以上であるようにすることが好ましい。即ち、非イオン系親水性官能基を有する単量体の割合が、環状構造セグメントの50質量%以上を占めるように構成すれば、水性媒体に対する粒子の分散性をより高め、一層の分散安定性を図ることが可能になる。
環状構造セグメントを形成している重合体には、上記した非イオン系親水性官能基を有する単量体と共重合可能な単量体であれば、何れのものが含まれていてもよい。例えば、下記に挙げるような、非イオン系親水性官能基を有する単量体と付加重合による共重合可能な、疎水性官能基を有する単量体が使用できる。
例えば、スチレン、メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ベンジル(メタ)アクリレート等の芳香族官能基を有する単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、
n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、
2−エチル−ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、等のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の脂環式化合物の(メタ)アクリレート等の疎水性官能基を有するビニル化合物が挙げられる。上記に挙げたような疎水性官能基を有する単量体を原料として用いた場合は、分散樹脂が粒子表面に物理的に吸着するために必要な機能を付加できる。このため、粒子の分散安定性を向上させるには、上記に挙げたような疎水性官能基を有する単量体ユニットが共重合体中に含まれていることが好ましい。
更に、本発明においては、酸性官能基を有するビニル化合物も、非イオン系親水性官能基を有する単量体と共重合可能な単量体として、好適に使用することができる。本発明で使用することのできる酸性官能基を有するビニル化合物としては、具体的には下記に挙げるものが使用できる。例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸誘導体、マレイン酸、マレイン酸誘導体、イタコン酸、イタコン酸誘導体、フマール酸、フマール酸誘導体、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸等が好適である。又、これらの酸性官能基を有するビニル化合物を使用した場合には、該酸性官能基を塩基により粒子間に静電斥力を付加する機能が付与されたものとできる。この結果、高い分散安定化を図る分散樹脂とすることが可能となる。上記した以外にも、ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、モルホリルアクリルアミド等のヘテロ環を有する単量体を好適に共重合させることができる。
本発明においては、前記したような非イオン系親水性官能基を有する単量体が、環状構造セグメント中に少なくとも含まれていればよい。具体的には、この環状構造セグメントのみで樹脂が構成されていてもよく、又は、樹脂中に少なくとも1つの環状構造セグメントを有する形態であってもよい。勿論、環状構造セグメントを樹脂中に複数有するものであってもよい。例えば、少なくとも1つの環状構造セグメントが鎖状重合体から分岐した側鎖であってもよい。即ち、樹脂中に、上記で説明したような環状構造セグメントを有するものであれば、十分な立体障害斥力を微粒子に付与させることができ、分散安定化を図ることが可能になる。本発明者らの検討によれば、樹脂中に少なくとも1つの環状構造セグメントを有していれば、前記した効果が得られるが、勿論、複数有するものであってもよい。そして、その場合には、複数の環状構造セグメント同士が、下記のような関係にあることが、より好ましい。
樹脂中に複数の環状構造セグメントを有する場合は、それら複数の環状構造セグメント間で、環状構造セグメントの形成に用いられる単量体の何れもが、共通していてもよく、又、互いに異なっていてもよい。共通の単量体により形成されている場合には、分散粒子に対して均一に分散安定性を付加させることが可能となり、光沢紙上での光沢性を高めることができる。一方で、異なる単量体で形成されている場合には、分散粒子に、分散安定性以外に、例えば、硬化反応性というような、化学構造によって効果が決定する様々な特性を付加することについて、自由度が増大して設計が容易にという利点がある。
又、複数の環状構造セグメントにおいて、該セグメントを構成する単量体の組成が同一であるか、異なるものであるかの如何に関わらず、単量体の重合度は、特に限定されず、同じであっても、異なっていてもよい。この場合に単量体の重合度が同じである場合には、分散樹脂の物性の均一性を高めることが可能であり、分散粒子の分散安定性をより高めたり、分散液の粘度を低くしたりすること等が可能となる。又、単量体の重合度が異なっている場合には、分散粒子間に異なる物性を付加することが可能になる。そして、分散粒子間に異なる物性が付加されると、分散粒子の周辺の物理的・化学的環境が不均一になることから、例えば、弱い構造粘性等を付与することも可能で、沈降性の低い分散粒子を作製することができる。又、一方で、環状構造セグメントを構成する単量体の組成が異なるときには、異なる重合度とすることで複数の環状構造セグメントの分子量が同一となるようにするとよい。このようにすることで、分散粒子の分散安定性を高めることができる。
分散樹脂に含まれる複数の環状構造セグメントのそれぞれの分子量は、同一であっても、異なるものであってもよい。即ち、これらの環状構造セグメントの分子量が同一であると、分散樹脂の物性の均一性を高めることが可能となり、分散粒子の分散安定性をより高めたり、分散液の粘度を低くしたりすること等が可能となる。一方、複数の環状構造セグメントの分子量が異なる場合には、分散粒子間に異なる物性を付加することが可能である。この場合には、分散粒子の周辺の物理的・化学的環境が不均一になることから、例えば、弱い構造粘性等を付与することも可能であり、沈降性の低い分散粒子を作製することが可能となる。
本発明における環状構造セグメントを形成する単量体の重合度は、環状構造の安定化のため4以上とすることが好ましい。又、環状構造セグメントの分子量は、数平均分子量で300〜30,000であることが好ましい。更に好ましくは、数平均分子量で400〜20,000のものを使用する。環状構造セグメントの分子量が上記した範囲よりも小さすぎると、環状構造を形成することが困難となる。一方、上記した範囲よりも大きいと、分散樹脂の分子量が大きくなるため、分散液の粘度の上昇を生じ、インクジェット用顔料インクの場合は、吐出不良となるコゲの発生につながるので好ましくない。
