以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1〜図5には、本発明に従う構造とされた防振装置の第1の実施形態として、自動車用のエンジンマウント10が示されている。エンジンマウント10は、マウント本体11を有しており、このマウント本体11が第1の取付部材12と第2の取付部材14を本体ゴム弾性体16で連結した構造を備えている。そして、第1の取付部材12がパワーユニット18に取り付けられると共に、第2の取付部材14が車両ボデー20に取り付られることにより、パワーユニット18が車両ボデー20によって防振支持されるようになっている。なお、以下の説明において、上下方向とは、原則として、エンジンマウント10の弾性主軸であって、主たる振動入力方向でもある、図1中の上下方向を言う。また、図1〜図5に示されているのは、車両に装着する前の単体状態でのエンジンマウント10であって、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間にパワーユニット18の支持荷重が入力されていない状態となっている。
より詳細には、第1の取付部材12は、略円形ブロック形状を有する高剛性の部材であって、鉄やアルミニウム合金等の金属材料で形成されている。また、第1の取付部材12の径方向中央には、上下方向に延びて上端面に開口する螺子孔22が形成されており、その内周面にねじ山が形成されている。更に、第1の取付部材12には、上方に向かって突出する突起部24が一体形成されている。この突起部24は、略円柱形状であって、中心軸から外周側に外れた径方向中間部分に形成されており、本実施形態では周上の1箇所に設けられている。
また、第1の取付部材12の上端部には、フランジ部26が一体形成されている。フランジ部26は、第1の取付部材12の全周に亘って連続的に形成されて環状となっており、第1の取付部材12の上端外周面から外周側に向かって突出している。なお、フランジ部26の上端面を含む第1の取付部材12の上端面が、軸直角方向に広がる平坦な外側端面28とされており、エンジンマウント10の中心軸方向(本体ゴム弾性体16の弾性主軸の延出方向)における第1の取付部材12の軸方向外側の端面が外側端面28で構成されている。
一方、第2の取付部材14は、薄肉大径の略円筒形状とされており、第1の取付部材12と同様に高い剛性を有している。また、第2の取付部材14は、軸方向中間部分の段差を挟んだ上側が大径部30とされていると共に、段差を挟んだ下側が小径部32とされている。
そして、第1の取付部材12と第2の取付部材14は、同一中心軸上で第1の取付部材12が第2の取付部材14の上方に離隔するように配置されて、本体ゴム弾性体16によって弾性的に連結されている。
本体ゴム弾性体16は、厚肉大径の略円錐台形状とされており、その小径側端部に第1の取付部材12が差し込まれて加硫接着されていると共に、大径側端部の外周面に第2の取付部材14が重ね合わされて加硫接着されている。なお、本実施形態において、本体ゴム弾性体16は、第1の取付部材12と第2の取付部材14を備えた一体加硫成形品として形成されている。
また、本体ゴム弾性体16の大径側端面には、中央凹所34が開口している。中央凹所34は、上底側が逆向きの略すり鉢状とされて上方に向かって次第に小径となっていると共に、開口側が略一定の円形断面を有する円柱状とされている。更に、本体ゴム弾性体16における中央凹所34の開口周縁部には、薄肉大径の略円筒形状を有するシールゴム層36が一体形成されて、下方に向かって延び出しており、第2の取付部材14の小径部32の内周面を覆うように加硫接着されている。
また、第2の取付部材14の下側開口部には、可撓性膜38が取り付けられている。可撓性膜38は、薄肉の略円板形状を有するゴム膜であって、軸方向に充分な弛みを有している。更に、可撓性膜38の外周縁部には、環状の固定金具40が加硫接着されており、可撓性膜38が固定金具40を備えた一体加硫成形品として形成されている。そして、固定金具40が第2の取付部材14の小径部32の下端に差し入れられた後、第2の取付部材14に対して八方絞りなどの縮径加工が施されることにより、可撓性膜38が第2の取付部材14に取り付けられている。
