JP3816320B2 - 筒形防振装置 - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、径方向に離隔配置せしめた内外筒金具を本体ゴム弾性体で連結した筒形防振装置に係り、特に、筒形防振装置を防振連結部材間に装着するに際して、内筒金具の中心孔をシールして水等の侵入を防止するシールゴムを備えた筒形防振装置に関するものである。
【0002】
【背景技術】
従来から、振動伝達系を構成する部材間に介装される防振連結体の一種として、互いに径方向に離隔配置された内筒金具と外筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて、それら内外筒金具を本体ゴム弾性体によって弾性的に連結した筒形防振装置が知られており、例えば、自動車において、サスペンションメンバ等のメンバマウントや、デフマウント、ボデーマウント、サスペンションブッシュ等への適用が提案されている。
【0003】
ところで、このような筒形防振装置では、一般に、防振連結される一方の部材に固設されたロッドやボルト等が内筒金具に挿通されると共に、内筒金具の軸方向両端面に対して、防振連結される部材や座金などが圧接されて、内筒金具を軸方向に締め付けるようにして固着される一方、防振連結される他方の部材に形成された圧入孔に対して、外筒金具が圧入固定されることにより、それら防振連結される二つの部材間に筒形防振装置が組み付けられることとなる。その際、内筒金具の中心孔内に水が侵入すると、錆による部材の錆び付きの他、腐食による強度や耐久性の低下などの問題が発生するおそれがある。
【0004】
そこで、従来では、例えば、内筒金具の軸方向端面に薄肉のシールゴムを被着形成して、該シールゴムを、内筒金具と防振連結される部材等の間で挟圧せしめた構造が採用されている。
【0005】
ところが、このようなシールゴムの挟圧によるシール構造では、繰り返し及ぼされる荷重や摺動に起因してシールゴムにヘタリや磨耗が生ぜしめられることに伴って、シールゴムによるシール機能が早期に低下し易く、長期間に亘って安定したシール機能を確保することが極めて難しかった。
【0006】
なお、実開昭57−165827号公報には、本体ゴム弾性体の軸方向端面にシール突起を突設した構造や、内筒金具の軸方向端部の外周面に対して本体ゴム弾性体から別体形成されたシール突起を固着して突設した構造が、開示されているが、本体ゴム弾性体にシール突起を一体形成すると、本体ゴム弾性体の弾性変形に伴ってシール突起にまで弾性変形が及ぼされるために、安定したシール性能が発揮され難いという問題があった。また、本体ゴム弾性体から別体形成されたシール突起では、成形が面倒であることに加えて、シール突起の内筒金具等への接着面に応力が集中して剥離や亀裂等が生じ易いために、十分な耐久性が得られ難いという問題があった。
【0007】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、内筒金具の軸方向端部からの水の侵入を長期間に亘って安定して防止することの出来る、新規なシール構造を備えた筒形防振装置を提供することにある。
【0008】
【解決手段】
以下、このような課題を解決するために為された本発明の態様を記載する。なお、以下に記載の各態様において採用される構成要素は、可能な限り任意の組み合わせで採用可能である。また、本発明の態様乃至は技術的特徴は、以下に記載のものに限定されることなく、明細書全体および図面に記載され、或いはそれらの記載から当業者が把握することの出来る発明思想に基づいて認識されるものであることが理解されるべきである。
【0009】
すなわち、本発明の第一の態様は、互いに径方向に離隔配置された内筒金具と外筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて、それら内外筒金具を該本体ゴム弾性体によって弾性的に連結した筒形防振装置において、前記内筒金具の軸方向端部を、前記本体ゴム弾性体から軸方向外方に延び出させて、該内筒金具の軸方向端部の外周面に、該本体ゴム弾性体から一体的に延び出す薄肉筒状の接続ゴム層を被着形成すると共に、該接続ゴム層の軸方向端縁部を該内筒金具よりも軸方向外方にまで突出させて、該内筒金具が取り付けられる取付部材に対して該内筒金具の外周側で圧接せしめられる環状シールゴムを一体形成し、且つ該環状シールゴムの内周側基端部を、該内筒金具の軸方向端面から軸方向内方に離れた位置から凹状の略アール面形状で立ち上げて、該環状シールゴムの内径寸法及び外径寸法を軸方向の突出先端側に行くに従って次第に大きくすると共に、該環状シールゴムにおいて、該内筒金具から立ち上がる内周側の基端部よりも軸方向内方側から、該環状シールゴムの外径寸法を突出先端側に行くに従って次第に大径化せしめたことを、特徴とする。