又、環状構造セグメントを含む分散樹脂全体としての分子量は、重量平均分子量が1,000以上30,000以下の範囲のものが好ましく、更に好ましくは、3,000以上15,000以下の範囲のものである。又、環状構造セグメントを含む分散樹脂は、非イオン系親水性官能基を有する単量体を少なくとも含んでいるが、分散樹脂における非イオン系親水性官能基を有する単量体の構成比率は、10質量%から100質量%の範囲のものであることが好ましい。更に好ましくは、10質量%から50質量%である分散樹脂が好ましい。この範囲よりも非イオン系親水性官能基を有する単量体が低いと、分散液や、インクジェット用顔料インクの分散安定性が低下する。又、インクジェット用インクの場合には吐出安定性が悪化する。又、この範囲よりも非イオン系親水性官能基を有する単量体が高いと、粒子表面に対する分散樹脂の付着力が低下し、分散液や、インクジェット用顔料インクの保存安定性が低下する。
本発明の分散樹脂は、当該分散樹脂中に酸性官能基を有する単量体が含まれる場合は、酸性官能基をイオン化することで粒子の分散安定化を更に向上させることができる。このためには、本発明の分散樹脂を用いて得られる分散液やインクジェット用顔料インクの全体を、中性又はアルカリ性に調整することが好ましい。但し、この場合には、インクジェット記録装置に使われている種々の部材の腐食の原因となる場合があるので、好ましくは、7乃至10のpH範囲とすることが望ましい。この際に使用されるpH調整剤としては、下記のものを使用することができる。例えば、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン等の各種有機アミン、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム及び水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ剤、有機酸や鉱酸等が挙げられる。上記したような分散樹脂は、分散液媒体中に分散又は溶解される。
本発明の分散樹脂は、具体的には、下記のような構造のものであることが好ましい。例えば、主として親水性官能基を有する単量体から構成される親水性環状セグメントと、主として疎水性官能基を有する単量体から構成される疎水性セグメントとを有する、ブロック共重合体或いはグラフト共重合体が挙げられる。本発明においては、上記において、親水性環状セグメントを形成する親水性官能基を有する単量体として、少なくとも、前述した非イオン系親水性官能基を有する単量体を有するものとする。又、このようなブロック共重合体やグラフト共重合体における疎水性セグメントの構造は、特に限定されず、環状構造であっても直鎖状構造であっても構わない。本発明でいうブロック共重合体とは、少なくとも一つの環状構造セグメントと、少なくとも一つの直鎖状(共)重合体セグメント、又は、複数の環状構造セグメントが結合してなる共重合体を指し、前記各セグメントがブロックに値する。ここでいうグラフト共重合体とは、下記に挙げる形態のものを指す。少なくとも一つの環状構造セグメント及び/又は少なくとも1本の直鎖状(共)重合鎖が、一本の直鎖状(共)重合鎖から分岐して結合しているもの、或いは、一つの環状構造セグメントから少なくとも1つの環状構造セグメント及び/又は少なくとも1本の直鎖状(共)重合鎖が分岐しているものである。
上記のブロック共重合体或いはグラフト共重合体を構成する親水性セグメントは、少なくとも先述したような親水性官能基を有する単量体を含んでいればよい。しかし、親水性セグメントとして、粒子の分散安定性に十分な粒子間斥力を発揮するためには、親水性セグメントを構成する単量体のうち、少なくとも50質量%以上が親水性官能基を有する単量体であることが好ましい。本発明においては、更に、親水性セグメントを構成する単量体のうち、非イオン系親水性官能基を有する単量体を、10〜100質量%含むように構成することが好ましい。
一方、疎水性セグメントは、セグメントを構成するために共重合されている単量体のうち、少なくとも50質量%以上が疎水性官能基を有する単量体であるものをいう。親水性官能基を有する単量体及び疎水性官能基を有する単量体としては、前記に列挙した単量体をそれぞれ好適に用いることができる。
上記で説明した環状構造セグメントを有する樹脂は、前記した通り、高い分散機能を有するものであるが、インク中の顔料の分散剤として用いる場合は勿論のこと、インクの形成成分としても好適に用いることができる。次に、本発明の分散樹脂を含有してなる本発明のインクジェット用顔料インク(以下、インクとも言う)について説明する。尚、顔料を分散させる成分として本発明の分散樹脂を用いる場合を中心に説明するが、上記した通り、本発明は、これに限定されず、単に、インクの成分として本発明の分散樹脂を含有させた形態のものであってもよい。
本発明にかかるインクジェット用顔料インクにおいて、環状構造を有する樹脂は、インクの全質量に対して、総量で0.1質量%以上15質量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。特に、顔料の分散樹脂として用いる場合は、インクの全質量に対して、0.1質量%以上8質量%以下の範囲で含有させるのが好ましい。必要に応じて、ロジン、シェラック、デンプン等の天然樹脂や、前記環状構造を有する樹脂でない合成樹脂も好ましく用いることができ、前記環状構造を有する樹脂の添加量を上回らない程度に含有させることができる。
本発明のインクは、上記で説明した樹脂の他、顔料、水溶性有機溶剤、及び水を少なくとも含んでなる。以下、これらの成分について説明する。本発明のインクは、インクの全質量に対して、質量比で1質量%以上20質量%以下、より好ましくは2質量%以上12質量%以下の範囲で、顔料を含有させたものであることが好ましい。本発明においては、下記に挙げるような顔料を使用することができる。
先ず、本発明で使用することのできる黒色の顔料としてはカーボンブラックが挙げられる。具体的には、例えば、ファーネス法、チャネル法で製造されたカーボンブラックであって、一次粒子径が11〜40mμm(nm)、BET法による比表面積が50m2/g〜400m2/g、揮発分が0.5〜10質量%、pH値が2乃至10等の特性を有するものを好ましく用いることができる。このような特性を有する市販品としては、下記に挙げるようなものがあり、これらは何れも好ましく使用することができる。例えば、No.33、40、45、52、900、2200B、2300、MA7、MA8、MCF88(以上、三菱化学製);
RAVEN1255(コロンビア製);
REGAL330R、400R、660R、MOGUL L(以上、キャボット製);
Nipex 160IQ、Nipex170IQ、Nipex180IQ、Nipex75、Printex 95、Printex 90、Printex 35、Printex U(以上、デグサ製)等がある。
