JP2024091507A - 着色剤分散体、インキ、インキセット、および印刷物 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、保存安定性に優れ、再分散性が良好であり、非塗工紙および塗工紙で高い印刷濃度が得られるインクジェットインキを作製できる着色剤分散体の提供を目的とする。
【解決手段】分散剤、着色剤、および水を含む着色剤分散体であって、前記分散剤が、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体、かつその分子量分散度が1.1以上2.0以下である、着色剤分散体。
【選択図】なし

Description

本発明は、水性インクジェットインキ等に用いる着色剤分散体に関する。
着色剤に顔料を使用しているインクジェットインキは、顔料が分散剤によって微細に分散されており、この分散性能を長期間維持する、すなわち保存安定性、および粗大粒子の抑制が重視される。印刷時に粗大粒子が存在するとインクジェット印刷機のヘッドのノズルにインキが付着して目詰まりを起こしてしまい、吐出不良が生じる。吐出不良を起こさないためには粗大粒子の抑制が必要であり、またインキの再分散性も求められていた。
水性インクジェットインキは、基材の材質により浸透性が異なるため、塗工紙と非塗工紙では異なる特性が必要であった。例えば、塗工紙上で高い印刷濃度を得るためには、着色剤の微細分散が必要になる一方、非塗工紙では微細分散されたインキを使用すると紙面の内部に浸透するため、高い印刷濃度が得られない。
そこで特許文献1には、メタクリレート系の疎水性ブロックとメタクリル酸を含む親水性ブロックのブロックポリマーを含む着色剤分散体が開示されている。特許文献2にはアクリル系ABブロックポリマーを含む着色剤分散体が開示されている。特許文献3にはアクリル系ABブロックポリマーを含む着色剤分散体が開示されている。特許文献4には、スチレン/無水マレイン酸変性ポリマーを含む着色剤分散体が開示されている。
特開2012-36251号公報 国際公開第2013/115071号 特開2021-127449号公報 特開2014-58587号公報
しかし、従来の着色剤分散体は、保存安定性および再分散性が悪かった。また、非塗工紙および塗工紙で高い印刷濃度が得られない問題があった。
本発明は、保存安定性に優れ、再分散性が良好であり、非塗工紙および塗工紙で高い印刷濃度が得られるインクジェットインキを作製できる着色剤分散体の提供を目的とする。
本発明の着色剤分散体は、分散剤、着色剤、および水を含む着色剤分散体であって、前記分散剤が、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体、かつその分子量分散度が1.1以上2.0以下である。
上記本発明により、保存安定性に優れ、再分散性が良好であり、非塗工紙および塗工紙で高い印刷濃度が得られるインクジェットインキを作製できる着色剤分散体を提供できる。また、本発明は、インキ、インキセット、および印刷物を提供できる。
まず、本明細書の用語を定義する。「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。モノマー(以下、単量体ともいう)は、エチレン性不飽和基含有単量体であり重合前の化合物である。モノマー単位は、モノマーが重合して重合体を構成する部分構造である。分散剤は、着色剤の分散に使用する化合物である。分子量分散度とは、分子量の分布がどれほど広がっているかを示す指標であり、数値が1.0に近づくほど分布がシャープになり、分子量が揃っていることを示す。分子量分散度は下記の式(1)から求められる。

分子量分散度=重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn) 式(1)

分子量分散度は、1.1以上2.0以下が好ましく、1.1以上1.8以下がより好ましく、1.2以上1.6以下がさらに好ましい。重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)は、TSK-GELSUPERHZM-Nカラム(東ソー社製)を用い、カラム温度40℃において、RI検出器を装備したGPC(東ソー社製、HLC-8320GPC)で、展開溶媒にTHFを用いて流速0.35mL/分で測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)である。
本発明の着色剤分散体は、分散剤、着色剤、および水を含む着色剤分散体であって、前記分散剤が、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体、かつその分子量分散度が1.1以上2.0以下である。
本発明の着色剤分散体は、例えば、インクジェットインキ等のオンデマンド印刷、オフセットインキ等の平版印刷、フレキソインキ等の凸版印刷、グラビアインキ等の凹版印刷、シルクスクリーンインキ等の孔版印刷、文具、捺染剤、塗料、カラーフィルタ、センサー等の用途に使用することが好ましい。その中でも、保存安定性、再分散性、高い印刷濃度が求められる、インクジェットインキ用途がより好ましい。
分散剤は、分子量分散度が1.1以上2.0以下という分子量分布がシャープな重合体であるため、着色剤の分散安定性を低下させる低分子量ポリマーが少ない。そのため着色剤の微細な分散が可能になることで着色剤分散体の保存安定性が向上する。さらに分散剤中のマレイン酸単位は、紙中の金属イオンと架橋し、着色剤分散体を紙表面に保持できる。これにより、着色剤分散体を非塗工紙に使用しても塗工紙と同程度の高い印刷濃度が得られる。また、マレイン酸単位は、ジカルボン酸であるため分散剤で極性が部分的に高くなる。そのためインクジェットインキに使用する場合、一旦凝集するが、極性の高いマレイン酸単位が水等の溶媒と親和しやすくなり再分散性が向上していると推測できる。
さらに、分散剤は芳香環含有モノマー単位を含む。芳香環が、着色剤と強い相互作用を形成することで、着色剤分散体の保存安定性が著しく向上する。また詳細なメカニズムは不明ながら、芳香環は非塗工紙中の金属イオンと相互作用を形成するほか、塗工紙に付与されている塗工液に一般的に含まれる樹脂成分(スターチ、スチレンブタジエン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等)との親和性も高い。その結果、非塗工紙および塗工紙の両方で、高い印刷濃度を有する印刷物が作製できる。
加えて、分散剤はアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含む。分散剤にアルキル基が含まれることで、上記分散剤が吸着した着色剤同士の近接が防止でき、着色剤分散体の保存安定性が向上する。また、アルキル基を有する分散剤が吸着した着色剤は、特にコート紙等の塗工紙と親和しやすく、上記塗工紙上で着色剤が凝集することなく均一に広がることができる。その結果、塗工紙上の印刷濃度が向上する。
<着色剤>
着色剤は、有機顔料、無機顔料、および染料から適宜選択して使用できる。
有機顔料は、アゾ顔料、ジアゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノフタロン顔料等が挙げられる。
これらの中でも、分散剤中に含まれる芳香環との間に強い相互作用が形成されるため、保存安定性が向上し、さらには、再非塗工紙および塗工紙の両方で、高い印刷濃度を有する印刷物が作製できる点から、縮合多環系顔料である、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラキノン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、チオインジゴ顔料、アントラキノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、および、キノフタロン顔料からなる群から選択される1種以上の顔料が好ましく使用できる。さらに、上述した効果を好適に発現させることができるうえ、再分散性も向上できる、という点から、複素環構造を有し、芳香環を3個以上有する縮合多環系顔料である、キナクリドン顔料、イソインドリノン顔料、ジオキサジン顔料、インダンスロン顔料(アントラキノン顔料の一種)、ペリレン顔料、ペリノン顔料、および、キノフタロン顔料からなる群から選択される1種以上の顔料がより好ましく使用でき、キナクリドン顔料および/またはジオキサジン顔料が特に好ましく使用できる。
具体的に、使用できる有機顔料をカラーインデックスで例示すると、レッド色の有機顔料は、C.I.PigmentRed1、2、3、4、5、6、7、9、10、14、17、22、23、31、32、38、41、48:1、48:2、48:3、48:4、49、49:1、49:2、52:1、52:2、53:1、57:1、60:1、63:1、66、67、81:1、81:2、81:3、83、88、90、105、112、119、122、123、144、146、147、148、149、150、155、166、168、169、170、171、172、175、176、177、178、179、184、185、187、188、190、200、202、206、207、208、209、210、216、220、224、226、242、246、254、255、264、266、269、270、272、279等が挙げられる。
イエロー色の有機顔料は、C.I.PigmentYellow1、2、3、4、5、6、10、11、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、199、213、214等が挙げられる。
ブルー色の有機顔料は、C.I.PigmentBlue1、2、15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、64、66、79、79、80等が挙げられる。
レッド色、イエロー色、ブルー色の以外の有機顔料は、C.I.PigmentOrange2、5、13、16、17:1、31、34、36、38、43、46、48、49、51、52、55、59、60、61、62、64、71、73、C.I.PigmentGreen7、10、36、37、58、59、62、63、C.I.PigmentViolet1、19、23、27、32、37、42C.I.PigmentBrown25、28C.I.PigmentBlack1、7C.I.PigmentWhite1、2、4、5、6、7、11、12、18、19、21、22、23、26、27、28等が挙げられる。
これらの中でもC.I.PigmentRed31、48:1、48:2、48:3、48:4、57:1、122、146、147、148、150、170、176、177、184、185、202、242、254、255、264、266、269、C.I.PigmentYellow12、13、14、17、74、83、108、109、120、150、151、154、155、180、185、213C.I.PigmentOrange34、36、38、43、64、73C.I.PigmentGreen7、36、37、58、62、63、C.I.PigmentBlue15:1、15:3、15:6、16、22、60、66、C.I.PigmentViolet19、23、32、C.I.PigmentBrown25、C.I.PigmentBlack1、7C.I.PigmentWhite6が、高い印刷濃度を有する印刷物が得られる点から好ましい。
上記以外の無機顔料は、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、金属酸化物、金属錯塩、その他無機顔料等が挙げられる。カーボンブラックは、ファーネスブラック、サーマルランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等が挙げられる。金属酸化物は、酸化チタン、酸化鉄、水酸化鉄、ジルコニア、アルミナ等が挙げられる。その他無機顔料は、群青、黄鉛、硫化亜鉛、コバルトブルー等が挙げられる。
前記カーボンブラックは、平均一次粒子径が11~50nm、BET法による比表面積が50~400m2/g、pHが2~10などの特性を有することが好ましい。カーボンブラックの市販品は、No.25、30、33、40、44、45、52、850、900、950、960、970、980、1000、2200B、2300、2350、2600;MA7、MA8、MA77、MA100、MA230(三菱化学社製)、RAVEN760UP、780UP、860UP、900P、1000P、1060UP、1080UP、1255(コロンビアンカーボン社製)、REGAL330R、400R、660R、MOGULL(キャボット社製)、Nipex160IQ、170IQ、35、75;PrinteX30、35、40、45、55、75、80、85、90、95、300;SpecialBlack350、550;Nerox305、500、505、600、605(オリオンエンジニアドカーボンズ社製)等が挙げられる。
