JP3817082B2 - エポキシ樹脂の硬化促進剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、フェノールノボラック類を硬化剤として用いるエポキシ樹脂(以下、フェノール硬化系エポキシ樹脂という)の硬化促進剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は、優れた電気特性、機械特性、耐食性などを有することから、半導体封止材その他の成形材料、積層板及び接着剤などの分野で広く使用されている。このエポキシ樹脂を実際に使用する場合には、硬化剤のほか、通常、硬化を促進させるために、硬化促進剤が配合される。
しかしながら、硬化促進剤を添加すると、エポキシ樹脂の保存安定性や成形時における流動性が低下する。そのため、保存安定性や成形時における流動性が関係する低温領域では、硬化速度が遅く、エポキシ樹脂を成形する高温領域では硬化速度が速い、いわゆる感温性に優れた硬化促進剤が求められている。
【0003】
従来、フェノール硬化系エポキシ樹脂に対して使用される感温性硬化促進剤としては、通常のイソシアネート化合物とジメチルアミンなどの低級ジアルキルアミンとを反応させて得られるウレア化合物がよく知られている(特開昭58−53915号、特公昭63−5249号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、通常のイソシアネート化合物とジメチルアミンなどの低級ジアルキルアミンとから得られる上記ウレア化合物は、感温性の点で充分とはいえなかった。
そこで、本発明は、感温性の優れた、フェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の問題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のイソシアネート化合物と第2級アミン類とを反応させて得られるウレア化合物が、フェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤として使用した場合に、優れた感温性を示すことを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、第1の発明は、イソシアネート化合物と脂環式アミンとを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とするフェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤である。
第2の発明は、イソシアネート化合物とメチルベンジルアミン又はメチルエタノールアミンとを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とするフェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤である。
第3の発明は、トシルイソシアネートと第2級アミン類とを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とするフェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤である。
そして、第4の発明は、置換又は非置換フェニレンジイソシアネートとイミダゾール又はイミダゾール環を構成する炭素原子に結合した水素原子の1〜2個を炭素数1〜4個のアルキル基で置換したイミダゾール誘導体とを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とするフェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤であり、この第4の発明ではウレア化合物の粉体表面をカルボン酸類で処理するのが望ましい。
【0006】
【発明の実施の形態】
第1の発明であるイソシアネート化合物と脂環式アミンとを反応させて得られるウレア化合物において、使用すべきイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの多官能イソシアネートあるいはフェニルイソシアネートなどの単官能イソシアネートが挙げられるが、これらのうちフェニレンジイソシアネート、特にはp−フェニレンジイソシアネートが好ましい。
また、脂環式アミンとしては、ピペリジン、ピロリジン、モルホリンあるいはこれらの低級アルキル置換体が挙げられるが、特にはピロリジンが好ましい。
【0007】
第2の発明は、イソシアネート化合物と低級ジアルキルアミンから得られる従来のウレア化合物において、低級ジアルキルアミンのアルキル基の1個を他の置換基、特にはベンジル基又はヒドロキシエチル基で置換したメチルベンジルアミン又はメチルエタノールアミンを使用することにより、感温性が改善されることを見いだし、その知見に基づき完成させたものである。
第2の発明では、イソシアネート化合物は上記したものが使用できるが、トリレンジイソシアネートが好ましい。