このような可撓性膜38の装着状態において、第2の取付部材14の内周側には、本体ゴム弾性体16と可撓性膜38の対向面間に外部から流体密に隔てられた流体封入領域42が形成されており、非圧縮性流体が封入されている。なお、流体封入領域42に封入される非圧縮性流体としては、特に限定されるものではないが、水やアルキレングリコール,ポリアルキレングリコール,シリコーン油、或いはそれらの混合液等が好適に採用される。更に、後述する流体の流動作用に基づく防振効果を効率的に発揮させるためには、0.1Pa・s以下の低粘性流体が望ましい。
また、流体封入領域42には、仕切部材44が配設されている。仕切部材44は、略円板形状を有しており、仕切部材本体46と底金具48と可動ゴム膜50とを備えている。仕切部材本体46は、略円板形状を有する硬質の部材であって、径方向中央部分には、軸方向に貫通する円形の上側透孔52が形成されている。また、仕切部材本体46の外周縁部には、外周面に開口して周方向に1周弱の所定の長さで延びる周溝54が形成されている。
底金具48は、全体として薄肉の略円環板形状を有しており、径方向中央部分に円形の下側透孔56が形成されていると共に、径方向中間部分に設けられた段差を挟んで内周部分が外周部分よりも上方に位置している。そして、底金具48は、仕切部材本体46に対して下方から重ね合わされて固定されている。
また、仕切部材本体46と底金具48の間には、可動ゴム膜50が配設されている。可動ゴム膜50は、略円板形状を有するゴム弾性体であって、外周部分が周方向環状に延びる略円形断面の厚肉部となっている。また、可動ゴム膜50は、径方向中央部分の両面が径方向中央側に向かって次第に軸方向外側に傾斜するテーパ面となっており、可動ゴム膜50が径方向中央に向かって次第に厚肉となっている。そして、可動ゴム膜50は、厚肉部が仕切部材本体46と底金具48の間に挟み込まれて、径方向中央部分に配設されており、仕切部材本体46の上側透孔52と底金具48の下側透孔56を閉塞するように軸直角方向で広がって配設されている。
このような構造とされた仕切部材44は、流体封入領域42に収容されて、第2の取付部材14によって支持されている。即ち、流体封入領域42内で軸直角方向に広がるように配設された仕切部材44は、外周面が第2の取付部材14の内周面に対してシールゴム層36を介して押し当てられることによって固定的に支持されている。
そして、仕切部材44が流体封入領域42内に配設されることにより、流体封入領域42は、仕切部材44を挟んで上下に二分されている。即ち、仕切部材44を挟んだ上方には、壁部の一部が本体ゴム弾性体16で構成されて、振動入力時に圧力変動が惹起される、受圧室58が形成されている一方、仕切部材44を挟んだ下方には、壁部の一部を可撓性膜38で構成されて、容積変化が容易に許容される、平衡室60が形成されている。なお、受圧室58と平衡室60には、それぞれ流体封入領域42に封入された非圧縮性流体が封入されている。
また、周溝54の開口部が第2の取付部材14によって覆われていると共に、周溝54の周方向両端部が受圧室58と平衡室60の各一方に連通されている。これにより、受圧室58と平衡室60を相互に連通するオリフィス通路62が、周溝54を利用して一周弱の所定長さで形成されている。なお、オリフィス通路62は、通路断面積(A)と通路長(L)の比(A/L)を調節することにより、チューニング周波数が調節されており、本実施形態では、エンジンシェイクに相当する10Hz程度の低周波数にチューニングされている。
また、可動ゴム膜50には、その一方の面に受圧室58の圧力が及ぼされていると共に、他方の面に平衡室60の圧力が及ぼされている。そして、アイドリング振動等に相当する中乃至高周波数の振動入力時には、受圧室58と平衡室60の相対的な圧力差に基づいて、可動ゴム膜50が共振状態で積極的に微小変形するようになっている。
かくの如き構造とされたマウント本体11には、インナブラケット64が取り付けられている。インナブラケット64は、厚肉の略板形状であって、マウント本体11の径方向一方向で外方(図1中、右方)に向かって延び出している。また、インナブラケット64の基端部分には、上下に貫通するボルト孔66が形成されている。更に、ボルト孔66の上側開口周縁部には、ボルト孔66よりも大径の凹所67が形成されており、インナブラケット64の上面に開口していると共に、インナブラケット64の基端側(図1中、左側)に延び出して基端面に開口している。更に、インナブラケット64の先端部分には、互いに所定距離を隔てた3つのボルト孔68,68,68がそれぞれ上下に貫通するように設けられており、もって、パワーユニット18への取付部69が形成されている。また、インナブラケット64における延出方向の基端部分には、第1の取付部材12の突起部24と対応する形状で、下面に開口する凹所状とされた挿入凹所70が設けられている。更に、インナブラケット64には、幅方向一方の面に開口する図示しない係止凹溝が軸方向上下に延びるように形成されている。