本発明のインクに使用することのできる各色顔料としては、下記のものが挙げられる。イエローの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Yellow 1、2、3、13、16、74、83、109、128、155等が挙げられる。又、マゼンタの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Red 5、7、12、48(Ca)、48(Mn)、57(Ca)、57:1、112、122、202、
キナクリドン固溶体、C.I.Pigment Violet 19等が挙げられる。又、シアンの顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 1、2、3、15:3、15:4、16、22、C.I.Vat Blue 4、6等が挙げられる。更に、上記以外の色の顔料を用いることもできるが、その場合も含め、何れの顔料も各色インクおいて単独でも、2つ以上の顔料を混合してもよい。勿論、本発明は、これらに限られるものではない。又、以上の他、自己分散型顔料等、新たに製造された顔料も使用することが可能である。
本発明のインクを形成する水性媒体は、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である。水としては、種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。
水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、具体的には、下記に挙げたようなものを使用することができるが、これらに限定されるものではない。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1乃至4のアルキルアルコール類;
ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;
アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;
テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;
ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;
エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、1,2−ヘキサンジオール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2乃至6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;
グリセリン;
エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;
N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等
が挙げられる。前記の水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
上記したような水溶性有機溶剤のインク中における含有量は、一般的には、インクの全質量の3質量%以上50質量%以下の範囲であり、より好ましくは3質量%以上40質量%以下の範囲である。又、水の含有量としては、インクの全質量の10質量%以上90質量%以下、更に好ましくは30質量%以上80質量%以下の範囲である。
又、本発明のインクは、上記の成分の他に、必要に応じて所望の物性値を持つインクとするために、界面活性剤、消泡剤、防腐剤等の添加剤を適宜に添加することができる。添加量の例としては、インクの全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下が好適である。
本発明のインクは、上記したような成分からなるが、以下、その作製方法について、環状構造セグメントを有する樹脂を分散剤として用いる場合の例について説明する。先ず初めに、環状構造セグメントを有する樹脂と、水とが少なくとも混合された水性媒体に顔料を添加し、混合撹拌した後、後述の分散手段を用いて分散処理を行う。分散処理後、必要に応じて遠心分離処理を行って所望の顔料分散液を得る。次に、必要に応じてこの顔料分散液に、前記した水溶性有機溶剤、或いは、適宜に選択された添加剤成分を加え、撹拌して本発明のインクとする。
尚、本発明で使用する分散樹脂を構成するセグメントに酸性官能基を有する単量体が共重合されている場合は、共重合体の溶解性を高めるために、上記のようにして顔料分散液を作製する際に、塩基を添加させることが好ましい。このようにすれば、得られるインクの分散安定性を、更に向上させることができる。この際に好ましく使用することができる塩基類としては、下記のものが挙げられる。例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、アミンメチルプロパノール、アンモニア等の有機アミンが好ましく使用できる。或いは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等の無機塩基が好ましく使用できる。
顔料が含有されているインクの作製方法においては、上記で述べたように、一般的には、予め分散処理を行って得られる顔料分散液を使用する。更に好ましくは、顔料分散液の調製の際に行う分散処理の前に、少なくとも、分散剤と水とが混合された水性媒体に顔料を加えてプレミキシングを行うのが効果的である。即ち、このようなプレミキシング操作を行うことで、顔料表面の濡れ性を改善し、顔料表面への分散剤の吸着を促進することができる。
上記において、顔料の分散処理の際に使用される分散機は、一般に使用される分散機なら、如何なるものでも使用することができる。例えば、ボールミル、ロールミル、サンドミル、ビーズミル及びナノマイザー等が挙げられる。その中でも、ビーズミルが好ましく使用される。このようなものとしては、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミル及びコボルミル(何れも商品名)等が挙げられる。
上記のようにして製造される顔料が含有されているインクを、インクジェット記録方法に好適に使用できるようにするためには、耐目詰り性等の要請から、顔料としては、最適な粒度分布を有するものを用いることが好ましい。所望の粒度分布を有する顔料を得る方法としては、下記のような従来公知の方法が適用できる。上記で挙げたような分散機の粉砕メディアのサイズを小さくすること、粉砕メディアの充填率を大きくすること、処理時間を長くすること、粉砕後フィルタや遠心分離機等で分級すること、及びこれらの手法の組み合わせ等の手法が挙げられる。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。尚、以下の記載において、「部」及び「%」とあるものは特に断わらない限り質量基準である。
