JP3788444B2 - 発光ダイオード及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、AlGaInP系化合物半導体から構成される発光ダイオード及びその製造方法に関し、特に、金属酸化物透明導電膜の剥離を防止し、高輝度で、安価に製造することができる発光ダイオード及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、半導体発光素子である発光ダイオード(以下、LEDともいう)はGaPの緑色、AlGaAsの赤色がほとんどであった。しかし、最近GaN系やAlGaInP系の結晶層をMOVPE法で成長できるようになったことから、橙色、黄色、緑色、青色の高輝度LEDが製作できるようになってきた。
【0003】
MOVPE法で形成したエピタキシャルウエハにより、これまでにできなかった短波長の発光や、高輝度が得られるLEDの製作が可能となった。しかし高輝度を得るためには、電流分散を良くするために窓層の膜厚を厚くする必要があり、そのためにLED用エピタキシャルウエハのコストが高くなり、LEDを安価に製作することが難しかった。
【0004】
コストを下げるためには、窓層の膜厚が薄く、かつ電流分散性が良好であることが望まれる。つまり、窓層自体の抵抗率をさらに低くすることが好ましい。抵抗の低いエピタキシャル層を得るには、移動度を大幅に変えるか、高キャリア濃度にする方法がある。
【0005】
これらの問題を解決する方法として、例えば、AlGaInP4元系LEDの場合には、窓層としてできるだけ抵抗の低い値が得られる材料として、GaPやAlGaAsを用いることも行われている。しかし、これらの抵抗率の低い材料を用いてもp型で高キャリア濃度のエピタキシャル層を成長させることは難しく、電流分散効果を良くするためには窓層の膜厚を8μm以上まで厚くする必要がある。また、他の半導体でそのような特性を有するものがあればそれで代用することができる。しかし、そのような特性を有する半導体は見当たらない。
【0006】
例えば、GaN系LEDでは、その他の方法として金属薄膜を透光性導電膜として用いている。しかし、金属薄膜は光を通すためには非常に薄くする必要がある。一方、十分な電流分散を得ようとすると膜厚が必要となって透光性が悪くなるという不都合がある。また、金属薄膜は、一般的に真空蒸着法で形成され、その真空排気時間が長いことも問題となっている。
【0007】
かかる問題を解決するものとして、金属酸化物の透明導電膜であるITO(Indium Tin Oxide)膜が知られている。このITO膜を電流分散膜として用いると、これまで電流分散膜として用いたエピタキシャル層を不要にできることから、安価に高輝度のLEDを生産できる。
【0008】
この発光ダイオードは、電極付LED用エピタキシャルウエハをp型電極が中心になるようにチップサイズ300μm角の切断加工することによりLEDベアチップに形成される。このLEDベアチップをTO−18ステム上にダイボンディングし、LEDベアチップとTO−18ステムとをワイヤボンディングして電気的に接続しているが、LEDベアチップにおいて、半導体層と金属酸化膜である透明導電膜の間に接触抵抗が発生してしまい、順方向動作電圧が高くなるという問題がある。
【0009】
かかる問題を解決するものとして、最上の半導体層のキャリア濃度を極めて高くすることにより、トンネル電流に基づいてLEDを駆動させるという方法が記載されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0010】
また、最上の半導体層としてCを添加物としたGaAs層を用い、C添加物の原料として四臭化炭素(CBr4)を用いて、高輝度,低動作電圧,高信頼性のLEDを製作するという方法が記載されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0011】
図7は、ITO膜を用いた従来の発光ダイオードの断面構造を示す図である。
この発光ダイオードは、発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm、キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm、キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.10Ga0.90)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm、キャリア濃度5×1017cm-3)5と、p型(Cドープ)GaAs層(膜厚25nm)13と、透明導電膜であるITO膜7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。
【0012】
各層(ITO膜7、p型電極8、およびn型電極9を除く)は、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy :有機金属気相成長)法に基づいて形成しており、MOVPE成長は、成長温度700℃、成長圧力50Torr、各層の成長速度は0.3〜1.0nm/s、V/III比は300〜600である。MOVPE成長において用いる原料として、例えば、トリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG),トリメチルアルミニウム(TMA),トリメチルインジウム(TMI)等の有機金属や、アルシン(AsH3),ホスフィン(PH3)等の、水素化物ガスを用いた。また、n型GaAsバッファ層2のようなn型層の添加物原料としては、セレン化水素(H2Se)を用いた。
【0013】