そして、インナブラケット64は、延出方向の基端部分が第1の取付部材12に対して上方から重ね合わされてボルト71で固定されており、側方(後述する門形部材82の幅方向一方の側)に延び出している。これにより、ボルト孔68,68,68を備えたパワーユニット18への取付部69が、インナブラケット64における第1の取付部材12から側方への延出先端部分に設けられている。また、第1の取付部材12の突起部24が挿入凹所70に挿入されることによって、インナブラケット64の第1の取付部材12に対するボルト71の中心軸周りでの回転が防止されて、インナブラケット64が第1の取付部材12に対して位置決めされている。本実施形態では、ボルト孔66に挿通されたボルト71の頭部が凹所67に収容されており、インナブラケット64上面からの突出量が抑えられている。なお、第1の取付部材12に上方に向かって突出するボルトが設けられており、該ボルトがインナブラケット64のボルト孔66に挿通されると共に、該ボルトにナットが締結されることにより、第1の取付部材12とインナブラケット64が固定されるようになっていても良い。
一方、マウント本体11には、アウタブラケット72が取り付けられている。このアウタブラケット72は、略円筒形状の嵌着部74を有しており、嵌着部74が第2の取付部材14に外嵌されることによって、マウント本体11に固定されている。
また、嵌着部74には、当接部76が固定されている。当接部76は、周方向に所定の長さで延びる板状とされており、その周上の複数箇所には下方に延び出す固着片78が一体形成されている。そして、固着片78が嵌着部74の上端外周面に重ね合わされて溶接などの手段で固着されることにより、当接部76が嵌着部74に対して軸直角方向で広がるように固定されている。
さらに、嵌着部74には、連結部80が固定されている。連結部80は、幅方向両側に設けられたリブによって補強された略板状であって、嵌着部74の周上における当接部76と径方向で対向する部分に取り付けられて、インナブラケット64と反対側に向かって延び出している。なお、連結部80は、延出方向の基端側の端部が嵌着部74の外周面に対して溶接などの手段で固着されることにより、嵌着部74に対して固定されている。
更にまた、嵌着部74には、門形部材82が固定されている。門形部材82は、略上下方向に延びて互いに対向配置された一対の脚部84,84と、それら脚部84,84の上端を相互に繋ぐ梁部86とを一体的に備えている。また、門形部材82における開口方向(図1の左右方向)の両端部には、それら脚部84,84と梁部86の略全長に亘って当接リブ88が一体形成されており、それぞれ板状とされた脚部84,84と梁部86が当接リブ88によって補強されている。そして、門形部材82は、脚部84,84の中間部分が嵌着部74の外周面に固着されていると共に、脚部84,84を補強する当接リブ88が当接部76の周方向の両端部に固着されており、それらによって嵌着部74に固定されている。
かくの如き構造とされたアウタブラケット72は、嵌着部74が第2の取付部材14に外嵌固定されることにより、第2の取付部材14側に取り付けられている。なお、嵌着部74は、上端部が内周側に向かって屈曲しており、かかる屈曲部分が第2の取付部材14の上端面に当接することで、嵌着部74が第2の取付部材14に対して位置決めされて、アウタブラケット72がマウント本体11に対する適正な位置に装着されるようになっている。
このようなアウタブラケット72の第2の取付部材14への装着状態において、アウタブラケット72の当接部76がインナブラケット64に対して上下方向で所定距離を隔てて対向している。そして、それらインナブラケット64と当接部76が当接することにより、第1の取付部材12と第2の取付部材14の軸方向上下での相対的な接近変位量が制限されるようになっている。これにより、インナブラケット64と当接部76の対向部分を利用して、パワーユニット18の車両ボデー20に対する下方への相対変位量を制限するバウンドストッパ機構が構成されている。