【0010】
このような本態様に従う構造とされた筒形防振装置においては、内筒金具の軸方向端部の外周面に被着されて軸方向に延びる接続ゴム層によって、内筒金具の軸方向端部に突設された環状シールゴムが本体ゴム弾性体と接続されて一体成形されていることから、環状シールゴムを、本体ゴム弾性体と同時に、容易に形成することが出来ると共に、内筒金具に対して強固に固着せしめることが可能となる。しかも、接続ゴム層は薄肉で、且つ内筒金具の外周面に被着されていることから、本体ゴム弾性体と環状シールゴムの間での応力伝達が有利に防止されるのであり、それによって、本体ゴム弾性体による防振性能と、環状シールゴムによるシール性能とが、両立して高度に且つ安定して発揮され得る。
【0011】
また、環状シールゴムにおける内周側の基端部が、内筒金具の軸方向端面から軸方向内方に離れて位置せしめられており、環状シールゴムの成形に際しての成形型と内筒金具の封止部分(所謂、ゴムの噛み切り部分)が、内筒金具の外周面上で、軸方向端部から軸方向内方に入り込んだ位置に設定されていることから、ゴム材料の漏れ出しによる内筒金具の軸方向端面への回り込みが防止され得る。即ち、内筒金具の軸方向端面にゴム膜が形成されると、防振装置の装着状態下に及ぼされる荷重や摺動で該ゴム膜にヘタリや磨耗が生ぜしめられることにより、内筒金具の軸方向端面と防振連結される部材等の間にガタや隙間が発生し易くなるが、本態様においては、そのような不具合の原因となるゴム膜の形成が防止されて、安定した装着状態とシール性能が長期間に亘って発揮されるのである。
【0012】
更にまた、本態様の筒形防振装置では、環状シールゴムにおける内周側の基端部に対して凹状の略アール面が付されていることから、応力集中が軽減されて亀裂や剥離による環状シールゴムの損傷が防止されると共に、かかる環状シールゴムの内周側基端部を成形する金型部位の強度や耐久性も有利に確保され得る。
また、本発明の第一の態様においては、環状シールゴムの突出先端部を、内筒金具が取り付けられる取付部材(防振連結すべき一方の部材)に対して当接させた装着状態下において、環状シールゴムに生ぜしめられる圧縮応力が軽減されて、剪断変形し安くなるのであり、それによって、ヘタリに起因する環状シールゴムの当接圧の低下が軽減されて耐久性が向上され得る。
また、本発明の第一の態様においては、環状シールゴムの肉圧寸法、特に基端部の肉圧寸法を確保して、応力集中の軽減による耐久性の向上を図ることが出来ると共に、環状シールゴムの成形金型に抜け方向のテーパを設定することにより、成形時の離型性を向上させることも可能となる。
【0013】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係る筒形防振装置において、環状シールゴムの内周側基端部を、内筒金具の軸方向端面から軸方向内方に0.5〜2.0mm離れた位置において、内筒金具から立ち上げたことを、特徴とする。このような本態様においては、環状シールゴムの内周側基端部を成形する金型部位の強度や耐久性を十分に確保しつつ、環状シールゴムの成形に際してのゴム材料の漏れ出しによる内筒金具の軸方向端面への回り込みを、より安定して防止することが出来る。
【0014】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係る筒形防振装置において、環状シールゴムの内周側基端部における凹状の略アール面を、曲率半径が0.5mm以上で且つ接続ゴム層の肉厚寸法の1/2以下の略半円形状としたことを、特徴とする。このような本態様においては、環状シールゴムの基端部における応力集中や荷重入力に伴う座屈的変形が一層有利に軽減乃至は防止されて、シール性能の耐久性と安定性の更なる向上が図られ得る。