前記酸化チタンは、結晶構造でいうとアナターゼ型、ルチル型が挙げられる。これらの中でも、印刷物の隠蔽性が向上する面でルチル型が好ましい。また、酸化チタンは、塩素法、硫酸法等で合成できるところ、白色度が向上する面で塩素法が好ましい。
酸化チタンは、表面を無機化合物で処理することで活性を抑制することが好ましい。無機化合物の処理後、さらに有機化合物で表面処理することが好ましい。これにより酸化チタンの分散安定性が向上する。無機化合物は、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、スズ、アンチモン、およびチタンの化合物、ならびにこれらの水和酸化物が挙げられる。有機化合物は、例えば、多価アルコール、およびアルカノールアミンならびにその誘導体、ならびに高級脂肪酸およびその金属塩、ならびに有機金属化合物等が挙げられる。
染料は、分散染料が好ましい。分散染料は、加熱により昇華する性質を有する染料である。分散染料は、C.I.ディスパースイエロー3、7、8、23、39、51、54、60、71、86;C.I.ディスパースオレンジ1、1:1、5、20、25、25:1、33、56、76;C.I.ディスパースブラウン2;C.I.ディスパースレッド11、50、53、55、55:1、59、60、65、70、75、93、146、158、190、190:1、207、239、240、343;C.I.バットレッド41;C.I.ディスパースバイオレット8、17、23、27、28、29、36、57;C.I.ディスパースブルー19、26、26:1、35、55、56、58、60、64、64:1、72、72:1、81、81:1、91、95、108、131、141、145、165、359、360等が挙げられる。
着色剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
着色剤の平均一次粒子径は、通常5~300nmが好ましい。なお、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡を使用した2,000~10万倍の範囲から選択した拡大画像から任意の約20個の粒子の算術平均値である。粒子が楕円形の場合、長軸の長さを用いる。
着色剤の含有量は、着色剤分散体中に1~50質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。着色剤の含有量を上記範囲内にすることで、保存安定性が向上し、鮮やかな色彩が得られる。
<分散剤>
分散剤は、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含むリビングラジカル重合体、かつその分子量分布が1.1以上2.0以下である。
分散剤は、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位、ならびに、必要に応じてその他のエチレン性不飽和基含有単量体を含むモノマー混合物を重合して合成することが好ましい。
<マレイン酸単位>
マレイン酸単位とは、マレイン酸からなる単位である。ただし、分散剤としてマレイン酸単位が含まれていればよく、例えばマレイン酸単位は、無水マレイン酸を使用して合成した無水マレイン酸単位を含む分散剤前駆体に、さらに水を加え、酸無水物基が開環反応して生成するものであってよい。
分散剤は、無水マレイン酸単位を有していてもよい。また分散剤は、上記分散剤前駆体に、(水に加えて)アミンまたはアルコールを添加し反応させることで得られる、マレイン酸アミド誘導体単位、または、マレイン酸エステル誘導体単位を含んでいてもよい。なお、マレイン酸アミド誘導体単位、マレイン酸エステル誘導体単位は、モノマーとしてマレイン酸アミド誘導体やマレイン酸エステル誘導体を使用することで導入されたものでもよい。
マレイン酸単位の含有量は、無水マレイン酸単位、マレイン酸単位、マレイン酸アミド誘導体単位およびマレイン酸エステル誘導体単位の合計量を100mol%としたとき、10~100mol%が好ましく、20~100mol%がより好ましく、50~100mol%が更に好ましく、50~90mol%が特に好ましい。
<マレイン酸アミド誘導体単位>
マレイン酸アミド誘導体単位は、カルボキシ基およびアミド誘導体部位を有する。アミド誘導体部位は、酸無水物基にアンモニアまたはアミンを反応させて形成する。
アミンは、酸無水物基と反応する1級アミン、2級アミンが好ましい。アミンは、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-n-ブチルアミン、ジ-n-オクチルアミン、イソプロピルアミン等の2級アミン:ベンジルアミン、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、アミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン、ミリスチルアミン、セチルアミン、ステアリルアミン、ベヘニルアミン、オレイルアミン、アニリン、o-トルイジン、2-エチルアニリン、2-フルオロアニリン、o-アニシジン、m-トルイジン、m-アニシジン、m-フェネチジン、p-トルイジン、2,3-ジメチルアニリン、5-アミノインダン、アスパラギン酸、グルタミン酸、γ-アミノ酪等の1級アミンが挙げられる。また、1分子中に1級アミンや2級アミンを1つ有し、別に3級アミンを有するジメチルアミノプロピルアミン等も挙げられる。これらの中でも酸無水物との反応性から、1級アミンが好ましい。マレイン酸アミド誘導体単位の含有量は、無水マレイン酸単位、マレイン酸単位、マレイン酸アミド誘導体単位およびマレイン酸エステル誘導体単位の合計100mol%中、10~90mol%が好ましく、25~75mol%がより好ましい。
アミンは、単独または2種類以上を併用して使用できる。また、1級アミン化合物以外のアミン化合物を併用してもよい。
<マレイン酸エステル誘導体単位>
マレイン酸エステル誘導体単位は、カルボキシ基およびエステル部位を有する。エステル部位は、酸無水物基にアルコールを反応させて形成する。
アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2-ブタノール、tert-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、2-エチルヘキシルアルコール、ノナノール、デカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の炭化水素基含有アルコール:シクロヘキシルアルコール、ベンジルアルコール等の環構造基含有アルコール:α-オキシ酪酸、12-ヒドロキシステアリン酸、乳酸等のカルボキシル基含有アルコールが挙げられる。これらの中でも、炭化水素基含有アルコールまたは環構造基含有アルコールが好ましく、炭化水素基含有アルコールは、炭素原子数1~22が好ましく、4~22がより好ましく、12~22がさらに好ましい。炭化水素基は、直鎖状または分岐鎖状であってもよい。また、環構造基は、芳香族基が好ましい。マレイン酸エステル誘導体単位の含有量、無水マレイン酸単位、マレイン酸単位、マレイン酸アミド誘導体単位およびマレイン酸エステル誘導体単位の合計100mol%中、10~90mol%が好ましく、25~75mol%がより好ましい。
<芳香族含有モノマー単位>
芳香族含有モノマーは、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ナフチル(メタ)アクリレート、9-アントラセニル(メタ)アクリレート、1-ピレニルメチル(メタ)アクリレート、スチレン、ビニルナフタレン、α-メチルスチレン、t-ブチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン、o-t-ブトキシスチレン、m-t-ブトキシスチレン、p-t-ブトキシスチレン、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、4-ビニルビフェニル、1,1-ジフェニルエチレン、ビニルフェノール、安息香酸ビニル、ビニルナフタレン、ベンジルビニルエーテル等が挙げられる。
これらの中でも顔料親和性の観点から、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングレコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、スチレン、α-メチルスチレンのような無置換のフェニル基を有するモノマー構造が好ましく、スチレン、ベンジルメタクリレートがより好ましく、スチレンがさらに好ましい。
芳香族含有モノマー単位の含有量は、単独または2種類以上を併用できる。
<アルキル基含有(メタ)アクリレート単位>
アルキル基含有(メタ)アクリレートは、鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。鎖状炭化水素基は直鎖炭化水素基と分岐鎖炭化水素基を含む。
鎖状炭化水素基含有モノマーは、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、i-プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i-アミル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、i-オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、i-デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、i-ドデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、i-ステアリル(メタ)アクリレート、ベへニル(メタ)アクリレートの(メタ)アクリレートエステル;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、i-プロピルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル等のビニルエーテル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニル;酢酸アリル、塩化アリル等のアリル化合物;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル化合物;酢酸ビニル、酢酸イソプロペニル等のビニルエステル類等が挙げられる。
これらの中でも、顔料との親和性が高く保存安定性が向上する観点から炭素数1以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数4以上22以下の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、炭素数12以上22以下の鎖状炭化水素基を有する(メタ)アクリレートがさらに好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートおよび炭素数12以上22以下のアルキル基を有する(メタ)アクリレートの併用が特に好ましい。
アルキル基含有(メタ)アクリレート単位は、単独または2種類以上を併用できる。
<その他モノマー単位>
分散剤は、無水マレイン酸変性単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位以外にその他モノマー単位を含有できる。その他モノマー単位は、例えば、シアノ基含有モノマー単位、複素環含有モノマー単位(ただし、芳香環含有モノマーを除く)、脂環式炭化水素基含有モノマー単位、鎖状炭化水素基含有モノマー単位(ただし、アルキル基含有(メタ)アクリレートを除く)、およびビニルモノマー単位が挙げられる。
シアノ基含有モノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロロアクリロニトリル、2-シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましい。
複素環含有モノマーは、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピペリドン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール、N-ビニルピペラジン、(メタ)アクリロイルモルホリン等が挙げられる。
脂環式炭化水素基含有モノマーは、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリシクロデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
