JP4556288B2 - 半導体素子 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、3B族元素のうちの少なくともインジウム(In)と5B族元素のうちの少なくとも窒素(N)とを含む窒化物系III−V族化合物半導体よりなるインジウム含有層と、このインジウム含有層からインジウムが脱離するのを防止する脱離防止層とを備えた半導体素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
GaN,AlGaN混晶あるいはGaInN混晶などの窒化物系III−V族化合物半導体は、直接遷移の半導体材料であると共に、禁制帯幅が1.8〜6.2eVにわたっているという特徴を有している。従って、これらの窒化物系III−V族化合物半導体は、紫外領域から赤外領域までの発光を得ることができ、半導体レーザあるいは発光ダイオードなどの半導体発光素子を構成する材料として注目されている。また、窒化物系III−V族化合物半導体は、飽和電子速度および破壊電界が大きいことから、電界効果トランジスタなどの電子素子を構成する材料としても注目されている。
【0003】
このような窒化物系III−V族化合物半導体を用いた半導体素子は、一般に、基板の上に気相成長法を用いて窒化物系III−V族化合物半導体層を成長させることにより製造される。その際、GaN層あるいはAlGaN混晶層などインジウムを含まない層(インジウム非含有層)を成長させる場合には、例えばMOCVD(Metal-organic Chemical Vapor Deposition ;有機金属化学気相成長)法であれば、成長温度を1000℃程度とするのが最適である。これに対して、GaInN混晶などインジウムを含む層(インジウム含有層)を成長させる場合には、温度が高すぎるとインジウムが脱離してしまうので、インジウム非含有層を成長させる場合よりも成長温度を低く、700℃〜800℃程度とするのが適当である。従って、インジウム含有層の上にインジウム非含有層を成長させる際には、インジウム含有層からのインジウムの脱離を防止するために、まず700℃〜800℃でアルミニウム(Al)を含む単層構造の脱離防止層を成長させたのち、この脱離防止層の上にインジウム非含有層を成長させる方法が知られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この脱離防止層は、最適温度よりも低温で成長させているので結晶性が悪く、脱離防止層の欠陥がインジウム含有層に伝播してインジウム含有層の結晶性を劣化してしまい、素子全体の結晶性が悪化して、優れた動作特性を得ることが難しという問題があった。特に、半導体発光素子においては、脱離防止層の抵抗が大きくなってしまい、閾値電流および閾値電圧が高くなってしまっていた。
【0005】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、脱離防止層の結晶性を向上させ、動作特性を向上させることができる半導体素子を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明による半導体素子は、3B族元素のうちの少なくともインジウムと5B族元素のうちの少なくとも窒素とを含む窒化物系III−V族化合物半導体よりなるインジウム含有層と、このインジウム含有層の一面側に設けられ、インジウム含有層からインジウムが脱離するのを防止する脱離防止層とを備えた半導体素子であって、脱離防止層が、交互に積層された障壁層と複数の井戸層とを有する多層構造を備え、井戸層は量子化されていると共に、障壁層は電荷がトンネリング可能な厚さとされ、インジウム含有層側に位置する井戸層ほど局在するエネルギー準位が漸次大きくまたは小さくなっている。
【0007】
本発明による半導体素子では、脱離防止層が上記した所定の多層構造を有しているので、脱離防止層の結晶性が向上しており、優れた動作特性が得られる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る半導体素子としての半導体レーザの断面構造を表すものである。この半導体レーザは、基板11の一面側に、例えば、バッファ層12を介して、n側コンタクト層13,n型クラッド層14,n型ガイド層15,活性層16,脱離防止層17,p型ガイド層18,p型クラッド層19およびp側コンタクト層20がこの順に積層された構成を有している。基板11は、例えば、積層方向の厚さ(以下、単に厚さという。)が80μmのサファイアにより構成されており、バッファ層12などは、基板11のc面に形成されている。