ITO膜7は、金属酸化物窓層となる金属酸化物であり、真空蒸着法にて、成膜温度(基板表面温度)300℃で厚さ約230nmで形成されている。成膜時の比抵抗は、6.2×10-6Ωmである。
【0014】
p型GaAs層13は、キャリア濃度1×1019cm-3で形成されており、添加物原料として四臭化炭素(CBr4)が用いられている。このCBr4は他のp型層の添加物原料として用いることも可能である。また、p型層の他の添加物原料として、ジエチル亜鉛(DEZ)やジメチル亜鉛(DMZ)を用いることもできる。また、n型層の添加物原料にはシラン(SiH4)を用いることもできる。
【0015】
p型電極8は、ニッケル、金を、それぞれ20nm、1000nmの順に蒸着し、直径125μmでマトリックス状に形成されている。
【0016】
n型電極9は、金・ゲルマニウム、ニッケル、金を、それぞれ60nm、10nm、500nmの順に蒸着し、その後、電極の合金化であるアロイを、窒素ガス雰囲気中400℃で5分行うことにより発光ダイオードの底面全面に形成されている。
【0017】
【非特許文献1】
ELECTRONICS LETTERS、7Th December1995(2210〜2212頁)
【特許文献1】
特開平11−307810号公報(第1図)
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、従来の発光ダイオードによると、最上層のGaAs層と透明導電膜との密着性が充分でないため、透明導電膜に剥がれが生じ、歩留まりを低下させるという間題がある。また、透明導電膜の側面が凸凹になり、逆方向電圧が低くなるという不都合もある。図7の発光ダイオードにおいて、逆方向電圧測定条件を10μA、その時の電圧が−5V以下を不良としたとき、発光ダイオードの発光出力は20mA通電時で2.50mWであり、順方向動作電圧は1.98Vであるが、約20%についてITO膜7の剥がれ不良と逆方向電圧の不良が生じていることが確認されている。
【0019】
例えば、GaAs層とクラッド層のバンド不連続を緩和するために、GaAs層とクラッド層との間に中間バンドギャップ層を入れるという方法が知られている。しかし、この方法でも、順方向電圧をある程度低くすることはできるが、透明導電膜と接している層がGaAs層であることから、当然のことながら、透明導電膜の剥がれと逆方向特性の悪化を改善することはできない。また、GaAs層とクラッド層の間に中間バンドギャップ層を設ける分コストアップとなる。
【0020】
C添加物の原料にCBr4を用いると、1回目の成長では充分な特性を達成できるが、連続して成長を行うと、2回目以降は発光出力が約50%と極めて低くなり、再現性に劣るという問題がある。この問題を特定するため、発明者は2回目以降に成長したエピタキシャルウエハのSIMS分析を行ったところ、エピタキシャルウエハ中に高濃度のCおよびOが存在することが明らかとなった。このことから、原料としてCBr4を用いたことで1回目の成長にて高濃度のCおよびOが成長炉内に残存し、そのCおよびOが2回目以降の成長時にエピタキシャルウエハ中に混入することによって発光出力が低下すると考えられる。
【0021】
従って、本発明の目的は、透明導電膜剥がれによる歩留まり低下を防止し、中間バンドギャップ層を設けなくても順方向動作電圧を低くできるとともに高輝度、低動作電圧、低価格、高信頼性であり、再現性に優れる発光ダイオード及びその製造方法を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、第1導電型の基板と、前記基板上に積層された第1導電型クラッド層と第2導電型クラッド層との間に活性層が設けられる発光部と、前記発光部の上に積層される金属酸化物窓層と、前記の金属酸化物窓層の表面側に形成された第1の電極と、前記基板の裏面の全面又は部分的に形成された第2の電極と、前記第2導電型クラッド層と前記金属酸化物窓層との間に前記活性層よりバンドギャップの小さい直接遷移型のAlGaAs層(ただし、前記AlGaAs層はAlXGa1−XAs(0.01≦X≦0.43)からなる)とを有し、前記AlGaAs層には、Zn、Be、およびMgの少なくとも1つとCが併用して添加され、キャリア濃度が1×10 19 cm −3 以上であることを特徴とする発光ダイオードを提供する。
また、本発明は、上記の目的を達成するため、MOVPE法により、第1導電型の基板上に、第1導電型クラッド層、活性層、及び第2導電型クラッド層を順次積層して発光部を形成後、V/III比が50以下かつ成長温度が600℃以下の条件下で、前記活性層よりバンドギャップの小さい直接遷移型のAlGaAs層(ただし、前記AlGaAs層はAl X Ga 1−X As(0.01≦X≦0.43)からなる)を形成し、かつ前記AlGaAs層に、Zn、Be、およびMgの少なくとも1つを添加すると共に、Cをオートドーピングにより併用して添加することにより、キャリア濃度を1×10 19 cm −3 以上とし、次いで、前記AlGaAs層の上に金属酸化物窓層を積層し、更に、前記金属酸化物窓層の表面側、及び前記基板の裏面の全面又は一部の面に、それぞれ第1の電極、第2の電極を形成することを特徴とする発光ダイオードの製造方法を提供する。
【0023】
上記構成によれば、AlGaAs層に高濃度のZn等の添加物を添加することにより、AlGaAs層の結晶性を低下させる。このため、AlGaAs層と第2導電型クラッド層間で欠陥を介して電気が流れるようになるので抵抗が小さくなる。また、トンネル効果が大になるので、金属酸化物窓層と直接遷移のAlGaAs層および第2導電型クラッド層での抵抗が小さくなり、順方向動作電圧が低くなる。また、Alの存在によって透明導電膜との良好な密着性が得られる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0025】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
