JP3817932B2 - 織機における経糸張力調整装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、織機における経糸張力調整装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の経糸張力調整装置が特開昭59−94650号公報及び特開平2−293447号公報に開示されている。特開昭59−94650号公報の従来装置では、経糸を案内するテンショニングビームがブッシング及び接続片を介して中空シャフトに支持されている。経糸の張力変動は、テンショニングビーム、ブッシング、接続片及び中空シャフトを介して中空シャフト内のねじりばねロッドで吸収される。中空シャフトは、軸受けを介してアームに支持されており、アームは経止め装置側から中空シャフト側に延出するように配設されている。
【0003】
特開平2−293447号公報の従来装置では、経糸を案内する引っ張り部材がベアリング箇所を介して駆動シャフトに支持されている。経糸の張力変動は、引っ張り部材、ベアリング箇所及び駆動シャフトを介して駆動シャフト内のねじりロッドで吸収される。駆動シャフトはキャリアを介してクロス部材に支持されている。クロス部材は引っ張り部材と綜絖枠との間に配設されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開昭59−94650号公報に開示される経止め装置は略水平面上に整列された経糸の糸切れを検出するものであり、経糸の移動方向における前記経止め装置より下流側で経糸の開口形成が行われる。経糸の経止め装置側の開口角の大きさは経糸の張力に影響を与えるものであり、経糸の開口角が大きくなるほど経糸の張力が上昇する。このような張力上昇は弱糸にとって好ましくない。又、前記のような張力上昇は織機における負荷を増す。織機における負荷増は織機の高速化の妨げになる。従って、経止め装置を可及的に前記テンショニングビーム側へ後退させて開口角を小さくすることが望ましい。
【0005】
しかし、特開昭59−94650号公報の従来装置におけるアームは、経糸の列の幅方向の複数位置に配置されており、これらのうちの幾つかは経糸の列の幅内にある。そのため、経糸の列の幅内にあるアームは経止め装置のテンショニングビーム側への後退の妨げとなる。
【0006】
特開平2−293447号公報の従来装置におけるクロス部材も経止め装置の引っ張り部材側への後退の妨げとなる。
本発明は、経糸の開口角を小さくし得る経糸張力調整装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そのために本発明は、ワープビームから送り出される経糸を揺動変位可能に支持された張力付与ガイドによって案内する経糸張力調整装置を対象とし、請求項1の発明では、前記張力付与ガイドを支持する回動軸体と、前記回動軸体の一端部を支持する第1の支持手段と、前記回動軸体の他端部を支持する第2の支持手段とを備えた経糸張力調整装置を構成し、前記回動軸体に十分な剛性を持たせると共に、前記第1の支持手段及び第2の支持手段を前記経糸の列の幅外に配置し、前記ワープビームと前記張力付与ガイドとの間に経糸案内用の位置固定式ガイドを備え、前記回動軸体は円周面を持つと共に、前記回動軸体の回動中心は前記円周面の円中心から外れた位置にあり、前記経糸は前記円周面に接しないようにした。
【0008】
経糸の列の幅外にある第1の支持手段及び第2の支持手段は、経糸の糸切れの有無を検出する経糸切断検出装置の設置位置の選択の妨げにはならない。従って、第1の支持手段及び第2の支持手段に妨げられることなく前記経糸切断検出装置を張力付与ガイド側に近づけることができ、張力付与ガイド側における経糸の開口角を小さくすることができる。
【0010】
縮径変化するワープビームから張力付与ガイドへ経糸を直接送り出す構成では、張力付与ガイドにおける経糸の巻き付け角がワープビームの縮径に伴って変化する。このような巻き付け角の変化は経糸張力調整の上で好ましくない。位置固定式ガイドはワープビームの縮径に伴う前記巻き付け角の変化を防止する。
【0013】
また、請求項1の発明のような偏心構成は経糸経路の設計自由度を増す。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1において、前記回動軸体を前記張力付与ガイドの直下に配置した。
【0015】
張力付与ガイドの直下は、経糸切断検出装置の配置位置の選択を妨げない回動軸体の位置として最適である。