また、アウタブラケット72の門形部材82は、インナブラケット64を跨ぐように配設されており、インナブラケット64が門形部材82の幅方向一方の開口を通じて幅方向一方の側(図1中、右側)に延び出している。そして、インナブラケット64の一部と門形部材82の梁部86の一部とが上下に対向しており、それらインナブラケット64と門形部材82が当接することにより、第1の取付部材12と第2の取付部材14の軸方向上下での離隔変位量が制限されるようになっている。これにより、インナブラケット64と門形部材82の対向部分を利用して、パワーユニット18の車両ボデー20に対する上方への相対変位量を制限するリバウンドストッパ機構が構成されている。
さらに、インナブラケット64は、門形部材82の一対の脚部84,84に対して車両前後方向(図2中、左右方向)で対向している。そして、それらインナブラケット64と脚部84が当接することにより、第1の取付部材12と第2の取付部材14の車両前後方向への相対変位量が制限されるようになっている。これにより、インナブラケット64と一対の脚部84,84との対向部分を利用して、パワーユニット18の車両ボデー20に対する車両前後方向での相対変位量を制限する前後方向ストッパ機構が構成されている。
これらの各ストッパ機構で第1の取付部材12と第2の取付部材14の相対変位量が制限されていることにより、衝撃的な振動の入力時に本体ゴム弾性体16が過大に変形させられるのを防いで、耐久性の低下を防止することができる。
また、マウント本体11に装着されたインナブラケット64とアウタブラケット72の間には、ストッパゴム90が配設されている。本実施形態のストッパゴム90は、図6〜図11に示されているように、全体として略袋状とされており、図1,図2に示されているように、インナブラケット64に被せ付けられることによって、インナブラケット64と門形部材82の間に配設されている。
より詳細には、ストッパゴム90は、インナブラケット64の基端側の端面および両側面に重ね合わされる周壁部92と、周壁部92の上側開口を覆うように設けられた上壁部94と、周壁部92の下側開口の一部を覆うように設けられた下壁部96とを、有している。
周壁部92は、それぞれが略板形状とされた3つの側壁部98a,98b,98cによって構成されており、側壁部98bと側壁部98cが側壁部98aの幅方向(図9中、上下方向)の両端部からインナブラケット64の延出方向(図9中、右方)に向かって延び出すように一体形成された構造を有している。そして、側壁部98aがインナブラケット64の基端側の端面に重ね合わされていると共に、互いに対向する側壁部98bと側壁部98cがインナブラケット64の幅方向両側面に重ね合わされている。
また、側壁部98aには幅方向の中間部分に上下に延びる凹溝99が設けられており、インナブラケット64に対して重ね合わされる内面に開口している。また、側壁部98bには延出方向の中間部分に上下に延びる係止突起100が設けられており、側壁部98cとの対向方向の内側に向かって突出している。更に、側壁部98b,98cの側壁部98aと反対側の端面が傾斜面となっており、側壁部98b,98cの下端がインナブラケット64の延出方向で上端よりも大きく延び出している。
上壁部94は、図8,図11に示されているように、板状とされており、周壁部92と一体形成されて、周壁部92の上側開口を覆うように設けられている。そして、上壁部94は、インナブラケット64の基端部分の上面に重ね合わされて、インナブラケット64と門形部材82の梁部86との間に配設されている。なお、上壁部94には、上下に貫通する円形の挿通孔102が設けられており、ストッパゴム90の装着後に挿通孔102を通じて第1の取付部材12とインナブラケット64をボルト71で締結できるようになっている。
下壁部96は、図9,図11に示されているように、上壁部94と略平行に広がる板状となっており、周壁部92と一体形成されて、下方に向かって開放された周壁部92の下側開口の一部を覆っている。また、下壁部96は、周壁部92における側壁部98b,98cの延出方向の先端部分(図9中、左端部分)に一体形成されており、第1の取付部材12とインナブラケット64の重ね合わせ部分を側壁部98aと反対側に外れた位置において側壁部98bと側壁部98cを繋ぐように一体形成されている。これにより、周壁部92の下端と下壁部96とで囲まれた領域が、下方に向かって開口する開口窓104とされている。