【0017】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係る筒形防振装置において、環状シールゴムを、突出先端側に行くに従って次第に薄肉化せしめたことを、特徴とする。このような本態様においては、特に応力集中し易い環状シールゴムの基端部における亀裂や剥離を防止して、更なる耐久性の向上を図ることが可能となると共に、環状シールゴムの先端部分のばね剛性を柔らかくすることにより、内筒金具が取り付けられる取付部材における当接面への追従性を向上させて、シール性能の更なる安定化を図ることも可能となる。
【0018】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係る筒形防振装置であって、内筒金具において、前記環状シールゴムが突設された側の軸方向先端面が、全周に亘って平坦な円環状面とされていることを、特徴とする。このような本態様においては、内筒金具が取り付けられる取付部材(防振連結すべき一方の部材)に対して、内筒金具をより強固に安定して固定することが可能となり、延いてはシール性能の更なる向上にも資することとなる。
【0019】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る筒形防振装置であって、内筒金具において、軸方向一方の端部だけに、前述の如き環状シールゴムを突設せしめたことを、特徴とする。即ち、前記第一乃至第五の何れかの態様に係る筒形防振装置では、内筒金具の軸方向両端部に環状シールゴムを突設することも可能であり、それによって、内筒金具の中心孔への軸方向両側からの水等の侵入を可及的に防止するようにすることも可能であるが、本態様においては、内筒金具の軸方向一方の側だけに環状シールゴムを設けたことにより、万一、内筒金具の中心孔内に侵入した水等を、環状シールゴムが形成されていない側の軸方向端部から排出させる構造も、採用可能となる。また、内筒金具の中心孔の軸方向両端部を完全にシールする場合に比して、温度変化等に起因して内筒金具の中心孔内に発生する負圧による悪影響を回避することも容易となる。
【0020】
また、本発明の第七の態様は、かかる第六の態様に係る筒形防振装置において、内筒金具における環状シールゴムが形成された側の軸方向端部が、他方の軸方向端部よりも鉛直方向上側に位置するように装着したことを、特徴とする。このような本態様においては、重力の影響を考慮して、装着状態下で、内筒金具の中心孔内への水等を侵入を可及的に防止しつつ、万一、水等が侵入した場合には、内筒金具の中心孔から容易に排出させることが可能となる。
【0021】
【発明の実施形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0022】
先ず、図1〜2には、本発明の一実施形態としての自動車用のサスペンションメンバマウント10が、示されている。このメンバマウント10は、互いに径方向に離隔配置された内筒金具12と外筒金具14が、それらの径方向対向面間に介在せしめられた本体ゴム弾性体16によって連結されている。そして、図3に示されているように、内筒金具12が自動車ボデー18に取り付けられて固定される一方、外筒金具14がサスペンションメンバ20に取り付けられて固定されることにより装着されて、サスペンションメンバ20を自動車ボデー18に対して防振支持せしめるようになっている。なお、以下の説明中、上下方向とは、原則として、略鉛直方向となる図1および3における上下方向をいうものとする。
【0023】
より詳細には、内筒金具12は、鉄鋼やアルミニウム合金等の剛性の金属材で形成されており、ストレートな厚肉の小径円筒形状を有している。また、内筒金具12の軸方向中間部分には、軸方向下方に偏倚した位置に、軸方向長さの略半分に亘って延びる大径部22が一体形成されている。
【0024】
また、外筒金具14は、内筒金具12と同様に、鉄鋼やアルミニウム合金等の剛性の金属材で形成されており、内筒金具12よりも大径の薄肉円筒形状を有していると共に、軸方向長さが内筒金具12の略半分とされている。また、外筒金具14の軸方向下方の端部には、径方向外方に向かって広がるフランジ部24が一体形成されている。そして、この外筒金具14は、内筒金具12に内挿されており、同一中心軸上で内筒金具12の径方向外方に離隔して位置せしめられており、内筒金具12の大径部22の外周側を、全体に亘って覆うようにして配設されている。
