JP3817322B2 - 半導体発光素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は発光層形成部にAlGaInP系の化合物半導体が用いられ、発光面側にキャリア濃度の大きい半導体層とバンドギャップエネルギーが大きい半導体層の積層構造からなるウインドウ層が設けられる可視光の半導体発光素子に関する。さらに詳しくは、ウインドウ層の半導体結晶層の膜質をよくすると共に、光の吸収を抑えて発光効率などの電気特性を向上させる半導体発光素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の可視光の半導体発光素子は、たとえば発光層形成部にAlGaInP系の化合物半導体材料を用い、図3に示されるような構造になっている。すなわち、図3において、n形のGaAsからなる半導体基板21上に、たとえばn形のAlGaInP系の半導体材料からなるn形クラッド層22、クラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さくなる組成のノンドープのAlGaInP系の半導体材料からなる活性層23、p形のAlGaInP系の半導体材料からなるp形クラッド層24がそれぞれエピタキシャル成長され、ダブルヘテロ接合構造の発光層形成部29が形成されている。さらにその表面にAlGaAs系化合物半導体層25aおよびGaP層25bからなるp形のウィンドウ層(電流拡散層)25が順次エピタキシャル成長され、その表面にp側電極27、半導体基板21の裏面側にn側電極28がそれぞれAu-Zn-Ni合金やAu-Ge-Ni合金などにより形成されることにより構成されている。
【0003】
この構造の発光素子では、積層された半導体層の表面側、すなわちp側電極27側からの光が利用され、光を遮断するp側電極27はできるだけ小さい面積で形成される。一方、両クラッド層22、24により挟まれた活性層23にキャリアを閉じ込めることにより発光させるため、電流は発光層の全体に分散して均一に流れることが望ましい。そのため、電流がチップの全体に広がるように、ウインドウ層25が設けられている。このウインドウ層25は、電流を拡散すると共に、活性層23で発光する光を吸収しないことが望ましく、バンドギャップエネルギーの大きい材料であるGaPが用いられる場合と、図3に示される例のように、電流をできるだけ拡散させることができるように、キャリア濃度が大きいAlGaAs系化合物半導体層25aと、キャリア濃度はやや落ちるがバンドギャップエネルギーが大きく光の吸収の小さいGaP層25bとの積層構造により形成される場合とがある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
従来の図3に示される構造の半導体発光素子では、GaAs基板とAlGaInP系化合物半導体(格子定数は5.653Å)との格子整合は(AlGa)とInとの混晶比率により行われ、さらにAlGaAs系化合物半導体とも格子整合はとられているが、GaP(格子定数は5.451Å)との間では格子整合はとれていない。そのため、GaPからなるウインドウ層の膜質が低下し、電気抵抗が増加して動作電圧が高くなったり、電流の拡散が充分に行われなくて、発光効率が低下するなどの電気特性が低下するという問題がある。
【0005】
さらに、GaP層はバンドギャップエネルギーが大きいといっても、多少は発光層で発光する光を吸収し、可視光に対して完全な透明体ではない。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたもので、AlGaInP系化合物半導体により発光層形成部が形成され、ウインドウ層としてキャリア濃度が高い半導体層とバンドギャップエネルギーが大きいGaP層との積層構造からなるウインドウ層が用いられる半導体発光素子において、ウインドウ層の膜質を低下させないで、発光効率が高く電気特性の優れた発光素子を提供することを目的とする。
【0007】
本発明の他の目的は、ウインドウ層での光の吸収を極力抑えて外部に取り出すことができる光の割合である外部発光効率の高い半導体発光素子を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明による半導体発光素子は、基板と、該基板上に設けられ、AlGaInP系化合物半導体からなりn形層およびp形層が積層され発光層を形成する発光層形成部と、該発光層形成部の表面側に設けられるウインドウ層とを備える半導体発光素子であって、前記ウインドウ層が前記発光層形成部の表面に設けられる第1層および該第1層の表面側に設けられる第2層を含む積層構造からなり、該第1層が前記第2層よりキャリア濃度の大きい半導体層からなり、前記第2層が前記第1層よりバンドギャップエネルギーの大きい半導体層からなり、前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層が(Alx Ga1-x 1-z Inz P(0≦x≦1、0≦z<0.49)化合物半導体からなり、かつ、GaPよりもバンドギャップエネルギーの大きい材料からなっている。