【0010】
バッファ層12は、例えば、厚さが30nmであり、不純物を添加しないundoped GaNにより構成されている。n側コンタクト層13は、例えば、厚さが3μmであり、n型不純物としてケイ素(Si)を添加したn型GaNにより構成されている。n型クラッド層14は、例えば、厚さが1μmであり、n型不純物としてケイ素を添加したn型AlGaN混晶により構成されている。n型ガイド層15は、例えば、厚さが0.1μmであり、n型不純物としてケイ素を添加したn型GaNにより構成されている。
【0011】
活性層16は、例えば、厚さが30nmであり、全体としてGaInN混晶により構成されている。すなわち、活性層16はインジウム含有層となっている。具体的には、例えば、Ga0.98In0.02N混晶よりなる厚さ7.0nmの障壁層と、Ga0.9 In0.1 N混晶よりなる厚さ3.5nmの井戸層とを交互に積層した多重量子井戸構造を有している。脱離防止層17は、活性層16からインジウムが脱離するのを防止するためのものであり、例えば全体としてAlGaN混晶により構成され、その厚さは例えば20nmである。
【0012】
p型ガイド層18は、例えば、厚さが0.1μmであり、p型不純物としてマグネシウム(Mg)を添加したp型GaNにより構成されている。p型クラッド層19は、例えば、厚さが0.8μmであり、p型不純物としてマグネシウムを添加したp型AlGaN混晶により構成されている。p側コンタクト層20は、例えば、厚さが0.5μmであり、p型不純物としてマグネシウムを添加したp型GaNにより構成されている。
【0013】
p側コンタクト層20の基板11と反対側には、p側電極21が形成されている。このp側電極21は、例えば、p側コンタクト層20の側からパラジウム(Pd),白金(Pt)およびアルミニウム(Al)が順次積層された構造を有しており、p側コンタクト層20と電気的に接続されている。p側電極21は、また、電流狭窄をするように帯状に延長されており、p側電極21に対応する活性層16の領域が発光領域となっている。一方、n側コンタクト層13の基板11と反対側には、n側電極22が形成されている。n側電極22は、例えば、チタン(Ti)およびアルミニウムを順次積層して熱処理により合金化した構造を有しており、n側コンタクト層13と電気的に接続されている。
【0014】
なお、この半導体レーザでは、例えばp側電極21の長さ方向において対向する一対の側面が共振器端面となっており、この一対の共振器端面に図示しない一対の反射鏡膜がそれぞれ形成されている。これら一対の反射鏡膜のうち一方の反射鏡膜の反射率は低くなるように、他方の反射鏡膜の反射率は高くなるようにそれぞれ調整されている。これにより、活性層16において発生した光は一対の反射鏡膜の間を往復して増幅され、一方の反射鏡膜からレーザビームとして出射するようになっている。
【0015】
図2は、図1の脱離防止層17およびその近傍を拡大して表したものである。また、図3は、脱離防止層17およびその付近のバンドギャップ構造を価電子帯端のエネルギー準位について模式的に表したものである。このように、脱離防止層17は多層構造とされており、複数の層に分割して構成することにより、1層の厚さを薄くし、結晶性を向上させるようになっている。具体的には、例えば、交互に積層された複数(ここでは、4層)の障壁層17a,17b,17c,17dと、障壁層17a〜17dよりもバンドギャップが小さく、価電子帯端のエネルギー準位が大きい複数(ここでは、3層)の井戸層17e,17f,17gとを有している。
【0016】
障壁層17a〜17dは、例えば、p型不純物としてマグネシウムを添加したp型Alx Ga1-x N混晶(但し、0<x<1)により構成され、井戸層17e〜17gは、例えば、p型不純物としてマグネシウムを添加したp型Aly Ga1-y N(但し、0≦y<1)により構成されている。これら障壁層17a〜17dおよび井戸層17e〜17gに含まれるアルミニウムにより、主として活性層16からインジウムが脱離するのを防止するようになっている。なお、ここでは、障壁層17a〜17dはp型Al0.2 Ga0.8 N混晶により構成され、井戸層17e〜17gはp型GaNにより構成されている。