この発光ダイオードは、発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm,キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.10Ga0.90)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度5×1017cm-3)5と、成長温度600℃、V/III比を50として形成されるp型(Znドープ)AlGaAs層(キャリア濃度1×1019cm-3)6と、透明導電膜であるITO膜7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。
なお、活性層4は、多重量子井戸を用いたものでも良い。
【0026】
各層(ITO膜7、p型電極8、およびn型電極9を除く)は、MOVPE(Metal Organic Vapor Phase Epitaxy :有機金属気相成長)法に基づいて形成されており、MOVPE成長は、成長温度700℃、成長圧力50Torr、各層の成長速度は0.3〜1.0nm/s、V/III比は300〜600である。MOVPE成長において用いる原料として、例えば、トリメチルガリウム(TMG)又はトリエチルガリウム(TEG),トリメチルアルミニウム(TMA),トリメチルインジウム(TMI)等の有機金属や、アルシン(AsH3),ホスフィン(PH3)等の水素化物ガスを用いた。また、n型GaAsバッファ層2のようなn型層の添加物原料としてはセレン化水素(H2Se)を用いた。
【0027】
n型クラッド層3、活性層4、およびp型クラッド層5は、(AlXGa1-X)YIn1-YP(0≦X≦1、0≦Y≦1)の材料からなる発光部を形成している。
【0028】
ITO膜7は、金属酸化物窓層となる金属酸化物であり、真空蒸着法にて成膜温度(基板表面温度)300℃で厚さ約230nmで形成されている。成膜時の比抵抗は6.2×10-6Ωmである。
【0029】
p型電極8は、ニッケル、金を、それぞれ20nm、1000nmの順に蒸着し、直径125μmでマトリックス状に形成されている。
【0030】
n型電極9は、金・ゲルマニウム、ニッケル、金を、それぞれ60nm、10nm、500nmの順に蒸着し、その後、電極の合金化であるアロイを、窒素ガス雰囲気中400℃で5分行うことにより発光ダイオードの底面全面に形成されている。
【0031】
この発光ダイオードは、上記した構成で積層された電極付LED用エピタキシャルウエハをp型電極8が中心になるようにチップサイズ300μm角の切断加工することによりLEDベアチップに形成される。このLEDベアチップをTO−18ステム上にダイボンディングし、LEDベアチップとTO−18ステムとをワイヤボンディングして電気的に接続している。
【0032】
以下に、第1の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表1に示す。
【表1】
【0033】
上記した第1の実施形態の発光ダイオードによると、p型AlGaInPクラッド層5とITO膜7との間に直接遷移のAlXGa1-XAs(0.01≦X≦0.43)を設けたことにより、表1から明らかなように膜厚5nmで3.12mWの高出力を得ることができ、また、低動作電圧、低コストを実現することができる。また、発光ダイオードを歩留まり良く製作することができる。また、発光ダイオードに用いる樹脂封止前のLED素子について、試験条件:55℃、50mA通電で信頼性試験を行ったところ、24時間通電後の相対出力(通電後の発光出力/通電前の発光出力)はすべて90%以上であり、高信頼性を有することを確認している。(出力評価時の電流値は20mA)。
【0034】
なお、上記した第1の実施形態では、p型電極8を円形で形成したが、例えば、四角形、菱形等の多角形でも同様の効果を奏することができる。また、活性層をアンドープとした構成についても、第2導電型又は第1導電型にした場合であっても同様の効果を得ることができる。
又、n型バッファ層2とn型クラッド層3との間に光反射層(DBR)を形成しても、同様の効果を得ることができる。更に、n型バッファ層2を形成しなくても同様の効果を得ることができる。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態として、膜厚600nmの(Al0.32Ga0.68)0. 5In0.5Pアンドープ活性層4を設けた発光波長590nm帯の黄色LEDを作製した。その他の部分の構成、エピタキシャル成長方法、およびエピタキシャル層膜厚については第1の実施の形態で説明した発光ダイオードと同じであるので、重複する説明を省略する。
【0036】
以下に、第2の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表2に示す。
【表2】
【0037】
上記した第2の実施形態の発光ダイオードによると、第1の実施形態の好ましい特性に基づいて黄色LEDで高出力、低動作電圧、低コストを実現することができる。また、発光ダイオードを歩留まり良く製作することができる。
【0038】
(第3の実施形態)
本発明の第3の実施形態として、(Al0.46Ga0.54)0.5In0.5Pアンドープ活性層(膜厚600nm)4を設けた発光波長560nm帯の緑色LEDを作製した。その他の部分の構成、エピタキシャル成長方法、およびエピタキシャル層膜厚については第1および第2の実施形態で説明した発光ダイオードと同じであるので、重複する説明を省略する。
【0039】