鎖状炭化水素基含有モノマーは、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィン等が挙げられる。
ビニルモノマーは、片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するシリコーン系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するアルキル(メタ)アクリレート系マクロマー、片末端に重合性官能基を有するスチレン・アクリロニトリル系マクロマー等が挙げられる。これらの中でも片末端に重合性官能基を有するスチレン系マクロマーが好ましい。
本明細書で使用する分散剤の重合体は、分子量分散度が1.1以上2.0以下であれば良く合成方法は問わない。なお、本明細書では、前記重合体を合成する好ましい重合法としてリビングラジカル重合法を説明する。以下リビングラジカル重合法で合成する重合体をリビングラジカル重合体ともいう。
<リビングラジカル重合体>
リビングラジカル重合体は、通常のラジカル重合体と比較してより分子量が揃った重合体を合成できる。すなわち分子量分布がシャープな重合体が得られるため、着色剤の分散安定性を低下させる原因である低分子量ポリマーが少なくなり、さらに粗大粒子も抑制できる。
リビングラジカル重合体とはラジカル重合の簡便性と汎用性を保ちつつ、分子構造の精密制御を可能にするリビングラジカル重合法を用いた重合体である。リビングラジカル重合体には、ブロック重合体とランダム重合体がある。ブロック重合体は、モノマーの重合反応により、Aブロックを先に製造し、そこへBブロックのモノマーを重合することで得られる。一方でランダム重合体は、ブロックごとにモノマーを分けずに全てのモノマーを一括で反応させることで得られる。
これらの中でも、着色剤に対する吸着部位、および着色剤に対する立体反発部位の機能を分けるブロック重合体は、分散安定性の面で好ましい。ブロック重合体は、ABブロック重合体、ABAブロック重合体が挙げられる。また一方で、水等の溶媒と均一に親和するランダム重合体は、再分散性の面で好ましく使用できる。
リビングラジカル重合法には、重合成長末端を安定化させる手法の違いにより、硫黄系の可逆的連鎖移動法を用いる方法(RAFT法)、有機テルル化合物を用いる方法(TERP法)、遷移金属触媒を用いる方法(ATRP法)、ニトロキシド媒介ラジカル重合法(NMP法)等が挙げられる。これらの中でも共役モノマーだけでなく非共役モノマーの重合も制御できることから、RAFT法の使用が好ましい。
<リビング重合剤>
リビング重合剤は、リビングラジカル重合に使用する化合物である。そのためリビングラジカル重合体は、リビング重合体残基を有する。リビング重合剤は、例えば、チオカルボニル化合物、有機テルル化合物、有機ジテルル化合物等が挙げられる。
<可逆的付加開裂連鎖移動重合法(RAFT法)>
RAFT法は、生長反応に比べて可逆的な交換連鎖移動反応が速やかに起こることで、全てのポリマーが均一に生長することができる方法である。チオカルボニル化合物とは、RAFT法でリビング重合体を合成するために必須な有機硫黄化合物である。チオカルボニル残基とはチオカルボニル化合物を使用した際にポリマー上に残るチオカルボニル化合物の残基のことである。チオカルボニル化合物は、ジチオベンゾエート型、トリチオカーボネート型、ジチオカルバメート型等が挙げられる。これらの中でも、スチレンやメタクリレート系のモノマーを使用するため、トリチオカーボネート型が好ましい。
ジチオベンゾエート型は、ジチオベンゾ酸2-シアノプロパン-2-イル、4-シアノ-4-[(チオベンゾイル)スルファニル]ペンタン酸等が挙げられる。
トリチオカーボネート型は、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸、2-シアノ-2-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]プロパン、S,S-ジベンジルトリチオ炭酸、4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸メチル、トリチオ炭酸=ビス[4-(アリルオキシカルボニル)ベンジル]、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-アセチルオキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス{4-[エチル-(2-ヒドロキシエチル)カルバモイル]ベンジル}、トリチオ炭酸=ビス{4-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)ベンジル}、2-{[(ドデシルチオ)カルボノチオイル]チオ}プロパン酸、3-<{[(1-カルボキシエチル)チオ]カルボノチオイル}チオ>プロパン酸、4-<{[(2-カルボキシエチル)チオ]カルボノチオイル}チオ>-4-シアノペンタン酸等が挙げられる。
ジチオカルバメート型は、4-クロロ-3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸2’-シアノブタン-2’-イル、3,5-ジメチルピラゾール-1-カルボジチオ酸シアノメチル、N-メチル-N-フェニルジチオカルバミン酸シアノメチル等が挙げられる。
<有機テルル化合物を用いる重合法(TERP)>
TERP法は、有機テルル化合物の存在下で、テルル原子と炭素との結合の熱解離と、それに続いて退化的連鎖移動とを経ることにより重合を行なう方法である。有機テルル化合物は、(メチルテラニルメチル)ベンゼン、(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、1-クロロ-4-(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、1-トリフルオロメチル-4-(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、3,5-ビス-トリフルオロメチル-1-(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-(1-メチルテラニルエチル)ベンゼン、2-メチルテラニルプロピオニトリル、(2-メチルテラニルプロピル)ベンゼン、メチル2-メチルテラニル-2-メチル-プロピオネート、エチル2-メチルテラニル-2-メチル-プロピオネート、2-メチルテラニル-2-メチル-プロピオニトリル等が挙げられる。
上記重合開始剤として用いた有機テルル化合物に加えて、有機ジテルル化合物をさらに添加しても良い。
有機ジテルル化合物は、ジメチルジテルリド、ジエチルジテルリド、ジ-n-プロピルジテルリド、ジイソプロピルジテルリド、ジシクロプロピルジテルリド、ジ-n-ブチルジテルリド、ジ-s-ブチルジテルリド、ジ-t-ブチルテルリド、ジシクロブチルテルリド、ジフェニルジテルリド、ビス-(p-メトキシフェニル)ジテルリド、ビス-(p-アミノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-ニトロフェニル)ジテルリド、ビス-(p-シアノフェニル)ジテルリド、ビス-(p-スルホニルフェニル)ジテルリド、ジナフチルジテルリド、ジピリジルジテルリド等が挙げられる。
<原子移動ラジカル重合法(ATRP法)>
原子移動ラジカル重合法では、レドックス重合触媒として、銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体を用いて行われる。遷移金属錯体は、例えば塩化銅(I)臭化銅(I)などの低原子価のハロゲン化遷移金属が挙げられる。
上記遷移金属錯体には有機配位子が使用される。有機配位子は、重合溶剤への可溶性およびレドックス重合触媒の可逆的な変化を可能にするために使用される。遷移金属の配位原子としては、窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子等が挙げられる。
原子ラジカル重合法に使用される開始剤は、主に、反応性の高い炭素ハロゲン結合を有する有機ハロゲン化物、ハロゲン化スルホニル化合物等を用いる。例えば、ブロモイソ酪酸エチル、ブロモ酪酸エチル、クロロイソ酪酸エチル、クロロ酪酸エチル、パラトルエンスルホン酸クロライド、1-ブロモエチルベンゼン、クロロエチルベンゼン等である。これらは単独または併用で用いる。
<ニトロキサイド法(NMP法)>
ニトロキシドを介するリビングラジカル重合法は、安定なニトロキシフリーラジカル(=N-O・)をラジカルキャッピング剤として用いて行われる。安定なニトロキシフリーラジカルとしては、特に限定されないが、2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジニルオキシラジカル(TEMPO)、2,2,6,6-テトラエチル-1-ピペリジニルオキシラジカル、2,2,6,6-テトラメチル-4-オキソ-1-ピペリジニルオキシラジカル、2,2,5,5-テトラメチル-1-ピロリジニルオキシラジカル、1,1,3,3-テトラメチル-2-イソインドリニルオキシラジカル、N,N-ジ-t-ブチルアミンオキシラジカル等が挙げられる。ニトロキシフリーラジカルの代わりに、ガルビノキシル(galvinoxyl)フリーラジカル等の安定なフリーラジカルを用いても構わない。
上記ラジカルキャッピング剤は、ラジカル重合開始剤と併用される。両者の併用割合は特に限定されるものではないが、ラジカルキャッピング剤1モルに対し、ラジカル開始剤0.1~10モルが適当である。
ラジカル重合開始剤は、例えば、ジ-t-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α、α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3などのジアルキルパーオキサイド類;t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのパーオキシエステル類;シクロヘキサノンパーオキサイド、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;2,2-ビス(4,4-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレート、などのパーオキシケタール類;クメンヒドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5-ジメチルシクロヘキサン-2,5-ジハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;ベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;ビス(t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類などの有機過酸化物、またはこれらの混合物が挙げられる。
本明細書でリビングラジカル重合体の合成は、RAFT法が好ましい。そのため分散剤は、チオカルボニル化合物残基を有することが好ましい。
<分散剤の合成>
分散剤は、モノマー混合物を溶液重合で合成することが好ましい。重合の際、ラジカル重合開始剤、およびリビング重合剤を添加できる。無水マレイン酸を含むモノマー混合物を重合して合成し、次いで無水マレイン酸単位の酸無水物基を変性して、マレイン酸単位やマレイン酸アミド誘導体単位、マレイン酸エステル誘導体単位を合成できる。
分散剤の酸価は、50~300mgKOH/gが好ましく、70~250mgKOH/gがより好ましく、80~200mgKOH/gがさらに好ましい。酸価を上記範囲内にすることで、着色剤分散体が優れた保存安定性と再分散性を両立し、金属イオンとより効率的に架橋することで分子量が向上し、上質紙表面に留まり易くなりより高い印刷濃度が実現できる。
無水マレイン酸単位、マレイン酸単位、マレイン酸アミド誘導体単位およびマレイン酸エステル誘導体単位を含む全マレイン酸単位は、分散剤の全モノマー単位中、5~30質量%が好ましく、10~25質量%がより好ましい。
芳香族含有モノマー単位の含有量は、分散剤の全モノマー単位中、5~45質量%が好ましく、15~40質量%がより好ましい。適量含有することで、分散剤は着色剤表面に吸着しやすくなり、保存安定性が向上し、さらに非塗工紙上での印刷濃度も向上する。
アルキル基含有(メタ)アクリレート単位の含有量は、分散剤の全モノマー単位中、10~85質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましく、40~70質量%がさらに好ましい。適量含有することで分散剤は着色剤の表面により吸着し易くなり、保存安定性がより向上する。