【0025】
さらに、これら内筒金具12と外筒金具14の対向面間には、本体ゴム弾性体16が介在せしめられており、この本体ゴム弾性体16によって、内筒金具12と外筒金具14が弾性的に連結されている。
【0026】
この本体ゴム弾性体16は、全体として厚肉の略円筒形状を有しており、その内周面に対して、内筒金具12の大径部22が加硫接着されていると共に、その外周面に対して、外筒金具14が加硫接着されている。要するに本実施形態では、本体ゴム弾性体16が、内筒金具12と外筒金具14を一体的に備えた一体加硫成形品26として形成されているのである。
【0027】
なお、内筒金具12と外筒金具14の径方向中間部分には、周方向全周に亘って連続して延びる薄肉円筒形状のインナスリーブ28が、同一中心軸上で、内外筒金具12,14から離隔位置して配設されており、本体ゴム弾性体16の厚さ方向(所謂、径方向)中間部分を軸方向に貫通して配設され、本体ゴム弾性体16に対して加硫接着されている。即ち、このインナスリーブ28によって、本体ゴム弾性体16、延いてはメンバマウント10の軸方向と軸直角方向のばね比が調節されており、軸方向に対して軸直角方向のばね特性が硬く設定されているのである。
【0028】
また、本体ゴム弾性体16には、内筒金具12を挟んで軸直角方向一方向で対向する位置において、軸方向に貫通する一対のスリット30,30が形成されている。即ち、これらのスリット30,30によって、本体ゴム弾性体16、延いては、メンバマウント10の軸直角方向のばね比が調節されており、スリット30,30が対向位置する径方向のばね特性が、それに直交する径方向のばね特性に比して柔らかく設定されている。なお、各スリット30には、その中間部分を貫通してインナスリーブ28が配設されている。
【0029】
また、外筒金具14のフランジ部24には、軸方向下方に向かって突出する緩衝ゴム32が、フランジ部24の全周に亘って突出形成されている。なお、本実施形態では、この緩衝ゴム32は、本体ゴム弾性体16が外筒金具14のフランジ部24上にまで回されることにより、本体ゴム弾性体16と一体形成されている。
【0030】
一方、内筒金具12の軸方向上端部分(大径部22よりも軸方向上側部分)は、本体ゴム弾性体16から軸方向上方に向かって大きく突出して延び出しており、特に、本実施形態では、5.0mm以上、好ましくは、10.0mm以上、より好ましくは、15.0mm以上の長さで、本体ゴム弾性体16の軸方向上端面から軸方向外方に突出せしめられている。そして、この突出した内筒金具12の軸方向上端部の外周面には、本体ゴム弾性体16から一体的に延び出した薄肉の円筒形状を有する、接続ゴム層34が密着状態で形成されており、加硫接着によって、突出部分を全体に亘って覆うようにして被着されている。特に、本実施形態では、接続ゴム層34の肉厚寸法が、0.5〜5.0mm、好ましくは、1.0〜3.0mmとされる。
【0031】
そして、内筒金具12の軸方向上端部の外周側には、かかる接続ゴム層34によって、内筒金具12を全周に亘って取巻くように延びる環状シールゴム36が、突出形成されている。この環状シールゴム36は、図4に要部が拡大して図示されているように、内筒金具12の軸方向端面から軸方向内方に、所定距離(接続ゴム層34の肉厚寸法の略3/4倍):Laだけ離れた位置から立ち上がって、軸方向外方に延び出しており、内筒金具12の軸方向端面よりも、所定高さ(Laと略同一):Lbだけ突出せしめられている。特に、本実施形態では、Laが、0.5〜4.0mm、好ましくは、1.0〜3.0mmに、また、Lbが、0.1〜4.0mm、好ましくは、0.5〜2.0mmに設定される。
【0032】
また、かかる環状シールゴム36の外周面38は、内筒金具12の軸方向端面から所定距離(接続ゴム層34の肉厚寸法の略三倍):Lcだけ軸方向内方に離隔した位置から、次第に軸方向外方に向かって大径化されている。特に、本実施形態では、Lcが、1.0〜15.0mm、好ましくは、1.5〜10.0mmに設定されて、Lc>Laとされている。また、環状シールゴム36の内周面40も、環状シールゴム36の内周側基端部(所謂、立上部)42から突出方向に向かって次第に大径化されている。要するに、これら環状シールゴム36の外周面38および内周面40は、何れも、突出方向に向かって次第に大径化するテーパ面として形成されている。換言すれば、環状シールゴム36が全体として、内筒金具12から離れて、径方向斜め外方に向かって軸方向に突出するテーパ筒形状とされているのである。