そして、ストッパゴム90は、インナブラケット64に対して基端側から先端側に向かって外挿されて、非接着で被せ付けられる。これにより、周壁部92がインナブラケット64の基端部分の外周面を覆うように重ね合わされており、ストッパゴム90がインナブラケット64の外周面上に間で突出して設けられている。また、ストッパゴム90の側壁部98bに設けられた係止突起100が、インナブラケット64の側面に設けられた図示しない係止凹溝に挿し入れられることにより、ストッパゴム90がインナブラケット64に対して位置決めされている。また、ストッパゴム90のインナブラケット64への装着状態において、側壁部98aは、インナブラケット64の基端側の端面(図1中、左端面)に対して、凹溝99の形成部分で図1に示されているように離隔していると共に、凹溝99を外れた両側(図1の紙面直交方向の両側)で重ね合わされて当接している。なお、ストッパゴム90の装着方向とは、上述の如くインナブラケット64の基端側から先端側に向かう方向であって、図1中における右方向をいう。
かかるストッパゴム90のインナブラケット64への装着後、インナブラケット64が第1の取付部材12に対して開口窓104を通じて重ね合わされてボルト71で固定される。なお、インナブラケット64の基端面に開口する凹所67が、インナブラケット64の第1の取付部材12への装着状態において、ストッパゴム90の凹溝99に連通されており、もって、排水路が形成されている。そして、開口窓104を通じてインナブラケット64とストッパゴム90の間に入り込んだ雨水等が、排水路を通じて速やかに外部に排出されるようになっている。
また、ストッパゴム90の上壁部94がインナブラケット64と門形部材82の梁部86との間に、下壁部96がインナブラケット64と当接部76との間に、側壁部98b,98cがインナブラケット64と門形部材82の脚部84,84との間に、それぞれ配設される。これらによって、インナブラケット64とアウタブラケット72がストッパゴム90を介して緩衝的に当接するようになっており、バウンドストッパ機構と、リバウンドストッパ機構と、前後方向ストッパ機構の、それぞれに対して、緩衝ゴムがストッパゴム90によって与えられている。なお、ストッパゴム90の下壁部96は、インナブラケット64の第1の取付部材12への重ね合わせ部分よりも先端側において下面に重ね合わされており、側壁部98a側に位置する端面が、第1の取付部材12の外周面と対向して、インナブラケット64の延出方向で所定の距離を隔てて配置されている。
また、エンジンマウント10の単体状態(車両への非装着状態)において、ストッパゴム90の上壁部94は、インナブラケット64と門形部材82の間で挟圧されて、上下方向で圧縮されている。これにより、インナブラケット64と門形部材82は、ストッパゴム90を介して間接的に押し当てられており、ストッパゴム90と門形部材82の間に摩擦力が作用している。更に、インナブラケット64がストッパゴム90を介して門形部材82に当接されることにより、本体ゴム弾性体16に軸方向の予圧縮が及ぼされて、単体の自由形状に比して軸方向で圧縮変形されている。
そして、ストッパゴム90には、インナブラケット64と門形部材82を相対的に所定の方向で位置決めするために、弾性当接突部106が一体形成されている。弾性当接突部106は、ストッパゴム90における上壁部94の側壁部98a側の端縁部から上方に向かって突出する突条であって、門形部材82の幅方向端縁部に沿って連続する直線的な形状とされている。また、弾性当接突部106は、インナブラケット64の延出側(図11中、左側)の側面が凹状に湾曲する傾斜面とされて、門形部材82の幅方向端面に略対応する形状とされており、突出先端側に向かって次第に狭幅となっている。また、ストッパゴム90のインナブラケット64への装着状態において、弾性当接突部106は、門形部材82を幅方向他方の側に外れた位置で門形部材82に向かって突出するように設けられている。
また、弾性当接突部106は、ストッパゴム90におけるインナブラケット64の外周面上に突出した部分に形成されており、インナブラケット64を外れた位置に設けられて、荷重入力方向であるインナブラケット64と門形部材82の対向方向に突設されている。更に、弾性当接突部106は、ストッパゴム90における側壁部98a側の端部に設けられており、インナブラケット64における取付部69の延出方向と反対側(図1中、左側)に突設されている。なお、弾性当接突部106がインナブラケット64を外れた位置に設けられるとは、インナブラケット64と門形部材82が対向する方向(軸方向)での投影において、弾性当接突部106とインナブラケット64が重なることなく配置されていることである。
このストッパゴム90の弾性当接突部106は、エンジンマウント10の車両装着前の単品状態において、全長に亘って門形部材82の幅方向他方の端縁部に対して側方から当接して重ね合わされている。これにより、ストッパゴム90を装着されたインナブラケット64が、弾性当接突部106の門形部材82に対する係止作用を利用して、門形部材82に対して所定の向きに位置決めされている。