一実施形態において、シアノ基含有モノマー単位、複素環含有モノマー単位(ただし、芳香環含有モノマーを除く)、及び、脂環式炭化水素基含有モノマー単位の含有量の総量は、分散剤の全モノマー単位中、5~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~45質量%がさらに好ましい。適量含有することで、分散剤は着色剤の表面により吸着し易くなり、保存安定性がより向上するうえ、非塗工紙および塗工紙の両方で、高い印刷濃度を有する印刷物が作製できる。
溶液重合に使用する有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。
有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
分散剤の重量平均分子量は、5,000~40,000が好ましく、7,000~30,000がより好ましい。適度な重量平均分子量を有すると、着色剤への吸着率が向上し、保存安定性、微細分散性がより向上する。
分散剤の含有量は、着色剤100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましく、15~35質量部がさらに好ましい。適量含有すると分散剤は着色剤の表面により吸着し易くなり、保存安定性がより向上する。また、流動性に優れ、乾燥時の粘度上昇をより抑制できる。さらに、金属イオンとより効率的に架橋することで分子量が向上し、上質紙表面に留まり易くなりより高い印刷濃度が実現できる。
<着色剤分散体>
本明細書の着色剤分散体は、さらに塩基性化合物、バインダー樹脂、架橋剤等を含有できる。
<塩基性化合物>
塩基性化合物は、分散剤に由来するカルボキシル基を中和し、着色剤粒子を安定的に分散させる。塩基性化合物は、アンモニア、ジメチルアミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン;水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物等の無機アルカリ;有機酸や鉱酸等が挙げられる。
分散剤の中和度は、着色剤分散体の分散安定性の観点から、分散剤のカルボキシル基のうち10~200mol%が好ましく、40~160mol%がより好ましい。ここで中和度は、塩基性化合物のモル当量を分散剤のカルボキシル基のモル量で除したものである。下記式(2)によって求めることができる。

{(塩基性化合物の重量(g)/塩基性化合物の当量)/[(分散剤の酸価(KOHmg/g)×分散剤の重量(g)/(56.1×1,000)]}×100 式(2)
塩基性化合物は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
<樹脂改質剤>
本発明の着色剤分散体に含まれる分散剤は、樹脂改質剤により変性されていることが好ましい。樹脂改質剤は、分散剤の官能基と反応可能な官能基を有する化合物である。このような化合物を添加することで、分散剤の極性を変化させることができる。
分散剤の、樹脂改質剤の官能基と反応可能な官能基は、例えばカルボキシ基等の酸基が挙げられる。
樹脂改質剤は、従来公知のいずれの化合物も使用できる。例えば、エポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、アンモニア、アミノ基、第四級アンモニウム塩、チオール基、アジリジニル基、カルボジイミド基、オキサゾリン基等を有する化合物が挙げられる。これらの中でもエポキシ基が好ましい。
樹脂改質剤1分子中に含まれる、分散剤の官能基と反応可能な官能基の数は、1個または2個以上が好ましい。反応可能な官能基の数が1個の場合、この化合物は末端キャップ剤(エンドキャップ剤)とも呼ばれる。例えば、分散剤のカルボキシ基と、アルキル基や芳香族基等の疎水性基とエポキシ基を1個有する末端キャップ剤が反応することで、カルボキシ基のモル数が減少し、同時にアルキル基や芳香族基等の疎水性基が導入されることにより、分散剤を疎水性に改質することができる。一方では、親水性基とエポキシ基を1個有する末端キャップ剤が反応することで、分散剤を親水性に改質することもできる。
上記反応可能な官能基の数が2個以上の場合、この化合物は架橋剤とも呼ばれる。例えば分散剤のカルボキシ基と、アルキル基や芳香族基等の疎水性基とエポキシ基を2個以上有する架橋剤が反応することで、カルボキシ基のモル数が減少し、同時にアルキル基や芳香族基等の疎水性基を導入することにより、分散剤を疎水性に改質できる。一方では、親水性基とエポキシ基を2個以上有する架橋剤が反応することで、分散剤を親水性に改質することもできる。また、架橋剤を用いた場合、架橋剤1分子中に含まれる官能基の一部または全部が、分散剤の官能基2か所以上と反応し、分散剤を分子間または分子内で架橋することで、強固な三次元構造を形成する場合がある。
樹脂改質剤は、架橋剤が好ましい。分散剤は、疎水性に変性することが好ましい。特に、樹脂改質剤として架橋剤を用い、分散剤を疎水性に変性することがより好ましい。分散剤が疎水性に変性され、かつ、架橋されることで、分散剤がより強固に着色剤に吸着し、保存安定性が向上するため好ましい。
樹脂改質剤の重量平均分子量または式量は、100~2,000が好ましく、120~1,500がより好ましく、150~1,000がさらに好ましい。
架橋剤は、水中で効率よく分散剤のカルボキシル基と反応させる面で適度な水溶性があることが好ましい。水溶性は、架橋剤の25℃の水100gに対する溶解量が0.1~50gが好ましく、0.2~40gがより好ましく、0.5~30gがさらに好ましい。
樹脂改質剤の添加量は、分散剤中の官能基モル数に対し、樹脂改質剤の官能基のモル数が0.1~3.0当量が好ましく、0.4~1.5当量がより好ましい。樹脂改質剤の添加量を前記範囲とすることで、着色剤の粒子表面に吸着した樹脂の一部または全部を変性できる。また架橋剤として使用する場合、着色剤は、強固な三次元構造を形成した分散剤により被覆されるため好ましい。
樹脂改質剤は、例えば、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、C12-C13混合アルコールグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド等の、1分子中にエポキシ基を1個有する化合物;
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトフタレート、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル等のポリグリシジルエーテル等の、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物;
4,4’-(3-エチルオキセタン-3-イルメチルオキシメチル)ビフェニル(OXBP)、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン(EHO)、1,4-ビス[{(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ}メチル]ベンゼン(XDO)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOX)、ジ[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル(DOE)、1,6-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシ]ヘキサン(HDB)、9,9-ビス[2-メチル-4-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-[2-{2-(3-オキセタニル)}ブトキシ]エトキシフェニル]フルオレン等の、オキセタニル基を有する化合物;
有機ポリイソシアネート又はイソシアネート基末端プレポリマー、有機ポリイソシアネートは、例えばヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;トリレン-2,4-ジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート;脂環式ジイソシアネート;芳香族トリイソシアネート等の、(ブロック)イソシアネート基を有する化合物、またはそれらのウレタン変性体;
ヒドラジド、カルボジヒドラジド、チオカルボヒドラジド、オキサリルジヒドラジド等の、ジアミン;
エチレンジアミン、1,3-プロパンジアミン、1,2-プロパンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、1,8-オクタメチレンジアミン、1,11-ジアミノウンデカン、1,12-ジアミノドデカン、2-ブチル-2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,5-ジアミノ-2-メチルペンタン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、2,4,4-トリメチル-1,6-ジアミノヘキサン、ラウリルプロピレンジアミン、エチレングリコールビス(2-アミノエチル)エーテル、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,13-ジアミノ-4,7,10-トリオキサトリデカン、ポリオキシプロピレンジアミン、メタントリアミン、1,2,3-プロパントリアミン、1,8-ジアミノ-4-アミノメチルオクタン、3-(2-アミノエチル)ペンタン-1,5-ジアミン、1,4,7-トリアミノシクロノナン-1,4,7-トリイド、ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、2,4-ジメチル-4-エチルアミノ-2,3,5-トリアミノヘキサン、2,3-ビス(ジアミノメチル)ブタン-1,1,4,4-テトラアミン、1,2-ビス(メチルアミノ)エタン、2,5-ジアミノ-2,5-ジメチルヘキサン、ブタン-1,1,4-トリメチルアミン、ブタン-1,1,4,4-テトラメチルアミン、1,2-ビス(ジメチルアミノ)エタン、ブタン-1,1,4-トリジメチルアミン、ブタン-1,1,4,4-テトラジメチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ビスヘキサメチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、アジピン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、エイコサン二酸ジヒドラジド、バリンジヒドラジド、テトラエチレンペンタミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(4-アミノエチル)アミン、3,3’-ジアミノ-N-メチルジプロピルアミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(4-アミノエチル)アミン、1-メチルアミノ-2-ジメチルアミノエタン、直鎖ポリエチレンイミン、分岐鎖ポリエチレンイミン等の、アルキレンジアミン;
1,2-シクロヘキサンジアミン、1,4-シクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、3(4),8(9)-ビス(アミノメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(TCDジアミン)、イソプロピル-2,4-ジアミノシクロヘキサン、イソプロピル-2,6-ジアミノシクロヘキサン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4’-メチレンビス(2-メチルシクロヘキシルアミン)、アダマンタン-1,3-ジアミン、シクロヘキサン-1,3,5-トリアミン、2,3,5-トリアミノビシクロ[2.2.1]ヘプタン、ピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、N-シクロヘキシル-1,3-プロパンジアミン等の、脂環ジアミン;
o-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエンジアミン、2,2’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、キシリレンジアミン、トリス(4-アミノフェニル)メタン、1,2,4-ベンゼントリアミン、メラミン、ベンゼン-1,2,4,5-テトラアミン、ピリミジン-2,4,5,6-テトラアミン、3,3’-ジアミノベンジジン、テトラアミノフタロシアニン、イソフタル酸ジヒドラジド等の、芳香環ジアミン;ブタン-1,4-ビスアンモニウムクロライド等の、アミノ基または第四級アンモニウム塩を有する化合物;