【0033】
なお、本実施形態では、環状シールゴム36の内周面40のテーパ角よりも、外周面38のテーパ角のほうが僅かに小さくされており、環状シールゴム36が突出方向先端部分に向かって、次第に薄肉化されている。
【0034】
また、接続ゴム層34の径方向(軸直角方向)において、接続ゴム層34の外周面から径方向外方へ全体に亘って突出する、環状シールゴム36の突出高さ(接続ゴム層34の肉厚寸法の略半分):Ldは、本実施形態では、0.3〜2.5mm、好ましくは、0.5〜1.5mmに設定される。
【0035】
すなわち、上述の説明からも明らかなように、環状シールゴム36の内周側基端部42が、凹状の略アール面形の断面形状とされている一方、環状シールゴム36の環状突起46が、略円弧形状とされており、環状シールゴム36が、周方向に一定の断面形状で内筒金具12の全周に亘って連続して形成されている。また、かかる環状シールゴム36は、接続ゴム層34を介して、本体ゴム弾性体16から充分離れた位置を保ちつつ、本体ゴム弾性体16の成形と同時に一体加硫成形されている。なお、本実施形態では、内周側基端部42の曲率半径Rが、0.5mm以上で且つ接続ゴム層34の肉厚寸法以下に設定される。
【0036】
上述の如き構造とされたサスペンションメンバマウント10においては、図3に示されているように、サスペンションメンバ20の装着孔48に対して、外筒金具14が圧入固定されることにより取り付けられる一方、内筒金具12の挿通孔51に対して、内挿スリーブ50が挿入されており、この内挿スリーブ50の挿通孔52の軸方向下部から、ボルト54が挿通されて、自動車ボデー18に固定されたナット56に螺着されることによって、内筒金具12がボルト固定されることとなる。それによって、メンバマウント10が、自動車ボデー18とサスペンションメンバ20の間に装着され、以て、サスペンションメンバ20を自動車ボデー18に対して防振するようにされる。
【0037】
また、そのような装着状態下では、ボルト54の頭部(図3、軸方向下端部)側には、ワッシャ58とストッパプレート60が外挿されて、内筒金具12の軸方向下端部側に締付け固定されている。このストッパプレート60は、薄肉の略円環板形状を有しており、軸直角方向に広がる外周縁部分が、外筒金具14のフランジ部24の軸方向下方に位置せしめられて、フランジ部24上に突設された緩衝ゴム32に対して、軸方向下方に離間して対向位置せしめられている。要するに、このストッパプレート60が緩衝ゴム32を介して、外筒金具14のフランジ部24に当接することにより、内外筒金具12,14、延いては、サスペンションメンバ20の自動車ボデー18に対する軸方向の相対的変位量が、緩衝的に制限されるようになっている。
【0038】
これにより、内筒金具12は、ボルト54に固定されたストッパプレート60と、自動車ボデー18との間で軸方向に締付け固定されており、その軸方向両端面は、ストッパプレート60と、自動車ボデー18の対向面に対して、それぞれ強固に当接固定されている。
【0039】
また一方、内筒金具12の軸方向上端部分における外周面に対して、内筒金具12に突設された環状シールゴム36が、自動車ボデー18に対して圧接されている。即ち、環状シールゴム36は、図5に環状シールゴム36の圧縮変形した状態が拡大して示されているように、内周側基端部42が内筒金具12に対して固着されていると共に、その突出先端部分(環状突起46)が自動車ボデー18に当接されることにより、全体として弾性変形せしめられており、以って、その弾性に基づいて、自動車ボデー18に対して追従して密着状態が保持されるようになっている。
【0040】
それ故、かかるサスペンションメンバマウント10においては、内筒金具12の軸方向上端面と自動車ボデー18との当接部位が、外部空間から環状シールゴム36によって略完全にシールされるのであり、タイヤによって跳ね上げられた水等が飛散して、メンバマウント10にかかる場合においても、環状シールゴム36によって、環状シールゴム36より内部、延いては内筒金具12の中心孔(挿通孔52)内への水等の侵入が有利に防止されて、良好なる防振性能が発揮され得るのである。