【0009】
ここにAlGaInP系化合物半導体とは、(Alx Ga1-x 0.51In0.49Pの形で表され、xの値が0と1との間で種々の値のときの材料を意味する。なお、(Alx Ga1-x )とInの混晶比率の0.51および0.49はAlGaInP系化合物半導体が積層されるGaAsなどの半導体基板と格子整合される比率であることを意味する。
【0012】
前記キャリア濃度が大きい半導体層としては、たとえばAlGaAs系化合物半導体層またはAlGaInP系化合物半導体層が用いられ、かつ、キャリア濃度が1×10 18 〜1×10 20 cm -3 に形成されている。
【0013】
バンドギャップエネルギーの大きい半導体層として上述の材料が用いられることにより、GaP層よりバンドギャップエネルギーが大きく、光の吸収を抑制することができ、外部発光効率が向上する。
【0014】
前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層の表面側にGaP層が設けられることにより、p側電極とのコンタクトによる電気特性が従来構造より低下することもない。
前記キャリア濃度の大きい第1層と前記バンドギャップエネルギーの大きい第2層との間に、または前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層と前記GaP層との間に、該両層の格子歪を緩和するバッファ層が設けられることにより、ウインドウ層の積層構造での格子定数の差による歪の蓄積が生ぜず、格子定数の差による界面の歪が緩和されるため、ウインド層の膜質が向上し、発光素子としての電気的特性が向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
つぎに、図面を参照しながら本発明の半導体発光素子について説明をする。
【0016】
本発明の半導体発光素子は、図1にその一例の断面構造が示されるように、n形のGaAs基板1上にAlGaInP系化合物半導体からなり発光層を形成する発光層形成部11が堆積され、その表面にキャリア濃度の大きい半導体層7a、バッファ層7b、バンドギャップエネルギーの大きい半導体層7cの積層構造からなるp形のウインドウ層7が設けられ、その表面にp側電極8が形成され、GaAs基板1の裏面にn側電極9が設けられることにより発光素子チップが形成されている。すなわち、本発明ではウインドウ層7のキャリア濃度の大きい半導体層7aと、バンドギャップエネルギーの大きい半導体層7cとの間に両者の格子定数の中間の格子定数を有するバッファ層7bを介在させることにより、格子定数の差に基づく両層間の歪を緩和させている。
【0017】
キャリア濃度の大きい半導体層7aとしては、AlGaAs系化合物半導体またはAlGaInP系化合物半導体が用いられ、キャリア濃度が1×1018〜1×1020cm-3程度で、1〜5μm程度の厚さに形成される。これらの半導体は、不純物を充分にドープしてキャリア濃度を高くすることができる。AlGaInP系化合物半導体は、発光層形成部11の半導体層と同種の半導体であるが、発光層形成部11では発光効率の関係から余りキャリア濃度を高くすることができず、発光層形成部11とは別に設けられる。この場合、発光層形成部11のクラッド層よりAlの比率を大きくしてバンドギャップエネルギーを大きくした組成のものが用いられることもあり、同じ比率の場合もある。
【0018】
バンドギャップエネルギーの大きい半導体層7cとしては、従来と同様のGaP層または後述する(Alx Ga1-x 1-z Inz P(0≦x≦1、0≦z<0.49)化合物半導体が用いられ、キャリア濃度が1×1016〜1×1019 cm-3程度で、0.1〜20μm程度の厚さに形成される。バッファ層7bは、GaAs基板1と格子定数が合されたAlGaAs系またはAlGaInP系の化合物半導体の格子定数5.653Åとバンドギャップエネルギーの大きい半導体層7cであるGaP層の格子定数5.451Åとの中間の格子定数を有するものが用いられ、たとえばGaInP層(格子定数5.491Å)が用いられ、キャリア濃度が1×1016〜1×1019cm-3程度で、0.1〜20μm程度の厚さに設けられる。
【0019】
発光層形成部11は、AlGaInP系化合物半導体からなり、キャリア濃度が1×1017〜1×1019cm-3程度で、厚さが0.1〜2μm程度のn形クラッド層3と、ノンドープでクラッド層よりバンドギャップエネルギーが小さくなる組成のAlGaInP系化合物半導体からなり、0.1〜2μm程度の厚さの活性層4と、Znがドープされてキャリア濃度が1×1016〜1×1019cm-3程度、厚さが0.1〜2μm程度で、n形クラッド層3と同じ組成のAlGaInP系化合物半導体からなるp形クラッド層5との積層構造からなっている。なお、GaAs基板1上に図示しないバッファ層を介してこれらの発光層形成部11が積層される場合もある。その場合、バッファ層は、n形のGaAsからなり、厚さが0.1〜2μm程度でキャリア濃度が1×1017〜1×1019cm-3程度に形成される。