メタンチオール、エタンチオール、チオフェノール等の、チオール基を有する化合物;
N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、N,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、ビスイソフタロイル-1-(2-メチルアジリジン)、トリ-1-アジリジニルホスフィンオキサイド、N,N’-ヘキサメチレン-1,6-ビス(1-アジリジンカルボキサイト)、2,2’-ビスヒドロキシメチルブタノール-トリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタントリ-β-アジリジニルプロピオネート、トリス-2,4,6-(1-アジリジニル)-1,3,5-トリアジン、4,4’-ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等の、アジリジニル基を有する化合物;
カルボジイミド化触媒の存在下でジイソシアネート化合物を脱炭酸縮合反応させることによって生成した高分子量ポリカルボジイミド等の、カルボジイミド基を有する化合物;
脂肪族基又は芳香族基に2個以上、好ましくは2~3個のオキサゾリン基が結合した化合物、2,2-ビス(2-オキサゾリン)、1,3-フェニレンビスオキサゾリン、1,3-ベンゾビスオキサゾリン等のビスオキサゾリン化合物、該化合物と多塩基性カルボン酸とを反応させて得られる末端オキサゾリン基含有化合物等の、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
これらの中でもエポキシ基を有する化合物が好ましく、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、p-t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、ラウリルアルコール(EO)15グリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(EO)5グリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、C12-C13混合アルコールグリシジルエーテル、N-グリシジルフタルイミド、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルオルトフタレート、ソルビトールポリグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型ジグリシジルエーテルが好ましく、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルがより好ましく、トリメチロールプロパンモノグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテルがより好ましい。これらは、単独または2種類以上を併用して使用できる。なお、樹脂改質剤は、処理効率の観点から、適度に水に溶解することが好ましい。市販品は、ナガセケムテックス社製デナコールEX321、EX321L、EX810、EX811、EX850、EX850L;ADEKA社製アデカグリシロールED-505等が挙げられる。
樹脂改質剤は、単独または2種以上を併用して使用できる。
着色剤分散体の不揮発分は5~80質量%になる程度に水で調整することが好ましい。
着色剤のD50平均粒子径(メディアン径)は、20~200nmが好ましく、25~150nmがより好ましく、30~130nmがさらに好ましく、35~90nmが特に好ましい。適度な粒子径を有すると例えば、インクジェットインキに使用する場合、着色剤分散体の保存安定性がより向上する。なお、D50平均粒子径の測定は、動的光散乱法を用いる(例えばマイクロトラック・ベル社製マイクロトラックUPAEX-150)。
<着色剤分散体の製造>
着色剤分散体の製造方法は、例えば、先ず分散剤、塩基性化合物、および水を攪拌混合した混合物に着色剤を添加し混合撹拌した後、分散処理を行う。次いで、必要に応じて遠心分離処理を行って着色剤分散体を得る。なお、各材料を配合するタイミングは、任意であり、分散処理を複数回できることはいうまでもない。
前記分散処理は、次の分散装置を使用できる。分散装置は、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、シルバーソンミキサー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミル、ボールミル、2本ロールミル、3本ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、超音波発振子を具備する分散機、高圧分散機、対向衝突型分散機、斜向衝突型分散機、バッチ型ローターステーター、インライン型ローターステーター等が挙げられる。これらの中でも、ビーズミルが好ましい。ビーズミルの市販品は、例えば、スーパーミル、サンドグラインダー、アジテータミル、グレンミル、ダイノーミル、パールミルおよびコボルミル等が挙げられる。
着色剤は、前記分散処理を行う前に微細化処理を行うことが好ましい。これにより着色剤の一次粒子径をより微細にできため着色剤粒子の体積平均粒子径D50(メディアン径)がより微細な着色剤分散体を得られる。微細化処理は、着色剤をソルトミリング法で分散剤を被覆し微細化する方法が好ましい。ソルトミリング法は、例えば、水溶性溶剤、水溶性無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、着色剤、ならびに分散剤を混練して着色剤の表面を分散剤で被覆し、次いで水溶性無機塩および水溶性溶剤を除去する工程である。ソルトミリング法に使用する混練装置は、例えば、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、横型サンドミル、縦型サンドミルおよび/又はアニューラ型ビーズミル等が挙げられる。これらの中でも着色剤の表面を効率的に被覆できる面でニーダーが好ましい。混練条件は、着色剤の種類、微細化の程度等に応じて、適宜調整できる。また必要に応じて加熱するとも冷却することもできる。
水溶性溶剤は、着色剤および水溶性無機塩を湿潤する。水溶性溶剤は、水に溶解(混和)しつつ、水溶性無機塩を溶解しない化合物である。水溶性溶剤は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのグリコール類;ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール等のジオール類;ラウリン酸プロピレングリコール等のグリコールエステル;ジエチレングリコールモノエチル、ジエチレングリコールモノブチル、ジエチレングリコールモノヘキシル等のエーテル;プロピレングリコールエーテル、ジプロピレングリコールエーテル、およびトリエチレングリコールエーテルを含むセロソルブ等のグリコールエーテル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、2-ブタノール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール等のアルコール類;スルホラン;γ-ブチロラクトン等のラクトン類;N-(2-ヒドロキシエチル)ピロリドン等のラクタム類;グリセリン等が挙げられる。これらの中でもジエチレングリコール、トリエチレングリコール等のグリコール類が好ましい。
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
<インキ>
本発明のインキは、着色剤分散体を含む。インキの用途は、活版印刷、フレキソ印刷等に用いる凸版印刷用インキ、グラビア印刷等に用いる凹版印刷用インキ、オフセット印刷等に用いる平版印刷用インキ、スクリーン印刷、捺染印刷等に用いる孔版印刷用インキ、インクジェット印刷、静電荷現像トナー印刷に用いるオンデマンド印刷用インキ等が挙げられる。これらの中でも、インクジェット印刷に用いるインクジェットインキが好ましい。なお、着色剤分散体のインキ以外の用途は、例えば、建材や自動車用などの塗料、カラーフィルタ、固体撮像素子、LiDAR等のセンサー等が挙げられる。
<インキの製造方法>
本発明のインキの製造方法を説明する。なお、本発明のインキの製造方法は以下に限定されない。
インキは、着色剤分散体、水溶性有機溶剤、および水、ならびに必要に応じてバインダー樹脂、界面活性剤、およびその他添加剤を加え、撹拌・混合して製造する。なお、必要に応じて前記混合物を40~100℃の範囲で加熱しながら撹拌・混合してもよい。
(粗大粒子の除去)
インキに含まれる粗大粒子は、ろ過分離、遠心分離などの手法により除去することが好ましい。ろ過分離の方法は、メンブランフィルターを使用して、インキを吸引ろ過し、粗大粒子を分離することが好ましい。またフィルター開孔径は、粗大粒子、ダストが除去できるものであれば、特に制限されないが、インクジェットインキの場合、好ましくは0.3~5μm、より好ましくは0.5~3μmである。
<インクジェットインキ>
本発明のインクジェットインキは、着色剤分散体以外に水溶性溶剤(水以外)を含むことが好ましい。本明細書のインクジェットインキは、水を溶媒(媒体)として使用するが、インキの乾燥を防止するため、水溶性溶剤を併用することが好ましい。水溶性溶剤は、水と比較し表面張力が低いため、印刷後の基材への浸透性、濡れ広がり性が向上する。
水溶性溶剤は、多価アルコール、多価アルコールアルキルエーテル、多価アルコールアリールエーテル、含窒素複素環化合物、アミド、アミン、含硫黄化合物、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他水溶性溶剤等が挙げられる。
多価アルコールは、例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、1,4-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、ペトリオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3,3-ジメチル-1,2-ブタンジオール、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、5-ヘキセン-1,2-ジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール等が挙げられる。これらの中でも、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2-へプタンジオールが好ましい。
多価アルコールアルキルエーテルは、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等が挙げられる。多価アルコールアリールエーテルは、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル等が挙げられる。
含窒素複素環化合物は、例えば、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチルイミイダゾリジノン、ε-カプロラクタム、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。アミドは、例えば、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド等が挙げられる。アミンは、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等が挙げられる。含硫黄化合物類は、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等が挙げられる。
水溶性溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
水溶性溶剤の含有量は、インクジェットインキ中、3~60質量%が好ましく、3~50質量%がより好ましい。また、水の含有量は、インクジェットインキ中、10~90質量%が好ましく、30~80質量%がより好ましい。適度に水溶性溶剤を含有すると、吐出安定性が向上する。
インクジェットインキは、バインダー樹脂を含有することが好ましい。これにより、印字した印刷層の耐水性、耐溶剤性、耐擦過性、光沢性などが向上する。バインダー樹脂は、例えば(メタ)アクリル樹脂、スチレン-(メタ)アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、スチレンブタジエン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、シリコーン含有樹脂等が挙げられる。