以下に、第3の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表3に示す。
【表3】
【0040】
上記した第3の実施形態の発光ダイオードによると、第1の実施形態の好ましい特性に基づいて緑色LEDで高出力、低動作電圧、低コストを実現することができる。また、発光ダイオードを歩留まり良く製作することができる。
【0041】
(第4の実施形態)
図2は、本発明の第4の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
(1)この発光ダイオードは、発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、AlGaInP活性層4とp型AlGaInPクラッド層5の間に設けられる(A10.7Ga0.3)0.5In0.5Pアンドープ層(膜厚300nm)10を有する。その他の部分の構成、エピタキシャル成長方法、およびエピタキシャル層膜厚については第1から第3の実施形態で説明した発光ダイオードと同じであるので、重複する説明を省略する。
【0042】
(2)また、AlGaInP活性層4とp型AlGaInPクラッド層5の間に設けられる他の層として、p型(Znドープ)(A10.7Ga0.3)0.5In0.5P低濃度層(膜厚300nm,キャリア濃度1×1017cm-3)10を設けた発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0043】
(3)また、AlGaInP活性層4とp型AlGaInPクラッド層5の間に設けられる更に他の層として、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P低濃度層(膜厚300nm,キャリア濃度1×017cm-3)10を設けた発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0044】
このようにして製作された発光ダイオード特性を評価した。(1)〜(3)の発光ダイオードの特性は、(1):2.71mW、(2):2.63mW、(3):2.61mWで、順方向動作電圧は(1):1.96V、(2):1.93V、(3):1.97Vであった。
【0045】
上記した第4の実施形態の発光ダイオードによると、第1の実施形態の発光ダイオードと同様に良好な特性を示している。また、信頼性についても相対出力が95〜99%と向上しており、歩留まりについても同等の特性が得られることを確認している。
【0046】
(第5の実施形態)
図3は、本発明の第5の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
(1)この発光ダイオードは、発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm、キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm、キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.10Ga0.90)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pアンドープ層(膜厚300nm)10と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度5×1017cm-3)5と、p型(Znドープ)GaPコンタクト層(膜厚200nm,キャリア濃度5×1018cm-3)11と、p型(Znドープ)Al0.05Ga0.95As層(膜厚25nm,キャリア濃度1×1019cm-3)6と、透明導電膜であるITO膜(比抵抗6.3×10-6Ωm)7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。なお、以下の説明において、第1から第4の実施形態で説明した発光ダイオードと同じ部分については、重複する説明を省略する。
【0047】
(2)また、他のGaPコンタクト層11として、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層11で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0048】
(3)また、他のGaPコンタクト層11として、p型Al0.85Ga0.15As層11で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0049】
以下に、第5の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表4に示す。
【表4】
【0050】
上記した第5の実施形態の発光ダイオードによると、表4から明らかなように、いずれも第1の実施形態(表1)とほぼ同等である。また、歩留まりも同等であり、信頼性も相対出力が95%以上と良好であった。
【0051】
(第6の実施形態)
図4は、本発明の第6の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