【0017】
また、井戸層17e〜17gの厚さは、例えば離散化準位間のエネルギー幅がkB Tよりも十分大きくなるようになっている。なお、kB はボルツマン定数=1.38×1023J/Kであり、Tは素子の絶対温度である。すなわち、井戸層17e〜17gは2次元的に量子化された量子井戸構造となっており、井戸層17e〜17gには図3において点線で示したように局在するエネルギー準位(すなわち量子準位)E0 QW1,E0 QW2,E0 QW3が形成されている。また、本実施の形態では、例えば井戸層17e〜17gの厚さを変化させることにより、活性層16側に位置する井戸層ほど局在するエネルギー準位が漸次大きくなるようになっている。一般に、厚さが薄い方が局在するエネルギー準位が大きくなるので、ここではp型ガイド層18から活性層16側に向かって順に井戸層の厚さが薄くなっている。なお、障壁層17a〜17dの厚さは、例えば電荷がトンネリング可能な厚さ(例えば、20nm以下)となっている。
【0018】
これにより、本実施の形態では、共鳴あるいはエネルギー準位の状態密度の増加によってトンネル電流が増大し、脱離防止層17の抵抗を小さくできるようになっている。ちなみに、図4に示したように、脱離防止層117を単層構造とした場合には、脱離防止層117とp型ガイド層18との界面のエネルギー障壁が大きく、抵抗が大きくなっている。
【0019】
障壁層17a〜17dおよび井戸層17e〜17gの厚さは、具体的には、例えば、障壁層17aが8nm,井戸層17eが2nm,障壁層17bが6nm,井戸層17fが4nm,障壁層17cが4nm,井戸層17gが6nm,障壁層17dが2nmとされている。なお、脱離防止層17の厚さの最適値は、脱離防止層17中におけるアルミニウムの含有量に依存するものであり、上述した例では、障壁層17a〜17dの厚さの合計が20nm程度とされることが好ましい。これよりもアルミニウムの含有量が多いとキャリアが流れにくくなる傾向にあり、少ないと活性層16からのインジウムの脱離が十分に防止されない傾向にあるからである。
【0020】
この半導体レーザは、例えば次のようにして製造することができる。
【0021】
まず、例えば、厚さ400μm程度のサファイアよりなる基板11を用意し、基板11の例えばc面に、例えば、MOCVD法によりバッファ層12,n側コンタクト層13,n型クラッド層14,n型ガイド層15,活性層16,脱離防止層17,p型ガイド層18,p型クラッド層19およびp側コンタクト層20を順次成長させる。
【0022】
具体的には、まず、基板11を例えば520℃程度に加熱したのち、例えばundoped GaNよりなるバッファ層12を成長させる。次いで、例えば、基板11の温度を1000℃程度まで上げ、バッファ層12の上に、n型GaNよりなるn側コンタクト層13,n型AlGaN混晶よりなるn型クラッド層14およびn型GaNよりなるn型ガイド層15を順次成長させる。続いて、例えば、基板11の温度を700℃〜800℃程度まで下げ、Ga0.98In0.02N混晶よりなる障壁層およびGa0.9 In0.1 N混晶よりなる井戸層を交互に成長させて、活性層16を形成する。
【0023】
そののち、例えば、基板11の温度を活性層16を形成した際と同じ温度としたまま、活性層16の上に、p型Al0.2 Ga0.8 N混晶よりなる障壁層17a〜17d、およびp型GaNよりなる井戸層17e〜17gを交互に成長させて、脱離防止層17を形成する。ここでは、脱離防止層17を障壁層17a〜17dと井戸層17e〜17gとの多層構造とし、1層の厚さを薄くしているので、単層構造で1層の厚さが厚い場合に比べて結晶性の高いものが得られる。よって、脱離防止層17から活性層16への欠陥の伝播が抑制され、活性層16における結晶性の低下が抑制されるので、発光特性など半導体レーザにおける動作特性の劣化が防止される。
【0024】
脱離防止層17を形成したのち、例えば、基板11の温度を1000℃程度まで上げ、脱離防止層17の上に、p型GaNよりなるp型ガイド層18,p型AlGaN混晶よりなるp型クラッド層19およびp型GaNよりなるp側コンタクト層20を順次成長させる。ここでは、活性層16の上に脱離防止層17を介してp型ガイド層18などを成長させているので、基板11の温度(成長温度)を高くしても活性層16からのインジウムの脱離が防止される。