[実施例1]
本実施例では、非イオン親水性官能基を有する単量体が共重合した環状構造セグメント(以下、環状構造セグメント)が、主鎖の疎水性セグメントから分岐してなるグラフト共重合体で構成された分散樹脂の例について述べる。
<分散樹脂A1の作製>
(環状構造セグメントB1の合成)
本実施例では、環状構造セグメントに、2−ヒドロキシエチルアクリレートを重合してなる重合体を使用した。その合成方法は、Polymer Bulletin,2001,47,25に記された方法を用いた。当該報文で用いられているメチルメタクリレートを、2−ヒドロキシエチルアクリレートに代えて重合を行った。合成した2−ヒドロキシエチルアクリレートが重合されてなる環状構造セグメントは、数平均分子量が2,184であった。又、2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は21であった。
(主鎖共重合体C1の合成)
疎水性官能基を有する単量体として、スチレンを70部、n−ブチルメタクリレート10部、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを5部用いた。ラジカル重合開始剤には、アゾビスイソブチロニトリルを4部用いた。上記した単量体原料と、重合開始剤との混合物を、トルエン中に滴下してラジカル重合を行った。このときの重合条件は、重合温度を80℃とし、N2還流下で滴下時間は20時間とした。滴下終了後、更に3時間80℃に保ち、重合反応を行った。その後、室温まで冷却し、減圧乾燥して主鎖共重合体C1を得た。得られた主鎖共重合体C1の数平均分子量は5,800であった。
(分散樹脂A1の合成)
上記で作製した環状構造セグメントB1を20部と、85部の主鎖共重合体C1とをトルエン800部中に溶解した。次に、70℃に加熱して環状構造セグメントB1のヒドロキシル基と、主鎖共重合体C1中のイソシアネート基との間で結合を行った。その後、ヘキサン1,000部中に反応物を展開して、未反応物を沈殿精製により取り除き、減圧乾燥して分散樹脂A1とした。このようにして合成した分散樹脂A1の数平均分子量は、10,000であった。
<分散樹脂A1の使用例及び評価>
(酸化チタン分散液t1の作製)
上記で合成した分散樹脂A1を含む上記の成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。この溶液に酸化チタン粒子(MT−100SA、テイカ製)15部を加え、30分間プレミキシングを行った。その後、下記の条件で分散処理を行って酸化チタン分散液t1を得た。得られた酸化チタン分散液t1の平均粒子径を粒度分布測定装置(大塚電子製 FPAR−1000)により測定したところ、60nmであった。
・分散機:ビーズミル UAM−015(製品名)(寿工業社製)
・粉砕メディア:ジルコニアビーズ、0.05mm径(ニッカトー製)
・粉砕メディアの充填率:70%(体積比)
・粉砕時間:1時間
(保存安定性試験)
[80度保存前後の平均粒子径測定]
酸化チタン分散液t1の保存安定性は、下記の方法及び基準で評価した。上記で得た酸化チタン分散液t1を密閉容器に入れ、80℃の恒温槽に24時間放置した。この試験前後での平均粒子径を粒度分布測定装置(大塚電子製 FPAR−1000)により、それぞれ測定した。そして、それぞれの測定値である平均粒子径PD1(試験前)と、PD2(試験後)との比、RPD=PD2/PD1を求め、得られたRPDを用いて下記の基準で評価した。評価結果は表1に示した。
〔評価基準〕
◎:0.9<RPD≦1.2
○:0.8<RPD≦0.9、1.2<RPD≦1.4
△:0.7<RPD≦0.8、1.4<RPD≦1.8
×:RPD≦0.7、1.8<RPD
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が60nmと微粒子でありながら、保存安定性に極めて優れた酸化チタン粒子の分散液が作製できることが確認された。
[実施例2]
本実施例では、環状構造セグメントのみからなる分散樹脂の例について述べる。
<分散樹脂A2の作製>
実施例1で合成した環状構造セグメントB1の合成方法と同様の方法で、環状構造セグメントのみからなる分散樹脂A2を合成した。具体的には、単量体原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート80mmolと、メチルメタクリレート40mmolとを用いて共重合体を得た。合成された分散樹脂A2は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートとメチルメタクリレートが共重合されてなるもので、数平均分子量が23,500であった。共重合体を構成している2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は150であり、メチルメタクリレートの重合度は90であった。分散樹脂A2(即ち、環状構造セグメント)に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は66質量%である。
<分散樹脂A2の評価>
(酸化チタン分散液t2の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A2に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t2を作製した。その平均粒子径は80nmであった。酸化チタン分散液t2について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表2に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が80nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例3]
<分散樹脂A3の作製>
本実施例では、環状構造セグメントが、主鎖の疎水性セグメントから分岐してなるグラフト共重合体で構成された分散樹脂の例について述べる。
(環状構造セグメントB2の合成)