【0008】
第3の発明であるトシルイソシアネートと第2級アミン類とから得られるウレア化合物においては、第2級アミン類は特に限定されないが、ジメチルアミン又は上記の脂環式アミンであることが好ましい。
【0009】
第4の発明は、置換又は非置換フェニレンジイソシアネートとイミダゾール類から得られるウレア化合物であり、イミダゾール類はイミダゾール又はイミダゾール環を構成する炭素原子に結合した水素原子の1〜2個を炭素数1〜4個のアルキル基で置換したイミダゾール誘導体に限定される。より炭素数の大きいアルキル基で置換したイミダゾール誘導体では優れた感温性が得られない。イミダゾール誘導体としては、2−メチルイミダゾール、4−メチルイミダゾール及び2−エチル−4−メチルイミダゾールなどが挙げられるが、これらのうち2−メチルイミダゾールが最も好ましい。
置換又は非置換フェニレンジイソシアネートとしては、例えば、トリレンジイソシアネートあるいはフェニレンジイソシアネートなどが挙げられるが、特にはp−フェニレンジイソシアネートが最も好ましい。
【0010】
更に、第4の発明であるウレア化合物の粉体表面をカルボン酸類で処理することにより、感温性をさらに向上させることができる。その際、使用するカルボン酸類としては、酢酸、プロピオン酸、ベンゾトリアゾールなどの一塩基酸、アジピン酸、o−フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、イソシアヌル酸などの多塩基酸を挙げることができるが、トリメリット酸あるいはピロメリット酸などの多価のカルボン酸であることがより好ましい。
【0011】
上記表面処理の方法としては、粉末状のウレア化合物に、ウレア化合物の貧溶剤に溶解したカルボン酸類の溶液を、混合攪拌しながら徐々に加え、均一混合後に溶剤を乾燥除去する方法が最も好ましいが、ウレア化合物を貧溶剤に分散させて同様に処理することもできる。
なお、過剰量のカルボン酸類の使用は、触媒活性の低下につながるため、使用するカルボン酸類の量はウレア化合物の30重量%以下とし、20重量%以下にするのが好ましい。
【0012】
上記した4タイプのウレア化合物の中で、フェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤として最も好ましいのは、p−フェニレンジイソシアネートとイミダゾール類との反応で得られるウレア化合物並びにその粉体表面をカルボン酸類で処理したものである。
【0013】
本発明の硬化促進剤は、一般の方法に準じて製造することができる。すなわち、トルエン、メチルエチルケトンあるいはジメチルホルムアミド又はこれらの混合溶剤に、イソシアネート化合物を溶解し、攪拌混合下に10〜80℃付近の温度で、第2級アミン類を液状で、あるいは適当な溶剤に溶解して連続的又は断続的に添加して反応させる。そして、生成する結晶状のウレア化合物を濾過などの方法で取出し、必要に応じて溶剤を乾燥除去することにより、ほぼ定量的に得ることができる。溶剤の乾燥除去の方法は特に限定されないが、100℃以下の温度で実施することが好ましい。また、得られたウレア化合物はそのまま使用できるが、必要に応じて粉砕して使用してもよい。
【0014】
本発明の硬化促進剤は、フェノール硬化系エポキシ樹脂に対して使用する。硬化剤であるフェノールノボラック類としては、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、キシリレンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂あるいはポリビニルフェノールなどの多価フェノール性化合物が挙げられる。
また、エポキシ樹脂としては、液状又は固形状のビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、前記フェノールノボラック類のグリシジル化により得られるエポキシ樹脂、ビフェニルエポキシ樹脂、臭素化フェノールノボラックエポキシ樹脂あるいはトリグリシジルイソシアヌレートなどが挙げられる。
フェノール硬化系エポキシ樹脂は、硬化剤と本発明の硬化促進剤、及び必要に応じて、その他の添加剤、例えば、フィラー、離型剤、着色剤、難燃化剤あるいは他の硬化促進剤などを配合して、溶融混練した後、冷却粉砕することにより、粉末状の成形材料とすることができる。また、更にこの粉末をプレス成形してタブレット状の成形材料とすることもできる。あるいは液状又は固形状のエポキシ樹脂を適当な溶剤に溶解した溶液に、硬化剤、本発明の硬化促進剤、及びその他の各種添加剤を溶解・混練して液状の硬化性組成物として利用してもよい。
【0015】