特に本実施形態では、弾性当接突部106が門形部材82に沿って連続的に延びる突条とされており、インナブラケット64の周方向への揺動変位に対して、揺動中心から離れたところにおいて、弾性当接突部106と門形部材82の当接による係止作用が発揮される。それ故、インナブラケット64の門形部材82に対する相対回転がより効果的に防止されて、それらインナブラケット64と門形部材82が有効に位置決めされている。
加えて、弾性当接突部106が連続して延びる突条とされていることによって、弾性当接突部106と門形部材82の幅方向端縁部の当接面積が大きく確保されており、インナブラケット64と門形部材82の間に有効な位置決め作用が及ぼされている。
また、弾性当接突部106が門形部材82の幅方向端縁部に沿って延びるように、目視しながらインナブラケット64と門形部材82の相対位置を調節することにより、ずれているインナブラケット64と門形部材82を正しい位置に容易に戻すことも可能とされる。
このように、エンジンマウント10では、インナブラケット64と門形部材82が相対的に正しい向きで保持される。更に、インナブラケット64の取付部69の延出方向と、アウタブラケット72の連結部80の延出方向が、相対的に正しい向きに設定されることによって、車両への装着不良等も回避される。
また、門形部材82側には、位置決めのために貫通孔等の特別な構造を設ける必要がなく、リバウンドストッパ機構においてインナブラケット64と門形部材82の梁部86との当接面積を効率的に大きく確保することができる。それ故、リバウンドストッパ機構において、門形部材82の幅方向寸法を大きくすることなく、目的とする変位規制作用を得ることができて、有効なリバウンドストッパ機構を有するエンジンマウント10が軽量且つコンパクトに実現される。
また、ストッパゴム90は袋状とされていることによって形状の安定性が高められており、インナブラケット64を外れた位置に設けられた弾性当接突部106が、周壁部92によって所定の位置に安定して保持されている。それ故、車両装着前の単品状態において、弾性当接突部106の門形部材82への当接による位置決め作用が有効に発揮されて、インナブラケット64とアウタブラケット72の相対的な位置ずれが防止される。
また、弾性当接突部106は、突出高さ寸法に対して幅寸法が大きくされており、門形部材82の幅方向端縁部との当接によって及ぼされる当接圧に対して、充分な形状安定性が確保されている。しかも、弾性当接突部106は、突出方向の基端側(下側)に向かって次第に幅寸法が大きくなっており、当接圧に対する形状安定性が更に高められている。それ故、弾性当接突部106と門形部材82の当接によるインナブラケット64とアウタブラケット72の相対的な位置決め作用が有効に発揮される。
なお、エンジンマウント10は、図1に示されているように、インナブラケット64の先端側がパワーユニット18に対して取り付けられるようになっていると共に、アウタブラケット72の連結部80が車両ボデー20に対して取り付けられるようになっている。
そして、エンジンマウント10が車両に装着されることにより、パワーユニット18の支持荷重が第1の取付部材12と第2の取付部材14の間に入力されて、第1の取付部材12と第2の取付部材14が軸方向で相対的に接近変位する。これにより、インナブラケット64とストッパゴム90は、門形部材82の梁部86と当接部76との中間で、それらの何れからも離隔した位置(本実施形態では略中央)に変位する。更に、ストッパゴム90の弾性当接突部106は、図12の(a)に示されている門形部材82の梁部86の幅方向端面に対する当接状態が、図12の(b)に示されているように解除されて、梁部86に対して下方に離隔して配置されている。
このような車両への装着状態において、第1の取付部材12と第2の取付部材14の間にエンジンシェイクに相当する低周波数の振動が入力されると、受圧室58と平衡室60の相対的な圧力変動によって、オリフィス通路62を通じて両室58,60間での流体流動が生ぜしめられる。これにより、流体の共振作用等の流動作用に基づいて、目的とする防振効果(高減衰効果)が発揮されるようになっている。
一方、アイドリング振動に相当する中乃至高周波数の振動入力時には、可動ゴム膜50が共振状態で積極的に微小変形することにより、目的とする防振効果(低動ばね効果)が発揮されるようになっている。