実施例1の環状構造セグメントB1の合成方法と同様の方法で、原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート20mmolとメチルメタクリレート10mmolとを用い、環状構造セグメントB2を得た。得られた環状構造セグメントB2は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートとメチルメタクリレートが共重合されてなるものであり、環状構造セグメントB2の数平均分子量は4,000であった。環状構造セグメントB2を構成する2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は25、メチルメタクリレートの重合度は15であった。環状構造セグメントB2に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は、66質量%であった。
(分散樹脂A3の合成)
上記で作製した環状構造セグメントB2と、実施例1で合成した主鎖共重合体C1とを用い、実施例1で合成した分散樹脂A1の合成方法と同様の方法で、分散樹脂A3を合成した。この際、環状構造セグメントB2を50部と、主鎖共重合体C1を50部用いた。作製された分散樹脂A3は、環状構造セグメントB2が、疎水性官能基を有する主鎖共重合体C1から分岐した構造であり、数平均分子量は20,000であった。
<分散樹脂A3の評価>
(酸化チタン分散液t3の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A3に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t3を作製した。その平均粒子径は80nmであった。酸化チタン分散液t3について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表3に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が80nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例4]
本実施例では、単量体の組成が異なる2種類の環状構造セグメントが、それぞれ主鎖の疎水性セグメントから分岐してなるグラフト共重合体で構成された分散樹脂の例について述べる。
<分散樹脂A4の作製>
(環状構造セグメントB3の合成)
実施例1の環状構造セグメントB1を合成した方法と同様の方法で、原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート20mmolと、n−ブチルアクリレート10mmolとを用い、環状構造セグメントB3を得た。得られた環状構造セグメントB3は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートと、n−ブチルアクリレートが共重合されてなるものであり、その数平均分子量は3,500であった。環状構造セグメントB3を構成する2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は20であり、n−ブチルアクリレートの重合度は11であった。従って、環状構造セグメントB3の重合度は31である。環状構造セグメントB3に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は、60質量%であった。
(分散樹脂A4の合成)
上記で得た環状構造セグメントB3と、実施例3で使用した環状構造セグメントB2と、実施例1で使用した主鎖共重合体C1を用い、実施例1の分散樹脂A1を合成した方法と同様の方法で、分散樹脂A4を合成した。その際、環状構造セグメントB2を25部、環状構造セグメントB3を25部、主鎖共重合体C1を50部用いた。得られた分散樹脂A4は、環状構造セグメントB2と環状構造セグメントB3とが、主鎖共重合体C1から分岐した構造のものであった。その数平均分子量は、18,000であった。
<分散樹脂A4の評価>
(酸化チタン分散液t4の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A4に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t4を作製した。その平均粒子径は80nmであった。この酸化チタン分散液t4について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表4に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が80nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例5]
本実施例では、単量体組成が同一で、その重合度が異なる2種類の環状構造セグメントが、それぞれ主鎖の疎水性セグメントから分岐してなるグラフト共重合体で構成された分散樹脂の例について述べる。
<分散樹脂A5の作製>
(環状構造セグメントB4の合成)
実施例1の環状構造セグメントB1を合成した方法と同様の方法で、原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート40mmolとn−ブチルアクリレート20mmolとを用い、環状構造セグメントB4を得た。得られた環状構造セグメントB4は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートとn−ブチルアクリレートとが共重合されてなるもので、数平均分子量が7,000であった。環状構造セグメントB4を構成する2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は40であり、n−ブチルアクリレートの重合度は22であった。又、環状構造セグメントB4に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は60質量%であった。
(分散樹脂A5の合成)
上記で得た環状構造セグメントB4と、実施例4で用いた環状構造セグメントB3と、実施例1で用いた主鎖共重合体C1とを用い、実施例1で用いた分散樹脂A1を合成した方法と同様の方法で、分散樹脂A5を合成した。上記で用いた環状構造セグメントB3と環状構造セグメントB4とは、互いに、組成が同じで重合度の異なる環状構造セグメントである。分散樹脂A5の合成には、環状構造セグメントB3を25部と、環状構造セグメントB4を25部と、50部の主鎖共重合体C1とを用いた。合成された分散樹脂A4は、重合度の異なる2種類の環状構造セグメントB3と、環状構造セグメントB4とが、主鎖共重合体C1から分岐した構造のものであった。その数平均分子量は、数平均分子量が18,000であった。
<分散樹脂A5の評価>