(1)この発光ダイオードは、発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm,キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.10Ga0.90)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pアンドープ層(膜厚300nm)10と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度5×1017cm-3)5と、p型(Znドープ)GaPコンタクト層(膜厚150nm,キャリア濃度5×1018cm-3)11と、アンドープGaP層(膜厚200nm)12と、p型(Znドープ)GaPコンタクト層(膜厚150nm,キャリア濃度5×1018cm-3)11と、p型(Znドープ)Al0.05Ga0.95As層(膜厚25nm,キャリア濃度1×1019cm-3)6と、透明導電膜であるITO膜(比抵抗6.1×10-6Ωm)7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。なお、以下の説明において、第1から第5の実施形態で説明した発光ダイオードと同じ部分については、重複する説明を省略する。
【0052】
(2)また、他のGaPコンタクト層11として、p型(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層11で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0053】
(3)また、他のGaPコンタクト層11として、p型Al0.85Ga0.15As層11で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0054】
(4)また、他のGaP層12として、アンドープ(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5P層12で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0055】
(5)また、他のGaP層12として、アンドープAl0.85Ga0.15As層12で形成された発光ダイオードを同時に作製した。その他の構成等については(1)と同様である。
【0056】
以下に、第6の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表5に示す。
【表5】
【0057】
上記した第6の実施形態の発光ダイオードによると、発光特性および信頼性は、表5から明らかなように、いずれも第4の実施形態と同等若しくはそれ以上であった。また、歩留まりについても第4の実施形態と同等で良好な特性を示した。更に、このような構造にしたことによって負性抵抗を無くし、大きな電圧変動があっても損傷することのないLEDを形成することが可能となった。
【0058】
(第7の実施形態)
図5は、本発明の第7の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
(1)この発光ダイオードは、図2に示す構成と同様の断面構造を有する発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm,キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.10Ga0.90)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pアンドープ層(膜厚300nm)10と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度5×1017cm‐ 3)5と、p型Al0.05Ga0.95As層(膜厚25nm,キャリア濃度1×1019cm-3)6と、透明導電膜であるITO膜(比抵抗6.2×10-6Ωm)7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。なお、以下の説明において、第1から第6の実施形態で説明した発光ダイオードと同じ部分については、重複する説明を省略する。
【0059】
p型Al0.05Ga0.95As層6は、添加物としてMgを用いたもの、Beを用いたもの、ZnとMgとを同時に添加したもの、ZnとBeとを同時に添加したもの、MgとBeとを同時に添加したものを作製した。
【0060】
以下に、第7の実施形態の発光ダイオードについて評価した評価結果を表6に示す。
【表6】
【0061】
上記した第7の実施形態の発光ダイオードによると、表6から明らかなように、添加物としてZn以外のMgやBeを用いた場合であっても順方向動作電圧を大にすることなく充分な発光出力を得ることが可能である。
【0062】
(第8の実施形態)
図6は、本発明の第8の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
(1)この発光ダイオードは、図2に示す構成と同様の断面構造を有する発光波長630nm帯付近の赤色LEDであり、n型GaAs基板1と、n型(Seドープ)GaAsバッファ層(膜厚400nm,キャリア濃度1×1018cm-3)2と、n型(Seドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度1×1018cm-3)3と、アンドープ(Al0.15Ga0. 85)0.5In0.5P活性層(膜厚600nm)4と、(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pアンドープ層(膜厚300nm)10と、p型(Znドープ)(Al0.7Ga0.3)0.5In0.5Pクラッド層(膜厚300nm,キャリア濃度5×1017cm-3)5と、p型Al0.05Ga0.95As層(膜厚25nm,キャリア濃度1×1019cm-3)6と、透明導電膜であるITO膜(比抵抗6.2×10-6Ωm)7と、円形状のp型電極8と、n型電極9とを積層して構成されている。なお、以下の説明において、第1から第7の実施形態で説明した発光ダイオードと同じ部分については、重複する説明を省略する。
【0063】