【0041】
特に、本実施形態では、環状シールゴム36の内周側基端部42にアール面が形成されていることにより、環状シールゴム36における応力集中が軽減されて、環状シールゴム36の耐久性が向上される。しかも、環状シールゴム36が、本体ゴム弾性体16とは、充分に離れて応力的に独立して形成されていることにより、本体ゴム弾性体16に及ぼされる荷重による弾性変形の影響を受けずに、安定したシール性が発揮され得る。
【0042】
また、本実施形態においては、内筒金具12の軸方向一方の端部(上方端部)にのみ、環状シールゴム36が設けられていることから、万一、水等が内筒金具12の中心孔(挿通孔51)内に侵入した場合においても、軸方向他方の端部(下方端部)に、水等の排出機構を有利に設けることが可能となる。また、温度変化等に起因して中心孔内に生ずる負圧等の悪影響も有利に回避され得る。
【0043】
特に、本実施形態においては、環状シールゴム36を、内筒金具12の軸方向上側に位置せしめたことにより、万一、水等が内筒金具12の中心孔(挿通孔52)内に侵入した場合においても、重力作用によって、内筒金具12の中心孔の中心部乃至は軸方向下側から容易に排出させることが出来る。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、これらはあくまでも例示であって、本発明は、これらの実施形態における具体的記載によって、何等、限定的に解釈されるものでない。
【0045】
例えば、前記実施形態では、インナスリーブ28やスリット30が、本体ゴム弾性体16を軸方向に貫通して、それぞれ所定の周方向長さで形成されていたが、周方向の全周に亘って不連続に延びるインナスリーブや、軸方向に所定長さで延びる有底穴形状のスリットを採用しても良く、要求される防振特性によっては、インナスリーブやスリットを設けなくても良い。
【0046】
また、環状シールゴム36の内周側基端部42から、凹状の略アール面形状で立ち上げられる環状突起46、延いては環状シールゴム36の具体的形状や構造は、要求される防振特性や、取付けられるボデーの形状等に応じて適宜に変更されるものであって、何等、限定されるものでない。
【0047】
具体的には、例えば、図6に示されているように、環状シールゴム36の外周面38および内周面40のテーパ角を同一にして、略円弧形状の突出先端部付近まで、一定の肉厚:tの断面形状を有する環状突起62とすることも可能である。また、図7に示されているように、外周面38に僅かなテーパを設ける一方、内周面40を鉛直方向に延ばして軸方向斜め外方(軸方向上方で且つ径方向)に突出させた環状突起64とすることも可能である。更にまた、図8に示されているように、外,内周面38,40を共に、鉛直方向に延ばして、内筒金具12の軸方向端面から突出させた環状突起66とすることも可能である。更に、図9に示されているように、外,内周面38,40を共に、軸方向斜め外方に湾曲して突出させた環状突起68とすることも可能である。
【0048】
また、本発明に従う構造とされたメンバマウント10は、流体封入式のメンバマウントにも適用可能である。具体的には、例えば、実開昭62−025348号公報や実開昭62−050344号公報等にも記載されているように、内部に非圧縮性流体が封入された流体室が形成されており、振動入力時に生ぜしめられる流体の流動作用に基づいて防振効果を得るようにした流体封入式の筒形防振装置等に対しても同様に、本発明は適用可能である。
【0049】
更にまた、前記実施形態では、ストッパプレート60が、サスペンションメンバ20の装着状態下において、メンバマウント10の軸方向下部に取付けられていたが、要求される防振特性によっては、そのようなストッパプレート60は、必ずしも設ける必要はない。また、その場合において、フランジ部24に密着して取り付けられる緩衝ゴム32の大きさや形状等も、適宜に変更可能である。
【0050】
加えて、本発明は、例示の如き自動車用メンバマウントの他、自動車用ボデーマウントや、デフマウント等、或いは、自動車以外の各種装置における筒形防振装置に対して、何れも、適用可能である。