本発明の硬化促進剤の添加量は、通常、フェノール硬化系エポキシ樹脂100重量部に対して、0.5〜15重量部程度であるが、最適な量は要求される硬化速度などに応じて適宜設定する。なお、硬化促進剤は、そのまま粉末又は固形の状態で、エポキシ樹脂成形材料又はエポキシ樹脂組成物に配合するか、予め硬化剤であるフェノールノボラック類に溶融混練し、冷却後、粉砕した、いわゆるマスターバッチの形で使用してもよい。マスターバッチを作るときの硬化促進剤の量は、通常、フェノールノボラック類100重量部に対して、5〜50重量部、好ましくは7〜30重量部である。
【0016】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこの実施例の記載に限定されるものではない。
【0017】
(実施例1)
容積5リットルのコルベンに、トルエン1.4kgとp−フェニレンジイソシアネート(PPDI)144g(0.90モル)を仕込み、約30℃で均一に溶解した。攪拌下、30〜50℃でトルエン900gとジメチルホルムアミド800gの混合溶剤に、2−メチルイミダゾール150g(1.83モル)を溶解した溶液を約30分で滴下した後、同温度で30分間反応させた(反応の終点は、赤外スペクトル分析によりイソシアネート結合の吸収がほぼ完全に消失していることで確認した)。30℃以下に冷却後、結晶を濾過して取出し、70〜80℃で循風式乾燥機を用いて溶剤を除去し、収率約98%で、請求項4の発明であるウレア化合物を粉末状態で得た。
【0018】
(実施例2)
容積0.3リットルのナスフラスコに、実施例1で得たウレア化合物の粉末37gとアセトン60gを入れて分散させた。これに、アセトン40gに溶解したトリメリット酸2.4g(p−フェニレンジイソシアネートの6.5重量%)を加えて均一に混合した後、ロータリーエバポレータを使用して大部分の溶剤を除去した。次いで、50〜60℃で循風式乾燥機を用いて乾燥し、粉体表面がカルボン酸で処理された請求項5の発明であるウレア化合物を定量的に粉末状態で得た。
【0019】
(実施例3〜5並びに比較例1〜3)
実施例1の方法に準じて、表1に示すイソシアネート化合物と第2級アミン類とからウレア化合物を得た。ただし、比較例2以外の場合は第2級アミン類を溶解する溶剤としてトルエンのみを使用した。なお、実施例3は請求項1、実施例4は請求項2、実施例5は請求項3の発明に該当する。
【0020】
【表1】
Figure 0003817082
【0021】
(試験例1〜8)
軟化点80℃のフェノールノボラック樹脂52重量部と、表2に示した量の硬化促進剤を110℃で均一に溶融混合し、冷却した後に粗砕して、硬化促進剤のマスターバッチを得た。次いで、軟化点72℃、エポキシ当量196のo−クレゾールノボラックエポキシ樹脂100重量部を110℃で溶融し、これに上記の硬化促進剤のマスターバッチ全量を加え、2分間均一に溶融混合し、速やかに冷却した後、粉砕してエポキシ樹脂組成物を得た。
そして、120℃と175℃において、このエポキシ樹脂組成物のゲルタイムを下記の方法で測定し、感温性の指標としてゲルタイム比(120℃/175℃)を求め、その結果を表2に示した。この比が大きいほど、触媒活性の温度依存性が大きく、感温性に優れていることを表わす。
【0022】
(ゲルタイムの測定条件)
測定装置:日合商事株式会社製 キュラストメータ V型
樹脂用ダイス:P−200
振幅角度:±1/4°
【0023】
【表2】
Figure 0003817082
【0024】
表2から明らかなように、本発明の硬化促進剤は、比較例のウレア化合物に比べてゲルタイム比が大きく、感温性に優れていた。
【0025】
【発明の効果】
本発明によれば、低温領域では保存安定性及び成形時の流動性が良く、高温領域では硬化速度が速い、感温性に優れたエポキシ樹脂組成物を提供することができ、半導体封止材、積層板及び接着剤などに用いられるフェノール硬化系エポキシ樹脂の硬化促進剤として極めて有用なものである。

Claims (4)

  1. イソシアネート化合物と脂環式アミンとを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とする、フェノールノボラック類を硬化剤として用いるエポキシ樹脂の硬化促進剤。
  2. イソシアネート化合物とメチルベンジルアミン又はメチルエタノールアミンとを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とする、フェノールノボラック類を硬化剤として用いるエポキシ樹脂の硬化促進剤。
  3. トシルイソシアネートと第2級アミン類とを反応させて得られるウレア化合物からなることを特徴とする、フェノールノボラック類を硬化剤として用いるエポキシ樹脂の硬化促進剤。
  4. 置換又は非置換フェニレンジイソシアネートとイミダゾール又はイミダゾール環を構成する炭素原子に結合した水素原子の1〜2個を炭素数1〜4個のアルキル基で置換したイミダゾール誘導体とを反応させて得られるウレア化合物の粉体表面をカルボン酸類で処理したウレア化合物からなることを特徴とする、フェノールノボラック類を硬化剤として用いるエポキシ樹脂の硬化促進剤。
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