p型Al0.05Ga0.95As層6は、成長温度550℃でCのオートドーピングを行っており、このことによってp型Al0.05Ga0.95As層6に添加するZnの添加量は、Zn添加を行った第1の実施形態に比べて少なくなっている。
【0064】
この発光ダイオードのLED特性を評価したところ、発光出力が2.70mW、順方向電圧が1.98Vであり、相対出力は97%であった。また不良率も1%以下であることが確認された。このように、AlGaAs層の成長温度を低くして、CのオートドーピングとZn添加とを併用した場合でも、LED特性が良好であることが確認された。
【0065】
上記したように、ITO膜7とp型クラッド層5の間にZnおよびMg又はBeを添加した、更には、添加物とCのオートドーピングを併用させたp型AlGaAs層6を設けた構成とすることにより、低動作電圧、良好な発光出力を併せ持ち、かつ再現性が良好なLEDを製作でき、更にはITO膜7の剥がれによる不良率と、逆方向電圧不良を合わせた不良率を1%以下に低減することに成功した。
【0066】
また、活性層4とp型クラッド層5の間にアンドープ層10、第2導電型低濃度10、もしくは第1導電型低濃度10を挿入しても、低動作電圧、良好な発光出力を併せ持ち、かつ再現性が良好なLEDを製作でき、更にはITO膜7の剥がれによる不良率が1%以下と非常に少なくすることができた。
【0067】
更に、アンドープ層10以外に、コンタクト層11中にあるアンドープ層12(抵抗層)を挿入することで、駆動電圧の変動に対しても強いLEDを製作することができた。
【0068】
本発明の最適条件についての根拠は、以下の通りである。
AlGaAs層6のキャリア濃度が低いとトンネル電流が流れにくくなることや、p型クラッド層5とのバンド不連続による順方向動作電圧の上昇が起こることから、AlGaAs層6のキャリア濃度は1×1019cm-3以上が望ましい。また、AlGaAs層6のキャリア濃度は高いほど好ましい。
【0069】
AlGaAs層6は、活性層4のバンドギャップよりも小さいバンドギャップを有する。このため、発光した光に対して吸収層となり発光出力を低下させてしまう。よって、薄い方が望ましい。しかし、AlGaAs層6の膜厚を過度に薄くするとトンネル電流が流れなくなることから、AlGaAs層6の膜厚には最適値がある。
【0070】
また、AlGaAs層6のAl組成が変化しても、発光した光の吸収度合いが変化する。更に、発光波長によっても光吸収の度合いが変化する。よってAlGaAs層6の膜厚は、発光波長、Al組成に依存する。このため、同じ発光波長でもAlGaAs層6のAl組成によって最適な膜厚があり、AlGaAs層6のAl組成が同じでも、発光波長によって最適な膜厚がある。
【0071】
発光波長が630nm帯の赤色発光素子であり、かつ、AlGaAs層6のAl組成が0.01、つまりAl0.01Ga0.99As層6である場合の膜厚は1〜35nm程度が好ましく、より好ましくは2〜25nmである。
【0072】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.05である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜25nmである。
【0073】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.10である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜25nmである。
【0074】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.15である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜35nmである。
【0075】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.20である場合の膜厚は1〜75nm程度がより好ましい。
【0076】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.25である場合の膜厚は、1〜100nm程度が好ましく、より好ましくは2〜75nmである。
【0077】
また、630nm帯の赤色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.25以上である場合の膜厚は、1〜100nm程度がより好ましく、より好ましくは2〜100nmである。
【0078】
発光波長が590nm帯の黄色発光素子であり、かつ、AlGaAs層6のAl組成が0.01、つまりAl0.01Ga0.99As層6である場合の膜厚は、1〜30nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0079】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.05である場合の膜厚は1〜30nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0080】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.10である場合の膜厚は、1〜40nm程度が好ましく、より好ましくは2〜25nmである。
【0081】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.15である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜25nmである。