【0051】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0052】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされた筒形防振装置においては、環状シールゴムが、内筒金具の軸方向端面から軸方向外方に位置して凹状の略アール面形状で立ち上げられていることから、優れた耐久性とシール性が発揮され得る。しかも、かかる環状シールゴムは、軸方向に延びる薄肉の接続ゴム層を介して本体ゴム弾性体と一体成形されていることから、容易に形成することが出来ると共に、内筒金具に対して強固に接着され得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としてのサスペンションメンバマウントを示す縦断面図であって、図2におけるI−I断面に相当する図である。
【図2】図1に示されたサスペンションメンバマウントの平面図である。
【図3】図1に示されたサスペンションメンバマウントの装着状態を示す縦断面図である。
【図4】図1に示されたサスペンションメンバマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図5】図3における要部を拡大して示す縦断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態としてのサスペンションメンバマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図7】本発明の更に別の実施形態としてのサスペンションメンバマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図8】本発明の更に別の実施形態としてのサスペンションメンバマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【図9】本発明の更に別の実施形態としてのサスペンションメンバマウントの要部を拡大して示す縦断面図である。
【符号の説明】
10 サスペンションメンバマウント
12 内筒金具
14 外筒金具
16 本体ゴム弾性体
34 接続ゴム層
36 環状シールゴム
42 内周側基端部
Claims (7)
- 互いに径方向に離隔配置された内筒金具と外筒金具の径方向対向面間に本体ゴム弾性体を介在せしめて、それら内外筒金具を該本体ゴム弾性体によって弾性的に連結した筒形防振装置において、
前記内筒金具の軸方向端部を、前記本体ゴム弾性体から軸方向外方に延び出させて、該内筒金具の軸方向端部の外周面に、該本体ゴム弾性体から一体的に延び出す薄肉筒状の接続ゴム層を被着形成すると共に、該接続ゴム層の軸方向端縁部を該内筒金具よりも軸方向外方にまで突出させて、該内筒金具が取り付けられる取付部材に対して該内筒金具の外周側で圧接せしめられる環状シールゴムを一体形成し、且つ該環状シールゴムの内周側基端部を、該内筒金具の軸方向端面から軸方向内方に離れた位置から凹状の略アール面形状で立ち上げて、該環状シールゴムの内径寸法及び外径寸法を軸方向の突出先端側に行くに従って次第に大きくすると共に、該環状シールゴムにおいて、該内筒金具から立ち上がる内周側の基端部よりも軸方向内方側から、該環状シールゴムの外径寸法を突出先端側に行くに従って次第に大径化せしめたことを特徴とする筒形防振装置。 - 前記環状シールゴムの内周側基端部を、前記内筒金具の軸方向端面から軸方向内方に0.5〜2.0mm離れた位置において、該内筒金具から立ち上げた請求項1に記載の筒形防振装置。
- 前記環状シールゴムの内周側基端部における凹状の略アール面を、曲率半径が0.5mm以上で且つ前記接続ゴム層の肉厚寸法の1/2以下の略半円形状とした請求項1又は2に記載の筒形防振装置。
- 前記環状シールゴムを、突出先端側に行くに従って次第に薄肉化せしめた請求項1乃至3の何れかに記載の筒形防振装置。
- 前記内筒金具において、前記環状シールゴムが突設された側の軸方向先端面が、全周に亘って平坦な円環状面とされている請求項1乃至4の何れかに記載の筒形防振装置。
- 前記内筒金具において、軸方向一方の端部だけに、前記環状シールゴムが突設された請求項1乃至5の何れかに記載の筒形防振装置。
- 前記内筒金具における前記環状シールゴムが形成された側の軸方向端部が、他方の軸方向端部よりも鉛直方向上側に位置するように装着した請求項6に記載の筒形防振装置。
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