【0020】
前述のウインドウ層7の表面にAu-Ti合金、またはAu-Zn-Ni合金などからなるp側電極8が、またGaAs基板1の裏面にAu-Ge-Ni合金などからなるn側電極9が設けられている。なお、ウインドウ層7とp側電極8との間にZnが2×1019cm-3程度のキャリア濃度になるようにドーピングされたGaAsからなるコンタクト層(図示せず)が0.05〜0.2μm程度設けられる場合もある。
【0021】
このような半導体発光素子を製造するには、たとえばn形のGaAs基板1をMOCVD装置内に入れ、反応ガスのトリエチルガリウム(以下、TEGという)またはトリメチルガリウム(以下、TMGという)およびアルシン(以下、AsH3 という)、SeのドーパントガスであるH2 Seをキャリアガスの水素(H2 )と共に導入し、500〜800℃程度でエピタキシャル成長し、キャリア濃度が1×1018cm-3程度になるようにSeがドープされたn形のGaAsからなるバッファ層(図示せず)を0.1μm程度成膜する。ついで、AsH3 に代えてホスフィン(以下、PH3 という)を、さらにトリメチルアルミニウム(以下、TMAという)およびトリメチルインジウム(以下、TMInという)を導入し、n形でキャリア濃度が1×1017〜1×1019cm-3程度のたとえば(Al0.7 Ga0.3 0.51In0.49Pからなるn形クラッド層3を0.5μm程度、反応ガスのTMAを減らしてTEGまたはTMGを増やし、たとえばノンドープの(Al0.25Ga0.750.51In0.49Pからなる活性層4を0.5μm程度、n形クラッド層3と同様の反応ガスで、H2 Seの代わりに、Znのドーパントガスとしてのジメチル亜鉛(DMZn)を導入してキャリア濃度が1×1016〜1×1019cm-3の(Al0.7 Ga0.3 0.51In0.49Pからなるp形クラッド層5を0.5μm程度エピタキシャル成長する。
【0022】
さらに、ドーパントガスのDMZnを導入しながら、反応ガスをTEGまたはTMGとTMAとAsH3 にして、キャリア濃度が1×1017〜1×1019cm-3程度のp形のAlGaAs層7aを1〜10μm程度成長する。さらに、反応ガスをTMInとTEGまたはTMGとPH3 に変えてp形のGaInP層7bを0.001〜0.1μm程度、反応ガスをTEGまたはTMGとPH3 に切り変えてp形のGaP層7cを0.001〜0.1μm程度の厚さで積層する。そして全体で0.1〜20μm程度の厚さのウインドウ層7を形成する。さらに、必要に応じて、ウインドウ層7の表面にTEGまたはTMGとAsH3 およびDMZnを導入することにより、キャリア濃度が2×1019cm-3程度のGaAsからなるコンタクト層(図示せず)を0.05〜0.2μm程度成膜する。
【0023】
このようにエピタキシャル成長された基板の上面および裏面側に、Au-Ti合金、またはAu-Zn-Ni合金などからなる上部電極(p側電極)8およびAu-Ge-Ni合金などからなる下部電極(n側電極)9を形成し、ダイシングしてチップ化する。
【0024】
本発明によれば、AlGaAs系もしくはAlGaInP系化合物半導体からなるキャリア濃度が大きい半導体層とGaPからなるバンドギャップエネルギーの大きい半導体層との間に、GaInP層からなるバッファ層が介在されることによりウインドウ層が形成されている。GaInP層の格子定数は、両側に隣接する両層の中間に位置し、両者間の格子定数の差に基づく歪を緩和する。その結果、ウインドウ層をキャリア濃度の大きい半導体層とバンドギャップエネルギーの大きい半導体層との積層構造で構成する半導体発光素子においても、半導体層の界面における歪を緩和してウインドウ層の膜質の低下が生じないで、発光効率の高い半導体発光素子となる。一方、このバッファ層は、キャリア濃度やバンドギャップエネルギーがその両側の層の中間的な性質を有し、発光に支障を来すことはない。
【0025】