【0025】
なお、MOCVDを行う際、ガリウムの原料ガスとしては例えばトリメチルガリウム((CH3 )3 Ga)、アルミニウムの原料ガスとしては例えばトリメチルアルミニウム((CH3 )3 Al)、インジウムの原料ガスとしては例えばトリメチルインジウム((CH3 )3 In)、窒素の原料ガスとしては例えばアンモニア(NH3 )をそれぞれ用いる。また、ケイ素の原料ガスとしては例えばモノシラン(SiH4 )を用い、マグネシウムの原料ガスとしては例えばビス=シクロペンタジエニルマグネシウム((C5 H5 )2 Mg)を用いる。
【0026】
p側コンタクト層20を成長させたのち、例えば、p側コンタクト層20の上にレジストよりなる図示しないマスクを選択的に形成する。次いで、このマスクを利用してp側コンタクト層20,p型クラッド層19,p型ガイド層18,脱離防止層17,活性層16,n型ガイド層15,n型クラッド層14およびn側コンタクト層13の一部を順次エッチングして、n側コンタクト層13を表面に露出させる。続いて、例えばチタンおよびアルミニウムを順次蒸着してn側電極22を形成すると共に、加熱処理を行い、n側電極22を合金化する。加熱処理を行ったのち、例えばパラジウム,白金および金を順次蒸着してp側電極21を形成する。
【0027】
p側電極21を形成したのち、基板11を例えば80μm程度の厚さとなるように研削する。基板11を研削したのち、所定の大きさに整え、p側電極21の長さ方向において対向する一対の共振器端面に図示しない反射鏡膜を形成する。
これにより、図1に示した半導体レーザが完成する。
【0028】
この半導体レーザは、次のように作用する。
【0029】
この半導体レーザでは、n側電極22とp側電極21との間に所定の電圧が印加されると、活性層16に電流が注入され、電子−正孔再結合により発光が起こる。このときの脱離防止層17およびその付近の価電子帯端のエネルギー準位について模式的に表したものを図5に示す。ここでは、脱離防止層17が多層構造とされているので、従来の単層構造のものよりも結晶性に優れており、脱離防止層17における電気抵抗が小さくなっている。また、脱離防止層17が量子井戸構造とされているので、図5に示したように、p型クラッド層19からp型ガイド層18を経て脱離防止層17に注入された正孔が、各井戸層17e〜17gに形成された量子準位E0 QW1,E0 QW2,E0 QW3を介して共鳴トンネリングにより活性層16側に流れる。よって、良好な電流ー電圧特性が得られる。
【0030】
このように本実施の形態に係る半導体素子によれば、脱離防止層17が多層構造を有するようにしたので、脱離防止層17の結晶性を向上させることができる。よって、脱離防止層17から活性層16への欠陥の伝播を抑制することができ、活性層16の結晶性を向上させることができる。その結果、発光特性の劣化を防止することができる。また、脱離防止層17の結晶性を向上させることができるので、脱離防止層17における電気抵抗を小さくすることができ、閾値電流,閾値電圧,駆動電流および駆動電圧をそれぞれ低減することができる。従って、良好な動作特性を得ることができる。
【0031】
更に、脱離防止層17を、量子化した障壁層17a〜17dと井戸層17e〜17gとの積層構造とし、井戸層17e〜17gに局在するエネルギー準位E0 QW1,E0 QW2,E0 QW3を活性層16側ほど漸次大きくしたので、共鳴あるいはエネルギー準位の状態密度の増加によりトンネル電流を増大させることができ、脱離防止層17における電気抵抗をより小さくすることができる。
【0032】
なお、上記第1の実施の形態では、井戸層17e〜17gの厚さを変化させることにより井戸層17e〜17gに局在するエネルギー準位E0 QW1,E0 QW2,E0 QW3を大きくまたは小さくするようにしたが、井戸層17e〜17gの厚さは互いに同一とし、井戸層17e〜17gを構成する材料または組成を変化させるなどの他の方法により井戸層17e〜17gに局在するエネルギー準位E0 QW1,E0 QW2,E0 QW3を大きくまたは小さくするようにしてもよい。例えば、活性層16側に位置する井戸層17e〜17gほどアルミニウムの組成比が大きいp型Alx Ga1-x N混晶により構成するようにしてもよい。