(酸化チタン分散液t5の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A5に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t5を作製した。その平均粒子径は80nmであった。この酸化チタン分散液t5について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表5に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が80nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例6]
本実施例では、2種類の環状構造セグメントで構成された分散樹脂の例について述べる。2種類のセグメントは、単量体の組成と、その分子量がいずれも異なる共重合体からなる。
<分散樹脂A6の作製>
異なる分子量の環状構造セグメントとして、実施例3で使用した環状構造セグメントB2と、実施例5で使用した環状構造セグメントB4とを用いた。環状構造セグメントB2と環状構造セグメントB4とは、互いに、単量体の組成とセグメントの分子量が異なる環状構造セグメントである。分散樹脂A6の合成には、環状構造セグメントB2を10部、環状構造セグメントB4を10部、リカレジンBEO−60E(新日本理化製)を3部、N,N,N−トリエチルアミンを1部を用いた。そして、これらをジクロロメタン1,000部中に溶解したものを10時間撹拌することで合成した。作製された分散樹脂A6は、分子量の異なる複数の環状構造セグメントB2と環状構造セグメントB4とが、リカレジンBEO−60Eにより結合された構造であった。分散樹脂A6の数平均分子量は12,000であった。
<分散樹脂A6の評価>
(酸化チタン分散液t6の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A6に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t6を作製した。その平均粒子径は85nmであった。酸化チタン分散液t6について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表6に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が85nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例7]
本実施例では、2種類の環状構造セグメントで構成された分散樹脂の例について述べる。2種類のセグメントは、単量体の組成が異なり、その重合度が同じである共重合体からなる。
<分散樹脂A7の作製>
(環状構造セグメントB5の合成)
実施例1の環状構造セグメントB1を合成した方法と同様の方法で、原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート17mmolとメチルアクリレート7mmolとを用い、環状構造セグメントB5を得た。得られた環状構造セグメントB5は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートとメチルアクリレートとが共重合されてなるもので、数平均分子量が3,300であった。環状構造セグメントB5を構成する2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は20であり、メチルアクリレートの重合度は11であった。従って、環状構造セグメントB5の重合度は31である。又、環状構造セグメントB5に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は70質量%であった。
(分散樹脂A7の合成)
異なる単量体組成で重合度が同じの環状構造セグメントとして、実施例4で使用した環状構造セグメントB3と、上記環状構造セグメントB5とを用いた。環状構造セグメントB3と環状構造セグメントB5とは、単量体の組成は異なるがとセグメントの重合度が31と同じ環状構造セグメントである。分散樹脂A7の合成には、環状構造セグメントB3を10部、環状構造セグメントB5を10部、リカレジンBEO−60E(新日本理化製)を3部、N,N,N−トリエチルアミンを1部用いた。そして、これらをジクロロメタン1,000部中に溶解したものを10時間撹拌することで合成した。合成された分散樹脂A7は、単量体組成が異なるが、重合度が同じ複数の環状構造セグメントB3と環状構造セグメントB5とが、リカレジンBEO−60Eにより結合された構造であった。分散樹脂A7の数平均分子量は15,000であった。
<分散樹脂A7の評価>
(酸化チタン分散液t7の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A7に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t7を作製した。その平均粒子径は83nmであった。酸化チタン分散液t7について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表7に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が83nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例8]
本実施例では、2種類の環状構造セグメントで構成された分散樹脂の例について述べる。2種類のセグメントは、単量体の組成が異なり、その分子量が同じである共重合体からなる。
<分散樹脂A8の作製>
(環状構造セグメントB6の合成)
実施例1の環状構造セグメントB1を合成した方法と同様の方法で、原料として、2−ヒドロキシエチルアクリレート17mmolとメチルアクリレート10mmolとを用い、環状構造セグメントB6を得た。得られた環状構造セグメントB6は、環状構造を有する共重合体であり、2−ヒドロキシエチルアクリレートとメチルアクリレートとが共重合されてなるもので、数平均分子量が3,500であった。環状構造セグメントB6を構成する2−ヒドロキシエチルアクリレートの重合度は20であり、メチルアクリレートの重合度は14であった。従って、環状構造セグメントB6の重合度は34である。又、環状構造セグメントB6に占める2−ヒドロキシエチルアクリレートの質量比は66質量%であった。
(分散樹脂A8の合成)
異なる単量体組成で重合度が同じの環状構造セグメントとして、実施例4で使用した環状構造セグメントB3と、上記環状構造セグメントB6とを用いた。環状構造セグメントB3と環状構造セグメントB6とは、単量体の組成は異なるがとセグメントの数平均分子量が3,500と同じ環状構造セグメントである。分散樹脂A8の合成には、環状構造セグメントB3を10部、環状構造セグメントB5を10部、リカレジンBEO−60E(新日本理化製)を3部、N,N,N−トリエチルアミンを1部用いた。そして、これらをジクロロメタン1,000部中に溶解したものを10時間撹拌することで合成した。合成された分散樹脂A8は、単量体組成が異なるが、数平均分子量が同じ複数の環状構造セグメントB3と環状構造セグメントB6とが、リカレジンBEO−60Eにより結合された構造であった。分散樹脂A8の数平均分子量は16,000であった。