請求項3の発明では、請求項1又は請求項2において、前記張力付与ガイドはばねにより付勢されているようにした。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した第1の実施の形態を図1〜図3に基づいて説明する。
【0017】
図1に示す11はワープビームであり、ワープビーム11から送り出される経糸Tは回動軸体12及び張力付与ガイドとなるテンションローラ13に接して案内される。テンションローラ13は回動軸体12の直上にある。図3に示すように、回動軸体12は、円筒形状の支持筒121と、支持筒121の筒内の中心軸線上に挿通された支軸122と、支軸122に支持筒121を結合固定する複数の円形状の結合片123とからなる。
【0018】
支持筒121の周面の上部には複数の支持ブラケット14(本実施の形態では3つ)が止着されており、各支持ブラケット14には一対の支持ローラ141,142が支持されている。テンションローラ13は支持ローラ141,142上に転動可能に載置されている。テンションローラ13は経糸Tの張力によって支持ローラ141,142上に押さえ付けられており、経糸Tの移動に伴ってテンションローラ13が支持ローラ141,142上で回転する。
【0019】
支軸122の両端部は支持筒121から外方へ突出している。支軸122の一端部はメタルブラケット15に相対回転可能に支持されており、支軸122の他端部はメタルブラケット16に相対回転可能に支持されている。メタルブラケット15,16は織機のサイドフレーム17,18に止着されている。メタルブラケット15は、回動軸体12の一端部を支持する第1の支持手段となり、メタルブラケット16は回動軸体12の他端部を支持する第2の支持手段となる。図3に示すように、メタルブラケット15,16はいずれも経糸Tの列の幅外にある。
【0020】
支軸122のメタルブラケット15側の端部にはイージングレバー19がねじ34により締め付け固定されており、支軸122のメタルブラケット16側の端部にはイージングレバー20がねじ35により締め付け固定されている。サイドフレーム17,18の内側面には支持ブラケット21,22が軸ピン23,24を介して回動可能に支持されている。支持ブラケット21,22とイージングレバー19,20との間にはロードセル25,26及びイージングばね27,28が介在されている。イージングばね27,28のばね力は、イージングレバー19,20、支軸122、結合片123、支持筒121、支持ブラケット14及び支持ローラ141,142を介してテンションローラ13に作用する。即ち、イージングばね27,28は、テンションローラ13を介して経糸Tに張力を付与する。経糸Tの張力変動は、テンションローラ13、支持ローラ141,142、支持ブラケット14、回動軸体12、イージングレバー19及びイージングばね27,28を介してロードセル25,26に伝わる。即ち、ロードセル25,26は経糸Tの張力を検出しており、この張力検出情報は、例えばワープビーム11を回転して経糸Tを送り出すための送り出しモータ(図示略)の回転速度制御に用いられる。
【0021】
経糸Tの張力は、綜絖31の上下運動による経糸Tの開閉口動作、筬打ち等の織機1回転中の定期的な動作に伴って定期的に変動する。図2の鎖線で示すテンションローラ13の位置は、経糸Tの織機1回転中の定期的な変動によるテンションローラ13の揺動範囲を示す。支持筒121の円周面の円中心は支軸122の中心軸線L1上にあり、回動軸体12の回動中心は支軸122の中心軸線L1上にある。従って、テンションローラ13の揺動中心は回動軸体12の中心軸線L1上にある。
【0022】
経糸Tは、両サイドフレーム17,18間に架設された経糸切断検出装置29に通されている。経糸切断検出装置29の1つのドロッパ291は1本の経糸T上に引っ掛けられており、経糸Tが切断するとこの切断経糸に引っ掛けられているドロッパ291がコンタクトバー292上に落下する。これにより糸切れ発生が検出される。複数本のコンタクトバー292を並列支持する一対の支持枠293は結合管294,295によって結合されている。経糸切断検出装置29を構成する一方の結合管294の直上には押さえ管30が配設されており、経糸切断検出装置29側における経糸Tの開口始まりが結合管294と押さえ管30との間に規制される。
【0023】
第1の実施の形態では以下の効果が得られる。