バインダー樹脂の含有量は、インクジェットインキの不揮発分中、1~30質量%が好ましく、2~20質量%がより好ましい。
バインダー樹脂は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
インクジェットインキは、必要に応じて添加剤を含有できる。添加剤は、例えば、界面活性剤、消泡剤、ワックス、保湿剤、防腐剤等が挙げられる。添加剤の合計含有量は、インクジェットインキ中、0.05~10質量%が好ましく、0.2~5質量%がより好ましい。
インクジェットインキは、ワックスを含むことが好ましい。なお上記「ワックス」とは、常温(25℃)で固体であり、かつ、40~200℃の間の温度で溶融する(すなわち、融点を有する)樹脂のことである。また本明細書では、ワックスは上記バインダー樹脂には含まれないものとする。
一般に、ワックスは水との親和性が小さく、気液界面に偏在しやすいため、印刷物になった後も、その表面を覆うような形で存在する。そのため、上記印刷物のブロッキング抑制性が特段に向上する。また、分散剤中に含まれるカルボキシル基による、紙中の金属イオンとの架橋を阻害することがないため、上質紙等の非塗工紙であっても印刷濃度が高い印刷物を得ることができる。
ワックスの融点は、インクジェットインキの保存安定性に悪影響を及ぼすことがない点、および、上述した分散剤の機能を阻害することがなく、印刷濃度の高さや乾燥流動性が良好の点から80~180℃が好ましく、100~160℃がより好ましい。
ワックスは、インクジェットインキ中に溶解した状態(水溶性樹脂)、または分散した状態(樹脂微粒子)で存在する。特に後者は、印刷物のブロッキングの防止が容易である点、分散剤と相互作用しにくく、インクジェットインキの保存安定性が悪化しにくい点、さらには、紙表面の空隙を塞ぐことができ、非塗工紙上の印刷物における印刷濃度が特段に向上する点から好ましい。なお本明細書において「水溶性樹脂」とは、とは、25℃において、対象となる樹脂の1質量%水溶液が、肉眼で見て透明であるものを表す。また「樹脂微粒子」とは、水溶性樹脂以外の樹脂であって、上述した着色剤の場合と同様の装置および方法によって測定した、D50平均粒子径が、5~1,000nmである樹脂を指す。
ワックスとして樹脂微粒子を使用する場合、インクジェットインキの保存安定性の確保、ならびに、印刷物の印刷濃度の向上およびブロッキングの防止の観点から、D50平均粒子径は10~200nmが好ましく、20~150nmがより好ましく、30~100nmがさらに好ましい。
ワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスが好ましい。これらの中でも、比較的融点が高く、インクジェットインキの保存安定性が悪化することがない点、および、上述した分散剤の機能を阻害することがなく、印刷濃度の高さといった本発明の効果が良好に発現する点から、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスがより好ましい。
前記保湿剤は、糖類が好ましい。上記糖類は、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類等が挙げられる。糖類は、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオース等が挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α-シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む。また、これらの糖類の誘導体である、例えば、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール[一般式:HOCH2(CHOH)nCH2OH(ただし、n=2~5の整数を表す)で表される]、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸等が挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましく、マルチトール、ソルビットが好ましい。
インクジェットインキは、各種のインクジェット用プリンターに使用できる。インクジェット方式は、例えば、荷電制御型、スプレー型等の連続噴射型、ピエゾ方式、サーマル方式、静電吸引方式等のオンデマンド型等が挙げられる。
<フレキソ印刷インキ>
本発明のおけるフレキソ印刷インキは、着色剤分散体以外にバインダー樹脂を含有することがより好ましい。バインダー樹脂は、アクリル樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。また、フレキソ印刷インキは、添加剤、溶剤、架橋剤を含有できる。
(アクリル樹脂)
アクリル樹脂は、アクリル共重合体、アクリル酸-スチレン共重合樹脂、アクリル酸-マレイン酸樹脂、アクリル酸-スチレン-マレイン酸樹脂等が挙げられる。なお、アクリル共重合体は、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルのうち2種以上の単量体を使用する共重合体である。
(ウレタン樹脂)
ウレタン樹脂には、ポリウレタン樹脂の他、ポリウレタン-ウレア樹脂も挙げられる。ウレタン樹脂は、造膜性の観点から、酸価を有することが好ましい。ウレタン樹脂の重量平均分子量は、10,000~100,000が好ましい。適度な分子量を有すると基材への密着性、耐水摩擦性、耐スクラッチ性、耐ブロッキング性がより向上する。
バインダー樹脂の酸価は20~180mgKOH/gが好ましく、40~150mgKOH/gがより好ましい。適度な酸価により印刷における再分散性、基材への密着性、耐水摩擦性、耐ブロッキング性がより向上する。
バインダー樹脂の含有量は、フレキソ印刷インキ100質量%中、1~50質量%が好ましい。適度に含有すると印刷層の強度が向上し、基材への密着性および耐水摩擦性がより向上する。
フレキソ印刷インキは必要に応じて添加剤を含有できる。添加剤は、レベリング剤、濡れ剤、撥水剤、消泡剤、ワックス、架橋剤等が挙げられる。
フレキソ印刷インキに使用する溶剤は、水、または前述の水溶性溶剤等が挙げられる。溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
フレキソ印刷インキは、前述の成分を混合分散して調製できる。例えば、本発明の着色剤分散体に加え、任意成分としてワックス、ぬれ剤等を添加して混合撹拌して水性フレキソインキを作製できる。分散、撹拌は、例えば、ハイスピードミキサー、ホモジナイザー、プラネタリーミキサー、トリミックス、ニーダー、エクストルーダー、横型サンドミル、縦型サンドミルまたは/およびアニューラ型ビーズミル、ペイントシェイカー、ボールミル等、超音波発振子を備える分散機、2本ロールミル、3本ロールミル等が挙げられる。
<インキセット>
本発明のインキセットは、色が異なるインキを2種以上含むことが好ましい。2種(2色)以上のインキのうち、少なくとも1色のインキは、本発明の着色剤分散体を含む。インキセットが含む色は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、およびホワイトから2色以上選択されるインキセット。または、レッド、グリーン、ブルー、およびオレンジから2色以上選択されるインキセットが挙げられる。また、インキセットに使用する着色剤は、特に限定されるものではないが、前記記載の着色剤から適宜選択して使用することができる。用途に関しては、特に限定されるものではないが、商業印刷用途等の既存の印刷市場での用途に加えて、ダンボール、紙器パッケージ、およびラベルといったパッケージ市場用途で使用できる。なお、インキセットは、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック、ホワイト、レッド、グリーン、ブルー、およびオレンジ以外の色のインキを使用できることはいうまでもない。インキセットは、インクジェットインキセット、フレキソ印刷インキセット等が挙げられる。
<印刷物の製造方法>
本発明の印刷物は、基材、およびインキから形成されてなる印刷層を備えることが好ましい。
前記基材として紙基材やプラスチック基材等が挙げられる。紙基材はコート紙、アート紙、キャスト紙、および微塗工紙等の塗工紙、ならびに上質紙、およびフォーム紙等の非塗工紙に大別される。塗工紙は、コート剤が塗布され、印刷面が平滑である一方、非塗工紙は、コート剤の塗布がないため、表面が粗く、両者ではインクの吸収性が大きく異なる。
プラスチック基材はポリ塩化ビニルシート、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンフィルム等が挙げられる。また、基材は、複数の素材を積層した積層体であってもよい。これらの中でも上質紙等の非塗工紙が好ましい。
前記基材の厚さは、20~300μm程度であり、前記基材の坪量は、30~300g/m2程度である。
前記印刷層の厚さは、0.01~5μmが好ましく、0.1~4μmがより好ましく、さらに0.5~3μmが好ましい。印刷層の厚さを上記の範囲内にすることで、印刷物としての発色を十分に得ながら、印刷層作製時の乾燥工程で充分に溶剤を蒸発させ、強固な膜を形成することができる。
前記印刷層の形成は、インクジェット印刷機、フレキソ印刷機、グラビア印刷機、オフセット印刷機等、各インキに対応する印刷機を使用すればよい。
インキを印刷後、必要に応じて乾燥工程を追加できる。乾燥工程に使用する乾燥機は、例えば、熱風乾燥機、赤外線ヒーター等が挙げられる。
<塗料>
本発明における塗料は、着色剤分散体、およびバインダー樹脂を含有することが好ましく、架橋剤を含有することがより好ましい。塗料は、着色剤分散体、バインダー樹脂を含む水性塗料が好ましい。着色剤分散体とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、架橋性官能基を含有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン含有樹脂等が挙げられる。架橋剤は、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリイソシアネート化合物、ブロックポリイソシアネ-ト化合物、エポキシ化合物、カルボキシル基含有化合物、酸無水物、アルコキシシラン基含有化合物等が挙げられる。これらの中でもアクリル樹脂とメラミン樹脂との併用が好ましい。
塗料は、さらに必要に応じて、水、有機溶媒、レオロジーコントロール剤、顔料分散剤、沈降防止剤、硬化触媒、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、表面調整剤、架橋剤、体質顔料等を適宜含有できる。
塗料は、前記の材料を混合・分散して作製できる。
塗料は、様々な基材に塗工できる。基材は、鉄、ステンレス、アルミニウム等およびその表面処理物等の金属基材;セメント類、石灰類、石膏類等のセメント系基材;ポリ塩化ビニル類、ポリエステル類、ポリカーボネート類、アクリル類等のプラスチック系基材等が挙げられる。
塗料の塗工は、刷毛塗り、ローラー塗装、スプレー塗装等が挙げられる。塗工後、常温また加熱乾燥して被膜を形成する。被膜の厚みは、通常5~70μm程度である。
<文具>
本発明における文具用インキは、着色剤分散体を含み、筆記具、記録計、プリンター等の用途に使用できる。文具は、バインダーを含むことが好ましい。文具は、各用途(例えば、ボールペン、マーキングペン等)に応じて、任意に、水溶性有機溶剤、増粘剤、分散剤、潤滑剤、防錆剤、防腐剤、防菌剤等を含有できる。着色剤とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
文具は、高濃度な着色剤分散体を作製し、それをさらに水で希釈し前記バインダー樹脂、必要に応じてその他の添加剤を添加して調製することが好ましい。前記着色剤分散体の分散方法は、特に限定されず前述の公知の分散方法でよい。文具は、例えば、チキソトロピー性インキ(例えば、ゲルインキ水性ボールペン用インキ)、ニュートニアン性インキ(例えば、低粘度水性ボールペン用インキ)等の用途がより好ましい。また、文具のpH(25℃)は、使用性、安全性、インキ自身の安定性、インキ収容体とのマッチング性の点からpH調整剤などにより5~10に調整されることが好ましく、6~9.5がより好ましい。
着色剤の含有量は、文具の描線濃度に応じて適宜調整できるところ、文具用インキ組成物全量中、0.1~40質量%程度が好ましい。
<捺染剤>
本発明における捺染剤は、着色剤分散体、水、バインダー樹脂を含むことが好ましい。捺染剤は、織布や不織布、編布などの布帛に、文字、絵、図柄などの画像を記録できる。なお、覆着色剤とバインダー樹脂との比率は、求められる用途によって異なり、特に限定されるものではない。