また、弾性当接突部106がインナブラケット64を外れて設けられていることにより、衝撃的な大振幅振動の入力によって弾性当接突部106が門形部材82に打ち当てられる場合に、弾性当接突部106がインナブラケット64と門形部材82の間で挟み込まれるのを回避することができる。それ故、弾性当接突部106と門形部材82の当接による衝撃力が低減されて、振動や打音の発生を抑えることができる。
さらに、ストッパゴム90がゴム弾性体の単体で形成されていることから、弾性当接突部106の周壁部92による所定位置への保持が、弾性的に実現されている。それ故、車両への装着状態において、弾性当接突部106が門形部材82に打ち当たる際には、周壁部92の変形により弾性当接突部106の変位が充分に許容されて、当接時の衝撃が緩和される。従って、車両装着前の単品状態において有効な位置決め作用が発揮されると共に、車両装着時には弾性当接突部106の門形部材82への当接による振動や打音の発生が抑制される。
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明はその具体的な記載によって限定されない。例えば、前記実施形態では、袋状のストッパゴム90がインナブラケット64の基端部分に非接着で被せられた構造が示されているが、ストッパゴムは、例えば、インナブラケット64の基端部分に接着等によって固着されていても良い。具体的には、例えば、インナブラケット64の基端部分の上面に板状のストッパゴムが重ね合わされて、接着剤や加硫接着等の手段でインナブラケット64に固定された構造等も採用され得る。
また、ストッパゴム90には、門形部材82の幅方向端縁部に沿って連続的に延びる突条とされた弾性当接突部106が設けられているが、弾性当接突部は、必ずしも実施形態に示された構造に限定されるものではない。具体的には、例えば、弾性当接突部は、1つ乃至は複数の突起として設けられていても良く、その突起が門形部材82の幅方向端縁部に沿ってある程度の長さで延びていても良い。なお、このような比較的に長さの短い弾性当接突部が形成される場合には、位置決め作用を効果的に得るために、少なくとも2つの弾性当接突部が長さ方向(門形部材82の梁部86が延びる方向)にできるだけ大きく離隔して設けられていることが望ましい。
また、弾性当接突部は、ストッパゴムにおけるインナブラケット64の延出側(図1の右側)に形成されて、門形部材82の他方の幅方向端縁部に側方から当接していても良い。更に、ストッパゴムの両端部に弾性当接突部が形成されて、それら弾性当接突部が門形部材82に対して幅方向で挟み込むように当接して重ね合わされることにより、位置決め作用をより効果的に得ることも可能である。
また、マウント本体の構造は、特に限定されるものではなく、ブロック状の本体ゴム弾性体に第1の取付部材と第2の取付部材を取り付けて、本体ゴム弾性体の内部摩擦等に基づいた防振効果を利用する、流体封入式以外の防振装置であっても良いし、流体封入式防振装置においてアクチュエータの能動的な加振力によって防振性能の更なる向上を図った能動型の流体封入式防振装置であっても良い。
また、前記実施形態の防振装置(エンジンマウント10)では、車両装着前の単体状態において、インナブラケット64と門形部材82がストッパゴム90を挟み込んで間接的に当接しており、本体ゴム弾性体16に軸方向の予圧縮が及ぼされていた。しかし、防振装置は、例えば、車両装着前の単体状態において、インナブラケット64に設けられたストッパゴム90の上面が門形部材82から下方に離隔している構造であっても良い。このような構造において、弾性当接突部106が門形部材82の幅方向端縁部に当接している本発明の構造を適用すれば、第1の取付部材12から側方へ大きく突出したインナブラケット64の取付部69が下方に変位するのを、弾性当接突部106と門形部材82の当接係止によって抑えることができる。その結果、エンジンマウント10の車両への組付け時に、インナブラケット64のパワーユニット18への組付け位置(パワーユニット18に対する取付部69の相対位置)が大きくずれるのを防ぐことができて、パワーユニット18への組付け作業を容易に実施することが可能となる。
また、本発明の防振装置は、エンジンマウントとしてのみ利用されるものではなく、サブフレームマウントやデフマウント等としても採用され得る。また、本発明は、自動車用の防振装置だけでなく、自動二輪車,鉄道用車両,産業用車両等の各種車両用の防振装置や、その他各種の振動源と防振対象部材を連結する防振装置にも、好適に適用される。