図2は、本発明の半導体発光素子の他の実施形態を説明するウインドウ層7部の断面説明図である。この例は、GaPよりさらにバンドギャップエネルギーの大きい材料を用いることにより、ウインドウ層における光の吸収をさらに少なくして外部へ取り出すことができる光の割合である外部発光効率を向上させるものである。すなわち、図2(a)に示されるように、バンドギャップエネルギーの大きい半導体材料として、AlGaP系化合物半導体など、Inの組成をGaAsと格子整合をとる値(0.49)より小さくしてバンドギャップエネルギーを大きくした(Alx Ga1-x 1-z Inz P(0≦x≦1、0≦z<0.49)化合物半導体が用いられている。これらの半導体層は、GaPよりバンドギャップエネルギーが大きく、光の吸収を一層抑制することができる。このようなバンドギャップエネルギーの大きい半導体は、一般的にもキャリア濃度をあまり大きくすることができないため、前述のようにキャリア濃度の大きい半導体層7aを発光層形成部11側に介在させることが好ましい。このキャリア濃度の大きい半導体層7aは、前述と同様のAlGaAs系化合物半導体またはキャリア濃度を大きくしたAlGaInP系化合物半導体が使用される。なお、図2では省略されているが、図1に示されるように、この両層間に格子歪を緩和させるバッファ層が介在されることが好ましい。
【0026】
図2(b)は、バンドギャップエネルギーの大きい半導体層7cの表面にさらにその層よりはバンドギャップエネルギーは小さいが、抵抗が小さいGaP層7dが設けられている。これは、p側電極8と半導体層との接触抵抗を下げるためのもので、電気特性改善の利点がある。
【0027】
なお、前述の各例では、発光層形成部11が、活性層4を両クラッド層3、5により挟持し、活性層4と両クラッド層3、5の材料、たとえばAlの混晶比を異ならせ、活性層にキャリアや光を閉じ込めやすくして活性層4を発光層とするダブルヘテロ接合構造であるが、活性層4を介さないでpn接合が形成され、pn接合部に発光層を形成する構造のもでもよい。
【0028】
さらに、前述の例では、半導体発光素子を構成する各半導体層として、具体的な半導体材料を用い、その厚さやキャリア濃度の特定の例が示されているところがあるが、これらの例には限定されない。
【0029】
【発明の効果】
本発明によれば、ウインドウ層にキャリア濃度の大きい半導体層とバンドギャップエネルギーの大きい半導体層の積層構造が用いられる場合にも、その間での格子定数の不整合に基づく内部歪が発生しない。そのため、キャリア濃度の大きい特性と、バンドギャップエネルギーの大きい特性の両方の特性を満たしながら、半導体層の界面における歪が生じることなく良質の半導体積層構造が得られ、発光効率の高い半導体発光素子が得られる。
【0030】
また、バンドギャップエネルギーの大きい半導体層として、AlGaP系化合物半導体のような(Alx Ga1-x 1-z Inz P(0≦x≦1、0≦z<0.49)化合物半導体が用いられることにより、GaPよりも光の吸収が少なくなり、一層発光効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の半導体発光素子の一実施形態の断面構造を示す図である。
【図2】本発明の半導体発光素子の他の実施形態の一部の断面構造を示す図である。
【図3】従来の半導体発光素子の断面構造を示す図である。
【符号の説明】
1 基板
3 n形クラッド層
4 活性層
5 p形クラッド層
7 ウィンドウ層
7a キャリア濃度の大きい半導体層
7b バッファ層
7c バンドギャップエネルギーの大きい半導体層
7d GaP層
11 発光層形成部

Claims (5)

  1. 基板と、該基板上に設けられ、AlGaInP系化合物半導体からなりn形層およびp形層が積層され発光層を形成する発光層形成部と、該発光層形成部の表面側に設けられるウインドウ層とを備える半導体発光素子であって、前記ウインドウ層が前記発光層形成部の表面に設けられる第1層および該第1層の表面側に設けられる第2層を含む積層構造からなり、該第1層が前記第2層よりキャリア濃度の大きい半導体層からなり、前記第2層が前記第1層よりバンドギャップエネルギーの大きい半導体層からなり、前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層が(Alx Ga1-x 1-z Inz P(0≦x≦1、0≦z<0.49)化合物半導体からなり、かつ、GaPよりもバンドギャップエネルギーの大きい材料からなる半導体発光素子。
  2. 前記キャリア濃度の大きい半導体層が、AlGaAs系化合物半導体層またはAlGaInP系化合物半導体層からなり、かつ、キャリア濃度が1×1018〜1×1020cm-3である請求項1記載の半導体発光素子。
  3. 前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層の表面側にGaP層が設けられてなる請求項1または2記載の半導体発光素子。
  4. 前記キャリア濃度の大きい第1層と前記バンドギャップエネルギーの大きい第2層との間に、該両層の格子歪を緩和するバッファ層が設けられてなる請求項1、2または3記載の半導体発光素子。
  5. 前記バンドギャップエネルギーの大きい半導体層と前記GaP層との間に、該両層の格子歪を緩和するバッファ層が設けられてなる請求項3または4記載の半導体発光素子。
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