【0033】
[第2の実施の形態]
図6は、本発明の第2の実施の形態に係る半導体素子としての半導体レーザの脱離防止層37およびその近傍を表すものである。また、図7は、脱離防止層37およびその付近のエネルギーバンド構造を価電子帯のエネルギー準位について模式的に表したものである。この半導体レーザは、脱離防止層37の構成が異なることを除き、他は第1の実施の形態と同様の構成を有している。よって、ここでは同一の構成要素には同一の符号を付し、同一部分についての詳細な説明を省略する。
【0034】
脱離防止層37は、井戸層37e〜37gの厚さが互いに同一であり、局在するエネルギー準位E0 QW4,E0 QW5,E0 QW6が互いに等しくされると共に、障壁層37a〜37dの厚さも互いに同一とされたことを除き、第1の実施の形態の脱離防止層17と同一の構成を有している。井戸層37e〜37gの厚さは例えばそれぞれ4nmとされ、障壁層37a〜37dの厚さは例えばそれぞれ4nm〜5nmとされている。
【0035】
この脱離防止層37では、多層構造とされることにより、第1の実施の形態の脱離防止層17と同様に結晶性の向上が図られると共に、井戸層37e〜37gが量子化されることにより、エネルギー準位の状態密度を増加させ、トンネル電流を増大させるようになっている。
【0036】
このように本実施の形態によれば、脱離防止層37を量子化した障壁層37a〜37dと井戸層37e〜37gとの多層構造とするようにしたので、エネルギー準位の状態密度の増加によりトンネル電流を増大させることができ、脱離防止層37における電気抵抗をより小さくすることができる。
【0037】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記実施の形態では、井戸層17e〜17g,37e〜37gが量子化された場合について説明したが、井戸層17e〜17g,37e〜37gを必ずしも量子化する必要はない。その場合であっても、脱離防止層17,37を多層構造としたことによる効果は得られる。
【0038】
また、上記実施の形態では、脱離防止層17,37を障壁層17a〜17d,37a〜37dと井戸層17e〜17g,37e〜37gとを有する多層構造とするようにしたが、これ以外の他の多層構造としてもよい。例えば、各層の材料または組成を変化させ、バンドギャップが漸次大きくまたは小さくなるようにしてもよい。
【0039】
更に、上記実施の形態では、脱離防止層17,37を全体としてAlGaN混晶により構成するようにしたが、少なくとも一部にアルミニウムを含み、3B族元素のうちの少なくとも1種と5B族元素のうちの少なくとも窒素とを含む他の窒化物系III−V族化合物半導体により構成するようにしてもよい。
【0040】
加えて、上記実施の形態では、井戸層17e〜17g,37e〜37gに局在するエネルギー準位を活性層16側に位置するものほど漸次大きくした場合について説明したが、活性層16側に位置するものほど漸次小さくなるようにしてもよい。
【0041】
更にまた、上記実施の形態では、活性層16をGaInN混晶により構成するようにしたが、3B族元素のうちの少なくともインジウムと5B族元素のうちの少なくとも窒素とを含む他の窒化物系III−V族化合物半導体により構成するようにしてもよい。このような窒化物系III−V族化合物半導体としては、InNあるいはAlGaInN混晶などが挙げられる。
【0042】
加えてまた、上記実施の形態では、半導体レーザの構成について具体的に例を挙げて説明したが、本発明は他の構成を有する半導体レーザについても適用することができる。例えば、n型ガイド層15およびp型ガイド層18を備えていなくてもよい。また、p側電極21を細い帯状とすること以外の他の構造により電流狭窄するようにしてもよい。更に、屈折率導波型あるいはリッジ導波型の半導体レーザとしてもよい。また、各半導体層および基板11を構成する材料についても具体的に例を挙げて説明したが、各半導体層を他の窒化物系III−V族化合物半導体により構成するようにしてもよく、基板11を窒化ガリウム(GaN),炭化ケイ素(SiC)などの他の材料により構成するようにしてもよい。
【0043】