【0082】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.20である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましいのは2〜30nmである。
【0083】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.25である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜50nmである。
【0084】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.25である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜50nmである。
【0085】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.30である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜50nmである。
【0086】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.35である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜50nmである。
【0087】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.40である場合の膜厚は1〜100nm程度が好ましく、より好ましくは2〜75nmである。
【0088】
また、590nm帯の黄色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.43である場合の膜厚は1〜100nm程度が好ましく、より好ましくは2〜100nmである。
【0089】
発光波長が560nm帯の緑色発光素子であり、かつAlGaAs層6のAl組成が0.01、つまりAl0.01Ga0.99As層6である場合の膜厚は1〜25nm程度が好ましく、より好ましくは2〜15nmである。
【0090】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.05である場合の膜厚は1〜25nm程度が好ましく、より好ましくは2〜15nmである。
【0091】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.10である場合の膜厚は1〜30nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0092】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.15である場合の膜厚は1〜40nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0093】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.20である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0094】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.25である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0095】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のA1組成が0.25である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0096】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0.30である場合の膜厚は1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0097】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のAl組成が0,35である場合の膜厚は、1〜50nm程度が好ましく、より好ましくは2〜20nmである。
【0098】
また、560nm帯の緑色発光素子であり、AlGaAs層6のA1組成が0.40である場合の膜厚は1〜75nm程度が好ましく、より好ましくは2〜50nmである。
【0099】
ITO膜7は、比抵抗が高いとトンネル電流が流れなくなったり、流れにくくなることから、順方向動作電圧が高くなる。また、電流分散効果も薄れ、発光出力が低くなる。このことから、ITO膜7の比抵抗は低いほど好ましい。
【0100】
ITO膜7の比抵抗は、好ましくは1×10-5Ωm以下であり、より好ましくは7×10-6Ωm以下である。
【0101】
ITO膜7は、その膜厚が薄いと電流分散効果が薄れ、発光出力が低くなることから、ITO膜7の膜厚は厚いほど好ましい。ITO膜7の膜厚は、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは200m以上である。
【0102】
AlGaAs層6は、高温で成長すると結晶性が良い。結晶性が良いと、同じキャリア濃度でもトンネル電流が流れにくくなる。また、p型クラッド層5とのバンド不連続による順方向動作電圧の上昇が起こりやすくなる。このためAlGaAs層6の結晶性はあまり良くない方が良い。従って、AlGaAs層6の成長温度は600℃以下が好ましく、より好ましくは600〜450℃である。
【0103】