<分散樹脂A8の評価>
(酸化チタン分散液t8の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A8に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t8を作製した。その平均粒子径は82nmであった。酸化チタン分散液t8について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表8に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が82nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。
[実施例9]
本実施例では、多糖であるα−シクロデキストリンを環状構造セグメントとしたグラフトコポリマーで構成された分散樹脂の例について述べる。
<分散樹脂A9の作製>
環状構造セグメントを形成する単量体として、多糖であるα−シクロデキストリンを用いた。α−シクロデキストリンは、6個のグルコース分子が、α−1,4結合で環状に連なった化合物である。本実施例では、この環状構造セグメントメントであるα−シクロデキストリンを20部用い、リカレジンBEO−60E(新日本理化製)を3部、N,N,N−トリエチルアミン1部を用い、これらをジクロロメタン1,000部中に溶解したものを10時間撹拌して主鎖をリカレジンBEO−60E、側鎖を環状構造セグメントであるα−シクロデキストリンであるグラフトコポリマーを合成した。合成された分散樹脂A9は、α−シクロデキストリンがリカレジンBEO−60Eにより結合された構造であり、その数平均分子量は4,500であった。
<分散樹脂A9の評価>
(酸化チタン分散液t9の作製と評価結果)
実施例1での分散樹脂A1を、上記で得た分散樹脂A9に代えて、実施例1の方法に従って酸化チタン分散液t9を作製した。その平均粒子径は87nmであった。酸化チタン分散液t9について実施例1と同様に評価し、得られた結果を下記表9に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が87nmの微粒子でありながら、保存安定性に優れた酸化チタンの分散液が得られることが確認された。特に、本実施例の結果から、アクリル酸エステル等のビニル系化合物の共重合体からなるものでなくとも、本発明で規定する環状構造セグメントを有するものであれば、保存安定性の高い分散液を作製することが可能であることが確認できた。
[実施例10]
本実施例では、環状構造セグメントを有する分散樹脂A1を、カーボンブラックを分散するための分散樹脂として用いた場合の例について述べる。
<顔料分散液k1の作製及び評価結果>
実施例1での分散樹脂A1を用い、実施例1の酸化チタン分散液t1の作製において、酸化チタンをカーボンブラックMCF88(三菱化学製)に代えた以外は同様の方法に従って、顔料分散液k1を作製した。その平均粒子径は、65nmであった。このカーボンブラック分散液k1について、実施例1で行ったと同様の方法で評価し、得られた結果を下記表10に示した。
Figure 0004891025
上記したように、平均粒子径が65nmの微粒子でありながら、保存安定性の非常に優れたカーボンブラックの分散液が得られることが確認された。
[実施例11]
本実施例は、環状構造セグメントを有する樹脂を含むインクジェット用顔料インクの例について述べる。尚、本実施例は、環状構造セグメントを有する樹脂を分散剤として用いずに、インク成分の1つとした例である。
<顔料分散液k2の作製>
・ジョンクリル678(ジョンソンポリマー製) 5部
・水酸化カリウム 1部
・イソプロピルアルコール 10部
・イオン交換水 69部
先ず、上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。これに、カーボンブラック(MCF88、三菱化学製)を15部加え、その後は、実施例1に記載した酸化チタン分散液t1の作製方法と同様にしてカーボンブラックが分散されてなる顔料分散液k2を作製した。
<ブラックインクK2の作製>
上記で調製した顔料分散液k2を使用し、実施例1で使用した分散樹脂A1を含む下記の組成比を有する成分を混合し、ブラックインクK2を調製した。尚、得られたブラックインクK2は分散樹脂A1を含むが、ブラックインクK2においては、特に分散樹脂A1を含有させた状態で分散処理を施しているわけではない。従って、分散樹脂A1がカーボンブラックの分散剤として必ずしも機能しているわけではない。
・顔料分散液k2(顔料濃度として5部) 33部
・分散樹脂A1 3部
・グリセリン 10部
・エチレングリコール 5部
・N−メチルピロリドン 5部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1部
・イオン交換水 43部
[評価]
<吐出安定性の評価>
(試験A.吐出安定性の試験)
ブラックインクK2の吐出安定性は、下記の方法及び基準で評価した。ブラックインクK2を用いて、インクジェットプリンタPIXUS850i(キヤノン製)で、インクジェット写真用紙であるPR−101(キヤノン製)上に画像形成を行った。画像形成は、2,000枚連続記録を行った。そして、この連続記録で作成した印字物の中から、試験2,000枚目のサンプルを取り出して、反射濃度計RD−19I(GretagMacbeth製)を用いて、該サンプルについての光学濃度測定を行った。この2,000枚連続記録前後のサンプルについて測定して得られた光学濃度をOD3とし、この吐出耐久性試験1枚目に形成した印字物をサンプルとして、上記と同様の方法で測定した光学濃度をOD1とし、これらの値から、下記式で示されるROD2を求めた。そして、得られたROD2の値を用いて下記の基準で評価した。評価結果は、表11に示した。
ROD2=OD3/OD1
(評価基準)
◎:ROD2>0.9
○:0.8<ROD2≦0.9
△:0.6<ROD2≦0.8
×:ROD2≦0.6
<試験B.保存安定性試験>
(80℃保存前後の平均粒子径測定)
インクの保存安定性は、下記の方法及び基準で評価した。ブラックインクK2を密閉容器に入れ80℃の恒温槽に24時間放置した。この試験前後での平均粒子径を粒度分布測定装置(大塚電子製 FPAR−1000)により測定した。そして、得られた平均粒子径PD1(試験前)、PD2(試験後)の比、RPD=PD2/PD1を求め、得られた値を用いて下記の基準で評価した。評価結果は、表11に示した。