更にまた、上記実施の形態では、バッファ層12,n側コンタクト層13,n型クラッド層14,n型ガイド層15,活性層16,脱離防止層17,p型ガイド層18,p型クラッド層19およびp側コンタクト層20をMOCVD法により形成する場合について説明したが、MBE法またはハイドライド気相成長法またはハライド気相成長法などの他の気相成長法により形成するようにしてもよい。なお、ハイドライド気相成長法とは、ハイドライド(水素化物)が輸送または反応に寄与する気相成長法のことをいい、ハライド気相成長法とは、ハライド(ハロゲン化物)が輸送または反応に寄与する気相成長法のことをいう。
【0044】
更にまた、上記実施の形態では、半導体素子として半導体レーザを具体例に挙げて説明したが、本発明は、3B族元素のうちの少なくともインジウムと5B族元素のうちの少なくとも窒素とを含む窒化物系III−V族化合物半導体よりなるインジウム含有層を備えた半導体素子について広く適用することができる。例えば、発光ダイオードなどの他の発光素子についても同様に適用することができ、更にはトランジスタなどの電子素子についても適用することができる。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の半導体素子によれば、多層構造を有する脱離防止層を量子化した井戸層と障壁層とを有する積層構造とし、井戸層に局在するエネルギー準位をインジウム含有層側ほど漸次大きくまたは小さくするようにした。これにより、脱離防止層の結晶性を向上させることができる。さらに、共鳴あるいはエネルギー準位の状態密度の増加によりトンネル電流を増大させることができ、脱離防止層における電気抵抗をより一層小さくすることができる。よって、例えば良好な動作特性を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る半導体レーザの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した半導体レーザの脱離防止層を拡大して表す断面図である。
【図3】図1に示した半導体レーザの脱離防止層およびその近傍の層におけるエネルギーバンド構造を表す模式図である。
【図4】従来の半導体レーザの脱離防止層およびその近傍の層におけるエネルギーバンド構造を表す模式図である。
【図5】図1に示した半導体レーザの作用を説明するためのエネルギーバンド構造を表す模式図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る半導体レーザの脱離防止層の構造を表す断面図である。
【図7】図6に示した半導体レーザの脱離防止層およびその近傍の層におけるエネルギーバンド構造を表す模式図である。
【符号の説明】
11…基板、12…バッファ層、13…n側コンタクト層、14…n型クラッド層、15…n型ガイド層、16…活性層、17,37…脱離防止層、17a〜17d,37a〜37d…障壁層、17e〜17g,37e〜37g…井戸層、18…p型ガイド層、19…p型クラッド層、20…p側コンタクト層、21…p側電極、22…n側電極
Claims (3)
- 3B族元素のうちの少なくともインジウム(In)と5B族元素のうちの少なくとも窒素(N)とを含む窒化物系III−V族化合物半導体よりなるインジウム含有層と、
このインジウム含有層の一面側に設けられ、前記インジウム含有層からインジウムが脱離するのを防止する脱離防止層とを備え、
前記脱離防止層は、交互に積層された障壁層と複数の井戸層とを有する多層構造を備え、
前記井戸層は量子化されていると共に、前記障壁層は電荷がトンネリング可能な厚さとされ、
前記インジウム含有層側に位置する井戸層ほど局在するエネルギー準位が漸次大きくまたは小さくなっている、
半導体素子。 - 前記脱離防止層は、3B族元素のうちの少なくとも1種と5B族元素のうちの少なくとも窒素(N)とを含む窒化物系III−V族化合物半導体よりなり、少なくとも一部にアルミニウム(Al)を含む、請求項1記載の半導体素子。
- 前記障壁層はAlx Ga1-x N(但し、0<x<1)よりなると共に、前記井戸層はAly Ga1-y N(但し、0≦y<1)よりなる、請求項1記載の半導体素子。
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