AlGaAs層6は、V/III比を高くして成長すると結晶性が良い。結晶性が良いと、同じキャリア濃度でもトンネル電流が流れにくくなる。また、p型クラッド層5とのバンド不連続による順方向動作電圧の上昇が起こりやすくなる。このためAlGaAs層6の結晶性はあまり良くない方が良い。従って、AlGaAs層6のV/III比は低い方が好ましい。
【0104】
AlGaAs層6は、V/III比を低くすると、Cが自動的に添加される量(オートドーピング)が増加する。このためAlGaAs層6のV/III比を低くすると、高キャリア濃度化しやすく、かつ、結晶の質が低下する。よって、順方向動作電圧を低くするには、AlGaAs層6のV/III比を50以下にするのが好ましい。より好ましくはV/III比が10以下である。
【0105】
活性層4とクラッド層5の間に挿入するアンドープ層10の厚さは厚いほど、発光出力および信頼性は向上する。これは、クラッド層5に入っているZnが活性層中へ拡散して入るのを抑え、拡散による欠陥を抑止できるからである。ただし、ある一定の厚さ以上になれば、アンドープ層10の効果は小さくなり、発光出力および信頼性の向上は飽和状態になる。またアンドープ層10の厚さが厚くなっていくことにより、順方向動作電圧が高くなる。更に、コストも高くなる。このことから、アンドープ層10は過度に厚過ぎない適当な厚さが好ましい。このためアンドープ層10の厚さは100nm以上が好ましい。より好ましくは300〜3000nmである。
【0106】
AlGaAs層6は、Alが少しでも含まれていればITO膜7の密着性を良くすることができる。このことから、AlGaAs層6にはAlが少しでも含まれていれば良い。より好ましくはAl組成が0.05以上である。しかし、AlGaAs層6のAl組成を0.43より大きくするとAlGaAs層6が間接遷移になりトンネル電流を流しにくくなる。このためAlGaAs層6は、Al組成を0.01から0.43の範囲に設けるのが好ましい。より好ましくは0.05から0.4である。
【0107】
【発明の効果】
以上説明した通り、本発明の発光ダイオードによると、第2導電型クラッド層と金属酸化物窓層との間に活性層よりバンドギャップの小さいAlGaAs層(AlXGa1-XAs(0.01≦X≦0.43))を有するようにしたため、透明導電膜剥がれによる歩留まり低下を防止し、中間バンドギャップ層を設けなくても順方向動作電圧を低くできるとともに高輝度、低動作電圧、低価格、高信頼性であり、再現性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図2】第4の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図3】第5の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図4】第6の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図5】第7の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図6】第8の実施形態に係る発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【図7】ITO膜を用いた従来の発光ダイオードの断面構造を示す図である。
【符号の説明】
1 n型GaAs基板
2 n型GaAsバッファ層
3 n型AlGaInPクラッド層
4 AlGaInP活性層
5 p型AlGaInPクラッド層
6 p型AlGaAs層
7 ITO膜
8 p型電極
9 n型電極
10 アンドープ層
11 p型GaPコンタクト層
12 アンドープGaP層
13 p型GaAs層
Claims (4)
- 第1導電型の基板と、
前記基板上に積層された第1導電型クラッド層と第2導電型クラッド層との間に活性層が設けられる発光部と、
前記発光部の上に積層される金属酸化物窓層と、
前記の金属酸化物窓層の表面側に形成された第1の電極と、
前記基板の裏面の全面又は部分的に形成された第2の電極と、
前記第2導電型クラッド層と前記金属酸化物窓層との間に前記活性層よりバンドギャップの小さい直接遷移型のAlGaAs層(ただし、前記AlGaAs層はAlXGa1−XAs(0.01≦X≦0.43)からなる)とを有し、
前記AlGaAs層には、Zn、Be、およびMgの少なくとも1つとCが併用して添加され、キャリア濃度が1×10 19 cm −3 以上であることを特徴とする発光ダイオード。 - 前記金属酸化物窓層は、酸化インジウム錫からなることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
- 前記発光部は、(Al X Ga 1−X ) Y In 1−Y P(0≦X≦1、0≦Y≦1)の材料からなることを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード。
- MOVPE法により、第1導電型の基板上に、第1導電型クラッド層、活性層、及び第2導電型クラッド層を順次積層して発光部を形成後、
V/III比が50以下かつ成長温度が600℃以下の条件下で、前記活性層よりバンドギャップの小さい直接遷移型のAlGaAs層(ただし、前記AlGaAs層はAl X Ga 1−X As(0.01≦X≦0.43)からなる)を形成し、かつ前記AlGaAs層に、Zn、Be、およびMgの少なくとも1つを添加すると共に、Cをオートドーピングにより併用して添加することにより、キャリア濃度を1×10 19 cm −3 以上とし、
次いで、前記AlGaAs層の上に金属酸化物窓層を積層し、
更に、前記金属酸化物窓層の表面側、及び前記基板の裏面の全面又は一部の面に、それぞれ第1の電極、第2の電極を形成することを特徴とする発光ダイオードの製造方法。
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