(1-1)経糸切断検出装置29及び押さえ管30をテンションローラ13側に近づけるほど経糸切断検出装置29側における経糸Tの開口角θが小さくなる。経糸Tの開口角θが小さいほど経糸Tの開閉口に伴う張力上昇が少なくなり、織機における負荷が軽減する。又、経糸Tが弱糸の場合には経糸Tの大きな張力上昇は糸切れを引き起こし易い。経糸切断検出装置29を構成する多数のドロッパ291は経糸Tの列の幅と略同程度の範囲内に収まっており、経糸Tの列の幅外にあるメタルブラケット15,16は、ドロッパ291の配置の選択の妨げにはならない。即ち、第1の支持手段であるメタルブラケット15及び第2の支持手段であるメタルブラケット16は、経糸切断検出装置29の設置位置の選択の妨げにはならない。従って、前記第1の支持手段及び第2の支持手段に妨げられることなく経糸切断検出装置29をテンションローラ13に近づけることができ、経糸Tの開口角θを小さくすることができる。
(1-2)ワープビーム11から送り出される経糸Tは回動軸体12に接触してテンションローラ13側へ案内される。ワープビーム11の巻径変化に伴う経糸Tの経路変化は、ワープビーム11と回動軸体12との間の経糸経路のみに規制される。回動軸体12を位置固定式ガイドとした構成は、専用の位置固定式ガイドを不要とし、しかも位置固定式ガイドを備えた経糸張力調整装置がコンパクトになる。
(1-3)回動軸体12はテンションローラ13の直下にある。回動軸体12をテンションローラ13よりも後方(図2において左方)に配置するとテンションローラ13における経糸Tの巻き付け角αが小さくなる。テンションローラ13における経糸Tの巻き付け角αが小さいと、経糸Tの張力によるテンションローラ13への荷重が小さくなる。そのため、巻き付け角αが小さい場合にはイージングばね27,28のばね力を小さく設定する必要があるが、このようなばね力設定は張力変動によるテンションローラ13の揺動量を大きくする。テンションローラ13の揺動量が大きくなると、精度の高い経糸張力制御ができなくなる。従って、テンションローラ13の直下は、経糸切断検出装置29の配置位置の選択を妨げない回動軸体12の位置として最適である。
(1-4)特開昭59−94650号公報の装置では、テンショニングビームと経糸切断検出装置との間のアームが糸切れした経糸の発見の妨げとなる。特開平2−293447号公報の装置では、クロス部材及びキャリアが糸切れした経糸の発見の妨げとなる。本実施の形態では、回動軸体12がテンションローラ13の直下にあり、かつメタルブラケット15,16が経糸Tの列の幅外にあるため、糸切れした経糸の発見は特開昭59−94650号公報及び特開平2−293447号公報の装置に比べて容易である。
(1-5)経糸Tの張力による荷重は専ら回動軸体12で受け止められるが、このような荷重による回動軸体12の撓み変形は回動軸体12の剛性を高めることによって回避できる。例えば、回動軸体12の大径化により回動軸体12を高剛性化できる。
(1-6)本実施の形態における経糸切断検出装置29では、新たなワープビームを織機に装着する場合には織機上で経糸切断検出装置29に経糸Tが通される。即ち、各経糸Tにドロッパ291を引っ掛ける作業が織機上で行われる。このような作業は織機の後ろ側(図2においてテンションローラ13の左側)から行なう。経糸切断検出装置29をテンションローラ13側に近づけ易い構成は、前記作業の作業性を向上する。
【0024】
次に、図4及び図5の第2の実施の形態を説明する。第1の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
この実施の形態では、転向ローラ32がサイドフレーム17,18間に回動可能に支持されている。ワープビーム11から送り出される経糸Tが転向ローラ32に常時接触しながらテンションローラ13側へ案内される。転向ローラ32とテンションローラ13との間には回動軸体33が配設されている。回動軸体33はテンションローラ13の直下にある。回動軸体33は、支持ブラケット14を支持する支持筒331と、支持筒331の筒内の偏心軸線上に挿通された支軸332と、支軸332に支持筒331を結合固定する複数の円形状の結合片333とからなる。支軸332の一端部はイージングレバー19にねじ34により締め付け固定されており、支軸332の他端部はイージングレバー20にねじ35により締め付け固定されている。
【0025】
第2の実施の形態では以下の効果が得られる。
(2-1)回動軸体33は経糸Tの張力変動によって支軸332を中心にして往復回動するが、経糸Tは回動軸体33の周面に接触しない。従って、経糸Tが回動軸体33の往復回動によって擦られることはなく、第1の実施の形態の場合に比べて経糸Tの損傷が少なくなる。