(評価基準)
◎:0.9<RPD≦1.2
○:0.8<RPD≦0.9、1.2<RPD≦1.4
△:0.7<RPD≦0.8、1.4<RPD≦1.8
×:RPD≦0.7、1.8<RPD
<試験C.画像の光沢性試験>
ブラックインクK2の光沢性は、下記の方法で評価した。ブラックインクK2を用いて、インクジェットプリンタPIXUS850i(キヤノン製)で、インクジェット写真用紙であるPR−101(キヤノン製)上に50mm×50mmのベタ画像パターンを10パターン形成し、その部分の光沢度を測定した。画像の光沢度測定は、光沢度計(VG−2000:日本電色工業社製)を用い、作製した各パターンの任意の点において光沢度を測定した。
Figure 0004891025
上記のように、ブラックインクK2は、吐出安定性及び保存安定性に優れ、更には、光沢性に優れた画像を与えるインクであることが確認された。
[実施例12]
本実施例では、実施例1で使用した分散樹脂A1によって顔料を分散してなるインクジェット用顔料インクの例について述べる。
(インク)
<顔料分散液k3の作製>
・分散樹脂A1 15部
・イソプロピルアルコール 10部
・イオン交換水 60部
先ず、上記成分を混合し、ウォーターバスで70℃に加温し、樹脂分を完全に溶解させる。次に、この溶液にカーボンブラック(MCF88、三菱化学製)15部を加え、30分間プレミキシングを行った。その後、実施例1に記載した酸化チタン分散液t1の作製方法で行ったと場合と同様の条件で分散処理を行って、カーボンブラックが分散樹脂A1によって分散されてなる顔料分散液k3を得た。
<ブラックインクK3の作製>
上記で得た顔料分散液k3を使用し、下記の組成比を有する成分を混合し、ブラックインクK3とした。
・顔料分散液k3(顔料濃度として5部) 33部
・グリセリン 10部
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル 5部
・N−メチルピロリドン 5部
・アセチレノールEH(川研ファインケミカル製) 1部
・イオン交換水 46部
[評価]
実施例11で行ったと同様の方法及び基準でブラックインクK3を評価した。得られた結果を下記表12に示した。
Figure 0004891025
上記のように、ブラックインクK3は、吐出安定性及び保存安定性に非常に優れ、更には、光沢性に優れた画像を与えるインクであることが確認された。
[比較例1]
本比較例では、環状構造セグメントを有さない従来の分散樹脂を用いて得られた分散液について述べる。
<酸化チタン分散液t10の作製>
分散樹脂としてジョンクリル678(ジョンソンポリマー製)を用い、実施例1に従い、下記組成にて酸化チタン分散液t10を作製した。
・ジョンクリル678 5部
・水酸化カリウム 1部
・イソプロピルアルコール 10部
・イオン交換水 69部
・酸化チタン粒子(MT−100SA、テイカ製)15部
作製した酸化チタン分散液の平均粒子径は70nmであった。この酸化チタン分散液について、実施例1で行ったと同様の方法で評価し、得られた結果を下記表13に示した。
Figure 0004891025
上記した通り、従来の分散樹脂で平均粒子径70nmの酸化チタンを分散させた比較例1の分散液は、保存安定性が不十分であった。本比較例と、実施例との比較から、本発明の分散樹脂は、従来の分散樹脂では得ることができなかった極めて高い保存安定性を有する微粒子分散体の提供を可能とすることが確認された。

Claims (9)

  1. 構造中に、環状構造を形成する重合体である環状構造セグメントを有する分散樹脂であって、
    前記環状構造セグメントは、α−シクロデキストリンを有する環状構造セグメント、又は少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られる環状構造セグメントであり、
    前記環状構造セグメントの数平均分子量が300以上30000以下であり、
    前記環状構造セグメントが、少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られる環状構造セグメントである場合には、前記分散樹脂における前記非イオン系親水性官能基を有する単量体の構成比率が、10質量%以上50質量%以下であるとともに、前記非イオン系親水性官能基を有する単量体が、(メタ)アクリルアミド、水酸基末端ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリル酸エステル、及びエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドが付加された(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つのビニル化合物であることを特徴とする分散樹脂。
  2. 前記環状構造セグメントが、少なくとも非イオン系親水性官能基を有する単量体を重合することによって得られる環状構造セグメントである請求項1に記載の分散樹脂。
  3. 前記非イオン系親水性官能基を有する単量体が、(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、及び2−フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる少なくとも一つのビニル化合物である請求項1又は2に記載の分散樹脂。
  4. 前記環状構造セグメントを複数有する請求項1乃至の何れか1項に記載の分散樹脂。
  5. 前記複数の環状構造セグメントが、何れも共通の単量体を重合することによって得られる請求項に記載の分散樹脂。
  6. 前記複数の環状構造セグメントが、互いに異なる単量体を重合することによって得られる請求項に記載の分散樹脂。
  7. 前記非イオン系親水性官能基を有する単量体が、前記環状構造セグメントを構成するための単量体の50質量%以上である請求項1乃至の何れか1項に記載の分散樹脂。
  8. 粒子と、前記粒子を分散する分散樹脂とを含む分散体であって、
    前記粒子が、顔料粒子であり、
    前記分散樹脂が請求項1乃至の何れか1項に記載の分散樹脂であることを特徴とする分散体。
  9. 顔料、分散樹脂、水及び水溶性有機溶剤を含むインクジェット用顔料インクにおいて、
    該分散樹脂が、請求項1乃至の何れか1項に記載の分散樹脂であることを特徴とするインクジェット用顔料インク。
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