バインダー樹脂は、前述のバインダー樹脂を使用できる。バインダー樹脂は、水分散粒子、水溶性樹脂等いずれの形態でも使用できる。バインダー樹脂は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
捺染剤は、着色剤分散体を作製した後、さらに水と、バインダー樹脂と、その他必要に応じた添加剤を混合して、着色したい繊維に応じて浸染、捺染など好ましい処理方法に合わせて捺染剤を作製できる。スクリーン記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を含有することが好ましい。スクリーン記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1~10質量%が好ましい。また、浸染用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、架橋剤等を含有することが好ましい。浸染用の捺染剤の着色剤濃度は、1~10質量%の範囲であるものを使用することが好ましい。浸染用の捺染剤の粘度は、1mPa・s~100mPa・sの範囲で印捺装置に合わせて任意に設定される。スプレー捺染用の捺染剤は、添加剤として、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を含有することが好ましい。スプレー記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1質量%~10質量%が好ましい。スプレー記録用の捺染剤の粘度は1mPa・s~100mPa・sの範囲で装置に合わせて任意に設定される。インクジェット記録用の捺染剤は、添加剤として、防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤等を含有することが好ましい。インクジェット記録用の捺染剤の着色剤濃度は、1質量%~20質量%が好ましい。前記添加剤は、前記被覆着色剤の水分散体に、前記バインダー樹脂ととともに添加することが好ましい。防腐剤は、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、1,2-ジベンジソチアゾリン-3-オン(アーチケミカルズ社のプロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルLV、プロキセルAQ、プロキセルBD20、プロキセルDL)等が挙げられる。粘度調整剤の具体例は、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム、スターチ等の主として水溶性の天然あるいは合成高分子物が挙げられる。pH調整剤は、コリジン、イミダゾール、燐酸、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、ほう酸等が挙げられる。キレート化剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、ニトリロ三酢酸、1,3-プロパンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、N-ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、イミノ二酢酸、ウラミル二酢酸、1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸およびこれらの塩(水和物を含む)等が挙げられる。酸化防止剤は、ヒンダードフェノール系化合物、ヒドロキノン系化合物、ホスファイト系化合物およびこれらの置換体、ハロゲン化銅、アルカリ金属ハロゲン化物等が挙げられる。紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等の有機化合物系紫外線吸収剤;酸化チタン、酸化亜鉛等の無機化合物系紫外線吸収剤;が挙げられる。捺染剤をインクジェット記録法に適用する場合、その表面張力を20mN/m以上60mN/m以下と調整することが好ましい。より好ましくは、20mN以上45mN/m以下であり、さらに好ましくは、20mN/m以上40mN/m以下である。表面張力が20mN/m未満となるとノズル面に液体が溢れ出し、正常に印字できない場合がある。一方、60mN/mを超えると非吸収基材でのはじきが発生し易い傾向がある。また粘度は、1.2mPa・s以上20.0mPa・s以下であることが好ましく、より好ましくは2.0mPa・s以上15.0mPa・s未満、さらに好ましくは3.0mPa・s以上12.0mPa・s未満である。粘度がこの範囲において、優れた吐出性と、長期間にわたる良好な噴射性の維持が達成できる。表面張力は前記界面活性剤により適宜調整可能である。
本発明における捺染剤は、布帛、人工皮革、天然皮革等に対して印捺することができる。特に布帛に対しての印捺に優れる。布帛は、繊維で構成される媒体であることが好ましく、織物の他不織布でもよい。素材は、綿、絹、羊毛、麻、ナイロン、ポリエステル、ポリウレタン、レーヨン等が挙げられる。
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されないことはいうまでもない。以下、特に断らない限り「部」は「質量部」、「%」は「質量%」である。
(酸価)
本発明において、分散剤を含む樹脂の酸価は、以下のようにして測定した。
三角フラスコ中に試料、約1gを精密に量り採り、蒸留水/ジオキサン(重量比:蒸留水/ジオキサン=1/9)混合液50mlを加えて溶解する。上記試料溶液に対して、電位差測定装置(京都電子工業社製、装置名「電位差自動滴定装置AT-710M」)を用いて、0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液(力価F)で滴定を行い、滴定終点までに必要な水酸化カリウム・エタノール溶液の量(α(mL))を測定した。乾燥状態の分散剤の値として、酸価(mgKOH/g)を次式(3)により求めた。

酸価(mgKOH/g)=(5.611×α×F)/S 式(3)

ただし、Sは試料の採取量(g)であり、αは0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の消費量(mL)であり、Fは0.1mol/L水酸化カリウム・エタノール溶液の力価である。
分散剤の合成に使用したリビング重合剤を表1に示す。
Figure 2024091507000001
分散剤の合成に使用したアミン、アルコールを表2に示す。
Figure 2024091507000002
表2中、「アミン2」として使用している「JEFFAMINE M1000」とは、HUNTSMAN社製の、オキシプロピレン単位(PO)及びオキシエチレン単位(EO)が付加したアミン(メトキシポリ(オキシプロピレン/オキシエチレン)-2-プロピルアミン)であり、質量平均分子量1000、PO/EO=3/19(モル比)である。
<分散剤の製造>
(分散剤1の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、無水マレイン酸15.0部、スチレン35.0部、メチルメタクリレート15.0部、ラウリルメタクリレート35.0部、リビング重合剤である4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸3.0部、メチルエチルケトン100.0部を仕込み、窒素ガスで置換した後、反応容器内を80℃に加熱した。そこへ撹拌しながら、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(東京化成工業社製)0.5部を6時間かけて滴下した。その後重合転化率が95~100%になったことを確認した後、反応温度を60℃まで下げて、水を13.8部(無水マレイン酸の仕込み量に対して5.0等量分)、ジアザビシクロウンデセンを0.05部加え、撹拌しながら80℃に加温し、5時間保持して反応を終了した。溶剤を減圧濃縮して完全に除去した。得られたランダム重合体の分散剤の数平均分子量は14,000、重量平均分子量は19,000、酸価は166mgKOH/g、分子量分散度は1.4であった。その後、ジメチルアミノエタノールを得られた分散剤の酸価から中和度が100%になるように加えたのち、固形分濃度が30%になるように水を加え、60℃で1時間撹拌し、分散剤1の水性化溶液(少なくとも水を含む液体媒体に、別の成分を溶解または分散させた溶液)を得た。
(分散剤2、3の製造)
分散剤1のリビング重合剤を表3に記載した化合物に変更した以外は分散剤1と同様にして合成を行い、分散剤2、3の水性化溶液(固形分濃度30%)を得た。
(分散剤4の製造)
分散剤1の原料と仕込み量を表3に記載した通りに変更し、リビング重合剤を2-メチル-2-(メチルテラニル)プロパンニトリル(東京化成工業社製)2.0質量部とジメチルジテルリド(東京化成工業社製)1.5質量部に変更した以外は分散剤1と同様にして合成を行い、分散剤4の水性化溶液(固形分濃度30%)を得た。
(分散剤5の製造)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、撹拌機を備えた反応容器に、無水マレイン酸15.0部、スチレン35.0部、リビング重合剤である4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸3.0部、メチルエチルケトン100.0部を仕込み、窒素ガスで置換した後、反応容器内を80℃に加熱した。そこへ撹拌しながら、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.25部を6時間かけて滴下し重合を行いAブロックを合成した。得られた反応溶液にメチルメタクリレート15.0部、ラウリルメタクリレート35.0部、を加え、撹拌しながら2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.25部を6時間かけて滴下し重合を行いBブロックを合成した。その後重合転化率が95~100%になったことを確認した。これ以降は、分散剤1と同様に合成を行い、ABブロック重合体である分散剤5の水性化溶液(固形分濃度30%)を得た。
(分散剤6~37の製造)
分散剤1の原料と仕込み量を表3に記載した通りに変更した以外は分散剤1と同様にして合成を行い、分散剤6~37の水性化溶液(固形分濃度30%)を得た。なお、表3の配合量は質量%である。
(分散剤38の製造)
分散剤1の原料と仕込み量を表2に記載した通りに変更し、リビング重合剤は使用せず、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)の仕込み量を5.0部に変更した以外は分散剤1と同様にして合成を行い、分散剤38の水性化溶液(固形分濃度30%)を得た。
Figure 2024091507000003
Figure 2024091507000004
Figure 2024091507000005
Figure 2024091507000006
<着色剤分散体の製造>
(着色剤分散体セット1の製造)
着色剤KとしてPrintex85(カーボンブラック、オリオンエンジニアドカーボンズ社製)を20部、分散剤1の水性化溶液(固形分濃度30%)を20部、水60部を混合し、攪拌機でプレミキシングした後、直径0.5mmのジルコニアビーズ1800部を充填した容積0.6Lのダイノーミルを用いて本分散を行い、ブラックの着色剤分散体を得た。
また、着色剤Kを、それぞれ下記の顔料に変更した以外は同様の方法を用いることで、着色剤分散体セット1(K,C,M,Y)を得た。
着色剤C1:トーヨーカラー社製LIONOGEN BLUE FG-7358G(C.I.PigmentBlue15:3)
着色剤M1:東京色材社製TOSHIKI RED150TR(C.I.PigmentRed150)
着色剤Y1:トーヨーカラー社製LIONOL YELLOW TT1405G(C.I.PigmentYellow14)
(着色剤分散体セット2~38の製造例)
使用する分散剤を表4に従って変更した以外は、着色剤分散体セット1と同様の方法を用いることで、着色剤分散体セット2~38(それぞれK,C,M,Yの4色)を得た。
Figure 2024091507000007
<インクジェットインキセットの製造>
(インクジェットインキセット1製造)