(2-2)転向ローラ32による経糸Tの接触案内位置と、テンションローラ13による接触案内位置との間の経路長は、第1の実施の形態における回動軸体12による経糸Tの接触案内位置と、テンションローラ13による接触案内位置との間の経路長よりも長い。このような経路長が短いほどテンションローラ13の往復揺動による経路差が大きくなり、テンションローラ13と経糸Tとの間の滑り量が大きくなる。このような滑り量が大きいほど経糸Tが損傷し易い。従って、回動軸体33と経糸Tとを接触させない構成は、テンションローラ13と経糸Tとの間の滑り量を小さくし、経糸Tの損傷が減る。
(2-3)支軸332によって支持筒331を偏心支持すると共に、支持筒331に経糸Tを接触させない構成は、テンションローラ13に対する経糸Tの巻き付け角αを大きく設定する上で有利である。即ち、このような偏心構成は経糸経路の設計自由度を増す。巻き付け角αは、支軸332に対するイージングレバー19,20の回動方向への取り付け位置を調整することによって容易に行える。
【0026】
次に、図6及び図7の第3の実施の形態を説明する。第2の実施の形態と同じ構成部には同じ符号が付してある。
この実施の形態では、割りのある円筒形状の転向ビーム36がサイドフレーム17,18間に回動不能に架設されており、回動軸体33が転向ビーム36の筒内に収容されている。ワープビーム11から送り出される経糸Tは、位置固定式ガイドである転向ビーム36に接触してテンションローラ13側へ案内される。
【0027】
転向ビーム36の筒内に回動軸体33を配置した構成は、転向ビーム36とテンションローラ13との距離を最短にし、装置がコンパクトになる。又、転向ビーム36の高さ位置がワープビーム11を出し入れし易い高さとなる。
【0028】
又、回動しない転向ビーム36によって経糸Tを案内する構成は、経糸Tと転向ビーム36との間の擦れを軽減し、経糸Tの損傷は回動軸体12によって経糸Tを案内する第1の実施の形態に比べて軽減する。
【0029】
本発明では以下のような実施の形態も可能である。
(1)第2の実施の形態において、回動軸体33の支持筒331の中心軸線と支軸332の中心軸線とを一致させること。
(2)テンションローラ13の代わりに非回転式の張力付与ガイドを用いること。
(3)テンションローラを積極的に揺動変位させる積極式経糸張力調整装置に本発明を適用すること。
(4)イージングレバー、イージングばね、ロードセル、支持ピン等をテンションローラの片側にのみ設けること。
【0030】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明では、回動軸体の支持手段を経糸の列の幅外に配置したので、経糸の開口角を小さくして織機における負荷を軽減し得るという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を具体化した第1の実施の形態を示す斜視図。
【図2】側断面図。
【図3】一部破断平面図。
【図4】第2の実施の形態を示す斜視図。
【図5】側断面図。
【図6】第3の実施の形態を示す斜視図。
【図7】側断面図。
【符号の説明】
12…位置固定式ガイドである回動軸体、121,331…支持筒、122,332…支軸、13…張力付与ガイドとなるテンションローラ、15…第1の支持手段となるメタルブラケット、16…第2の支持手段となるメタルブラケット、33…回動軸体、36…位置固定式ガイドである転向ビーム。
Claims (3)
- ワープビームから送り出される経糸を揺動変位可能に支持された張力付与ガイドによって案内する織機における経糸張力調整装置において、
前記張力付与ガイドを支持する回動軸体と、
前記回動軸体の一端部を回動可能に支持する第1の支持手段と、
前記回動軸体の他端部を回動可能に支持する第2の支持手段とを備え、
前記第1の支持手段及び第2の支持手段を前記経糸の列の幅外に配置し、前記ワープビームと前記張力付与ガイドとの間に経糸案内用の位置固定式ガイドを備え、前記回動軸体は円周面を持つと共に、前記回動軸体の回動中心は前記円周面の円中心から外れた位置にあり、前記経糸は前記円周面に接しない織機における経糸張力調整装置。 - 前記回動軸体は前記張力付与ガイドの直下にある請求項1に記載の織機における経糸張力調整装置。
- 前記張力付与ガイドはばねにより付勢されている請求項1又は請求項2に記載の織機における経糸張力調整装置。
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