得られた着色剤分散体セット1のうちブラックの着色剤分散体を25.0部、プロピレングリコールを20.0部、1,2-ヘキサンジオールを5.0部、バインダー樹脂としてJoncryl538(BASFジャパン社製)を10.0部、イオン交換水を35.95部、レベリング剤としてサーフィノールDF110D(エアープロダクツジャパン社製)およびBYK-348(BYK社製)をそれぞれ0.1部および0.5部、pH調整剤としてトリエタノールアミンを0.5部、ワックスとしてAQUACER515(BYK社製)を2.9部、防腐剤としてプロキセルGXL(s)(アーチケミカル社製)0.05部を混合し、ブラック色のインクジェットインキを得た。着色剤分散体セット1のうち使用する着色剤分散体の色を変更した以外は同様の方法を用いることで、インクジェットインキセット1(K,C,M,Yの4色)を得た。
上記「AQUACER515」とは、BYK社製ポリエチレンワックス(樹脂微粒子)(融点135℃、不揮発分濃度35%)である。
<インクジェットインキセット2~38の製造>
着色剤分散体セット1をそれぞれ着色剤分散体セット2~38に変更した以外は、インクジェットインキセット1と同様に行いインクジェットインキセット2~38を得た。
<印刷物の製造>
(印刷物1の製造)
得られたインクジェットインキセット1をインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、型番:EM-930C、ピエゾ方式)に装填し、上質紙(日本製紙社製NPiフォームNEXT-IJ、米坪64g/m2)、およびコート紙(王子製紙社製OKトップコート、米坪104.7g/m2)に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、それぞれで全面ベタ印刷(ファインモード)した。その後、25℃、相対湿度50%で24時間放置後、印刷物1を得た。
<印刷物2~38の製造>
使用するインクジェットインキセット2~38に変更した以外は、印刷物1と同様にして、印刷物2~33を得た。
<実施例1~34、比較例1~4>
上記で製造した着色剤分散体、インクジェットインキ、印刷物について、以下に示す評価1~5を行った。
<評価1:保存安定性評価>
得られた着色剤分散体セットに関して、ブラック着色分散体、シアン着色分散体、マゼンタ着色分散体、イエロー着色分散体、それぞれを使用して、保存安定性の評価を下記の通り行った。着色剤分散体を70℃の恒温機に保存し、経時促進させた後、経時前後での着色剤分散体の粘度変化を評価した。粘度測定は、E型粘度計(東機産業社製TVE-20L、標準コーン)を用いて、25℃において回転数50rpmという条件で測定し、1分後の値を粘度値とした。評価基準は下記の通りである。評点2以上を実用可能領域とした。
5:K、C、M、Y各色において、四週間保存後の粘度変化率が±10%未満
4:K、C、M、Y各色において、二週間保存後の粘度変化率が±10%未満
3:K、C、M、Y各色において、一週間保存後の粘度変化率が±10%未満
2:K、C、M、Y各色において、一週間保存後の粘度変化率が±10%以上20%以下
1:K、C、M、Y各色において、一週間保存後の粘度変化率が±20%超
<評価2:粗粒量評価>
得られた着色剤分散体セットに関して、ブラックの着色分散体、シアン着色分散体、マゼンタ着色分散体、イエロー着色分散体、それぞれを使用して、着色剤分散体中の粗粒量の評価を下記のように行った。具体的には定量の着色剤分散体の25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/BGEヘルスケアライフサイエンス社製)への通過時間で評価した。粗粒が多い場合はフィルターが目詰まりをおこし通過時間が長く観測される。またさらに粗粒が多い場合はフィルターが閉塞し着色剤分散体を全量ろ過することができない。一般にインクジェットヘッドへインクを供給する経路に使用されるフィルターは1μmより大きく、またインクジェット記録用インクの着色剤濃度は着色剤分散体に比べ低いものが一般的であり、本試験方法によりろ過を通過すれば十分といえるが、よりろ過速度が速い方が着色剤粒子の再分散性や解砕性が高く、生産性に優れると言える。評価条件を以下に示す。コックを経由して減圧ポンプを付属したサクションベッセルに15mlの目盛のついたファンネルと25mmφのガラスファイバー製フィルター(GF/BGEヘルスケアライフサイエンス社製)をのせた直径25mmフィルターホルダー(ADVANTEC社製)をのせる。サクションベッセル内が減圧されないようにコックを使用して減圧ポンプを稼働する。着色剤分散体15gをファンネルにはかり取る。ポンプとサクションベッセルの開圧をスタートとし着色剤分散体全量がフィルターを通過する時間を計測する。この時のサクションベッセル内の圧力は0.05MPa~0.07Mpaである。以下、評点2以上を実用可能領域とした。
5:K、C、M、Y各色において、30秒未満でろ過ができる
4:K、C、M、Y各色において、30秒以上45秒未満でろ過ができる
3:K、C、M、Y各色において、45秒以上60秒未満でろ過ができる
2:K、C、M、Y各色において、60秒以上90秒未満でろ過ができる
1:K、C、M、Y各色において、90秒未満でろ過できない
<評価3:再分散性評価>
得られたインクジェットインキに関して再分散性の評価を下記の通り行った。インクジェットインキ1gをメンタム缶に測りとり、40℃の恒温機で4時間静置して水性インキを蒸発固化させた。所定の時間が経過した後、再分散性用クリーナーを5g加え均一に撹拌した。長時間静置しても再分散できるインキはインクジェットヘッド上で乾燥固着しても、クリーナーで処理することで従来通り印刷が可能であることを意味する。評価基準は、下記の通りである。評点2以上を実用可能領域とした。
5:K、C、M、Y各色において、固形分が15秒未満で再分散した
4:K、C、M、Y各色において、固形分が15秒以上30秒未満で再分散した
3:K、C、M、Y各色において、固形分が30秒以上60秒未満で再分散した
2:K、C、M、Y各色において、固形分が再分散したが、60秒後も残渣があった
1:K、C、M、Y各色において、どの静置時間でも不揮発分が再分散しなかった
<評価4:上質紙濃度評価>
得られたインクジェットインキをインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、型番:EM-930C、ピエゾ方式)に装填し、上質紙(日本製紙社製NPiフォームNEXT-IJ、米坪64g/m2)に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、それぞれでベタ100%画像を印刷した。印刷物を25℃、相対湿度50%で24時間放置後、得られた試験片をX-rite社製の濃度計、eXactAdvanceにて測色した。測色条件は、濃度基準にISOステータスT、視野角2°、光源D50である。印刷濃度は数値が大きい方が、印刷濃度がより高いことを意味する。評価基準は、下記の通りである。評点2以上を実用可能領域とした。
5:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.3以上の範囲で高い
4:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.2以上0.3未満の範囲で高い
3:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.1以上0.2未満の範囲で高い
2:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.1未満の範囲で高い
1:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度以下である
<評価5:コート紙濃度評価>
得られたインクジェットインキをインクジェットプリンター(セイコーエプソン社製、型番:EM-930C、ピエゾ方式)に装填し、コート紙(王子製紙社製OKトップコート、米坪104.7g/m2)に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、それぞれでベタ100%画像を印刷した。印刷物を25℃、相対湿度50%で24時間放置後、得られた試験片をX-rite社製の濃度計、eXactAdvanceにて測色した。測色条件は、濃度基準にISOステータスT、視野角2°、光源D50である。印刷濃度は数値が大きい方が、印刷濃度がより高いことを意味する。評価基準は、下記の通りである。評点2以上を実用可能領域とした。
5:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.7以上の範囲で高い
4:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.5以上0.7未満の範囲で高い
3:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.2以上0.5未満の範囲で高い
2:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度に対して、0.0超え0.2未満の範囲で高い
1:OD値K、C、M、Y各色において、比較例2の濃度以下である
実施例1~34および比較例1~4の評価結果を下記表5に示す。
Figure 2024091507000008
表5の結果から、実施例1~34は粗粒が少なく、良好な保存安定性と優れた再分散性を併せ持つインクジェットインキを作製できる着色剤分散体が提供できることが分かる。さらに、上記インクジェットインキを用いて作製した印刷物は、上質紙、コート紙共に高い印刷濃度を示すことが分かる。
なお、比較例1は無水マレイン酸を含まない、比較例2は芳香族含有モノマーを含まない、比較例3はアルキル基含有(メタ)アクリレートを含まない、比較例4はリビング重合体でないため、本願の課題を解決できない。
(着色剤分散体セット39~52の製造例)
使用する分散剤を表6に従って変更し、また、着色剤K以外の着色剤として、以下に示す顔料を使用した以外は、着色剤分散体セット1と同様の方法を用いることで、着色剤分散体セット39~52(それぞれK,C,M,Yの4色)を得た。
Figure 2024091507000009
着色剤分散体セット39~52で使用した着色剤の詳細は、以下の通りである。
・着色剤C2:トーヨーカラー社製LIONOGEN VIOLET FG-6140(C.I.PigmentViolet23)と、BASF社製Heliogen Blue D 7490(C.I.PigmentBlue16)とを、2:1の質量比で混合したもの
・着色剤M2:DIC社製FASTOGEN SUPER MAGENTA RTS(C.I.PigmentRed122)と、クラリアント社製Inkjet Magenta E5B02(C.I.PigmentViolet19)とを、1:1の質量比で混合したもの
・着色剤Y2:BASF社製Paliotol Yellow D0960(C.I.PigmentYellow138)
<インクジェットインキセット39~52の製造>
着色剤分散体セット1をそれぞれ着色剤分散体セット39~52に変更した以外は、インクジェットインキセット1と同様に行いインクジェットインキセット39~52を得た。
<実施例35~45、比較例5~7>
上記で製造した着色剤分散体及びインクジェットインキについて、上述した評価1~3を行った。評価結果は、下記表7に示した通りであった。
Figure 2024091507000010
表7の結果を、表5に記載された、同一の分散剤を使用した系の結果と比較する(例えば、表5の実施例20~29と表7の実施例36~45、等)と、保存安定性、ろ過性、再分散性のいずれかの評価結果が良化していることが確認できる。ジオキサジン顔料であるC.I.PigmentViolet23、キナクリドン顔料であるC.I.PigmentRed122およびC.I.PigmentViolet19、キノフタロン顔料であるC.I.PigmentYellow138を、それぞれ使用したことで、分散剤中との間に強い相互作用が形成され、保存安定性や再分散性が向上したものと考えられる。

Claims (7)

  1. 分散剤、着色剤、および水を含む着色剤分散体であって、
    前記分散剤が、マレイン酸単位、芳香環含有モノマー単位、およびアルキル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体、かつその分子量分散度が1.1以上2.0以下である、着色剤分散体。
  2. 前記マレイン酸単位の含有量が、重合体の全単量体単位中、5~30質量%である、請求項1に記載の着色剤分散体。
  3. 前記芳香環含有モノマーが、スチレンを含む、請求項1に記載の着色剤分散体。
  4. 前記分散剤がチオカルボニル化合物残基を含む、請求項1記載の着色剤分散体。
  5. 請求項1~4のいずれか1項に記載の着色剤分散体を含む、インキ。
  6. 請求項5記載のインキを含む、インキセット。
  7. 基材、および請求項5記載のインキから形成されてなる印刷層を備える、印刷物。
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